●鋼鉄の翼が空に舞う 静岡県の空を、小型の軽飛行機が飛んでいた。 青く晴れ渡った空。絶好のフライト日和だ。 目的は航空写真の撮影だ。 パイロットも客も、この後待ち受けている運命など知る由もない。 突然、日がかげるのをパイロットは感じた。 上空に何かいる……そう思った瞬間、軽飛行機の周囲は鋼鉄の隼に囲まれていた。 隼といっても、そのサイズはおそらく人間と同じくらいはある。それが5体。 「な……なんなんだ?」 影を作っているのは、軽飛行機よりも巨大なアホウドリであった。左右には鋼のワシが飛んでいる。 軽飛行機はすでに、鳥型のロボットたちによって囲まれているのだ。 「弱き者に、空を飛ぶ資格はない……」 金属のこすれるような声をアホウドリが発する。 声に応じるかのように、周囲の隼たちが変形する。それは翼の生えた人の姿。 流線型のフォルムをした鋼の鳥人たちは、両腕にライフルを装備していた。 旋回しようとする軽飛行機へと銃口が向けられる。 ライフルが火を噴く。 青い空で爆発が起こった。 大型の駐車場に、一台の車が停まっていた。 助手席から双眼鏡で上空を見上げているのは、眼鏡をかけた1人の青年。 「いやあ、やっぱり変形するのはロマンだよね」 「ああ、そうですな。けど、感想は博士の前でゆっくり語ってくださいよ。さっさと撤収しないと、どこから敵が来るかわからないですからね」 青年の言葉を冷たくあしらったのは、運転席にいる強面の男だ。 「そうだね。今回の実験は無事に成功だ。しっかり報告しないと」 小型飛行機の爆発が収まった頃、車は駐車場から走り出していた。 ●ブリーフィング アークのブリーフィングルームでリベリスタたちは万華鏡が予測した未来の映像を見ていた。 「目的は不明ですが、飛行するエリューション・ゴーレムの集団が小型飛行機を襲います」 そう語るのはフォーチュナの『ファントム・オブ・アーク』塀無虹乃(nBNE000222)だ。 「デザインとしては鳥型のロボットのように見えますが、すべてゴーレムです。詳しい理屈はよくわかりませんが、航空力学的に見て飛べるはずがないという話でした」 そもそも、動いていること自体が怪しいものだ。 「幸いなことに、エリューションが襲撃を行うのは三高平市近郊の空のようです。皆さんには、急いで迎撃に向かっていただきます」 移動手段として全員が乗れるヘリをアーク側で1台用意したそうだ。 パイロットはいちおうリベリスタだ。戦力にはなるほどの実力はないので基本的に敵の射程外に待機し、要請があれば『翼の加護』をかけて空中戦できるようにしてくれる。 「それから、皆さんやヘリが落下した場合についても、飛行できるリベリスタが救援のために戦場の下方に待機しています」 あくまでバックアップなので戦闘に参加することはないし、さしたる実力がないのはヘリのパイロットと同様である。 とはいえ戦闘不能になって落下したとしても死ぬことはないし、仮にヘリが落下するようなことになっても地上への被害は彼らがどうにかするはずだ。 「敵ゴーレムは8体存在しています。巨大なアホウドリ型がどうやら中心のようですね」 分析によればアホウドリは他のゴーレムたちを輸送する能力がある。さらに、輸送スペース内に爆弾を搭載しており、それを投下してくると予測される。 他に、超音波による範囲攻撃で、付与効果を解除してくるという。 それから、隼型が5体。彼らは鳥人に変形する能力を持っているらしい。変形中は速度が下がるものの機動性は向上し、命中や回避性能は上昇すると予測される。 隼は体当たりによる攻撃と、鳥人形態でのみ使用できるライフルによる物理攻撃を行ってくる。体当たりは威力が非常に高いが、ライフルのほうが命中性能は高い。 最後にワシ型ゴーレムが2体いて、アホウドリを護衛するように飛んでいる。 口から一直線に電撃を放って攻撃してくる。また、鋭いくちばしによる攻撃は多量の出血を引き起こすことだろう。 「今回現れるゴーレムですが、以前出現したゴーレムとデザイン的に似ている部分があるということです。もしかすると、関連があるかもしれません」 どうやら地上から襲撃を観察しているフィクサードがいるらしい。 ゴーレムのフォルムは人工的であり、彼らがその製作にかかわっている可能性もある。 「余裕があればフィクサードたちから話を聞きたいところです。