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丑三つ時に鈴は鳴る。或いは、人を呪わば……。

●丑三つ時に鈴は鳴る……。
 チリン、チリン、と鈴が鳴る。寂れた神社の境内、薄暗闇に灯るのは蝋燭の火。
 御神木へとゆっくり進むのは、白装束に身を包み、頭には2つ蝋燭を括りつけた女性だった。手には藁人形が1体、小槌が1つ、それから数本の五寸釘。その格好を見るだけでも、彼女が何の目的でここに現れたのか、一目瞭然である。
 女性の瞳には、強い恨み辛みの色。憎悪に強張ったその顔は、ただただ醜く、恐ろしい。
 寂れた神社だ。神主がいなくなって久しいボロボロに神社。彼女が此処を選んだのは、この神社がここらで有数の心霊スポットだったからである。
 どうせダメ元で呪いをかけるなら、少しでも効き目がありそうな場所で……というのが理由である。
 だから。
 彼女は、これでもかというくらいに強い想いを込めて、御神木の幹に藁人形を押し付ける。手に握った小槌を目一杯に振りかぶり、五寸釘に叩きつけた。
 何度も何度も、繰り返し何本も釘を突き刺し、叩きつけて……。
 1体の藁人形に、10本近い釘が打ちこまれた頃には、既に夜明けが近かった。
 はぁはぁ、と肩で息をし、女性はふらふらとした足取りでその場を立ち去る。呪いの効果があるのか、ないのか、それは分からないが、溜めこんでいた想いは発散出来たらしい。
 この場に来た当初のような、危機迫る表情ではなくなっていた。ただ、大切な何かを解き放った後のような、何の感情も窺えない顔だった。
 そして、朝日が昇る。木々の隙間を縫って差し込む日の光に照らされた藁人形は、どこか禍々しい雰囲気を湛えている。
 
 一夜明け、そして次の夜。1日後の丑三つ時。
 女性が御神木に残していった藁人形に異変が起きる。ズルリ、と藁人形が動き出したのだ。夜闇の中から這い出るように、藁人形が地面に降り立った。
 いつの間にか、その大きさは2メートルほどまでに巨大化している。体に突き刺さった釘も、まるで巨大な槍のよう。禍々しさを全面に押し出し、不気味な雰囲気の象徴といった様子でもある。
 藁で出来た体に、鉄釘を突き刺し、ゆらゆらと漂うように歩く。
 藁人形は、どこかを目指し歩んでいるのだろうか。憎悪の感情によって、突き動かされる呪いの人形。
 行く先は、呪いの対象となった者の元か……。
 それとも、呪いをかけた女性の元か……。
 ただ1つだけ、ハッキリしていることは、藁人形の恨みが晴れることはあり得ないということだけだ。

●人を呪わば……。
「恨みの感情によって動きだしたE・ゴーレム(藁人形)が今回のターゲット。フェーズは2」
 モニターに映る暗闇と、その中を歩む藁人形に目を向け、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はそう言った。
「巨大な藁人形は、恨みを原動力にどこかへ向かっている。神社の境内、及び参道を出る前に倒して欲しい。それより外にでると、一般人が巻き込まれる可能性もあるから……」
 出来る限り、危険な事態は避けるに越したことはない。
 それから、とイヴは続ける。
「敵の動きは鈍いけど、受けたダメージの20~50%を反射する能力を持っている。攻撃をする際は、十分気をつけてね」
 なんて、言ってイヴはモニターの映像を拡大させた。
 画面一杯に映る、藁人形の姿。体中に突き刺さる巨大な釘。恐らく、その釘もまた、藁人形の攻撃手段の1つなのだろう。
「その他、呪いや呪縛、不運による追加効果付きの攻撃。充分に注意してね」
 そう言ってイヴは皆を送りだす。
 モニターを見つめるイヴの瞳は、どことなく寂しそうだった。
「本当に怖いのは、人の恨み……。けど、人を呪わば穴2つ、とも言うし。怖いことばかり」
 なんて言って、イヴは小さくため息を吐いた。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:病み月  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年10月01日(月)23:16
こんにちは病み月です。
今回は、呪いの藁人形討伐依頼になります。
以下情報。


