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お受験の為に勉強するザマス!

 そこは、とある市民球場。
 日が暮れかけていたのだが、数人の少年達が野球の練習へと打ち込む。そんな中、一組の親子が球場の端で言い争いを行っていた。
「さあ、塾の時間ザマスよ!」
「嫌だよ、僕は皆と野球をするんだ」
 その母親は眼鏡の端を上げながら、子供を叱りつける。子供は小学6年生。リトルリーグにも所属している男の子だ。母親は、塾へと息子を行かせるために迎えに来ていたのだが、彼はそれを拒否したのだ。
「来年はお受験ザマス。その為にも、もっと勉強をするザマス!」
「でも、ママ、僕はもっと野球がしたい……!」
 男の子……江藤陸は周囲の男の子と同じように、野球へと本気で打ち込んでいる。正直、受験になんて興味はない。
 親が受験させようとしているのは、私立の名門校。さほど野球では聞かない中学の名だ。仮に進学してしまうと、真剣に野球へ打ち込む環境はないに等しいと、彼は確信していた。
「うるさいザマス……、陸ちゃん、ママに逆らうザマスか……?」
 眼鏡の端を上げていた母親の表情が、少し歪む。
 そこへ、チームメイトが一斉に母親の前へと駆けつけた。
「僕達からもお願いします。地区予選が近いんです」
「陸君の力は、僕達のチームに必要なんです!」
「お前ら……」
 チームメイト達が一緒になって、陸の母親へと頭を下げる。陸にとっては、この上ない仲間達の言葉。それはとても嬉しいものだった。
「勉強ノ邪魔ヲ……するのザマスネ……?」
 ……しかし、それは母親にとっては逆効果だった。
「うちの陸ちゃんに野球、野球とフキコンデ……」
 突然、彼女は理性を失い、暴走を始めてしまった。母親の服が破れ、所々、獣のような毛が生え始める。ソレは狼の毛のようにも見えた。
「ソレなら、邪魔ナアナタ達を全員、コロシテしまうザマス。後デ監督モ……ザマスネ」
「ママ……?」
 母親の車の中から、1人、2人と女性の姿が現れる。後部のトランクからも1人……。その光景は異常だった。チームメイトは悲鳴を上げてその場から逃げようとする。
「逃ガシたらダメザマス。陸ちゃんノ勉強ノ邪魔ヲスル奴ハ、皆殺シザマス!」
 ついに、母親が壊れた。母親とそれに従う女性達は、一斉にチームメイトへと襲い掛かる。
「あ、ああ……」
 狂気の母親に襲われ、惨殺されていくチームメイトを、少年はただ呆然と見つめることしかできないのだった……。

「……これは、未来の話。今なら、少年達を救うことができる」
 『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は、ブリーフィングルームへと集まったリベリスタ達へと告げる。今なら、少年、江藤陸とそのチームメイトを救うことができるのだ、と。フォーチュナの彼女が見た未来……それは不確定なものでしかない。
「ノーフェイスになっているのは、陸の母親。フェーズは2まで進行してしまっているわ」
 母親、和江はすでに救うことができない。彼女は遠回しにそうリベリスタ達へと伝える。陸や彼のチームメイト達を助け出すために、母親は倒さねばならない。
 また、和江は3人の女性を従えている。彼女達も息子を持つ母親だ。この母親達もノーフェイスと化しており、フェーズ1まで進行している。
 彼女達はエリューション化の影響で、獣のように変貌してしまっている。また、和江が覇界闘士に似た能力を繰り出してくる。3人の母親はレイザータクトと同様の能力を使い、和江の支援を行うようだ。
「陸の将来が不憫でならないけれど……、リベリスタとして、エリューションの所業を放置するわけにはいかない」
 イヴの言葉に、リベリスタ達は頷く。たとえ、どのような結末になろうとも、陸を助け出すと誓って……。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:なちゅい  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 4人 ■シナリオ終了日時
 2012年10月15日(月)23:22
 初めましての方も、どこかでお会いしたことのある方もこんにちは。なちゅいです。
 息子にお受験を強いる親。モンスターペアレント……みたいなのを想像していますが。いや、もしかしたら、そんな親はエリューション化しているのかも……。
 依頼内容の確認です。


