●FMF-B(フルメタルフレームブーステッド) 男達は空を覆う巨大な影に目を細めた。 巨大タブレット型飛行機械『二和』。そこから数機の人型兵器が自由降下してくる。 着地と同時に建物を盛大に崩壊させ、瓦礫の山を爆散。 全長にして3m前後。逆関節の足と完全武器化した腕。遠目から見れば、首の無い巨人のようなシルエットをしたそれは、高機動人型戦車『初富』『三咲』『八柱』である。 半透明な装甲で覆われた胴体部分には、それぞれの素体が四肢をもがれた形で収まっていた。 「な、なんだこりゃ……」 慌てて外に出た男達は圧倒的な光景に息をのんだ。 天空を浮遊する飛行機械『二和』の巨大ディスプレイに白衣の男が表示される。 『はいどーも、皆集まってるね。悪いけど組織もろとも死んでもらうよ』 「なんだとお!?」 各々武器を取り出す男達。そう、彼らはE・能力者なのだ。 「派手なカチコミかけやがって、舐めんじゃねえぞ! ぶっ殺す!」 『あ、うん。分かってるよその反応。初富、やっちゃって』 『ラージャ』 グオンと唸りを上げる人型戦車『初富』。 彼は兵器化した両腕から巨大なエネルギーブレードを出現させると、凄まじいまでのスピードで男達を切り捨てて行った。 勢い余ってビルの壁を切り裂き、瓦礫やガラスが雨の様に降り注いでいく。 「お前ら……く、くそ!」 やや格上の男がスレッジハンマーを担いで跳躍。 初富に強烈な打撃を与えようとしたが……しかし。 『八柱、三咲。もういいよやっちゃって』 『『ラージャ』』 間に割り込んだ『八柱』が巨大パイルバンカーと化した腕を掲げる。 「ぐお……!?」 両目を見開く男。鉄杭が打ち出され、先端に取り付けられた炸裂弾が爆発。激しい爆風と共に男は吹き飛んで行った。 「検見川ァ! なんでだ、なんで……!」 ミサイルランチャーを引っ張り出し、構える男。 だが彼が引金を引く時には、三咲がジェット噴射で高々と跳躍。高射砲と化した両腕から大量の弾丸を雨の様にまき散らした。 次々と吹き飛んでいくビル。そして人。 この日、大量の死者と共に竜崎組事務所は壊滅したのだった。 ●完全兵器フィクサード 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は、悲しげに目を伏せていた。 「皆さん、松戸研究所をご存知ですか。フィクサードにアーティファクトを侵食させることで一部機械化し、より強靭な戦士を生み出すというFMF計画。それが今、完全な兵器化計画へと変貌してしまいました。今彼らは、幾つもの組織を破壊。その中には一般人も多く含まれ、大きな被害を及ぼしています。このままにしておくわけには、いきません……」 敵となるのは、アーティファクトより完全な浸食をうけ、人格と記憶を完全にロストした五人のフィクサードたちである。 それぞれ戦闘力は高く、全力で挑む必要があるだろう。 和泉はそれぞれのスペックをできるかぎり記した資料を手渡し、あなたに頭を下げた。 「何としても……彼らをここで止めて下さい。すべて」 ●松戸助六 アダムスキー型の強襲支援飛行体『六実』がぐるぐると二和の周りを旋回飛行している。 その様子を、松戸助六は黙って見つめていた。 金属製の椅子に座ってはいるが、両手両足は頑丈に固定されている。 足元のディスプレイが、白衣の男・鎌ヶ谷禍也を映しだした。 『僕は前から鬱陶しいなあと思ってたんだ。本人の意向を前提とするFMF計画はさ。いいじゃないか、そんなものは。洗脳なり脅迫なりしてちゃくちゃく改造しちゃえばいいんだよ。どうせ記憶も人格もロストするのに、なんで大事にしちゃうのかなあ?』 「……」 『ほら見なよ、彼等あんなに滅茶苦茶に放題暴れて。すっごく不本意だろうね、苦しいだろうね……ぞくぞくするなあ、あは』 「……」 『所でさあ、教えてよ。かつての教え子たちがこんなヤンチャに育つのって、どんな気持ち?』 「鎌ヶ谷、お前というやつは……!」 奥歯を砕けんばかりに食いしばる松戸。 眼下は既に、火の海となっていた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 9人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年10月03日(水)23:23 |