●場所
寂れた神社、及び神社へと続く参道。
薄暗く、荒れ果てた足元には注意が必要。
夜間で、しかも寂れているということもあり現在神社付近に通行人等はいないが、参道より外に出てしまうと、一般人を巻き込む危険もあるため注意が必要。


●敵
E・ゴーレム(藁人形)×1
フェーズ2
ある女性の恨みが原因で発生した、藁人形のE・ゴーレム。尽きることのない恨みを原動力に、どこかへと向かって進行中。動きが非常に鈍い。
藁でできた2メートル程の体と、突き刺さった10本程の釘が特徴。

【人を呪わば】 
 自身が受けたダメージの20~50%を相手に反射する能力。

【恨み辛み】→物近単[呪い][不運]
 釘による攻撃。相手に突き刺し、呪いを与える。襲ってくる釘は1本とは限らない。
 
【鈴の音】→神遠複[呪縛]
 不吉な鈴の音による攻撃。低ダメージと呪縛効果を持つ。


以上になります。
それでは、よろしくお願いします。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
インヤンマスター
依代 椿(BNE000728)
ソードミラージュ
神薙・綾兎(BNE000964)
覇界闘士
付喪 モノマ(BNE001658)
ソードミラージュ
番町・J・ゑる夢(BNE001923)
マグメイガス
風見 七花(BNE003013)
クリミナルスタア
遠野 結唯(BNE003604)
ホーリーメイガス
綿谷 光介(BNE003658)
ソードミラージュ
フラウ・リード(BNE003909)

●参道
 チリンチリン、と音が鳴る。
 寂れた参道。秋の風が木々の葉を揺らす。
 薄暗い闇の中、荒れ果てた参道を、何かがずるずると音を立てて進んでいく。
 砂利を撒き散らし、地面を擦りながら進むそれは、無数の釘に体を貫かれた巨大な藁人形だった。どこへ向かうのか……。それは分からないが、しかし、その人形からは強い恨みの念が感じ取れた。
 そんな藁人形を見つめる人影が8つ。
 アーク所属の、リベリスタ達であった。

