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暇を持て余した宝石の遊び

●茹で天緑石


 ――これは、数日前のある元裏野部フィクサード義兄妹の会話である。


「あーつーいー」
「今時期秋とは思えない暑さですね。まあ、いつもの事ですが」
「毎年思うけどさ、暦の上ではもう秋っての嘘じゃね? 残暑どころか夏だよこれ」
「まあ、気持ちは判らなくもないですが。特に今年は北国も凄いらしいですからね」
「実は日付逆行とかしてたりしない? もう少ししたら閉会式と言う名の開会式が始まってさ、またドリンピックとか開催されたりするなんてオチがあったりしない?」
「……暑さで頭沸きましたか兄さん」
「否定すべきトコなんだろうけどね。残念ながら天然温泉の源泉並みに沸いてると思う」
「……」
「でもさ、今更海水浴ってのもなあ」
「南の島はもう行きましたからね、リベリスタの皆さんで」
「……そうだ海に行こう!」
「ひとつ前の自分の発言と思いっ切り矛盾してますね。ほんとに沸いてるなあんた」



●巻き込まれ水仙+@
「行動力ありますよねえ、あのお兄さん」
 感心したとも呆れたとも取れる微妙な表情で、『転生ナルキッソス』成希筝子(nBNE000226)が呟いた。
 その掌には手書きのパンフレット。何とも言えない前衛的なイラストと共に描かれていたのは。


 ――『ドキッ☆季節外れのかき氷早食い大会!』


「……気持ちは判ります、でも帰らないであげて下さいな」
 踵を返そうとしたリベリスタ達を静かに引き止める筝子。と言うかそのイラスト緑が描いたのか。描いたのか。
「これでも宇宙さん、彼なりに皆さんの事も考えて企画したみたいなんです。『俺一人だけが楽しかったり、涼むのも勿体無いじゃん』って」
 本来の自分を押し込めて、殺人機械のようにその身を血で染め上げてきた『血染めコスモクロア』――それが、宇宙緑。だった。
 それを考えれば、明るさを取り戻した今の彼は、相当な進歩を果たしたと言えるだろう。そしてそんな彼がアークの皆と交友を深めたいと言ってくれているのなら。
 同じリベリスタ仲間としては、出来る限り応えてあげたい所で――
「……それと、その義妹さん、それに私と、以前アークに参入した十文字さん、彼も巻き込まれてます」
 ――はい?
「誰も来てくれないと、私達四人だけで季節外れの海に行くという悲しい事態が起きますので」
 筝子ちゃん、もしかしなくても。
「どうか、私達を助けると思って」
 そっちが限り無く本音か!


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:西条智沙  
■難易度:VERY EASY ■ イベントシナリオ
■参加人数制限: なし ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年09月30日(日)22:22
とは言え最近少しは残暑も和らいできたのかな。
北国在住なので本州の事は良く判ってない西条です。
あ、こっちは割と和らいできましたよ。


●目的

緑達と一緒に涼んであげる(


●今回出来る事

今回は緑曰く『軽装で来てね』との事なので浴衣or水着着用必須です。
(イラストが無くても、プレに着用の旨があれば可とします)

ともあれ今回出来る事は此方。
カキ氷早食い競争に参加するか。
その様子をマイペースに涼みながら眺めるか。

具体的には以下の通りです。


A:カキ氷早食い競争に参加

読んで字の如く。
通常サイズで一皿食べ切ればクリアです。
優勝者には緑から何か景品(粗品)が出るかも知れません。


B:競争参加者を応援する、眺める

自分のペースでのんびりどうぞ。
カキ氷の他、アイスやシャーベット、ソフトドリンク等もあります。
友達や恋人、家族を応援するも良し、寧ろ一緒にのんびりするも良し。


C:その他

但し良識の範囲内でお願いします。


因みにカキ氷のシロップはイチゴ、メロン、レモン、ブルーハワイ、宇治金時。
お好きなシロップでどうぞ。アイスやシャーベットも各種取り揃えてます。



●イベントシナリオのルール

・参加料金は50LPです。
・予約期間と参加者制限数はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・イベントシナリオでは全員のキャラクター描写が行なわれない可能性があります。←重要!
・獲得リソースは難易度Very Easy相当(Normalの獲得ベース経験値・GPの25%)です。
・特定の誰かと絡みたい場合は『時村沙織 (nBNE000500)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合(絡みたい場合)は参加者全員【グループ名】というタグをプレイングに用意するようにして下さい。(このタグでくくっている場合は個別のフルネームをIDつきで書く必要はありません)
・NPCを構いたい場合も同じですが、IDとフルネームは必要ありません。名前でOKです。
・内容は絞った方が描写が良くなると思います。


