●ナントカ世界 R-type。その目が睨んだそこには最早『完全世界』の面影は無く。 理性を失い怒りに狂った大地と空に挟まれて、狂った世界樹は狂った忌み子を生み続けていた。 滅びゆく。絶望。憤怒。狂気。 それでも『最悪』を少しでも『最悪』から遠ざける為に、リベリスタとフュリエ達は『忘却の石』を手に行軍する――狂気そのものと化した世界樹エクスィスを目指して。 その果てに待つのは滅亡か、生存か。 ●Live in…… 目まぐるしく戦況は動く。 そんな中、集められたリベリスタ達の名は『囮部隊』であった。 狂った世界樹から生み出される狂化変異体達は高い戦闘力を誇り、まともに相手取るのは危険極まりない。だがその引き換えか、彼らに高い知性は無かった。 今作戦はその点を突いた内容である。 リベリスタに課せられた任務は、『囮として狂化変異体を防御に優れた橋頭堡に誘き寄せ、それを殲滅破壊する事』。全体的な作戦達成の為には欠かせない役割である。 いざ往かん、準備を整えるリベリスタ達。 その背中に、声をかける者が居た。 「よう、お前等。……豪く大変なんだってな?」 振り向いた者は誰もが目を見張る。そこに居たのは、『相模の蝮』蝮原 咬兵 (nBNE000020)その人。フィクサードでありながらリベリスタであるアークの友軍という奇異な立場の男。 「何だ? 鳩が豆鉄砲喰らった様な面ァしてよ……」 一体如何して此処に、そう訊きたいんだろう?と無頼は片手で鈍色に輝く愛銃を回しつつ咽の奥で笑う。 「先に断っておくが、俺ァ『リベリスタ』しにきたんじゃねぇ。フュリエだのバイデンだのどうでもいいし、この世界がどうなったって俺の知ったこっちゃねぇ。 だが、此処にはお前等が居る。しかも派手にドンパチやらかすときた……これ以上の説明は必要か?」 彼はアークに恩がある。命よりも大切な組長を、彼らの誇りを救われた恩が。おそらく一生かかっても返し切れぬ程の恩が。 そんな彼らの一大事を放っておける程に咬兵は冷徹な男ではなかった――尤も、素直に『手助けに来た』と言わないのが彼らしいのだが。 「往くぜ、お前等……派手にやろうじゃねぇか」 兎角、喧嘩だ。生死を賭けた闘争だ。 リベリスタは頷き、一歩――戦場へと、踏み出した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年10月07日(日)23:21 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ドンパチ上等 異常事態。壊れ逝くこの世界を表すのに、これほど的確な言葉は無いだろう。空は奇妙な色に染まり、大地は枯れ果て罅割れている。吹き抜ける風までも狂気を孕んでいる様で、『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)は思わず「うぐっ」と顔を顰めた。 「なんだ、この生理的嫌悪感は。世界その物が錯乱してしまえば、こうもなるか……!」 嫌な気配に浮かぶ汗。その隣に立った咬兵が地平線を見やりながら言う。「それでもまだ『終わり』じゃねぇんだろ?」と。 「蝮原さん、相変わらず……」 その背を見、『微睡みの眠り姫』氷雨・那雪(BNE000463)は続きを心の中で続けた。 (とっても頼もしいのは、彼の信念ゆえ、かしら……?) さて。瞳を閉ざし、那雪は脳内の集中力を飛躍的に高めてゆく。ニューロンを巡る電気信号。クリアになってゆく脳世界。狂気を、崩壊を、止めてやろう。一つずつ、地道に、やれることから。肺に酸素を満たす。 「さぁ、始めよう。最悪の未来を回避するために、な」 開け放つ紫瞳は、凛然と。 一方で、バリケードに身を隠しながら敵を待つ『雇われ遊撃少女』宮代・久嶺(BNE002940)は一つ呟いた。 