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<六道>時よとまれ。ボクは永遠に美しい。

●六道第三召還研究所
『上位階層の存在を兵隊にできれば、経費削減も含めてかなりの戦力増強になる』
 と、言うのは神秘を知り、そしてある程度の資金力のある組織なら誰もが思うことである。革醒者をゼロから鍛え上げることは難しい。お金の面もあるが、途中で死んでしまう可能性もあるのだ。効率面から考えれば、スカウトできる戦力があるならそのほうがいい。
 だが、それはいくつのも問題点があった。
 まずDホールが開くのは偶発的である。
 しかもそこからアザーバイドがやってくるとは限らない。
 仮にやってきても友好的であるとも限らず、友好的であっても戦力として有用かはさらに別問題だ。
 宝くじよりも割の低い賭けに、企画段階で匙を投げる組織が殆どだ。
 だがそんな計画を一途に貫き、不可能と呼ばれる霧の中でわずかでも突破の可能性を見出せたとしたら?
『六道第三召還研究所』……そう呼ばれるフィクサードたちは、狂気にも似た精神力で不可能の壁を少しずつ崩していった。

「誰だい、僕を呼んだのは?」
「私です。名が必要なら名乗りましょう。私の名前はバーナードといいます」
「礼儀正しい人は大好きだよ。ついで言うと助かったよ。元の世界では封印されていたからね」
「知っております。その才能と技により周囲から恐れられ、能力を封じられていたと。ですがこのボトムチャンネルでは……」
「うん。少し勝手は違うようだけど、封印は解除されたようだ」
「それは何より。そのお礼といたしまして私どもの願いをかなえてもらえないでしょうか?」
「なんだい? つまらない用事だったら、ツブすよ?」
「いえ。むしろディスタート様お好みの話です。封印解除された力、気兼ねなく振るってみたくはありませんか?」
「へぇ。暴れていいの?」
「存分に」

●アーク
「相手はアザーバイド一体」
『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は集まったリベリスタたちに向けて淡々と説明を開始する。
 モニターに映し出されたのは、一人の少年。この世界の人間とほぼ同じ姿形をしているが、銀色の髪の毛とその雰囲気がこの世界にそぐわない『何か』を感じさせる。
「このアザーバイドは山奥にある病院跡に出現し、真っ直ぐに街のほうに歩いている。街につけば街の人たちを大量虐殺する未来が見えた」
「なるほど。そうなる前に俺たちが止めろということか」
 リベリスタの言葉に首肯するイヴ。
 たった一体のアザーバイドの退治。単純な任務。だからこそ恐ろしい。それだけの任務にどうしてこれだけの猛者が集まるのか。その理由はすぐに知れた。
「このアザーバイドは時間を操る」
「は?」
「正確には自分自身の時間を操る。どれだけ傷をつけても、一定時間が経てば『記録していた時間』に巻き戻る」
「はぁぁ!?」
「ゲームに例えると『A』ポイントでセーブして、一定時間後に『リセット』して元の状態……『A』の状態に戻す。もちろん、皆が受けた傷は治らない」
 一方的なワンサイドゲームである。それでいて戦闘力は相応に高いというのだから反則である。
「……つまり、その『一定時間内』にそいつに致命傷を負わせないと……?」
「負け。リターンマッチを挑むには分が悪い」
 ため息をつく。なるほど厄介な任務だ。しかし希望が潰えているわけではない。
「作戦は皆に任せる。危なくなったら逃げて。これは危険な任務だから」
 イヴの言葉に背中押されて、リベリスタ達はブリーフィングルームを出た。

●バーナード・シュリーゲン
「『特定アザーバイドの召還』に成功。やりましたね、バーナード所長」
「うむ、アザーバイドに関わるアーティファクトと膨大な魔力が必要だが……とりあえず一歩前進だ」
「問題はやはり、エネルギーですか」
「とにかく大量のエネルギーが必要になる。そのためにもアーティファクトを大量に集めねばな」
「それではついに」
「ああ。次の目標は、セリエバ召還だ。まだ遠い目標だが道は見えた」



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:どくどく  
■難易度:HARD ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年09月20日(木)23:17
 どくどくです。
 ショタなアザーバイドが上から目線で時間操作とか、誰得? 俺得!
 