もっとも、下手にフィクサードに手出しをしてゴーレム撃破に失敗しては本末転倒ですが」 積極的に交戦する意思はなさそうなので、うまくやらないとすぐに逃げられてしまうだろう。 無理はしないでください、と虹乃は告げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:青葉桂都 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年10月09日(火)23:15 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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●大空を行く 三高平市を飛び立ったヘリは、リベリスタたちを乗せて作戦地点まで飛んでいく。 青く高い空に、まだエリューションの姿は見えてこない。 「空から降る驚異。神はいつも天から災厄をふりまくんだね。ならば、それに抗うのが人の性であり、使命なんだろう。さ、行こうか。空へ」 よく通る低い声で、『猛る熱風』土器朋彦(BNE002029)が呟く。 「神かぁ……神は運命をかえられるのかな?」 『初めてのダークナイト』シャルロッテ・ニーチェ・アルバート(BNE003405)が首をかしげた。 とはいえ、果たして件のエリューションを生んだのは神であるものかどうか。 「何処ぞの組織か知りませんが、相変わらず趣味と実益を兼ね備えた仕事をしていますね。やり甲斐のある楽しそうな職場で羨ましい限りです」 淡々と『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)が吐き捨てる。 「その上、どんなにしょうもない失敗作を捻り出してしまっても、我々に無料で処理してもらえるんですから、願ったり叶ったりですよね」 見た目は幼い少女のように見えるモニカの言葉に応じたのは、実年齢もまだ幼い部類に入る少女だ。 「鋼鉄部隊来るの何回目だっけー? 今度は飛行部隊なんだねー。あいからず変形とかギミック大好きだよねー。そろそろ後ろの人にお話聞きたいとこだねー」 件の敵の同系らしきエリューションを何度かぶった切っている『世紀末ハルバードマスター』小崎・岬(BNE002119)は、人差し指を口元に当てて首をかしげる。 作戦空域が近づいてきた。 「どうでもよいですがアホウドリって英名だとアルバトロス、漢字で書くと信天翁になり、どれもかっこいい名前で、こう、色々とクルものがあります……!」 いろいろ小さい少女、風見七花(BNE003013)はフォーチュナが予知した敵の形状に思いをはせる。そんな感想が出るのは、将来ジャーナリストを目指しているだけあるというべきか。 窓の外の青空に思いをはせているのは、『合縁奇縁』結城竜一(BNE000210)だった。 意外と美形なその顔に浮かぶのは、格好良く決めた物憂げな表情。 (空には無限の夢がある。歴史上、人は誰しも空に夢を見てきた……) ヘリの中で竜一は立ち上がる。 「だが、俺にとっては空とは竜の住処だ! 謎の機械怪獣どもめ! 真の大空の覇者が誰なのかを教えてやる!」 彼方の空に、軽飛行機へと向かっていく影を見つけた。 勲章をかたどったアクセス・ファンタズムを握り締める。 「ヘリのパイロット! 名前は何だ?」 「はい、大地駆と言います!」 「なんでそんな飛びそうもない名前なんだ!」 「ええーっ!」 竜一は突っ込みにパイロットが目を丸くする。。 「ともかく、俺たちはチームだ! 後方支援は任せた! 翼の加護をくれ! あんたのヘリの制空権を取り戻してやる!」 パイロットが意識を集中すると、リベリスタたちの背に小さな翼が生える。 「……敵 目標に 接近中」 幼い外見をしたメイドの少女がふわりと浮き上がる。 開いたヘリの扉から、エリス・トワイニング(BNE002382)が滑るように外へ出た。 距離をとってホバリングするヘリからリベリスタたちは次々にエリューションへと向かう。 「妙な物を作るものよ」 白い髪をした、少女のような外見の『紫煙白影』四辻迷子(BNE003063)が感想を述べる。 そういうのは大抵六道あたりの関係者と誰か言っていたが、迷子にはよくわからなかった。 「まぁ……そんな事はどうでもよいか。わしは遊べればそれでいい」 記憶喪失の迷子にとって、大切なのは楽しむことだけだ。