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<世界を飲み干す者>天翔ける凶鳥

●滅びゆく世界
 ラ・ル・カーナは崩壊の時を迎えようとしていた。
 空は不気味な色に染まり、世界樹の水源は涸れ果て、憤怒の荒野はひび割れてゆく。
 かつて巨人の訪れによって出現した危険な巨獣、怪物たちは更に進化を……不気味な変化を遂げた。
 それだけではない。
 狂った世界樹は次々と『狂った変異体』を生み続けているらしい。
 世界樹の変調は無形の巨人――R-typeとの邂逅により、真なる危険域まで到達したらしかった。
 ラ・ル・カーナの造物主であり、ラ・ル・カーナそのものとも言える世界樹が暴走したままでは、状況の回復は有り得ない。
 最も争いと憤怒より遠い存在として作られたフュリエたちは、理性を保ち種の形状を保持している。
 だが、状況が長く続けば……他の存在達のように変異する可能性はあった。
 そうでなくてもこの状態が続けば、滅亡は避けられない。
 この状況を打開するには、世界樹の変異を回復する必要があった。
 そして、その手段について。
 アークの研究開発室は、一つの方法を見出したのである。

 それは、研究を進めていたラ・ル・カーナの『忘却の石』の転用だった。
『忘却の石』は神秘存在の持つその構成を『リセット』する為の存在である。
 これと……つまり、純度を高めた『忘却の石』と、世界樹にリンクする事が可能であるシェルンの能力を合わせれば……
 かの存在、世界樹を構築する要素に潜り込んだ『R-typeの残滓』のみを消失出来るのでは無いか?
 それが研究開発室の出した推論だった。
 無論、推論は推論である以上、可能性という段階で、絶対では無い。
 崩壊を始めたラ・ル・カーナから撤退するという案も挙げられたが、時村沙織はこの作戦を強行するという判断を下す。
 こうして、リベリスタ達とフュリエ達の連合軍は、異形と化した『世界樹エクスィス』を目指しての進軍を開始した。

●誘引任務
 世界樹までの行程には、様々な怪物が、巨獣が、変異体たちが存在していた。
 高い戦闘能力を持つそれらとの戦いは、多くの困難が予想される。
 だが、幸いというべきか……変異体たちの知性は、かなり低いようだった。
 連合軍はこれを利用する作戦を取る。
 囮となる隊を用意し、怪物たちを『ラ・ル・カーナ橋頭堡』へと誘き寄せ攻め入らせようというのがその内容だった。
 近付きさえすれば、たとえ防御に優れた場所であったとしても変異体たちは橋頭堡に攻め込むことだろう。
 誘き寄せられれば、そこから先は別の作戦である。
 もっとも誘き寄せる事も簡単ではない。
 変異体たちが自分たちを追ってくるように仕向けねばならないのだ。
 ただ逃げるだけでは怪物たちは他の目標を探し始める事だろう。
 囮といえども、それなりには戦わねばならない。
 その『さじ加減』は……判断は、決して容易とは呼べないものである。
 それでも直接撃破する困難に比べれば、その程度は幾らかマシであると言えた。

●歪みし空の使者
 不気味な鳴き声が空へと響き渡る。
 見上げたリベリスタたちとフュリエたちの瞳に映ったのは、羽ばたき空を舞う巨大な存在だった。
 パッと見は翼竜のようだったが、体の半分ほどに鳥のような体毛が生えている。
 翼も同じだった。
 蝙蝠のような皮膜と鳥の羽毛がごっちゃになったような、ありえない翼で空を飛びながら……異形の獣は再び鳴声をあげた。
 それは鳥の鳴き声というよりは獣の咆哮だった。
 ワケの分からぬ鳥のような生き物の頭部には象のような頭が付いていたのである。
「そんな……あんな……」
 混沌、異形としか呼びようのない、世界の終わりを象徴するような存在を前に、フュリエたちは怯え……絶望したような表情を浮かべる。
 再び発した咆哮と共に、その頭部から雷が放たれ地面を撃った。
 続いて急降下してきた一頭が地表近くで大きく羽ばたくと、頭を振り回し長い鼻で周囲を狂ったように薙ぎ払う。
 唸りをあげる鼻の直撃を受けた枯れ木が砕かれ吹き飛び……フュリエたちが悲鳴をあげた。
 変異した巨獣のような存在は唸り声をあげながら、一行へと、頭を向ける。
「……皆さんは、こういったものたちと戦ってこられたのですね……」
 フュリエの一人が呟いて、手に持った杖を握りしめた。
 気遣うように声を掛けたリベリスタへとお礼を言い……他のフュリエたちも、大きく頷く。
「あんな存在を、放っておく訳には……いきません」
 シェルン様のようには、いかないけれど。
 けれど、エウリスは……末のあの子は、戦ってきたのだ。
 それなのに……
 表情をこわばらせながらも……瞳に、今までとは違う色を宿して。
 フュリエたちは、リベリスタたちを見つめた。
 自分たちの世界を、自分たちを、守ってくれた人達に。
「未熟者ですが、どうかよろしくお願いします」
 リベリスタたちも頷き、戦闘態勢を取る。
 こうして作戦は開始された。
 変異体たちをラ・ル・カーナ橋頭堡へと……誘き寄せる、作戦が。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:メロス  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年10月11日(木)23:36
オープニングを読んで頂きありがとうございます。
メロスと申します。
今回はフュリエたちと協力し、変異体をラ・ル・カーナ橋頭堡まで誘き寄せるという任務になります。