●目的
 ノーフェイスとなった母親と、彼女の従える女性3人を倒すこと。

●敵
 江藤和江45歳。眼鏡の端を上げる仕草が印象的。息子をいい学校へと進学させようとして、彼に勉学へと励んで欲しいと思っています。ただ、そんな中、彼女はノーフェイス化。その思いは少しズレた方向へと向けられてしまいます……。
 フェーズ2。理性を失った和江は、狼のように変貌します。覇界闘士に似た能力で攻撃を仕掛けてくるようです。

 和江は同世代の3人の女性を従えています。彼女達も子持ちの母親達です。
 和江と同じく、3人の女性もノーフェイスになっています。フェーズ1。黒猫、白猫、ブチ猫のように、女性達の外見は変化しています。彼女達は総じてレイザータクトと同様の能力を使い、和江の援護を行うようです。

●NPC
 江藤陸、小学校6年生。野球少年。中学校に行っても野球をしたいと思っています。チームメイトとの関係は良好。チームではセカンドを任せられているようです。
 また、この場に残るチームメイトは10人ほど。監督は帰宅したようです。

●状況
 事件が起こるのは夕方です。普段の練習を終え、居残りして練習を行う陸達の元へ和江が彼を塾へ向かわせるべくやってきます。
 陸が塾へ行くのを拒否し、チームメイト達が彼を引きとめようと動くと、和江はノーフェイスとしての本性を現し、3人の母親と共に陸のチームメイトへと襲い掛かってしまいます。


 相談期間が若干短くなっております。あらかじめご了承くださいませ。
 それでは、今回も楽しんでいただければ幸いです。よろしくお願いいたします!
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
覇界闘士
テテロ ミーノ(BNE000011)
ホーリーメイガス
シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)

リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659)
デュランダル
四門 零二(BNE001044)
ソードミラージュ
神城・涼(BNE001343)
ソードミラージュ
レイライン・エレアニック(BNE002137)
インヤンマスター
一万吉・愛音(BNE003975)
レイザータクト
神葬 陸駆(BNE004022)
■サポート参加者 4人■
プロアデプト
氷雨・那雪(BNE000463)
マグメイガス
風見 七花(BNE003013)
クリミナルスタア
禍原 福松(BNE003517)
クリミナルスタア
セシル・クロード・カミュ(BNE004055)

●野球少年達を救え!
 リベリスタは現場の市民球場へと急行する。彼らがそこで見たもの……それは、地区予選に向けて野球の練習をする少年達の姿だった。間に合った。リベリスタ達は誰もがそう思った。
 しかし、母親、和江の車もほとんど同時に到着してしまう。両者が会ってしまう前に、一刻も早く少年達を避難させなければならない。
 眼鏡をくいっと上げながら、球場の中へと歩いていく和江の前に、彼女を足止めすべくリベリスタ達が立ち塞がる。
「塾から来た者です、陸君の授業方針についてお話があります。とても急ぐ話です」
「まあ、お世話になっているザマス」
 話しかけてきた『闇狩人』四門 零二(BNE001044)については塾の講師と、周りにいるのは塾の生徒だろうと、和江は思い込んだようだ。
「せんせいがはなしがあるって。ミーノもいっしょなの!」
「全く……話をするなら、早くしてくれないか」
 『おかしけいさぽーとじょし!』テテロ ミーノ(BNE000011) と『ジーニアス』神葬 陸駆(BNE004022) が零二の話に合わせる。『光狐』リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659) もこくりと頷いていた。
「それでは、ついてきてください」
 和江はリベリスタ達に何の疑いも持たず、リベリスタ達についていく。