●不吉をばら撒く藁人形
「呪いの藁人形! うちとしてはオカルトチックで嬉しいけどな!! ……まぁ、エリューションやから、あくまで“チック”なんが寂しいところやけど」
 煙草に火を付け『レッドシグナル』依代 椿(BNE000728)がそう呟いた。そっと手を伸ばし、傍らに召喚した子鬼の頭を撫でる。
「ん、まぁ……昔から女性の妄執はすごいって、聞くけれど……」
 チラ、と女性陣を横目で捕らえ『寂しがり屋の三月兎』神薙・綾兎(BNE000964)は足元の感触を確かめるように、何度か爪先で地面を蹴る。
「……とはいえ、野放しにはできないしね」
 タン、と軽い音と共に綾兎の姿が消える。全速力で、藁人形へ向かって駆けだしたので。
「人を呪わば穴二つ、ですか。何事にも代償はつきものということですねー」
 頭に乗せていたホッケーマスクを顔の位置に引き下ろし番町・J・ゑる夢(BNE001923)がスクーターのキーを回す。強い光が、参道を照らし出した。
「生半可な呪いじゃ、私達に勝てませんよー」
 なんて、ゑる夢が言うの当時に、藁人形の体に綾兎のナイフが食い込んだ。
「……う、ぐ」
 攻撃を仕掛けた筈の綾兎が、呻き声を上げる。藁人形による攻撃の反射によるものだ。
「人を呪うときの定番アイテムですね。呪いではなく藁人形に襲撃されるとは、なかなかない気がします」
 藁人形の背後へと周りこむ風見 七花(BNE003013)が、魔弾を放つ。当然、藁人形による反射ダメージを受けてしまうが、藁人形の動きを止めることには成功した。
「呪い……丑の刻参り……下手な幽霊とかより怖いですよね」
 安全圏まで下がり、引きつった表情で『羊系男子』綿谷 光介(BNE003658)が本を胸に抱きしめる。彼は誰かがダメージを受けた際には、いち早く回復に向かう役目を担っている。
「物には魂が宿ると言う」
 藁人形に銃口を向ける『アヴァルナ』遠野 結唯(BNE003604)。一切の感情を排除したような無表情で、自身の受けるダメージも気にせず藁人形に銃弾を撃ち込んでいく。
 結唯の放つ弾幕に紛れるようにして、『LowGear』フラウ・リード(BNE003909)が藁人形の背後に迫る。両手のナイフを閃かせ、背後から連続で藁人形を斬りつけていく。
「やれやれ、今のご時世相も変わらず牛の刻参りとは恐れ入るっす」
 藁人形の体に突き刺さった無数の釘を避けるように腕を振り回す。藁人形の前には綾兎、後ろからはフラウによる斬撃の嵐。しかし、痛みを感じていないのか、藁人形は藁屑を撒き散らしながらも前へと進もうとする。
 ずるり、と藁人形は自身の体に突き刺さった釘を引き抜く。禍々しい気配を放つ釘を見て、咄嗟に綾兎が後ろへ跳んだ。
 同様に、フラウの体も傍にいたゑる夢が引っ張って退避させる。
 先ほどまで綾兎がいた場所に、釘が突き刺さる。
 その釘を蹴り飛ばし、ガラ空きになった藁人形の胴へ燃える拳を叩き込んだのは『BlackBlackFist』付喪モノマ(BNE001658)だった。
反射ダメージによるものか、口の端から血の筋を流しながらも彼は笑う。
「さぁ、楽しませろよ? 藁人形!」