■戦場
憤怒と嘆きの荒野になります。
対峙した変異体を誘き寄せながら移動し、ラ・ル・カーナ橋頭堡まで移動する事になります。
荒野の方は見通しは良いですが、この行程は最短ルートを通ろうとすると地割れが出来ている場所が何ヶ所か存在しています。
場所によっては移動や戦闘に不利な修正が発生する可能性があります。

■変異巨獣
全部で3頭。
翼竜のような外見ですが、所々に羽が中途半端に生えています。
また頭部が象になっています。
頭部から雷を放って遠2の神秘攻撃を行う他、鼻を振り回す事で近距離域にいる敵を薙ぎ払う物理攻撃を行えるようです。
機敏で飛行が可能。
大型で耐久力はありそうですが、1頭1頭の攻撃の方はそれほど強力ではなさそうです。
ただ、雷には相手を痺れさせる効果があるようです。

■フュリエたち
全員で8人。
4人が弓を、4人が杖を装備しています。
戦力的にはアークのリベリスタに大きく劣りますが、フィアキィたちと共に懸命に戦いに加わります。
耐久力には劣りますがある程度機敏で、弓の者たちは物理神秘で同くらいの遠距離攻撃が、杖の者たちはフィアキィたちの力を借りて神秘による遠距離攻撃が可能です。
変異巨獣たちに怯えてはいるものの、リベリスタたちから指示を受ければ全力でそれを果たそうとします。
また、特に指示等を出さずともリベリスタたちと共に行動します。


●重要な備考
『<世界を飲み干す者>』はその全てのシナリオの状況により決戦シナリオの成否に影響を与えます。
決戦シナリオとは<世界を飲み干す者>のタグを持つイベントシナリオを指します。
予め御了承の上、御参加下さるようにお願いします。

変異体たちを橋頭堡まで誘き寄せられれば、依頼成功となります。
それでは、興味を持って頂けましたら。
宜しくお願いします。

参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
マグメイガス
二階堂 杏子(BNE000447)
覇界闘士
鈴宮・慧架(BNE000666)
覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
覇界闘士
宮部乃宮 火車(BNE001845)
ホーリーメイガス
翡翠 あひる(BNE002166)
デュランダル
羽柴 壱也(BNE002639)
ダークナイト
アルトリア・ロード・バルトロメイ(BNE003425)