 残りのメンバーは、子供達を避難させるように動き、球場にいる少年達を集めて呼びかける。
「落ち着いて聞いてください。この球場に不発弾が埋まっているのが分かりました」
 『節制なる癒し手』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650) は、少年達へと冷静に対応するように告げる。見た事もない大人達の出現は、その話に真実味を帯びさせた。
「マジで!」
「やべぇ、どうしよう」
 少年達は驚きを隠しきれずに大声を上げて慌てていた。その中には、江藤陸の姿もある。
「ここは危ないのでございます! 一緒に安全な所に行くでございまするよ!」
 『愛の一文字』一万吉・愛音(BNE003975) は動揺する少年達を誘導する。サポートメンバー達も手を貸し、少年達を球場の裏口へと連れて行く。すでにメンバー達が結界を張っていることも手伝って、少年達は素直についてきてくれた。
「とりあえず……まァ、リベリスタとして放っておくわけにはいかんからな」
 『chalybs』神城・涼(BNE001343) が少年達の後ろで、ぼそりと呟く。今回のノーフェイスについていろいろと考えていた彼から、その結論として出た言葉だった。ノーフェイスと化した母親が息子のチームメイトを惨殺するという事件。どういう結果が待っているにしろ、エリューションは倒さねばならない。
「どんな想いがあったにせよ、母が子を殺すなど絶対にあってはならぬ」
 『巻き戻りし残像』レイライン・エレアニック(BNE002137) がそれに応える。その最悪の結末を避ける為にリベリスタ達は集い、この依頼に参加しているのだ。
 少年達を連れたメンバー達は球場を出た後、人目に付かない土手へと向かっていった。

 さて、和江を誘導するメンバーは、球場のそばにある人通りの少ない通りまで、和江を連れて行く。
「そろそろいいザマショ? 用件を言うザマス」
 和江が足を止める。この状況を怪しんでいる様子だ。
 一行は結界を張る。フィクサードを迎え撃つ準備が出来たメンバー達は、和江に向けて武器を抜く。
「リベリスタに課せられた任務だ。不幸はこれ以上広げるわけにいかない」
 陸駆がそう告げると、和江の様子が変化する。
「陸ちゃんのお勉強の邪魔をしに来たザマスね……!」
 自身に武器を向けられたことに対して、和江はそう勝手に解釈した。そして、……突如、狼のように体毛を生やし、その体を変貌させた。
 彼女を援護するように、3人の女性がその場に現れる。それは、和江と同世代の母親達。彼女達も同じく、猫のように体を変化させた。それを見たミーノはノーフェイスと成り果てた彼女の息子について嘆く。
「ぜったいにりくくんたちのほーにはいかせないのっ! ママたちのこんなすがたみせられるわけないのっ」
「全くだな」
 零二もそれに同意する。獣のように吠えるその声、そして姿は、もはや人間のものではない。野球少年達の為に、何より息子の陸の為に、この場で彼女達を倒すしか道はないのだ……。