「おい、余所見してんじゃねぇっ!」
 釘を引きもどし、自身に刺し直した藁人形にむかって、モノマが雷を纏った拳を振り下ろす。力一杯振り抜かれた拳が打ったのは、しかし藁人形の本体ではない。体に刺さった無数の釘であった。
「丁度いいもん、ぶっ刺してるじゃねぇか」
 叩かれた釘は、藁の体により深く突き刺さる。更には、その先にある地面へと。
 自身の釘によって、藁人形は地面に縫い止められる。
「それにしても、人を呪わば穴二つとは言うたもんやな……」
 自分の攻撃を反射され、ダメージを傷ついた仲間の姿を視界に捕らえ、椿が傍らの子鬼を撫でる。それから、ギュッと手を握り一発の弾丸を作りだした。禍々しいオーラを放つ、不吉な弾丸だ。それを、懐から取り出したリボルバーに込める。
「自分の呪いと同じよぉなもん、うちも使えるからな。人を呪わば、穴二つ。普段は呪うばかりのその身、自分が呪われる覚悟は出来とるんやろな?」 
 藁人形へと銃口を向け、引き金を引く。火薬の爆ぜる音と共に、空気を掻き乱しながら弾丸が撃ち出された。散って落ちる木の葉を撃ち抜いて、そのまま弾丸は藁人形へと命中する。
「一般の方に被害者が出る前に倒します」
 魔弾を無数に展開させ、それを藁人形目がけ撃ち込む七花。指揮するようにアゾット剣を振り回す。命中と同時に、七花にダメージの一部が返ってくる。
「……っつ」
 歯を食いしばり、衝撃に耐える七花。体から煙を上げながら、藁人形が進路を変えるべく動き始めた。地面に突き刺さった釘を引き抜き、牽制の為に振り回す。藁人形に肉薄していたモノマが、背後に飛んでそれを回避する。
 藁人形は、参道を真っすぐに進むことを諦めたようだ。進路を変え、林の中へと向かい始める。
「逃げるつもりですよ! 追いかけて!」
 光介が叫ぶ。と、同時に反射によるダメージを受けた仲間の治療の為、小さく口の中で呪文を唱えた。淡い光が舞い踊り、仲間達の体へと降り注ぐ。
その間も釘を引きずりながら、藁人形は進む。
藁人形の目前に、綾兎が飛び込んだ。
「そっち、何もないでしょ?」
 流れるような動きで、ナイフを閃かせる綾兎。連続で放たれる斬撃により、藁が飛び散る。それと同時に、綾兎自身にも反射ダメージが入る。
「全く……厄介な力だよね」
 釘による攻撃を避け、綾兎は後ろへ。入れ替わるようにゑる夢とフラウが、前後から藁人形へと駆け寄った。
 バールのようなものを振り下ろし、釘を払いのける。鉄と鉄がぶつかり、火花が散った。一瞬、ゑる夢の体が揺らめいたように見える。藁人形の攻撃が、外れ、地面に突き刺さった。その隙に、ゑる夢による鋭い一撃が、藁人形の足元を打ち抜いていく。
 反射されたダメージに顔をしかめるゑる夢。しかし、地面に膝を付く前に体勢を立て直し、不敵に笑って見せた。
「反動? さて、怪人は蘇るものと決まっているはずですが、そんなものに臆するとでも?」
 なんて、笑う口の端から血が流れている。
 バランスを崩し、地面に向かって倒れる藁人形。そこに飛びかかったのは、フラウだった。金の髪をなびかせて、両手に構えたナイフを振り下ろした。
「恨みだろうが憎悪だろうが知った事か。晴れないってーならうちの速さで吹き散らしてやる!」
 風のような動きで藁人形に肉薄し、ナイフを突き刺す。突進の勢いのままに、そのまま地面に押し倒す。
「うちの最大の武器で地面にキスさせてやるっすよ!」
 反射ダメージを堪え、飛び退いた。空いたスペースに結唯が銃弾を撃ち込んでいく。
 連続で撃ち出される弾丸を受け、藁人形は何度もその身を跳ねさせる。銃弾によって藁人形をその場に縫いとめながら、一歩ずつ歩を進める。
 そのまま、近づいていって握りしめた拳で起きあがりかけていた藁人形を殴る。
「お前は、荒ぶる想いにより禍をもたらす代物となってしまった」
 無表情のまま、冷静に振り抜かれた彼女の拳は、藁人形を吹き飛ばした。そのまま地面を何度かバウンドし、藁人形は木にぶつかって動きを止めた。
 藁人形がゆっくりと体を揺らす。同時に、チリン、と鈴の音が鳴る。
「……うっ!?」
 ピタリと、結唯の動きが止まった。結唯だけではない。
 藁人形のから発せられる鈴の音を聴いた者のほとんどが、耳を押さえ、或いはそれすらも出来ずに顔をしかめていく。その間にも、チリンチリンと、鈴の音は繰り返す。
 音による低ダメージと、呪縛効果。不気味な鈴の音が、周囲の風景を歪ませる。
 邪魔者が居なくなったことを確認し、藁人形はゆっくりとその場から移動を始めた。
 鈴の音から逃れることに成功したのは、七花と光介、それから椿の3人だけだ。最も近くにいた結唯は言うに及ばず、モノマ、フラウ、綾兎、ゑる夢も同様に、呪縛を受けている。或いは、反射によるダメージが酷いのか、地面に膝を付いて肩で息をしている者もいるようだ。
「ここは任せてくださいっ!」
 今までずっと、後衛から支援を続けていた光介が戦線に飛び込んでいった。仲間達の傷と、呪縛に犯された体を癒す為だ。その為に、彼は藁人形の傍を駆けていく。そんな光介の方へ、藁人形が視線を向けた。ずい、と体に突き刺さった釘を引き抜いて、光介目がけ、突き出した。