◆成功条件
 15ターン以内の、アザーバイド『ディスタート』の討伐。

◆敵情報
・ディスタート
 銀髪であることを除けば、そのあたりの少年と変わらない風貌です(アザーバイドであることは、見てすぐにわかります)。
 自己愛にあふれており、とても好戦的です。動くもの全てを破壊しようとします。召還した六道フィクサードたちは手綱を取る気はないらしく、暴れるままです。
 会話は可能ですが、リベリスタを虫けらのように思っているため交渉は無意味でしょう。

・攻撃方法
 衝撃 神遠単 指を鳴らし、衝撃を放ちます。流血。
 加速 物近範 自身の動きを加速して、一斉に周りを刻みます。圧倒。
 時戻 自付  自らの不利益を、時間を巻き戻して無効化します。BS無効
 爆破 神遠全 衝撃を無差別に放ちます。神攻+(自ダメ値(最大400))、反動120。
 絶望の時刻(EX) P 15ターン目の終了時に、自身の状態を戦闘開始状態に戻します。

・六道第三召還研究所
 六道のフィクサードです。
 遠くから戦闘を観察しています。戦闘には参加しません。

◆場所情報
 街から離れた山道。舗装はされているため、足場や広さの不良はありません。
 時刻は昼。明りは充分です。
 事前付与や集中は一度だけ可能です。この段階で隊列を整えておいても構いません。
 彼我との距離は十メートルとします。

 皆様のプレイングをお待ちしています。

参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ホーリーメイガス
七布施・三千(BNE000346)
ソードミラージュ
リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659)
★MVP
マグメイガス
風宮 悠月(BNE001450)
覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
覇界闘士
宮部乃宮 火車(BNE001845)
デュランダル
小崎・岬(BNE002119)
ソードミラージュ
鴉魔・終(BNE002283)
スターサジタリー
坂東・仁太(BNE002354)


 ディスタートにとってボトムチャンネルは自分の階層よりも下の存在である。故にこの世界に深い感情はもてなかった。新たな世界に喜ぶでもなく、下層の世界を蔑むわけでもなく。路傍の石に感情をもてないように、ボトムチャンネルの存在自体に感情をもてない。
 なので気まぐれに破壊してみるか、という結論に至る。封印された腹いせにこの世界を支配してみよう。そんな八つ当たり的な感情。
 故に、
「は。キミ達、無駄な抵抗はやめたほうがいいよ。今は見逃してあげるから」
 自らを止めに来たリベリスタに興味と共に慈悲の心が湧いた。指を甘噛みする子猫をいとおしく思うように。
 しかしディスタートはその数十秒後に身をもって知ることになる。自らを噛みに来たのが、子猫などではなく狼であることを。


