●この暴れ馬 「遊ぶ?」 「いえ、あそびませんっ」 にっこり笑ったセーラー服に、頬から汗がしたたり落ちたワンピース。 次の瞬間、逃げ出そうと走ったワンピースをがっしりと掴んだ!! 「いやいや! いやよ、やだあああああああ!! やだやだやだやだやだ、めんどくさい!!!」 「いいえ、駄目ですっ。マリアさんは公園に行きますよ。今日という今日はお片付けくらいできるようになってください、ね!!」 ずるずるずる、『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)は『クレイジーマリア』マリア・ベルーシュ(nBNE000608)を引きずっていく。 そんな状況、ふと杏里と眼が合った――そこの貴方!! 「あっ、こんにちはリベリスタさん。 あのですね、これから三高平全域が復旧工事らしいですよ。よかったらお手伝いしてくださいね、非常に人手が足りないらしいのです」 「だからって、十一歳の手は借りなくて良いでしょうよ? 離しなさい、離しなさい、離せ離せヤダヤダヤダヤダ!!! 極・堕天落としーっ!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2013年04月01日(月)23:19 |
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● 三高平にまた新たな人物が足を踏み入れた。 「うん?」 こっくりと、狐面が傾く。朔夜は顔を斜めにした。 三高平の地図を見つつ、三高平の現状を見比べる。圧倒的に違いすぎるその景色に、本当に此処は三高平なのかと思ったほど。 「とりあえず……散策か」 それしかない。そう思った彼は狐の面を斜めに傾けながら歩き出した。 そんな朔夜が通った道の横。 「こりゃまた派手にやられたもんだよ」 夏栖斗の目に見えるのは、瓦礫と化した建物。いくら派手にやったとはいえ自分のホームが壊れるのはどうにもこうにも複雑だ。 「うむ……」 彼の目線の奥で、雷音は瓦礫を掻き分けた。全てが元通りになればきっと、『皆』帰ってくると、そんな虚を信じて。 『雷音さん、この瓦礫何処におきましょうか?』 「うむ、冴!! それはあっちの……」 友の声が聞こえた気がした。 けれど其処は何もない。 春の強風が悪戯をしたか、通り過ぎた風はそれでも春を告げる温かいものだった。つい、ぐすっと鼻を鳴らした雷音。その小さな頭を夏栖斗は両手で優しく抱きしめた。 「僕らのやってることはさ、死と隣り合わせなんだ。でも、僕らはこの街をえらんだ。そこに後悔はないだろ?」 「判ってる、それが命懸けの戦いで、ボクらも同じだということくらい」 掃除がしにくいから離せと兄の腕を掴んでも、それは強固でビクともしない。その腕に涙は落ちる、絶えず、絶えず。 「お前は死なせないし僕もお前のところに帰ってくるよ。約束だ」 「お前は、お前と虎鐵はボクを置いていくのは許さないのだ」 兄妹の契りは堅い絆がある限り、永久に続くのだろう。そう、願って。 「泣いてないのだ」 「そういうことにしておいてあげよう!」 そういえば、と夏栖斗は思う。 (くそ親父、きちんと仕事してっかな……?) と、いうところの彼(虎鐵)は、大規模な雪合戦でぶっ壊れたツリーハウスの残骸(まだあったんだ)を焼却するというので公園に来ていた。正しくは街の復興におき出てきた廃材を燃やし、それで暖を取ったり芋焼いたり、一石二鳥三鳥である。ダイオキシンとかこまけーこたぁいいんだよ。 「世の中エコでござる!! とにかくエコでござる!!」 「うん、まだ4月でも寒いしね」 勿論焼却は虎鐵一人では無い。快は轟々と燃える火の管理をしている。 他にもエリエリやベルガは積極的に廃材を火へ投げ込んでいた。どこの廃材って? 勿論、ツリーハウスの。 その頃、ツリーハウスの主。鷲祐。 「……あちこち傷だらけだが、それでも春は来たわけだな」 木に登って、双眼鏡を覗き込んでいた。見える三高平はいつかのものとは違う世界。どうしてこうなってしまったんだろうか、いや、それよりもこれからを考えるべきだ。 「失ったら取り戻せばいいし、変わらんものもあるか」 そう言って、一人。木の太い枝に身体を預けて寝…… 「ん?」 ……られない!! 「ヒャッハー!! これから毎日人の家焼こうぜ!!」 「ぜんかいはしばさんに迷惑かけてしまったから、再建のお手伝いするです。燃えろ、元家」 そんなベルガとエリエリと、燃える自分の家だったものを見つめて鷲祐の顔はとても……とてもだった。つまりあれだ、想像に任せる。 