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恋話/片道観覧車


「観覧車に乗るの、好き?」
 煙と何とかは高いところが好き、って言うけど――と、『リンク・カレイド』真白 イヴ(nBNE000001)が書類を広げながら聞いてきた。リベリスタが、最後に行ったのはいつだったかと記憶をたどっているのを見ながら、イヴは言葉を続ける。
「今回は――夏の間の怨念退治」
「それが観覧車とどう関係あるんだ?」
 首を傾げたリベリスタの目をまっすぐに見返して、イヴが一冊の雑誌を手渡してくる。その表紙には。
「……『この夏オススメのデートスポットはここだ!』……?」
 発売は今年の7月。なんともまあ、ありがちな煽り方ではある。耳の折り返されたページに気がついて雑誌をめくると、そこにはこう書かれていた。

『新しい恋の前に!? 面倒な相手とオサラバしよう!!』

 有象無象の『縁切り』系の都市伝説で知られた観光名所が並んでいる内容に、うわあ、という顔をしたリベリスタたち。その前で、イヴがしんみりとした表情で頷く。
「ページの企画が、きちんと通らなかったんだと思う。というか、掲載されるレジャースポット側からすればお金もらっても通すわけがない。
 だからそのページに書かれてる場所は、縁切りを扱ってる神社以外はみんなイニシャルか、仮名。
 ――でも、説明やイニシャルから、いくつか簡単に特定できる場所があった」
 そのひとつが今回の、観覧車だったという。
「E・フォースは、この中の8つのゴンドラに乗ってる。それぞれが、同じE・フォースの一部。彼女らはこの夏いっぱい晒されたギスギスした空気から生まれてしまった。
 だけど、自分たちの境遇を嘆いてる。
 ゴンドラの中で未来を語り合ったり、優しい空気が流れたり。そんな場所でありたかった、と。
 ――製作者は、この観覧車から見える風景や夜景が出来る限り綺麗であるようにと心を砕いていた。
 その思いも、E・フォースの中に紛れ込んでるのかもしれない」
 イヴが少しだけ遠い目をする。
「フェーズは1。抵抗する意思は殆ど無いみたいだから、討伐するだけなら簡単にできる。
 ただ、単純に全部叩くだけだと消滅しないみたいで、また同じE・フォースが復活してしまう」
 だから、とイヴは一拍置いて、リベリスタたちを見回した。

「コイバナ、してきてあげて。これなら彼女たちも満足するのか、復活しないから」

 最後に雑誌に目を落とし、できれば片思いの方がいいかも、と付け足した。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:ももんが  
■難易度:EASY ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年09月17日(月)23:59
ももんがです。
乗ってた観覧車が途中で停止し、15分ほどてっぺんで風の音だけ聞いて揺られたことがあります。
……回転再開しても風の音しかしないの、怖かったよ……。

●E・フォース『ひと夏の恋のギセイ』
 イヴが説明した通りの存在です。
 見た目は十代前半の、ワンピースをきた少女。
 現在のところ、自分の存在に悲しみを持っている以外、強い意思はないようです。
 フェーズが進行すると、悲しみが八つ当たりに変化するのか、観覧車に乗ったカップルを積極的に別れさせようとするようになります。
 叩けば簡単に消えますが、これは一時的なものです。
 8つの体のうちいくつかが同時にノロケ話、または片思いの切なさを聞くと、消えます。
 いくつにきかせれば良いのかはわかっていませんが、半分は必要なようです。

●注意
 ゴンドラは一定以上のダメージを与えると破損するおそれがあります。
 運転中のゴンドラから落ちてしまう可能性もありますので、ご注意下さい。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ナイトクリーク
星川・天乃(BNE000016)
ホーリーメイガス
悠木 そあら(BNE000020)
★MVP
デュランダル
阪上 竜一(BNE000335)
スターサジタリー
桐月院・七海(BNE001250)
デュランダル
蘭・羽音(BNE001477)
マグメイガス
丸田 富子(BNE001946)
プロアデプト
銀咲 嶺(BNE002104)
プロアデプト
レイチェル・ガーネット(BNE002439)


 ゴンドラの座席に腰掛けた『絹嵐天女』銀咲 嶺(BNE002104)が顔を上げる。
 さっきまで誰も居なかったそこには、少女がいた。向かいに腰掛けたまま、じっと、悲しげな瞳で嶺を見つめる。あなたも、私にかなしい話をきかせにきたの?
 嶺は首を振り、言葉を続ける。
「私のコイバナ……恋と言って良いのか分かりませんけども、何故か仲良くなってしまった人とのお話でよろしければ、聞いてくださいな」
 そう言って微笑みかける。少女は驚いたようだった。

