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鬼面の悲劇

●孤独な面師
 あるところに面を彫る事を生業とする男がいた。
 男は来る日も来る日も一人で面を掘り続けた。
 男が彫る面にはやがて命が宿るようになった。
 面はアーティファクトとなり男に取り憑き、男の客に取り憑いた。
 精神を蝕まれた男と客はノーフェイスとなって武器を手に取る。
 男が彫った面――それはどれも一様に鬼の面だった。
 鬼は求める。戦いを、血を、破壊を。
 世界に混沌を招く鬼の剣舞が始まる。

「一生懸命になることは悪い事じゃない。一生懸命な人たちのお陰で世界が回ってるしな」
 どう控えめに見ても『一生懸命』とは程遠そうなフォーチュナ、『黒い突風』天神・朔弥(nBNE000235)はあくびをかみ殺しながら状況の説明を始めた。
「ある面師の男の彫る面がいつからかアーティファクトになるようになった。こいつは被った奴の精神を蝕みノーフェイスに変える力を持つ。
 因みに種類は鬼とか鬼女。殺戮を好む性格になっちまうみたいだな。
 それで、男と客三人に取り憑いて人殺しをおっぱじめようとしてる。
 今から行けば山奥で鉢合わせることが出来るはずだ。
 あんた達に頼みたいのはアーティファクトの破壊か回収とノーフェイス四人の殲滅。
 ノーフェイスが倒れれば面は外れる。
 面には精神を蝕む、性格を残虐なものにする、という力の他に被った奴の能力を増強させるものもあるみたいだな。
 武器は日本刀が一人、斧が二人、鋭く伸びた爪を持った奴が一人。
 日本刀は面師が神棚に奉っていたものだが切れ味は相当いい。
 斧は切れ味より打撃力に注意してくれ。
 爪には毒があるからそっちも注意な」
 珍しくやりきれなそうな表情になって朔弥は最後に言った。
「一生懸命が裏目に出ることもある。けど悪気があってアーティファクトを作り出しちまったわけじゃないし、殺人を望んでたわけでもない。
 ……止めてやってくれ。
 あ、面は一度被ると死ぬまで外れないから絶対被るなよ?」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:秋月雅哉  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年09月16日(日)23:27
能面や雅楽面って魂が籠もると聞くので今回はそんな感じのシナリオです。
成功条件はアーティファクトの回収or破壊とノーフェイス四体の殲滅。
武器はオープニングにあるとおり日本刀×1、斧×2、爪×1。
爪には毒の効果あり。
哀しい面師を救ってあげてください。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ソードミラージュ
仁科 孝平(BNE000933)
覇界闘士
祭雅・疾風(BNE001656)
インヤンマスター
岩境 小烏(BNE002782)
ダークナイト
一条・玄弥(BNE003422)
レイザータクト
ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)
ソードミラージュ
エルヴィン・シュレディンガー(BNE003922)
レイザータクト
ラケシア・プリムローズ(BNE003965)
ダークナイト
街多米 生佐目(BNE004013)

●面師の苦悩
 鬼神面、黒髭、大飛出。
 怨霊面、真蛇、狐蛇。
 いずれも山奥で一人面打ちに励んでいた男の作だ。
 『写し』の時代になった今、面打ちはいかに本面に近い物に出来るかが重要とされる。
 男の腕は確かだった。
 技術力があり、努力を怠らない。
 魂を込めて打つ、というのに相応しい面が次々と生まれていった。
 やがて男に苦悩が生まれる。
 もっと自由に、もっと自分らしい面を打ってみたい。
 しかし自分にあるのは『写し』の技術だけ。
 求められるのも『写し』の面だ。
 自分オリジナルの面などきつい言い方をすれば邪道。
 男は苦悩しながら『写し』の面を掘り続ける。
 その苦悩が更に男の技術を高めた。
 皮肉にもそれがアーティファクトとなって男と、面を買いに来た三人に取り付いてしまう程、男の腕は確かだったのだ。
 面は男と客に取り付き精神を崩壊させる。
 男の苦悩が面に自我を生んだのだ。
 面が求めたのは自由に動ける身体。
 鬼神面に相応しく。
 怨霊面に相応しく。
 人に害をなすことが出来るようになるにはどうしても身体が必要だった。
 神棚に奉られていた日本刀を面師――黒髭が取る。
 木の伐採に使っていた二振りの斧を客の二人――大飛出と狐蛇が取る。
 真蛇の面を被った客の爪は鋭く、長く伸び、毒を帯びた。
「参るぞ」
「いざ」
「人の世に」
「災いあれ」
 平坦な声。
 被っているのは全員男なのに狐蛇と真蛇の面を被った客の声はおどろおどろしい女のものになっていた。
 これは面が身体を使って発した言葉。
 四人の男の自我は、もう何処にもない。

「渾身の思いを込めて作ったために、作った面がアーティファクトとなったのでしょうか?