「まさに世界の終わりって感じね。ここまで醜く歪むなんて」 ぶっちゃけ彼女としてはこの世界の事などどうでも良いのだが――思う。『明日は我が身かもしれないし』と。しょうがない。故に、この手を貸すべくここに来たのだ。 「蝮原さんっていう強力な助っ人もいるんだし、必ず成功させるわ!」 「期待してるぜ、宮代」 そう答えた無頼を、見。影の従者を呼び出した『獣の唄』双海 唯々(BNE002186)は尻尾の先をふわりと揺らした。 「イーちゃんも素直とは言えるヤツじゃねーですが、まむっさんも素直じゃねーですよね、ホント。まっ、イーちゃんそう言うの嫌いじゃねーですし?」 「そうかい、ありがとよ」 「へいどーも」 なんて答える常の口調。彼女自身もこの世界がどうのこうのは知ったこっちゃない。だが、『頼む、任せる』なんて言われたら……オチオチ寝てる訳にもいかねーのですよ。 「アイよ。んじゃ、派手に往くとしようじゃねーですか!」 徐々に、だが確実に高まってゆく緊張。戦闘前の一時。遥か彼方から鬨の声。それから、重い足音だ。寄って来る。 「何気に、一緒に戦闘するんは初めてなんよな……」 それらを、耳で、目で、肌で感じながら。『レッドシグナル』依代 椿(BNE000728)は煙草に火を点け紫煙を吐き出す。煙の行方は、彼女が召喚した鬼人が黒い眼窩で追っていた。 さて、かの相模の蝮と共闘。彼に己が職業を間違われていた事だし、ここはキチンと自分の本業を確認して貰わねば。 「うん、うちは普通の女子大生なインヤンマスターやということをやね!!」 「クリミナルスタアにゃならねぇのか?」 「ならへんよ!」 冗句だ、そう口角を擡げた彼の視界の端。「うーす、マムシのおっさん」と片手で挨拶をしたのは『ザミエルの弾丸』坂本 瀬恋(BNE002749)。 「態々異世界まで出張とはご苦労さんだねぇ。ま、アタシも人のこと言えねえけどな? ここにいる理由は、『アンタと一緒』さ」 そこまで言や伝わんだろ?そんな言葉。嗚呼その通りだ。ならば無駄な言葉など不要。 「ああ、喧嘩だ。コイツは喧嘩だ」 手にしっくりとした重みを与える金銃。怪しい輝きを放つオーバーナイト・ミリオネアの銃身に『糾える縄』禍原 福松(BNE003517)の横顔が写る。 「喧嘩ならオレ達クリミナルスタアの土俵じゃないか、えぇ? そうだろう? 坂本、宮代、蝮原」 「あぁ、違いねぇ」 「派手なのは嫌いじゃないわ」 「しかし半分近くが『お仲間』とはな」 銃を。拳を。目には闘志。その先には狂った世界の狂った忌み子。侵攻してくる。それらを真正面から見澄まして。 「奴等に、オレ達の流儀を教えてやろうぜ」 「骨の髄までね。――んじゃま、大掃除と行きますか」 手の中で回した『俄か成金』。迫り出す砲身を鈍く輝かせる『最悪な災厄』。 轟。と、大気が震えた。 ●血を血で洗わん 「頑張りましょう。支援、しますっ!」 七布施・三千(BNE000346)の声と共にリベリスタへ授けられたのは翼の加護。Alea jacta est――賽は投げられた。緊張を押し殺した瞳で見遣る先で仲間達が次々と飛び立って行く。戦場へ。戦いに向けて。 「урааааа!」 銃剣один/дваを構え、ベルカの軍靴が地面を蹴る。張り上げるは鬨。牙を剥き唾液を散らし駆けて来る歪なバイデン達に投げつけるのはフラッシュバン。閃光。強音。数体が怯む。怯まなかった者の進行は――ベルカ、瀬恋、咬兵の三人が立ち塞がって止めた。 不気味で無意味な咆哮。変異バイデン達にとって、目の前に立ち塞がる事は破壊するには十分以上な理由。襲い掛かる。再度の咆哮。気の狂った音。撃ち出される骨が戦場を飛び行き、那雪の隠れるバリケードに突き刺さった。