●皆と共に
「橋頭堡を用いた殲滅作戦か。理にかなっているな」
(……とはいえ、厄介な敵であることは変わりあるまい)
「手早く任務を果たし、次に向かいたいところであるな」
 今回の作戦について、アルトリア・ロード・バルトロメイ(BNE003425)は冷静に状況を分析した。
「久しぶりのラ・ル・カーナでの仕事がこれとは……我ながら随分と無茶をしたものですわ」
『白月抱き微睡む白猫』二階堂 杏子(BNE000447)はそう言ってから辺りを、崩壊しつつあるラ・ル・カーナを見渡しながら……ですが、と。呟いた。
「一度関わった以上、放ってもおけませんものね」
 この世界を守る事、それが自分達の世界を守る事にもなる。
「――無茶でも何でも、やり通して見せますわ」
 静かに……誓うように、口にする。
(フュリエたちが勇気をもって立ち上がってくれたのは嬉しい)
「んじゃま、でっかい象さんの牽引作業、やってみますか」
『覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)は仲間たちに呼び掛けた。
 世界を救うっていうのは、悪い気分じゃない。
「まずは露払いだ」
 そう言えば、『すもーる くらっしゃー』羽柴 壱也(BNE002639)が頷いてみせる。
「誘導する大変な仕事だけどきっちりやらないとね」
 それが皆の為になる。
「牽引作戦かぁ……」
(初めての部類だけど、うまくやれるかな?)
 少し不安げに『ガントレット』設楽 悠里(BNE001610)が呟いた時だった。
(めんどくせぇ)
「良いじゃねーか全部潰そうぜ?」
『消せない炎』宮部乃宮 火車(BNE001845)がごく当然という風に口にする。
(囮は喜んでやってやるし、誘導もまぁ良いだろ)
だけどよぉ?
「誘い込む為に気を引くっつぅ攻撃で、うっかりぶっ潰しても良いんだよなぁ?」
 そんな言葉に、少し吹き出しそうになって。
「うん、きっと出来る」
(頼りになる仲間も一緒だしね)
「心強い仲間もいるから大丈夫!」
 悠里の想いを代弁するように、壱也が元気よく口にして。
「便りにしてるよ、みんな!」
 青年はそう、仲間たちに微笑む。
「よし、行くよ!」
 壱也の言葉に『みにくいあひるのこ』翡翠 あひる(BNE002166)も大きく頷いて見せた。
(心強い仲間達と一緒に来たから、この場は必ず、なんとかなる……!)
「あひるもサポートしていくからねっ」
(フュリエ達にも、傷一つ付けさせないんだから……!)
「あひるたちは、ぜったいにぜったいに、負けないよ……っ!」
 そう言って、少女はぎゅっとこぶしを握りしめた。

●目指すべきもの
 誰も重傷を負い倒れずに勝利する。
(これは難しい事だけど、一番大切で大事で良い事)
「私の役割を果たしていこう」
『大雪崩霧姫』鈴宮・慧架(BNE000666)は小さく呟くと、緊張した様子のフュリエたちに声を掛けた。
 今回の彼女の役割は後衛である。
 回復役の護衛もそうだが、場合によってはフュリエたちも庇うべきなのではと彼女は考えていた。
「大丈夫、私たちがついてます。私は絶対に貴方達を守ってみせるから一緒に頑張りましょう」
 勇気づけるように、怯えた様子の子には微笑んで優しく頭を撫でれば、彼女たちは真剣な表情で頷いて見せた。
「あひるの後ろに居てね。必ず守ってみせるから……!」
 緊張を少しでもほぐせるようにと、あひるも柔らかな空気をひろがらせながらフュリエたちに話しかける。
(皆を癒していくのが、あひるのお仕事)
 フュリエ達の事も、仲間だと思ってるから。
「……絶対に、一人も欠けさせない」
「一緒に戦おう、がんばろうね!」
 壱也もフュリエたちに声を掛けた後、回復のできる者がいるのか尋ねてみた。
 もし危なくなったら、自分たちでも回復できるようであればしてねとお願いすれば、杖を持った4人が不安げに……それでも確りと頷いてみせる。

 やがて一行の目に空を飛ぶ異形の姿が映り、耳に不気味な鳴き声が飛び込んできた。
「どうせ潰すなら今潰しても良いんだよなぁ!」
 そんな火車の言葉に続くように。
「誘導させると言っても別に倒してしまっても構わないでしょう?」
「別に、倒してしまっても構わんのだろう?」
 慧架とアルトリアが、重ねるかのように言葉を紡ぐ。
 そんな仲間たちに、何か嬉しさのようなものを感じながら。
 夏栖斗は元気に宣言した。
「んじゃま、ミッションスタート!」

