●ひぐらしは鳴く 「もう帰ろうよ。カナカナだって鳴いてるよ」 「もうちょっとだって、見たらすぐ帰るから」 少女の不安そうな声に少年が元気良く返す。 空にオレンジの色が混じり、ひぐらしが鳴き始めていた。いつも遊ぶ山道から外れた場所。そこで少年が巨大な花の蕾を見たという。 「すっげーんだぜ! ぜってー驚くって」 少年に元気づけられ、少女の歩みに力が戻る。 獣道を歩むと開けた場所に出る。そこには見るものを惹きつける、巨大な純白の蕾があった。 「うわーー! すごいすごい!」 「だろっ」 驚く少女に、得意気な顔で少年が笑う。 「おっきーい! こんなのはじめて見たよ」 「へへっ、二人だけの秘密だかんな!」 はしゃぐ二人は気付かなかった、鳴いていたひぐらしの声が聞こえなくなっている事に。 いつの間にか、辺りに巨大な茎が幾つも柱のようにそびえ立っていた。 「なんだこれ?」 少年が触ろうとすると、茎がたわみ膨らんだ先端が頭を下げる。 「……え」 先端が花咲くように口を開くと、まるで虎バサミのような牙がぎしりと並んでいた。 「きゃああああ!」 悲鳴に振り向くと、少女が足を噛まれ倒れていた。 「サキちゃん!」 「痛いよぉコウくん助けてぇ」 少女を助けようとした少年の体が凍る。茎が大きく口を開けて少年に迫る。 「あ、あああああ!」 少年は叫び、走り出す。無我夢中で駆けて駆けて、気付くと森を抜け見知った道に出ていた。 「あ……」 安堵と共に思い出す。少女を置いてきた事実を。 「もどらなきゃ……助けないと、ううぅああ」 足が竦み、絶望に涙が溢れる。滲んだ視界に森から足に伸びる蔦が映った。体が引き摺られる。既に自分も捕まっていたのだ。最期まで少女と一緒に居ればよかったと後悔しながら、少年は暗い森へと姿を消した。 ひぐらしの声が聞こえる。誰も居ない森の奥深くには、真紅の薔薇が大輪を咲かせていた。 ● 「美しい花には棘があるというけれど……」 これは度が過ぎると『リンク・カレイド』真白イヴ(ID:nBNE000001)が呟いた。 「このままだと二人の子供がE・ビーストの犠牲となるわ」 それを止めるには子供達が出会う前に倒すしかない。 「問題は敵の居場所を知っているのが少年だけということ」 今なら少年が通る山道に待ち構える事が出来る。何とかして少年から情報を得て、子供達の保護と敵の討伐をして欲しい。 「大変かもしれないけど、貴方達なら出来ると信じてるわ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:天木一 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年09月28日(金)23:34 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●少年と少女 緑の茂る山道。残暑の日差しに熱されたアスファルトの上を、小麦色に焼けた活発そうな少年と少女が二人仲良く歩いていた。 二人が来るのを察知し、山道を先回りして待ち構えていたリベリスタ達は行動を開始する。 「やあキミ達、こんにちは」 「こんにちは、あなたたちはこの辺の子かしら?」 『闇狩人』四門 零二(BNE001044) と『大食淑女』ニニギア・ドオレ(BNE001291)の二人がまず挨拶をして近づいた。礼儀正しい大人の落ち着いた雰囲気に、少年とその後ろに隠れた少女は恐縮したように、こんばんはと挨拶を返す。 「そうだけど……」 「オレたちは植物愛好会集まりで今日はここに来たんだ」 ウサミミを付けた『デンジャラス・ラビット』ヘキサ・ティリテス(BNE003891)がウサギのようにぴょこんと耳を揺らしながら、子供達の緊張をほぐすようにオーバーアクションで手振りを加えて説明する。 