●今回は息抜きに 「この間はエディブルフラワー畑のエリューション退治お疲れさん。 で、平和になったその花畑に皆で行かないかっつーお誘いだ」 『黒い突風』天神・朔弥(nBNE000235)がパンフレットを机の上に広げて口を開く。 「入場料の中に園内でエディブルフラワーを摘み取って持ち帰ったりその場で調理したりする料金も入ってるからお土産に摘んで帰るのもよさそうだな。 主な施設はメインの花畑、花畑で採れたエディブルフラワーを使った料理を提供する喫茶店とレストランの中間みたいな料理店、自分達で調理できる調理場……ただし材料は全部持参な。エディブルフラワーはその場で摘めばいいと思うが調味料忘れると持ち帰るかそのまま食うかの二択になるから注意しろよ。 後は作った料理を食える飲食スペース。芝生とテーブル席がある。 テーブル席は屋外だな。パラソルがあるから必要に応じて開くといい。 後はエディブルフラワーの種とか苗を売ってる売店だな。 ただ見て回ってもいいし料理店でゆっくり食事を楽しんでもいいし自分で作ってみてもいい。種とか苗を買って家で育ててみるのも園芸好きにはいいと思う。 ただし花畑を荒らしたりだとか未成年の飲酒喫煙だとかマナー違反は厳禁。 みんなで楽しむためにも最低限のマナーは守らないとな」 朔弥はパンフレットのページをめくる。 「エディブルフラワーって聞くとハイカラな、自分達とは縁遠そうな感じがするか? けどコスモスとかなでしことか食べられるらしいぜ。 ちょっと意外だけどな。 あぁ、でも今の時期日本人に一番馴染みが深いエディブルフラワーっつーと菊か? 確かにあれも食用はあるけど馴染みが深すぎて盲点だよな、ある意味」 パンフレットに載っているのはエディブルフラワー畑の写真と料理店のメニューの一部、エディブルフラワーのレシピが幾つか。 「コスモスのてんぷらとかどんな味がするのか気になるところだな。これも一つの秋の味覚。 一緒に行かないか?」 秋の風景、ほおずきやキボウシ、キキョウ。夏の名残のヒマワリやラベンダー。花韮。 味はそれ程よくないと言われるものもあるが見た目は楽しいものになるだろう。 そして普段観賞用として眺めていた花が実は食べられるなら新しい発見もあるかもしれない。 一人で、仲間と、或いは恋人と。 花咲き乱れるエディブルフラワー畑へ出かけよう。 閉じられたパンフレットの表紙は風になびくコスモス。 そろそろ秋の気配が感じられる季節になったことを示す、特集号だった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:秋月雅哉 | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年09月21日(金)23:34 |
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■メイン参加者 13人■ | |||||
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●花摘み・花めぐり 先日エリューション騒動があったエディブルフラワー畑の入り口に一台のマイクロバスが止まる。 がやがやと降り立ったのは十数人のさまざまな格好をした男女。 下は十三歳から上は八十一歳までとかなり広い年齢層を誇る一行だ。 全員がアークに所属するリベリスタだということは本人達しかしらない。 因みに集合場所はアーク本部前だった。 早朝なのに全員バス酔いもなく元気なものである。 往路は賑やかでお菓子の交換やクイズ大会、これから向かうエディブルフラワー畑に咲く食用花の基礎知識口座まで開かれて大いに盛り上がった。 まるで遠足のような賑やかさである。 集団でのバス移動、およびある程度の団体行動には童心をよみがえらせる、心弾む『なにか』を秘めているのかもしれない。 丁度話が一区切り付いたところでバスが止まる。 秋晴れのある日、何故リベリスタたちがこの事件が解決した後の花畑へ来たのか。 答えは簡単、フォーチュナ見習いに誘われて息抜きに来たのだった。 わいわいと賑やかに騒ぎながらバスから降りたメンバーはそれぞれ思い思いの方向に散っていった。 秋のエディブルフラワーと聞いて『真紅の狙撃手』砕軌 紅瑠(BNE003981)が真っ先に思い出したのは『もって菊』と呼ばれる赤紫色の食用菊だった。 