 しかし……、届かない。光介と藁人形の間に突き出された拳銃が釘を受け止める。
「オカルト雰囲気満載なんはえぇけど……参道に出さんよぉにせんとあかんからね」
 釘を受け止めたのは、子鬼を引きつれた椿であった。次の瞬間、椿の周りに式符がばら撒かれる。巻かれた式符は鴉へと姿を変え、藁人形に襲い掛かった。藁人形の体が鴉に被いつくされる。その様はまるで、闇に包まれているようですらある。
「こっちは私達が引き受けます!」
 動きの止まった藁人形へ向けて、背後から七花が魔弾を撃ち込んだ。
 魔弾による弾幕と、鴉による襲撃。それを受け、藁人形の姿が完全に見えなくなる。その隙に、光介が仲間達の元へと駆け抜けていった。
「術式、迷える子羊の博愛!」
 光介の周りを燐光が舞い踊る。スクーターのライトとは違う、どこか神秘的な淡い光が、仲間達の上に降り注ぐ。傷を癒し、同時に体の不調も癒す。真っ先に呪縛から逃れたのは、結唯だった。体が動くようになるのと同時に、地面を蹴って藁人形にむかって駆けていく。
 その時、チリン、と鈴の音が鳴った。
 チリン、チリンと続け様に音が鳴る。
「あかん……」
「このままじゃ……」
 椿と七花の動きが止まった。攻撃を受け、ボロボロになった藁人形が体から釘を引き抜き、高く掲げる。元より禍々しい雰囲気を溢れさせていた藁人形だが、ダメージを負う事によってその禍々しさはさらに増しているように見える。体に刺さった釘も、8本まで減っている。
 受けたダメージが多いのか、2人とも苦痛に顔を歪ませている。
 藁人形が、力任せに釘を振り下ろした。ライトの光を反射して、釘の先が不気味に光る。ドロっとした禍々しいオーラを放つ不吉な釘だ。
 釘の切っ先に居たのは、体の自由を奪われた椿であった。
 しかし……。
 振り下ろされた釘を受けたのは、間に滑り込んできた結唯だった。結唯の腹に、深々と釘が突き刺さる。
「……っぐ」
 血を吐き出しながらも、結唯は銃口を藁人形へと向けた。弾丸を撃ち出しながら、藁人形の進行を抑える結唯。彼女を退けねば前へ進めないと判断したのだろう。結唯に突き刺さった釘はそのままに、新たに1本、体から釘を引き抜く。両腕に持った釘を振りあげ、それを結唯に向かって振り下ろす藁人形。
 しかし、結唯はそれを避けようとはしなかった。更に1本の釘を刺されながらも、彼女は銃弾を撃ち出し続ける。
「人は神を造り、神は人を育む。人は神に祈り、神は成す。片方だけではありえない。その神が我らに牙をむくと言うのなら、神を殺そう……」
 おびただしい量の血を垂れ流しながらも、結唯の視線は藁人形に向いたまま。逸らされることはない。何の感情も籠らない冷たい瞳が、藁人形を捕らえる。
 弾丸は、藁人形の体を撃ち抜き、削り取っていく。
 そして……。
 3本目の釘に体を貫かれ、結唯の体から力が失われ、倒れていく。既に意識はないのだろう。受け身をとることも叶わず、砂利を巻き上げ地面に倒れた。
「十分っす。恨み辛みにサヨナラっすよ」
 2本のナイフを眼前で交差させ、フラウが突っ走る。空気を掻き混ぜ、風を起こしながらトップスピードで藁人形へと駆け寄っていく。突進の勢いのまま、フラウはナイフを振り抜いた。
 火花を散らし、藁人形に突き刺さっていた釘が2本、切断されて地に落ちる。
 突進の衝撃で、藁人形の体が大きく傾ぐ。
「その深さ、怖さ、狂気の程は推し量るしかありませんが……」
「そろそろ、終わりにしない?」
 傾いだ藁人形に向かって左右から駆け寄ったのは、ゑる夢と綾兎であった。バールのようなものとナイフを藁人形へ叩き込む。
 ガツン、なんて甲高い音が響き渡った。
 鋭く振り抜かれたバールが、釘を地面に叩き込む。ホッケーマスクに隠れて見えないが、ゑる夢の表情はきっと改心の笑みに溢れていることだろう。それほどまでに、勢いのついた一撃だったのだ。反射ダメージもそれ相応のものだったのだろう。マスクの隙間から血が流れる。
「強い気持ちの込められたこの武器なら、呪いなんて受け流せるって信じてるからさ」
 深紅の刀身がライトの照らされ怪しく光る。連続して繰り出される斬撃の嵐。それを釘で受けとめる藁人形だったが、次第に押されて地面に倒れていく。
 耐えきれなくなったのだろう。最後に残っていた釘が2本、真っ二つに折れて地面に転がった。
「あとは頼みますよー」
 なんて、ゑる夢の声。視線の先には、炎を纏った腕を大きく振りかぶったモノマの姿。
「塵も残さず燃え尽きろっ!」
 炎を撒き散らしながら、振り抜かれたモノマの拳が藁人形の頭部を打ち抜いた。藁の体が炎に包まれ、崩れていく。それでもなお、前へと進もうとする藁人形。しかし、釘によって地面に縫い付けられたその身が、前へ動くことはない。
 ボロボロと体の端から炭となって崩れていく藁人形。
 それを見ながら、モノマは笑う。
「くっくっく、そりゃそうだ。殴りゃどっちも痛ぇに決まってる!」
 そういうモノマの口からは、真っ赤な血が流れていた……。