「それで山の色々な珍しい植物を見つけるための調査をしています。何か珍しそうな植物を見たことはありませんか?」 続けて子供達と視線を合わせるように少し屈んで、『青い目のヤマトナデシコ』リサリサ・J・マルター(BNE002558)が優しく問いかけた。 少年と少女は顔を見合わせ、何と答えようか悩む表情を見せる。 「知ってるんなら是非教えて欲しいな」 真剣にお願いする『つぶつぶ』津布理 瞑(BNE003104)は、教えてくれるまで梃子でも動かないと言わんばかりの勢いだった。その勢いに押されたのか、少女が少年に目配せをした。 「知ってるけどさ」 「今から大きな花の蕾を見に行くところなんだよ」 知っているという言質を引き出せた。リベリスタ達は顔を見合わせ、もう一息だと説得を続ける。 「よければ私達も一緒にその花の蕾を見たいのだけど、いいかしら?」 『ライトニング・フェミニーヌ』大御堂 彩花(BNE000609)が誠実にお願いすると、少年はうーんと悩み、ちらりと少女を見た。 「そう、二人の秘密なのね。でもよければ一緒に見せて欲しいわ」 「もしその珍しい花が新発見だったら、あなたが名前を決められるかもしれませんよ」 ニニギアとリサリサが続けて言葉を重ねる。 「コウちゃん、私は別にいいよ」 「しょうがないなー、ホントは二人だけの秘密にするつもりだったんだけど、サキがいいなら教えてあげるよ。ほら、こっちだよ」 少女の言葉に、諦めたように少年はそう言うと、山道を歩き出す。 「そうか、ありがとう。珍しい植物は保護してあげないといけない……『命を護る為にね』」 零二の意味深な言葉には、確固たる意思が籠められていた。 「それじゃあ、よろしく」 子供とどう接していいのか分からない『孤独嬢』プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラック(BNE003341)は、ぶっきらぼうにそれだけ言うと、前方を注意しながら歩き出す。 「まあ記憶を弄らずに済んで、とりあえずはよかったかな」 騙してるみたいでちょっと心が痛まないでもねえけど、食われたら心痛むじゃすまねえし。そう独りごちると、ちらりと二人の子供に目をやった。 「それでは早速向かうとしよう」 そう言うと『破壊の魔女』シェリー・D・モーガン(BNE003862)が最後尾を歩き出す。 ●手の温もり 「そういえば名前を聞いていなかったな、教えてもらえるかな?」 「オレは光一で、こっちが……」 「咲だよ」 名を聞く零二に、元気良く少年と少女が答える。 「二人はよくここらで遊んでいるのかしら?」 「うん! このあたりは木の実なんかも取れるしな!」 「もうちょっとしたら栗が拾えるよね」 「へぇ~栗拾いか、それはいいなオレもやってみてーぜ」 「その頃にもまた来てみたいわね」 彩花、ヘキサ、瞑の3人は年が近いこともあってか、子供達と距離を縮めて話を弾ませる。 その時、話に夢中になっていた所為か、少女が段差に足をとられて転びそうになる。咄嗟にその腕を取ったのはプレインフェザーだった。 「あ、ありが――」 「別に、前見て歩きな」 最後まで言わせず、少女が無事に立ったのを見ると、すぐに前を向いて歩き出す。 「危ないですね、ワタシと手を繋ぎましょうか?」 リサリサが少女にそう聞くと、横から少年が近づき少女の手を取る。 「こけないようにオレが繋いでおくよ!」 「へぇ、二人は仲良しなのね。キューピットならぬ天使の瞑ちゃんに任せなさい!」 