さっそくエディブルフラワー畑に赴いて菊を摘んでいく。 「久しぶりだなぁ……これを食べるのも」 エディブルフラワーという響きから外国の花を想像しがちだが菊や今は咲いていない桜も立派なエディブルフラワーだ。 紅瑠の顔に楽しみから思わず小さな笑みが浮かんだ。 「菜の花があればいいんだけど……流石にないかな?」 探してみたがやはり晩冬から春にかけてが盛りの菜の花は見つからない。 「仕方ない、菊だけ摘んでいくか」 本来の目的は調理と食事だがそのためにも材料はしっかり入手しなければ。 入手するついでというわけではないが折角だし見た目も楽しい秋の花を存分に楽しんでいこう。 「刺身の上にタンポポを乗せ続ける任務と聞いて!」 「……いや、タンポポは今の時期咲いてないだろう。あっても綿毛だと思うぞ」 『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)の気合の入った言葉にこのエディブルフラワー畑を皆に紹介したやる気のないフォーチュナ、『黒い突風』天神・朔弥(nBNE000235)が苦笑して口を挟む。 「折角だから菊でも摘んでいったらどうだ? 赤紫のほうが美味いらしいが黄色い菊なら少しはタンポポに似て……似てないかな」 「え? タンポポじゃなくて菊? しかも食用? 菊って食べられるのかー。 野草をむしって調理するサバイバル訓練は経験あるが、こう言うまともな料理として存在するとはな」 「スーパーとかで普通に『食用菊』って売ってる気がするけど……」 「まあ、とりあえず私は乗せて乗せて乗せまくるだけだ。 ふふふふふ……単純作業……たのしい……」 ……乗せるためには料理がいると思うのだが誰が作るのだろう。 そんな疑問が頭に浮かんだ朔弥だったが楽しそうに花を摘むベルカに水をさすのも悪いと思ったのか自分は土産用の花を摘み始めた。 「ふむ……エディブルフラワー、か。 前から気になっておったので、きてみたのじゃよ」 『嘘つきピーターパン』冷泉・咲夜(BNE003164)が花畑を見回しながら目を細める。 「料理は得意じゃが……これほど鮮やかな花達を調理するのは はじめてじゃしのぅ……。 軽く色艶やかな花を数種類チョイスして、シュガーコートでも 作るのじゃよ。 長持ちもするし、いつもより贅沢なティータイムを過ごせそうじゃしのぅ」 咲夜が選んだのはセージ・パイナップルとナデシコ。それからキキョウ。 見た目も楽しいシュガーコートが出来上がることだろう。 「エディブルフラワーですか……。 そういえば初体験ですね……。 いったいどのようなものがあるのでしょうか……楽しみです」 『青い目のヤマトナデシコ』リサリサ・J・マルター(BNE002558)がじっくり花を見ながら歩いて回る。 料理方法は後で聞くとして今は材料を入手しなければ。 だがそれだけでは味気ない。 折角だから花畑の景色を楽しんでいこう。 コスモス、トレニア、ナスタチウム、マロー・コモンブラック。 色とりどりの花束が出来上がったのをみてリサリサはふわりと微笑んだ。 「ん……、花、綺麗……。 これ、全部、食べられるのね……」 エリス・トワイニング(BNE002382)は見た目と香り、花びらの感触を楽しみながら一人で歩いて回る。 『外道龍』遠野 御龍(BNE000865)もまた一人で花畑を巡っていた。 「食用の花だけを集めた花畑か……なんだか不思議なものだな。 花とは見て楽しむもの、というイメージが強かったが」 「雪待、料理はまだか」 「お花を摘まないと約束のお料理ができませんよ」 「むぅ……妾は空腹じゃ。早く摘もう」 「そうですね。エディブルフラワーは早朝に摘むのが良いそうですよ」 「豆知識では腹は膨れないのじゃ、雪待」 「すみません……では天麩羅向けのものをいくつか摘んでいきましょうね」 雪待 辜月(BNE003382)と『破壊の魔女』シェリー・D・モーガン(BNE003862)は仲良く花を摘んで歩く。 「コスモスの天麩羅と……ナデシコも綺麗そうですね。それから」 辜月が背負う大きな荷物にはシェリーのために用意した調味料や蕎麦が入っている。 花だけでは寂しいかと茄子や南瓜などの野菜もしっかり用意した。 その他にもめんつゆに塩、大根おろし他さまざま。 背負って歩くには少々かなり重いがその分喜んでくれたときの嬉しさは大きいだろう。 