●人を呪わば……。
「知りたいことは色々あるけど……」
 燃え尽きていく藁人形を見降ろして、椿が呟く。燃えながらも尚、藁人形は炎の中、這いまわるように蠢いていた。そこに見えるのは、ただただ、強い恨みの念だけ。
「これを生み出してしまったおねーさんは、少し懲りた方がいいかもね」
 なんて、溜め息混じりに綾兎が言う。
「念の為、釘とか回収しておきましょうか」
 七花が、そっと地面に転がった釘を拾い上げる。どことなくその表情は恐怖に引きつっているように見える。
「後始末、完了っす」
 血に汚れた頬を拭いながら、フラウはその場に腰を下ろす。
 そんなフラウの隣には、気を失った結唯を解放する光介の姿がある。心配そうな表情で結唯を見つめる光介。血まみれの結唯はグッタリしたまま動かない。その傷はかなり深そうだ。
「………」
 燃え尽きて灰になってしまった藁人形を見て、なにを思うのか……。
 モノマはじっと、藁人形の燃えカスを眺めている。
 どことなく、重くなってしまった空気を仕切り直すようにゑる夢がパンと手を叩く。
「皆で晩御飯にでも行きましょうかー。向こうに納豆の美味しいお店があるらしいですよー」
 いつの間にか、東の空が白み始めている。
 長かった夜は明け、こうして朝が訪れた。呪いの藁人形は燃え尽きた。その身に押し込められた恨み辛みも一緒に……。
 参道に積もった燃えカスは、風に吹かれて、どこかへ消える……。それを見届け、リベリスタ達は、その場をそっと後にするのだった。
 

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様です。呪いの藁人形討伐指令、無事成功です。
呪いの藁人形は燃え尽きました。
いかがでしたでしょうか? お楽しみいただけたら、幸いです。

それではこの辺りで失礼します。
また、縁があれば別の依頼でお会いしましょう。

今回は、ご参加ありがとうございました。