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A lone wolf


 夜の高速道路で男が一人、時速およそ80kmで愛車を進めている。
 すぐ横の追い越し車線から車が見えたため、少し速度を下げて追い越されるのを待った。
「……?」
 だが、いつまで経っても追い越される気配は無い。むしろ見えていた車が消えている。
 代わりに見えたものって言ったら。

『グルルルル……我ヨ、リ前、出   ルナ、我一番    速   イ』
「は……!!? な、なんでこんな所にいるんだよ、ってうわっ、でか!!!?」

 脇見運転は危険です。
 ほら、目の前に壁、壁、ドカン。


 システム:最近のニュース駄弁るチャットに まきの さんが入室しました!

 ユウ:こん
 ァヤ☆:こんばんはあー!!
 柊:おなかすいた
 まきの:こんばんは

 ァヤ☆:知ってる?? 高速道路の狼のハナシ。被害者が狼だーって
 まきの:!
 ユウ:またー? そういうの信じない方だからwwwwwwwwwwww
 柊:ふかひれたべたい

 ァヤ☆:いやこれ、マジ話ですからぁ~!><; 車で走ってると……
 ユウ:うん
 ァヤ☆:突如狼が!!
 柊:狼食べたい

 ァヤ☆:それで事故もあってさー、でもその狼、自分より速いのが気に食わないとかで?われよりはやくはしるなー!ってwww
 ユウ:はいはい、ただの都市伝説もどき。そんな馬鹿な話しあるかってー
 ァヤ☆:もー、ユウさんは夢が無いなぁ~!

「……なるほど」


「噂話しは広がる一方。まあ、それも今日で終わりにしましょう!」
 『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)は元気に両手をパンッと叩いた。
 今ほんの一握りで噂されている、高速道路の事故多発の原因は狼という根も葉も無いとは言われど、根はありそうな話し。
「ええ、まあ、万華鏡の力を借りましたが、やはりヒットしました。この噂、本当です。
 ただし、解るように相手はエリューションビースト。迷い込んだのか、出現の原因は不明ですが、出てきてしまっている以上放っておくことはできませんね。
 少々厄介なのが、走りながら攻撃してくる所ですかね。というのも、おかしな事に、高速道路をきっちり沿って走っているみたいですよ。
 なので此方も車等、なんらかの方法で並走しながら交戦することになります」
 その為に時村家の力を借りて某首都圏の高速は封鎖。不特定多数なる一般人の交通の便を犠牲にしつつ、空前絶後のwolf chaseの始まりである。
 敵は一体のみの、エリューションでフェーズは2。鋭く伸びた牙と爪、そしてやたら大きく肥大している尾には注意したいところだ。
 奴は日が見えない時間の高速道路に出現する。次の出現位置と時間は杏里が全て調べているので、後は『逃げられないように倒す』だけだ。
「我より前に出るなですか。杏里にはよく解りません……それでは、いってらっしゃいませ!」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:夕影  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年09月24日(月)23:28
 夕影です 以下詳細です

●成功条件:エリューションの討伐

●Eビースト:一匹狼
・通常の狼よりも肥大した狼
 フェーズ2
 会話は動物会話があると便利だと思われます

*常に毎ターン前方へ移動しています
 追い越され、追跡手段が無くなった、またはリベリスタの攻撃が届かなくなった場合、敵の逃走成功とし、失敗とします

 呪い無効
 速度高、回避高、防御薄、Dアクはそこそこしてきます
・切り裂く(物近貫BS流血致命呪い)
・噛み付く(物近単大ダメージBS失血毒)
・尾で払う(物近域ノックB)
・咆える(神遠2全BSショック鈍化 ダメ0)

●その他
・日が落ちた数分後の高速道路(暗闇対策は不必要です)
 
*リベリスタは車、またはバイク等に乗って高速を走れば時期に狼が追い越さんとしてきます、そこから戦闘開始です

*ドライバーのリベリスタは戦闘行動は一切行えません、全力で安全運転です
 マスタードライブとかあると最高かと思いますが、無い場合はテクニックの数値がものを言います

・事前自付は一回のみ認めます

人目とか音とか気にしちゃ駄目です
それでは、よろしくお願いします!
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
インヤンマスター
朱鷺島・雷音(BNE000003)
ホーリーメイガス
悠木 そあら(BNE000020)
スターサジタリー
不動峰 杏樹(BNE000062)
ソードミラージュ
須賀 義衛郎(BNE000465)
デュランダル
遠野 御龍(BNE000865)
ナイトクリーク
レン・カークランド(BNE002194)
スターサジタリー
雑賀 木蓮(BNE002229)
ソードミラージュ
フラウ・リード(BNE003909)