NPC達の参加状況は以下の通りです。
A:緑(主催者なので参加してるけどやる気無し)、陽(それなりに頑張ってる)
B:筝子、ロゼ(両人共に競争はしないが応援要請あればしても良いと思えればする)
(基本的にお声掛けあれば四人共喜んでご一緒しますが、無ければ空気です)


以上です。
皆様のご参加、お待ちしております。
参加NPC
成希 筝子 (nBNE000226)
 


■メイン参加者 18人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
覇界闘士
テテロ ミーノ(BNE000011)
デュランダル
結城 ”Dragon” 竜一(BNE000210)
ナイトクリーク
斬風 糾華(BNE000390)
★MVP
クロスイージス
新田・快(BNE000439)
デュランダル
新城・拓真(BNE000644)
ソードミラージュ
リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659)
デュランダル
遠野 御龍(BNE000865)
ソードミラージュ
天風・亘(BNE001105)
マグメイガス
風宮 悠月(BNE001450)
覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
覇界闘士
宮部乃宮 火車(BNE001845)

エリス・トワイニング(BNE002382)
ソードミラージュ
リセリア・フォルン(BNE002511)
ソードミラージュ
リンシード・フラックス(BNE002684)
インヤンマスター
小雪・綺沙羅(BNE003284)
覇界闘士
クルト・ノイン(BNE003299)
レイザータクト
ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)

●事前準備
「久しぶり」
 ひょこんと、会場予定地に綺沙羅が姿を現す。鬼灯の赤が灯る浴衣が涼しげに揺れた。
「お、きさらんじゃん」
「久しぶり。その節は有難う」
 ひらりと手を振る緑と、軽く会釈を返すロゼ。
「アークでの生活は慣れた? あれ見た。あのポスターいかす」
「お、あれ? 俺も結構良い出来だと思うんだけど~」
「気を遣って貰ってる事に気付け」
 無駄に爽やかに笑む緑にびっしとツッコむロゼ。
「社交辞令は置いといて、ちょっとロゼを借りる。ついでに筝子も」
「はあ」
「私も?」
 綺沙羅が軽く二人の腕を引っ張り、近くの廃屋へ。
「ロゼ、浴衣着た事無いだろうから似合いそうなの見繕ってきた」
 黒地に貝合わせ。帯はその髪と同じ真紅の色を乗せて。
「着付けは多分、筝子が出来る」
 既に浴衣を身に纏っていた彼女なら、との判断。しかし、此処で疑問点が。
「綺沙羅ちゃん、浴衣着てるよね? 着付け出来るんじゃあ?」
 目を逸らす綺沙羅。実は彼女、不器用なのだ。自らの浴衣も、アーク職員に着付けて貰ったもの。
 疑問符を浮かべつつもロゼの着付けを済ませる筝子。
「うん、いいんじゃない? 筝子、グッジョブ」