●その暴走を止める為に
 少年達の下では福松と七花が残り、記憶操作を行う。他のメンバー達は避難完了直後、母親達の相手をすべくそちら側へと向かっていった。
 まず、福松が子供達に、不発弾の話や自分達のことを隠蔽すべく、魔眼を使った。さらに、七花が陸の母親が事故にあったという暗示を行う。子供達は疑うことなく、2人の記憶操作によって、その場から帰宅の途につく。子供達の避難は成功することができたようだ。
「陸ちゃんノ……勉強オオオ!」
 球場近くの裏通りでは、母親達がノーフェイスとしての本性を現す。和江が邪魔をしてくるリベリスタへと拳を振り上げるが、リベリスタ達の動きが圧倒的に早い。
 リュミエールが真っ先に飛び出し、突撃していく。ナイフを取り出した彼女は、真っ先に和江へとナイフを突き出していった。飛び散る光に和江は目を少しだけ伏せるが、お構いなしに焔を宿す拳を振り上げる。
「さぽけいじょしのうでのみせどころっ!!」
 ミーノはその後ろで印を結ぶ。そして、印が完成すると、リベリスタを囲むように守護結界が張られる。ノーフェイス達はそれに驚いた様子だ。
 しかし、和江は構わず拳を振り下ろす。強力な一撃が零二を殴りつけ、彼の体へと引火して燃え上がる。
「結界が思ったより効いているな。助かる」
「こんどはほのおをけしてあげるのっ!」
 炎が零二の体を焼くが、守護結界がダメージを軽減してくれたようだ。それを見たミーノは、今度は炎を消すべく構えを取るのである。
 仲間達を視界に入れつつ、陸駆は猫女達を迎え撃つ。猫女達もかなり素早いが、陸駆の方が少し早い。彼はすでに、それを配置し終えていた。
「天才の僕の戦略演算に……狂いはない」
 飛び掛る猫女達は、陸駆の配置した不可視の刃へと突っ込む。自身の飛び出す勢いが仇となり、その身から鮮血が流れ出す。
 傷つく彼女達へ、零二が迫る。
「それで終わったとは思わないことだ」
 彼は猫女達へと自身の幻影を展開させていく。猫女達を翻弄させつつ、連続攻撃を手前の白猫、ブチ猫へと浴びせかける。斬撃を受けた彼女達は、狂ったような声を上げて反撃を繰り出す。白猫が投げつける閃光弾。それで目を眩ましたかと思った隙に、ブチ猫が飛ばす真空の刃が陸駆を襲う。彼はそれをなんとか防ぎきっていた。
 一方、後方に控える黒猫は、和江と防御の動作を共有させる。それで彼女達は自分達の守りを固めていた。
「ソレじゃ、ヤルザマス……!」
 目を光らせる母親達。そこへ、少年達の避難に当たっていたメンバーも駆けつける。
(子を想う気持ちがこの様な事になってしまったのは、正直可哀想じゃと思う)
 子供達の姿を見た後だからこそ、化け物になってしまった母親達の姿を見るのは、実に忍びない。その場へとたどり着いたレイラインはそんなことを考えながら、真っ先にトップスピードで身体能力を高め、攻撃準備を整える。子供達の姿を見た後だからこそ、化け物になってしまった母親達の姿を見るのは、実に忍びない。
「ここでわらわ達が暴走を止める!」
 ギアチェンジが完了したレイラインは武器を構え、新手に気づいた猫女達へと突っ込んでいく。しゃああっと鳴く白猫に涼が踊りかかった。もしかしたら、この猫女も子供の為に生きているのかもしれない。彼女を倒したなら、子供の将来を憂い、そして倒した相手を恨むかもしれない。
「恨んでくれても構わんが、……やらせてもらうぜ!」
 涼の剣舞が白猫へと浴びせかけられる。白猫を惑わす剣の舞い。素早い白猫だが、それでも涼と、彼の出す幻影の繰り出す剣に翻弄され、棒立ちになって斬りつけられてしまう。
「歪んだ愛はエゴというものでございまする」
 その白猫を引きつけつつ、愛音が式符を折って作った鴉を投げつける。鴉は狙い違わず、和江を狙い打つ。鴉は和江の左肩を射抜く。
「陸チャン、オ、勉強オオオ、ザマァァス!」
 痛みなのか、ノーフェイスと化したことによる狂気なのか。彼女は大声で叫ぶ。射抜かれた左肩を上げつつ、彼女は眼鏡を上げる。人としての癖がかろうじて、残っているのだろう。
「エゴですよね……思い出して欲しいと願うのは……」
 シエルがどう願おうとも、彼女はもう戻らない。
「貴女達が何者になろうとも……敬意を」
 シエルはそんな哀れなる母親達を気遣いながら、神経を集中させる。周囲から魔の力を吸収し、シエルは母親達を倒すべく自身の力を高めていった。