バールのように巨大な煙管を手の中で一回りさせた。 逆に、怒りの目を向けるのは『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)。 「なるほど、弱き者に飛ぶ資格はない、と。随分と身勝手な理屈じゃない」 手にあるのはエスカッシャンを象った携帯電話。 「空は誰の物でもない、この愛すべき世界の共有財産よ。貴方達が身勝手な理屈を振り撒くなら……今だけ、貴方達の流儀に合わせてあげる」 電話から現れたものは、まるでライフルのようなロングバレルのリボルバー。 「そう、私達の方が遥かに強いのだから!」 袖を通さずにひっかけたコートを、高空の風にはためかせ、ミュゼーヌは空中へ身を躍らせる。 「久しぶりの空中戦です、油断せず頑張ります」 「鋼鉄も殴り慣れてきた感じだしー、とっとと叩き下ろすぜー? アンタレス!」 鉄甲に包まれた手で身を守りながら七花が飛び出す。その直後にヘリから降りた岬は、機体に入りきらないほど巨大で禍々しいハルバードを小さな手でしっかりと握る。 「人間大の隼とか10mのアホウドリとか、大きすぎて怖いよ……」 いつも通りナースルックの『やわらかクロスイージス』内薙・智夫(BNE001581)はヘリの入り口につかまって敵の姿をながめていた。 脚が震えている。 だが、出ないわけにはいかない。彼には重要な仕事がある。 智夫は目を閉じると、意を決して戦場へと飛翔する。 リベリスタたちの接近に気づいた鋼の鳥たちが、軽飛行機の追跡をやめて迎撃に移っていた。 ●飛ぶ鳥を落とす勢い 向かってくるのは9体の敵。 軽飛行機よりもさらに巨大な鳥を中心に敵が迫ってくる。 実物も鳥の中では大きいというが、視界に存在する鋼のアホウドリはその比ではないだろう。 朋彦はそのアホウドリに接近する機をうかがっていた。 「といっても、空を舞うのはいつかの依頼ぶり、なかなか三半規管の限界を試されるね……」 竜一が敵の中央に突っ込んでいく。 5体の隼たちが鋭角な形状の翼が生えた人型に変じ、それを迎え撃つ。 「貴様らが強者のつもりか? 笑わせるなよ! 天空の覇者は、鳥のものじゃねえ!」 日本刀とブロードソードを構え、竜一は竜巻でも起こしそうな勢いで回転した。 3体が巻き込まれ、2体がぎりぎりのところで逃れる。 さすがにその一撃で倒せるほど甘くはない。ただ、隙はできた。そして、隙ができれば朋彦には十分だった。 三次元的な軌道を描いて、朋彦と岬、迷子がアホウドリに接近する。 近くで見るとやはりでかい。 しかし、この敵の注意をひきつけておくのが彼らの役目だ。 右手で呪印を描くと、コーヒー豆のような形をした盾が朋彦の周囲で旋回する。 「たまには喋る鉄の鳥と戦うのも面白いかもしれん。少し遊ばせてもらうぞ?」 迷子がアホウドリの少し上方で構えを取った。 アホウドリの腹が開いた。 投下された爆弾が爆発すると、衝撃が3人を襲う。 盾越しに感じる衝撃に朋彦は圧倒される。でかい上に、強い。しかし、退くことはできない。 「空を制するのが君たちだけだと誰が決めた。神秘の恵みは等しく偶然に、否応なしに訪れる。だから、それから何をするかなんだ」 左の手には木刀があった。 琥珀色に磨き上げた業物が朋彦の霊力を高める。 「それが君たちと相反するなら、僕は断固として戦おう。それが役目だ。それが、使命だ!」 爆発の中から放った爆炎は、竜一をライフルで狙う隼を焼いていた。 ミュゼーヌは隼の1体に接近する。 アクセス・ファンタズムからは魔力障壁が展開し、敵の攻撃に対する備えはすでにできている。 竜一が敵の猛攻を受けながらも後退し始めた。エリスと智夫が回復してそれを支援する。 シャルロッテの放つ漆黒のオーラも竜一へ射撃する敵を弱体化させていた。 そんな仲間たちへ近づけないように動くミュゼーヌ。『堂々と威厳ある』と銘打たれたコートが優雅に翻る。コートと同じ色のスカートも舞っていたが、下はスパッツでガードは万全だ。 無論、3次元的なこの戦場において、敵の移動を完全にブロックすることなどできるはずがない。 ならば、面で敵を制圧すればいいことだった。 「蜂達の猛攻、甘く見ない事ね!」 もはやライフルと呼んでも差し支えない長銃身のリボルバーから、戦場内に弾をばら撒く。 同じく前進していた七花も戦場に雷球を飛び回らせる。 