「廃材は燃やすぞー! にしても公園に廃材多いな!!」 やっぱり火にはツリーハウスの残骸がベルガによって運ばれる。かつ、虎鐵も両肩に抱えたツリーハウスの結構重要そうな柱を軽々持ち上げ、「レッドベルセルクでござふぅ!!」とか皆やたらテンション高い。 エリエリに関しては新ツリーハウス用の建築材をどさくさに紛れて火に投げ込んでいた。もはやなんでもアリか、本当にツリーハウス完成するのか!? エリエリを見つめる鷲祐の目、ちょっと怖いよ。 「いわゆる燃えるゴミは、全部こっちに持って来ちゃって! 一気に燃やしちゃお!」 この中ではやはり快が一番まともに動いているか。彼が周りの人々へそう声を張る中。 「快。エリエリも燃えるゴミに入るか……?」 「何をいってるのか解らないな、落ち着こう?」 鷲祐は快の肩を掴んで、エリエリに向けて親指をクイッと。クイッと。 「以前壊れたものが再び壊れようとしているのは気のせいかな?」 気のせいだよ。 気のせいだよ。 ルナは快の言葉に走り出しつつ、不穏な邪悪ロリを見つめていた。とりあえず、廃材を集めればいいのだ。どう見ても公園内にいっぱいあるけど。 と、そこで。ルナは長い金髪少女とそれを連れた男が目に入った。 「さあ! マリアたん! 公園のお掃除だよ!!」 「いやぁぁ」 公園入口、仁王立ちで話す竜一の隣でマリアは白い目をしていた。顔は青白い、逆に竜一はテンション高めで顔が火照っている。 「帰る」 くるり、マリアはそう背を向けてみたもののガシっと掴まれた竜一の腕は強かった。 「離しなさい、竜一!! マリアそんなのやりたいくない!!」 「ちゃんとお片付けできたら、お兄ちゃんがご褒美をしてお菓子とかケーキとか」 「やります、やらせてください」←即決 うんうんと顔を上下する竜一だが、その腕はマリアの身体に回してすりすりもふもふむぎゅ。仮にも彼女が居る竜一だろう!? それは大丈夫なのか。幼女は浮気の範囲外か!? 「あ、でもあっちは見ちゃ駄目ー」 「え、何処よ、何処?」 「駄目ー」 竜一はマリアの目を手で隠す。その竜一の目線の奥では鷲祐に拳骨を食らったエリエリが居たとか。 ルナはぽん、と手を叩く。そういえばマリアは燃やすことが好きそうであった。そう考えているからか、足が向かったのはマリアの手前。 「マリアちゃんも一緒にやらない? 私が廃材を集めてくるから、マリアちゃんは燃やす係り!」 「燃やせば、いいのぉ?」 「うん! お姉ちゃんに任せなさい! でも、やりすぎはメッだよ!」 「わかったー!!!」 そう翼を広げ、マリアが出したゲヘナ、不穏しかない。 そこへラヴィアンが加わった。紡ぐ詠唱――それはフレアバースト。もはやこの公園、炎しかない。 「ナイトメアダウンからもこの街は立ち直ったんだろ? だったらこのぐらい大丈夫さ」 「そうね、なら大丈夫よね! 問題なし!!」 ラヴィアンが声高々に、それにマリアも混じってもはや止まらない。 いやちょっとまって、燃やしてもいいけど廃材だけだ! 周囲すべて飲み込もうとするんじゃない! 「以前の街よりももっと良い所にしてやろうぜ。今度はバロックナイツやミラーミスが来ても壊れないようなすっごい街にさ!」 ――しばらくして。 ワオ! なんだがすっごい燃えているよ! もはや廃材というか公園が焼き尽くされる勢いだよ。 「そうか! 司馬! 貴様は家を燃やすことで熱い闘士を燃やすということだな!」 「天才、悪いが、それぜんぜん違う」 鷲祐の隣、陸駆は眼鏡をくいっと持ち上げながら演算で導き出した答えを述べていた。 「そうか、貴様の生き様とくと見物することにしよう! ふははは」 「人の話を聞かんかい!!」 駄目だこの天才、走るともはや戻れないところまでいくらしい。熱く燃えるは憤りの炎かもしれない。だが抑えろ鷲祐。 そしてこういうバーニング時、どういえばいいか? 「ワオ! だ……」 「ワオ! か、って天才ー!?」 陸駆は遺言「ワオ!だ」を最後にその場に一酸化炭素中毒で倒れ、フェイトは使用しなかった。 「芋、焦げちゃったね。あ、リベリスタさんの中にホーリーメイガスさんはいらっしゃいませんかー?」 快が苦笑いしながら炭になった芋を穿る。頑張れば中の中の中くらいは食べられそうだが……。 土下座させられているマリアとラヴィアンは「ヤリスギマシタゴメンナサイ」と呪文のように呟いていた。 そんなこんなで非常にある意味激戦区公園も片付く頃、ルナは花の種を持っていた。 花を植えよう、いつか綺麗な花畑ができるくらいに。 皆で過ごす場所だもの。綺麗なほうが、きっと素敵だから。 