「逆らうのかい? なら文字通り"瞬"殺してあげる――」
 時間を繰るディスタートは、時間を操作することで他人より速く行動することができる。だが、それはけして反射速度を増しているわけではない。つまり、ディスタートの反応を超える動きをすれば、
「オセーヨ」
 ディスタートの懐に飛び込んだ『光狐』リュミエール・ノルティア・ユーティライネン(BNE000659)のナイフが繰り出される。二本の剣閃がアザーバイドの胸に十字の傷を刻んだ。
「なっ! ボクよりも速い!?」
「車輪とは太陽であり、月であり――時を意味するシンボル。……時を司る、というものは私的には馴染みのある概念ですが」
 愛する人から送られたブルーサファイアの指輪を人差し指でなぞりながら『星の銀輪』風宮 悠月(BNE001450)はディスタートを見て魔力を練る。魔力は漆黒のカマを形取り、アザーバイドに振り下ろされた。
「実際に時間を操作する能力を視るのは、初めてですね」
「へぇ。ボクの能力のことを知っているのか。じゃあ判るよね。屈するしかないって事は!」
 爆風がリベリスタを襲う。衝撃が荒れ狂い、土煙が舞い上がる。これで終わったと高をくくっていたディスタートの顔は、土煙から走ってくる人影を見て驚きに変わった。
「こんにちは。こっから先は通行止めだ」
 眼帯に覆われていない右目でディスタートを見ながら、『ハッピーエンド』鴉魔・終(BNE002283)は笑顔を浮かべた。死を求めるが故にその動きは大胆。防御を考えないナイフの動きがディスタートを切り刻む。
「悪いけど付き合ってくれない?」
「どっかで見てんだろフィクサード」
 ディスタートではなく遠くにいるであろう六道のフィクサードを意識しながら『消せない炎』宮部乃宮 火車(BNE001845)は手に炎を宿らせる。目の前のアザーバイドなど時に気にする理由はない。ガキは殴って黙らせる。ディスタートの後ろにいる悪意に向けて、指を突き刺した。
「良いぜぇ? 大いに無駄な事してろよ……!」
「何度倒れても、何度負けても、何度守れなくても! 諦めることだけはしない!」
 叫ぶ『ガントレット』設楽 悠里(BNE001610)の言葉もまた、ディスタートではなく六道に向けてのものだった。この両手が動く限り凶行を止めてやる。握った拳は固く、その意思はそれ以上に硬い。放たれた風の刃が、ディスタートの肌を裂いた。
「リベリスタを舐めるなぁああああ!」
「ボクを無視すると、痛い目を見るよ!」
「事前セーブなしじゃ怖くて雑魚も相手に出来ないって、戦う前から負けてんじゃねーか」
 禍々しく巨大なハルバードを担ぎ『世紀末ハルバードマスター』小崎・岬(BNE002119)がにしし、と唇を釣り上げる。ゲームに例えているが、その言葉は正鵠を得ていた。岬はハルバードの重心をうまく捉え、振り回されることなくふるって真空の刃を飛ばす。
「タイムアタック(時間を殴れ)、スタート!」
「今のトレンドはやっぱりおっさんぜよ。自分の時間を操れるならおっさんになろうや!」
 晴れた土煙の中から『パンツァーテュラン』を構えて『人生博徒』坂東・仁太(BNE002354)がボトムチャンネルの流行を語る。御年44歳。もうすぐアラフォーも終わるいい年齢である。
「何で態々錆び付かなきゃいけないのさ。そのまま朽ち果ててるんだね」
「わかっちょらんなぁ。歳を重ねた渋さってやつを」
 放たれる弾丸はディスタートの肩を穿つ。アザーバイドが時を巻き戻すまでに力尽きては意味がない。火力維持とダメージ効率を計算しての攻撃だ。
「じゃあそのまま止めてやるよ。死をもってだけどね!」
「致命傷をおうのはそちらだけです」
 七布施・三千(BNE000346)の声と同時に、神秘の風が吹く。清らかな風に乗せられた魔力がリベリスタの傷を癒し、頬をなでる感触がディスタートに与えられた不調を取り払う。自然界にある魔力のカケラを独特の呼吸法で取り入れながら、三千は前を見た。
「皆さんの怪我は……僕が全て治しますからっ」
 おちこぼれ。一族の中でそう呼ばれた三千だが、そんな自分にできることはあると言い聞かせて前を見る。視線の先には時間を操るアザーバイドと、それと戦う仲間たち。
「致命傷? 下層の輩がいきがるな!」
 空間が爆ぜる。爆音と共に戦いは加熱していく。


