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王と料理とリベリスタ

●王様と晩餐
 両開きの扉を抜けると、何とも言えない空間だった。
 キッチンだ。それは確かにキッチンなのだ。
 調理台の上には手入れの行き届いた調理器具が整然と並べられている。
 使う人の動線まで考えてあるのだろう、あまりにも素晴らしいキッチン。
 カッと音がして、スポットライトが上層を照らし出す。
 リベリスタたちの間に、にわかに緊張が走る。
 そのスポットの中央――フロアの先には、大きな、そして荘厳な玉座があった。
 玉座には、黄金に輝く冠を頭に抱いた王が座し、静かに時を待っている。
 上質な燕尾服に白の蝶タイをしめた執事がスポットライトの中を歩み、王に一礼する。
 そしてリベリスタたちを見下ろすと、右手を挙げ、高らかに宣言した。

「ぶひっ!(料理開始!)」

●料理の超人
 さかのぼること丸一日。
「ぶた、好き?」
 ウサギのポーチを抱えて『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は問う。
 何を言い出すのか分からないのはいつものこととして、豚と来た。
「豚によく似たアザーバイド」
 彼女の合図で映し出されたのは、どう見ても服を着た豚。
 目が小さくてまん丸く、ぬいぐるみのような、すさまじく愛嬌のある顔である。
「かわいいけど、見た目に騙されないで。かわいいけど」
 2回言うイヴ。
「このアザーバイドは、美味しい物に目がないの。そして、美味しい物を食べつくす」
 おそらく、だが。そう前置きして、イヴは説明を続ける。
 自分たちの世界の食べ物に飽きた彼らは、さまざまな世界を巡り、美味しい物を探しているのではないだろうか、と。
 ――そして、彼らにとって、この世界の料理は相当美味しかったらしい。
「わかってるのは、彼らは料理人たちをリンク・チャンネルの向こう側に集めて、自分たちのために料理をさせるということ。
 満足するまで食べれば、また去っていくと思う。もしくは――料理がおいしくないと思うか」
 そこまで言ってイヴはリベリスタたちを見回した。
「リンク・チャンネルが開く場所まではアークが送り届ける。頑張って」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ももんが  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2011年06月08日(水)22:17
ぶた好きですか? ももんがです。
アザーバイドを追い払ってください。

以下詳細

●ぶたバイド
 どうみても服着て二足歩行してるブタ。
 美味しいものが大好きです。
 どういうわけか、2チームに分けて料理を競わせます。
 もしかしたらこれが、この世界の料理に対する礼儀だと思っているのかもしれません。
 決して攻撃的ではありませんが、ものすごくよく食べます。
 あと、言葉は通じませんし、現在のリベリスタたちが戦って勝てる相手でもないです。
 満足するか、もう嫌だとなるかすれば、ぶたバイドは去るでしょう。

●料理勝負
 勝利しても何も出ません。
 敗北しても何も出ません。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
桜小路・静(BNE000915)
覇界闘士
宮藤・玲(BNE001008)
ホーリーメイガス
臼間井 美月(BNE001362)
クロスイージス
ケイティ・ノース・ノース(BNE001640)
プロアデプト
如月・達哉(BNE001662)
マグメイガス
丸田 富子(BNE001946)
デュランダル
降魔 刃紅郎(BNE002093)
デュランダル
一番合戦 姫乃(BNE002163)

●邂逅
 扉を開いたぶたバイドたちが最初に見た光景は『百獣百魔の王』降魔 刃紅郎(BNE002093)の姿であり――ぶたバイドたちは大いに驚くこととなった。抑えきれぬ威風があたりを払うことのないよう気を使った刃紅郎の、その身にまとうはモルぐるみであった。
 赤いマントを翻し、そのかいなにはぬいぐるみを抱いて、モルぐるみは朗々と宣言したのである。