「なんでマリアさん土下座しとるん?」 すたすた。組長もとい十三代目もとい椿がマリアの異様な光景を目にしてこれは夢かと頬を抓った。 大体周りの焦げた木材とか青い火とか見ればいつもの「やりすぎ」をやってしまったのだろうと想像はつくが。地に頭をつけて謝っている姿のほうが驚きだった。 「マリアさん、お弁当持ってきたんよ。一緒に食べるやろ?」 「食べる!!!」 土下座かが起き上がったマリアは一直線に椿のもとへと弾丸のように飛んだ。 お弁当の中身はマリアの好きなものを詰めてみた。それで喜んでくれれば良いと。 「ふふん、オムライス~、ハンバーグー、たこさんウィンナー!!」 フォークにささったタコを見せつけながら、マリアは美味しいと微笑んだ。嗚呼、また綺麗に笑えるようになったねと母たる椿も一緒に笑い合った。 そんな親子のキャッキャウフフな目の前。 「よし、ここを復旧させるぞ!!」 「そうだな、復旧させんと公園の象徴とも言うかもしれんツリーハウスが忘れ去られていく」 「そうだ! あの美しき公園を復活させるために修復せずにはいられない!!」 という訳で作業員の皆さんはよろしくお願いします、翔太と優希は作業のおじさんたちに頭を下げた。 まずは何から取り掛かるべきか? 「優希、俺の分の荷物運び頼む!!」 「ああ、いいぞ任せ……るんじゃない。翔太、俺の前でサボり発言は許さんぞ」 突然の仲間の裏切りに優希の拳が臨戦体勢にシフトした。ぎょっとした翔太は両手の平で壁を作りながらわかった!わかったから!!と言葉を繰り返した。 ふと、二人の視界に杏里とマリアが映る。 「あ、杏里! いつもマリアの面倒お疲れさん」 「マリア、どうだ頑張っているか? 無理せず働くと良い」 「翔太さん、ありがとうございます。ツリーハウス建設ですか? えらいですね」 「優希……マリア疲れたの。体力ないもん」 手を振った翔太に、ペットボトルのお茶をマリアに渡す優希。二人は今日も仲がいいんだなーと杏里は遠目で見ていてくすくす笑った。 「鷲祐の家は任せとけよ!」 「ああ、司馬の家は俺らが取り戻すよ」 そんな二人がせっせと働いたおかげか、しばらくすればツリーハウスは元に戻るのだろう。 と、思っただろ? そう簡単にはいかない。こちらには最強のエリエリという邪悪ロリが破壊活動しているから! 「マリア! アレを止めたら少し休んでていいぞ! オヤツも奢る!」 なんとしてでも再建したい、ツァインが声を張り上げ、叫ぶ。そしてこの気まぐれ堕天使、オヤツという言葉に弱かった、凄い弱かった。 「本当? ならちょっと、そうね、本気だしてあげてもいいわよ」 「いけ! 奥義・堕天五段活用ッ!! ってぎゃー!!!」 「極☆堕天落としー!!!」 またやりすぎた。ツァインも混じって公園内に居るリベリスタ全員が石化した。 「はっはっは」 そんな光景を見つつ、付喪はベンチに座りながら惨劇を見ていた。 付喪の周囲はまるでそこだけ時間がゆっくりなように思える程平和であり、のんびりした空間。 マリアはその存在に気づき、翼を広げて近寄ってくる。今まで見ていた共同作業。それが仲間意識や友情を深めると信じて、それがマリアを囲んでほしいと願って。 (あんた達が守ったものを改めて見る、良い機会だろうしね。頑張ったね、マリア) 「付喪もあそぼ?」 「おばーちゃんは石にしないでおくれ」 「ふむ、公園はなんとか復興できたかの」 シェリーは若干惨劇が起きた感じの公園に苦笑交じりのため息をしながら現地調査の記録をする。 最初はどれくらいの被害が出ているか検討もつかなかったが、地道に記録をつけていたからか、どれだけ街が壊れていたか一番知っているのは彼女かもしれない。 だからこそ効率よく人手を配置し、それを考える努力を惜しまない。魔女といえど軍師のようなものだ。 『破壊の魔女は伊達ではない。再生のための破壊も、時には必要だの?』 ● 「随分と楽団に荒らされたもんだなあ。激しかったんだな」 疾風は神秘の力を眼力に施す。見えないものなんてないと言われる千里眼が発動――街の隅から隅まで見通す。 だからこそ解るのだろう、街の損傷具合が。相手はあのバロックナイツの一人だった、それもそうかもしれない。おそらく、街が壊滅しなかっただけでも奇跡かもしれない。あの、ポーランドに比べれば。 「こういうのを目の当たりにすると改めて日常って大切だと感じるわー」 疾風の隣で桜花はうんうんと頷く。今、普通の日常に身を置く、『何もおきてない』という普通がどれだけ幸せかかみ締めるがごとく。 「死体とかもまだ残ってるのかしら?」 