● ピョンピョンと小気味好く跳ね、時折何かを探すように、時には何かを警戒するように、後ろ足で立ってみせた。私が近付くとそれは逃げることもなく、ただ出方をうかがうようにマジマジと見つめた。その様子を見、私はこの生物が、今この時点で害をなすものでは決してないことを理解する。幾分気になる箇所はあったが、、本質的に何かが変化しているわけではないらしかった。 それは一見してウサギだった。彼の住む村の近くの森に、あまり見かけない生き物がいるというから、調査に来てみたら可愛らしい生き物が跳ねているではないか。しかも一匹ではなく、周囲を見渡せばそこら中にいると思える程の数が生息しているようだ。これだけいれば村で話題になるのも当然のことだろう。 ウサギは、そこらへんのペットショップで見かけるよりもやや大きかった。おおよそ一メートル弱といった所だろうか。そこにいるウサギの種類は、毛色と形から四種類いることがわかったが、どれも同じ程度の大きさであった。そして彼らの身体の一部分には、歪んだ六芒星のような傷が刻まれている。だがそれがウサギたちに特殊な効果を引き起こしている様子は見受けられない。 ウサギはこの周辺に集中して生息いるようだった。何か理由があるのだろうか。思考を巡らせているうちに、私はウサギがある場所に密集していることに気付く。首をひねりながらその場所に近付いていく。距離を詰めるに従って、私はウサギたちが殺気立っているのを肌で感じた。突如として現れた奇怪な感覚に、私は戸惑って足を止めた。そしてウサギたちをじっと見る。ウサギの表情など全く理解できないはずなのに、その視線は私を睨んでいるようにさえ感じた。 ふと、彼らの中心に何かがあるのが見えた。それは人間であるように思われた。微動だにせずに倒れている。どうしてそこにいるのか。襲われているのか。あるいは。確かめたい。そう思って近付こうとした瞬間、周囲にいたウサギ全てが私の方へ駆け出した。得体の知れない恐怖を覚え、私は方向を反転し、逃げた。倒れているその人を確認することなく、退かざるを得なかった。 ウサギたちは私が十分に離れたのを見ると、もう追っては来なかった。その行動は、ウサギたちがあの人間を守っているようにも見えたが、今となってはもう、確認する術はない。 ● 「ウサギは可愛いけどね。エリューションだから仕方ないよ、うん」 どうにも乗り気ではなさそうな様子の『リンク・カレイド』真白イヴ(ID:nBNE000001)は、ブリーフィングルームにリベリスタが来てからも説明を始めずにモダモダウロウロしていたが、やっと意を決して話し始めた。 「ある森にウサギのエリューションがいっぱい現れたみたい。近くに村があって、少し前から何度か目撃されてはいたそうなんだけど、まだ大した被害は出てないって」 けれども今そうだからといって今後そうであり続けるとは限らない。フェーズが進行していけば、その凶暴性や攻撃性も高まっていくに違いない。そうなれば今よりずっと厄介だろう。 「加えて、エリューションの集団の中に一人の人間がいることが目撃されてる。死んではいないし、かといってエリューションでもない、フェイトを得た革醒者みたいだね。エリューションたちは、彼女を取り囲むように生息してる。そして彼女に近付くと、途端に攻撃的になる。守っているのか、あるいは違うのか、よくわからない。どういう経緯でそうなったのかも含めて、ね」 理由が何であれ、エリューションが大量にいるとあれば倒すのが筋である。謎があれば追々でいいだろう。リベリスタは各自行動を始める。 だがイヴは、モニターを見つめながらボソリと呟いた。 「……抱き心地良さそうなのになあ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:天夜 薄 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 2人 |
■シナリオ終了日時 2012年09月28日(金)23:31 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 2人■ | |||||