●悪夢の……終わり
 ノーフェイスとなった母親達の攻撃は生易しいものではない。得た力を……いや、得てしまった強大な力を、勢いに任せて振り回す。
 白猫はこちらへと閃光弾を投げつけまくる。こちらが目が眩んでいる間に、ブチ猫と和江がこちらへと有り余る力をリベリスタ達へとぶつけてくるのだ。
 ブチ猫は狂ったような鳴き声を上げて、真空の刃を飛ばす。さらに、和江が続けざまに焔に包まれた拳で殴りかかる。それは運命の巡り合わせなのか、それをその身に受けていたのは、その息子と同じ名を持つ陸駆だった。
「天才であるこの僕が……!」
 ノーフェイス達の連続攻撃に、明らかに陸駆は押されていた。目には目を、彼も閃光弾を投げて敵の目を眩ませた。
 膝をつく彼へ、シエルが優しく声をかける。
「練気にマナコントロール……我が身全ての力もて、只管癒してみせましょう」
 神の意識を読み取ったシエル。彼女は自身の力でその一端を具現化させ、陸駆へとその息吹を吹きかける。
 そこで、目を光らせていたのは、黒猫だ。和江のサポートを終えた彼女は、近づいてきて、回復役であるシエルへと伸ばした爪を光らせる。
 それを那雪が身を挺して庇う。唸りを上げて振るわれた爪が通り過ぎた後、那雪はシエルを見て、彼女が無事だったことに安堵する。
「ありがとうございます……!」
 シエルは再度前線のメンバーの傷を癒す為、再び神の意識を読み取るべく、目を閉じるのだった。
 再び閃光弾を投げつけようとしていた白猫。すでにダメージは致命傷になっていた。レイラインが白猫、ブチ猫へとまとめて斬りかかる。残像を残しながらも与える攻撃は暴れ回る猫達の体を次々に切り裂いていく。全身から鮮血が吹き出した白猫が、ついに地面へと倒れてしまった。しかしながら、エリューション化してしまった彼女には、人間として倒れることも許されない。
 仲間が倒されたと怒り狂うブチ猫へ、セシルが援護射撃を行う。足を貫かれたブチ猫は、大声で悲鳴を上げた。その間に、零二がブチ猫と、近場にいた和江を巻き込んで幻影と共に斬りつけていく。ブチ猫はさらに金切り声を上げ、悶え苦しむ。
「……悪いな」
 幻影とともに涼はブチ猫へ武器を振り下ろす。一際大きな声が辺りを支配する。それが止んだとき、ブチ模様の猫に変貌した女性は息を引き取ってしまっていた。
 和江は邪魔するリベリスタへ、炎の拳を振り回し続ける。その炎は息子を想う熱意の現われなのか……。
「陸チャンノォ、邪魔、ザマスゥゥゥ!」
 熱意の篭る鉄拳は、息子の障害を取り除く為に振るっているのだろう。その炎の拳をリュミエールがもろに食らった。炎に包まれて疲弊する彼女へ、ミーノが駆けつける。
「たいりょくがへったらてんしのうたっ!!」
 ミーノはすぅっと息を吸い込む。優しく詠う彼女の声が癒しの福音となり、傷つく味方の傷が塞がっていく。
「狙いを外すことはしない」
 暴れまわる和江の動きを捕らえることは困難だ。しかし、陸駆にはそれでも捉える絶対の自信があった。狙いは彼女の眼鏡。彼の気糸が和江の眼鏡へとヒットする。それは宙を舞い、地面へと落下した。
 旗色が悪くなり出したのを感じたのか、黒猫は和江を守るべく、サポートを行う。その周りには、愛音が他の仲間に攻撃させじと張り付いている。
「子に注ぐは親の愛、エゴを押し付けるのは間違いでございます!」
 黒猫を抑えたままの愛音は、和江に向けて式符鴉を飛ばす。和江の左腕を鴉が貫いた。痛みに、そして思い通りにならない現状に、彼女は苛立つ。
 それを皮切りに、味方の攻撃が集まる。
「力ずくで、止めさせてもらうぞよ」
 レイラインの武器が、よどむことなく和江へと振るわれる。2度、3度……数えられぬほどの斬撃が浴びせかけられた後、涼も続けて和江に切りかかった。幻影とともに斬りかかる涼の攻撃。彼女の服が、そして、狼の毛が次々に刈られる。彼女の体は、彼女自身の血で真っ赤になってしまう。
「りく……チャ……」
 ぜえぜえと息をする和江は、なおも息子の名前を呼び続ける。それは、息子を想う、彼女の気持ちの表れ。しかし、それは息子にとっては枷だったのかもしれない。
 零二は思う。子が自ら決意したなら、親が知る『世界』の中だけに閉じ込めるべきでないと。
 そして――。
「ときにはただ信じて、見守るべきだった……彼の可能性を!」
 零二も、自らの幻影とともに、剣を振り払う。胸と背中を同時に裂かれた和江は、がっくりと倒れてしまった。
 もはや残る黒猫に勝機は残されていない。ただ、ノーフェイスとなった彼女を、野放しにもできない。リベリスタ達はその母親の境遇に哀れみを覚えつつ、再度武器を振るうのだった……。