2人に一拍遅れて、モニカの腕に装着された自動砲も敵を穿つ。 3人分の広域攻撃は、間断なく戦場を駆け巡った。 智夫は隼の1体に接近した。 やわらかクロスイージスという名の示すとおり、クロスイージスとしてはけして防御に長けているとはいえない智夫である。 もともと落ち着いている質でもない彼は、心臓が早鐘を打つのを抑えることができないでいた。 下方ではおそらくフィクサードたちが彼らの戦いを観察しているのだろう。 気になるが、今は目の前の敵に集中しなければならない。 「べ、別に、集中してないと拙者~とか言って逃げ出したくなるからじゃないよ?」 誰にともなく言い訳する智夫。 アホウドリが迷子の攻撃をかわして超音波を放ったのはその瞬間だった。 落下していく彼女を、ミュゼーヌが追いかけ、捕まえる。 「気をつけてね!」 声をかけながら、智夫はグリモワールを開いて飛行能力を与える小さな翼を付与し直した。 モニカは斜め上に向かって前進していた。 アホウドリの射程内に入り込むわけにはいかない。 下手に飛行能力を解除されたりすれば、彼女は真っ逆さまに落ちてしまうことだろう。右腕に装着した大御堂重工製の対物重火器は、強力だがその威力に見合うだけの重量もある。 しかし、幸いというべきか、ここは空中である。 射程外は戦場の後方だけでなく、上下にも広がっているのだ。 「踏ん張って撃ち合うタイプなので、地に足が付かないのは違和感が半端無いですね」 アークの中でも高い実力を誇る彼女だが、さすがに空中戦は初めての経験だ。 敵のブロックに戻った七花とミュゼーヌの攻撃が、全体を削っていく。 モニカの射界に、ぼろぼろになった隼たちのうち3体がいた。 その敵に向けて『虎殺し』が火を噴く。 慣れない空中では反動を逃がすのも一苦労である。だが、飛びながらの戦いなのは敵も同じこと。 無表情に見つめる視線の先で、3つの爆発が起こった。フリルのついたモニカのミニスカートが、爆風に一瞬舞い上がった。 迷子は大煙管を構える両手を氷に覆っていた。 巨体の割に敵はけして鈍重ではない。しっかりと意識を集中し、狙いを定める。 爆撃を受けている3人は、けして楽な状態でない。少しなりと動きを止めなければならない。 ワシたちも、今のところはくちばしで3人をつついていた。止まらない血とふさがらない傷を、智夫の放つ光がかき消してくれる。 吹き飛ばされて、一瞬飛びそうになった意識をしっかりと捕らえ直し、迷子は斜め上方から氷に包まれた拳をアホウドリに叩き込む。 拳が直撃した場所を中心に、敵が氷結していく。 攻撃がやんだ隙に、朋彦の放った爆炎が隼の1体を包んだ。 「上空の薄い空気でも真空刃は問題なく飛ぶぜー、神秘だしー」 次いで岬がハルバードを振るうと、敵が両断される。 「いつまで凍っていてくれるやら。他の敵を倒すまでの辛抱になるな」 迷子はそれを横目に見ながら、いつ動き出してもいいよう再びアホウドリへ意識を集中した。 ●アホウドリ撃墜 エリスは最初に、敵の動きが変わったことに気づいた。 ワシがアホウドリを囲む3人から離れて、前進し始めている。 「敵 なにか 狙ってる……気をつけて」 ミュゼーヌと七花へと敵が接近する。 しかし、2体の狙いが2人だけではなかった。 それぞれが放った雷撃が巻き込んだのは、2人ずつ。一直線にならないよう気をつけていただけあって最低限ですんだが、2条の雷は智夫の体で交差するように放たれていた。 「これが、狙い……!?」 魔法の看護婦の衣装が焼かれる。 落下しかけた智夫がなんとか態勢を立て直したところに、エリスは天使ラジエルの書を開いた。 神聖なる息吹が、倒れかけた少女はもちろん、ミュゼーヌや七花もまとめて癒していた。 ワシが前進すると同時、最後に残った隼は半鳥から鳥の姿に戻って移動を始めていた。 速度を上げた敵は、後衛のエリスを狙っている。 竜一は迷うことなく隼を追った。 「メイド少女は傷つけさせない! 絶対にだ!」 「……私は少女じゃないと言うことですか。そうですか」 モニカが呟いた一言を、竜一は聞こえない振りをした。隼の速度に割り込むのにそんな余裕はない。 加速を乗せた一撃が少女を襲う瞬間、彼は割り込む。 「鳥が、竜を落とせるとでも思うのか? まあ、ワシもハヤブサもカッコイイのは認めるけどな!」 高速なだけあって重い一撃。けれども竜一は倒れるわけにはいかない。