●アーティファクト『ラジカルグッドエンジン』 非常に乱暴な説明をするならば、ガヤルドLP・570-4スーパートロフェオ・ストラダーレは公道を走るモンスターカーである。 赤い流線型ボディとエアロパーツ。そのフォルムだけで男の憧れを体現しているこの車が現在……海上に存在する西瀬戸自動車道・因島大橋を走っていた。 運転している者はいない。 無人である。 しかも乗車席となる部分にはぎっしりとグレネードランチャーやミサイルランチャーと言った投弾兵器が組み込まれ、昼間だというのにヘッドライトをぎらぎらと光らせている。 そう、この車は今や神秘のモンスターへと変貌しているのだ。 だがエリューション・ゴーレムではない。 これは……。 「見つけたぜ、ラジカルグッドエンジンンンンンンンンンンンンア!」 尖ったサングラスの男は、ジープの上から高射砲を担ぎ上げると、ランボルギーニめがけて死の雨を浴びせかけた。 高射砲など間違ってもジープから撃つものではない。ましてや人間が担いでいいものではない。だが男はまるで当たり前のように振り回して見せる。 対するランボルギーニも路上で急激なスピンをかけ反転。高速バック走行を始めると、運転席から大量のランチャーを露出。ミサイルと成形炸薬弾の嵐を叩き込む。 戦車用の走行を両手に持った男が身を乗り出し、大量の爆撃をガード。 その隙に別のジープが高速で突撃。ランボルギーニの尻に車体をぶつけると、助手席から巨大なトンファーを担いだ少女(もとい幼女)が身を乗り出し、パイルバンカーよろしく相手の車体に打撃をしかけた。 更に速度をあげて振り切るランボルギーニ。 「ファック! もっと速度あげろこのグズ!」 「やってます! でもミサイルが……」 隣のジープからスパナが飛んでくる。 「怯むんじゃねえ! 六道第三召還研究所の意地にかけて必ずぶんどるぞ、ラジカルグッドエンジンコラアアアアア!」 「兄貴、俺達研究所の人間じゃないぞ!」 「うるせえ、ここで雇ってもらえなかったら俺達明日から雨水飲んで暮らすハメになるんだぞコラア!」 「言わないでくれ兄貴!」 「だったら黙って働けえ! メシのために働けえ!」 剣を掲げて振り回す男達。 彼等みな、六道のフィクサードである。 ●ハイスピードチェイス、だぜ! 「森の中を走り抜けてゆく真っ赤な俺――!」 『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)は、笑ったら年齢がバレる的な出オチをかましつつ、どっかシャープなポーズで皆の前に現れた。 「現在とある海上大橋をアーティファクトが暴走していてそれをフィクサードが回収しようと躍起になっているから乱入して奪い取ってくれ」 「いきなり真面目に語り出すなっ!」 急にキリッとして語り始めたNOBU。止まらないNOBU。 「敵の数は9人。それぞれ3台のジープに乗っている。強化ジープだから射人先射馬と言うわけにはいかなそうだ。と言うか、多分フィクサード自体を倒した方が楽だぞ。と言うことでそれぞれの戦力解説だ。このボードを見てくれ」 ・フィクサード軍団 花杉チーム:高射砲とダブルシールドのチーム。 御柱チーム:やたらデカいトンファーとサブマシンガン。 牛蒡チーム:素早い剣士三人組。連携うまし。 以上全員全員マスドラ持ち。 ・暴走ランボルギーニ ミサイルランチャーやグレネードランチャーなどの爆発する系の射撃武器をほぼ無限に発射する。 硬くて早く、とんでもない運転(?)技術。 「状況としては後ろから猛スピードで追いついてフィクサードに攻撃をしかける形になると思う。あんまりここで手こずっているとランボルギーニに振り切られるから、手早く倒すなり『ここは任せて先にいけ』作戦で突っ切るなりしてランボルギーニを叩かないといかん。さっきは『奪い取る』という言葉を使ったが、ぶっちゃけ叩き潰してガラクタ化しても構わない。というか多分その方が楽だ」 ぐっと拳を握るNOBU。 「というわけだ、後は頼んだぜ、皆!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 9人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年09月19日(水)23:24 |