「自分の本心を表に出すのは、どうしても気恥ずかしいですが。
 一度気持ちを整理する良い機会かもしれません。……覚悟を決めて、頑張ってみましょうか」
『シャドーストライカー』レイチェル・ガーネット(BNE002439)が、よし、と気合を入れて目を向ける。その少し赤くなった頬に、レイチェルよりいくらか年下に見える少女が、おおお、と目を輝かせる。

 そのギターがどこから取り出されたのかと、少女は一瞬目を見張る。
 びん♪ と、一度だけ弦を慣らしてみせたそれは『KAMINARIギタリスト』阪上 竜一(BNE000335)オリジナルのエレキギター、なのだそうだが、少女にはそれは知る由もない。サングラスの奥から少女の様子を見て、竜一は口の端を上げる。
「オレの話は、よくある話さ。学園祭で告白してフラれたってヤツよ」
 少女の視線がアフロの頭に釘付けになり、それから少し考えるように首を傾げ――何か納得をしたらしい表情で頷いた。

「観覧車って、いいよね。
 日常から、ほんの少し隔離された空間で……。大切な人と2人っきりになれる、素敵な場所」
『紅玉の白鷲』蘭・羽音(BNE001477)が、腕に付けた輪に触れながら、窓の外の風景に視線を向ける。
 ゆっくりと地上から離れていく風景。日常からの隔離、手軽な非日常。
「あたしも、ゴンドラの中は……幸せな空間であって欲しいって、思う。
 だから……あたしの恋心で良かったら、聞いて欲しいな」
 その視線の先を追ってから、少女は羽音を見つめる。

 乗り込んだゴンドラで、少女を探して顔を巡らせた『無軌道の戦鬼(ゼログラヴィティ』星川・天乃(BNE000016)の足は、かすかに揺れるゴンドラの床にしっかりと貼り付いている。
 座席に座る少女の隣に腰かける、天乃。
「私の、話で満足、するかはわからない、けど……一つ、話をしよう」
 不思議そうな顔で天乃を見る、少女。

「あたしの運命の人はですね、――といってもまだ正式にお付合いとかしてるわけじゃないんですが」
 (´・ω・`)
『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)の垂れ耳がしおれる。
 少女は、明るいテンションからの 突然の(´・ω・`) に、(・ω・;)――驚きながらも、どうしたら良いものかと少し困惑の入った表情で、そあらの様子をうかがっている。

 外した黒いチョーカーを軽く握った『弓引く者』桐月院・七海(BNE001250)が、来た道を探そうと下を覗き込む。至便とは言えずとも、不便とも感じない道筋。
「……良い所だとは思うんですが。アクセスが悪いのかな?」
 七海の言葉に、少女がうんうんと頷く。

「恋……恋の話ねぇ……。アタシの恋……もう何十年前になるかねぇ。
 あんなにも情熱的な恋は二度とないかもしれないね」
 少しだけ遠く、何かを探すように目を細め、『三高平の肝っ玉母さん』丸田 富子(BNE001946)が過ぎた時間を懐かしむ。
「昔々、まだ外国人と付き合うなんて偏見だらけだった頃の話さ。
 あの人と初めてあったのは会ったのは25くらいの時だったかねぇ……母の食堂で働いていたアタシは出会っちまったのさ」
 きょとんとした表情の少女にウインクをし、富子は続ける。
「――運命の人にね」


「去年くらいからでしょうか、仕事でご一緒してから縁が始まったのですけど、なんと言いましょうか……」
 嶺が、少し言葉を選んだ様子で視線を動かす。
「食生活やもろもろの面で目が離せないといいますか、手が焼ける子ほど可愛いのですよ。
 でも、やはり年上ですからお兄さんみたいに、世話を焼いてくれることもあって。
 ――兄になったり、姉となったり、不思議なものです」
 ? ? と、見るからに疑問符を浮かべた少女に、嶺が笑って、男性ですよ、と付け加える。