●大会開始
「だうあー……あづい……」
 設営された大会用の椅子に腰掛け、テーブルに突っ伏すベルカ。
 大胆な水色のビキニを着用している為、露わになった背中は何処か力無い。尻尾もへちょる。
 と思ったら、突然がばあと顔を上げ、太陽に向かって吼えた。
「なんだ!? 『残暑』って!? 残って無いだろうが! ほっとんど本番だろうが! 『暦の上では秋』だと!? そんな暦やぶりすてろ! 改暦だ!」
 がおー!
「はあ、はあ……吠えたらより暑くなった……」
「あはは、もうすぐかき氷食べられますから」
 同じく暑いのか、所在無げに尻尾をゆらり緩く振っている陽。
「やっほー! 緑くんお久しぶり! 元気してたー?」
「ゆーりん! ひっさしぶりー! かずっちも一緒じゃんー」
 悠里の挨拶に彼の、そして夏栖斗の姿を認め、緑も幾分か気力を取り戻す。
「ロゼちゃんとは仲良くしてる? 兄妹仲良くしないとね!」
「もっちろん! ロゼは俺の大事な妹だし」
「お前ほんと変わったな。思った以上に軽くてびっくりするよ。で、どうよ、アークなれた?」
「うん、大分気楽で良いや」
 緑の返答に、それなら良かったと笑みを深める夏栖斗。
(早食い競争だ。大食いではない。この一杯を、如何に一瞬でも早く完食するか)
 そう、それは速度がものを言う世界。快はそれをよく理解していた。
(刹那の世界を突き詰める――俺は、この一杯に賭ける修羅)
 筝子が運んできた快の分のシロップは、スイ。
 不要な味をそぎ落とし、邪魔する事無く食べられるよう考慮した末のチョイス。
 深く深く、深呼吸を繰り返す。精神を落ち着けると共に、開始と同時に一息に呑み込めるよう。
 さて、そんな快の隣、竜一は。
「とりあえず! 俺は、筝子たんやロゼたんや美女軍団のために優勝するんだ!」
 綺麗所も揃っているという事で、竜一のやる気ゲージも上昇中。特に今回はミーノ率いるせくしーじょしぐんだん【かきごおれ】の皆が味方だ!
「……いや、凍れって、かき凍らされるのは俺らしいけど……いや! 負けない! 負けられない戦いがある!」
 一瞬、彼女達のチーム名に心が折れそうになるも、何とか持ち直す。
 覚悟は完了。フェイト使用も辞さない勢いだ!
「ふふふ、優勝してあんなことやこんなことを! なので、みんな! 俺に力を貸してくれぇー!」
 美女、美少女の応援がある限り、彼は戦い続ける!
 そして決戦の火蓋は、間も無く落とされる。



●閑話休題
「こんにちは、本日はお誘い有難うございます」
 客席に戻った筝子に、一人の少年が声を掛ける。
「何度か顔を合わせたかもですが、改めて初めまして成希さん」
「ああ、亘君。直接お話しするのは初めてだけど、いつもお誘いに応じてくれて有難う」
 はためく翼も、そよぐ浴衣も空のよう。空をその身に宿す亘は、爽やかな笑みを向ける。
 実は今回、彼には涼む以外にもうひとつ、重大なミッションが。
 ――『ドキッ☆カキ氷大会にかこつけ成希さんと仲良くなろう作戦』!
 これまでの筝子の誘い二回、どちらにも亘は参加していたが、対話する事は無かった。
 だが、それ以降仲良くなりたいと思っていたのだ。
「宜しければ自分も一緒にかき氷を食べもいいですか?」
「それは勿論。宜しくね」
 亘と筝子、そしてロゼがのんびりかき氷を食べていると、客席も次第に賑やかに。
「こんにちわ、成希さん。何やら催し物と聞きまして」
「福利厚生の時は、世話になった。とはいえ、また厄介になりに来ている訳ではあるが」
 優しい水の地に咲く水葵。引き締まった黒の地に舞う鶴。挨拶の主達は、悠月と拓真。
「こんにちは。今日もお付き合い頂き有難うございます」
 筝子と軽く挨拶を交わしてから、ロゼにも挨拶を。
「……足を運んだは良いが、成希以外とは面識も無くてな。良ければ、紹介して貰えると有難いのだが」
「あっ、はい。彼女はロゼ・リュミエルちゃんです。あちらの宇宙緑さんの義妹さんで、その少し右にいらっしゃるのが、風宮さんは御存じでしょうけど、十文字陽さんです」
「初めまして、風宮悠月と申します。宜しく御願い致します」
「アークのリベリスタ、新城拓真だ。……これから宜しく頼む」
「此方こそ、兄共々宜しくお願いします」
 拓真と、そして悠月と握手を交わすロゼ。
「……大会に参加しに来た訳でも無いので……折角ですから御一緒してもよろしいですか?」
 悠月の問いにも、笑顔で頷く筝子。
「こんにちわ、ロゼさん」
 桜の花弁が可憐に揺らめく浴衣姿で、かき氷を手にロゼの前に現れたその少女は。
「リセリアさん」
 ほんの少しだけ、驚きが混じったように目を丸くするロゼ。彼女もまた、緑とロゼの命の恩人でもある、リセリア。
「覚えていて頂けて、良かったです」
 最後に会ったのが、もう数ヶ月以上も前。それでも、ロゼも自らと、義兄の命を救ってくれたリセリアを、覚えていた。
「その節は兄も私もお世話になりました」
「此方こそ、元気そうな様子を見られて安心しました」
 挨拶を終え、リセリアも閑談の席へ。
「やあ、筝子。陽の一件以来か。久しぶりだね」
「クルトさん」
 本部で借りた浴衣をすっきりと着こなし、自ら作ったアイスティーのフロートを片手に現れたのは、クルト。
「と……そろそろ始めるみたいだなぁ?」
 海は好きだからと、アロハシャツを引っ掛け水着で足を運んだ火車が、冷たい飲み物を片手に、茫洋と参加者達の方を見て呟いた。
 見れば確かに、アーク職員と思しき青年がまさに合図を掛けようとし、参加者達がそれを待ち構えている所で――ん?
「合図を出そうとしておられるあの方は確か、緑さんの監視をされている……?」
「えぇーあの人も巻き込まれてんのぉ?」
 リセリアがふと零した呟きに、そしてそれを受け、御龍から放たれた一言に、一同、一斉に筝子とロゼの方を見た。全力で目を伏せる筝子。
「……気にしたら負けです……」
 頑張れ。名も無き職員さん超頑張れ。