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■メイン参加者 9人■ | |||||
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●破壊の雨は降る。今日も明日も人は死ぬ。故にあなたは生きている。 ――博士、気分はどうだい? 死神がやって来たよ。 屋上から順に崩壊していくビル。窓や壁を壊し人間がじたばたともがきながら落ちていく。 その中をまるで海を泳ぐイルカのように掻い潜って行く九つの影があった。 ワイヤレスイヤホン越しに通信音。 『今回の任務は巨大タブレット型飛行体二和を初めとするFMF-B五体の破壊です。彼らの強化されたボディはそれなり以上に脅威となります。そのため依頼主からは単純な撃破のみが提案されていますが……』 『それでも自由意志に任されていた。作戦通りに行こう』 『あれがメタルギアーズか? イメチェンし過ぎだろ』 『悪趣味だな、鎌ヶ谷。まあいい』 『羨ましい……俺もパワーアップしてくんねーかなー!』 『人格と記憶がロストしてフィクサード化しますが?』 『前言撤回だ!』 『さてさて、今日こそはパニッシュできるかなー?』 『さーァやって参りましたセルマチャンヴァァァサスッ!』 『だぁぁ五月蠅いマイクの近くで叫ぶな!』 『今いい所なんだからもう少しぃー!』 『通信は継続します。各自状況が変わり次第連絡を。以上』 「――了解」 刀を抜く『エンジェルナイト』セラフィーナ・ハーシェル(BNE003738)。 「今、彼らは助けを求めてる。それなら私は助けてあげたい。それが私の目指す、本当のリベリスタだから」 「その気持ちはぐるぐさんも一緒だけどー……そろそろお話する時間無くなりそうだよ?」 『Trompe-l'?il』歪 ぐるぐ(BNE000001)が銃のフレームをスライドさせた。 彼女達を挟むように二体の高機動人型戦車が自由降下してくる。 アダムスキー型飛行体『六実』から射出された翼型ジェットパーツを空中接続。 ショルダーパックからスライドさせてパイルバンカーを装備した八柱が突撃体勢をとった。 「そいつは俺に任せとけ!」 『リベリスタ見習い』高橋 禅次郎(BNE003527)がすかさずショルダータックル。 半透明なシールドで覆われた胴体部分に激突し、二人は集団から大きく外れる。 「福松、ブレイク弾だ!」 「だったら首をどけろ、一緒に撃たれたくないだろう」 『糾える縄』禍原 福松(BNE003517)は片手で特殊弾をリボルバー式弾倉に叩き込むと手首を返して装填。八柱のジェットパーツに弾丸をよく狙って発砲した。 狙い違わず着弾。煙を吹き螺旋軌道を描きつつ落下していく八柱。せめてもの道連れとして禅次郎の首を掴み、一緒に落下していく。 「禅次郎さん!」 「構うな、先にいけ!」 「ヒューウ、良いセリフだ。真似させてもらおう!」 『疾風怒濤フルメタルセイヴァー』鋼・剛毅(BNE003594)が黒い剣を抜き、初富へと突撃をかける。アイシールドが怪しく発行。 初富は腕からビームソードを展開してガードするが勢いに押されてビルの外壁に激突。ジェット噴射をかけながら大量の外壁を抉るように破壊しながらもがいた。 やがて壁を突き破って屋内へと到達。スチールデスクやパソコンを大量に破壊しながらフロアを突っ切ると、反対側の壁を突き破って飛び出した。 『剛毅さん、無事ですか』 「俺のメタルボディが見えないのか。ここは任せて先に行けい!」 剛毅の通信を最後に初富・八柱の二体から解放された『子煩悩パパ』高木・京一(BNE003179)たち。 『フォートプリンセス』セルマ・アルメイア(BNE003886)は翼をぱたぱたとやりながら大きく息を吸った。 「今度こそォ! ポンコツを沢山あつめたって無駄だ無駄ァ! 高純度人間サマのあちきパワーをみせてや――と、お?」 弾丸が身体を掠る感覚。 そして背後で飛ぶ火花。 境に、翼によって上昇をかけていたセルマは急に減速した。 身体ごと振り向く。 「おわ、三咲!」 『目標補足、撃墜』 彼等の直下より急接近する影あり。 ジェットパーツを備え戦闘機のように体勢を変形させた三咲が高射砲を連射しながら彼らへと突撃をかけてきたのである。 