「我の記憶が確かならば――異世界の王よ、貴様らの望むものを、我らは用意したはずだ。
 さあ、この地にて、食と言う名の異文化交流をなそうではないか!」

「ぶひっ」
「ぶぶぶ、ぶぶー」
「ぶっぶぶー」
 警戒するようにわらわらと出てきた中型犬程の、王や執事より小さめのぶたバイドたちがリベリスタを取り囲む。各々が手に先割れスプーンの大きなものを持ち、どうやらそれは攻防一体の武具のようだ。
「ぶたバイドの召使い――ぶた使い?
 何だか可愛いらしい、ぶたバイドさんはお腹が空いてるですか。
 うんうん、ケイティさんにお任せあれ。皆で協力して満腹にして差し上げましょう」
 ピエロメイクのケイティ・ノース・ノース(BNE001640)がそう言いながら胸を張って頷く。
 ぶた使いたちは聞きとれた満腹と言う言葉に反応し顔を見合わせ、やがて王バイドが鷹揚に片手を挙げ頷くのを確認すると、おずおずと先割れスプーンを下ろした。
「ぶぶぶっ?」
「ぶぶー」
 さらに数匹のぶたが『駆け出し冒険者』桜小路・静(BNE000915)の抱えた大荷物に興味を示す。
 中には彼らが自前で用意してきた強力な調理器具と、山ほどの食材が入っていた。
「ぶー♪」
 転がり落ちた赤いパプリカをくんくんと嗅いだ後、うっとり顔で抱えるぶたさん。
「こら、行儀悪いだろ? まあ一個くらい、いいか。サービスだ」
 荷を置いた静は笑ってぽんぽんとパプリカぶたの頭を軽く叩き、ぎょっとして自分の手を見た。
 柔らかそうな見た目に思わず普通の豚の感触を想像したし、確かに柔らかい。
 だが、たとえば空気のほとんど抜けたゴムまりを潰そうと考えた時、一体どうすればいいだろう?
 つまりは、そういう感触なのだ。
「なるほど……これは、今の俺たちじゃ戦っても勝てないって言われるわけだね」
 それを見ていた『天翔る幼き蒼狼』宮藤・玲(BNE001008)が、静の服の裾をつかんだまま茫然と呟く。

 とにもかくにも。リベリスタたちはぶたバイドの警戒を解くことに成功したのであった。

●茶会
「現実は砂糖菓子ほど甘くはないが」
 そう言って黒のギャルソンエプロンを締めた『テクノパティシエ』如月・達哉(BNE001662)が、サングラスをかけ直しながら口の端を挙げる。
「こんな晴れ舞台で料理が出来るなんて光栄だねぇ。
 たまにはこういうのも、悪くないねっ」
 達哉の言葉に頷き料理は愛情と大書されたエプロンをモルぐるみの上からきゅっと結んだ『三高平の肝っ玉母さん』丸田 富子(BNE001946)も、いつもより気合が入っているように見える。
「料理人のリベリスタは数が少ない。その中でも丸富食堂の主と戦える……これほど心躍るものはない!」
 達哉がぶたバイドの王と富子に、このような機会への感謝を込めた握手を求める。
 ここに料理勝負の火ブタが切られた。

 リベリスタたちは事前の相談で、料理勝負を洋風チームと和風チームに分けることを決めていたのだが、その結果どーゆーわけか性別が偏っていた。
 まずは洋風チーム。達哉を筆頭に、静、玲。
 そして和風チーム。富子、ケイティ、そして。
「先ずは卵を割ろ……し、失敗だね、もう一度……あっ」
 ぐしゃ! ばしゃっ!
 開始十秒で卵を2個無駄にした『From dreamland』臼間井 美月(BNE001362)である。
「不器用なのは知ってましたが卵すら割れませんかゴミめ。もう大人しく私の補助に専念して下さい。
 御主人の分際で口答えすんなです。黙って働け役立たず。まずそこ正座。卵を掃除する!」
 美月の幼少時の姿を模した式神が辛辣な言葉を主に投げつける。
 おとなしく掃除するしょぼくれる肩を、ぶた使いがぽん、と叩いて励ました。

