●星の軌跡を映す球 それがいったいいかなる経緯を経て、その寂れた歴史博物館にもたらされたのかは記録に残っていない。 少なくとも、そんなことはフィクサードたちにとって興味のない事項であった。 昼でも人気のない博物館だが、今夜は彼らのはった結界により警備員さえいなくなっていた。 「こいつがヤツの欲しがっていた『裏天占星儀』か」 2人の男が月明かりの差し込む部屋でガラスケースの1つを覗き込んでいる。 ケースの中にあるのは、無数の光点が浮かぶ漆黒の球。大きさはスイカほどもあろうか。詳しい者が見れば、光点が夜空に浮かぶ星の位置を示していることに気づいただろう。 声を出したのは短躯の男だった。ただ、全身に筋肉をまとい、まるで硬い岩のような雰囲気がある。 「ああ。もっとも、博士の実験に使い終わったら私がもらうが」 もう1人は背こそ高いものの、痩せた男だった。病的なまでに。暗視ゴーグルをかけている。 「こんなもので、本当にセリエバとやらを召喚するのに適した時期がわかるのか?」 「使えないなら使えないで、そのまま私が持っていくだけだ」 背の高い男は、答えながらガラスケースを音もなく外してしまう。 その間、もう1人は周囲を警戒しているようだ。 2人の耳に装着された通信機からも、異常を伝える報告は入ってこない。 アーティファクトを回収した男たちは、博物館を去っていった。 「ま、期待はしておくか……アザーバイドをぶん殴る機会なんて滅多にないからな」 呟きだけを残して。 ●暗躍するフィクサード ブリーフィングルームに集まったリベリスタたちを迎えたのは、『ファントム・オブ・アーク』塀無虹乃(nBNE000222)だった。 「六道に所属するフィクサードが、とある博物館にあるアーティファクトを盗もうとしているようです」 アーティファクトの名は『裏天占星儀』という。 星の運行を計る機能を持つらしいが、詳しいことは不明だ。 「何かの目的に使うために必要としていることは確実でしょうが、今のところ目的はわかりません。なんにしても、アーティファクトの奪取を阻めば問題ないと考えられます」 目的を聞き出せるなら聞き出したいところではあるが、それは非常に難しいだろう。 敵の数は8人だ。2人の有力なフィクサードと、配下が6名。無論、配下といってもザコではない。最低でもアークのリベリスタと互角の実力はある。 「有力なフィクサードですが、1人は十石九郎という覇界闘士です」 非常に頑強な男である。また、『戦風陣』という彼独自の技を使用する。周囲にいる敵をすべて吹き飛ばす範囲攻撃だそうだ。 「もう1人はインヤンマスターで、名前は倉神鋼真と言います」 特別な技を使うことはない。ただ、多彩な技を状況に応じて使ってくる。 2人は友人というわけではないようだが、行動を共にすることが多いらしい。連携も慣れているだろう。 他はまず、クリミナルスタアとクロスイージスが2人ずつ。デュランダルとホーリーメイガスが1人ずつ。 件のアーティファクトがある部屋には十石と倉神の2人だけが向かっている。他のメンバーはジョブの異なる3人ずつの2組が、建物の内外に分かれている。 アークや他の七派の横槍を警戒しているのだろうと虹乃は言った。 「こちらの目的はアーティファクトの盗難を防ぐことです。フィクサードを倒す必要はありません。急いで向えば、敵が到着した直後には皆さんもたどり着くことができるでしょう」 小細工をせずにまっすぐ突っ込めば、ケースを開けるより前に襲撃をしかけることも可能だ。 幸い、敵の誰かが結界をはっているため、周囲に巻き込まれるような一般人は存在しない。 「敵は強いですが、死ぬまで戦うといった雰囲気は感じられませんでした」 アーティファクト奪取が難しい状況になったり、あるいは被害が大きくなれば撤退するだろうというのが虹乃の予測である。 無理はしないようにしてくださいと、虹乃はリベリスタたちに告げた。