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見つめている

●兵の夢の跡地
「ホラ、例の車、そこにあったんだってさ」
「え、そうなんだ」
 陽が大きく傾いた夕暮れ時。2人の女子高生は車道沿いの歩道で足を止め、右に視線を振った。
 その先にあるのは、歩道に隣接した月極駐車場。隣接と言っても、駐車場の方が2メートル程低い位置にある。落下防止用の柵に手を載せると、彼女達はとある駐車スペースに目を留めた。
「まあ、確かにあそこからならバッチリ覗けるよね」
「車ん中から覗くとか何考えてんだろ? マジキモいわー」
 歩道のすぐ傍にあるその駐車スペースを見つめながら、苦笑いを滲ませ、また吐き捨てる様に言う。その脳裏には、一台の車が浮かび上がっていた。
 黒塗りの、何の変哲もない、何処にでもある様な普通の車。風景に紛れていたその車の中で、とある不届き者が頭上の歩道を歩く女子高生のスカートの中を覗いている――という噂が彼女達の耳に入ったのは、ついこの間の事である。
 その噂は、後に事実である事が判明した。最新の情報では、その不届き者は無事捕まり、車も駐車場からも叩き出されたとの事だ。
 ふう、と片方の女子高生が溜息を吐いた。
「て言うか、この柵に板付けて下から見えなくして欲しいんだけど」
「その前にスカート長くしろって言われそうだけどね、先生に」
 その言葉に互いに笑い合うと、彼女達は駐車スペースから目を逸らした。
「まー良いや。取りあえず不逞な輩は居なくなったんだし」
「だね。――じゃ、そろそろ行こっか」
 そして、再び歩き始める。他愛のない会話を交わす2人の姿は、やがて遠くに消えた。

 彼女達は気付かなかった。
 駐車場の端に刻まれた影の中に、自分達を見上げる者が居た事に。

●執念の残滓を砕け
「基本的に紳士ね、その覗き魔は」
 表情の薄い瞳を自らの前に集まったリベリスタ達に向けると、『リンク・カレイド』真白イヴ(ID:nBNE000001)はぽつりと呟いた。
「決して相手には手を出さなかった。全てをその車の中で完結していたみたい。……それ以上の事には触れないでおくけど」
 知らぬが仏。そこで言葉を切った彼女に、リベリスタの一人が気が進まないと言った様子で眉を寄せた。
「で、今回の敵はその覗き魔なのか?」
 質問の声に、イヴは小さく頭を振った。
「ううん、今回の敵はエリューション・フォース。覗き魔の執念がエリューション化したモノよ」
「は?」
「今言った通り。覗き魔の執念が半実体化したエリューション・フォース。それが、今回の敵」
 淡々とした声色で放たれた言葉に、リベリスタ達の間に微妙な空気が漂った。
(覗き自体アレなのに、ンなもん残すなんて傍迷惑な)
(て言うか、どんだけ覗きたかったんだよそいつ)
 そう言わんばかりの表情を浮かべるリベリスタ達を、イヴは色の変わらぬ瞳で見つめた。
「本体と同様、今のところ対象に手を出す事はしていないわ。けれど、それは現段階の話。悪い方向に転がる前に、対処して欲しいの」
「……情報は?」
 肩を竦めながら、リベリスタが問う。イヴは彼を含めたリベリスタ達へと視線を巡らせた。
「姿は、人型。中肉中背で、闇に塗りつぶされてる見たいに真っ黒。普段は物陰等に隠れてて、歩道の上に獲物が現れたらそっとその傍に移動する。四六時中、そんな感じね」
 その行動に夜も昼も無い。たとえ夜闇の中でも、『それ』には関係ないのだ、とイヴは言う。
「夜になれば、少しだけ行動が大胆になるみたいね。夜闇に紛れる事が出来るから」
「夜闇、か。見え難くなりそうだな」
「歩道には街灯もある。『それ』は影では無いから、完全に見えなくなる事は無いわ」
 不安なら何かしらの対策をするべきね。そう言われて、リベリスタ達は納得する様に頷いた。
「性格は臆病。でも、追い詰められたら自棄になるタイプの様ね。覗き魔もそうだった様だけれど、覗き魔と違うのは、積極的に力を振るってくる点。力自体はそう強いものでは無いわ。……精神的にダメージを受ける事もある、かも知れない、けど」
(精神的ダメージ……?)
 僅かに視線を逸らすイヴに、リベリスタ達の間に若干の嫌な予感が走る。
「……大丈夫なんだよな?」
「きっと、大丈夫。油断しなければ負ける事は無い、はず」
 心配なのはそっちじゃない。その言葉を呑み込みながら、リベリスタ達は頷いた。そんな彼等の内心をよそに、イヴは僅かな間視線を宙に泳がせた。そしてすぐにリベリスタ達へと再び向ける。
「情報は以上よ。お願い出来るかしら?」
「まあ、女子高生をこれ以上怖がらせる訳にはいかないからな。何か不安な部分もあるけど……いっちょやりますか」
 その答えに合わせる様に、リベリスタ達に笑みが浮かぶ。それを見つめるイヴの口元に、淡い笑みが滲んだ。
「有難う。それじゃあ、お願いね。期待しているわ――」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:高峰ユズハ  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年04月17日(日)23:45
実際の事件では、直後に柵に目張りが設置されていました。高峰です。
以下に情報の補足を記します。