●かきごおれ!
「――始め!」
 瞬間、快は器に添えていた左手を持ち上げるより早くその身を屈め――器を傾け、右手のスプーンを勢い良く躍らせかき氷を自らの口へ、胃へ、流し込む!
 しかし竜一も負けじと、怒涛の如く掻き込み、喰らい付く!
「りゅーいち! どんどんたべてたべてっ!」
「頑張って。出来る筈よ。完全で完璧なるかき氷の攻略を」
「優勝目指してがんばれー……わっしょいわっしょいー……」
 ミーノ、そして糾華、リンシードの応援を受けて、竜一のテンションもクライマックス。
「やっほー、ふたりとも! 応援よろしく~!」
「はーい、頑張って下さいねー」
 客席の筝子やロゼに手を振り、緑と一緒にかき氷を食べる夏栖斗と悠里。
「っあああ! 頭キーンって、キーンって、悠里の眼鏡割れろ!」
「あいたたた! って眼鏡関係ないでしょ! 夏栖斗こそ虫歯になれ!」
 八つ当たり始めた。やる気無さ気に頬杖を突く緑は一人からから笑う。悪魔だ。
(北国産まれの私にとってはまさに渡りに船である、かき氷で身も心も永久凍土!)
 かき氷を前に、ほふうと感嘆の溜息を吐くベルカはシベリア出身。
 チョイスは宇治金時。あんこも大好き。十年の歳月は彼女を立派な日本通にさせたようだ。
 合図と同時に、スプーンは迷う事無く魅惑の日本の氷菓子、その小さな山の頂へ!
 しゃりしゃりしょりしょりもぐもぐきーーーーん。
「痛くなああああいいいい!! ураааааааааа!!!!」
 咆哮が浜辺にエコー。
「やっぱさ、フィクサードとかリベリスタとかいっても同じ人間なんだよな」
 痛む頭を押さえながら、夏栖斗はしみじみと呟く。
「こうやってさ、敵だった誰かがアークで一緒にってのはなんか、嬉しいな」
 皆で手を取り合って、なんてきっと夢物語。けれど敵とは誰とも仲良く出来ないという事と同義ではないから。
「ってわけでさ、遅くなったけどあんときの約束。友達になろうぜ!」
 だから夏栖斗は、最高の笑顔を向けて。
「僕も緑くんとは友達になりたいと思ってたんだ! いいかな?」
 悠里もまた、満面の笑みを向けて、問うから。
「俺は、もうとっくに友達だと思ってたけど」
 緑も笑って返す――二人共、戦友で、友達だよ、と。
「……でも、今この場の早食い大会は負けるつもりはない! ってやる気だしてよ! 僕空回りじゃん!」
「あはは、頑張れかずっち~」
 宣言する夏栖斗だが、相変わらず速度が変わらない緑。
 優勝争いは快と竜一の一騎打ち状態である。
「はい♪ あーんっ」
 遂にミーノ達に食べさせて貰っている竜一。頭痛にやられてきている模様。
「キーンと来た? 関係ないわ。さあどうぞ」
 糾華も容赦な……精一杯サポートのあーん。
(頭抑えてる、大丈夫かな……お湯とかいらないかな……)
 リンシードが最後の良心だった、のだが。
「ふぁいとっふぁいとっ♪♪ りゅーいちのペースがおちてきてるのっ」
「次の策へ移す時が来たわね」
 糾華にこっくと頷くミーノ。そして、策は展開される!