 ところで、料理には参加しない者が二人いた。
「王である我が料理をするのも変な話だろう。故に異文化交流における外交を担当する事にした」
 刃紅郎がそう言って示す先。
 いつの間にやら緋毛氈が敷かれ赤い和傘があり桔梗の生け花が飾られ。桃色の夏単衣の着物、袷の帯にふくさをかけた『サムライガール』一番合戦 姫乃(BNE002163)が茶席の準備を整えていた。
 緋毛氈の上に座り、身振り手振りを付けてぶた王に座るよう促す刃紅郎。
 執事バイドが何を無礼なとばかり血相を変えたが、王はそれをいなし刃紅郎の示すように座って見せる。
 王たるもの、妥協や交渉に応じるだけの余裕を持っているものだ。
 ぶた王と刃紅郎、互いの威風が言葉など不要とばかりに通じ合うものを見つけたのだろう。
「料理前に余興として抹茶を点てて見せるでござるです。茶会には精神交流の面もあるでござるです。
 刃紅郎と豚さんにはまず精神交流をして貰うでござるです」
 そう言って、和菓子と手ずから立てた濃茶を出す姫乃。
 その茶器から刃紅郎が三口半飲み、ぶた王に回す。
 三口半はさすがに通じなかったぶた王がそれを一気に飲み干す。
 ――意図した通りかどうかは定かでないが、ここに一つの交流が確立したことは、間違いなかった。

●幕間
 腕まくりした静の、愛嬌のある雰囲気に少し似つかわしくないほどに引きしまった二の腕。
 その筋肉が躍動してパンの生地を山ほどこねたかと思うと、今度は野菜をこれまた山ほど斬り始める。
 元来料理上手なのもあってか、作りまくると決めた静の手さばきは見事なものだ。
 玲はそれを見てうっとりと狼の尻尾を振っている。
「静さんすごいなぁ、さすが俺の王子様だよ!」
「玲にはまた今度作るよ。そっちは大丈夫? 手伝おうか?」
 オリーブオイルと塩胡椒で味付けした肉を炒めながら、照れたように微笑みかける静。
「えーっと、これと、あれと……」
 一応勝負の体裁を取っていることを思い出し、耳打ちする玲の横で、静の顔色が徐々に悪くなっていく。
「……よし。玲、まずはそのマデラ酒のソースから作ろうか」
 玲も料理は得意には違いない。しかしその量を、大量に作るとなると、話は別だと静は思う。
(そんな重労働、俺のお姫様にさせられるか……!)
 うん、まあ、愛の形は人それぞれだよね。

 卵を割る。
 卵を割る。
 切り分ける。
 切り分ける。
 かき混ぜる。
 かき混ぜる。
 完璧なシンクロ作業で富子の手つきを真似る美月。
「このやり方なら僕見たいなミソッカスでも失敗しない。って式神が言ってた。
 ……あれれ、なぜ涙が出るんだろう」
 玉ねぎはまだ切ってないのに、と美月が遠い目をする。
「美月、ちょいと見てごらん。……ほれ、ここでこう切っておけば煮崩れしないで済むんだよ」
「なるほど……」
 まねることはできても、それを後に生かせるかどうかは別の問題である。
 しかし、そこに豆知識やコツがあるならば、それを知っているか否かは大きな違いになるだろう。
 富子が丁寧に教えるコツは、たとえば親子丼ならどれくらいの温度だと玉子がほろりと口の中で解けるかだとか、ほうれん草のおひたしにゴマを和えることが栄養バランスの上でどう大切なのかとか。単純な技術のポイントだけでなく、それがなぜ体に良いのかと言ったことにまで及んでいる。
 時折、静や玲の耳がぴくりと反応したり、達哉が手を止めて視線を向けたりするあたり、すごく重要なポイントも時々交えているらしい。さすがは、というべきか。
「うん、美月、今度はそれを作ってごらんよ」
「えええっ!? でも僕致命的に不器用だから!」
「大丈夫! 一人一人が愛情込めて作った料理に優劣なんてものはありゃしないんだよ」
 からからと笑う富子。