「元々私が恋をしていた相手は、兄さんでした。――もちろん、兄妹での恋愛なんてありえない。
 気付いた時点で終わっていた、諦めるしかなかった恋。……それが私の初恋」
 兄妹愛という言葉で括ってしまえたら、あにいもうとでなかったら――現実はそのどちらでもなく。背徳の苦い甘さを、レイチェルは良しとしなかった。
「だからでしょうかね、どことなく兄さんに似た雰囲気をもつ彼に、惹かれてしまったのは。
 まあ似てるというか、シスコン兄独特の雰囲気とかそんな所な気もしますけど」
 僅かに浮かべた、苦笑。
「私にとっては、どうしても気が緩み易いタイプの相手で。……もちろん最初は恋愛感情なんてなかった。
 お互い冗談や戯れ程度の、偽りの兄妹の関係。そんな変な関係が、私達のはじまりでした」
 レイチェルと、嶺の、似たようでいて、どこかが違う想い。

「俺には幼馴染がいる。
 といっても家が近くで小学校から高校まで同じ学校。そんな幼馴染だ。名前を――初音っていう」
 竜一が、サングラス越しに少女を――その向こうに誰かを思い浮かべて、見据える。
「ああ、そうさ。彼女と俺とのコイバナSA!」
 少女に見返されてその場で少し茶化したように両手を広げ、しかしそのまま言葉は続ける。
「初音はまぁなんというか真面目を絵に描いたような女だった。
 趣味は読書。勉強は上の下。キライな科目は物理。だから普通に恋もした。
『ねえ、竜一。あの先輩ってどんな人か知ってる?』
 ――俺の10年の恋が崩れた瞬間だった」
 言い方を真似る竜一。聞いているだけでも伝わる真剣な響き。
 少女は、うわちゃー、という表情を浮かべた。

「あたしには、婚約者がいるの。真っ赤な髪と瞳を持つ、やんちゃでデリカシーのない、癒し手さん……。
 大きい胸が、大好きなのは……ちょっと、複雑」
 言葉を切って、複雑な表情で自分の胸元を見下ろす羽音。
「……でもね、あたしのこと、とっても愛してくれるの。
 不便なこの脚を、尾羽を、素敵だって言ってくれる。……一緒に戦う時は、あたしのことを支えてくれる。
 いろんな所に、一緒に遊びに行ってくれる。あたしが作った料理を、美味しい美味しいって、食べてくれる」
 羽音の言い募る言葉は、弾むように、流れるように続いている。
「……寂しい夜は、抱き締めて頭を撫でてくれる」
 微笑を浮かべ、小首を傾げる。ころりと揺れる、石籠の紅玉。

 天乃の語るのは、生きたミステリーと呼ばれた殺人鬼の話。
「いつだって、血と悲鳴と、死の香りと、狂ったような熱に塗れての出会いだった。
 最初の出会いは、屠殺場の様な、戦場。決戦の地では、その過去を幻影として見、そして再会した」
 訥々と語る天乃の思い出は、もうすぐ一年にもなろうかという頃のこと。
「けれど、最初の約束は、何時か本気で、という言葉は守れなかった。
 ……いや、私は本気でぶつかれた。でも、彼はどうだったか?
 総力戦、の中……蟻の様に群がられた彼と、やったからといって、約束は果たせてない、気がする」
 軽く首を振る、天乃。短く、されど濃厚な時間の記憶。

 彼について、語るそあらは止まらない。
「頭がよくてかっこよくてやるときはびしっときめて気障っぽい所もあってちょっと俺様であたしの考えてる事すぐ見抜いちゃったり望んでる事を実行してくれたりいちごの美味しい素敵なお店に連れていってくれたりおされな車でドライブ連れていってくれたり手を繋いでデートしてくれたり……とにかく素敵な人なのです」
 (*´ω`*)
 その表情に、少女もつられて笑みを返す。
「でも……女の子に弱いのです。
 あたしみたいな可愛くて純白ぴゅあな女の子がいるのに、余所見ばっかりするのです」
 しかしそあらの心は悲しみに曇り、くるくると変わる表情に少女がおたおたする。

「告白して返事も貰えたけどもう会えない人が好きなんですよ。
 その人が既に好きな人がいると知ってても惚れた方がなんとやら。実際負け続けたなあ……」
 髪でその目を隠した七海がどこを見ているのか、どのような表情なのか――少女にはよくわからない。
「ひた向きで思いっきりがあって強かで素敵な人でした。
 名前も、苗字は違いますが自分と同じ七海という人です。ややこしいけど――そこもいいんですよ」
 巣を張る蜘蛛に巣の外を見せたのは、彼の健闘。
「別……いや、倒すしかなかった時に『そのうちもっと良い相手が見つかるわよ、絶対』なんて言われましてね。二度と会えない愛した人からの言葉。信じようとは思い始めているのです」
 別れにしては軽い言葉に少女は考えこむような顔を見せ、七海の口角が少し上がる。