 \さくせんあるふぁ!/

「みんなっカイロをりゅーいちにくっつけるの~っ!」
「……えっ? いやいやいや! せくしー美女なのはいいけど! いいけども! そういう力の貸し方は……ちょっ! だめっ! あつっ! さむっ!」
 ぺたぺたぺたぺた(←ひたすら貼り続けるミーノ)
 ぐるぐるぐるぐる(←火にくべるのは非人道的所業なので布団でぐるぐる巻きにする糾華)
 竜一の必死の制止も間に合わず。カイロ尽くめ、加えて布団から顔と手しか出ていない。
 折角灰地に昇り竜の浴衣で決めているのに、竜が見えない。
 そうこうしている内に、快のかき氷がもう殆ど無い!

 \さくせんべーた!/

「みんなっりゅーいちのくちをできるだけおっきにひろげるの~」
「時間がないわ! できるだけ口を広げて! 顎とか良いから、力づくで!」
「だめ、そんなに入らないっ!」
「あ、ミーノさん、あんまり無理させちゃダメですよ……そんなに大量に食べさせる必要は……」
「いっくよ~!」
「ぶちこめー!」
「いやああああああ! らめええええええ!」
 リンシード、無言で合掌。
 その瞬間、隣でどん、と音。
「――完食!」
 頭痛に見舞われているらしいながらも耐えている様子の快が戻したその器は、空。
 白地に灰縞、襷掛けで為されたその所作は堂に入っていた。
「……ムチャシヤガッテ」
 竜一の健闘をリンシードの後方から眺めていたリュミエールが、その惨状を端的に言い表した。
 快君、優勝おめでとう! そして残暑の犠牲者に幸あれ!



●此方客席
「かき氷はそんな急いで食べるもんじゃぁないよぅ」
 ブルーハワイのかき氷をのんびりと口に運びながら、大会の様子を面白おかしく眺める御龍。
「アイスクリーム頭痛になる人絶対出るよね、あれ。あー、あれ陽? 割と頑張るってねー。元気になったのはいいけど」
 当事者でない為か、物凄く冷静に目の前の惨劇を眺めるクルト。
「……あちらは随分と白熱している様子だな。皆、元気な事だ」
「今年は、かき氷も食べ納めですね」
「……うむ、中々に美味しいな」
 大会の喧騒からは離れ、拓真と悠月はのんびりと涼む。
「自分も小説から漫画、面白ければジャンルは何でも読みますね」
「そうなんだ……亘君のお勧めとか、何かあるかな?」
 亘と筝子は本や読書の話で盛り上がっている。素敵文系空間。
「あ、勝負ついたぁ」
 御龍の言葉に会場を見遣れば、決着の光景はとても、悲惨。
「ホラ? ノータイムだぞ、嬉しいだろ? ん? スグタベレルゾ? ヨカッタナ? 直ぐ次モモッテキテヤルゾ」
 その上、ホラクエクエ、とかき氷を追加していくリュミエールの手によって竜一が一人大食い大会へと移行していた。
「あ、トドメ」
 光狐さんによる景気付けの最速腹パン。
「俺はあの中に混ざって頑張る若さは、ね……ほら、こう言うの外から見てる方が楽しいし」
 思わず苦笑と共に漏れたクルトの本音に頷く者数名。
「ただいま~」
 たっと駆け足でロゼの元に戻って来る緑。頭痛は起こしていないらしい。逆に一緒に戻って来た陽は少し辛そうだ。
「陽、お疲れ様。元気にしてたかい」
「あー、お陰様で……頭痛いですけどね」
 幼さの残る顔立ちで、陽は苦笑した。
「あれ、りせりーじゃん」
「歓迎会以来ですけど……ロゼさん共々、お元気そうで何よりです」
 リセリアに気付いた緑が、人の良さそうな笑みを向けた。
(彼が今の自分を受け入れて生活出来ているのは、嬉しいですね。二人が自分で選んで掴み取った今が、願わくば――ずっと続きますように)
 首を傾げる緑を前に、リセリアは、心密かに、希う。
「アイツ等の事ぁ知らんけども、リベリスタ転向するフィクサードも多いこったな」
 風に攫われたその微かな呟きは、火車のもの。
「アークの良い所は仕事選べる事だしよ、楽しくやろうとすりゃ楽しくやってける」
 さて、アイツ等はどうなるかね――楽しげな緑やロゼの姿を眺めながら、そんな事を思った。
「ひゃー!」
 不意に上がる悲鳴。主はミーノ。どうやらリュミエールがミーノに悪戯したらしい。竜一放置で。
「アイツ暇してそうだし、髪の毛毟ってくるわ」
 面白半分に火車、竜一の下へ。取り敢えずトイレに行かせてあげて。
 その傍らで、ミーノとリュミエールが色違いのお揃いの浴衣を揺らめかせ、会場であった場所でかき氷を食べ始めた。
 近くで、糾華とリンシードもアイスコーヒーを嗜んでいる。片や紫も帯びた蝶柄の和ゴス風の浴衣、片やフリルたっぷりの可愛らしい水着だが、黒基調で此方もお揃い。
「もう夏の終わりも近いですねー……ヒグラシの鳴き声も聞こえてきます……」
「そうね、もうすぐ秋が来るわ」
 来年の夏も迎えられるといいな、と。それはリンシードの、内に秘めた細やかな願い。
 そして何やらカメラを覗き込んでいる綺沙羅は、大会や客席の様子を撮影していた様子。
「ま、悪く無い画が撮れたかな……? あ、要望があれば写真や映像を焼き増し可。緑とロゼには要望が無くても贈りつける予定」
 晩夏の思い出に、是非一枚。



