●無慙一心流道場 あんた、心になんかシコリがあって、取り払った途端急にスカッとして仕事が捗ったなんでこたぁありやせんか? あっしらの無慙一心流ってぇのはそういう気持ちの解放感ってやつをとことんまで突き詰めた流派で、精神力ならどこにもまけねぇ自信があるんですが……いやはや、うちのエースのコが姿眩ましちまってからてんで落ち目になりまして。フィクサードに道場壊されるわ門下生は逃げてくわで、そろそろ道場も畳み時かなぁって思ってた所なんです。これでも一応リベリスタの集まりですし、どっかしらデカい組織さんに頭下げて入れて貰わにゃなんねぇかなって。 そしたら……! なんてことでしょーかね、道場に出たんですよ。何が出たってそりゃ、幽霊ですよ。 あっ、いやそりゃ言い方が違ぇってもんですか。アレですわ、バケモンみたいなE・フォースが道場の壁突き破って襲い掛かって来たんです! そりゃあ強いのなんのって、門下生も強いやつらばっかり残ってたから頑張って戦ったら倒せるかもと思ったんですがね? てんでダメでして。刀使おうが槍使おうがなんでもかんでも弾かれちまって、それどころかこっちの武器をマネして作って応戦してきやがるんですわ。ありゃあたまげた。 そんでもっとたまげたのが、暫くしたらそいつ人の形になりまして。まるであっしらを遊び相手にでもするみたいにどんどん成長していくんです。 幽霊だったら怖かないですが、ありゃあ本当、心底震えやした。こわやこわやで……。 エッ、道場? そんなもんとっくに看板引っぺがしましたよ! ●化物退治 フォーチュナは、この依頼を『化物退治』と表現した。 とある道場に巣食うようになったというE・フォース。 ぼんやりとした人の形をもち、かと思えば刀やら槍やらと相手と同じような武器を作りだしては襲い掛かってくるという、奇妙な化物だった。 これを退治して欲しいというのが、今回の依頼なのだ。 なるほど化物退治である。 どうやらE・フォースは戦いそのものを好むらしく、道場の連中がうっかり膨らませてしまい、手が付けられない状態になってしまったのだそうだ。 これ以上膨らませれば何をしでかすか分かったものではない。 ここは一つアークのリベリスタの力を使って一気に叩き、消滅させてしまおう。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 9人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年09月14日(金)23:32 |
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■メイン参加者 9人■ | |||||
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●「死は人間の終わりじゃあない。『やってやろう』て気持ちがありゃあ、人間は死んでも終わらんさ」――路六剣八 これは戦いの物語である。 故に前置きの全てを省く。 感じよ。 鮮烈な輝きと共に剣が振り下ろされ、刀に受け止められた。 「よう爺、俺だ、覚えてるか!? 覚えてなくても構わない――」 大気をかき分け、ツァイン・ウォーレス(BNE001520)は盾を翳す。素早い動きで繰り出された刀を抑え込み、再び剣を突き込んだ。 「打ち合えたなら、それでいい!」 相手の胸を貫くかと思われた剣はしかし、頑丈な丸盾によって防がれた。 大きく飛び退くツァイン。 相手はそれを追いかけることなく、悠然と身構えて見せる。 E・フォースである。 人型をしているが、姿は判然としない。 元々フォースは何らかの感情や思念の集合体と言われ、一般的に言われる霊魂のそれに近いものとされていた。 もしその仮説を正しいものとするならば。 「土俵合わせ……化けて出たっていうのか」 「交代しろウォーレス、俺の番だ!」 ツァインの頭上を飛び越え、『戦闘狂』宵咲 美散(BNE002324)が亡霊へと飛び掛る。 