されど彼女は一つも動じず、見遣る先には不気味な化け物。裂けた腹。そこからボトボトと垂れ流される気味の悪い内臓達。 「流石に……醜悪、だな。狂った世界樹に狂った忌み子……か。ならば、一つ残さずに葬ろうか」 手に持つ氷晶の刃、刹華氷月の如く脳は冷静。翳す掌から放たれた幾つもの気糸と――福松が持つオーバーナイト・ミリオネアが吐き出した幾つもの弾丸がワタボトと内臓達を撃ち抜いた。飛び散る。赤色が。寄生虫が。気色の悪い相手だ。 飛び来る寄生虫達を蜘蛛手で一薙ぎ、唯々はワタボトの前に立つ。 「御機嫌よう。世界に飲み込まれ、狂い堕ちる事しか出来なかった哀れなモノども。 イーちゃん達があんた達に終焉を届けに来てやったですよ?」 言葉の同時に踏む込むステップ。蜘蛛の手を思わせる八刃が理不尽に蠢き、彼女の舞踏に併せてワタボトと内臓と寄生虫を切り刻む。 「さーて……」 同じくワタボトのブロッカーである椿は、飛び掛ってくる内臓の欠片やら寄生虫やらを広げた紫扇鏡で防ぎつつラヴ&ピースメーカーの銃口をワタボトへと向けた。 「覚悟しぃや?」 放つは呪い。黒い軌跡を描く弾丸がワダボトの顔面に突き刺さった。奇怪な悲鳴。 出だしは順調。だが、ただそこに突っ立っているだけの化け物共ではない。地面を踏み締める脚。瞬間、巨体が暴力的な速度で走り出した! 「!」 ブロックしていた者達を薙ぎ払い、バリケードを破壊し、力のままに。巨体に見合う凶悪な威力。だがその侵攻は直後に終わる事となる。ワタボトの体勢がガクンと崩れた片足が落とし穴に嵌まり込み、仕掛けられた槍が貫く。それは予め落とし穴を背に戦いを繰り広げていたリベリスタ達の作戦勝ちだろう。 「作戦失敗だけは避けたいんでな……受けた仕事はきっちりこなす、それが暗黒街のルールだ」 舌に乗せるは甘い飴とチンケな意地。福松は別にドラマを求めてはいない。それでも啖呵位は切らせろ、と。握り締める堅い拳。後は実に簡単だ――『真っ直ぐ往って、ぶっ飛ばす』。 「うへー、何時までも見たくねー面してるですね、ホント」 それボッシュートだと唯々が迫る。振り被る。刃の先に弾ける殺意をうんと込めて。 「――だから、さっさとくたばれクソ野郎」 ドカン。爆発。くぐもった悲鳴。そしてワタボトは落とし穴から足を出す事に成功するが、次の瞬間に再度動きが凍り付いた。 「誰の許可もろて動いとるんや?」 銃口から伸びた呪縛の鎖。椿の橙睨が敵を見澄ます。絡みつく呪印は呪いによって力を増し、捕らえた獲物を逃がさない。そしてリロード。込める弾は百闇。引き金を引けば、無数の烏が鳥葬にせんとワタボトへ襲い掛かった。 「が、っぐ」 バイデンの突進がベルカの体を吹き飛ばす。だが地面にぶち当たる前に体を回転させて受身を取り、牽制のカースブリッド。普段は後衛にいる彼女であるが、今回ばかりはそうも言っていられない。防御、攻撃の教義は仲間に授けた。声を張って戦闘を指揮しつつ、バイデンの侵攻を食い止める。牙を剥いたそれが猛然と駆けて来る。が、その脚に仕掛けられたトラバサミが喰らい付いた。 「真正面から殴り合えると思ったか? 残念な事に、貴様らに比べれば私は喧嘩が弱いのでな」 これが戦争、これも戦争。 生々しい暴力の真っ只中、されど清らかに吹き抜けたのは三千が顕した聖神の慈愛。それはリベリスタの傷を癒し、立ち上がる力を与える。戦場で棒立ちでいるつもりはない、集中を切らさずに戦場を見渡す。その瞬間。ワタボトの吐き出した澱んだ血反吐が一つの塹壕に直撃する。三千は息を呑んだ。あそこには、那雪が。 「ぐ、っ……」 運命の寵愛が無ければドロドロに溶けていただろう。血の溜まった塹壕から抜け出した那雪は酷く咳き込む。赤い視界。その端。バイデンが射出した骨の一つが――拙い、回避を―― 斯くして、骨が突き刺さったのは。 