下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






火喰い鳥は二度唄う

●火喰い鳥は二度唄う
 甲高い鳴き声が旋律となって響き渡る。饐えた匂いが周囲に漂う。
 そこに居たのは焔のバケモノ。
 鳥の形をとったそれは、ばさりと翼を拡げて次の獲物を求めて唄う。
 その場には焦げ跡と、吸いかけの煙草だけが残されていた。

「……エリューションの退治をお願いしたいの」
 集まったリベリスタ達を前に、『リンク・カレイド』真白イヴ(ID:nBNE000001)が静かに告げる。
「既に一人犠牲者が出ているわ……そして皆が行かなけば、また一人犠牲者が増える事になる」
 それはどうか回避して欲しいと願い、イヴは必要な情報を告げた。
「敵は火の鳥よ。火喰い鳥とでも言うべきかしら。分類はエレメントになるわね」
 己の炎で相手を燃やし尽くし、炎の中で絶命した相手をその炎ごと食らうのだ。
「次に出る場所はここ。ゴミ処理施設の裏路地。犠牲になるのはその施設に勤めている人で、帰り道に襲われるわ」
 コンソールを操作して地図を呼び出し、地図上に赤い丸を生む。
「貴方達にはこの人が通る前に、その火喰い鳥を退治して貰うわ」
 曰く、その路地を一人で通れば火喰い鳥は出現し、攻撃を仕掛けてくるだろう。
「より確実にしたければ、火の気……ライターとか煙草とか、そういうものを使えばいいんじゃないかしら」
 火喰い鳥は火に誘われる、その被害者も煙草を口にしていたらしい。
「路地はやや狭いから、一度に並べるのは二人まで。人気もないからどれだけ騒いでも問題無いわ。ただし」
 あまり時間を掛けすぎれば、被害者となる職員が来てしまう。
 それだけ気をつけて、と少しだけ強く念を押す。
「フェーズは2だけれど、もうすぐ進行するわ。放っておけば確実に被害は大きくなる」
 お願いできるかしら、そう言ってイヴは少しだけ首を傾げ、大きく頷く彼らに満足げな笑みを浮かべる。
「ああ、それと、特殊な効果は無いのだけれど」
 そのエリューションの鳴き声は聞きようによってはまるで歌のように聞こえるらしい。
 そう、それはまるで犠牲者に捧げる鎮魂歌の様に。
「二度目は唄わせないで頂戴ね。……気をつけて、ね」
 イヴはそう言って、リベリスタ達を送り出すのだった。



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:七河コーヤ  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年06月13日(月)21:05
 初めまして。七河コーヤと申します。
 BNEに漸く参戦できました!
 どんなプレイングが来るか楽しみにしています。
 ではエリューションデータなどのディテールをどうぞ。

●火喰い鳥
 焔の塊が鳥の形を成したフェーズ2のE・エレメントです。
 攻撃方法は
 ・炎の塊を吐き出すファイヤーボール
 ・炎の躰による体当たり
 ・激しく燃えて体力回復
 となっております。
 常に飛行状態で、命中精度は悪いですが、当たればかすり傷では済まないでしょう。
 火の気が大好きで、そういった物を持っている人を優先的に狙う傾向にあります。
 ライターかっちかっちやってるだけでも飛んでくるくらい好きなようです。
 イヴが指定した場所、時刻でそういった行動をとれば確実に出会えるでしょう。

●職員
 ゴミ処理場の職員です。四十代後半のおじさんです。
 彼が通りかかる前に手早く片付けてしまって下さい。

●戦闘フィールド
 やや手狭です。三人並ぶとむぎゅっとします。
 路地の左右は塀に囲まれた処理場の施設なので人気はありません。
 戦闘時刻は大体夜九時、職員が通るのは夜十時過ぎです。
 明かりは街灯がありますし、相手が燃えさかる炎なので視界は良好かと思います。

 敵は一体ですが、一撃が強力ですので努々油断なさらぬ様お願い致します。
 それでは、いってらっしゃいませ!