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● 天国、楽園、桃源郷。 幸福の地を表す言葉は数あるが、彼女、『薄明』東雲 未明(BNE000340)にとってここはまさにそれに見えた。 四十匹のウサギが跳ね回っている。そのどれもやや大きめで、柔らかい。とても柔らかい。抱き心地は最高だ。それが生き物たる体温を持っていることを加味すれば、ぬいぐるみや抱き枕など比にならない抱き心地であるかもしれない。 だがそこは天国であると共に、ある意味で逆であることも、彼女は知っている。 ウサギたちはエリューションである。そしてウサギはそこにいる女性の周囲を囲んでいた。決して危害を加えるようではなかったが、少なからず女性に影響を与えていることは確かであり、また世界に影響を与えていることは、真に確かなことであった。 従ってこのもっふもふで可愛いウサギたちは、余す所なく倒さなければならない。哀しいことね、と未明はポツリと呟いた。 「うーさーぎーおーいーしー、かーのーやーまー」 かの有名な同様を口ずさみながら、『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)は側にいたチンチラをそっと抱き上げる。怯えるような目をしたが、やがて観念したかのように大人しくなった。竜一は気にせず頬ずりする。 「……うさぎ、おいしい?」 突拍子なく彼は呟く。フランス等ウサギを食べる国はあるようだけれども、竜一に抱えられたチンチラは途端ビクリと震えた。言葉自体を理解するとこはなくとも、彼の言葉の孕む、自身に対する被害を察知するように。やがてチンチラはバタバタと暴れ、ピョンピョンと逃げ出した。 「……いや! 食わないよ!? 四十匹も食えない!」 的外れな弁解を叫びながら、竜一は散り散りに逃げるウサギを追いかけていった。 「ハ~……柔らかいのダ。倒すのは忍びないのダ」 焦る竜一を後目に思うがままモフモフしていたのは『夢に見る鳥』カイ・ル・リース(BNE002059)。彼の抱えるヒマラヤンは妙に大人しく、彼の腕の中に収まっていた。小さな赤い瞳が、キョトンとカイを見つめている。 「近くで見るト、そこはかとなク目が怖いのダ……」 僅かな恐怖も、和みの中に消えていく。 「ぐうう……なぜもふもふに限ってフェイト無しが多いのか……ッ!?」 目の前で憮然と佇むネザーランドドワーフを抱きしめながら、『ソリッドガール』アンナ・クロストン(BNE001816)は恨めしそうに、苦々しそうに、言葉を漏らす。この世界の創造者様はドSが多いのでしょう、きっと、多分、恐らく、もしかしたら。 ● さて。真面目に何かを探す気がない連中が夢中でウサギをモフっている最中。他のものはモフモフなウサギの魔力を振り払って、あるいは興味も示さずに周囲の調査をしていた。そうは言っても、ウサギが現れているのはこの周辺だけであり、ほとんどのリベリスタが可視範囲内にいたのだけれど。 「うさぎ追いしかのやま……っと。やれやれ、なにやら懐かしい状況じゃああるの」 数多のウサギが飛び跳ねる状況を見つつ、『必要悪』ヤマ・ヤガ(BNE003943)は言う。だがこれも歴とした、フェイトを持たぬエリューションなのだ。殺す他ないのだ。 ヤマは念のため、周囲を確認する。されど、人がここに来た痕跡や、車などが通ったような後は、特に見受けられない。恐らくウサギが通ったのだろう跡は散見されたのだけれども。ウサギたちは自力でここに来たのだろうか、とヤマは考える。 少なくとも誰かが連れてきたのではなく、ウサギたちは自分でここに来たのだろうと、ヤマは結論づける。他の何かの影響で来たのだとしても、だ。 ヤマはそっと、周囲でウサギと戯れる仲間と、ウサギたちを見る。モフモフには興味はあったが、躊躇した。見た目は相応であろうということよりも、実年齢から来る気恥ずかしさが勝っていた。ヤマはその顔に微笑を称えながら、それを見ていた。 