「あ~目が回るように忙しいですよ~」
 暢気な声を挙げて、ケイティが回る。文字通り回る。大玉の上でぐるり360度。
「ぶぶっ」
「ぶぶ」
 ケイティに惜しみない拍手をするぶた使いたちは称賛の目を向けている。
 富子の料理の下準備と盛り付けの合間、つまりは調理中。
 料理に支障が出ないなら、退屈を持て余すぶた使いたちを余興で楽しませるのも一つの手伝いだろう。
 ぶたたちの注意を惹きつけてからケイティは大玉を降り、ノリを手にして向き直る。
「陽気に軽快にお手伝いしましょうっ」
 巻き簾とノリと酢飯を並べ、キュウリレタスチーズマグロその他もろもろエトセトラ。
「手巻き、巻き、巻き、あなたのお好みなんですか?」
 鼻歌を歌いながら巻くケイティを見て、真似をし始めるぶたバイドたち。
「ぶぶぶ、ぶぶ、ぶぶー?」
 鼻歌も真似つつ、楽しそうである。

 ばふっ!と音がして、王バイドの目が真剣に達哉の手元に注がれる。
 ピザ生地は手の上を時々大きく離れて空を舞い、また達哉の手元に戻る。
「作る側も見る側も楽しませるのが、料理対決だろ?」
 パフォーマンスもまた、華よ。
 料理作りも、そろそろ佳境に入りつつあった。

●洋風
 ドライベルモットを食前酒に、茹でたオリーブ、前日から仕込んだハチノスのハーブ煮込み、イカのフリット。ブルスケッタにはオリーブオイルの上からトマトと豆、チーズ、ハーブが乗せられている。パルミジャーノチーズのリゾットと、細長いリボン状のタリアテッレというパスタを使ったボロネーゼ。冷静スープ風に仕立てられたトマトムースの上でブイヨンのクラッシュゼリーがふるふると震えている様は見た目にも涼やかであり、清涼感を呼ぶ。
 オリーブオイルでかりっと焼き上げた甘鯛のポワレは白ワインとバターで作ったソースでアロゼされており、骨付きのラムは岩塩とローズマリーを擦り付けてから炭火で焼き上げ、ほんのり甘いマデラソースを。
 チェリーとマスカルポーネ・チーズのタルトと、型に詰めたパンの中に白桃とババロアを入れて冷やしたシャルロット。食後酒として用意したレモンのリキュールも爽やかに。
 玲の用意したメニューは見た目に鮮やかで、味も素晴らしいものだった。
 そこに静の作ったクロワッサンやらクルミパン、トルティーヤその他各種のパン、巨大な丸皿に花のように盛りつけられた色取り取りの野菜のサラダ、ビーフにクリームのみならず、ボルシチやカレーまで取りそろえたシチュー類。もうこれはどこかの立派な結婚式にでも呼ばれたのかと言うくらい豪勢なことになっている。ウエディングケーキがあったら完璧なのに、と玲が思っていたら静はそれも準備していた。50㎝平方の苺のショートケーキには、チョコやフルーツのソースで描かれた可愛らしいぶた。

「やりきった……! 俺はやりきったぞ……っ!」
 自分の分だけでなく玲の手伝いまでこなした静は、そう叫ぶとばったりと倒れた。
「わっ! 静さん!?」
 玲が慌てて介抱する。