「あの人は青い目をしていた、言葉は……日本語は上手ではなかったねぇ」
 富子はその様を思い出そうとする。言葉の壁を、彼女の思う異国の民は乗り越えようとしたのだろう。
「一目見たときにこの人だなって思ったさ、アタシはこの人と一緒になるんだなぁって。
 ……向こうさんはただご飯を食べに来ただけだったんだけどねぇ」
 HAHAHA、と大きく笑う富子の――おそらく、明るく輝くような少女だったのだろう、若き日。
「会うたびに好きになっていった。もう気持ちを抑えることはできなかった。
 ――両親にも友達達にも反対されたさ。だってそういう時代だったからねぇ」
 ゴンドラから見上げる空は羽ばたいて見上げる空よりずっと近く、硝子が邪魔をする。


「少し前に、大変な目に遭って帰ってきたときも、とても心配してくれましたし、親身になって助けてくれたんですよ。――その後は、一緒に夏のお祭りにも行きましたし。
 彼のお陰で、その時のトラウマもだいぶ治ってきました」
 にこりと微笑む嶺に、少女は少し困った顔を向ける。虎馬?
「それに、皆の前では礼儀正しく「銀咲さん」なのに、人目の無いところでは一変して「れーちゃん」ですって……三十近い殿方が、二十五の女をちゃん付けって、なんだかおかしくて。
 ――そこも、可愛いんですけどね」
 くすくすと笑う、嶺。

「そうして触れ合っていくうちに。――彼を知っていくうちに。
 実は結構負けず嫌いな所とか。実は割と変な性癖もってる所とか。……とても寂しがりやな所とか。
 気付いたら、目が離せなくなっていた。
 兄や歳上の友人としてではなく、ひとりの男性として、恋するようになっていた」
 レイチェルの言葉が徐々に淀み、つっかえ始める。
「だけど。……彼にとって私は、可愛い妹分であり。
 そのつもりで見てきた相手にいきなり恋愛感情を向けられても。
 はいそれじゃあひとりの女性として、とはいかなかったようで」
 わずかに俯く、レイチェル。
「……うん、ダメでした。
 フラれちゃった。自業自得、とは思いますけど」
 優しい目をした少女が、レイチェルの猫耳の間を撫でる。
「でも私は。
 ――諦めない。諦めたくは、ないから」
 決意に満ちた声で、笑顔を見せるレイチェル。

「……俺はというと初音の恋を手伝うでもなく、音楽に没頭していた。
 初音は先輩と話ができる距離には近づけたけど、もう一歩が踏み出せないでいた。
 何やってるの、って聞いたら『あの人の近くに立てれば、それだけでいい』――ああ、畜生。
 初音は俺だ。俺も初音の傍にいればいいと思い、初音も先輩の傍にいるだけでいいと満足している」
 竜一は床を向いて歯噛みする。
「文化祭当日。俺は体育館でライブをした。あらゆるテクでギターを奏でて客を湧かせ、そしてカーテンコールの直前、こういった」
 顔を上げ、少女の肩に掴みかかりそうな勢いで一気にまくし立てる。
 その時の熱気そのものをもう一度呼び寄せるかのように。その勢いで、叫ぶ。
「初音、I Love You!」
 少女は額に手を当ててゴンドラの天井を仰ぎ見た。結果は聞くまでもない。

 羽音は腕輪に目を向け、そっと触れる。
「何より……星の数程の人が生きる、この世界で……あたしを見つけて、選んでくれた。
 ……最初に会った時は、異性として見てなかったんだよ?
 でも、そのひたむきな愛に……落とされちゃったんだ。恋に、ね」
 頬を染める羽音に、少女があらあら、という顔を向けた。
「傍にいない時でも……彼を想うだけで、あたしは満たされるの。
 彼の存在自体が、あたしの力になる。
 彼以外なんて、考えられない――それくらいに大切で、どうしようもなく愛してる。
 あたしの、最初で最後の、愛しい人……♪」
 歌うような響きで、愛を唄う羽音。
「次に、ここに来る時は……その人と一緒に、遊びに来るよ。
 その時は、今以上に……ここを、幸せで満たすよっ。都市伝説なんて、ぶっ壊してあげる」
 こくりと頷き、微笑む少女。