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■メイン参加者 9人■ | |||||
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●六道リストラ組 アーティファクトを搭載した高速エリューションゴーレム・ランボルギーニ。 それを追いかける三台のジープ。 彼等がランボルギーニまであと僅かと言うところまで近づいた時、それは起こった。 最初は鉛玉である。 戦車用装甲を素手で担ぐという異常なフィクサードが、盾の内側にかつんと当たった弾頭に目を止めた。 「あれ、リーダー。流れ弾すか?」 「ああん? 馬鹿言ってんじゃねえ俺達の後ろにゃ誰も居ないだろうが」 「え、でも……」 半分とれかかったバックミラーを覗く。 そこにはなんと。 デコトラが爆走していた。 「ラディカルだかマジカルだか知らないけどぉ? こちとらベースは六百五十馬力インタークーラーつきツインターボォ! そいつをあっちこっち弄り回したモンスターエンジンだ、負ける気しないよぉ! 演歌でも聞くかい!?」 「できるだけ賑やかなヤツな!」 「オーケーオーケー!」 『外道龍』遠野 御龍(BNE000865)は煙草を窓から放り投げると、カーステレオ機器にカセットテープをぶち込んだ。 何をどう間違ったのか車外にまで漏れ出す爆音の祭系演歌ミュージックが流れ出した。 あわをくって振り返る牛蒡三兄弟。 「うおお!? なんだありゃ!?」 「アークが参戦しに来たんだよゴルァ!」 助手席から身を乗り出して小銃を構える。牛蒡チームのジープ目がけてハニーコムガトリングを乱射してやった。 「アーク!? アークだってえ!? こんな時に邪魔スンナ! あと10分待って下さい!」 「待てるかあぁ!」 アクセルを全力で踏み込む御龍。 デコトラがジープへと無理矢理突っ込んで行く。 「ファック! 間に割り込め!」 「え、でも」 「さっさとしろ!」 それを見ていた御柱チームの幼女が運転手の手ごと踏んづけてハンドルを切らせる。トラックとジープの間に割り込むと、巨大なトンファーを右ストレートの要領でトラックの前面へと叩き込んだ。油圧パイル構造で更なる一撃。 拉げるフレーム。 砕け散るヘッドライト。 「サッ、三代目ええええええええええ!!!!」 演歌の爆音をもしのぐ悲鳴。 そんなタイミングを見計らっていたかのようにバイクと乗用車が左右を抜けて飛び出した。 突破された形になって舌打ちする御柱の幼女。 乗用車とバイクは一列になると、牛蒡チームへと急接近する。 「アルピーヌ……ホントはここで使いたくなかったんですけど、背に腹は代えられませんね……」 まだローン残ってますのにと呟きながらハンドルを握る『絹嵐天女』銀咲 嶺(BNE002104)。 ちなみにアルピーヌとはフランス車のことである。ありていに言うと高い。 運転席の窓を開けて杖を突き出しピンポイント・スペシャリティを乱れ撃ちする嶺。 牛蒡三兄弟は一人に運転を任せつつ後部座席で二人とも直立。飛来した気糸を目にもとまらぬ剣捌きで斬り捨てた。 「なんのこれしき!」 「その割には二人係だったが!」 「そこの剣士」 助手席から這い出たメリア・ノスワルト(BNE003979)がアルピーヌのボンネットに飛び乗った。ガタガタ震える嶺。 「お前達はなかなかの強者と聞いている。騎士として是非手合わせ願いたい。、ああ勝手に斬りかかるがな!」 メリアは軽く身体を曲げるとボンネットを蹴って(凹ませて)跳躍。途中のバイクに跨った『深紅の眷狼』災原・闇紅(BNE003436)の肩を一度踏み台にしてから牛蒡三兄弟へと斬りかかった。 空中かつ高速で剣を叩き合わせるメリアを牛蒡長男次男。 三男が運転しつつ加勢に入ろうとした所で、闇紅がバイクをぴったりと車の横につけてきた。 