■現場
位置関係を文字で並べると『車道/歩道/柵/駐車場』で、柵と駐車場の間に2メートル程の高低差がある感じです。
坂道を行き交う人は、朝夕の通勤通学時間帯は増えますが、それ以外は疎らです。車も時折通る程度です。
駐車場には車は数台しか停められておらず、また歩道に近い辺りには車は無い為、戦闘には支障は無いでしょう。

■エリューション・フォース
姿形は覗き魔そのものです。但しOP通り真っ黒で、表情を窺う事等は難しいです。
制服を着た女子高生が好みの様です。好みの対象を優先して襲う性質があります。
攻撃方法は以下の3つになります。
【風】対象を切り裂いたりスカートを捲ったりします。
【不気味な笑み】顔の部分に笑みが浮かびあがります。覗き魔そっくりです。ダメージはありませんが、『ショック』が付与される可能性があります。
【ダイブ】強く地を蹴り、相手に抱きつきます。相手によってはさすさすすりすりします。ダメージに『怒り』が付与される可能性があります。
ある程度の意思疎通は可能ですが、説得等は難しいでしょう。

■覗き魔
既にとっちめられ済みです。
イヴは彼に関しては情報を持ち合わせていません。接触等は不可能と考えて下さい。

コメディなお話を想定していますが、プレイングの内容によってはその限りではありません。
それでは、宜しくお願いします。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
プロアデプト
歪 ぐるぐ(BNE000001)
インヤンマスター
朱鷺島・雷音(BNE000003)
ナイトクリーク
星川・天乃(BNE000016)
クロスイージス
深町・由利子(BNE000103)
ナイトクリーク
神無月・優花(BNE000520)
プロアデプト
エレアノール・エレミア・エイリアス(BNE000787)
ホーリーメイガス
隠 黒助(BNE000807)
デュランダル
千早 那美(BNE002169)