 逃亡防止とディスタートの視界から逃れる為に囲むように陣を敷き、遠距離から攻撃するものへの道を封鎖する。これがリベリスタの取った作戦だ。
「ちょこまかと煩いんだよ!」
 火車の火炎に悠里や岬の与える鋭い切り傷による消耗を恐れ、ディスタートは時を戻して傷を巻き戻す術を行使する。しかし、
「それはいただけないから、壊させてもらうね」
 終の持つナイフがディスタートを刻む。そこに埋められた解除のシードがディスタートの術を破壊する。特筆すべきは術の弱点を正確に見て刻む終の瞳とナイフ捌きだ。針の穴に糸を通すように、神秘の加護を切り刻んでいく。
「普遍で無いからこそ世界は愛おしいものだと思うんだけどね」
「ソーダゼ。ズット同ジ速度ダナンテ、ツマラネーヨ」
 リュミエールが剣閃に光を纏わせ、疾駆する。日本刀を片手に低姿勢で迫り、跳ね上がるように切り上げる。そのままディスタートの膝に乗って右足で蹴り上げた。ディスタートはそれを身を捻って避ける。
「それで不意をついたつもりかい」
「アア、コイツガ本命ダ」
 真円を描くような軌跡で回転するリュミエールの尻尾が迫る。その先に光る一本のナイフ。そのナイフに頬を傷つけられる。
「他チャンネルの事情なんざ知ったこっちゃねぇが、封印とかされて無様晒してたんだろ?」
 火車はディスタートに炎の拳を叩き込みながら、小ばかにするように笑みを浮かべる。その言葉と表情に怒りの感情をアザーバイドは向けた。それを確認して火車は言葉を続ける。
「その挙句がボトムでお山の大将か? はぁ~、おもしれぇやっちゃなぁ!」
 相手の正面を位置取り、挑発を続ける火車。それは単に馬鹿にしているのではなく、自分に攻撃を集中させる為の戦略でもある。烈火のごとく拳を叩き込み、熱砂の如く神経を焦がす。
「黙れ、あの時は油断していただけだ! この世界を支配したら奴らに復讐してやる!」
「吼えるなよクソガキが。封印から逃げて即ぶちのめされる。どんな気分か教えてほしいなぁ!
 合わせろよ悠里ぃいっ!」
「ああ、任せろ!」
 悠里はディスタートをはさんで火車と対極に位置取るように動く。両腕はディスタートの攻撃を塞ぐ盾。その攻撃の隙を縫って放たれる蹴りと風の刃。横なぎに足を払い終わった格好のまま、悠里はディスタートのことを理解する。
「随分と偉そうな事を言う割には、大したことないね」
「何だと?」
「今までボク等が戦った相手には意思があった。勝ちたいという強い意志が」
 それは私欲であることもある。絶望から逃れる為でもある。だが、その意志は強かった。
 ディスタートにはそれがない。召喚され、なんとなく虐殺しようという程度の意志。
「君は暴れまわる醜い動物に過ぎない!」
「ボ、ボクが醜いだって!」
「そりゃそーさー。これから潰されるんだもん」
 四人の前衛の間隙を縫うように岬がハルバードをふるって斬撃を飛ばす。大火の名を冠するハルバードを苦もなく扱う。ハルバードが軽いわけではない。ただそのハルバードと共に神秘の世界を歩んできたというだけ。
「潰す? 無理だね。どれだけ僕を傷つけても、もうすぐボクの体は元に戻る。絶望するのはキミ達のほうさ」
 それがディスタートの自信の要。火力で負けてもこのアザーバイドには『次』がある。だがそれを岬は一蹴した。
「それまでに潰すって言ってるのさー。教えてやろうぜ、アンタレス。百五十秒の長さってやつをさー。
 百五十秒あれば五十余人の怒れる赤いのを迎撃だって出来んだぜー!」
「そうですね。それまでにあなたを倒します」
 悠月の周りに展開される魔方陣。彼女の黒髪が、魔力の奔流になびくようにふわりと舞う。その髪と同色のローブを着た死神が魔力によって生まれ、手にしたカマを振りかぶる。
「時間操作。未来予知とは違う形の因果律を超える能力。その能力には興味はあります。ですが、使わせるわけには行きません」
「だろうね。だけどキミたちは絶望と共にこの能力の恐ろしさを理解するのさ」
 悠月の死神に切り刻まれながら、しかしディスタートの顔に絶望はない。まだ体力に余裕があるのか、それとも乗り越えられるという確信があるのか。
「そうですね。それを見れば撤退するしかありません」
 ディスタートから少し離れた位置で三千が冷静に戦況を判断する。時間操作の能力を抜きにしても、このアザーバイドの攻撃範囲は広い。爆風が飛び交い、ディスタートの周りにいる人は気付いたら切り刻まれている。三千は休む間もない回復の行使を行なっていた。
「へぇ? 頭がいいじゃない、キミ」
「それでもっ!」
 三千はルビコン川の石で作られたサイコロを握り締める。折れそうになる意志をゆっくりと立て直す。たとえ相手が強大でも、
「ボクの役割は皆を戦いやすくすること。皆がいれば、絶望はしません」
「よう吼えた。攻めるのはわし等に任せときぃ!」
 仁太はディスタートと一定の距離をとりながら『パンツァーテュラン』を撃ち続ける。暴君戦車とよばれたかつての敵が使っていた銃は、仁太によく馴染んでいた。あのときの射撃戦に比べれば、こんなガキの爆風など涼風にすぎない。
「坊主とは経験が違うんじゃ。ずっと子供のおまえと経験を重ねたおっさん。どっちが強いか教えちゃる。
 この瞬間を永遠に刻み続けろや!」
「ふざ……けるなぁ!」
 度重なるダメージにディスタートが四方八方に爆裂を起こす。自身すら傷つけながら、リベリスタを爆風が襲う。
 だがそれは追い詰められた証。時間を操るアザーバイドの終わりの『時』が近い――