「とりあえずぶっ壊せばいいのよね? 邪魔よ」 「ええいこっちのセリフだ!」 運転席のドア越しに小太刀と剣が鍔迫り合いを起こした。 そこへ唐突にぶち込まれるインドラの矢。 「か、回避ぃー!」 「ムリっすー!」 火矢の雨にふられ、防戦で手いっぱいだった牛蒡三兄弟はサボテンの様に矢まみれになった。 車は炎上、派手に柵を突き破って海へとジープごと転落していった。 「さて、こんな所ですか」 オープンカーの助手席にて、ライフルを構えつつ不敵に笑う『ミックス』ユウ・バスタード(BNE003137)。 運転席では行儀悪くドア淵に肘を置いて片手運転する『闇金ブタジマくん』オー ク(BNE002740)の姿があった。 まるで煙草の灰でも落とすかのようにフィンガーバレットで銃撃を叩き込んで行く。 車はオープンカー。自前である。 なんでも『私の車も廃車にして下さい(要約)』という手紙と共に車が送られてきたそうだが。 「お前らのためにやってンじゃねえんだよ! 車より女よこしな!(要約)」 だそうです。 「あーさっさと終わらせてギャバクラいきてえなあ!」 花杉ジープの横までやってくると運転手めがけてバウンティショットを連射した。 助手席のユウも軽く身を乗り出してインドラの矢を浴びせまくる。 ダブルシールドの男が銃撃を弾きながら叫んだ。 「お頭ぁ! 今度はヤクザスーツ着た豚が!」 「馬鹿やろうそんなのアークにいるわけな居たァ!?」 二度見する花杉。 「ブヒヒッ、六道ってのはあんまし待遇がよくなさそうだねぇ!」 「ええいやかましい!」 花杉は高射砲を担ぐとオーク目がけてしこたま撃ちまくる。 おお怖い怖いと言いながら速度を落として銃撃をかわすオーク。 と、そんな彼らの反対側。 つまりオークたちとは逆側から一台のバイクが幅寄せをかけてきた。 『おっ♪おっ♪お~♪』ガッツリ・モウケール(BNE003224)のバイクである。 「運転席はこっちだお? 早速読ませてもらうお、ハイリーディング!」 ガッツリの目がきゅぴーんと光り、花杉の頭に照準を合わせる。 自覚症状を感じてぐりんと振り向く花杉。 「俺の頭を読んでやがる!? そうはさせるか、天道直伝、エロい事だけ考えるの術!」 「はうおっ!?」 ガッツリは額を抑えて仰け反った。 後部シートに跨っていた『幸せの青い鳥』天風・亘(BNE001105)が慌てて彼女を支えた。 「ど、どうしました!?」 「ひ、卑怯だお……というか卑猥だお……!」 「フゥーハハハー! 洋モノから奇モノまで網羅したエロの奥深さを知れぇい!」 「兄貴目的すり替わってます! 迎撃してください迎撃!」 「おっとそうだった!」 ガッツリと亘を薙ぎ払うように前から後ろへと高射砲の射撃を浴びせる花杉。 「うわっと!」 ぐねんと柔軟に回避するガッツリと、バイクの一部に捕まりつつやや強引に回避する亘。 けっこうなスピードの上で戦っているのだ。落ちたらリタイア間違いなしである。 「ガッツリさんしっかりしてください!」 「何と言うフェチズム……ハッ、あちきは何を!? ごめんお気を取られてたお! 反撃するお!」 運転手である花杉にしこたま射撃を叩き込むガッツリ。 亘もその後ろから直接アル・シャンパーニュを叩き込む。 同時にオークの車もぐぐっと前へ出はじめ、花杉たちに銃撃を叩き込んだ。 「お頭もう無理っす!」 「泣き言をいうな! それで具体的にはどのくらだ!」 「後ろから……後ろから来てるッスゥー!」 ナァニィと言って振り返る花杉。 そして目からハイライトが消えた。 クラクションと爆音演歌を流し、所々砕け散りスパークを起こしたデコトラが突っ込んでくるではないか。 運転席の御龍は何故か目からハイライトが消えていたが。 「わ、ちょ、避け……うおおおおおおおおお!?」 ハチの巣になったジープは強引にカマ堀りをかけられ、逆ウィリー走行をしながら反転。乗車していた二人はギリギリのところで飛び出し、車とバイクのタイヤ跡顔面につけながら仰向けに伸びた。 その様子を確認し、ガッツポーズするブレス。 