●ランデブーは突然に
 春の陽気に包まれた昼下がり。緩やかな坂道を、とある男性が下っていた。
 普段から少ない人影は、今は殆ど無い。そんな中、彼はひとり歩いていたのだが――その足は、坂の中程で突如止まった。
 彼の視線の先にあったのは、坂の奥より彼の方へと歩く女性の姿であった。
 三高平高校の制服に身を包み、悠然と歩く。これだけならば、何の変哲もないと思えるだろう。しかし彼の眼は、拭いきれない違和感を感じ取っていた。
(女子高……生?)
 顔立ちだけであればそう見えなくも無いかも知れない。しかし、制服の下にありながら主張の激しい豊満な肉体と色香が、その思いを帳消しにしていた。
 ただの趣味だろうか。いや、事情があっての事だろう。まさか何かしらの撮影――彼の脳裏を巡った考えは、やがて霧散した。
(アリだな)
 守備範囲から外れているにも拘らず、彼はそう確信した。未知の状況との遭遇に新たな扉が開いたのだろうか。すれ違った時に漂った香りを吸い込みながら、彼はその背を見送った。
 彼の一連の気の迷いが、女性――『サイバー団地妻』深町・由利子(BNE000103)が放つ『テンプテーション』に惑わされた故である事に気付かぬままに。

●女子高生(?)達の共演
 由利子の到着により、今回の任務に当たるリベリスタ達の集合が完了した。彼女達は早速、『威風凛然』千早 那美(BNE002169)の提案により現場の下調べを開始した。
 来るべき戦いに備え、周囲へと注意を配り情報を収集する。しかし、そんな彼女達の間に流れる空気はほのぼのとしたものであった。
「わー、由利子さん色っぽーい♪」
「セクシーなのだ!」
 『Trompe-l'œil』歪 ぐるぐ(BNE000001)と『百の獣』朱鷺島・雷音(BNE000003)に言われて微笑みながらも、由利子は溜息を吐いた。
「んー、でも少しサイズが小さいみたいなのよね」
 聞けば、娘の制服だと言う。驚く皆に、一度着てみたかったのよねーと彼女は満足げに笑った。
 対するぐるぐと雷音は健康的な制服姿である。雷音は更にスカートの下にスパッツを装備しているという鉄壁ぶりだ。ぐるぐも同様に、露出を意識せず可愛らしく纏めていた。
(年齢は兎も角、体格的にぐるぐさんは対象外だろうしね。此処は皆さんの女学生姿、即ちハーレムを楽しむべきっ)
 そんな事を思いながら、ぐるぐは密かに拳を握った。
「例の性癖さえ無ければ、白衣ひとつで来れたものを……」
 自らの制服姿を見回しながら、『まっどさいえんちすと?』エレアノール・エレミア・エイリアス(BNE000787)がぼやいた。
 メリハリの利いた肉体を包む制服は、由利子同様サイズが合っていない。白衣で若干インパクトは和らいでいるものの、それでも窮屈そうな胸元やスカートの短さは隠せていなかった。
「足元がすーすーして落ち着かぬな……」
 『二等兵』隠 黒助(BNE000807)が自らの足をさする。普段は神事服である彼女にとっても、短いスカートは慣れないものであった。
 そんな彼女達の先を行きながら辺りを見回していた那美が、仲間達へと向き直った。
「周囲に人影は無いわ。仕掛けるなら今ね」
 凛とした声に、リベリスタ達が頷く。人通りのまばらな時間帯であり、更に『結界』がある。人が立ち入る可能性は低いが、決して0では無いのだ。
「作戦通り、まずは全員で。引っ掛からなければ前衛だけで、ですね」
『追憶の蜃気楼』神無月・優花(BNE000520)に促される様に、リベリスタ達はまず全員で現場である駐車場の傍へと歩み寄った。
 友人達が仲良く会話をしている体を装いつつ、密かに駐車場の様子を窺う。しかし、変化は見られなかった。
(――ハズレ、ですね)
 溜息を吐いて、思考を切り替える。前衛以外の者に柵から離れて貰い、自らはその場に残った。
 柵に寄り掛かる様にして立っていると、スカートが風に揺れるのを感じた。
(恥ずかしくない、恥ずかしくない、これは仕事なんだから……!)
 隣に立つ那美は僅かに俯いている。セーラー服の下は、白無地の下着とガーターストッキング。見られる前提のそれに、湧き上がる羞恥と戦っていたのだ。
 必死に表情を作り、無防備を装って空を見上げる。その横で、あ、と声がした。
「居ました、あれです」
 優花の指先を目線で追う。確かに歩道側の壁際、その影の中に蠢く黒いものがあるのを那美は見た。
 それと同時に、『ゼログラヴィティ』星川・天乃(BNE000016)が柵の上に飛び乗った。
『ハイバランサー』により鋭敏化した平衡感覚で仁王立ちとなる。背まで伸びるツインテールと極限まで短いスカートが風に靡き、下着を見られるのは癪だからと代わりに穿いたブルマが見え隠れした。
 その姿に、エリューション・フォースの動きが固まったのが見えた。
「何という、無駄な執念……でも、それも終わり」
 びし、と天乃がエリューション・フォースを指差す。
「覚悟、して」
 そう宣言すると彼女は柵を蹴り、駐車場へと降り立った。仲間達も後を追う。
 戦いの火蓋は、こうして切って落とされた。