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:青葉桂都 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年09月29日(土)23:06 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●闇に潜む能力者たち 夜の闇の中、寂れた博物館への道のりをリベリスタたちは進んでいた。 「古来、人々は星々の動きを見て暦を知り、吉凶を占い、政事に役立てていたそうですな……。ならば、星の運行を正確に読み取る事ができれば運命を知る事も容易なのやもしれませんのう……」 ぷるぷると震えながら、ぼそぼそとした声でぼけ老人のようにしゃべる『三高平のモーセ』毛瀬・小五郎(BNE003953)。 「まるで万華鏡のようですじゃ……」 しかし、言葉の内容は、ぼけた老人の言うようなことではなかった。 「星の運行を計る破界器かぁ。何かを行う日でも占うのかな?」 四条・理央(BNE000319)が呟く。 好奇心旺盛な少女らしく、アーティファクトにも興味を示しているようだ。独学で力を身につけたのも、その好奇心の賜物だろう。 「そうですね。六道の動きがどうにもきな臭い。セリエバ、妖刀『斬界』、そしてこの『裏天占星儀』。あの危険なアザーバイドを現界させる訳にはなりません」 『斬人斬魔』蜂須賀冴(BNE002536)が断じた。 額で横一線に引かれた髪が、彼女の迷いのなさを表している。 「『セリエバ』……2人のフィクサードが話していたその言葉は、何を意味するのでしょうね?」 スペードのエースを模したアクセスファンタズムからえっちな水着を身にまとい、『Manque』スペード・オジェ・ルダノワ(BNE003654)が首をかしげる。 「あのような悍ましく汚らわしい実験に使う心算なのでしょうが、何を企んでいるとしても、六道の好きには決してさせません」 強い語調で言ったのは『蒼き祈りの魔弾』リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)だった。 聖別済みの二丁の銃を祈るように捧げ持つ。 「運命喰らう化物を呼び寄せるなんて剣呑だよねぇ。運命に愛されたものを殺すのが好いのに」 フードの下で『殺人鬼』熾喜多葬識(BNE003492)がゆるく嗤う。 直に関わったか報告書を見ただけかはわからないが、2人には今回の事件について思い当たることがあるようだ。 主流七派と呼ばれるフィクサードたちは、また何事かを企んでいるのだろうか。 万華鏡から予測された情報は、敵の背後事情まではさすがに映し出してはくれていない。 「何を企んでいるにせよ……フィクサードにアーティファクトを用いる事を許すわけにはいきません。どうせ、碌でもない事でしょうし」 『銀騎士』ノエル・ファイニング(BNE003301)の結論はシンプルだ。 英国より来た女騎士の手にした白銀の騎士槍は、夜闇をまっすぐに貫いている。 「何か面倒な事に使われてしまったらもっと困りますから。盗まれるよりましだから壊しました、とというのも現場の判断としては妥当ですよねえ」 飄々と笑いながら、薄手の服を夜風に舞わせた『ブラックアッシュ』鳳黎子(BNE003921)が、剣呑な考えを言葉にした。 少なくとも、壊すなとは言われていない。博物館の所蔵物を壊せばそれなりに問題になるかもしれないが、所詮は寂れた小さな場所だ。 博物館が見えてきた。 正面入り口に1人、フィクサードが見張りに立っている。 「散開してるね。範囲攻撃に巻き込まれないようにってとこかな。俺様ちゃんには関係ないけどね」 葬識が千里眼で周囲を一瞥。 彼は距離を取って見張っている2人の敵をすぐに見つけ出していた。 あまり悠長に観察している暇はない。とはいえ、仮にも博物館がそれほど複雑な構造をしているわけもない。 