「下から来ます、散開ッ!」 華が開くような軌道で一斉に回避する京一たち。 三咲は彼等を通過した直後に人型に変形。制空権を確保しつつ薙ぎ払うように高射砲を撃ちまくって来た。 回避直後の京一に被弾。翼の加護がブレイクされる。 「向うもブレイク弾です。皆さん気を付けて!」 「気を付けるのはアンタだきょーいっちゃん!」 セルマが盾をうまく使ってエアライドし、京一と三咲の間に割り込む。 「あうっ」 弾丸をしこたま食らって気絶するセルマ。 京一は彼女を抱きかかえつつ自由落下していった。 「京一さん、セルマさんっ!」 「よそ見してる暇なさそうだよ、ねー人外ちゃん?」 大鋏を逆手に持って顔のめに翳す『殺人鬼』熾喜多 葬識(BNE003492)。 降り注ぐ弾丸を身体に受けながら漆黒解放。闇で構成された暗器を体の周囲に展開。それらを纏ったまま三咲へと体当たりをしかけた。 「殺人鬼はヒトを殺す生物だからね、ちょっと殺せないなあ」 『排除』 脇腹に砲台の先端が叩きつけられる。ニヤリと笑う葬識。高射砲が放たれるのとほぼ同時に腕の根元へ大量の闇暗器を突き立てた。 小爆発を起こして彼女の腕がまるごと吹き飛ぶ。 「機械にされて余計なモノつけられて、アイデンティティはどこ行っちゃったんだろうね。ねえ?」 煙と血を吹きながらくるくると落下していく葬識。 ここまで来ればもう振り返ることはない。 セラフィーナは急速な螺旋回転をかけながら突撃。 三咲のボディパーツスレスレの部分をまるごと貫通して行く。 「夢と技術と歴史の結晶。それを踏みにじることは、赦せない!」 爆発する三咲を背にセラフィーナは更に加速。 ミサイルが如き急上昇によって二和の巨大なボディを貫通した。 液晶ディスプレイの感光ジェルをまき散らしながら湖の女神さながらに飛出すセラフィーナ。椅子に固定された松戸博士の前で翼と腕を広げた。 目を細める松戸博士。 「殺しに来たか。予期しなかったとは言え彼等を作ったのはワシじゃ。当然の報いじゃな」 『外敵接近、シールド展開します』 『六実、防御補助開始』 マジックハンド型のアームを露出させて接近してくるアダムスキー型飛行体・六実。 しかし下方から撃ちこまれたスナイプショットによって小爆発。バランスを崩して離れた。 「キャッシュからのパニッシュ。あ、後から言うのもアリの方向でね?」 銃を構えた『SHOGO』靖邦・Z・翔護(BNE003820)の姿が分割型ディスプレイに表示された。 銃を指でくるくる回しながら言う。 『歪ちゃんあとヨロシク』 「はいはーいっ」 迂回して飛び込んでくるぐるぐ。 バチバチと火花の散る二和の上を軽く転がりつつ松戸博士へと急接近した。 ナイフを構える。 そしてやや鈍いエッジが、松戸博士の両手首を切断した。 「うぐぉ……!」 「痛いけど我慢ね!」 ぐるぐは続けて腰や脚を固定していたベルトを解除。 蹲る松戸博士を背中からひっつかんで飛んだ。 神秘ロックのかかった腕固定器具は解除を諦めた。手首ごと置いていくことにする。 小柄な割に謎の力で引き摺り二和の淵まで移動。 「ぐるぐ航空にご乗車のお客様ー」 「……何する気じゃ。まさか?」 「当機はまもなく自由落下しまーす」 「な、ぬおおおおおおおおお!?」 ぐるぐは松戸博士を掴んだまま、二和から一気に飛び降りたのだった。 自由落下しながら通信。 「松戸博士の救出完了! 離脱しまーす、フォローよろしくね!」 ●兵の無い兵器はただの器である。だが人を殺すのに器以外は必要ない。 『――以上、ぐるぐ航空でした』 「了解、各員フォローに回ってください。目標は全機の足止め、可能な限り交戦、撃破して下さい!」 『了解ッ!』 仲間の返事を確認し、京一は通信を一旦止めた。 身体を抜けていく荒々しい風の音。 腕の中でぐったりと力を抜くセルマ。 スーツとネクタイをなびかせながら、京一はビルの外壁に靴底を擦りつけた。 サラリーマンが絶望する程の勢いで靴底のゴムが削れていく。加熱しすぎた外壁部分から火花が飛び、綺麗な革靴を溶かしていく。 「も、もう少し……!」 それが約三秒。本人にとっては果てしなく長い三秒の後、京一は翼の加護を展開。 セルマと自分に翼をつけると地上すれすれの所で急制動。 