 戦場響く爆音。ディスタートの視界から逃れていたリュミエール以外のリベリスタがその攻撃を食らい、衝撃で意識を朦朧とさせる。
「まだ、です」
「その程度じゃ、リベリスタはまけへんで」
 体力に劣る悠月と仁太がその爆発で気を失いそうになる。運命を削って踏みとどまり、戦意を込めた視線でディスタートを睨んだ。
「くっ……!」
 それに気圧されるようにディスタートは一歩ひいて、防御の構えを取る。そうだ。あと少し立てば自分の傷は巻き戻る。その後でリベリスタを攻めればいい――
「時間操作の能力に頼らなければ……私達の如き虫けらも倒せませんか、あなたは」
 悠月の声が凛と響く。その言葉にディスタートの顔が歪む。
 ――真に勝負を分けた一撃があるとすれば、その挑発だった。防御に徹していればディスタートはもう数十秒耐え切っただろう。
「元の世界で封印された時もそうやって縮こまってたの?」
「あーあぁ、結局身の程知らねぇただのクソガキかよ? 泣いて逃げだす始末かぁ?」
「このボクを馬鹿にするな! 下層の虫けら如きが!」
 悠里と火車が挑発を重ねる。ディスタートは怒りで歯を噛み締めて、周囲にいるリベリスタ達を切り刻んだ。まともにはいった、と笑みを浮かべるディスタートの顔は、
「はっ! 漸くエンジンかかってきたぜ、ガキが! 合わせるぞ!」
「ああ! キミのような軽い存在に負けてやるわけにはいかない!」
「「3・2・1・GO!」」
 運命を使い立ち尽くす火車と悠里の姿で蒼白になる。その拳に宿る炎と雷が同時に叩き込まれた。時に交互に、時に同時に。息のあったコンビネーション。
「永遠って言えば言葉は良いけど、変化が怖いだけじゃない? 君は変わらないのではなく、変われない」
 同じく運命を燃やした終のナイフがディスタートの動きを止める。圧倒的な速度で翻弄し、多角面の攻撃が動きを封じる。滅びることを怖れない死の舞踏。負けを回避するために時間を操るディスタートには到底理解できない思考と戦術。
「Kallio ja meri, ja on pyyhkaisi pois nopeasti Sphaerenlauf ikuisesti.(永劫たる星の速さすら抜き去り 今こそ疾走し駆け抜けよう)」
 ディスタートの死角に回るように攻め続けるリュミエールの声。声の元に視線を向ければそこに姿はなく、視界の端に捕らえればその瞬間刃が走る。
「くそ……あと少し、後少し耐えれば――」
 後数十秒。それだけ耐えればディスタートの時間が巻き戻り、勝利を得るだろう。
「Aika kiihtyvyys Olen nopeampi kuin kukaan――(時よ加速しろ 私は誰よりも速いのだから)」
 だがそれはありえなかった『時間』。『運命』はリベリスタに傾いた。
「ウソだ、この僕が負けるだなんてそんなことが――」
 リュミエールの『髪伐』が光の残滓を残して振りぬかれる。胸がその軌跡のまま切り裂かれ、時間を操るアザーバイドは最後の時を迎えた。