「さ、流石にそれはまだ見えないな……」 疾風は見えたら嫌だな、と内心思いつつも、居るのならきちんと救って葬ってやりたいと目を光らせる。 「季節的にまだ良かったというべきでしょうカ? 夏の暑い盛りだったら最悪でしたネ。衛生面が気になりマス」 「死体的な意味で?」 「イエ……純粋に衛生面デス」 ジュノは建物の壁に足を置きながら、復旧の度合いを見ていた。だが置く足場に気をつけなければ、危うく変な所に足を置いて崩れたら一溜まりも無い。 「気をつけてね」 「解ってマス」 と言いつつ、ジュノの足元、ヒビのある場所。びしりと音を立ててそこが崩れた。 「言わんこっちゃ無い!」 桜花は顔を押さえつつ、その隣を疾風が駆け抜けた。ジュノは崩れた壁と一緒に落ちて――いくが、間一髪で疾風が彼女を抱きとめる。 「色々、脆い場所があるらしいデス」 「見りゃ解る……」 そんな三人。今日は商業地区で一番頑張ったかもしれない。こんなまじめに働く子が居てよかった。 「俺、現場監督!!」 「やる気ないな、俊介。私も無いがな」 「ちょっと!! 皆頑張ってるのよ!? 頑張ろう!?」 此方はユーヌの後ろに付き纏う俊介と、更にその後ろから顔を膨らして歩く魅零。 役割は作業を見守る大事な仕事だとか、三高平の壊れた場所、無事な所を探して歩き続けたり……。 む、あそこの壁崩れそうだな。とユーヌが反応してもAFで連絡して直すのは別の人に任せるらしい。なんて役得な位置か。 それにしてもだ。 「なかなかうまいな、食べるか?」 「いるいる!! あ、これって間接キス??」 「ちょっと!! 仮にも婚約者が居る分際で……!!」 仕事しろ。 ユーヌは損壊を免れたアイス店から三段もアイスが乗っかったそれを食べて満足気の無表情。さらに、魅零は間接キスさせまいと俊介の顔を抑えてユーヌから遠ざけていた。 「離せ、ダークナイト!!」 「黙れ、ホーリーメイガス!!」 「む? あんな所にエリューションが」 「「倒します!!!」」 この三高平のボロボロな現状に、どさくさに紛れて何か変なものが入り込んでないだろうか? そう眼を光らせていたユーヌの目の前にフェーズ1程度のエリューションが通り過ぎた。 「灰塵し……」 「遅いわよ!! すけしゅんとん!!」 「星儀」←最速 どーん。アークの精鋭、本気出せばフェーズ1なら1ターンでKILLらしい。 そんなこんなで平和は何気ない駄目人間によって守られたという。仕事しろ。 「はい! じゃあ作業手伝うよ!」 「うーぬ、アイスちょーだい!!」 「いいぞ、一口だけな?」 「ちょっとおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」 マイペースな二人に、魅零の胃痛は増すばかりであった。 そんな叫び声が聞こえる中、義弘は平和だなぁと苦笑した。 土方のおっちゃんたちに混じって作業する彼はなんだか違和感が仕事していない。 やはり力作業であるからか、革醒者であるからか、義弘はおじちゃんたちに感謝されつつこっちに引っ張りだこ、あっちに引っ張りだこで今日はよく身体を動かしている。 疲れも溜まってきた頃、義弘は瓦礫に座ってお弁当を開けた。空腹にそのお弁当の美味しさは増し増しだー! (今度、祥子を誘って花見にでも行こうか) そうだね、早く行かないと、散る前に。そう春の風を感じながら彼は目を閉じた。 む? なんだかいいにおいがするぞ。お弁当食べたら覗いてみようかな? そう彼が思ったのはこのせい。 「杏里さんもいかがですかー?」 「カレーの炊き出し? ですか?」 小梢が杏里を呼び止めて、その裾をくいくいっと引っ張った。見ればなのはな荘によるカレーの炊き出し。 ふむ、これはなかなか良いものを見つけたと思った杏里だが。 「小梢さん、なんで列に並んでいるんですか?」 「えへへ、ちょっとね……」 「コラーッなの! ちょっと目を離すとすぐに並ぶんだから!」 あなたの分は他に用意していると頬を膨らませているルーメリア。彼女は土方のおじちゃんや怪我をしてしまった人の回復等献身的に復興作業に貢献していた。 そしていつの間にか消えた友人を思い出せば、やっぱりか、小梢は列に並んでカレーの恩恵に肖ろうとしている。 「はいはい、力作業してる人たちのために頑張ろうなのー」 「あーれー」 ずるずるずる、ルーメリアに引きずられて小梢はカレーの列から消えていった。そんな二人の光景を杏里はくすくす笑いながら見ていた。ふと、横を見れば。 「葬識さんは、お手伝いし……なさそうですね」 「してるよ? ほら、現場監督! そういうの必要でしょ?」 「はい! 