それぞれに得物を手にして、リベリスタたちは正面から敵へと突っ込んでいった。 ●電撃戦 「この場は、私にお任せを――!」 スペードが放つ漆黒のオーラが3人の敵をなぎ払った。 それが開戦の合図となった。 冴は二尺五寸八分の愛刀を振り上げる。 入り口の前にいた男は盾を構えて、攻撃に備えた。 剣を手にした別の1人が何事か叫びながらその横に飛び込むように移動し、最後の1人は入り口へ近づきつつショットガンを向けてきた。 おそらくは盾がクロスイージスなのだろう。その敵を避けて、剣を持った敵に冴は切っ先を向けた。 横合いからふらふらと刃のようなものが飛んでくる。 男の服を切り裂いたのは、小五郎が操る真空の刃だった。 「ふぅ……うまく当たりましたのう」 疲れきった声を老人が出した。 「小五郎さん、無理はしないでくださいね!」 いっぱいいっぱいな声音に、冴ですらも思わず心配になってしまう。 愛刀がまとった闘気が雷気となり、盾をすり抜けて敵を捕らえる。 体が軽くなった。 理央が仲間たちに小さな翼を与えてくれたのだ。 周囲をカードの群れが舞う。黎子の服から飛び出したものだ。 不運なフィクサードに示された死の運命は次の瞬間現実のものとなった。 「あっ、ごめんね~、つい殺しちゃった☆」 いびつな鋏に込めた葬識の暗黒の魔力が、精神ごと敵の首筋を切り裂いた。 クロスイージスが冴へと十字の光を放った。 ショットガンの弾丸がリベリスタたちへと降り注ぐ。 仲間たちがクリミナルスタアへと集中攻撃を加え始めた。 「さあ、いつも通り『お祈り』を始めましょう。両の手に教義を、この胸に信仰を。悪しき者に裁きを」 神聖なる意思を凝縮させたリリの銃弾が散弾と交錯し、ノエルの騎士槍がまっすぐに敵を貫く。 「私を挑発して、ただで済むと思わないことです!」 その間に冴は長尺刀を強く握り、力を込める。普通なら両の手で持つべき刃だが、彼女にとっては片手で扱える武器だ。 天下五剣より名を取った愛刀に闘気がこもった。 全身の膂力を爆発させた一撃がクロスイージスを吹き飛ばす。 「皆さんは、アーティファクトの元へ!」 スペードが吹き飛んだ敵に噛み付いた隙に、リベリスタたちは博物館の内部へと駆け込んでいった。 「私は、スペードと申します。あなたの、お名前は?」 先端の欠けた剣を手に、スペードは名乗りを上げる。 「決闘でも気取ってるつもりか?」 けれど、フィクサードは名乗りを返してはこなかった。 小五郎は展示室へと走る仲間たちを、息を切らせて追っていく。 パワースタッフを突きながら、孫の贈ってくれたモーセ風の衣装を身に着け老人は走る。 「ふぅ……そろそろ飯の時間ですかいのぅ」 「そこにいたら、飯の代わりに銃弾を食らうよ~。敵が来てる!」 銃弾が胴を貫いたのは、葬識の警告の直後だった。 ノエルと黎子が3人のフィクサードを迎え撃つ。 盾を持った男へと、ノエルが騎士槍を向ける。 「貴方には私のお相手をしてもらいますよう」 そして、銃を撃ってきた敵に黎子が接近した。 「まったく、危ないのう。皆、気をつけるんじゃぞ」 血の流れる傷口を押さえながら、小五郎は仲間たちへと護りを固める助言を行う。 さらに理央も守護結界を展開していた。 「んじゃそっちはよろしくねぇ~☆」 葬識が放った暗黒の気を置き土産に、残った4人が駆け抜けていく。 「さて……貴方達の相手は我々です。暫しお付き合い頂きましょうか」 ノエルが言い放つ。 大上段に振り上げた盾を敵は彼女へ叩きつけた。だが小五郎の指示に援護されたノエルにとって、それはさしたる打撃ではないようだった。 展示室に仲間が飛び込んだ後、視界をさえぎるべく小五郎は扉を閉めた。 リリは展示室に入ると、祈るように2丁の銃を捧げ持つ。 「……来たか」 すでにインカム越しに聞こえていたのか、背の低い男が腰を落として身構えていた。 漆黒の気を纏った葬識が前衛に出る。 