こらえきれなかった分は壁を蹴っ飛ばして逃がし、彼は地面を転がった。 「た、助かった……」 息を荒くしながら仰向けに寝返りを打つ京一。 かくして、頭上から降ってくる三咲の残骸と高射砲を見た。 ぱちりと目を開くセルマ。 「ハッ、セルマちゃんは一体何をってウワアアアア防御オオオオ!」 咄嗟に眼前に半透明なシールドを突き出す。 ギリギリで展開された防御シールドにより残骸が弾かれる。 「あちきのボディは鉄壁フォートレス! そんな豆でっぽーで貫けると思うなよォ! ……で、後は何すればいいんだ!?」 「仲間のフォローですよ」 立ち上がってセルマに手を貸す京一。 そんな彼等のすぐ後ろに剛毅と初富が墜落してきた。 咄嗟に伏せる二人。 瓦礫の粉砕と同時に、初富が彼等の頭上を豪速で飛び越えて行った。 そんな京一たちのはるか頭上。 次々と爆発を起こして沈みゆく二和の上で、セラフィーナはせわしなく刀を奮っていた。 なぜか? 六実が大量のスタンマジックハンドを展開して襲い掛かってくるからだ。 高速型のセラフィーナと言えどここまでしつこく攻撃を続けられると凌ぐので精一杯になる。 「あなたの仲間も必ず止めます。だから安心してみていて下さい!」 僅かな隙をついて刀をまっすぐに突き刺す。 上下左右から回り込んで襲い掛かるマジックハンド。 そのすべてがセラフィーナに到達する――コンマ五秒前。 「大きめパニッシュ!」 六実のボディを魔力弾が貫通。 セラフィーナの頭部から右五十センチの場所を通過して二和の大型液晶に突き刺さった。 ガクンと動きをストップさせる六実。 「あ、今のキャッシュからすごく溜めたから。見てた? ちゃんと見てた!?」 「あーあー恰好よかったよ!」 翔護を押しのけて六実へ飛び乗る福松。 ハッチらしき部分を見つけて思い切り殴りつける。 鉄板が拉げ細かい部品や破片が吹き飛ぶ。福松はそれを無視してハッチプレートを引き剥がした。 「待って炉鎌ヶ谷ァ、テメェは必ずぶん殴る!」 そして、六実の内部へ滑り込もうとして動きを止めた。 革張りのマッサージチェア。 その中心にやや大き目なディスプレイ。 赤と青のコードが大量に伸び、赤い7セグメント方式で何らかのカウントダウンを表示していた。 こんな物体が存在していたとしたら、次に起こる現象は想像がつく。 『ざーんねーんでしたー! 絶対踏み込んでくるような場所になんていないよ。今度はもっと凄い場所で合おうね。九美上興和会のビルとか――バイバイ!』 鎌ヶ谷の声が無線越しに響く。 シートの奥で、六実の素体が薄目を開いた。 「鎌ヶ谷ァァァあああああああああああああああああ!!!!」 直後、六実は自爆した。 咄嗟に顔を庇った福松と近くにいた翔護とセラフィーナ、そして二和を巻き込んで破壊。 空に大きな黒煙を広げ、大量の残骸を振らせた。 その中には、六実と二和の首も混ざっていたという。 二和と六実の崩壊を背に、八柱は逆関節脚を畳み脛部分のキャタピラを駆動。 西方面へ撤退したぐるぐと松戸博士を追って走り出した。 が、しかし。脚部に闇の縄が引っかかり八柱は盛大に転倒。 「いっちゃやだー、寂しいー」 背後からゆっくりとした足取りで葬識が現れた。 「もっと相手してよ」 脚部を再展開して反転。八柱は突撃と同時にパイルバンカーを叩き込んだ。 大きく飛び退く葬識。バンカーは地面に突き刺さり爆発。 葬識は爆風に煽られバランスを崩し、そこを狙って八柱は再突撃。二発目のバンカーを叩き込んできた。 「おっと!」 闇武具を眼前に展開して緊急ガード。 それをぶち破ってパイルバンカーが炸裂し、葬識は思い切り吹き飛ばされた。 地面をごろごろと転がる葬識。 「もしかしてこれ、土砕掌のFMF版だったりするの?」 「かもな。だったら速攻戦しかないぞ」 葬識の頭上を飛び越え、銃剣を構える禅次郎。 「くらえっ!」 ペインキラーを連射。 八柱のボディへ立て続けに命中し、半透明なシールドにヒビが入る。 向うから急接近をかけパイルバンカーを叩き込んでくる八柱。 禅次郎は急上昇で回避。しかし爆風とブースターに乗って八柱が同じ高さまで登って来た。 「どういうジャンプ力してんだ!」 零距離でペインキラーを発射。同時にパイルバンカーが叩き込まれ禅次郎は吹き飛んだ。 地面をバウンドしつつも無理矢理バランスを取り照準。 