●母親達に鎮魂の祈りを……
 倒れる母親達。彼女達は元の姿にも戻れず、獣の姿を残したままで二度と目覚めぬ眠りへとつく。
「……子供に笑顔を導くのが本当の親の愛だと思うのでございますよ」
 愛音が倒れる母親達へとそう告げる。その言葉は、彼女達には届いているだろうか……。
 倒れた母親を見下ろし、ミーノが呟く。
「ママがいなくなっちゃうってどんなきもちなんだろう……」
 想像もできないその状況。しかしながら、いつか来るその時を想像したモーノは、しょんぼりとしてしまう。
 母親達へと鎮魂の祈りを捧げた一行はアークへと連絡を取り、その遺体を託すことにする。それを見届けた涼は、メンバー達に背を向けた。
「悪いな、後は頼むぜ」
 もうできることはないと考えたリュミエールも頷く。そして、2人はその場を去っていった。残された陸が強く生きていくことを信じて……。

 残るメンバーは、唯一土手に残っていた陸の元へと向かう。そして、母親の死を彼へと告げた。真実を伝えることはなく、交通事故で亡くなったと陸は知らされる。すると、陸はがっくりと膝をついた。それと同時に、彼の頬を流れた涙も地面へと落ちる。
(……居た堪れんのう)
 レイラインは陸から目を逸らしてしまう。化け物になった母親が自分やチームメイトを殺しに来たという事実を、小学生に伝えるわけにはいかない。だからこそ、彼を直視できなかった。
「どんなお母さんだったの?」
 シエルの言葉に、陸は少しだけ考えてから語りだす。
「勉強、勉強ってそればかり言っていた気がする。将来の僕の為だからって。でも、それももう……」
 言われることはない。そう続けようとした陸だが、自分の母親を失ったという悲しみに耐えかねて嗚咽を漏らした。彼はその場へと伏せて、声を上げて鳴き始める。彼はそのまま泣き続けた。
 しばらくして――。
 彼が泣き止んだところで、同じ名を持つ陸駆が、陸へと眼鏡を差し出す。それは、亡き母愛用の眼鏡。陸はそれをゆっくりと受け取る。
 そして、零二が優しく陸へと声をかけた。
「……和江さんはやりたい事は投げ出さず全力で頑張りなさい、と、君の未来を最後迄案じていた」
 そのことを忘れないでくれと零二に言われた陸。亡き母親の為にも自分は――。彼は初めて、一行に向けて力強く頷いたのだった。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 リプレイ、公開です。
 皆様、ノーフェイスの殲滅、お疲れ様でした。

 最悪の結末は避けられました。これも皆様のおかげです。陸少年には気の毒な事件となってしまいましたが、これから強く生きていってほしいなと思います。
 また、機会がありましたら、よろしくお願いいたします。なちゅいでした。