理央が敵味方の中間あたりで細身の杖を突き出し、小さな翼を仲間たちに付与。 「蜂須賀示現流、蜂須賀冴。参ります」 上段へと振り上げた刃を叩きつけるように振り下ろす。 冴の一撃を十石九郎はアームガードをつけた腕で受け止めた。 突風が巻き起こり、前衛に出た2人を吹き飛ばす。 「急げ! 倉神!」 「ふむ。……そう焦るな」 倉神鋼真のほうはアーティファクトを覆っているガラスケースを外そうとしているようだ。 吹き飛ばされた2人が前進して攻撃を仕掛けるが、頑強な覇界闘士はそう容易くは倒れない。 もっとも、理央の生み出した結界がまだ有効なこともあり、リベリスタ側も決定的なダメージはまだ受けてはいなかった。 だが、そうこうするうちに状況は変わった。 鋼真がガラスケースを外し、中にあった漆黒の球体を手に取ったのだ。 「放つ弾丸は我が祈り。道を外れた者達に、天の怒りよあれ――Amen」 聖別された2丁の銃――『十戒』と『Dies irae』はいずれも聖なる意味を持つ。 直感的に理解できたのは、一見して脆い部分などアーティファクトにはないということだった。 落ちる硬貨さえ撃ち抜く精密射撃が、鋼真の手を撃ち抜く。 冴の剣が、先ほどとは逆に九郎を吹き飛ばした。 「ねね、セキュリティは切ってくれてるの? 親切ぅ☆ あ、ちなみにこれ俺様ちゃん壊すのに躊躇しないよ」 そして、飛び込んだ葬識が、落ちたアーティファクトを拾い上げた。 展示室の外でも、フィクサードたちとの戦いは続いている。 黎子は銃を構えた敵にまとわりつくように動いていた。 幸いというべきか、それとも能力が役立たず残念に思うべきか、敵は周囲の動きを封じる荒々しいクリミナルスタアの格闘術を繰り出してくることはなかった。 (彼女の記憶は、呪縛の力と一緒に私の身も焼く……やっぱり、嫌われているのでしょうね) 自嘲気味に笑ったのは一瞬。 急所を射抜く早撃ちが、黎子の装飾された戦闘服を貫いてくる。 月のような形をした赤と黒の鎌刃が踊ると、カードの嵐が周囲を舞った。 後方にいるホーリーメイガスが傷ついたクリミナルスタアの身に輝く光の鎧を生み出そうとするが、踊るカードはそれを弾き返した。 小五郎の真空刃が敵を切り裂く。 薄手の戦闘服が闇に舞い、傷ついた敵との間合いを鮮やかに奪う。 2つの月が刻んだ刻印はフィクサードへと速やかなる死を与えていた。 ●闇の中の撤退 葬識はアーティファクトを手にすると、まず鋼真の暗視ゴーグルを狙った。 さすがに一撃では当たらない。 しかし、何度も繰り返していればいずれは攻撃が命中する。 鋼真の展開した結界は鋏を防ぐが、暗視ゴーグルのバンドまでは守りきれない。弾け飛び、視界を奪われた鋼真が舌打ちをした。 「ねえ、殺しちゃっていいの? かまわないか~いいよね~☆」 楽しげに響く声音。 ただ頭は冷静に、窓を背にして動いている。 暗視ゴーグルを落とした後は、冴と切り結ぶ九郎へと赤く染まった歪な鋏を突き出した。 九郎の武舞が冴と葬識へ雷撃を叩き込んでくる。 痛烈な一撃に一瞬葬識の足が止まった。 運命の加護が彼を救った直後、理央のもたらす福音が冴とともに葬識を速やかに癒す。 「ね、それ黄泉ヶ辻も狙ってるみたいだよね、セリエバ。なぁに? 仲悪いの? 黄泉ヶ辻と六道ってさ」 「俺たちの仲が良かったことなんて、今までに一度もないさ。……ま、今のところ奴らを殴る予定は無いとだけ言っておいてやるよ」 答えながら、九郎が葬識の背にした窓に目をやった。 一方の、博物館の前。 スペードはクロスイージスと互角の戦いを繰り広げていた。 いや、あるいは千日手というべきか。 護りを固めた敵に、ヴァンパイアであるスペードの牙はさしたるダメージを与えられない。 とはいえ攻撃より護りを得意とするフィクサードのほうも、決定的な傷をスペードに与えるにはまだ至っていなかった。 「そろそろやめにしませんか?」 「なに?」 左右で違う色の目で、スペードは敵を見つめる。 