参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
日下禰・真名(BNE000050)
ホーリーメイガス
カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)
クロスイージス
アリア・ローゼンタール(BNE000670)
デュランダル
蘭・羽音(BNE001477)
クロスイージス
ツァイン・ウォーレス(BNE001520)
マグメイガス
イーゼリット・イシュター(BNE001996)
デュランダル
クライア・エクルース(BNE002407)
覇界闘士
葛木 猛(BNE002455)

●仄暗い路地裏に待ち受けるもの
 暗い裏路地。そこは運命の分岐点。

 指定された路地、その脇にごとんと消火器を置いたのは『蒼き炎』葛木 猛(BNE002455)。
「こっち……あった、よ」
「お、消火栓もあったか。万全だな」
 『眠れるラプラー』蘭・羽音(BNE001477)に声をかけられ、示された方を見る。消火栓の標識に、特徴的な赤の消火栓。猛がそれを見ている間に、羽音が『シスター』カルナ・ラレンティーナ(BNE000562)と『敬虔なる学徒』イーゼリット・イシュター(BNE001996)に声をかける。
「結界、張る……なら、少しでも、効果広げた方が、いいかなって」
「なるほど、少しでも遠ざけたいですからね」
「おまじない程度の効果だったとしても、より効果的に使っていけるならその方がいいわ」
 やりましょ、とイーゼリットが路地奥に展開し、カルナが処理場をなるべく包むような位置を見極めて達、羽音は二人の間をカバーするように結界を敷く。
 これで人は外へ外へと避けて通る、はず。
「何、ここまでやったなら後は速攻で倒すだけさ」
 ツァイン・ウォーレス(ID:BNE001520)がポケットからライターを取り出し、じゃあいってくる、と路地裏の中程へ進む。既に路地裏の奥にも、手前にも陣形通りに展開済みなのを確認しての行動。
 ツァインは思う。火の鳥と聞くとどうしても幻想的なものを想像してしまう、と。
 神話にも時折語られるものと同じ形状。同じように酷く強力であったら?
 手の中でかちん、とライターの蓋が音を立てる。
「……ビビっても仕方ねえ。全力で戦うだけだっ」
 気合いを入れて、カチッと威勢良く点火。ガスが燃え上がる音と共に、ぽつんと火が灯る。
 酷く小さな、風に揺らめけば消えてしまいそうな弱々しい光。
『――♪』
 けれど、それが消える前に、唄が来た。美しすぎて畏れすら抱きかねない、人外の唄。
「来たな? そんな明るけりゃすぐ解るってな!!」
 パチンと勢いよくライターを閉じ、即座にハイディフェンサーを起動、武器を構えてはじき飛ばせば、ちりりと前髪を焦がして逸れていった。
 ばさ、と羽ばたき。しかし姿は炎の塊。
 火が食えなかった事が不満なのか、唄うのを止めて唸るような鳴き声をあげた。
 再度向かってくる前にオートキュアーを使い、武器を構えて見極める。
 敵の動きは大振り、見切れれば避けられる……!
 炎のブーストで加速した相手の体当たりを躱し、転がり避ける。避けられた……!
 素早い手数の攻撃を幾度となく躱す内に、仲間達が合流する。
「あら、いらっしゃい……貴方の地獄に」
 うふふふふ、と妖しく笑って真っ先に攻撃を仕掛けたのは、千里眼で炎の塊である相手を建物越しに見通していた『夢幻の住人』日下禰・真名(BNE000050)。まるで暗器の様に忍ばされた爪は狭い場所でも容易に振り回す事が出来、その勢いのままに緋色に輝くオーラを纏って連続攻撃を浴びせる。
 真名に続き、殆どタイムラグ無しに参戦する仲間達。アクセスファンタズムの通信機能を入れておき、見えた瞬間に連絡するという機転は中々功を奏したと言えるだろう。
「御不満ですか? でも、油断は禁物ですよ」
 中空を舞う火の鳥の更に上から降り注ぐ声。それと共に叩き込まれるのは全身のエネルギーを流し込んだ一撃。左手に剣を、右手にロザリオを。躱そうとして翼に一撃を食らった火喰い鳥がけたたましい鳴き声をあげて高度を落とす。
「短期決戦あるのみ、ね!」
 彼が来る前に、何としても。『拍動する炎』アリア・ローゼンタール(BNE000670)が、撃ち落とされた鳥をヘビースマッシュで迎撃し、前線へと叩き返す。
 深紅の髪が風に靡き、まるでそれは炎のようで。それ以上にアリアの内には熾烈な炎が宿っていた。威嚇するように燃えさかり、体勢を立て直す火喰い鳥に向けて宣戦布告をする。
「私は喰えない炎だって事、この力で証明してみせる……!」
 それに答えたのは、勇ましい凱歌の様な火喰い鳥の鳴き声と、金の帯を引く紅玉色のオーララッシュが鳴き声の主を穿つ音。相手の回復した分をあっという間に削って、羽音はいつもの人懐っこい雰囲気からは少し想像しがたい、猛禽類を思わせる笑みを浮かべて目を細め、皆に呼びかける。
「今がチャンス。攻めまくるよっ」
「こっちの火力が強いか、そっちの火力が強いか。喧嘩と行こうじゃねえか!」
 妖しく笑う真名の爪撃に続く猛が吼える。クライアが飛んでいるのをちらりと確認して、そのまま前衛を埋め、気を引くように薬指と中指で挟んだ火の付いたライターを見せつけ、くいと人差し指を引く。挑発。けたたましく火喰い鳥が鳴いた。そのままつっこみ、斬風脚を浴びせかける。
「葛木さん、少し下がって」
 出過ぎは危険だわ、とヒートしていく戦場を適度に冷却し、冷静さを挟み込むのはイーゼリット。戦況を見回し、振り抜いた脚の反動を利用してステップを踏み、下がった猛を見て頷く。
 マナよ、満ちよ。その姿を顕現(あらわ)せ。
 言霊と共に纏った魔力は十分に今も身体を巡っている。十分だわ、と緩く微笑んで魔力を紡ぐ。
 紡ぎ上げるのは四条の魔奏。しかし鳥は唄わない。伴奏は必要ないとばかりに、いくつかを掠りながらぎりぎりで躱してくる。
 ゆっくりと旋回する炎の鳥。それはまるで、獲物に狙いを定めるような仕草に見えて。
 行動順を遅らせ、待機していたカルナが、マナサイクルで強化をしながら嫌な予感を感じていた。
 何も無ければ、それが一番良いのですが。
 そう呟いたけれど、そうはいかないだろう、という嫌な予感は、どうしても振り切れなかった。

