下記よりログインしてください。
ログインID(メールアドレス)

パスワード
















リンクについて
二次創作/画像・文章の
二次使用について
BNE利用規約
課金利用規約
お問い合わせ

ツイッターでも情報公開中です。
follow Chocolop_PBW at http://twitter.com






Insomnia.

●土に眠る者
 まどろみの中で、卑下た笑い声が聞こえる。
 げらげらと静けさの中に反響する、ひどく品のない声だ。
 男は真っ暗な暗闇の床で、耳に響いたその不快な音に目を覚ました。
 笑い声は止まない。
 まどろみを遮るような笑声が、ひどく不愉快だ。
 何がおかしいのかと、うるさいほどのその声に男は眉を顰めた。
 聞こえる声は、年若い男たちのもののようだった。
 集団でいるようで、品のない笑い声はまるで合唱のように反響している。
 そのあまりの喧しさに苛立ちを感じた男は、暗闇でもぞりと僅かに身体を動かした。
 動かした身体が、ひどく重たい。
 何より、まるで凍ってしまったかのように冷たく寒かった。
 動きづらい身体を慣らすように、幾度か手を開いては閉じを繰り返す。
 どれだけ動いても、身体は熱を持たない。ただ、ただ寒い。
 その冷たさから逃げ出したくて、やがて男は暗闇を押し開いた。
「お、おい……、なんだよあれ……ッ!」
 重たげな音を立てて、開けた視界。
 日が沈んだばかりなのか、空の向こうは僅かに茜色を残して、やや薄暗い。
 男が声の方向を見れば、そこにはやはり年若い男たちがいた。
 こんな場所で、何をしていたのやら。
 その年若い男たちは、怖ろしい顔でこちらを指差し見ている。
 人を指差すなど、教育のなっていない子供たちだ。男は思う。
 そうして。
 腰を抜かし後ずさる年若い男だちを見下ろして、男は寒さに身体を動かした。
 この冷たさも、動けば和らぐだろう。
 ひどく眠たかったが、男はそれよりも苛立ちを優先した。
 いつの間にか、笑い声は消えている。
 しかし、それは良いが、今度は悲鳴や情けのない声が響いてそれが喧しい。
 ああ、喧しい。男の苛立ちは消えなかった。
 この苛立ちを消すには、どうすればいいか?
 男は考えて、それから傍らにあったシャベルに手を伸ばす。
 やがて、男は手に取ったシャベルを振り上げ、苛立ちを殺していった。
 うるさい。うるさい。ああ、なんてうるさいのか。
 男の苛立ちは、消えない。

 ――気が付けば、悲鳴は止んでいた。
 既に男の周囲には、誰もいない。何もない。
 あるのは手の中の、赤く染まったシャベルがひとつだけ。
 やっと手に入れた静けさの中で、ただそこに立つ男をいくつもの火玉が見つめていた。

●腐蝕の夜
「とある郊外の寂れた墓地に、E・アンデッドが現れるよ」
 ぽつり、『リンク・カレイド』真白・イヴ(nBNE000001)がそう告げれば、リベリスタたちが視線を集める。
 イヴはリベリスタたちをしっかりと見回して、言葉を続けた。
「ある大学生の集団がね、面白半分で夏の終わりにとそこで肝試しをしていたの」
 そのとある郊外の寂れた墓地は、随分と前から訪れる人も減り次第に忘れ去られていった小さな墓地らしい。
 寂れてはいるが、足場はしっかりとしているものだし、明かりも少しほの暗いが支障はない。
 それでも、今ではいくつかの墓が立ち並ぶばかりで、人影はいつになっても訪れない。
 とっくの昔に忘れ去られた、墓石ばかりの何もない墓地。
 そんな場所に目をつけたのは、年若い男たちの集団だった。
 彼らはある日の夕暮れに、そこで肝試しをしてしまった。
 そんな中で、墓地特有のおどろおどろしい雰囲気から、男たちも少なからず高揚していたのだろう。
 思うよりもひどく騒いでしまい、その結果――ひとりの死体を、眠りから起こしてしまった。
 眠りを妨げられ、やかましく墓地を荒され。
 そして、事態は暗転する。
「E・アンデッドは年を重ねた高齢の男性。動きは遅いけど、とても堅くて強靭だから油断はしないで」
 それと。
 イヴはそう言って間を置き区切りを付けてから、また口を開く。
「彼に連れられて、たくさんのE・フォースたちが姿を現すよ」
 その数はおよそ、20体程だろうか。
 墓地に漂う悲哀や寂寥、 孤愁など様々な感情をひっくるめて出来た思念体たちだ。
 E・フォースは男の周囲をゆらゆらと漂うように現れ、男の手助けをするだろう。
 数は多いが、E・フォース自体はさほど強くはない。
 ただ、倒すならば数の多いE・フォースから排除していった方が後々に良い風を運ぶかもしれない。
「そのE・アンデッドの男は、深く深く眠っていたかっただけなの。でも、ひとを殺めてしまったなら、倒さなければいけないよね」
 このままずっと起きていれば、更に寒く、更に渇き、更に苛立ち。
 男はますます、安らか眠りから遠ざかっていってしまう。
 だから、その前に。
 あなたたちの手で、もう一度、眠らせてあげてほしい。
 ゆっくりともう一度視線を合わせ、最後にそう言ってイヴはリベリスタたちを見送るのだった。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ここの  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年09月14日(金)23:24
こんにちは。『ここの』と申します。
またひとつ、お話のご案内を。
Insomnia. 不眠の男。
今回は眠れないアンデッドさんのお話になります。
どうぞ、お手柔らかに。