●巨獣との対峙
 身体の内の漆黒を解放したアルトリアは、それらを無形の武具として身に纏った。
 悠里は気を操り、柔軟性を保ったまま肉体を硬化させる。
 慧架は攻防自在の流水の如き構えを取り、杏子は複数の魔方陣を展開させ自身の魔力を爆発的に増大させた。
「――さぁ、行きましょうか」
 杏子の言葉に頷いて、あひるはフュリエたちを含めた全員に翼の加護を施した。
 フュリエたちに低空飛行をするようにとお願いした彼女は、そのまま後衛に位置を取る。
 夏栖斗から後衛の支援に回って欲しいと言われたフュリエたちは、言われた通りに後方に位置を取り戦闘準備を整えた。
 変異巨獣と、リベリスタと、フュリエたち。
 両者の距離は近付き、互いを射程に捉えた時点で巨獣達が先手を取った。
 咆哮と共に放たれた雷が、前衛たちを打ち据える。
 巨獣達の攻撃はさほど強力ではないものの、高い精度を持っていた。
 悠里が機敏な動きで直撃を回避したものの、夏栖斗と火車の2人は放たれた雷撃の効果を完全に受ける事となったのである。
 威力の方は然程でもなかったが、それによって2人の体は麻痺し動きも鈍らされた。
 もっとも、その攻撃については事前に推測済みである。
 直撃も、破壊力を計るという点においては有効だった。
 少なくともフュリエたちが一撃で倒されるような事はないだろう。
 夏栖斗はそう判断する。
 続いて動いたアルトリアが生命力を暗黒の瘴気へと変え、巨獣たちへと解き放った。
 精度の高いその攻撃は2体を完全に捉えたものの、1体は機敏な動きで直撃を回避する。
 悠里も後退しつつ鋭い蹴りによって発生させたカマイタチを、対峙していた一体へと放った。
 鼻を狙ったその攻撃を、巨獣は回避しようとしたものの完全には避け切れずに負傷する。
 後衛に位置する慧架も風を切るような蹴りでカマイタチを生みだした。
 連続で十字に蹴りを放ち、作りだした疾風の刃を巨獣の一体へと叩きつける。
 攻撃は集中させているようなので、もっとも負傷が蓄積されているらしき巨獣を狙って。
 杏子も他の後衛達と同じように低く飛びながら、展開した魔方陣によって作り出した魔力弾を同じ対象へと発射した。
 マジックミサイルは目標を捉えはしたものの、巨獣は機敏な動きで直撃を回避する。
「ちっ……このままじゃ当たらないか……」
 このまま放つべきか、充分に狙いを定めるべきか。
 考えながらも杏子は味方の動きに、自身の位置に注意を払う。
「さぁ~あ ココから先は行き止まりだ 行きたきゃ解るな?」
 麻痺させられ呂律の回らない口を、それでも無理矢理に動かして。
 挑発するように火車は、目の前の巨獣を嘲るように口にした。
 一方で移動し巨獣の一体へと距離を詰めた壱也は、自身の武器にオーラを籠めながら大きく振りかぶる。
「わたしが来たからには百人力だよ設楽くん」
 注ぎ込んだオーラを雷へと変換し、渾身の一撃を彼女は巨獣へと叩き込んだ。
「倒せるんなら倒しちゃおう!」
 もちろん無理をする気はない。
 あくまで倒せたら、である。
 決して侮れない敵であることは、今の攻撃だけで充分に理解できた。
 あひるは前衛たちの様子を見て、すぐに詠唱によって高位存在の力を具現化し仲間たちを癒しの息吹で包み込む。
 彼女と共に在るフュリエたちも引き絞られた弓から矢を放ち、或いは杖を振るいフィアキィたちの力を借りて、炎や氷を巨獣達へと向けた。
 その攻撃の多くを、巨獣は不気味な外見に似合わぬ機敏さで回避する。
 攻撃力は高くなくとも、異常で動きを鈍らせ、機敏な動きで直撃を回避する。
 そして、高い耐久力も持っているようだ。
 危険ではなくとも、厄介な敵であることは間違いなかった。
 それに対する為に、前衛たちは巨獣へと距離を詰めた。