「ザマーネーナ」
 リュミエールはもはや動かないディスタートの服をあさる。戦利品として何か奪ってやろうという考えだったが、予想外の感触が掌に伝わる。通信用の携帯端末だ。それが震えて、着信状態になる。
 視線で皆に意見を求め、意を決して通話状態にした。聞こえてくるのはそう若くはないだろうと思われる男の声。
『おめでとうリベリスタの諸君。ディスタートとの戦い、観察させてもらったよ。
 私の名前はバーナード・シュリーゲン。六道第三召喚研究所の所長をしているものだ』
 悠月が千里眼で病院のほうを見れば、その屋上で携帯電話を手にしている男の姿が見えた。40歳そこらの白衣を着た男性。その唇のままに、手元の端末から声が聞こえる。
「おー。中ボス倒したら真ボスが話してくるイベントだー」
 岬が破界器を手にしたままのポーズで、言葉を発した。
「なんか仕掛けてくるとはおもっとったが、まさかこういうことするとは思わんかったなぁ。祝賀会に招待してくれるんか?」
『スケジュールに余裕があれば考慮するよ。最近はいろいろ忙しくてね』
 仁太の問いかけに、笑い声と共に言葉が返ってくる。
『私の仕事は特定のアザーバイドを召喚する理論を確立することでね。漸く目処が立ったところだ。
 セリエバ、というのアザーバイドを知っているかね? 運命を食らう植物型のアザーバイドだ』
 そのアザーバイドの名前に、リベリスタに緊張が走った。あるものは直接、あるものは報告書からその名を聞いていた。
『近くそのアザーバイドを召喚しようと言う計画がある。そこで、アークが所持しているセリエバの枝を渡してくれないか? 御身の欠片があれば成功率は跳ね上がるのでね。
 何、無料とは言わない。相応の謝礼は払おう。キャッシュで――』
 ガシャン!
 その会話を断ち切ったのは、誰の一撃か。
 地面に叩きつけられて粉々になった端末。
「また六道の実験か。
 実験なんかの為に人の命を、心を、人生を! おもちゃみたいにして!」
 悠里は叫ぶ。それと心を同じくする者が、病院から飛び立つヘリコプターを視線で射抜いた。
「お前らの凶行を何度でも止めてやる!」

 ヘリコプターの中で、白衣の男は端末をしまいながらため息をつく。
「交渉決裂か。予想通りだが血気盛んだな、アークは」
「バーナード。何故セリエバのことを彼らに話したネ? 裏切る気カ?」
「アークが介入するのは想定内だ。それが早いか遅いかというだけ。
 黄泉ヶ辻に剣林、同盟を結んでいるとはいえ信用はできん。彼らを牽制する相手として、アークは最適だ。『達磨』はともかく『W00』は行動に予測がつかない。カードは多いほうがいい」
「アークがおまえの予想通りに動くと思うなヨ?」
「戦局をうまくコントロールするのは戦闘部隊のおまえの仕事だ。六道の利益の為に、身体を張ってくれ。
 それに私は召喚技術の確立さえできればいい。召喚されたセリエバがアークに倒されようが知ったことではない」
「……テメェ」
「結果は出す。私の仕事はそれだけだ」
 バーナードと呼ばれた男の声は硬く、揺らぎがない。それは心の底からそう思っている証拠だ。
 召喚されたアザーバイドがどうなろうが、それによりどの組織にどんな利益が生まれようが、どんな悲劇が生まれようが、世界の運命がどれだけ吸い尽くされようが、構わない。
 召喚理論が証明されれば、他はどうでもいい。ただそれだけだ。

 運命を食らうアザーバイドと、それを召喚しようとする者達の舞台。
 その幕はすでにあがっており、役者たちは踊り始めている――

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 どくどくです。
 驕る何とかはひさしからず。どくどくもディスタートもリベリスタを甘く見ていた結果でした。
 適度な状態から防御に回るつもりでしたが、あんな挑発をされれば怒りに身を任せようものです。
 MVPは数ある挑発の中でも、最もディスタートの自尊心を傷つけた風宮様へ。

 ともあれ、お疲れさまでした。まずは傷を癒してください。
 それではまた、三高平市で。