「葬識手伝え、一斉攻撃!」 「しょうがないね」 巨大な鋏を作りだして突っ込む葬識。振り上げられた八柱の腕をばっさりと斬り落とす。 直後、ボディを禅次郎のペインキラーが貫いた。 爆発を起こし、胴体の上と下が分裂した状態で八柱の素体が転がってくる。 葬識は目を細め、八柱から流れた血液をゆびで掬う。 「そっか、君も人だったんだ」 背部ジェットパーツによってぐるぐを追いかける初富。 両腕のビームブレードを限界まで放射し連続でスイング。 飛ぶ斬撃がぐるぐの背に直撃した。 松戸博士を抱えたまま地面を転がるぐるぐ。 『指令実行。松戸博士逃走の場合、抹殺』 「下がって博士!」 肩を掴んで引っ張るぐるぐ。 ぎりぎり胴体への直撃は免れたものの、松戸博士の膝から下が強制的に切断された。 「う、ぐっ!?」 トドメを刺そうと腕を振り上げる初富。 刹那。 「そぉこまでだぁっ!」 横合いから剛毅が高速でタックルをかました。 初富はバットでぶん殴られたかのように一瞬跳ねて転倒。 「フ、お前とは一度戦ったな。今度はどうだ!」 ターンする剛毅。初富はその顔面をおもむろに掴むと、ビームを放射したまま地面に叩きつけた。ジェット起動。盛大にアスファルトを抉っていく。 「フルメタル――」 抉れたアスファルトの跡が弧を描き、ビルへと二人一緒に突っ込んで行く。 そして。 「ダークネスバーストッ!!」 外壁ごと吹っ飛ばして暗黒の波動が発射され、初富の巨体を弾き飛ばした。 半透明な胴体パーツにヒビが入っている。 複雑に痙攣しながら上半身を起こそうとする初富だったが、バチバチと漏電を起こし仰向けに倒れた。 一方の剛毅も、地面のタイルに身体を埋めたまま停止。 京一とセルマが急いで駆け付けた。 「生きてるか鎧の人ー!」 「このメタルボディがゲッホゴッホ!」 「無事ですね……」 まず回復をかけ、京一は通信機に手を当てた。 「作戦終了。皆さん、安全地帯で集合しましょう」 辺りを見回す。 崩壊したビルと、死体と、炎。 周りに会ったのは、それだけだった。 ●君が未来を望むなら 松戸博士は死亡寸前の状態だった。 手首は切断。足も膝から下が無くなっている。 それでも生きていたのは、それぞれが機械の義手義足であったからだった。 京一とセルマが手分けして応急処置を施していると、仲間の車が到着した。 車から降りてくるセラフィーナ。 「…………」 彼女達が抱えていた六実と二和の首を見て、松戸博士は深く息を吐いた。 「死んでしまったか。みんな、ワシを残して」 「……すみません」 目を伏せるセラフィーナ。六実の頭部にくっついた愛嬌あるパラボナアンテナが半分ほど欠けていた。 「いや、まだ残っている」 剛毅や禅次郎たちが手分けしてトランクから初富のボディを運び出してきた。 大体は破損したが、胴体パーツはかろうじて無事だったのだ。 松戸博士にかけより、襟首を掴む福松。 「教えて貰うぞ松戸。何が起きようとしている。何をしようとしていた。第二の太陽とは何だ」 「答える義務があるのか?」 「この――」 拳を振り上げる福松。 「はいワタッシュからのーパチッシュ☆」 その口に、翔護が横からわたパチを突っ込んだ。 思わず仰け反る福松。 「クールに行こうぜフッ君。スタァだろ?」 「……ああ」 目を反らし、帽子をかぶり直す福松。 「個人的な願いだ。七栄を取り戻すために、力を貸してくれ」 「…………」 沈黙する松戸。翔護が福松の頭に手を置いた。 「頼むよマッド博士。無事な初富ちゃんの素体だけでもなんとかならない?」 「わからん……」 目を細める葬識。 ぐるぐがじっと松戸の顔を見た。 「わからんが……一度不死の技で死ぬ寸前まで破壊できれば、ただのメタルフレームとして、重傷状態ではあるが回復するかもしれん。記憶や感情は再びリセットされるじゃろうがな」 「そっか」 立ち上がるぐるぐ。 「なんとか、できるんだね」 二和、六実、豊四季、五香、八柱。 沢山の『人間』が死んだ。 けれど希望はあるかもしれない。 未来はまだ、潰えてはいない。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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