大変重要な役割かと思います……?」 杏里はアイスを舐める現場監督を見ながら頭にハテナマークが浮かんでいた。 とはいえ、鋏で何か切断する仕事があるなら喜んでやるよと笑う彼に、打ってつけの仕事をこれまでの土方作業を思い返して探してみたものの、あんまり無い。 「派手にやられらよねー、俺様ちゃん、その頃イタリア旅行だったけど」 「その件はお疲れ様でした。沖縄にイタリア、随分な遠出でしたね、ご無事で何よりですよ」 ふと、杏里の首にひたりと当てられた逸脱者のススメ。 「首どう? ちょんぎっていい?」 「葬識さんのためなら……、き……傷物なこんな首で宜しければいつでも」 若干、震えた声で杏里はそんなことを言っていた。 危うくフォーチュナの命がひとつ消える、そんな所でマーガレットはマリアの目線の位置に自分の目がくるように腰を落としていた。 「はいこれ、マリアがカレー配るの手伝ってくれたからそのご褒美だよ」 「ぐ……マリア、さっきから餌に釣られる……!!」 そんな愚痴を言いながらもマリアの両手はマーガレットからカレーを受け取っていた。 さあ、休憩にしよう。カレーによる癒し活動といえど、こちらにも休息は必要だ。 「おかえり、ルーメリア。小梢。カレー食べようか?」 そこへ、すとんっと高所から舞い降りたのは――リンシードだった。 「上でお手伝いしてた……のですが、おいしそうな香りが……して」 ぼそぼそと喋るリンシードにマーガレットはにっこり笑った。 「リンシードちゃんも食べる? いっぱいあるから、遠慮することないよ」 「はい……!」 椅子にきちんと座って食べるリンシードやマーガレットとルーメリアと小梢に、空中に浮かんで食べるマリア。 「マリアもちゃんと座って行儀よく食べようね」 「ムー、むぐむぐ!!」 「きちんと飲み込んでからしゃべろうね」 マーガレットはまるでマリアの姉か何かか。妹が居たらこんな感じだろうかとマーガレットは苦笑した。 目が離せない、世話の焼ける妹だ。またカレーをテーブルにこぼしては、手で拾って食べるくらいには教育がなってない。 「カレー美味しいじゃない」 「次はもっと綺麗に食べれるといいな」 綺麗に食べてるわよと、おかわりを求めるマリアにマーガレットはその手で頭を撫でた。 「おいしいですねー…やはり名物ですかー」 「いるからなのはな荘のカレーは名物になったの!?」 リンシードがまたぽそりと呟き、それはルーメリアの耳にダイレクトに入った。 なるほど、なのはな荘=カレー、オボエタ。 ご飯食べた後で、また作業。 「ごちそうさまです……ではまた、どこかで」 お気に入りの場所を直すために、リンシードは地面を蹴り上げ、跳躍。軽い身体を素早く動かし、ビルからビルへ飛び移って消えていった。 「これ、全部廃材として公園に送ってもいいんでござるよな」 腕鍛はカレーを配りつつ、メイン的には復興作業の瓦礫撤去を手伝っていた。 聞けば三高平の建物の素材は神秘を遮断するとか。真白パパの発明した物質(?)を簡単に捨ててしまうのも気が引けるというもの。 とはいえ、捨てる終えないので捨てるわけだが……。 (……と言うかいっそのこと普通の物質で建築して) 一瞬、ドス黒いオーラが漏れ出た腕鍛。だがすぐに理性が止めた。止めないとだめ! 「今なんかスッゴイ殺気感じたぁー」 「おおう、なんか近くにいるのでござるかー?」 たまたま近くを通った運送屋、御龍が殺気を感じてその目がギラつく。だがなんでもない、かなりなんでもない漆黒が腕鍛から出てきただけだから気にしないで! 「まぁ、その瓦礫よかったら持ってくよぉー」 「おお、すまないでござるな、お願いしたいでござる。今、拙者が乗っけるでござる」 「あいあいー。おや、杏里ちゃんマリアちゃん。よかったら乗ってくかいぃ」 腕鍛が作業をする中、見かけた杏里とマリアに御龍は手をひらひらーと振った。 「あ、本当ですか? じゃあちょっと乗せてほしいです」 「マリア、トラック初めてかもぉ」 「む?」 ふと、腕鍛見れば、なのはな荘の子たちが奮闘していた。 ユーナはレッドベルセルク持ちでも持ち上がるか?くらいの大きな瓦礫、つまり家の壁のようなものを持ち上げようとして、持ちあがら……ない! そりゃそうだーと思いつつも傍で見ている結名は生暖かい目でそれを見つめていた。なんだか見ていれば面白いことが起きる気がするもんね。 「な、なかなかやるじゃない……! 今回は見逃してあげるわ!」 まるで本気を出していないとでも言いたいのか、ユーナ。そんな天然な姿に結名の心が温かくなった。 