●夜空に堕ちる
 それは全くの不運だったとしか言えなくて。
「熱いけど、後ろの人は、何が何でも護らなくっちゃ」
 多少の火傷は覚悟の上。でも尾羽は燃えないようにしないと、と気をつけながら、攻撃がきたら後ろの位置取りを見ながら避けるか、全力防御で受け止めるか判断していた羽音。後ろには回復の要のカルナと、耐久力の不安を零したイーゼリットがいるのだ。
「火の粉はこの光で払う、安心して!」
 そして魔力の炎がじりじりと肌を焦がせば、アリアとツァインのブレイクフィアーが正常に戻し、削れた体力はカルナの天使の歌が戦況を支えた。
 幾度となく攻防を繰り返し、互いの傷がやや回復を上回りつつある頃の悲劇とも言えて。
 異様なまでに開かれた嘴の前に収束する焔が球を作り、あっという間に大きくなって、次の瞬間には空気を焦がして炸裂していた、のだ。
 イーゼリットの忠告のままに下がって後衛に位置したはずの、猛。
 どしゃ、とアスファルトと砂利が擦れる音がした。否、それは人の倒れる音。
「猛様……! く、羽音様!」
「うん、いくよ……! 鎮魂歌だなんて、そんなもの、唄わせる訳にはいかない……!」
 声を掛け合った次の瞬間、嘲笑うような唄声を磨り潰しそうな打撃音が響く。
 カバーに出たクライアと羽音のダブルメガクラッシュが炸裂し、高度をやや落とすがまだ持ち直す火喰い鳥。リベリスタ側に焦りが滲む。
「熱過ぎだろ、汗も垂れやしねえ……!」
 滲むのは冷や汗か、けれど滲んだ端から蒸発させられている気がしてツァインはそう零す。
 危なくなるを通り越して一気に危険域。ライターに再度火を付けるか悩み、そして。
「……け、んかのコツはよ」
 ビビった奴が、負けって事だ……!!
 じゃり、とアスファルトを踏む音。誰彼無く歓声をあげる。
「猛さん、良かった……!」
 ずっと戦線を支えてきたカルナが天使の息を施し、ぎりぎりの体力をすくい上げる。
 二度目の唄は唄わせる事は必ずや防いで見せましょう、と心と仲間に託したのだから。
「失う必要の無い生命を護る、ただそれのみですわ……!」
 信じる心が、カルナをもう一度行動させる。今度は全員の体力を支えるべく響き渡る天使の歌。
 そう、それは火の鳥が歌う死の唄とは真逆の旋律。
 立ち上がった猛と、カルナのお陰で戦況が再び盛り返し、一瞬ほっと息を吐いたツァインが、今度は迷うことなくライターに火を放ち、真名が関心無さそうにしながらもそれに続いてライターを取り出し、かちり。
 二度目は無いわ、と猛を庇うようにアリアがその前に立って、挑発する。
「温い火なんかじゃつまらないでしょ?」
 けたたましく鳴き喚く火喰い鳥。
「鳴くんじゃなくて、唄いましょう?」
 ねえ、鳥さん?
 そう呼びかけたのはイーゼリット。再び奏でられる魔曲四重奏。
 良い伴奏だと思わない?という問いかけには、美しい鳴き声が返答となる。
 炸裂する魔力の弾けが音となり、鳴き声に濁音が混じる。
「綺麗な鳴き声だけど、今日は断末魔で我慢しとくわ……!」
 次はないけどな、とツァインの苦笑。しかしこれで終わらせるとばかりにヘビースマッシュを叩き込めば、追撃としてアリアの攻撃と真名のオーララッシュが加わり、力が爆ぜる。
 叩き込まれた力が炎の身体の中に押し込まれ、反転し、発光。
 耳がキンとなるような爆音を響かせて、――火と命を喰らう鳥が燃え尽きたのだった。