●諸注意
・勝利条件:すべての敵の討伐。
・戦場:郊外の寂れた墓地。広さ、地質、視界、ともに問題なし。

・エリューション:
不眠の男(E・アンデッド)
冷たい腕:物近単、攻撃BS氷結
殴りつける:物近単、攻撃致命
唸り声:神遠全、攻撃BS混乱、弱体

火玉(E・フォース)×20
火の息:神遠範、攻撃BS火炎
燃えさかる:回復



それでは、皆さまの素敵なプレイングをお待ちしております。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
石川 ブリリアント(BNE000479)
覇界闘士
レイ・マクガイア(BNE001078)
★MVP
デュランダル
日野宮 ななせ(BNE001084)
ソードミラージュ
出田 与作(BNE001111)
スターサジタリー
麗葉・ノア(BNE001116)
プロアデプト
プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラック(BNE003341)
ホーリーメイガス
石動 麻衣(BNE003692)
マグメイガス
羽柴 双葉(BNE003837)

●眠らない夜
 夕暮れに沈み、ゆっくりと夜に染まっていくほの暗い頃合。
 とある郊外の寂れた墓地の近くへと、8人のリベリスタたちが訪れていた。
 あたりはひどく静かで、どことなくどんよりとしたような空気が流れている。
 墓地特有の雰囲気、というものだろうか。
 僅かに冷たい風が運んでくる、この先すぐにある墓地からの土の匂いが鼻につく。
 その中で。
 他でもないその薄暗い景色の中に、リベリスタたちは確かな気配を感じていた。
 おそらく、墓地へと踏み込めば、既に例のE・アンデッドがいるのだろう。
 遠くでゆらりとゆらめく火玉を見た、気がした。
「怪談や肝試しはわたしも好きですけど、お墓で騒いではいけないですよね」
 『シトラス・ヴァンピール』日野宮 ななせ(BNE001084) が、自前に聞かされていた話を思い出したのか、あたりをそっと見回しながら言う。
 付近には墓地以外はなく、ここは正に死者のために用意された静かな場所だ。
 そんなところで、騒ぐのは確かに良い行いではないだろう。
「墓場で遊ぶな若人よ! ……と言っても、既に詮無い事ではあるが」
 その通りだな、と頷いたのは『エリミネート・デバイス』石川 ブリリアント(BNE000479)だ。
 しっかりと墓場の方面を見据えながら、相槌を打って同意を示す。
 済んだことを言っても仕方のないことではあったが、それでもそう思ってしまうものだ。
 ちょっとした遊びのつもりだったのかもしれない。
 怪談話や肝試しといえば夏の風物でもあったし、そういったものを好む者も多いだろう。
 それでも、そうしてそこで眠っていたものを起こしてしまったからこその事態である。
 致し方がないとはいえ、どうにも度し難い。
「盆でもないのに上で騒がれちゃ、そりゃぁ死人も還って来ますわなあ」
「俺達だって、よく眠っている所を起こされれば怒るからね。何倍も深く“眠って”いた彼が怒るのも、少しは分かる気がするよ」
 集中力を高め、感覚を研ぎ澄ましていた『ギャロップスピナー』麗葉・ノア(BNE001116)がそう苦笑する。
 そうすれば、『ラプソディダンサー』出田 与作(BNE001111)も大きく頷いた。
 しかし、そうとはいえ。
 起こしてはならないものを起こしてしまった代償が命、というには随分と重かった。
 墓場で騒いだ罪は、決して軽いものではない。
 かといって、罰として命で償わなければならないほどにその罪は重かっただろうか。
 その罪状を図れるものはないが、分かることはただひとつ。
「どっちにしても、先に≪殺そうとした≫、≪殺した≫ほうが負けだよな」
 コンセントレーションで集中を高めた『孤独嬢』プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラック(BNE003341)は、そう呟く。
 眠りを妨げられるほど、苛立つこともないだろう。
 その気持ちは誰にでも共感出来ることであるし、わからないことでもない。
 それでも。
 眠りを妨げられた被害者も、人を殺したのならば既に加害者だ。
 何より害のあるエリューションであるからには、倒さねばならない。
 彼が、眠れないというのなら。
 彼が、死ねないというのなら。
「ならば、私たちは再び有るべき姿に戻すべく行動するのみです」
 もうすぐ先の墓場を見据えて、『おとなこども』石動 麻衣(BNE003692)がそう告げれば、リベリスタたちは顔を見合わせる。
 正に、その通りといったところだろう。
 既に害のあるエリューションと化した彼が、再び眠るためにはリベリスタたちが倒す他ない。
 なればこそ。
「ほんと、その通りだねー。ちゃんと眠って貰う為にも頑張ろうっと」
 『』羽柴 双葉(BNE003837)が、魔陣展開を行いながらゆるりと笑う。
 それと同時に、視線をそっと合わせて、リベリスタたちも力強く頷いた。
 眠れぬならば、この手で再び眠らせるのみだ。
 そして。
 リベリスタたちは、目前の寂れた墓地へと足を踏み入れていった。