「ほう、その年でカップルとは羨ましいな」 うんうんと何やら一人納得している瞑と、にやりと笑うシュリー。 そんな様子を微笑ましそうに、ニニギアと零二が見守っていた。 「無事に帰らせてあげないといけませんね」 「ああ、全力を尽くそう」 瞑とシェリーにからかわれ、顔を赤くしながらも手を離さない少年と少女を見て、皆が思いを強くした。 ●夕暮れの戦い 「ここを行けばもうすぐだよ」 少年の道案内で道無き道を進む。零二とヘキサは苦も無く山道を歩くが、流石に舗装されていない道は歩きにくく、特にスカートの女性は枝に引っ掛けないように苦労していた。 空の景色が変わりゆく、ゆっくりと日は暮れ始め、既に空はオレンジに色付いている。そこかしこでひぐらしが鳴き始めた。 「そろそろか……」 ブリーフィングで聞いていた状況に近い、零二が皆に目配せをする。それに頷き返した皆が警戒のレベルを上げる。 「ほら、あれだよ!」 少年が木々の開けた空間を指差す。そこは森から切り離されたような、静かに凪いだ空間があった。先には大きな、一メートル程にもなるだろうか。真っ白な見るものを惹き付ける美しい花の蕾が宝石のように鎮座していた。 「待てっ」 蕾までの距離は三十メートルといったところだろうか、ずっと周囲に注意を払っていたプレインフェザーは辺りの木に棘の付いた蔦が絡み付いているのを見つける。 「どうかした?」 何も知らぬ少年は不思議そうに問いかける。 「……まずい、ここはもうテリトリーの中だ!」 蔦から情報を読み取り、既に敵の攻撃範囲に入っている事を知る。ニニギアに視線をやると、すぐに子供達を両腕で抱きしめ、蔦から距離を離そうとする。 「な……んだ、あれ?」 「ひぃっ!」 蕾の周りには巨大な茎が地面から次々と迫り出し、先端の巨大な口を大きく開いてこちらを向いた。 それと同時に、木に伝っていた蔦が足の竦んだ少年と少女に向かい襲い掛かる! 「させねーっての!」 素早く射線に飛び込んだヘキサが蹴り返す。 「光一って言ったっけ、お前は男なんだからしっかりしろよな。その手をゼッテー離すなよ!」 そう言い残すと、茎に向かい一直線に駆け出した。 二人を抱きかかえたニニギアは、純白の翼を広げて茎の範囲外へと運ぶ。 「蔦は地中を通ってこの辺りを囲んでる、誰か子供の護衛に」 プレインフェザーが得た情報から敵の能力を分析して指示を飛ばす。 「ここでじっとしていてね。動き回ると危険よ。あなたは彼女の手を握っていてあげて」 「ニニギア様は皆さんの回復を……ワタシはこの子達を護ります」 子供を下ろし、仲間の援護に向かうニニギアと交代に、輝く光のオーラを纏ったリサリサが子供達の前に立つ。蔦が迫り来る、それを身を呈して護ると、絡みついた蔦は光に打ち消され千切れ飛んだ。子供達には傷一つ付けさせはしない。 「うちが一番乗りっ!」 茎に最初に到達したのは全速力で突っ込む瞑だった。右手に白銀、左手に黒銀のナイフが獲物を狙う。餌が飛び込んで来たとでも思ったのだろうか、大きく口を開けて茎が待ち構える。だがそれは餌などではなく獰猛な獣だった。牙をサイドステップで避けると左右のナイフで次々と切り刻む。暴風が過ぎ去った後、口は幾つにもの肉片に分割され、茎は途中で千切れそうだった。 脅威を排除しようと左右の茎が瞑に襲い掛かる。その時、一陣の風が吹き抜けた。 「喰らいなさい!」 象牙色のガントレットが電撃を纏い突き抜ける。右の拳が左からの茎の顎を打ち抜くと、左の拳は右からの茎の牙を砕いた。舞うように、くるりと回ると裏拳が放たれ、千切れそうだった茎を叩き切った。 「私の武舞、気に入って頂けたかしら」 顔にかかる長い黒髪を後ろに払いのけ、彩花は不敵に笑みを浮かべた。 