●事件は現場で起きているんだ。
 都内、近くには明治神宮とかある、その近くの首都高入り口。代々木と言ったか、少し歩けば原宿に当たる。
 傍にはブルーラインがよく目立つ電車も走っていて、でも今回は。
「お願いしますね、リードさん」
「はいよ、任されたっす」
 バイクの座席に跨るのは『LowGear』フラウ・リード(BNE003909)。その後ろに、『闘争アップリカート』須賀 義衛郎(BNE000465)の腰が落ち着く。
「運転は荒いかもしれないっす。ちゃんと掴んで離すんじゃねーっすよ」
 いつもは武器をナイフを握るフラウの腕が、バイクの二本の突起を握り締める。できるならば狼と同じく、自分の足で勝負したいものだが……いくらなんでも、本来の狼を超えてしまった狼への対抗手段が制限されたのであればそれに従うしか無く。
「できるだけ安全運転を心がけて欲しいが……」
 まあ、仕方無い。義衛郎は苦笑いをキメながら、己のAFをとんとんと叩いて一言。
『聞こえるか?』

「大丈夫なのだ、問題無く聞こえているのだ。そちらはどうかな?」
『大丈夫そうだ、では予定通りにな』
「うむ」
 AFのその先に居た『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)。今入ってきた後方を見れば、アークの職員が赤いコーンやら何やらを並べてKeep out。
「高速道路を封鎖とは、時村のちからも凄まじいな」
 少し見上げて、横を見れば。
「あたしのさおりんの力はやっぱりすっごいのです」
 小さな両手を、ちょっとだけ紅潮した頬に当てた『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)が居た。
 今、首都高はほぼ前面通行止め状態。この帰宅ラッシュ時間になんてこったい。一体なんの通行止めだと、温かいクレームも頂いております。
 きっと決断した室長は今日、胃薬を買った事だろう。そんな事も有り、雷音とそあらは早く終わらせなければと心に誓った。室長の胃に穴をあけないためにも働こう、リベリスタ。
 そして乗り込むのは『外道龍』遠野 御龍(BNE000865)のデコトラ『三代目龍虎丸』。確かそれ、少し前の依頼で鉄屑と化していましたよね?とか杏里が満面の笑みで言っていたので、訂正させて頂くと『四代目龍虎丸』。その総重量25t。ちょっとやそっとの衝撃でも壊れない(と信じている)。もうそれ上から落とした方がいいんじゃね!?と言わせんばかりだ、あ、言ってしまった。
 さておき、リベリスタはフラウと義衛郎を残してその後ろへと乗り込む。
「頼りにしている。マスタードライブの腕を存分に振るってくれ」
 『red fang』レン・カークランド(BNE002194)が高すぎる運転席の中にいる御龍へと見上げた。そんなレンへと御龍はサムズアップしながら、運転席の扉を閉める。
「さァーて、いっちょかますぜぇー!!」
 リベリスタが所定の位置に着いた。
 瞬間的に、デコトラは急加速で走り出す……というか全力で御龍がアクセルを踏んだ。止まっている時を0とし、最大まで加速している時を100としよう。今この瞬間、0から80までぶっ飛んだ。後方でドカドカドカッと音がしたが気にしない。
「運び屋の血ィ、騒ぐぅう!! 運ぶのは狼への引導だぜゴルァア!!」

 と、その頃荷台。
「たちゅううーーーー!!!! ぃたっ!」
 ふわりと飛んだ、まるでジェットコースターか。
 びええ!と涙目になりながら『銀狼のオクルス』草臥 木蓮(BNE002229)。その身体が、デコトラの荷台から早くも急加速で飛ばされて、扉に激突。
 出発した瞬間に、開いている扉にほぼ全員、強制的に扉側へ寄った。
 雷音はひっくり返った。その羽に重なるようにして、そあらは壁に逆立ち状態になっていた。
 レンは頭を打ってふらふらし、早くもそあらの天使の歌が響き渡る。
「これは……酔いそうになるな」
 エチケット袋も必要だったかと。
 ただ一人。体勢を低くし、衝撃を踏ん張って耐えた『アリアドネの銀弾』不動峰 杏樹(BNE000062)だけはその被害を免れていた。