「一撃くらいは、防いでみせます……っ」 那雪の前に立ちはだかった三千の、肩。深々と。痛みに顔を顰める。だが、誰にだって役割はある筈だ。自分の役目は仲間を支える事だ。傷付く事など、怖くはない。骨を引き抜くと同時に唱えた祝詞でありったけの仲間を癒した。 「すまない、ありがとう」 「いえ、お気になさらず……!」 痛みが消えてゆく。そんな中、那雪は腹の裂けた化け物を見澄まして。 「お前は、苦しくないのか? それとも、それすら感じないのだろうか」 垣間見るは深淵。狂いきって歪みきったそれ。世界の崩壊の中、只々狂いきっていた。嗚呼。忌み子なんて、嫌な響きだ。放つ無数の気糸がワタボトと内臓を穿つ。 一筋縄ではいかぬ相手。ワタボトは決して弱くはい。それでも運命に愛された者達が上回っていた。その『寵愛』を代償に立ち上がりながら、喰らい付く。 「そのキモイ顔をフッ飛ばしてやるのですよ」 避けれるものは避けてナンボ。踏み潰さんと振り下ろされたワタボトの脚をハイバランサーと面接着の技術で駆け上り、唯々が仕掛ける死の爆弾が炸裂する。 「まだまだぁ!」 血みどろになっても椿はテンションを上げて呪印を放ち、ワタボトの動きを縫い付ける。そこへ襲い掛かるのは、福松の堅い拳である。 「危なっ……!」 忌み子達の猛攻にまた一つのバリケードが破壊され、そこに隠れて射撃を行っていたいた久嶺は間一髪でバリケードと運命を共にする事は回避した。そこへ。トラバサミを振り解いたバイデンが襲い掛かってくる。 「ま、ごちゃごちゃ言っても仕方ないわね!」 翼を翻して飛び立つ。それをバイデンが追う。だがそれは久嶺の作戦。ブービーとラップが作動し、迸る閃光にバイデンの身動きが止まった。息を吐く。その近く、バイデンの一体を罠に嵌めた瀬恋が飛び下がった。ワタボトを見据えたまま、言う。 「マムシのオッサン。宮代のジョーチャン。アンタらも『アレ』使えたよな?」 その言葉を聞いた途端、久嶺の口角がニッと吊り上った。施条銃を構え直す。 「ふふん、当たり前よ、瀬恋。アタシの代名詞でもあるんだから! 蝮原さんも、いけるわよね?」 「あぁ、さっきから使いまくって良い感じに『溜まってる』ぜ」 三人の無頼がワタボトを見遣る。不適に笑んで。教えてやる、自分達に楯突いたらどうなるかを。 「合わせるわ! 覚悟なさい!」 「オーケー。一気にキメてやろうぜ」 「抜かるんじゃねぇぞ?」 構える得物。狙う獲物。 そして同時に放つのは―― 「「「ギルティドライブ!!」」」 愚か者を断罪する、脅威の魔弾。 痛みの分だけ威力の増した三つの軌跡が戦場を翔ける。圧倒的暴力、絶対的殺意。放たれた魔弾は合わさり、恐るべき奔流となってワタボトの真正面から巨大な風穴をぶち開けた。死を以て償わされる絶対的有罪。頽れるワタボト。それにもし意識があったらこう思っただろう、『彼らに楯突いた瞬間が運の尽きだった』と。 斯くして残りは、バイデン達のみ。 一番厄介な敵を倒したとはいえ、残りも十分厄介だ。 「……気合入れていくとしようや」 拳を搗ち合わせ、瀬恋は誇りを胸に見得を切る。振り下ろされた重撃を真正面から拳で受け止め、睨め付けた。 「悪いがここは通行止めって奴だ」 ぶっ潰す。そのまま繰り出すのは見境の無い暴力、湧き上る激情のままに振るう拳。ぶち殺す。咆哮。 「気ィ抜くんじゃねぇぞ、お前等」 「当然だ」 瀬恋と同じ技を振るいつつの咬兵に答えたのは福松。高速の射撃がワタボトの遺した内臓達を撃ち抜いてゆく。 「うっへ、グロいわね……近づくんじゃないわよ!」 飛び掛ってきた残りの内臓も、久嶺に張り付く事無く空中で撃ち抜かれ四散した。地面にぶちまけられた寄生虫は、椿の一歩が踏み潰す。 