「ふん、あれくらいの瓦礫ごとき、この私が手を出さなくても無問題よ」 「ユーナ、あぶないよー」 「そうよ、私が手を貸せばあれくらいちょちょいなんだから、きゃーーー!!?」 言葉を並べているうちに拾った硝子の破片。チカリと光ったそれを目当てになぜがどこからか大量のカラスの大群がユーナを襲った! とそれだけでは無く、突如下から勢いよく噴射してきた水がユーナを襲った! だがそれに止まらず、突然の突風に砂が目に入り驚き、思わず瓦礫に足をとられて転んだ! さらに……!! !!! !!!!! ―3時間後― 「頑張ったよね、私……頑張ったよね」 「うんすごく頑張ったと思うよ」 目が虚ろ。まるで光をともさない瞳でユーナは結名の肩に頭を乗せていた。近くではルーメリアがユーナの外傷を真摯に治している。 ここまで災難が重なるともはやその子の特殊能力だと結名が勝手に納得した所で、小梢はまた「カレー食べたい」と鳴きだす、そんな平和ななのはな荘であった。 そんな彼らのカレー配布に紛れて自家製キノコで怪しく笑う影。 「くっくっく、魔法のように美味しいキノコが入ったカレーを存分に味わって下さいな」 (あれ、今日はカレーが多いのですね……) 九十九が杏里とマリアを呼び止めて振舞うのは、いかにも、いかにも!なカレー。 「キノコなのぉ? 九十九。また変なのなのぉ?」 「実は個人的な復旧作業として、キノコをあちこちで育ててましてなー」 これもそれで取れたキノコなのだという。なんのキノコだ、なんの! 「この調子で、キノコとカレーでこの街を埋めていきますぞ」 「三高平中、キノコになるのぉ? 九十九、キノコ好きねぇ?」 「アークもキノコだらけですか……」 杏里はごくりと唾を飲み込みカレーを食べる。どんな味かは九十九の仮面の中くらいに内緒な話。 カレーの臭い漂うビルの上。 鹿毛は高所で作業をしている最中だった。 足場さえあれば誰でもいけるのだろうが、彼は足場がなくても大丈夫。 なにがどうなってそうなったかは解らないが、ビルにこびり付く焦げた跡。楽団のせい? アークのせい? ともあれ掃除すれば綺麗になるはず。 ロゴ入りの作業服とワークキャップという完全装備でアイテム:たわしでごしごしする姿はなんだかシュールだ。 「鹿毛さん、ご苦労さまですよ」 「やー、ドーモドーモ。カレーのいいにおいですね」 「良かったら鹿毛さんもぜひー」 ビルの真下から、杏里は鹿毛の作業を見守っていた。 ● 「パンツ見えてるよ」 と言いつつ沙羅の眼は上を見ないで下を見ている。だって直視したら恥ずかしいもんね。 「見えてないのによくそんなことを」 マリアも沙羅の女性の苦手さにはため息と同情が重なるほどだ。 とん、と静かに降りてきた彼女の眼を見ずに沙羅はいう。 「遊んであげるよ」 「それは血が出る遊び?」 「……それはここではできないかな」 似たり寄ったりの二人。兄がいれば、妹がいればこんなものだろうかとお互いにそう感じ取ったのであった。 沙羅と別れてしばらくしたとき、マリアは後ろから声をかけられた。 「ふふ、御機嫌ようマリアさん。この前の雪合戦楽しかったですね」 「あら、亘。さっさと落ちた翼は見ものだったわよ」 「さ、さいですか……」 しゅん、と羽を縮めた亘にマリアは意地悪く微笑んだ。 彼の服装はツナギに修理道具と、完全に復旧工事態勢である。関心するところなのだが、マリアは遊んでくれなさそうだなと顔を斜めにむくれていた。 「で、今日は何のお誘いをしてくれるのぉ?」 「はい、自分と宜しければ――」 ――向かうは去年一緒に行った隠れスポット。 マリアが素直に来てくれればいいのだが、同じ場所へデートに誘うのは男として駄目よ、と一蹴り。 だが最終手段はとってある。スッと亘がマリアの目の前に出したのは。 「ドキッ! 今年の新作、魅惑のテディベアさん達です」 「い、行きます……」←思考停止 かくして二人は翼を広げたのであった。 しばらくして。 「此方は紫月。妹です」 「どうも、初めまして。妹の紫月です、宜しくお願いしますね、マリアさん」 「紫月に悠月。覚えたわよ、っていうか覚えてるわよ」 先日の戦いで一緒だったもんね、とマリアは紫月と悠月の顔を見比べながら言った。 「可愛らしいテディベアですね。ぬいぐるみがお好きなんですか?」 「まあ……好き、かしら。いつでも一緒なのよ、名前はキティ」 紫月がマリアのテディベアを撫でながら、嗚呼、そういえば私のも何処に仕舞ったかしらと懐かしむ。 そんなマリアは紫月の目の前のテディをずずいと出して、『ぼくきてぃだよ、よろしくね』と腹話術らしきものをしながら人形を動かしてみていた。