 そんなデコトラを追うバイク。天国と地獄か。
「戦闘、まだ始まってないっすよね」
 ふと聞こえた気がする木蓮の叫び声。とか、ドカドカとぶつかる、鈍い音達。
 フラウはそう言いながら辺りをキョロキョロ見回した。やはりまだ、狼らしい姿が見えない。
「いや、あの中はもう色々戦っているんだ、揺れと」
 義衛郎の頬から、たらりと汗が流れて、矢の様に消える景色に消えて行った。

●神秘事件はやっと姿をあらわしたんだ
 三つの出入り口が過ぎて、しばらくしてだった。重なる四つの音が聞こえ始める。その音は足音で。
 伸びた爪が、磨がれるように地面のコンクリートを蹴る音が重なって響いてくる。フラウは後方を見て――先制は敵の尾が取った。おそらくフラウならばアレよりも早く動けているが、今は手が塞がっている。
「来た……っす!!?」
「ぅおあ!!?」
 二人のバイクが衝撃と共に揺れ、大きく横へと傾いた。それに半身への衝撃が大きい。もはや倒れる、そう思われた時だった。
「こンのぉお!」
 意地とハイバランサーを駆使してフラウは倒れる方向とは逆に身体を向け、体勢を持ち直す無茶苦茶をやってみせた。おそらくこの一撃で、一般人は事故って来たのだろう。リベリスタ舐めんな。
 もちろん義衛郎も無事だ。ただ、叩かれたバイクの横が変形したり、欠けているように見える。
「早くも廃車決定っす」
「戦闘が終わるまで持ってくれれば、十分だ」

 義衛郎のAFから漏れる音に、ガバッと起きたひっくり返っていた雷音。
 御龍もバックミラーから敵の姿を確認、すぐに後方の観音扉を開いた。荷台にくぐもっていた空気が一気に風に攫われて行く。
「現れたようだな。随分とご機嫌のご様子だ」
 雷音から見える前方、トラックから見たら後方。一言、AFに戦闘開始すると声をかけ、義衛郎は既に攻撃を開始していた。
 後衛である此方も負けてはられない。けれどその前に。
「いぬちくしょうめが、そあらさんの目から逃げられるなと思うなです」
 そあらさん怖い。高速道路で走るおばあさんとかの話しはよくあるものの、狼(いぬ)だったなんて。狩猟犬では無いけれど、狼に勝てない訳は無い。
 それに何より。
「さおりんとデートするとき渋滞だったら困るのです雷音ちゃん尻尾を狙うといいのですーー」
「う、うむ!? 解ったのだ!」
 恋する乙女は無敵だ。息継ぎなしの早口でそあらは狼の情報リーク。その信頼した声に従って、雷音は来来、氷雨とつららを降らせた。
「運は、悪かったようだな?」
 続くレンがグリモアを広げ、その本の間からカードを取り出す。その絵柄は嗤う黒いピエロ、ジョーカーのカード。
 ほぼ同時に、雷音がテレパスで狼の脳の直接言葉を叩き込む。
『追いかけっこでもしないかい?』
 言葉の羅列が、あちらに理解されたかは別の話しとして。
 レンが指に挟んだカードは、投げずともデコトラから生まれる風に乗って一直線に狼の額を掠めていく。やはり回避は高いか、そう易々と当たってはくれないようだ。
「アークには、おまえより速い奴は沢山いるよ。だから――」
 これが、最後の競走勝負だと。レンは再び同じカードを引く、今度は色のついたピエロの同じカード。
「やっぱり、あの妙にでかい尻尾でバランスとってんのか……?」
「ふむ。なら、取れれば楽しいかもしれないな」
 木蓮の言うバランスとは。時速100キロで動物が走るとき、真っ直ぐに走るのは簡単だが、横に曲がるという事が難しくなってくる。それを解決するために、曲がる方向とは逆に尻尾を回して倒れにくくしているのだ。これはジャイロ効果と(続きはWebで!)
 話しは戻ろう。二人のスターサジタリーがそあら、雷音、レンの後ろからそれぞれの武器を構えている。
「狙うは尻尾だ、いいぜ!」
 見える狼に、恋人の姿が重なる。でもでもっ彼はアレよりももっとカッコいいし。
 撃ち出す弾丸、けれど、しかし、大きく狼がジャンプする。その下方を弾丸だけが通っていった。見事に避けられ、そのまま狼の牙が、爪が、フラウへと向か――
「いくら動きが素早くても、私には止まって見えるな」

 チキチキチキチキ。小さな、女神が目を覚ます。

「……杏樹?」
 レンが後ろを見る。杏樹が構えたアストライアが光を帯びて、淡く光っているのだ。
「なんだろ……これ、どうしたんだ?」
 よく解らないといえど、弓の糸を引く。生まれた魔力が矢と成りて。

 刹那。 

 バゴォッ!!