「よし突破! 次はランボルだけだな!」 「……うん」 「御龍どうした御龍、しっかりしろ御龍ー!」 ●ラジカルグッドエンジン 空を裂き、荒ぶる鉄の塊となり、大地を疾駆する一台の車。 ただ走り抜けることだけを目指した夢の結晶は今、その力と心を増幅するアーティファクトによって暴走していた。 ランボルギーニ。ガヤルドLP・570-4スーパートロフェオ・ストラダーレ。 男の夢は、もはや止まらぬ域まで達していた。 「ようし準備はいいかいユウちゃん」 「行けますよー」 爆走するランボルギーニに急接近しつつ、オークはオープンカーの淵から射撃を開始した。 同じように助手席の淵からギリギリライフルを出してピンポイント射撃。 「ユウちゃんが倒れたらおもり帰りもワンチャンス狙うぜ、ブヒッ!(ユウちゃんが倒れたらすぐに脱出だ。安全に返してやりたいからな!)」 「あれっ、本音と建前が逆? ちがう? どっち!?」 「おおっとつい口が滑っちまったぜブヒヒヒヒ……」 「オークさん私、チャーシューメン好きなんですけど。炙りのとか」 「おおっとオークさン生命の危機!」 などと言っていると、ランボルギーニの車体からぞろりとミサイルランチャーが出現。計10発の爆弾がぶっ飛んできた。 助手席と運転席の間にがすんと落ちる成形炸薬弾 衝撃信管が叩かれるほんの僅かなプチンという音。 オークとユウは無言のままコンマ一秒ほど見つめ合った。 そして。 「ワンチャン来たぜェー!(撤退だァー!)」 「だからどっちー!」 砕け散り、回転しながら宙を舞うオープンカー。 左右の扉から飛び出し海へと落ちていく二人(ユウは飛ぶのを忘れていた)。 そんな彼らを横目に見ながらバイクのスロットルを捻る闇紅。 「ホント無駄に頑丈ね。ちょっと本気でぶっ壊したくなって来たわ」 太刀を片手にウィリー走行。 無理矢理接近して全身をボディに乗り上げさせると車体へ太刀を連続で突き刺しまくる。 と、後部トランクがぐぱっと開いた。 牙でも生やして食いつくのかと身構えたが、中から出てきたのは七本の擲弾発射器。 正確にはソ連製携帯式対戦車ロケット擲弾発射器、RPG-29である。 それが、闇紅の顎に思い切り突きつけられた。 「うそ」 一瞬にして血の気が引く。反射激に仰け反る闇紅。 七発同時にぶっ放されるサーモバリック弾。 それは闇紅と彼女のバイクを通り過ぎ、鰻がのたくったような軌道を描きつつ……嶺の車へ突っ込んだ。 「……あ」 助手席に座っていたメリアは、嶺の『なんかもうどうにでもなれ感』溢れる顔を見た。 大爆発。 木端微塵に飛び散る車部品とフレーム。 仰け反りつつその光景を見た闇紅は、流石に申し訳ない気持ちになった。 ちなみに、発射されたロケットは全て嶺の車に当たったわけではない。 そのうち数発は、御龍のデコトラへと叩き込まれていた。 「あは、ははは……25t舐めるなよぉおおおおおおあああああ!!!!」 トラックというより『豪雨に晒されたダンボール』のようになった御龍の愛車三代目龍虎丸が、ランボルギーニに思い切り体当たりを仕掛ける。 後ろからだったもんで闇紅のバイクは当たり前のように拉げて潰れた。 ついでに(ついでに)RPGもぐしゃりと片っ端から拉げる。 ルーフを展開して大量のスティンガー発射機を突き出した。アメリカのミサイルとその発射機である。もうごちゃまぜである。 「こンの……!」 数十本の赤外線照準が当てられ、御龍はもうどうにでもなれの気持ちでフロントガラスを突き破って跳躍。疾風居合切りを乱れ撃ちした。 思い切り爆発するランボルギーニ。 ほぼフレームばっかりになったトラックの上からブレスが身を乗り出し、ホログラフィックサイトを起動。 「ブレス・ダブルクロス、目標を狙い撃つ! なーんてな。キメパクはみっともないか!?」 ライフル弾をランボルギーニの兵器部分に直接叩き込む。 誘爆こそ起こさなかったものの、後部フレームが兵器ごとはじけ飛んでいく。 無論そこにとりついていた闇紅と御龍もろともである。 