改めて見ると、体長一メートル程度もあるウサギたちは、どうにも大きめのぬいぐるみを彷彿とさせて仕方がない。小鳥遊・茉莉(BNE002647)は思う。いっそ大きなぬいぐるみだったら子供に人気だし、単なる野生の動物だったら、可愛いだけで丸く収まったのに。 けれども世の中、そんなにうまくはいかないようだ。 茉莉は周辺にいたロップイヤーの側に座り、そっと撫でた。ロップイヤーは目をトロンとさせながら素直に、その手の動きに身を任せていた。茉莉はその様子を楽しみながら、ロップイヤーの身体に刻まれている印を探した。それはすぐに見つかった。ロップイヤーの背中には歪んだ六芒星が刻まれていた。それは焼き印や傷のようなものではなく、その部分にそう言う形が見えるように、毛が刈取られてできている印であった。 茉莉がそっと立ち上がると、ロップイヤーは少しの間茉莉を見つめ、やがてどこかに飛び跳ねていってしまった。茉莉は周囲にいた別のウサギに目を向ける。確かに歪んだ六芒星はどのウサギにも見受けられたが、それは身体の横だったり、耳の裏だったりと、それぞれのウサギに刻まれている場所は異なるようだった。 「何らかの魔術的な実験結果によるものかもしれませんね」 茉莉はポツリと口にするが、その真偽は定かではない。 「なあ、お前さん達、なんでこんなところにいるんだい」 地面を嗅いでいるウサギの身体を撫ぜながら、『てるてる坊主』焦燥院 フツ(BNE001054)は静かに問うた。 『アレ、守ってる』 それは不明瞭であるが、フツがギリギリ理解可能な言葉で、答えた。 「あの人間は、お前さんのご主人とか友達なのかね」 大人しく撫でられるのに応じていたロップイヤーは、敵意を示すことなく答えた。 『よく知らない。ご主人が守れって言うんだ』 「ご主人、ねえ。どんな奴なんだい?」 『よく、知らない』 繰り返すように、ロップイヤーは言った。フツは苦笑しつつ、その頭を撫でた。 「あの女とオレ達は同じなんだ。フェイトを持った革醒者ってやつさ……ってもわからねえか」 ロップイヤーはキョトンとしていた。フツは恐らく、ウサギたちは女性が何であるか、エリューションとは何か、自分たちがどういう存在なのか、果てはリベリスタがここにいる理由さえ、何も分からないのだろう。彼らの使命は、彼らの言う『ご主人』に言われたただ一つであった。それ以外は、きっとただのウサギなのだろう。 微笑しながら自分を撫で続けるフツの顔を、ロップイヤーはボゥッと見つめていた。その時間はしばらく、続いていった。 「本当に、凄い数のウサギだな、エリューションでなければ、純粋に楽しんだのだがなぁ、残念だ」 『あるかも知れなかった可能性』エルヴィン・シュレディンガー(BNE003922)は寂しそうに言った。ウサギと戯れている周囲の仲間を見ると、なおさら寂しさは強まっていった。 何にせよ、その周囲の謎は知る必要があるだろう、エルヴィンは黙して、ウサギたちの守るその女性が何であるかを、ウサギに感付かれぬように調べた。気絶しているのか、彼女には僅かな行動も見られない。ウサギを操っているでも、ウサギを倒そうとしているでもない。恐らくはウサギか、あるいはそれに関連する何らかの影響を受けて革醒した一般人であるようにエルヴィンには思われた。少なくともこの場で、リベリスタに危害を加えるものではないだろう。 続けてエルヴィンは、ウサギに目を向ける。けれど、ウサギがエリューション・フォースであるという以外に、真新しい情報は分からない。ほとんどがフォーチュナの言った情報と合致した。強さ自体は、弱くはないといった感じであったが、何せよこの数だ、下手を打てばどうなるか分からないな、とエルヴィンは息を呑んだ。 もう得られる情報はそれほどないと思われたエルヴィンは静かに、側にいたネザーランドドワーフの横に座り、撫ぜた。ネザーランドドワーフはエルヴィンに近寄り、寄り添うように座った。優しく抱き上げ、抵抗のないウサギをそっと抱き抱えた。重いかったが、それ以上に柔らかいと、エルヴィンは思った。 