「さぁ、呪って欲しい奴から前出ぇや!」 エゴと秩序の作り手から放たれる黒い呪詛。そしてバイデンが呪いに蝕まれたその瞬間、ベルカがフラッシュバンを投げつける。動きを拘束する。 「呪われた目と耳にはたいそう効くだろう?」 「でもな、まだ序の口やで?」 向ける銃口二つ。呪い。麻痺。ショック。呪縛。不吉。etc。さぁ好きな物を選ぶがいい。最も、全部選んでも良いのだけれど。 「あとはぶっ飛ばしていくだけですよ」 飛び来る骨の弾幕の最中、踏み込む唯々は隙を逃さない。また一つの死が咲き乱れ、バイデンが緩やかに崩れる。 続く戦い。だが、リベリスタ達を強力に鼓舞するのは三千のクロスジハードと聖神の息吹、皆の火力を常に最高水準に保つのは那雪のインスタントチャージである。 戦える。五体も満足。武器もある。前に進める。まだ、戦える。 「未来は諦めなければ変わるものだ。……アークにきて、私はそう知ったのだから」 故に眠り姫は瞳を開け、前を見るのだ。倒れない。倒れさせない。諦めない。絶対に。 「……全く、私らしくないけれど……ね」 戦場音楽の中、彼女の独り言を聞いた者はいない。 供給する精神力。その力でリロードを行い、久嶺は施条銃のスコープを覗き込む。牙を剥き、凶器の腕を振り回す変わり果てたバイデンの姿。 「貴方達、直情馬鹿で嫌いじゃないなかったんだけどね こんな姿で戦うなんて不本意でしょ? アタシが助けてあげる、動くんじゃないわよ!」 せめて戦士に安らかな眠りを。弔いの弾丸。胸に風穴を開けたバイデンが、血潮を撒き散らして倒れる。沈黙する。永遠に。 「アタシの名前は、宮代久嶺――冥土の土産によぉーく覚えておきなさい!」 立ち上る硝煙。 その向こうでは別のバイデンが頭部を撃ち抜かれ倒れた。福松は金銃の銃口をフッと吹く。ドラマを殺す必殺の弾丸。『ドラマは求めていない』と豪語する彼にはある種相応しい技であり――ドラマを求める少年の無自覚の心底までを慮れば、ある種の皮肉だった。 残る一体のバイデン。咬兵のギルティドライブを喰らい地面を転がる。もげた腕。止め処なく垂らす血。起き上がろうとしたそこを椿の呪印に縛られても尚、狂った様に叫び襲い掛からんとしている。その眉間。零の距離で、瀬恋は静かに最悪な災厄の銃口を差し向ける。呟いた。「終わりだ」と。 銃声。 ●一寸先は混沌 斯くして勝利はリベリスタ達の手中に収まった。だが、『戦い』はまだ、終わりが見えず。彼方の狂樹の不穏な気配が皆の背筋を舐め上げた。それでも、一先ずは安堵。誰も倒れず勝利した事を喜ぼう。 ふーっと息を吐いた椿は咬兵に問うてみる。 「生死を賭けたこの喧嘩、蝮さん的にはどうやった?」 「……ま、上出来だな。ご苦労さん、流石『紅椿』と言った戦いぶりだったぜ」 「ちょ、せやからうちは普通の女子大生やよ?」 「普通ねぇ……」 意味深な薄笑み。「どういうことなん!?」と言及しても「さぁな」と濁される。取り敢えず、素直なお礼は言わんとこ、と心で思う椿であった。 一方、戦場にて潰れ死んでいる寄生虫を見、ベルカは顔を蒼くする。 「……しかし、しばらく麺類は喰えないかもしれん。うっぷ」 「だ、大丈夫ですか……?」 案じた三千は背中を摩りつ回復の呪文を。 そんなリベリスタ達を、一望し。 「お前等、まだ戦いは残ってんだろ?」 崩れたバリケードに腰掛け、吹かす葉巻の紫煙と共に咬兵は言う。微かに片方の口角を持ち上げて。 「往って来な」 負けんじゃねぇぞ。その声に頷き、リベリスタ達は歩き出す――其々の戦地へと。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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