●セクハラはダメ、ぜったい
 リベリスタ達は、壁と挟む様にエリューション・フォースを包囲した。逃走を防ぐ為である。間合いを詰める彼女達に、エリューション・フォースは情けない程に身を縮ませた。
「な、何なんだ君達はっ」
「あらぁ、身に覚えはあるんじゃないかしら?」
 ふふと笑う由利子に、黒助が続く。
「女子のスカートの中を覗く等不届き千万! ……本当は本人をとっちめてやりたい所じゃがな」
「此処を通る人達の為にも、放っておく訳にはいかないのだ!」
 更に雷音が言い放った。それに動揺したのか、エリューション・フォースは挙動不審な動きを見せた。
「そ、そんな……俺は怪しくない、怪しくないよー」
 その顔に不気味な笑みが浮かび上がる。それを、雷音は見た。
「……っ!」
 突如湧いた不快な感情に意識を塗り潰されるのを、彼女は寸前で耐えた。
「兎に角、君の運命は此処までなのだ。覚悟するのだ!」
 素早く印を結ぶ。生み出された防御結界は瞬時に展開を終えた。
(皆が少しでもダメージを受けない様にするのが、ボクの役目だ)
 あの程度で惑わされる訳にはいかない。結界を見つめながら、雷音は気を引き締めた。
「成程、成程――さて」
 結界に視線を走らせていたエレアノールは、やがてひとつ頷いた。
「執念の半実体化とは実に興味深いものだな、君。折角の機会だ、思う存分観察させて貰うぞ」
 『コンセントレーション』の発動と共に浮かんだ不敵な笑みに、エリューション・フォースがたじろいだ。
 その僅かな隙を見切ると、天乃は全身に力を走らせた。
「動か、ないで」
 紡がれた気の糸は鋭く伸び、エリューション・フォースを雁字搦めに縛り付けた。
「ぐぐっ……君達がそのつもりなら、やるしかない!」
 身を捩りながら、エリューション・フォースが右腕を伸ばす。纏わりついた風は、気の糸を千切りながら天乃へと走った。
 風は、横へ跳躍した天乃の制服のみを僅かに切り裂いた。
(動きを上手く読まないと、危ない、ね)
 数の優位や回復手段があるとは言え、安心するには至らない――後方へと去った風の残滓を見つめながら、彼女は息を呑んだ。
 そんな中、ぐるぐは『コンセントレーション』を発動させながら笑みを浮かべた。
「ところで影っちは誰が一番好みなの?」
「えっ」
 問われて、エリューション・フォースが固まる。
「いやそんな、言えないって」
「えー? どうせだから言っちゃえ言っちゃえ!」
 興味に満ちた瞳で囃したてる。エリューション・フォースは暫し唸り悩んで――突如地団駄を踏んだ。
「此処で言えるだけの度胸があったら、俺は今頃リア充うはうはだったよっ!」
「魂の叫びだねー……」
 ぐるぐが同情の滲んだ視線を向けた。
「そのひん曲がった根性……嫌いじゃないわ」
 込み上げる嫌悪感を抑えながら、那美が呟いた。それは彼女の癖であり、半ば無自覚だったが――エリューション・フォースは素早く反応した。
「嫌いじゃない? そ、それって」
「変な意味じゃないわよ?」
 即答に、エリューション・フォースは右腕に風を這わせた。
「期待させやがってー!」
 那美が回避を図るより早く、風が到達した。肉体の痛みよりも、制服に幾筋にも傷が刻まれた事に彼女は目を剥いた。
「この制服、少し前に袖を通したばかりなのよ……それなのに!」
 彼女の身体から眩しい程の輝くオーラが迸る。放たれた鋼糸が、エリューション・フォースは幾重にも締め上げた。
「絶対に許さない!」
「ごめんなさっ、ごめんなさあああ」
「ふむ、どうやら被嗜虐趣味も持ち合わせている様だな」
 ほんのり恍惚の響きが混じる悲鳴に、エレアノールは小さく唸った。
 その傍では、ぐるぐと雷音が子供だから分からないと言いたげな表情で小首を傾げていた。
 地を転がるエリューション・フォースへと、優花は一気に間合いを詰めた。気の糸がうねりながら伸びる。しかしそれは、僅かにずれた場所に着弾した。
「危ない危ない……あっ」