「モフモフだな……エリューションになってしまったのが、本当に残念だな……」 ● 調査も滞りなく終わり、モフモフも十分に堪能したリベリスタたちは、ゆっくりと立ち上がった。ウサギたちは突如動いたリベリスタに少し驚いたように彼らを見たが、まだ敵意などを感付いているようではなかった。 集中を高め、臨戦態勢を整える。徐々に、ウサギたちもリベリスタの不穏さに感付き始めていた。決して危害を加えるものではなかったが、その気配が漂っていることを理解し始めていた。茂みの影にいたウサギたちが、続々と飛び出してくる。あっという間に女性の姿は欠片すら見えなくなり、視界がウサギたちで埋め尽くされていた。準備をするものの未だ動きを見せぬリベリスタに、ウサギはジリジリと近付いていた。 ウサギがエルヴィンの側に寄り、足下を嗅ぎ始めたその時であった。突如エルヴィンは思いきり地面を蹴飛ばして、猛然とウサギの群れの中心に突撃した。突然の動きに驚いたウサギたちを見遣りながら、エルヴィンは呟いた。 「すまんな、これが俺たちの役目なんだ、せめてすぐに終わらせてやるからな……!」 残像と共に、側にいたウサギが切り跳ばされた。チンチラが異臭を発しながら逃げ惑っていた。他のウサギが一斉にエルヴィンやその他のリベリスタに飛びかかる。突撃するウサギをいなしつつ、フツが氷の雨を散撒いた。時折ウサギがブウと小さく鳴くのが聞こえた。 カイがウサギの流れをかき分けて、女性の方に近付き、その近くのチンチラに拳を全力で叩き付けた。 「すまないのダ! 許してくれなのダ!」 懺悔しつつ、カイは自分に集まりつつあるウサギたちの注意を引いて、女性から遠ざけていった。 「ウサギ殿の心は愛音にはわからぬものでございます。けれど、エリューションの存在は世界を傷つける――愛なきことでございます。愛音は愛をもって向かうのでございます! LOVE!」 愛とは防御なりとでも言わんばかりに盾を構え、ウサギの流れを逸らしていった。その背後にはアンナの姿があった。何にせよウサギの数は多い。回復が重要となることは明白であった。アンナはその背後から頑然たる意志を持って光を放ち、周囲のウサギを焼いた。 「もっとモフモフしたいが、仕方ないな!」 茉莉の放った黒鎖が自分の横を通り抜けたのを見て、竜一はウサギの中に飛び込んだ。高速回転させた得物は殊更にウサギの目を引いた。やがて激しい烈風が巻き起こり、視線もろともウサギたちを吹き飛ばした。風が引くのと同時、何匹かのウサギが竜一に向け突進する。 その様子を見つつ、ヤマは狙いを定めていた。 「……やはり足かの」 ぼそっと呟きつつ、ヤマは周りのウサギの足に気糸を飛ばす。炸裂したそれは幾つかの足に綺麗な穴を空けた。ウサギは悶えるように寝転ぶが、足を引きずりながらもリベリスタに向かっていった。『デモンスリンガー』劉・星龍(BNE002481)は心を無にしながら、足を引きずるウサギを無慈悲に撃った。その一撃は、正確にウサギの頭を撃った。少しよろよろしてから、ウサギは静かに動きを失くすと、そのまま形を失くして霧のようになり、空気に溶けていった。 ネザーランドドワーフが未明に突撃する。一発ではそれほどの衝撃にはならないが、しかしそれが複数もやってくると衝撃は数倍にもなり、やや足がもつれる程になる。 けれども。その度に柔らかい感触を感じられる。ならばそれも悪くないかもしれないとふと未明の頭を雑念が過る。 「駄目ね、危険思考。振り払わないと!」 言葉に続いて、未明はウサギを斬り付けた。 ● 「来るのでございますロップイヤー殿! 一斉に飛びかかれる数には限度がある! それでは愛音に直撃は出来ないものでございますよ!」 挑発に乗ったのかどうかは定かではないが、愛音に向けて大量のウサギが突撃してきた。愛音はそれをヒャーとかウワーとか言いながら盾で持ちこたえていた。 愛音に突撃してきたウサギたちを次の瞬間黒色の鎖が飲み込んだ。どす黒く染まったそれが次々にウサギたちを傷つけていく様は、さながら血の濁流であった。飲まれたウサギたちは続々と消えていく。 