●誰が為のレクイエム
 耳鳴りが病み、くらくらとする頭に響くのは一つの唄。
「……レクイエム、ね……」
 羽音が耳を澄ませて呟けば、皆も同じように耳を澄ませる。
『――♪』
 どこか澄んだ、悲しい音を響かせて、空を渡るレクイエム。
 段々小さくなり、夜の静けさが戻る。
「ちょっと塀が焦げたくらいか……」
「塀より、猛さんが安静にして下さい……動いたらだめですよ」
 自分の寄りかかった塀を見分していたが、カルナに止められ、うっと黙って頷く猛。
「さ、すばやく帰りましょ」
 まだ誰も来ないうちにね、と促すのはイーゼリット。
「そうね、なんとか無事完了。戻りましょうか」
 アリアが同意し、皆も各々頷いて路地を出る。
「何か冷たいものでも飲みたいですね」
「いいな。……もう暫く熱いのは勘弁……」
 カルナの提案にツァインが同意し、げんなりとする。
 あ、もう夏か、という呟きに、まだ涼しい夜風が戦いの火照りを冷ましてくれた。

 けれどもうすぐ夏はくる。
 今年の夏はどうだろうか。楽しい?辛い?それとも?
 まだまだ、全ては始まったばかりなのだから。

 鎮魂を唄う鳥が己のレクイエムに導かれた空を見上げれば一つ、彼らを労う様に星が瞬いた気がした。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 エリューション討伐お疲れ様でした。七河です。
 ロールプレイや判定的なお話は全てリプレイの中に詰め込まさせて頂きました!

 体力マネジメントって大事ですよね、という所でしょうか。
 パーセンテージで管理しようとしたのはとても良かったと思います。
 ざっくりとした管理で、しっかり見極める。これに尽きます。
 参加者様同士、こういう部分で意思疎通が出来ると、また違ったプレイングが書けるかもしれません。
 是非どんどん絡んでいって貰えたらいいんじゃないかな、と思います。

 全体的に生き生きとしてて良いプレイングばかりだった様に思えます。
 皆さんのこれからの更なる活躍の礎となれればいいなと思っております。
 参加有り難う御座いました。またお会いできれば光栄です。