 弓から矢が放たれた瞬間、自分の攻撃の衝撃に杏樹の身体がデコトラの運転席後ろの壁にまで吹き飛んだ。
 狼の攻撃に、フラウが衝撃に備えたが、それは必要無いと知れ。杏樹の矢は狼の右耳を吹き飛ばし、そのまま後方の尻尾をあっけなく千切り吹き飛ばしていく。
 ギャインと響く、かの敵の断末魔。それを耳にしながら、杏樹はアストライアと、自分の両手を見つめていた。 
「誰よりも、早く走りたがる狼か」
 それも攻撃を退ける力もある狼で。だからこそ、一発も外せない。
 杏樹は立ち上がり、再び弓を前方へと向けた。狩猟の女神、アルテミスの月の如く。アストライアは月の様に反っては光を生み出す。
 シスターの手によって。

●譲れないものがあるんだとかで
 戦闘は激化しつつも、肝心の尻尾が無いので敵の攻撃は絞られてきた。
『先、走ル ナ。ハ  シル、殺ス』
「ハッ! あたしの前は走らせられねえなァ!!」
 御龍は更にエンジンを迸らせ、誰も居ない道を気持ちよく進む。
 とはいえ、御龍は狼の気持ちは解るつもりだ。同じ種族のビーストとしてでもあるが、運び屋……走り屋として。
 とんとん。ハンドルを指で叩き、前方を見れば。おや?

「曲がるよォー!!」
 とAFから御龍の元気な声が聞こえてきた。御龍から見て前方は分かれ道、どちらに向かうかは御龍次第として。レンが雷音の肩を叩く。
「狼……曲がれるのか?」
「……曲がれないんじゃないだろうか?」
 六本木一丁目上の分かれ道に差し掛かり、御龍は左の道を選んで行く。
 この道は比較的、左は大きく曲がらないといけないが、右の道はほぼ直進同然。当然狼は右の道を選ぶ。
 とは言え、逃げられるのも、逃がすつもりも、こちらもあちらも無くて。
 AFからフラウと義衛郎の声が漏れる。
『曲がれないなら、うちらだけでも右行くっすか?』
「いや、大丈夫なのだ。きっと向こうは追い抜かすまで追いかけてくるはずなのだ」
『そうか、信じよう』

 そうして分かれた二つの道。見える限り狼の姿をリベリスタは追った。一つのビルによって、向こうの道が一瞬見えない。そしてビルが過ぎたと思えば狼が見えない――
「上、か」
「上っすね」
 義衛郎とフラウは見上げた。臨機応変に、着地位置を計算してその近くにバイクを寄せていく。
 未だ凹んだバイクはかろうじて動いているが、先ほどから挙動がおかしい。限界は近いか。
『上から来るです!! 』
 AFから聞こえたそあらの声。言うまでも無く、全員のリベリスタが大きく跳躍している狼を目に上を見ていた。
「向こうの道路から大ジャンプってかー!?」
 木蓮も再び標準をあわせようと狼の姿を追う。
「エリューションならやりかねないですよ」
「なんでも有りか」
 そあらの天使の歌が響き、レンがライアークラウンを作り出す。狼が着地したのに従って、そのカードを投げる。
 前方では、フラウと義衛郎は苦戦を強いられていた。特に、バイクを攻撃されては一溜まりも。
「次バイクに攻撃きたら多分耐えられないっす!」
「解った、次でなんとかしよう……」
 ガタガタ震えるバイクは限界を表す。飛んだ義衛郎が鮪斬を振り上げ、幻影を作りながらも息をつかせぬ攻撃に入る。
 掠る、掠るが、狼の体力は削っているはずだ。攻撃を終え、バイクへと戻り、フラウの服を掴む。
 あとの体力は仲間が削ってくれると信じ――バイクは狼の牙に容易く壊され、フラウ、義衛郎、二人の姿が消えた。