紫月はそれにくすくす笑い。 「ふふ、これからは姉さん共々、仲良くして頂ければ嬉しいですね」 『こちらこそなかよくしてね』「これでいいかしらぁ?」 マリアは首を斜めにしながら顔を真っ赤にしていた。 ところで。 「あまり楽しそうには見えませんね」 「そりゃあね、復興といえども傷は深いわ」 辺りの空気はどこかしら冷たい。それを察した悠月は少し悲しい顔をしていたのをマリアは見つめていた。 「私達と一緒に、お話でもしながら楽団の痕跡消しをしませんか」 「えぇ、まあ、邪魔じゃないなら一緒に居てあげてもいいよ?」 消えぬものなら、その上からまた新たなものを塗りたくればいいか。傷は深いといえど、治らない傷は無いと信じて。 姉妹の後ろ、金髪の少女は足早に突いていった。 「こんにちは、杏里ちゃん。マリアちゃんのお守り? 大変だねー」 そう悠里がにこっと笑った瞬間に悠里は石化していたとかなんとか。 「マリア、お守りされてないもん」 頬を膨らますマリアに杏里は頭を抑えながら「悠里さん滅んじゃだめです……」と言っていた。 さておき、悠里はお昼の最中だった。食べていたお弁当は自分で作ったというのだから驚き。彼女に作ってもらえばいいんじゃないか滅べと思ったそこの貴方、残念ながら彼の彼女の料理の腕前は……止めておこう。 「杏里ちゃんも食べてみる? マリアちゃんにもわけてあげるよ」 「うれしいですが……悠里さんが食べる分が減らないですか?! 大丈夫ですか!?」 「食べるーたべたーいたーべーたーいー!」 遠慮気味な杏里に遠慮皆無のマリアを見比べて悠里は小さく笑った。 ご飯が終わればまた復興作業だ。 ――取り戻せないものも多くあった。重い空気はいつまで続くのだろう。 それでも僕等は生きている。明日のため、世界のため、リベリスタは今日を精一杯生きているだ。 ここでもまた一人、笑顔を振りまく子が居る。 「やっほー☆ 今日はいい天気だね!」 道行くおじさんおばさんに笑顔で挨拶する終。復興作業――街はすぐに元に戻るのだろうが、街が襲われてたくさんの人達が亡くなった心の傷はそんなに簡単に治らない。 だからせめて、と。終は歩道を掃除しながら、道行く人々に笑顔で声をかけた。 「終」 「マリアちゃんこんにちはー☆ そっちはお掃除はかどってる~??」 「はかどってないわ、ていうかやりたいくないもの」 首を横に振ったマリアに終は顔を斜めに傾けた。めんどくさがるマリアなら、そういう反応するのだろう。ならば。 「ありゃりゃ? 早く終わらせて、いっぱい遊ぼうね~☆」 「うー、遊ぶの先じゃ駄目かしら? 終、遊びなさいよ、マリア、暇、暇なのー!」 終の服を掴んで駄々こねるマリア。終は歩道の掃除に使っていた箒をマリアに渡しつつ。 「どっちが綺麗にできるか勝負ー!☆」 「マリア綺麗にするー!」←キャッキャ と、勝負を始めたのだが。しばらくしてマリアが掃除が嫌になって逃げ出した。 ――瀬恋の耳にふと、呻き声が聞こえた。 そちらを見れば、あ、マリア。 「やだぁやだやだやだやだだめむりむりやだやだやだ!!」 それしか言わないマリアに、なんだこいつと瀬恋は眉間にシワを寄せたが、箒を見て、あ、そうか。と。 「解る、気持ちは解る」 「瀬恋……!!」 だがな…と瀬恋は親指と人差し指の先をくっつけて輪を作って、マリアに見せた。 「世の中金だ、マリアのジョーチャン」 「なんか……すっごいヤクザっぽい」 ニヤリを笑う瀬恋にマリアは珍しく苦笑いをしていた。 「金がありゃなんでも出来るって訳じゃねぇけど、金がねぇと大抵の事は出来ねぇ。 金の為なら嫌な事でも我慢してやるしかねぇんだよ。アンタもリベリスタとしてやるなら覚えときな」 「?」 マリアには難しすぎる話だったか、マリアの目が白目になってから動かない。 「人の話はきちんと聞け、いいな?」 「は、はい?」 マリアの中で瀬恋がボス的な位置から絶対的な何かにシフトしたようだ。 ● 「泣く子も黙るか弱い乙女に復旧作業させようなんぞ」 「ひ、ひー!? 瑠琵さん、御慈悲をー!?」 前を足軽く歩む瑠琵の後ろを、大量のスーパーの袋(in飲み物)を持たされている杏里が続く。 「働くものに水分は必要じゃろ? 届けなければいけないしのぅ」 「は、はう……それは解りますが、いえ、リベリスタ様のためならこれくらいやります!」 弱音を吐きかけ、止め、杏里がやる気になったのを見つめつつ瑠琵の顔には悪い笑顔ができていた。 上手く、上手く乗せられているのだろうが、なぜだか拒否できない杏里はっくと喉を鳴らしつつ瑠琵の後ろを行く。 ふと。 「あら、杏里。私も復旧工事のお手伝いなんて嫌よ?」 