 ある意味凄いことですね。
 ただ、鬼の面ということで鬼のような心をもって作ったのでしょう。
 あまりに出来上がったものの完成度が高くて作り手の心が宿り、正しく装着したものを鬼と化す。
 結果としてこの様なことになったしまったのは残念なことですが、倒すしか無いでしょう」
 山道を歩きながら『宵闇に紛れる狩人』仁科 孝平(BNE000933)がどこかやりきれなそうに言葉を漏らす。
「魂が篭るほどの作品がこんな事になるなんてね。
 だけど、惨劇が起きるのを見過ごす事も出来ないんだ」
 千里眼を使いながら周囲の状況を把握して歩く『正義の味方を目指す者』祭雅・疾風(BNE001656)も心境は孝平と同様のようだ。
「孤独に面を掘り続けた男、か。
 鬼の面が覚醒したのは男の内面を強く表していたからか、それともただの偶然か。
 今となっては知る由も無し……とはいかねぇのがこの界隈だな」
『赤錆烏』岩境 小烏(BNE002782)がその後に続く。
「一生懸命は善い結果をもたらすと信じたい物だがな……。
 その精進がもはや人ならぬ域にまで達していた、と言う事だろうか。
 しかし自らの意思で「おれはにんげんをやめるぞー」と言う事ならともかく、神秘の理不尽で人をやめさせられるのでは、たまったものではないな」
 面師もさぞやりきれないだろう、と『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)が呟く。
「罪がない人間なんておるわきゃない。
 悪意がないから罪がないなんて決めたんは誰やぁ?
 人は悪意なく他人を殺す。
 それが人の本質でさぁ。
 取り繕う事だけ大人になると取り繕う仮面だけは上手でさぁ。
 そんなもんは処分しまひょう」
 面師や他のノーフェイスにさほど同情していない様子なのは『√3』一条・玄弥(BNE003422)だ。
「鬼の面か……一体、これらの仮面にどのような思いを込めていたのだろうな……。
 尤も、今となっては、それを知る術は無いか……せめて、彼の作品に恥じない戦いをしよう」
 同情するのでもなく、切り捨てるのでもなく、ただあるがままを受け入れるのは『あるかも知れなかった可能性』エルヴィン・シュレディンガー(BNE003922)で彼もまた用途は違うものの仮面をつけている者だった。
「被った者を鬼と化させる面ね……。
 まさに作り手の鬼気迫る執念の成果といったところかしら。
 まったく、迷惑な話ね……」
『プリムラの花』ラケシア・プリムローズ(BNE003965)がため息混じりに感想を述べる。
「我の邪気眼が敵を感知したぞ。気をつけろ」
『カゲキに、イタい』街多米 生佐目(BNE004013)が一つの立派な個性になっている中二病全開の台詞を吐く。
「……どうやらそのようだね。皆、準備はいいかい?」
 此方はきちんと千里眼で見ていた疾風が告げると一同の顔が引き締まり、陣形を整えた。
 場所は山奥付近。面師の家から鬼が降りてくる。
 黒髭、大飛出、真蛇、狐蛇。
 日本刀を、斧を、爪を構えて近づいてくる。
「人の世に……」
「災いを……」
「恨みを……」
「滅ぼせ……」
 空虚な声。
 実のない主張。
 それらが四人をのっとったノーフェイスが『良く出来た作りモノ』だということを示しているかのようだ。
「我が身に巣食う暗黒を解き放つ時が来た!」
 生佐目が己の生命力を暗黒の瘴気に変えて四人を包む。
「翼よ……私たちにその加護を……」
 足場対策を考えて後衛のラケシアが翼の加護を全員に与える。
 これで足場に関しては心配がなくなった。
「その一閃受け止めてやろう」
 黒髭の面をつけた元面師の日本刀をエルヴィンが受け止める。
 全身の反応速度を高め、身体能力のギアを上げるハイスピードを使ったからこそ出来る技だった。
 仮面にはつけた者の力を増強させる力がある。