●巧妙なる脅威
 できるだけ薙ぎ払いを誘発させるように離れ過ぎない位置を維持する。
 それが夏栖斗の作戦だった。
 もちろんそれも容易ではない。
 彼が懸念した通り、変異巨獣の長い鼻を使った攻撃は相手を大きく弾き飛ばすだけの威力を持っていた。
 弾き飛ばされれば他の巨獣が雷撃を放ってくる。
 それでも、雷に比べれば威力があるせいか精度に劣るようだったのが幸いした。
 直撃を受ける可能性が低くなったのである。
 敵が突進して長い鼻を振るえる距離を維持するように後退しつつ、夏栖斗は超高速の蹴撃で巨獣を貫く。
 可能であれば複数を、悠里が対峙し壱也も攻撃する巨獣を狙えるように。
 時に待機も行い皆の状況を確認する。
 とにかく、前衛たちで何としてもこの巨獣たちを押さえねばならなかった。
 もし後衛が狙われれば、あひるが動きを封じられるような事になれば、傷の治癒も消耗した力の回復も、全てが封じられてしまう形になる。
 気を引くように動いたり、大声を出したりしながら彼は巨獣達の動きに意識を集中した。
 絶対に後衛に向かわせない。
 強い想いは火車も同じである。
「先ぁずはテメェかぁあ!」
 最も傷付いた一体、つまりは悠里と対峙する事の多い巨獣を狙って、彼は炎に包まれた拳を振りかぶった。
 放たれた拳を、巨獣は機敏な動きで回避する。
 それでも火車は気にする様子もなく拳を炎に包み、幾度となく揮い続けた。
 まるで、消えぬ炎をずっとその手に抱こうとするかのように。
 オレには業炎撃(コレ)しかねぇんだ。
「何処でも良いぜ? 殴る場所なんざよ!」
 後衛に愉快な生き物が突っ込まなければ結果よし。
 攻撃を避けられ、振るわれた鼻の直撃を受け、体勢を崩したり吹き飛ばされても、 そこから無理矢理な動きで拳を巨獣に向かって振るう。
 不器用で目茶苦茶な攻撃はしかし、巨獣を引き付けるという点においては大きな効果を発揮していた。
「カズト! 悠里! 上手い事やれよ!」
 そうやって戦いながらも本来の目的は忘れずに、火車は徐々に橋頭堡の方角へと移動していく。
 壱也は後衛たちが近付き過ぎないように注意しつつ、雷を籠めた武器を振るい続けた。
 3人のうちの誰かが耐え切れなくなった場合の交代を考えてはいたものの、今のところはその必要はなさそうである。
 あひるは前衛たちの様子を確認しながら癒しの力を振るい続けていた。
 誰かが雷を受け、動きを封じられる可能性は高かったのである。
 消耗も激しかったが、それによって前衛たちは何とか巨獣達を押さえる事に成功していた。
 回復を行いながら、彼女は援護射撃を行うフュリエたちと共にじりじりと後退していく。
 攻撃を行う巨獣たちを冷静に観察しながら、アルトリアは自身の選ぶべき行動を選択していた。
 暗黒瘴気による異常の効果を受けるようであれば、そしてそれが効果を発揮し続けているのであれば、別の攻撃を用いて更に敵を弱体化させるべきなのだ。
 もちろん引き寄せが任務である以上、下がりつつ、である。
 変異巨獣たちの異常からの回復は早かったが、全く効果がないという訳ではなさそうだった。
 その少ない機会を窺いながら彼女は瘴気を放ち、時に黒のオーラを収束させ攻撃を行ってゆく。
 前衛たちに比べ、後衛達の方は順調だった。
 後衛たちが距離を取れない場合等を懸念していた悠里は、その点に関しては安堵していた。
 もっとも、前衛たちに余裕はない。
 巨獣にダメージは与えられていたし、逆に自分たちが受けるダメージは癒しによってほぼ回復されてはいたが……一歩間違えれば突破されるような、綱渡りのような戦いなのだ。
 後衛たちが狙われ難いように、視界を防ぐように位置を取ってはいる。
 だが……巨獣達は後衛からの攻撃を受けた結果、そちらにも意識を向け始めていた。