「はうう、氷璃さんもお手厳しい……」 労働は尊いけれど、彼女はどうにも不向きな方の人種の様だ。 「私やマリアのようなか弱い術師に力仕事だなんて、ね? だから、マリア。私達にしか出来ない方法で遊びましょう」 「あら、最近はお姉様も遊びがお好き?」 ゲームの内容は壊すべきものを多く壊したものが勝ち、とシンプルなもの。しかし勝手に壊したり、壊してはいけないものを壊したら減点。 それを聞いて氷璃の前で、マリアは翼を広げた。 「マリアに勝てる根拠でも?」 意地悪く笑ったマリアは即座に空中へと飛ぶ、それに負けずに同じ位置で飛ぶ氷璃の眼も輝いていた。 「マリアが勝ったら何でも好きなものを御馳走して上げるわ。私が勝ったら――そうね。お姉様とデートして貰おうかしら?」 「闇夜のデート? 夜に星でもかき集める気かしら? いいわよ」 瞬時、対照的な髪の色が空中で逆方向に飛んで消えた。 「杏里も空飛べればよかったです」 「そうかのう?」 残された二人はそのまま一緒に桜道を行く。 ――私が誰かって? どこにでもいる唯の復旧作業員(♂)さ。 烏頭森は商業地区のちょっとお金とか色々仕舞ってありそうな、そう、あそこの建物の前に居た。 見た目はどこにでも居そうな作業員。中身はいつものヴァイオレットクラウン。 悪い笑みを浮かべて、いざ一仕事――ってそれ盗みー!? 物質透過を器用に使い、その地下へと身体を沈ませていく。 「ぬっふっふ♪ 笑いが止まりませんなぁ、お代官様☆」 いきはよいよいかえりはこわひ。 神秘に埋もれる街で神秘窃盗を対策していない金庫があるものか! 怪盗スキルで怪盗するなんてフリーダム。 なんだかんだ、パトカーのサイレンが響く中、涼子は辺りをきょろきょろ。何か仕事はないかと動く。 ふと見れば復旧作業に苦戦している工事の一般人たち。 「何かやれること……ありますか?」 どうしたことか、涼子自身が驚いた。こんな積極的な自分があったなんて。 「ありがと、あっちの段ボール持ってきてくれないか? と、女の子に力仕事頼んで悪いなあ」 「……いや」 涼子は駆け足。こんなにも足が軽く、早く街をもとに戻さなければと急いだ。 だって、この街が好きだから――早く、ホームを元通りにしたいから。 姉が、皆が、私が守った大切な街。 セラフィーナは仮設住宅をひとつ設置した後、一休み、そしてまた工事の人と一緒に動き出す。 翼を広げれば高所でも難なく作業するし、一般人よりも力持ち。そんな彼女だからこそ周りから頼られていた。 「これは私が運びますね。任せてください」 「いやあ、悪いよ。これくらいは俺がやるから休んでいいよ? なんで、そこまで」 「皆の街ですから、少しでも役に立ちたいんです」 セラフィーナは目の前の一般人を見ながら、そうまっすぐに答えた。皆が、大切な人がいる街。少しでも己の手で守れて築けたら、それは幸せと呼べるのだろう。 それにしても、だ。 「……改めて見ると、随分な有様になったものだね。折角の街並みが台無しだ」 ヘンリエッタは瓦礫を見ながら言う。 「うん、ボクが知ってる場所は一日で全く知らない世界になったよ」 その隣でエフェメラも少しだけ悲しい顔をした。二人のフュリエは同じ場所で協力して作業を手伝っていた。まだこちらの世界に来て間もないというのに、献身的な姿はリベリスタ、否、三高平中の心の射抜くだろう。 「でも、守れてよかった」 「そうだね、ボクらの第二の故郷のようなものだしね」 ヘンリエッタとエフェメラは笑いあった。ふと、現れた二色のフィアキィが二人を祝福しているように舞った。 「そろそろ、お昼ができるかな? ヘンリエッタも、セラフィーナもお腹すいたよねっ?」 時刻はそろそろ、長い針が短い針と重なる時。 「御飯できましたよー!」 そこに瑞樹の元気な声が響いた。働くおじさんたちのために炊き出しを手伝い、そして待望のお昼。 「いつもありがとう! これからも、お仕事頑張ってね!」 満面の笑みは作業員の心を射抜く――ズッキューン。 「おおう!! 任せなじょーちゃん!!」 「よーし、おじさん午後もがんばっちゃうかなー!!」 そんな声が響く――感謝と笑顔をこめて御椀を渡そう。 早く三高平が元の姿を取り戻すといいな。瑞樹の願いはきっと、アークの皆も同じ気持ち。 そうして長いようで短い一日は終わりを告げた――。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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