 優花の動きに煽られて膨らむスカートとその奥の情景に、エリューション・フォースが声を漏らす。優花の眼に、顔に浮かんだ不気味な笑みが映った。
「っ……!」
 全身に悪寒が走り、動きが鈍る。次に彼女が見たのは、眼前に迫るエリューション・フォースだった。
 ダイブは腰に着弾した。そのまま押し倒され、強かに背を打つ。痛みに意識を取られた僅かな間に、エリューション・フォースの手が肌を滑った。
 膝裏から太股の表へ、形をなぞる様に撫でる。その動きが何処か緩やかなのは、単に作法を知らない為であったが――今の優花には、それに構うだけの余裕は無かった。
「やっ、あ……」
 恥辱にぎこちない指の動きが生むもどかしさが滲んで、感情が昂る。エリューション・フォースの指が更に動き、最奥に触れようとしたその瞬間――
「こらっ、女の子に何て事をするの!」
 叱咤の声と同時に、由利子が強い光を放つ。十字を象った光は真直ぐ伸び、エリューション・フォースを貫いた。通常よりも強烈な一撃に、その身体は優花から剥がされる様にして転がった。
 そこに、更に式神の鴉が襲い掛かる。
「何だかよく分からないけど、これ以上はダメなのだ!」
 雷音が符術によって生みだしたそれに傷を抉られ、エリューション・フォースは身悶えした。
「ほんに面倒な相手じゃのぅ」
 呆れた様に言いながら、黒助は首元のアクセス・ファンタズムに指を触れた。
「――オンアボキャベイロシャノウ、マカボダラマニハンドマ、ジンバラハラバリタヤ、ウン」
 清らかなる存在に語り掛ける。やがて、それに応える様に福音がリベリスタ達へと降り注いだ。
 傷が癒えたリベリスタ達とエリューション・フォースとの攻防は続く。当初は対等に渡り合っていたエリューション・フォースであったが、しかし時間が経つ程にそのキレを失いつつあった。
『超直感』により研ぎ澄まされた勘が、ぐるぐにそれを告げた。
「影っちもそろそろ疲れてきてるみたいだね~?」
 顎に指を当てながら呟く。エリューション・フォースは動揺を見せた。
「そ、そんな事無いけど?」
「ふっ、強がってもこのぐるぐさんの目は誤魔化せないのだっ」
 びしりと指差しながら、ぐるぐが胸を張る。
「さーて、ぐるぐさんもそろそろ頑張っちゃおうっかな♪」
 活性化した思考回路で弱点を導き出し、狙いを定める。鋭く発射された糸は回避の試みすら読み切った様な軌道を描き、エリューション・フォースの右腕に突き刺さった。
「ぐ……」
 右腕を押さえながら、エリューション・フォースが呻く。じりじりと後退するその身体が壁に付いた瞬間、それは地を蹴った。
 攻撃では無く、逃走。しかしその身体は、すぐに地に叩き付けられた。
「ふっ、お見通しさ」
 エレアノールが仕掛けた気糸の罠に囚われたのだ。麻痺に強張るエリューション・フォースに向けて、エレアノールは更に気の糸を発射した。正確な発射で右腕の傷を抉る。
 迸った悲鳴に、彼女は肩を竦めた。
「君を観察出来るのももうじき終いかね。名残惜しいが、仕方が無い」
 言葉が終わるよりも前に、優花が身体に禍々しい程の黒いオーラを纏った。
「ひっ……」
 それを目にしたエリューション・フォースが、麻痺した身体を引きずる様に後ずさった。
「ごめんなさい、ごめんなさい、許してぇっ!!」
 哀願を聞く事無く、優花はオーラを放った。蠢きながら伸びたオーラは、エリューション・フォースの頭部に強烈な一撃を叩き込んだ。
 悶絶するそれから目を逸らすと、黒助は足元に魔法陣を展開した。
「もう遅いわ、馬鹿者」
 生成された魔力の矢に穿たれたエリューション・フォースがその形を崩し始めた事に、黒助は気付いた。彼女の瞳に憐憫が滲んだ。
「本人の方は、その執念を別の方向に向けられればまだ更生の余地があるかも知れんが――」
「これは、ここで、おしまい」
 言葉を継ぐ様に放たれた天乃の冷ややかな宣告は、気糸が空気を裂く音に遮られた。雁字搦めに縛り付け、締めあげる。断末魔の叫びが響いた。
 気糸が解けた頃には、エリューション・フォースの姿は空に溶けて消え去っていた。