●それぞれの、果たすべきもの
 変異巨獣達が新たに起こした行動は単純なものだった。
 上空へと舞いあがり、雷撃の射程を活かして後衛たちを攻撃しようとしたのである。
 それを妨害する為に、前衛たちは巨獣と対峙するように上昇した。
 巨獣達は苛立たし気に咆哮をあげ、長い鼻を振り回す。
 立ちはだかりはしたものの、前衛たちにとってもこの戦いは厳しかった。
 必然的に4人は、あひるの放つ癒しの力の射程外へと飛び出す形になったのである。
 しかも、そこまでして妨害を行いながらも巨獣達は隙あらば雷撃で後衛たちを狙おうとしてきたのだ。
 夏栖斗は薙ぎ払いを誘発させ、悠里は無理矢理に巨獣の鼻に掴みかかり妨害したが、それでも雷撃は後衛たちに向かって放たれた。
 その雷撃を、慧架や杏子が身を盾として防ぐ。
 2人はフュリエたちにも注意を払い、連続で直撃しそうと判断すれば手分けしてあひるやフュリエたちを庇った。
「狙う相手を間違えていますよ……!」
 攻撃を受けながらも、不敵に……杏子は上空の巨獣へと言い放つ。
(私が壁では頼りないですけれど無いよりはっ……!)
 長射程の攻撃を持たない故に反撃は出来なかったが、だからこそ庇うことに専念できた。
 フュリエたちも防御に専念する。
 そして庇ってくれる皆に報いるように、あひるは全力で癒しの力を周囲へと拡げていく。
 だが、その力は上空で戦う前衛たちには届かなかった。
 高い再生能力を持つ壱也はともかく、残りの3人は負傷を徐々に蓄積させていく。
 後衛を庇う事も考慮していたアルトリアは、前衛と交代すべく翼を羽ばたかせた。
 それでも、壱也と合わせて2人。
 1人が不足してしまう計算だったが……一人だけ、傷付くことが必ずしも不利とは限らない者がいた。
「安心しろよぉ? 最後まで付き合ってやっからよぉ!」
 直撃を何度も受けながら無茶な戦いぶりを通し続けた火車は、限界に近付きつつも……調子を上げ始める。
 気を練ることで更に戦闘能力を向上させた火車は、それまでとは明らかに異なる動きで戦い始めた。
 薙ぎ払いを避け、受けようとも直撃は回避し、炎を纏った拳を巨獣へと叩き込む。
 彼と、壱也とアルトリアにブロックを任せ、夏栖斗と悠里は後退した。
「巨獣は前から居たわけだが……やはりイクスィスの影響か、以前より凶暴だな」
 油断は禁物だ。
 アルトリアは慎重に、巨獣の一体と対峙する。
 その間も時折、隙を狙うようにして後衛たちを雷撃が襲ったが、慧架と杏子によってそれらは危機を生みださなかった。
 慧架は巨獣達が接近してきた場合にも備えたが、幸いそれは杞憂に終わる。
 あひるの癒しを受けた2人が前衛に加わった事で、守りは更に硬くなった。
 加えてダメージの蓄積によって、ついに巨獣の一体が力尽きる。
 だが、戦い続けた火車も負傷によって運命の加護を必要とする程に傷付く事になった。
「おっまたせ! さあ、がんばろー!」
 対峙していた巨獣が倒れた壱也が、火車を援護するように位置につく。
 もっとも、この時点でリスクが大きいと多くの者が判断していた。
 一行は作戦を誘き寄せ重視にシフトする。
 方角を調整しながら壱也は戦い続け、あひるは回復を行いつつ消耗した仲間の、何より自身の力を、確認しつつ補充した。
 間もなく、後衛たちは彼方に橋頭堡の姿を確認する。
 戦いながら随分と移動していたという事だろう。
 そのまま一行は油断なく距離を詰め……無事、ラ・ル・カーナ橋頭堡へと到着した。

●そして、決戦へ
「ここは終わりましたが……まだ全部は終わってませんね……」
 服の汚れを静かに払い、溜息を一つ零して……杏子が呟く。
 ひとつの任務は無事に完了した。
 だが、それは終わりを意味しない。
 それでも、幾つもの積み重ねが……この世界を守る為の力になるのだ。
(崩壊、食い止めないと……)
 一緒に戦ってくれるフュリエ達の為に、微力だけど……力になりたい。
「あるべき姿に、戻さないとね……っ!」
 あひるの言葉に皆は、フュリエたちは、頷いた。

 リベリスタたちは、フュリエたちは……次の戦場へと、赴く。
 その先に、ラ・ル・カーナの未来を信じて。



■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
依頼の方、お疲れさまでした。
攻撃力そのものは低くとも異常や機動性で主導権を握ろうとする敵との対峙となりました。
薙ぎ払いを誘発させるのを始めとして、最も厄介な攻撃に対しての対処が確りしていたと思います。
前衛の交代も考えられていましたし、後衛、特に回復役が攻撃に巻き込まれた場合のカバー等も確りしていました。
攻撃を重視した結果として任務そのものは長引きましたが、回復も充分でした。
それぞれが充分に役割を果たし、手にした成功だと思います。

御参加ありがとうございました。
そして、纏めてになってしまいますが。
戦いに赴く皆様の、御武運お祈りいたします。