「さあ戦おう、宵咲が一刀、宵咲美散。推して参る……!」 身体を軸にして槍を大回転。先ずは小手調べとばかりに叩きつけられた鐺を、和槍の柄が受け止めた。 タイムロス無しでどこからともなく武器が出てくる。不思議なものだが……。 「構わん!」 派手に構えて突撃。 日本剣術において槍戦の基本は近づく暇を与えない猛烈な連打にあると言われここぞという一発で繰り出される突撃は必殺の技とされている。 とりわけ美散の槍は猛烈な攻勢こそが本来の姿であった。 「我が最大最強の一撃、その身でとくと味わえ!」 音速をゆうに超えるスピードで繰り出される槍。 全く同じタイミングでやり投げのようなフォームで繰り出される亡霊の槍。 二つの戦端が激突。奇妙な音を立てて和槍の柄を撓らせ、二人を強制的に引き剥がした。 「な――」 「突っ込み過ぎだよ美散」 「交代の時間だ!」 弾かれるように下がる美散。彼とすれ違うようにして、『九番目は風の客人』クルト・ノイン(BNE003299)と『立ち塞がる学徒』白崎・晃(BNE003937)が飛び出していく。 モノクルを指で撫でるクルト。 耳のプレイヤースイッチを入れる晃。 クルトは回し蹴りから壱式迅雷と放ち、晃は腕を大砲のように構えてジャスティスキャノンを発射。 その二つを亡霊は素手で弾き飛ばした。 掌を柳の様にしならせ、鞭で毬を跳ねさせるかのような動きであった。 亡霊の手に皮の手甲が生まれる。 「やはり真似てくるか。だけどこっちも20年やってんだ、同じ土俵で真似されたくらいで折れる俺じゃない!」 急激に距離を詰め、腕に炎を纏わせる。すぐさま拳を叩き込むが、腕ごと絡め取られる。転倒されそうになったクルトは自ら飛び上がり、亡霊の肩めがけて近接斬風脚を繰り出した。引き裂かれる肩。と同時にクルトは高々と掲げられ、地面に叩きつけられた。 「一旦離れろクルト!」 亡霊の背に向けてパンチを繰り出す晃。対して亡霊は身体を捻って腕を突出し、晃の拳を掴んで止めた。腕をバネのように曲げ衝撃を吸収。クルトから腕を離すと、強烈なボディブローを叩き込んできた。 身体をくの字に曲げて弾き飛ばされる晃。 「ワオっ、大丈夫カナ?」 T字型のワンドで晃を受け止める艶蕗 伊丹(BNE003976)。 すぐに天使の息をかけてやると、晃はすたんと地面に降り立った。 「チャージもしておくヨ! これでいくら戦っても大丈夫!」 奇妙なハイテンションでワンドを振りかざす伊丹。 マナサイクル、無限機関、インスタントチャージ、天使の域+歌と、彼女自身が狙われない限りは何時間も戦っていられそうな装備をしていた。 一方の亡霊は不思議と伊丹を狙う様子が無く(恐らく射程圏内には入っている筈だ)只管かかってくる敵にだけ対応していた。 不思議な敵だ。だが。 「わたしは幸せ者だ」 斬風脚を放ちながら飛び掛る『紫煙白影』四辻 迷子(BNE003063)。 亡霊は金属製のパイプを懐から抜き出して鎌鼬を破断。宙を回転しながらぶつかって来た迷子の大煙管を頭上で受け止めた。 反動で亡霊の背後へ着地する迷子。着地の衝撃を殺しながら身体を捻り、遠心力を乗せたスイングを繰り出した。 がしりと煙管の木管が掴まれる。 繰り出されるパイプ。迷子はそれを素手で掴み取った。 「これだ。二度とないと思っていたぞ……!」 「ぐわっはっはっは! 独り占めとはずるいぞ、俺も混ぜろぉー!」 頭上で黒剣を振り回し、いつになくハイテンションな『疾風怒濤フルメタルセイヴァー』鋼・剛毅(BNE003594)が闇のオーラを全身から噴出させた。 オーラを剣へと収束させると、スイングによって発射する。 「疾風怒濤フルメタルセイヴァー、行くぜぇぇぇぇぇぇえ!!」 魔閃光発射。それも一発ならず七連発だ。 亡霊は迷子を無理やり頭上に振り上げると、黒鋼の刀をどこからか抜きだし、飛来した魔閃光を一発残らず切り捨てた。 続いて、刀から湧き上がるオーラを周囲へ弾丸状に分割収束。