零二は剣を手に茎と茎の間から蕾を狙うように移動する。茎はそれを察知し挟み撃ちするように零二を狙う。 「やはり知能は低いようだな、狙い通りの動きだ」 向かってくる二つの牙が零二に喰らいつく。だがそれは牙が閉じる硬い金属音をさせるだけで、肉を裂く事は無かった。牙は高速で動いた零二の残像に喰らいついたのだ。零二は既に二体の茎から離れた場所に居た。茎がもう一度牙を剥こうと頭を垂れた瞬間……ぼとり、と頭が地に落ちた。既に攻撃は終わっていたのだ。鋭い一撃は一体の茎の首元を綺麗に両断し、もう一体の茎は口の上半分が無くなっていた。 「そろそろ妾の出番だな」 シェリーが魔方陣を周囲に幾重にも展開し終えた。腕を伸ばす。その掌から収束された雷が放たれた。それは轟音と共に地を駆け、敵全てを薙ぎ払わんと拡散した。反射的に茎は蕾をかばう。全ての茎を雷は貫いた。 「危ない! 跳べ!」 警告の声。プレインフェザーへ振り向く間も無く、突然、足を引っ張られ引き摺り倒された。下を見ればいつの間にか蔦が地を這い周囲を囲んでいた。 強く蕾の方へと引っ張られる。引き剥がそうとするが、倒れた時に手にも巻きつかれ身動きが取れない。その先には雷で焼け、焦げた異臭を放つ茎が口を開けて待ち構えていた。 他の茎と戦っていた零二が隙を見て蔦を断ち切る。だが間に合わない。牙はシェリーの腹部に突き立てられた。 「がっ……」 苦悶の声、茎はそのままシェリーを持ち上げ飲み込もうとする。 「好き勝手してんじゃねーぞ!」 茎の頭の付け根にヘキサが炎を纏った飛び蹴りを浴びせる。火が燃え移った茎は苦悶の声を吐き出すと共にシェリーを口からこぼした。 地に落ち咳き込むシェリーを新たな蔦と茎が狙う。 「オレが相手してやるぜ!」 ヘキサはそう言うとシェリーをかばうように茎に向かい走る。蔦が足に絡み付こうとするのを踏みつけ、その上を駆ける。更に茎が噛み付こうと大きく頭を寄せたのをジャンプで踏みつけると、サッカーボールのように地面に向けて蹴り飛ばした。ぐしゃりと金属が拉げる音と共に頭は潰れた。 「すぐに癒すわ」 ニニギアが詠唱する。高位なる存在の力が息吹となってシェリーの傷を塞いでいく。 「すまん、助かる」 傷の癒えたシェリーは立ち上がり、仕返しとばかりに残った茎へと攻撃を開始した。 ●蕾は散って 「蕾への道が開いたぞ」 最後の茎を切断した零二が皆に声を掛ける。 「『花は散り際が美しい』ってな! ド派手に散らせてやるよッ!!」 「空腹は苦しいもんね、ごめんね。でも、うちにも譲れないものがあるから……」 ヘキサと瞑が蔦を蹴り飛ばし、切り裂き、張り巡らされた結界を潜り抜け純白の蕾へと辿り着く。 瞑のナイフが蕾に突き立てられる。だが、想像していた感触ではない、まるで分厚い綿のように力が分散され深く刺さらない。ならばとヘキサは蹴りによる衝撃で潰そうとするが、これも有効な一撃とはならなかった。 「ならば、これならどうだ」 召還された炎が蕾を包み込む。燃えはしなかったが表面から水分が蒸発し、ひびが出来ていた。 「花ってのは、何も言わずそこに咲いてるから綺麗に感じるもんだろ? お前は自己主張が強すぎだよ」 だから大人しくしてなと、気糸を張り巡らせ、蔦を動かせぬように蕾を絡め取った。 その隙を彩花が突く。まるで流れ寄せる水のように間合いを詰めると、蕾の上部に手を掛け、地面に叩きつけた。ガラスが砕けるような音と共に、蕾を護っていた表皮は砕け散った。 「足元に気をつけなさい!」 叩きつけた時に地面を観た彩花は違和感を感じ、皆に警戒を促した。次の瞬間、瞑の足元から大きな口が襲い掛かる。現われた場所が近すぎた、不意の攻撃に回避しきれない。 「っ!」 