「あ、やべ……」 徐々に減速するトラックの上でブレスは冷や汗を流した。 主だった車は全損。 ランボルギーニは半壊。 もう一押しだという所だ。 そんなギリギリのタイミングで――。 「ローンの残りいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」 鬼の形相で馬を駆り、嶺がランボルギーニにもう突進を仕掛けた。 彼女を知る人間曰く、『あんな顔見たことない』とのこと。 もはやただの鉄塊とかした御龍のトラックを踏み台にして高く跳躍。 ランボルギーニの車体に直接蹄をぶち込んだ。 「これぞ高速戦。思ったよりも激しいじゃないか。ぞくぞくするな」 馬から飛び出すメリア。 彼女の剣がエンジン部分へと深々と突き刺さる。 しかしランボルギーニは未だ動きを止めていない。 「まだか!」 なけなしの八九式重擲弾筒が運転席の下から飛び出してくる。発射されたグレネードランチャーがメリアの胸で爆発。きりもみして吹き飛んでいくメリア。 「ガッツリさん、頼みます!」 「どうなっても知らないお!?」 そこへ、ランボルギーニを大幅に追い越したガッツリが転倒スレスレの勢いでVターン。というか殆どそのまま転倒して大根おろしの気分を味わった。 「あぎゃぎゃぎゃぎゃ!?」 「す、すみません!」 亘はそんな彼女のバイクから飛び出し、ランボルギーニへと真正面から突っ込んだ。 翼を広げ大地を蹴る亘。 「貴方を動かす力の源は、決してそのエンジンじゃない。走り続けたい純粋な気持ち。強い思いです。止めてしまう不幸を飲込み、自分は貴方を全力で壊します!」 正面衝突。 無論、人間とモンスターカーが衝突すればミンチが出来上がるだけである。 だがこの場合の人間はリベリスタであり、魂を最も輝かせたソードミラージュであった。 「貫けえええええええ!!!!」 真空をぶち抜き、ランボルギーニの車体を前から後ろまで見事に貫通する。 彼の手には、巨大なエンジンががしりと握られていた。 全身から血を流しつつごろごろと地面を転がる亘。 ランボルギーニはガッツリのバイクを乗り越えつつ、派手に横転。そのまま策を突き破って海へと落下して行ったのだった。 ●役目を終えた機械 暮れなずむ夕日。 亘の腕の中で、アーティファクトだったエンジンはその役目を終え、壊れた機械へと成り下がっていた。 目を瞑り、大の字に寝転がる亘。 大変なことになった腕を抱え、ガッツリがやってくる。 「なんとか、なったお……」 蹄の音が近づいてくる。 死んだ目をした嶺が、同じく死んだ目をした御龍と闇紅を洗濯物でも干すかのように馬の背てひっかけていた。 一足遅れてブレスとメリアがやってきた。 「三人とも可哀そうに。よほど大事な車だったんだな」 「いや、闇紅は最初からああいう目だった。デフォルトだ」 「大きなお世話よ」 むくりと顔をあげる闇紅。 すると、オークが携帯電話片手に橋の下から現れた。 というか、ユウにぶら下がる形で現れた。妖怪じみた登場のしかたである。 「皆さん、フィクサードたちはとりあえず拘束しておきましたよ。目を覚ましたら手錠くらいブチィっといきそうですけど、監視しながら連行ということで」 「いや……そこはあっしに任せてくンねえか」 道路に降り立ち、煙草を取り出すオーク。 「世間様に迷惑をかけるのは頂けねえが、食うや食わざるやとなっちゃ仕方ねえこともある。更正の意思をもってンなら、仕事を紹介してやたいンだ。ここは一つ、あっしに任せてくれンか」 「はあ、そう言うなら……」 「じゃあちょっくら手配してくるわ」 皆から離れつつ、『あぁもしもし、元気にカニ獲ってるかぁい』などとどこかへ電話し始めるオーク。 そして一同は、ここまでの道路にずらりと並んだボッコボコの車の列を、なんだか清々しい(そして光の無い)目で見たのだった。 夕焼けが、やけに目に染みた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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