舞うような動きで剛毅へと次々に飛ばしてきた。 「うおおおおっ!!」 豪快な横一文字で薙ぎ払う剛毅。 「すごいな、本当になんでもできるのか!」 「それでこそ!」 頭上の迷子、前方からのツァイン。 更に後方からの美散。右からはクルト、左からは晃。全方位から一斉に自己最大の技を叩き込む。 亡霊は盾でツァインを弾き返し、槍の鐺で美散の腹を突き、ツァインと美散の間で槍がつっかえている間に柄に飛び乗りクルトと晃を鞍馬回しの要領で蹴り飛ばす。最後に振り上げた両足で迷子の大煙管を受け止めると、天井めがけて再び蹴り飛ばした。 「囲んでボコっても全然イイのね。タイマンじゃなきゃ卑怯かと思ってたこっちが恥ずかしいわ」 『重金属姫』雲野 杏(BNE000582)はギターを肩から下げると、にやりと笑った。 何故か? 亡霊が虚空から津軽三味線を引っこ抜き、さあ弾けとばかりに構えて見せたからである。 「あらやだ、濡れちゃいそう」 今までの流れで分かったことだが。この亡霊は何でもできる癖に自分からは仕掛けない。相手が『どう仕掛けたいか』を確認してから返してくるのだ。完全なカウンターをかけたいなら態々こんな手間をかける必要はない。 文字通り、彼は相手の土俵に合わせているのだ。 「セッションしましょ」 ピックを握り、ギターを盛大にかき鳴らす杏。 撥を握り、三味線を高速で気鳴らす亡霊。 三味線は弦の数こそギターの半数しかないが、出せる音域はほぼ同じと考えてよい。ただし、それだけの技術があればの話である。 全く同じレベルで演奏が始まり、杏の周囲を鍵盤型の魔方陣が覆った。同じく亡霊の周囲を琴の柱(じ)が等間隔に並び始める。 本当の勝負はそこからだった。 色の違う魔弾を乱射する杏。対して亡霊は柱を魔弾に変えて大量に発射。 数々の魔弾が空中で相殺し、激しい音を立てて炸裂した。 隙を見て撥を振り、柱を直接叩き込んでくる亡霊。 杏の眉がぴくりと動いたその瞬間、『フォートプリンセス』セルマ・アルメイア(BNE003886)が素早く間へと割り込んだ。 うりゃーと言いながら青く透明な大盾を突出し、柱をばちんと弾き飛ばす。 「へいへいウォーモンガー、セルマちゃんの存在忘れてないか!? 忘れてないな、よし! 来れるもんならかかってこ――うわああ!?」 三味線を放り投げ(何故か虚空で消えた)全速力で突っ込んでくる亡霊。 セルマは若干ビビったが怯まずに縦を両手に張り付けて身構えた。 「セルマちゃんバリアの性能を今こそ見せる時! どっから来るんだ、正面か!? 本当に正面か!? この状況でか!?」 しっかり盾を構えた相手に正面から体当たりをする。これほど理にかなわない攻撃も無いだろう。 だが亡霊は何処からともなく進行方向上に畳を壱畳出現させた。平置きである。 「え、まさか――」 だん、と足を踏み込む亡霊。その途端、セルマの眼前を畳が覆った。 畳と共に思い切り体当たりをかましてくる亡霊。セルマは根性で足を踏ん張り、両手を翳して受け止めた。 携行盾の理想的な構造は全ての攻撃を受け流すことである。体当たりをされても銃弾撃ち込まれても剣で打ちこまれても受け流せれば大体どうにかなる。しかし盾より巨大で平たくて受け流し構造をそのまま吸収してしまうようなものを挟まれると、これはもう力の勝負になるのだった。 「ま、負けるかー! ここで負けたら出番無くなるんだぞ! 『あれ、セルマちゃんってもしかして要らない子じゃね?』って言われるんだぞとにかく負けるかー! あ、ムリもう押されてる!? こんなことならノックバックとっとくんだっ……うううおおおおおお!!!!」 一瞬もうこれ帰ろうかなと思ったセルマだが、歯を食いしばって可憐そうな顔を思いっきり歪ませつつ、亡霊を一気に押し返したのだった。 畳ごと押し返され、ごろんごろんと転がる亡霊。 彼は道場の真ん中で膝立ちすると、ゆるやかに自らの顔を撫でた。 周囲を包んでいたエネルギーの渦が収束し、『曖昧な人型』から完全に人間の形へと変わって行く。 