●不躾な人
「ちょっと、良いですか」
「うん? どうしたの?」
 先程突然席を立ったと思った筝子が、真剣な面持ちで悠里に声を掛けてきた。それに、竜一をトイレに放り込んできた火車も気が付いて。
「おやおや成希どーかしたか? 悠里も一緒で穏やかじゃねぇなぁ?」
「詳しい事情は後程お話しますが、実は……」
 予知。知った悠里は笑みを失い、逆に火車はぎらぎらと笑んだ。
「あぁそう……そりゃ穏やかじゃねぇなぁ……!」
 野暮な馬鹿共は何処まで行っても馬鹿で野暮だな――そう、忌々しげに吐き捨ててから、火車は。
「『今日はツマらん事は何も無く ただ楽しい一日だった』そういう事で良いな?」
 こくり、と頷く筝子を認めて、悠里を蹴り飛ばし。
「!?」
「ま、ゴミ掃除はして行かんとなぁ」
 その言葉に悠里は痛みも忘れ、我に返り、力強く頷いて。
「じゃあ、行ってきますか!」



●そのまま
「あれ? 悠里どこいった?」
 黒と紫のアーガイルチェックの水着を軽く引っ張り上げながら、夏栖斗は周囲を見回す。
 後片付けを一緒に手伝おうと話していたのに。
「トイレじゃない? りゅーいっちゃん大丈夫かねえ」
 椅子を運ぶ緑が通り掛かる。そんな二人の下に、筝子が走ってきた。
「宇宙さん、夏栖斗君! 丁度良かった」
 夏栖斗は、筝子が一瞬、自分を見て申し訳無さそうに表情を歪めた事が、やけに気に掛かった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
『暇を持て余した宝石の遊び』をを納品させて頂きます。
ご参加有難うございます、西条です。

今回の大会、楽しんで頂けましたでしょうか?
因みに、詳細順位(敬称略)は

1位:新田・快
2位:結城 竜一
3位:御厨・夏栖斗

となりました。ってこれ……

粗品は用意が間に合わなかったようです、申し訳ありませんでした。
緑「ごめんね~、今度縁があったら何か埋め合わせするよ」

それでは、ご縁がありましたらまた宜しくお願いします。
今回は納品が遅れまして、申し訳御座いません。