 ノーフェイスとはいえ四人は戦いの素人だが仮面の力によってそれなりの戦闘力を有していた。
 黒髭が日本刀を構え、攻撃に移るとエルヴィンの首筋を皮一枚切り裂いた。
「これでも食らえ!」
 ベルカがフラッシュバンを敵に向けて投擲する。
 その後、ディフェンサードクトリンとオフェンサードクトリンを味方に。
「その程度か。偽モンさん」
 暗黒の衝動を持つ黒いオーラを収束して放つのは玄弥。
 小烏は道力を纏わせた剣を周囲に浮遊させ、刀儀陣を展開する。
「こいつが此度の童子切さね」
 斧を持った大飛出に対峙しながら隙をうかがう。
「ここで止めてみせる! 変身!」
 幻想纏いを起動して装備を纏った疾風は爪の一撃をバックステップでかわした。
 流れる水を思わせる構えだ。
 全身の状態を速度に最適化し、反応速度・身体能力のギアを大きく高めた状態で狐蛇に向かう孝平。
「憎らしや……」
 体格は成人男性のものであるのに声は怨念に満ちた女性のものである。
 その狐蛇にむけて澱みなき連続攻撃を繰り広げる。
 疾風はその名に相応しく疾風にも負けぬ圧倒的な速力を武器に雷撃を纏った武舞を次々と範囲内の対象目掛けて展開。
「式符・鴉」
 黒髭の面をつけた男を小烏の放つ式符が襲う。
「おっとどっこ」
 横合いから奪命剣で顔面攻撃をするのは玄弥だ。
 その間にラケシアが天使の歌で味方の傷を癒していく。
「面師よ! 貴様の熱意は何も否定せん!
 これは全て理不尽のもたらした事だ。
 せめて今は速やかに終わらせてくれる!」
 黒髭に向かってカースブリットを放つベルカが叫ぶ。
 その一撃で黒髭は倒れた。
 面には不思議なことに傷一つついていない。
「回収は後回しだ。……被るなよ」
 エルヴィンが釘を刺しつつ魔力銃で真蛇を打ち抜く。
「容赦はしない。全力で戦う、それが救えない相手への俺なりの礼儀だ!」
 ラケシアが神気閃光を続けて放つ。
「暗黒の衝動が貴様には似合いだ」
 魔閃光が狐蛇に突き刺さる。
「私が引導を渡してくれよう!」
「君は後衛でお願いする」
 前に出ようとした生佐目を言葉は多少違ったが全員が止めた。
 生佐目、戦闘中にもかかわらずスパイラルジャンピング土下座をして反省……したのだろうが場合が場合なので反省に見えない。
「ふざけた土下座をしていないで戦闘に集中してくださいっ」
「相分かった」
 表情を真面目なものに切り替えて集中する生佐目。
 何人かがため息を吐く。
「地獄がまっとる。ほなさいなら!」
 後衛に戻り暗黒で狐蛇にとどめを刺したのは玄弥だ。
 男の身体から面が外れる。
 男の顔は酷い火傷でも負ったかのように原型を留めていなかった。
「面に吸われたのか……? 彼らにとっては面が既に顔なのだろうか」
 残った大飛出と真蛇がそれぞれの武器を構えながらゆらり、とリベリスタたちに近づく。
「恨みを……」
「晴らすべし……」
「全てを……暗黒に」
「災厄を……この世に」
 恨みつらみをただ抑揚のない声で繰り返し続ける。
 やはり、面に『意思』はあっても『自我』はない。
 ただ面がそうであれ、と面師に彫られた感情を意味も分からずに繰り返しているだけなのだ。
 壊すためだけに生まれてきた。
 恨むためだけに生まれてきた。
 そんな面が命を持ってしまったのは偶然とはいえ不幸なことだ。
「今終わらせてやる」
 そんな哀しい偽りの生を終わらせるために小烏が式符・鴉を放つ。
「ぎゃぁぁぁぁぁっ!」
 断末魔の叫びを上げて大飛出の面をつけた男が倒れる。
 外れた面は無傷だが男の顔はやはり爛れていた。
「後はそいつだけやなぁ」
 鋭い爪が玄弥を切り裂き体内に毒が入り込む。
 すかさず小烏がブレイクフィアーで毒を浄化した。
 疾風がDCナイフ[龍牙]で背後から斬りかかった。
 止まることを知らないかのような連続攻撃で孝平が続く。
 息の根を止めたのはラケシアの神気閃光だった。