「やはりか、お主……」 目を細め、頬に朱をさす迷子。 「どこまでも無駄で無意味。最強を捨てた奥義(いきざま)。だからこそ愛しいのだ、焦がれるのだ……」 ゆっくりと立ち上がるしわくちゃの老人。 今や亡き、最強を捨てた達人。 「路六剣八!!」 ●「いいかい善三、相手の事を想っておやり。相手の為に殴っておやり。殺してやるだなどと、憎いなどと、思ってはいけないぞ」――路六剣八 老人である。 しかしE・フォースである。 もはや人間の殻を捨て、全てのシガラミをすて、戦うだけの『現象』である。 それは恐らく、今や亡き達人が望んだ姿だったのかもしれない。 『…………』 半身に構え、掌を上にして一同へと突き出して見せる。 無論言葉は無い。 だからこそ伝わるものがあった。 「いいぜジジイ……やろう!」 ツァインが飛び出す。 老人の手がぎゅっと握られる。 その途端、道場が粉々に爆発した。 八人が一斉に襲い掛かり、一人が全てを相手にした。 ツァインの剣を木刀で弾き上げた老人の腹に槍を突き込む美散を超高速で屈んでかわし槍による足払いで美散とツァインをもろとも転倒させるが剛毅の剣が大上段から叩き込まれ脇差刀で受け止める老人が剛毅を鎧ごと掴み上げて味方へ投擲した所へすかさず盾で受け止めるセルマに針穴を通すかのように脇差を投擲しセルマの胸を貫通しかけるが直前に伊丹が彼女の背にワンドを押し付けエネルギーを注入し貫通と同時に治癒させるそのタイミングを見計らって鳥のように飛び掛る老人を空中で迎撃するクルトと晃が土砕掌と魔落の鉄槌を同時に叩き込み胸と腹に拳がめり込み弾かれた老人めがけてギターをかき鳴らす杏が四重奏魔弾を絶え間なく乱射するがそのすべてを三味線の音波で迎撃する老人めがけて飛び蹴りを繰り出す迷子の脚を掴んでクルト達へ叩きつけもろとも薙ぎ払うが隙をついて繰り出された美散の槍が老人の腹を貫通しすれ違うように飛び掛った剛毅とツァインの剣が老人の両腕を切断したがしかし気合で腕を生やし腹の傷を塞ぐ老人に目を丸くしつつもセルマ怒涛の突撃が炸裂し老人が野外へ放り出されるが転がりながら薄盾と剣を掴み取り追撃するセルマを跳ね返すと盾を無理やり丸めて棒状にし剛毅とツァインの左右上段斬りをまるで空雲を割るかのように同時に打ち払い二人の間をミサイルが如く通過し再び迎撃にかかったクルトの土砕掌を掌底で相殺し晃のパンチを拳で相殺し柔軟に二人同時に蹴り飛ばした直後に宙に浮いていた琵琶をひっつかみ高速演奏によって魔弾を周辺にばら撒くが伊丹の詠唱で回復弾幕を張りすかさず杏が放った魔弾が老人の右目に命中するが痛がるどころか壮絶に笑いながら琵琶を叩きつけてくるのをギタースイングで対抗する杏の肩を踏み台にして迷子が飛び掛り素手のまま連続魔氷拳を叩き込むが老人がそれらを全て片手で受け止め迷子の腹に拳を叩き込みさらに杏を蹴ってバク転しながらもはや床板だけになった道場へと着地した。 『…………』 老人は、全身から血を流しながらも爽やかに笑った。 何も語らなかったが、彼が心から今を楽しんでいるのが分かる。 そう言う存在に、彼はなったのだろう。 「俺は、やっぱり泥臭く這いずりまわって、しがみ付いて食らいつくしかねえんだ。剣山のジジイが教えてくれたよ……そういや、今どうしてんのかなあの人は!」 剣と盾をしっかりと構えて突撃するツァイン。 「オオオオオオオオアアア!」 翳した盾を強引に押し込み、ツァインの剣が老人の頬につく。 「横槍を入れさせてもらうぞ、俺の土俵でよそ見などさせん!」 横合いから全力で槍を突き込む美散。彼の槍が老人の胴を貫くのと、老人の槍が美散の腹を貫くのはほぼ同時だった。 「よ、よし今だ叩き込めーい!」 「セルマちゃん出番なさそうだからって無理矢理映り込みに来てない? まあいわ、アンコォール!」 「ゼンシンゼンレイー!」 ギターを振りかざす杏とワンドを振りかざす伊丹。 その中心で無駄にポージングするセルマ。 魔曲四重奏とマジックアローが老人へと飛来。 