辜月はその姿を思い浮かべて小さく微笑むのだった。 ●料理店で花尽くしの食事 「せっかくなので、プロの技に舌鼓を打つことにしよう。 まあまあ、朔弥クン、落ち着いて座りたまえ。 紳士は常にエレガントにだよ」 「いや、落ち着いているし座っているぞ?」 『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)の言葉に誘われて料理店にやってきた朔弥は困ったように首を傾げる。 「まずは食前の飲み物だ。 うう~ん、ていすてぃ。 じつに、フローラルな香りだ。 これは、マリゴールドだね……。 うん? 違う? ラベンダー? ……。 …………。 ……まあ、そうともいうね。 ま、そんな細かい事はともかく食事を楽しもうじゃないか、ワリカンで」 「はいはい、ワリカンで、ね。どれが良いかな……」 エディブルフラワーやハーブを多用したメニュー表(写真が多いので選ぶのが楽だったのか味が気になるものが多くて絞りきれなくなり逆に大変だったのかは二人だけが知っている)を見ながら選んでいく竜一と朔弥。 「あ、これおいしそうだな」 「どれどれ?」 「……竜一」 メニュー表に載っていた写真を指で指し示しながら朔弥が改まって呼びかける。 「なんだい、朔弥クン?」 「此処に誘ってくれてありがとう」 僅かな笑みと共に告げられたお礼の言葉に竜一はからりと笑った。 「こちらこそ、エディブルフラワー畑へお誘いありがとう」 二人が同時に言う。 「「どういたしまして」」 料理店に小さな笑い声が響いた。 一方芝生の飲食スペースでは『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)が一人酒盛りの準備をしていた。 「エディブルフラワーっていうと華やかで何だか敷居が高く聞こえるけど、花芽を食すっていう習慣は、実は身近な所にあるんだよね。 例えばさくらの花びらの塩漬け、菜の花のお浸しやフキノトウの天麩羅だって、立派なエディブルフラワーだ。 ちょっと今の季節に合わないけど」 快が手にしているのはふきのとうを刻んで味噌に混ぜたふき味噌。 独特の苦味や風味で白米のお供にもお酒の肴にもなる一品は快の持参品だ。 「秋らしいものも持ってくればよかったかねぇ……」 酒瓶の中身は花酵母の日本酒。 日本酒で使う酵母を花で培養したものだ。 「じゃ、一杯いきますか」 「ミーノがんばってたくさんえでぃぶるの~♪ りゅみえーるとみんながつくってるおはなりょうりをげっとしてまわるの~。 そうすればいろんなりょーりがすぐにたべられるのっ。 ミーノかしこい! こうりつてきっ! さぽけいじょし!」 自分の作戦を自分で褒め称える『おかしけいさぽーとじょし!』テテロ ミーノ(BNE000011)は尻尾を『光狐』リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659)の尻尾で連結されていた。 「あっちとこっちとふらふら移動して世話が焼ける……。 何時も思うがたかってるよなコレ…………」 どうせ何か苦いものにあたったりして泣くのだろうから甘いものや味の濃いものをどこかで回収しておこうかと思うリュミエールだった。 「ほかのひとのりょーりをいろいろあじみさせてもらうの~。 いろいろたべつつつぎのたーげっとさがし。 シュゴシンはっけん! とつげきー!」 「戦闘指揮? こんなんで指揮できるのが不思議だ……」 ふき味噌で一杯やっていた快のもとへミーノが突撃する。 「おぅ、元気だな」 「なにたべてるの? ミーノも食べる!」 「これか? これはふき味噌っつー食べ物だ。ほら、落とさないようにな」 快からふき味噌を一口ずつもらうミーノとリュミエール。 「………………ウヘェ」 「……むぎゅぅ」 香りは良かったので摘んだ二人だがその独特な苦さに顔をしかめる。 「甘いもので口直しタイム……」 「ミーノもいく~」 「子供の舌にはあわなかったか」 快は苦笑して二人を見送った。 ●彩り豊かに調理して 「さて、卵白とグラニュー糖は持ってきたし、始めるかのぅ」 花びらを丁寧に洗い綺麗にすると乾かす間卵白を切るように溶きほぐす。 溶きほぐした卵白を花びらの両面につけ、すぐにグラニュー糖をまんべんなく振り掛ける。 くっつかないようにクッキングペーパーの上に並べると自然乾燥させること暫し。 