●眠れない夜
 ゆらり、視界の隅て火玉がゆらめくのが分かる。
 リベリスタたちが足を踏み入れた、その先。
 寂れた墓地の中央には、シャベルを手にした不眠の男が立っていた。
「エリューション、確認。戦闘行動を開始します」
 『アメリカン・サイファイ』レイ・マクガイア(BNE001078)が白い戦闘服を翻し、ガントレットを起動させる。
 戦闘は、既に開始されているのだ。
 ゆらゆらと漂う火玉を視界に納め、リベリスタたちは戦闘配置へと着く。
 そうして、真っ先に駆け抜けたのは双葉だった。
 とても素早い動作で木の杖を構えた双葉は、視界に入れた火玉を確認すると、すぐにその杖を掲げる。
「これだけいると撃ち甲斐があるねー……いっけぇ!」
 いつの間にかゆらりゆらりと現れた火玉の数は、とても多い。
 しかし、だからこそ撃ち甲斐があるというもの。
 そう笑った双葉は、自らの血液を媒介とした黒い鎖を自在に操り、多くの火玉を飲み込んだ。
 不眠の男は抑え込み、先に数の多い火玉たちから数を削っていくと決めてこその行動だ。
 そして、それに続くように、与作も魔力のナイフを持ってして火玉へと襲い掛かる。
 目にも止まらぬ速さで作り出された残像は、周囲の火玉を巻き込んで確かなダメージを与えていった。
 ――ふと、そのときだ。
 攻撃を食らい、炎を揺らした火玉たちが僅かにぶれる。
 次の瞬間、大きな火の息吹があたりを駆け巡たのだ。
 ひとつ、またひとつ。
 火の粉が広がれば瞬く間に、重なるように炎が駆け巡って行く様子が伺えた。
「ぐっ……」
 中でも、その攻撃を強く受けたのは与作だった。
 あたりを泳ぐ火玉が笑うように揺れて、火の息吹が与作の身体を焦がしてゆくのが分かる。
 それは傍らに立つレイにも同じことだ。白い戦闘服が僅かに焦げて、レイは身体を捩る。
 それを真っ先に視認したのは、回復に控えていた麻衣だった。
「いま、回復をします」
 着実に倒していくためにも、回復は怠るべきではない。
 仲間の状態に気を使うように、麻衣はすぐさまグリモアールに触れる。
 その瞬間。
 神々しい光が、麻衣の持つグリモアールから放たれる。
 その光はふたりの身体を苛んでいた火炎を、あっという間に打ち払った。
 火炎から開放されたふたりは、感謝に目礼を交わせばそれから再び攻撃態勢へと身を移す。
 休んでいる暇は、ない。
 リベリスタたちは不眠の男を抑えている仲間のためにも、少しでも早く火玉たちを撃破しなくてはならない。
「ターゲットを捕捉。攻撃行動を行います」
 ななせが不眠の男を抑えている様子を確認しながら、レイはすぐ傍の火玉へと土砕掌を打ち込む。
 1体ずつでもいい。
 確実に、数を減らしていくこと。それが目的なのだから。
 そうして、破壊的な気を叩き込まれた1体の火玉が、大きなダメージにゆらりと静かに消滅した。
「悪いな、ちょっと騒がしくするぜ!」
 このまま、波に乗るべく。
 STEEL《STEAL》MOONを手にした、プレインフェザーも攻撃に続く。
 ゆっくりと伸びた気糸が火玉たちを捕らえ、確実に弱い場所を狙い撃っていけば早く。
 ひとつ、ふたつ、火玉たちは数を減らしていっていた。
 それでも、火玉の数はまだ多い。
 早く、早く。
 逸る心を抑えるように、攻撃の手は緩めずに。
 敵が減り開ける視界を確かめながら、リベリスタたちは不眠の男の存在を忘れず意識して立ち回り続けた。