ツァインと美散が素早く飛び退くのと同時に、クルトと晃が助走を付けて飛び掛った。 「俺の技は見せ切った。残ってるのは意地くらいだ! 生きてる人間の邪魔はさせないよ!」 「叩き込めるだけ、叩き込む!」 魔弾が炸裂するのとまったく同じタイミングで飛び蹴りを叩き込む。 老人の周りで炸裂する魔弾と物理エネルギー。 その渦に自ら飛び込むかのように剛毅が突撃をかけた。 「ご老人、お前は俺の剣を一回も避けなかったな! 合わせてくれたのか。俺の土俵に、俺の立っている場所に! ならば、まだまだ楽しませてもらうぞ!」 剣をまっすぐに構えて老人へと突撃。まるで抱き合うかのようにドスンとぶつかり、老人の背から剣が生えた。だが同時に、剛毅の鎧を貫き黒鋼の刀が生える。 「ぐう……」 崩れ落ちる剛毅。 老人は身体に刺さった槍と剣を気合で抜き取ると、血まみれのままゆっくりと身構えた。 「わしはお前が欲しい。スキルなどもうどうでもよい」 自然な体制のまま歩いていく迷子。徐々に速度をあげ、やがて前傾姿勢での突撃となる。 「わしはお前の戦法(いきざま)が欲しい!」 炎と共に繰り出した拳が老人の拳と相殺。 「わしはお前の心(いきざま)が欲しい!」 氷と共に繰り出した拳が老人と相殺。 「わしは、お前の――」 軽く飛び上がり、大きく頭を振り上げる迷子。 「土俵合わせ(いきざま)が欲しい!」 老人の額と迷子の額がぶつかり合い、大量の血が噴き出す。 そして。 「剣八……お前が……」 ばたん、と迷子は仰向けに倒れた。 瞑目する老人。 そして彼は、何も言わず。 この世界から消滅した。 ●「醍五、相手の気持ちになっておやり。相手の立場にたっておやり。消してしまいたいなどと思ってはいけないぞ」――路六剣八 戦いは終わり、沈黙と鳥の声だけが聞こえる中。 「ど、道場がああああああああ――あ、でも看板下したからもういいか、いいや、うん。親戚の豆腐屋を継ごう。そうしよう」 道場主と思われる男(一応協力組織のリベリスタである)が絶望を通り越して何か新しい境地に達していた。 迷子は血塗れで倒れているし、剛毅はぶっ壊れた置物みたいになっているし、杏は瓦礫の中から酒瓶見つけて酒盛りモードに突入してるし、美散とクルトは巻き込まれてぐったりしてるし、なんだかもう諦めた方が良いなコレって状況になっていたようだ。 そんな中、道場に向けて深々と頭を下げる。 「勝や負けより、どうやって生きたいか……か」 「アッ、どうもみなさん。お礼が遅れまして。ありがとうございました。で、修繕費はどちらが出してくれるんで?」 「ん? アークアーク」 「セルマちゃんてばさらっと責任転嫁を……」 「それより、ちょっと聞きたいんだが」 ぺこぺこと頭を下げる道場主に、ツァインが何気ない調子で話しかけた。 「八兵衛って男を知らないか。剣林剣風組の奴で……路六剣八に関係してると思うんだが」 「ハイ? 剣八ならウチらの界隈じゃ伝説人ですけど、そりゃ知りませんな」 「息子とかじゃないのか?」 「息子は早くに亡くしたそうで……あ、でも曾孫に俵八ってえのがいましたねえ。全然噂にならねえんで知らないんですが」 「所で」 黒い鎧もとい剛毅がむっくりと起き上がった。 「無慙一心流は一子相伝という話を聞いたが?」 「へ? あいやそんな大したもんじゃあ。スポーツ剣術ですよおウチは。どっか知らない裏社会とかの話ですかい?」 「……いや、忘れてくれ」 再び横になる剛毅。 そんな彼をワンドでつつく伊丹。 「道場主サン、ワタシはエースのコってイウのが気になっちゃうナ」 「エースのってえ、新習志野ちゃんですかい? すんません、連絡先分からんもんで……」 「あッソウ……」 ふうん、と言って空を見上げる伊丹。 空には、広い夕日が照っていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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