衝撃に備え息を呑む。だが次に来たのは思ったよりも少ない振動。見ると体が光に覆われ護られていた。リサリサがオーラの鎧を作り茎の牙から護っていたのだ。 「ワタシにできるのは護ることだけ……ならば全力で護りきってみせましょう」 「一気にゆくぞ……!」 茎を切り裂き零二は叫ぶと、オーラを纏い凄まじい勢いで蕾を横一線に斬りつける。返す刃で更に袈裟斬り、最後に叩きつけるように振り下ろした。蕾は圧倒的な斬撃を受けて変形していた。 「子供たちが傷つがないためにも、ここで根絶やしにするわ!」 ニニギアは魔力で作り出した矢を放つと、その後を追うようにヘキサが連続で蹴りを放つ。先ほどとは違い、一撃一撃が重く浸透する、衝撃で蕾は潰れたように打ちのめされた。更に瞑のナイフが幾線にも閃き、大きな花びらが舞い散った。 新たに復活した茎は彩花とプレインフェザーが察知し、不意打ちを避けるとシェリーの雷が貫き、彩花が何もさせぬうちに打ち砕く。 蕾はもはや純白などではなく薄汚れ、見るも無残な姿と成り果てていた。 「……芽吹いた命に貴賎無し。だが、彼らがいつか咲かせる大輪の未来を、オレは選びたい」 咲かずに散る花に憐憫を、だが子供たちの未来の為に、零二は最後の一撃を振り下ろす。 花は散った……。 ●二人の蕾 戦いの最中、少年と少女は脅え混乱していた。繋いだ手の温もりだけがこれが現実だと教えてくれる。 「なにが……どうしてこんな」 「コウちゃん、怖いよぅ」 震える手、少年は少女の震えを止めてあげようと、ぎゅっと強く握る。 「だ、大丈夫さ。オレがついてるから!」 「うん……うん!」 空元気だったが、少女を守る為に少年は勇気を振り絞る。 目の前には自分達を護ろうと戦ってくれている人達がいる。だから自分に出来る事をしよう。 この場所で信じて待つ。逃げ出してしまいたいけど……、この手の温もりがある限り。決して逃げたりしない。それが唯一つ少年に出来ることだった。 いつの間にか戦いの音が収まり、周囲にひぐらしの鳴き声が戻ってきた。 「怖かったですか?」 長い時間だったのか、短い時間だったのか分からない。戦いは既に終わり。二人はリサリサに抱きしめられた。安堵の涙が二人に流れる。 「花を散らしてしまった、すまない」 零二の謝罪に少年と少女は首を振る。 「忘れてしまいなさい。季節外れの怪談話にしては内容がハード過ぎます」 彩花は二人の流れる涙をハンカチで拭いてやる。 「さすがに今日みてーなことは滅多にねーだろうけど、いざって時は男のお前が守らなきゃならねーんだ。でもまあ、今日は逃げねーでよくやったんじゃねーか」 そう言うとヘキサは強く少年の頭を撫でた。 「お前らがその気になりゃ、あれよりもっとすげえ花 きっといっぱい見れるんじゃねえ?」 「あの、ありがとうっ」 不器用な励ましに、少女はお礼を言う。プレインフェザーは照れを誤魔化すようにそっぽを向いた。 「新しい花を咲かせてみるってのはどう? きっと自分で育てた方がかわいいって!」 瞑のその言葉に皆の顔に笑顔が戻る。 「がんばったね。それじゃあ帰りましょう。送っていくわね」 ニニギアが二人を優しく撫でた。 花は散った。けれど、これから咲く二つの大輪の蕾を護る事ができた。 二人は今日の事を忘れる。だが、この経験はきっと心の何処かに残るだろう。それを糧に育っていくのだ。 夕暮れの中、ひぐらしは鳴く。それは小さい花の蕾の成長を祝福しているように聞こえた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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