 達哉も凄かった。
「初心忘れるべからず。基本に忠実に作ってみた」
 そう言いながら並べ出すのは発泡の甘口ワイン、アスティ・スプマンテを食前酒に、オリーブオイルとバルサミコソースのマグロのカルパッチョ。スパゲッティナポリタンは横浜のホテルで料理長が考案した当時から伝わるトマトピューレを使用したレシピで仕上げられ、エビとイノンドのラビオリにクリームソースをかけたものは、ラビオリを齧ればイノンドの爽快な芳香が口内に広がる。
 キノコのリゾット、ソーセージを添えたポレンタ(トウモロコシのあらびきをだし汁などで煮上げたもの)にミネストローネスープ。今が旬のスズキを使ったアクアパッツァ(水と白ワインで煮込んだ魚のスープ)。鶏肉に生ハムとセージを乗せたサルティン・ボッカという料理。
 サーモンと海藻のマリネ、マカロニサラダも大量で、さらには合間合間にも手軽に食べられるようにと、ピッツァ・マルゲリータやニンニクとオレガノだけのシンプルなマリナーラ、パニーニもコンビーフとレタス、トマトとツナ、チキンとレモンにレタスのものなども並べて見せる。
「まだあるぞ。パティシエとしてはこっちが本領なんだが」
 デザートにはアマレッティ・モールビディ。これは小麦粉の代わりにアーモンドパウダーを使ったメレンゲ菓子だ。そしてマンゴージェラート。完熟した酸味のない物を選び、その果汁のみを使用した逸品。
 食後酒にブドウの搾りかすから作られた、香り良いグラッパという美酒を並べる。

「作るのを手伝おうかとも思ったんだが」
 ちらりと玲と静を見てから、そんな野暮もできんからな、と続ける達哉。

●和風
 ほうれんそうのおひたし、筑前煮、肉じゃが、きんぴらごぼう、おからとひじきの和え物。
 親子丼、カツ丼、うな重、すき焼き、てんぷらの盛り合わせ、ちらしずし。
 白玉あんみつ、わらびもち、豆大福。
 こうして並べれば、ある意味では洋風チームに見劣りするかもしれない。
 ただし、量だけは尋常ではなかった。
「ぶたバイド達全員に均等に料理が行き渡る様に作れたらいいよね」
 ……深くは語るまい。美月のその言葉が、富子の、ある種の使命感めいた物に火をつけたのだ。

「相手さんが美味しかった、と笑顔で元の世界に帰る事が大事だね。でもできることなら、全員、たらふく食べさせてやりたいね」

 後はもう、烈火の如しである。
 美月とケイティは王たちに給仕する一方、ぶた使いたちを整列させ、順番に料理を行き渡らせたのだ。

 途中、
「ぐっ……我の舌をダメにするつもりか……だがっ!」
 富子に勧められた美月が作ってみた親子丼もどきが紛れ込み、ぶた王の手に届けてはならぬと刃紅郎が苦しむ一幕があったりしたものの。

●勝敗
 気が付けば、リベリスタたちはある町にある廃校舎にいた。
「あれ?」
 膝の上に静の頭を乗せた玲が周囲を見回し、困惑する。
「さて、満腹にさえなれたのなら勝敗にこだわりはなかったのかもしれぬ。
 豚王たちには、我から進行中にメモしていたレシピノートを進呈しておいたが」
 いつの間にそんな事をしていたのか。刃紅郎が玲に見せた写真には、レシピノートを持ったぶた王とともに握手をしている刃紅郎の姿が映っていた。
「次は異界の食材で作られた料理で晩餐に呼ばれたいものだな」
「豚王だけに、12年後だったりして」
 美月がよくわからないことを言って笑う。
「さあ、良かったら皆でお祝いをしないかい?」
 そう言って、机の上に残っていた自分たちの料理を示す富子。
 参加した皆が皆、美味しいと言えることが彼女にとって至上なのだ。
「客を満足させるだけでなく……なるほど。さすがは丸富食堂の主」
 達哉が無上の達成感と感嘆の混ざった声を漏らす。
 ケイティと姫乃は、誰かに呼ばれたような気がして振り返り、顔を見合わせる。
 嬉しそうに赤いパプリカを抱えたぶたが、ぶんぶんと手を振る姿が見えた、ような気がした。

<了>

■シナリオ結果■
大成功
■あとがき■
商標と食欲との戦いでした。ももんがです。

文字数との戦いに私が敗北した為、どうしても描写が薄くなってしまいましたが……
気楽な話にも関わらず「他の」ぶたバイドたちにも食べさせたいという考えは、素晴らしかったと思います。
たくさんのぶたたちに代わって、私から感謝を。ありがとうございました。