 仲間たちが火玉の数を減らしていく中、ななせは目前の不眠の男を抑えるために苦戦していた。
 不眠の男は足は遅いがかなり強靭な様子で、眠れぬ苛立ちからも随分と攻撃的なのだ。
 騒がしい周囲に荒れている様子を確認しながら、ななせは声を張り上げる。
「あなたの相手は、わたし、ですよっ!」
 騒音に不眠の男の攻撃が、仲間に向かってはまずい。そう考えてのことだ。
 力強いオーラを纏い、ななせはそう叫んで雪崩のように不眠の男へと連続攻撃を仕掛ける。
 少しでも長く、不眠の男を押さえ込まなくてはならない。
 その思いから成された強い攻撃が、不眠の男の身体を抉った。
「ぐ、ぅぅぅ……」
 低い、とても低い呻くような声だった。
 アンデッドと化した男は、時間が経てば経つほどに思考さえ凍り、もう喋ることもできないのかもしれない。
 獣のように呻く声で不眠の男は顔を顰め、そして。
 不眠の男は、ななせを狙って、その冷たい腕を振り上げた。
「きゃあっ」
 男によるその攻撃はひどく重く、冷たい。
 凍て付くような鈍痛に悲鳴を上げ、その後。ななせはふと、自分の足元が凍っていることに気付いた。
 いつの間にやら、冷たい氷が足元を覆っていたのだ。
 そのあまりの冷たさに息を呑み、そしてななせは慌てて不眠の男を見る。
 このままでは抑えきれずに、騒音の中心、火玉と戦う仲間の方へ不眠の男は向かってしまうだろう。
 どうすれば――そう、思ったときだ。
「ななせさん、交代をしましょう」
 ガントレットを光らせたレイがすぐさまに駆けつけ、ななせへと役目の交代を申し出たのだ。
 いつでもすぐに入れ替われるように距離を保っていたからこその、迅速な対応だった。
 そうして、その声にななせがそっと頷けば。
 その瞬間、抑え役という役目の交代が今此処で確かに行われたのだった。

●凍てつく夜
「状況確認。『シビリアン』、鎮圧行動に入ります」
 後方から周囲の状況を絶え間なく観察していたノアは、ラストスパートを駆けるべくそう言ってヘビーボウガンに手をかけた。
 不眠の男が抑えられている間にも、火玉の数は随分と削られていっている。
 視界を埋め尽くすほどにいた火玉も今は少なく、小さな火玉が漂うばかりだ。
 ここまで来たのなら、あとはもう一息。しかし、油断はせずに。
 素早い動きで残り少ない火玉たちに狙いを定めたノアは、そのまま光り輝く光弾を発射する。
 その光弾は、周囲の多くの火玉を巻き込むように撃ち込まれ、そうして、またいくつかの火玉が消えていった。
「あと、もう少し……ブリリアントさん、お願いしますっ!」
 仲間を振り返り、ノアがそう告げれば。心得たと言うようにブリリアンとは頷き、そして笑った。
「うむ、任された。無限機関、始動! 戦斗機動! TEAM筆頭、石川ブリリアント! 推して参るぞ!」
 自信に溢れた笑みを浮かべたブリリアントは、宣言する。
 狙うのは、仲間たちが削りに削り、既に弱りきった残りの火玉だ。
 数にして、もはや小さな火玉ただひとつ。
 それでも、確実に叩き潰すのが役目だと言うならば、徹底的に叩き潰すのみだろう。
 Dreihänderを構えたブリリアントは、そして裂帛の気合と共に、爆発するほどの闘気を一撃に込めて振り下ろした。
 そうすれば。もう、火玉の姿はどこにもない。
 最後の火玉ひとつも、残すことなく余すことなく撃破したリベリスタたちは、そして。
 残る不眠の男を撃破するべく、戦場を駆け抜けた。