天空の覇者が何者かを知らしめるために。 シャルロッテの放つ漆黒のオーラが隼を射抜く。 「竜の顎から逃げられると思うな……!」 雷を断ったと言われる刃のレプリカは、爆発する闘気を乗せて隼を両断していた。 七花はワシと空中戦を繰り広げる。 迷子がたびたび止めてはいたものの、アホウドリの爆撃は確実に朋彦たちの体力を削っている。 「残るは2体、一気に片付けましょう!」 前衛で放っていた彼女の雷撃と、ミュゼーヌの銃撃はワシたちも確実に捕らえていた。 モニカも移動し、ワシの1体に対して自動砲を叩き込んでいる。 ワシが放つ雷撃は、七花やミュゼーヌと共に、後方にいるシャルロッテや竜一も狙っている。 岬が放った真空の刃が、ワシの1体を切り裂く。 両手を覆う鉄甲から雷が荒れ狂って、傷ついたワシを爆散させる。 その時、氷を吹き飛ばしたアホウドリが、再び爆雷を投下した。 「これまでか……!」 「土器さん!」 アホウドリを抑えていた朋彦がとうとう倒れ、落下していく。 残ったワシを智夫とミュゼーヌに任せて、七花はアホウドリに接近していった。 シャルロッテは全身から漆黒の闇を生み出した。 雷撃で傷ついたのは、むしろ彼女にとって都合のいいことだ。 ミュゼーヌの叩き込んだ蹴りが最後のワシを撃墜する。 「あなたたちじゃ、私の運命はかえられませんねぇ」 自分に刻まれた雷撃の痛みを、彼女はアホウドリに刻み込んだ。 岬はアンタレスを一振りし、アホウドリを見上げる。 残った敵は1体きり。 もう、遠慮は必要ない。 それまでは爆撃を誘うために下方にいた彼女だったが、アホウドリの上に向かう。 迷子の氷の拳が再び敵を氷結させる。 氷が不利ほどかれる前に、リベリスタたちは攻撃を集中する。 「アホウドリって羽ばたかないから自力で高度取り戻すの苦手だよねー。詰まり真上が死角ー」 禍々しく目を見開いたハルバードにエネルギー球を込め、幾度も振り下ろす。 少しずつ、敵の高度が下がっていく。 回復が不要になったところで、智夫はナイチンゲールフラッシュを放ち、エリスが魔法の矢を撃つ。 竜一は油断せず、エリスをかばい続けていた。 幾度目か、炎のように揺らめくハルバードの先端がアホウドリを貫き――岬の少女とは思えない膂力が、地表へと敵を吹き飛ばしていった。 ●フィクサードたちの野望 2人のフィクサードを乗せた車が走り出そうとする。 岬が降り立ったのは、その目の前だった。 追いつくだけなら、飛行能力を得られる今回の作戦においては難しくない。 自由落下で移動するのはさすがに危険であったが。 「そろそろ何狙ってるのか解説してくれてもいい頃合いじゃねー?」 見た目どおり、実年齢も13歳の岬であるが、戦いを観察していたならば侮れないことは敵にもわかっていることだろう。 「こっちは幾度と無く迷惑をかけられとるらしい、からの。目的くらいは教えてほしいものじゃな。無論邪魔するが」 迷子も2人のフィクサードを見据える。 クロスイージスと、マグメイガス。どちらもこの場のリベリスタたちより上のようだが、2人のうちではクロスイージスのほうが上だろう。 「さすがはアークの皆さんですね。動きが早い」 「ふーん、ボクらのことは知ってるんだー?」 「ええ。情報源は口止めされてますが」 マグメイガスの言葉に、クロスイージスが渋い顔をした。 逃走する隙をうかがっている敵に、エネルギー球をまとわせたハルバードを向ける岬。 「で、目的は?」 迷子の口調は、いっそ楽しげでさえあった。 「最強の軍団を作ることですよ。そして、この世界を1つにするのです!」 高らかに告げたマグメイガスに対して岬が再び口を開く。 「もいっこ聞いていいー? きみら、もしかして馬鹿?」 「……俺を一緒にしないで欲しい」 クロスイージスが呟いた。 「別に理解していただこうとは思っていません。ですが、この世界を危機から救うという才賀博士の目的のために、必要なことなんですよ」 マグメイガスが炎を放つ。 それを食らいながらも岬が車を吹き飛ばす。 しかし、吹き飛ばされながらも車は動き出していた。蛇行しながら走り去る車を、岬と迷子は見送るしかなかった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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