「後は家で乾燥させるかのぅ。完成が楽しみなのじゃ」 慣れた手つきでシュガーコートを大体完成させてしまうと咲夜は年長者らしい穏やかな目で調理場を眺め始めた。 周りの人に聞きながらリサリサはコスモスの天麩羅とマロー・コモンブラックのお茶に挑戦していた。 「こんな感じ、でしょうか?」 香り高いお茶が淹れることに成功して思わず顔がほころぶ。 「いい匂いがしますね……香りも一緒に楽しめる。 エディブルフラワーはすばらしいしょくざいですね……」 手伝ってくれた御礼にとお茶と天麩羅を振舞って楽しい時間は過ぎていく。 数日前に雨が降って以来冷える日が続くので辜月がシェリーのために作ったのはあたたかな蕎麦と花と野菜の天麩羅だ。 「ぇと……、お口に合えばいいですけど……」 どきどきしながらシェリーの反応をうかがう。 「おぉ、花の天ぷらに蕎麦もあるのか」 料理の最中待ちきれずに辜月を急かしていたシェリーは並べられた料理に目を輝かせる。 早速、勢い良く天麩羅を頬張り満面の笑顔になった。 「うむ、むまいぞ雪待。さいふぉうだ」 どうやら『うむ、美味いぞ雪待。最高だ』といいたかったらしいが口の中にたくさんの天麩羅が入っているため発音が不明瞭になる。 その様子を見て辜月はほっとしてふにゃりと笑った。 「ぁ、材料はまだまだありますから、沢山食べてくださいね?」 「つゆもいいが、塩をで食べてもいけるな。大根おろしと蕎麦も中々合うぞ。 雪待、おぬしも一緒に食べよう。……もう少し作ったらな……」 その後もシェリーは次々と食べ続け結局辜月と一緒に食べる前に食べつくしてしまうのだった。 紅瑠はもって菊でおひたしを作ろうと準備をしていた。 花びらを軸から外し水で洗う。 沸かした鍋には酢を入れて色がよくなるように下準備。 ゆで過ぎないようにさっと上下を返して何度か水を替えて冷やし、水切りした後調味料をかけて完成。 料理店から賑やかな調理場へ移動してきた朔弥をみかけて一緒に食べないかと誘えば嬉しそうな頷きが返ってきた。 このフォーチュナ、見かけの割に良く食べる。 「だいぶ過ぎちゃってるけど……誕生日オメデトウございます。 よければ一緒に食べませんか……?」 「お祝いありがとう。いいのか? 喜んで頂くよ」 二人で芝生に移動しておひたしを食べる。 「紅瑠は料理が上手いな」 「そんなことないですよ。朔弥さんは料理しないんですか?」 そう尋ねるとやけに真剣な顔で妙な答えが返ってきた。 「オレの座右の銘は『明日から本気出す』なんだ。料理もまぁ……明日から習おう」 永遠に習う日はこなそうである。 その頃調理場ではベルカが様々な料理に摘んできた菊の花を乗せて乗せて乗せまくっていた。 悦に入った笑い声が小さく漏れる。 どうやらよほど楽しいらしい。 新しい趣味との出会い、といったところだろうか。 ●お土産には買い物を 「エディブルフラワー畑があると聞いてやってきたのです。 本当はデートで来たい所なのですが、今日はお買い物をしにきたのです。 名づけて『素敵なお花を摘んでかえっておされなティータイム大作戦』なのです」 店の前で意気込む『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)がドアを開くとカランコロンとドアベルが可愛らしい音を立てた。 「コスモスはシロップに漬けてパンケーキにそえて、ダイアンサスはガクの部分を取り除いて愛情こめて入れたロイヤルミルクティに浮かべるのです」 段取りはばっちりだ。 「コスモスは『乙女の愛情』 ダイアンサスは『純愛』 あたしにぴったりなお花なのです。 女子力アッピールもばっちり。 あまい香りとおされな演出できっとあたしにもっとメロメロになるに違いないのです。 その為にもより綺麗で色も形も良いお花を選ばないといけないのです」 生けられた花を見比べてより綺麗なものを選ぶ。 花が傷まないように包んでもらってそあらは満足げに店を出るのだった。 ●遠足は家に帰って「ただいま」を言うまでが遠足です 閉園時間が近いことを告げるアナウンスが園内に響くと集まったリベリスタも一般客もぞろぞろと入場口へ向かい始める。 調理場を使ったメンバーは綺麗に後片付けをしたので他の場所にいたメンバーより少し遅れたが閉園には間に合った。 