 天乃の言葉は、いつかの熱にうかされたようなものにも近く。
「……果たして、この気持ちはなんなのか、とふと思う。
 ある人は、ある種の片思い、死に別れだなんて、言う。私には、いまひとつ、ぴんと来ない。
 私だって、恋ぐらいは……あった。それに比べて、余りに違いすぎる……この、気持ち。
 答えが、あるなら教えて欲しい、ね」
 少女が、淀んだ、昏い目を天乃に向ける。
 愛と憎悪が、酷似しているのと同じように。『決着』という題名のつけられた、死という別れ。
 それを己の手でつけることへの執着は――別れ話と、違いがない。

 そあらはぷんすかしている。
「まるで息をするように女の子に声かけてなんぱして本当にしょうがない人でそれでいて相応にもてもてではらはらさせられっぱなし! (´・ω・`)とさせられるのは日常茶飯事ですし」
 発音でなく、顔でその感情を表現してみせる。
「――(´;ω;`)とさせられる事もあるですけれど。
 それでも一緒にいると安心してほっとするから離れられないのです。あたしにとって大事な人なのです」
 力説する様子に、ほっとした様子で少女はそあらを見守る。
「いつか彼の可愛い奥さんになるために今は一生懸命お料理したりお仕事のお手伝いしたり彼のぱぱにもご挨拶もしてるですけれど――時々それが無駄になったらどうしようとか。
 上手く行っても(´・ω・`)とか(´;ω;`)とかさせられちゃうんだろうなとか思っちゃったりして不安になったり悲しくなったりする事もあるですけれど……。
 でもあきらめたらそこで終わりだから前向きに頑張ってるのです」
 その笑顔は、まるで大切な子供に困らされている母親にも似て。
「さおりん……会いたくなってきたです」
 さおりん><
 さおりん><。
 泣きそうなそあらに、少女が慌ててハンカチを差し出す。

「――ですが高嶺の花、届くことのないこの片思い。あの恋をこの気持ちを忘れる気は全くないんです。
 2番でも良かった。仮にも悪の組織所属の人からOK貰えたんです。
 それだけでなにか素敵じゃありません?」
 自身の話に耳を傾ける少女の手を取り、いたわるように軽くさする七海。
「初めて会った時はどうしようもない位に嫌いだったのに逃げられたら気になって仕方なくて。
 好きな子を思わず苛める子供のようにずっとずっと七海さんの事だけを考えて。
 今度はいつ会えるか? その時は何を言おうか? この思いを伝えるか伝えないべきか?
 本当にそんなことばかり」
 穏やかに笑う。再会は決して無いと知って、それでも考えることはやめない。
「あー今頃何してるかな、あの人」
 前を向きながら、それでも振り返ることを大切にしながら。

「気持ちを告げたのはアタシから。最初は向こうも戸惑っていたねぇ……。
 でも、それでもアタシは気持ちを伝え続けた」
 思い出が深い分だけ浸る富子の、重ねた時間の特権。
「最後には根負けだったのかもしれないね。
 あたし達は世間の目を逃れるようにひっそりと会い、そしてお互いがお互いを必要をしていることを確認していった」
 笑みがその年月に刻まれたシワを強くする。目尻に多いのは、彼女の性格ゆえだろう。
「いつしかアタシとあの人の間には女の子が生まれた。
 それはもう可愛らしかった、あの人との愛の結晶だからねぇ。――だけど」
 柔らかく、だがしっかりと、首を左右に振る。
「……周りからは歓迎されなかった。
 育てたかった、アタシはあの人と一緒に育てたかった。でも世間はそれを許さなかった。
 ――あの人は幼い娘を連れて国へ帰ってしまった」
 少女の涙腺が決壊したのも構わず、富子は続ける。
「そう……あの子の名前は……」
 空へと、音のない声でその名を呼びかける、富子。
「……そう、アタシの恋はまだ続いてるのさ。いつかあの人と娘に会える日までは……ね」
 空は、必ずつながっているから。


「初音に怒られたり仲間に冷やかされたり、自分でもバカだなと思ったけど。
 後夜祭で、初音がその先輩に告白したというのを聞いた時に、全ての後悔は吹き飛んだ」
 竜一が、ギターを抱えてやおら立ち上がる。
「恋ってのは告白しなきゃ進まない。そんな片思いの気持ちを込めて、一曲歌いま――」

「お疲れ様でしたー」

「あれ文字す、時間が!」
 いつの間にかゴンドラの中には、少女の姿など影も形もなかった。

<了>

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
お疲れ様でした、成功です。E・フォースは満足したようです。

MVPは生々しい痛みでももんがを悶えさせたあなたに。