「私はここで命を落とすことも覚悟の上です。けれど、あなた達にとって『裏天占星儀』は、命よりも重いものなのでしょうか?」 スペードもかつてはリベリスタ組織と敵対していた身だ。 これ以上傷つけることも、アークへの連行もしたくなかった。 「退いては、いただけませんか?」 「いいだろう。命がけで立てる義理もないからな」 警戒しながらも、博物館から敵が離れていく。 「……守口裕也。覚えておく価値も無い名前だが、教えておいてやるよ」 闇の中から聞こえた声。 それを見送って、スペードはカード状のアクセス・ファンタズムで仲間に連絡を取った。 展示室の中に結界が展開された。 理央は邪気を寄せ付けぬ光を放ってそれを打ち払う。 「ボクは君らを倒すことはできないけど、仲間が君らを倒すまで戦線は維持させてもらうよ」 古びた愛用の盾で身を守りながら、油断無く敵を見据える。 「……まずい状況だな」 フィクサードたちが目配せをしあった。 九郎の体から風が放たれる。 「鍛え上げたその技、見事です。だが私はそれを見切り、上をいってみせる!」 敵が使おうとしている技を察して、冴がそこに刃を合わせた。 「チェストォォオオオ!」 「俺の技を見切るにはまだ足りん!」 雷鳴に断ち切られながらも、敵の拳が衝撃波を巻き起こす。冴が転がり、倒れ、しかし無理やりに身を起こす。 その隙に鋼真が月明かりに向けて全力で走った。 「私は神の魔弾、決して逃がしはしない」 リリの銃弾を受け、葬識の刃に断ち切られ、光の鎧を自らに纏いながら敵は窓を突き破る。 九郎も一歩遅れてそれを追った。 アーティファクトはすでにリベリスタ側が確保している。 理央も細身の杖から魔力の砲撃を行い、追撃に加わる。 駆けつけたスペードの放つ漆黒のオーラも浴びて、敵は重傷を負いながらも足を止めなかった。 「いずれ借りは返すぞ!」 ……そんな捨て台詞を残し、敵は闇に消えた。 扉の外での戦いももう終わろうとしていた。 ノエルは信念の名を冠した騎士槍をホーリーメイガスに向けている。 予想通り、回復役をクロスイージスはかばおうとしてきた。 吹き飛ばした敵が戻れないような位置取りをしようとしていたために、なかなか敵を吹き飛ばせなかったが、今しがた敵は博物館の壁に叩きつけたところだ。 黎子の放つ気糸が逃げ場を失った敵に巻きつく。 小五郎の刃が敵を切り刻む。 「役割は足止めですが、生かして帰すつもりはありません」 持ち手の意思が折れぬ限りどのようなものでも貫くという騎士槍は、破滅的な破壊力でもって敵を縫いとめる。 情けない悲鳴を上げたクロスイージスが、仲間を見捨てて逃げ出したのはそのすぐ後だった。 ●裏天占星儀 漆黒の球体は、リベリスタたちの手に残っていた。 「許可が出れば能力を調べてみたいところだけど……」 好奇心旺盛な理央が、それを覗き込む。 天の星を写し取った球体は、静かに光をたたえていた。 「ただ星を見て占うだけなら破界器は要らないし、必要とされるなら相応の力があるんだろうな」 もっとも、一目見ただけでそれが複雑な操作を要することは見て取れる。 『神秘の理論に基づいて時期を計る』ためのものであるという以上のことは、持ち帰って調べなければわかりそうもない。 「裏天占星儀という事は表もあるんじゃろうか……?」 小五郎が呟いた。 「『セリエバ』というのは、いったいなんなんでしょうね。これで諦めるとも思えませんが……」 スペードが首をかしげる。 「彼等が何を企んでいたとしても、私がする事は変わりません。六道は必ず滅ぼします。御心のままに」 リリの返答はシンプルだった。 けして彼らの思い通りにはさせない。その思いを込めて、リリは銃に祈りを込めた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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