数の暴力とばかりに突撃してくるウサギたちの攻撃は、それのもたらす異常も相まって、リベリスタの体力をどんどん削っていった。けれどもこの数だ、リベリスタが広範囲に攻撃を放てば、その標的となるウサギも自ずと増える。リベリスタの攻撃の度に多くのウサギが吹っ飛び、その内幾らかが霧となって消えていった。 ヤマはウサギの数を確認する。ざっと見回しただけでも、数がかなり減っているのが分かる。集中攻撃を受けていたチンチラは既に残り少なく、同様にロップイヤーも着実に姿を消していた。初めは大きく削られつつあったけれども、アンナの回復もあって何とか持ち直していた。 「LOVEは不滅でございますよウサギ殿!」 傾れ込む攻撃を受け流しながら愛音が叫ぶ。その勢いも、次第に弱まりつつあった。 フツが振らせた氷の雨に紛れて、何匹かが消えた。雨をかき分けて、ネザーランドドワーフがフツに体当たりする。吹っ飛ばされたフツが次に見上げると、そのウサギもまた、弱々しく消えていった。 「お前たちの死は無駄にはしないのダ! 毛皮のマフラー作るのダ!」 慰めというよりも挑発めいた言葉を吐きながら、カイは強烈な一撃を叩き込んだ。衝撃のあまり、ウサギは瞬間のうちに消し飛んだ。これではマフラーは作れまい、とカイは落胆しつつも、攻撃を続ける。 殴り、斬り付け、神秘が注がれた。最後のウサギがヨロヨロと倒れ、静かに消えていった。ウサギがいたという跡は消え、代わりに戦闘の痕跡だけが残った。消えることを拒むように、微かに光る散りに向け、エルヴィンが呟くように言った。 「次、生まれ変わる時は、楽しく野原を駆け回れる世界だといいな……」 そうであればいいと、誰もが願った。 ● 「大丈夫?」 未明が倒れていた女性を抱き起こし、声をかける。周囲で戦闘があったことに気付いてもいないのか、ぐっすりと眠っている。けれども、耳元で数度声をかけると、女性はゆっくりと、瞼を開いた。 「……?」 何もかも分かっていない、と表情から瞬時に読み取ることが出来た。キョトンとしながら、やがて考えることを放棄したのか、ゆっくりと目を閉じていく。 「待ってください! お願いだから眠らないで欲しいのでございます!」 愛音が必死に叫ぶと、女性は目を擦りつつ眠るのを止めた。 「……ええっと、これは何、かな」 「倒れてたのよ、あなた。大丈夫?」 「身体がものすごくダルいの以外は、多分」 気だるくあくびをしながら、女性は答えた。それからリベリスタは各自自己紹介をしていく。 「……その人はどうしたんだい?」 一通り紹介し終わった所で、女性はカイを指差して訊いた。低い声で唸りながら、倒れている。 「何でもありませんよ」 茉莉が静かに答えると、女性は別段興味もなかったのか、そう、と一言だけ口にした。ここは一ツ目覚めのキスで、なんて言うから、と竜一は嘆息した。 「沢山のウサギが君の周りにいたんだ。守るようにして、ね」エルヴィンが先ほどまでの状況を説明しつつ、訊いた。「心当たりはないか?」 「……ないかな。今、しばらく記憶がないんだ。寝てたからかな」 「君に変化があったり、とかは?」 「さっぱり。君たちから見て、どう思う?」 やはり状況理解が追いついていないのだろう、女性の方から問うた。 「……多分、変わってるんじゃないか」 「ふーん」 澄ましてはいるが、その実女性は動転しているようだった。フツがゆっくりと切り出す。 「アークって組織があるんだ。お前みたいな奴がいっぱいいる、さ」 「君さえよければ、君を保護したいのだが?」 エルヴィンの言葉に、疲れたように溜め息を吐きながら、女性は答えた。 「わけも分かってないし、君たちについてくのが無難っぽいね。連れて行ってくれるかい」 女性は、フツとエルヴィンの要請に素直に応じた。 その後、リベリスタたちは帰路に着いた。そこで死んでいったウサギたちを、しっかりと供養してから。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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