 最後の面もやはり無傷だ。
 アーティファクトとして何らかの力が作用しているのかもしれない。
「これを被れば私も強くなれるのか?」
 生佐目が面の一つを無造作に取り上げる。
「正気か!?」
 言いながら殴って止めたのはエルヴィンだ。
 アークから支給された桐箱一つにつき一つずつ面を厳重にしまっていく。
「こうしてみるとただの……というか、詳しくない身から見ても普通の、見事な面なんだけどな……」
 疾風が真蛇の面を桐箱にしまいながら吐息をこぼした。
「それにしても、まさかヒトの作った物がアーティファクトになるとはな、これではおちおち物作りもままならんか……」
「うむ。それだけ執念が籠もっていたのだろうな」
 エルヴィンの言葉にベルカがうなずきを返す。
「売っぱらったらいい金になりそうなんだがなぁ」
「駄目ですよ、玄弥さん。これはアークに処理を任せるんですから」
 被っただけで殺人狂のノーフェイスになる面など危なすぎて世間には出せはしない。
「サイレントメモリーで面を調べていいか?
 能面師は何を思い面を掘ったのか知りたいんだ」
「あぁ、どうぞ」
 小烏が面を調べる間山には静寂が広がっていた。
 集中のため閉じていた目を開いた小烏に孝平が聞いた。
「どうでした?」
「『写し』でなく自分オリジナルの面が彫りたい、でもそれは今の世から見れば邪道にしかならない……でももっと凄い面を掘りたい。
 一介の面師で終わりたくない。
 ひたすらに高みを目指したい……そんな想いが残っていたよ」
 その言葉に一同は沈黙する。
「懸命に掘った末、面がその役を全うすべく暴走したんならこれで満足してくれるといいんだが。
 他に望むことがありそうなら、許される範囲でしてやろう。
 それが供養にもなろうさ」
 これは面師の思いでなく私見だけれど、と小烏が言えば同意の声がいくつかあがった。
「さて、面の処分と四人の供養をアークに取り計らって貰わないとね……」
「個人的にこの日本刀に興味があるのだが……呪われていないよな?」
「神棚に奉られていたって話だから呪われてはいないと思うが……」
「面が駄目なら武器を売り払う」
「玄弥さん……」
 話し合いの結果、武器も一応アークに提出することになった。
「あの切れ味の良さ、眠らせておくには惜しいんだがな……」
「アークで調べ終わった頃に掛け合ってみたらどうだい?」
「そうだな。それも一つの手か」
「じゃあ、取り合えず遺体を隠して山を降りましょう。報告もしなくてはいけないし、それに何よりそろそろ日が暮れるわ」
 ラケシアの言葉に全員が頷きそれぞれが動き出す。
 能面は桐箱に収められたまま動く気配がない。
 アークに提出された能面がその後どうなったのかは誰も知らされなかったが封印されるなり破壊されるなりしたのだろう。
 一人の面師がいた。
 面師は面に取り付かれ、面に生涯を捧げ、面に心を食われてその人生を終えた。
 元々人付き合いの少なかった彼が非業の死を遂げたことを知る者はいない。
 神秘は守られなくてはならないからだ。
 彼が打った面のいくつかは、普通の能面として今も人々を楽しませている。
 面本来の役割を果たし、大事にされている。
 意思を持つほどの思いを込められ彫られた結果、人目を見ることなく闇に葬られた面と、それ程の思いは込められずとも多くの人に見られている面と。
 果たして幸せなのはどちらなのだろうか――……。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
ご参加有り難うございました。
このリプレイを書くにあたって能面の彫り方や種類がのっている本を資料として使ったのですが結局能面の名前と種類位しか描写できませんでした。
ノーフェイスになっているのでもう面は彫ってないんですよね…。

またご縁がありましたら宜しくお願い致します。