●四代目は五代目へと
 壁が消えたことにより、狼をブロックするものは無い。
 トラックに近づき、近づき、もはや追いつかれたと見てもいい。すぐ横を並走する狼と視線が合う。口から零れている唾液が、消えていく背景へと溶けていくのさえ綺麗に見える。
「三千世界の鴉よ」
 雷音が動いた。鴉を作り、それを飛ばす。
 狼から見たら、ちっぽけな鴉だが。狼の怒りを買うには十分な威力を持ち合わせている。
『殺ス、殺、殺ス!!』
「これ以上、伝説を本当にされてしまっては困るのだ!」
「そうなのです、事故とか大変で困るのです!」
 鴉に続き、そあらの魔力を突き詰めた矢が狼へと向けられる。胴に掠ってはその毛並みを撫でるだけで終わってしまうが。
 狼の口から息が荒く出入りする。血走った目、衰えぬ動きからは考えられないが、確実にダメージは入っていた。
「もう少しで、終わる……か!?」
「うわわ!!?」
 木蓮の身体がまた、ふわりと宙に浮く。思わずレンがその手を繋いで、木蓮が飛ばされていくのを止めた。
 トラックが大きくカーブというよりかは、スピンしながら荒いUターン。
「安全、運転……ッしてほしいです」
 杏樹も思わず、気持ち悪さに口を押えた。
「わっ!」
「雷音ちゃん!」
 小さな身体宙に。投げ飛ばされ、観音扉から大きく雷音の身体が出て行ったが、そあらが寸前で掴んで引き寄せる。
 ちょっとした事件が身内によって引き起こされた。というのも犯人は。
「よぉおおくも、二人をぉぉお!!!」
 フィーバー状態(でも冷静らしい)の御龍だ。
 前方から大きく狼が咆哮をあげた。その音の振動に、デコトラの強化ガラスでさえ粉々に破壊された。
 それでも御龍は手を離さない。
「ひーっ!? 御龍、落ち着けだああー!!」
 木蓮の叫びも、彼女の耳にはあまり聞こえていないようだ。

「ヒャッハー!!! 頑張ろうねぇ、龍虎丸ぅう!!」

 蹴る様にしてアクセルを踏んだ、踏んで、踏み切った。豪速で走り出す龍虎丸。前方で狼もびっくりだ!!
 狼は速度はそのまま、逆走してくる物体に今更ブレーキかけて逃げようたって間に合わない。そうしてそうして。

 衝撃と、轟音と、獣の叫び。

 もはや龍虎丸の運転席から荷台まで凹んでいる。御龍はそのままフェイトの恩恵を受ける。
 狼も重傷に被せられた衝撃で、高速道路の壁を大きく凹ませながらぐったりとしていた。
「うぅ、ぅ……みんな無事か?」
「大丈夫、では無いのです」
 すぐに荷台ではそあらの聖神の息吹が響く。レンが回りの少女達を荷台から外に引っ張り出した。
 ふと、レンの耳に声が聞こえる。
『マダ……マダ、走レル マダ、マダ!! 走レル!!』
「まだ、生きてるか……?」
「みたい。まあ、もう……これなら――!!」
 木蓮が構える。相手はもはや虫の息。
 走りを極め、常に先頭を行く一匹だったが、傷つきガラスが刺さり、ひしゃげた骨でこれ以上走るのも滑稽と言えよう。
 最速の意地……見せてみろ。と言うのももはや野暮か。杏樹は言葉を飲み込んだ。
 そあらは聖神を続ける。雷音は、静かに目を閉じた。
 あとは全員で攻撃すれば良いか。一人の暴挙が大事故を起こしたけれど、結果オーライとしよう――いいよね?!


 鉄屑となった龍虎丸と、動かない狼。
 フラウと義衛郎は傷を抱えながらも自力で仲間と合流した。
 運転席で挟まっている御龍をよいしょよいしょと取り出しながら、そあらは愛しの彼に電話をかける。
「はいです! もう渋谷の一部を除いて通行止めを解除してもよさそうなのです! はい、はい! 頑張ったのです!」
 そんな姿を見ながら、雷音は小さく微笑む。そして義父にメールを打つのだ。

「そあらのおかげで怪我は少なかったです。そあらのことも褒めてくださいね」

 後日。狼の身体はきちんと埋葬されたという。
 それをしたのは義衛郎だった。
「楽しかった……かい?」
 その答えは見えない。けれど、自分より速く、強い者が居たのに狼は衝撃を受けたはずだろう。

 秋の冷たくなった風だけが、吹き抜け、虚空に消えていった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
依頼お疲れ様でした!
結果は上記の通りになりましたが、如何でしたでしょうか?
最初からクライマックス、命中って怖いのにクリティカルってそんな、そんなぁぁ……
という感じで、始まりました。それで、えと……都市伝説は伝説になりました!ええ!
都市伝説っていいですよね、好きです
ひとつ。変えのバイクがあったのに勿体無かったかもです
また違う依頼でお会いしましょう!