●思い出を見つめる為に
 静けさを取り戻した駐車場。暖かな春の光に満たされる中、リベリスタ達は優花の提案により片付けを行った。元々車もまばらな場所だ。傷ついた物は皆無であった。しかし、戦闘の痕跡は残さない方が良い。そう考えての事だった。
 大方片付いたのを確認すると、ぐるぐがぱっと手を挙げた。
「それじゃ、これから街に遊びに行く人ーっ」
 この後、制服のまま街へ繰り出す。事前に提案されていたそれに反対する者は無かった。
「ふむ、構わぬぞ」
「ボクも勿論OKなのだ!」
 黒助が頷き、雷音が手を挙げる。その背後で、エレアノールはにやと笑った。
「成程、楽しそうだな。是非参加させて貰おう」
 エリューションに関わる全てが研究対象である彼女には、真の目的があったが――それはまた別の話である。
「私も参加するわ。バイトの時間までだけれど」
 自らが持っていた予備の制服に着替えた那美の傍で、天乃はこっそりと手を挙げた。
「行って、良い?」
「勿論ですよ!」
 優花の答えに、天乃は表情の薄い顔に笑みを滲ませた。
「制服で、ね――」
 仲間達の遣り取りを目にしていた由利子は、心にほろ苦いものを感じた。制服を着たまま遊びに繰り出す。そんな日常を経験出来なかった当時が脳裏を過ったのだ。
 彼女は俯き、小さく頭を振って感傷を振り払った。
(折角だから、楽しまなきゃね)
 そう考えた彼女に、駐車場の外へと向かう仲間達が声を掛ける。笑みを返すと、彼女は仲間達を追ってその場を後にした。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
まずは、皆様お疲れ様でした。そしてご参加頂き誠に有難うございました。

皆さんのプレイングを拝見した時はヤッチマイナーと天の声が聞こえたものの、取り上げるネタの選別は大変でした。出来れば拾ったネタ全てを詰め込みたかったのですが、結局幾つかのネタを泣く泣く削る事に……。
そんなリプレイですが、お楽しみ頂ければ幸いです。

またご縁がありましたら、その際は宜しくお願いします。
高峰でした。