「ふきみそはもうたべたくないのー……」 「それには同感」 ふき味噌の他に分けてもらった料理で口直ししたものの苦さが強烈だったのか、それを思い出して思わず顔をしかめるミーノとリュミエール。 「そんなに苦いかねぇ。慣れれば美味いものなんだが……」 二人にふき味噌をすすめた快はその様子に苦笑を禁じえない。 「いいお土産が出来たのです。これで……うふふ」 コスモスとダイアンサス(ナデシコ)を抱えてそあらが幸せな妄想の世界に浸っている。 「天ぷら美味かったなぁ……」 料理店でエディブルフラワーを使った料理を目いっぱい楽しんだ竜一もどこか夢見心地だ。 「楽しませてもらった」 御竜が短く感想を述べる。 「お花、見るだけで、終わってしまったわ。 時間が経つのは、あっという間……ね」 エリスが名残惜しそうにエディブルフラワー畑を振り返った。 「今日は貴重な経験が出来ました。ありがとうございます」 残った花は家に帰ってそれぞれにあったレシピを調べて料理してみようと今からわくわくしているリサリサ。 「楽しい時間はまこと、あっという間じゃのぅ。家に帰ったら仕上げをせんとな」 シュガーコートが完成したらしばらくく楽しめそうじゃ、と咲夜が笑う。 「お料理、喜んでいただけてよかったです」 「……こ、今度は雪待の分も残すぞ! 今日は夢中になって全部妾が食べてしまったからな」 料理に徹したものの嬉しそうな辜月にシェリーが少し申し訳なさそうに宣言する。 「料理に菊を乗せてまわるのは楽しいな。すっかりのめりこんでしまった」 ベルカはその横で何かをやり遂げた表情を浮かべていた。 「エリューション退治してくれた皆様には感謝を……。おかげで楽しい時間を過ごせました」 紅瑠が感謝の言葉を呟いた後入場口から少し離れた場所で畑へ向かって一礼する。 「さて、と。みんな、今日は誘いに乗ってくれてありがとう。 みんなと一緒に時間を過ごせて楽しかった。 みんなも楽しんでくれたならオレも嬉しいし誘った甲斐があったというものだ」 朔弥が一同を見回す。 全員が常日頃は戦場に身を置くものだ。 今日一日、血なまぐささから離れて穏やかな一日を仲間たちと過ごしたというのはいい思い出になっただろう。 「そろそろマイクロバスが迎えに来ると思う。来たとき同様アーク本部前で解散だ。 日が短くなってきたから気をつけて帰ってくれ」 各々が各々らしい返事や反応を返す。 それを待っていたようにマイクロバスがやってきて近くで止まった。 「じゃあ、帰ろうか。また仕事を頼みに行くこともあると思うがそのときは宜しく。 今日はゆっくり休んでくれ」 夕闇の中、マイクロバスが次々とリベリスタたちを飲み込んでいく。 全員が席につき、シートベルトを締めるとバスはアーク本部へ向かって走り出した。 束の間の休息から、また訪れるであろう戦場と隣り合わせの日常へ回帰していくために。 すっかり人気のなくなったエディブルフラワー畑がバスを見送っていた。 この花畑もやがて秋の花も終わりを告げ、冬を越して春になればまた別の実りを人々にもたらすのだろう。 人々が巡るように、時が巡るように。 季節はその二つとともに、移ろっていく――……。 バスの中では雑談に花を咲かせるもの、作った料理の残りを分け合うもの、摘んだ花をそっとなでるもの、遊び疲れて眠るもの――……それぞれが思い思いの時間を過ごしていた。 エディブルフラワー畑とアーク本部の間にはそれなりに距離がある。 やがて雑談をする声が一つ減り、また一つ減ってバスの中に静寂が満ちる。 どうやら殆どのメンバーが眠ってしまったようだ。 起きているものも眠りを妨げないよう静かにして自分の身体を休めている。 その中の一人、今回のイベントの主催者である朔弥は珍しく穏やかな笑みを浮かべた。 『ありがとう』 声には出さずそっと呟く。 バスはたそがれ時の道をライトをつけて法定速度をきっちり守って走っていた。 街灯がない道なので都会よりはずっと星がみやすいことに気付いたのものははたして何人いただろうか。 瞬く星空の下、戦士達を乗せたバスが行く。 間もなく中秋の名月がやってくる。 その頃、彼らは月を見ているだろうか。 それとも戦っているだろうか。 いずれにしても……時は、移り変わり巡りゆくのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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