「ぐ、ぐ……ぅぅ、ぅ……!」
 不眠の男の唸り声が、低く響き渡る。
 仲間のためにも、そうして不眠の男を抑えていたレイは幾度にも渡る攻防の果てにひどく疲弊していた。
 火玉を残らず撃破し、すぐさまに駆けつけたリベリスタたちはその様子を見て、すばやく回復を行った。
 麻衣による天使の息は疲弊した体力を癒してゆき、苦々しい表情にもいくらかの明るさが戻る。
 不眠の男をひとりで抑えこむことはひどく苦労したが、それでも全員で掛かれば何も怖いことなんてないのだ。
 それぞれに得物を構えなおしたリベリスタたちは、そうして戦闘を再開した。
「そろそろ眠くなってきたんじゃねえの?」
 ふらり、ふらりと緩慢な動作で動き続ける不眠の男に、プレイフェザーは不適に笑う。
 確実に人体の急所へ狙いを定めた攻撃に、容赦なんてない。容赦なんて必要がないのだ。
 不眠の男が加害者であり、エリューションであり。何より、再び眠りに着くことを望んでいるのならば。
 だからこそ、リベリスタたちは更なる攻撃を与え続ける。
「一気にいっくよーっ!」
 双葉が声高らかに言えば、血色の黒々しい鎖を操り、そして不眠の男を縛り付けた。
 身動きを封じられた不眠の男は身じろいでもがくが、その呪縛は男を捕らえて離さない。
 これを好機と見たのか、リベリスタたちの猛攻は更に凄まじいものとなった。
「ここからは全力全開ですっ!」
 持てる力すべてを搾り出すように。攻撃は続く。
 まさに畳み掛けるような連携の取れた攻撃たちは、着実に不眠の男の体力を削っていっていた。
 そうして。
 ふらり、不眠の男の姿が僅かに傾く。
 冷たいその手には既にシャベルを握るほどの力もなく。
 微かに合わさった視線に、最後、レイは距離を詰めて燃えさかる炎を纏ったその拳を振り上げる。
 寒さも、冷たさも、最後くらいは感じなくていいように。
 抱き締めるような炎は、そうして不眠の男を暖かに包んで。
 そして、終ぞ不眠の男は地に伏した。
 彼が起き上がることは、おそらくもうないだろう。
 どさりと音を立てて、やっと土に眠った彼は、どこか穏やかな顔をしていたように見えた。

●インソムニアの夜明け
「最後に派手にやらかしちまいましたが、もうお騒がせはいたしません」
 だからどうか、ゆっくりと深い深いまどろみの中で眠っていて。
 少しだけ壊れてしまっていた墓を直して、僅かばかりの花で飾って。
 墓の前で手を合わせたリベリスタたちは、そっと願う。
 取り戻した静けさの中で、不眠の男がずっと眠っていられるように。
 もう誰も、土の下から起きてしまわないように。
「今度こそ永久の静かな眠りについて、安らかでありますように……」
 夜は深く、星が瞬く空の下。
 眠れない夜は、もう来ないだろう。
 深い深い眠りが、きっと彼の凍て付いた心も癒してくれるはずだ。

 リベリスタたちはそうして、最後に一礼を済まして、その場を後にする。
 静けさに包まれたここは、あくまでも彼らのための場所だ。
 生きているなればこそ、自分たちのあるべき場所に帰らなくては。
 そうして僅かな笑みを交し合いながら、リベリスタたちが過ぎ去れば、寂れた墓地は元の通り。
 ただ、人足遠のいたその場所で。
 久しぶりに飾られた、小さな花だけが風に揺れていた。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
以上、眠れないアンデッドさんのお話でした。
眠りたいのに眠れないというのは、中々どうして困りものです。
ぐっすり安眠できる幸せを噛み締めて。お疲れさまでした。
判定は成功判定になります。ご参加、ありがとうございました。


MVPはプレイング情報を基準に選定させていただきました。