● 「結局……ダメだったな」 「8月も、もう終わりだよな」 「これで、高校の夏は終わりなんだな」 そこまで言って、人気の無い砂浜にいた3人組は大きくため息をついた。 彼らは地元の高校の男子生徒。昔からつるんできた友人同士だ。小中高と、一緒に色んなバカをやってきた。 ただまぁ、何のかんの言っても年頃の健全な男子だ。女の子と付き合いたい。 そこで3人で海でナンパに乗り出すことにした。結果は惨敗。球界における連敗とタイの記録を弾き出したのだという。 そして、現在8月31日の夕暮れ。夏休みが終わったわけではないが、既にロスタイムも同然。何よりも、彼らの心は折れていた。 「ちくしょー! 彼女なんか欲しくねーぞー!」 1人が海に向かって叫ぶ。それを皮切りに彼らは次々に海に向かって叫び出す。 「青い海のバカヤロー!」 「彼女いる奴なんて絶滅しちまえー!」 『リア充、爆発しろー!』 「「「え?」」」 叫んだ時に、なんか1人分声が多いような気がした。振り返ってみると、そこにいたのは……。 ● 8月も間も無く終わりを迎えようという日。リベリスタ達はアークのブリーフィングルームに集められる。そして、リベリスタ達に対して、『運命嫌いのフォーチュナ』高城・守生(nBNE000219)は事件の説明を始めた。 「これで全員だな。それじゃ、説明を始めるか。あんたらにお願いしたいのは、エリューション・フォースの討伐だ」 守生が端末を操作すると、スクリーンには人のような姿をした水の塊が姿を現わす。肩に当たる部分にそれぞれ力強く「嫉」「妬」と刻まれているのは、何の悪い冗談か。 「現れたのはフェイズ2、戦士級のエリューション・フォース。まぁ、アレだ。夏の海に関わる負の想念がうんちゃらって奴だ。この季節柄現れる風物詩とも言えるけど、放っておくわけにもいかねぇだろ。オマケに後で説明するけど、ちょっと厄介な能力もあってな」 海で女の子とイチャイチャしたかった、去年着ることの出来た水着が着れなくなった、だから海で幸せそうにしている奴らなんて爆発してしまえ。そんな想念が積もるようにして生まれたエリューションらしい。 そこで、守生は端末を操作すると、スクリーンに地図を表示させる。当然、ロケーションは海辺。ビーチの中でも人気が無い一帯だ。 「現れる場所はこの砂浜になる。で、現場には地元の高校生が3人いる。しかも、さっきの話に戻すと、エリューションに操られているようなんだ」 エリューションの能力である。「幸せに夏を過ごす奴に恨みを持つもの」の精神と同調することで、対象を操ることが出来るのだ。エリューション能力を持たない一般人ではひとたまりもないだろう。そして、操られた少年達は、エリューションを庇うように動いているのだという。 「何かしらの対応策を取らないと、戦いに巻き込まれて死ぬ羽目になる。上手く戦場から連れ出すか、あるいは正気を取り戻させるか、この辺はあんたらに任せる」 彼らを無力化して戦場から引きずり出すのが無難ではある。あるいは、海への恨みを消すような何かを伝えて正気を取り戻させる手もあるだろう。 「この能力はリベリスタを『魅了』することも可能だ。夏への恨みを抱いていなければ、抵抗もしやすいみたいだけどな。ただ、注意してくれ。逆に充実した夏を過ごしている奴は、積極的に攻撃しようとして来るから。結構、相手がどう過ごしているかには嗅覚鋭いみたいなんで、自分は大丈夫なんて思っていると、足元掬われるかもな」 中々に困った習性の持ち主である。上手く習性を利用できれば楽なのだが。 「説明はこんな所だ」 説明を終えた少年は、その鋭い瞳で睨むように、リベリスタ達に送り出しの声をかける。 「あんた達に任せる。無事に帰って来いよ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:KSK | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 9人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年09月13日(木)23:55 |
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■メイン参加者 9人■ | |||||
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● 「はぁ……はぁ……」 「どうした、その程度か? その程度でExスキル『女医の誘惑』を会得できると思っているのか!?」 倒れそうになる『境界の戦女医』氷河・凛子(BNE003330)に対し、『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)は厳しい言葉をぶつける。 薄暗い洞窟の中での特訓は既に三日三晩続いている。2人の肉体も精神も既に限界に達していた。 「いえ、まだ大丈夫です。続けて下さい」 凛子の眼鏡がキラッと光る。 「1人のリベリスタとして、いえ、医師として。必ずこの試練を乗り越えて見せます!」 その時、洞窟を黄金の光が包みこんだ。 ● とまぁ、そんなことが本当あったかどうかはさておいて。 エリューション退治に来たリベリスタ達は、海を見ながら夏の思い出を思い返していた。 「この夏はアークに来て直ぐに福利厚生で残りの夏休みを楽しめた。もう少しくらい夏休みがあってもいいような気はするけれども、短いからこその楽しみだ」 夕暮れの潮風を『ジーニアス』神葬・陸駆(BNE004022)はこの夏に想いを馳せている。アークに来て、それ程長い時間を過ごした訳ではない。しかし、来て早々のバカンスでは素晴らしい時間を過ごすことが出来た。 「そうですね。キャンプをしたり、花火をしたり、水族館に足を運んだり、海に行ったり……」 同じように夏の楽しかった思い出を指折り数えていた『戦奏者』ミリィ・トムソン(BNE003772)。だが、ふと物憂げな表情を浮かべる。 「気付けば、今年の夏も終わりなのですね。でも、ただ楽しいだけではありませんでした。……大きな、戦いもありましたから」 これもリベリスタの宿命と言えるのだろう。完全世界ラ・ル・カーナに赴いたリベリスタ達は、ボトムチャンネルの境界線を守るために、現地の種族バイデンと熾烈な戦いを行うことになった。日本の闇に潜むフィクサード、主流7派との小競り合いも絶えない。 しかし、そんなミリィに対して、『子煩悩パパ』高木・京一(BNE003179)は柔らかな笑みを向ける。 「夏は良いですね。昔から身も心も熱くさせる季節でしたが、今年も家族と共に素晴らしい夏を過ごせました」 夏の思い出、そこには良いものも悪いものもあるだろう。だが、プラスの方が多かったと信じて。 そこまで言って、今まで必死に視界から外していたものに対して、リベリスタ達は目を向ける。 「それにしても……」 「ほっろべ! ほっろべ! ほっろべ!」 視線の先には不気味な、と言うよりも哀れな合唱を行っている連中がいた。 水の塊のような姿をしたエリューション達。そして、それに操られている被害者の少年達である。 しかし、あまりにもシンクロ率が高過ぎて、時折誰がエリューションで誰が人間なのか分からなくなる。 「何とも言えないですね……。夏が残していった名残なのでしょうか」 そう言って、京一は無表情を装うための仮面をつける。 あのような柄であってもエリューションはエリューション。このまま放置すると、浜辺に行って暴れまわることが予知されている。同調によって一部の人間を部下に変える能力も相俟って、大きな被害をもたらすだろう。今はまだ連れている数は少ないが、増殖性革醒現象だって侮れない。 「世間ではもう、夏休みは終わっていると言うのに……彼らは大丈夫なのだろうか? いや、正当な休みであれば俺も言うつもりも無いのだが。まあ、余計なお世話、という奴か」 『閃拳』義桜・葛葉(BNE003637)は少々呆れ顔。気が抜けるようなシチュエーションなのは間違いない。だが、「世界の守護者」を自認するものとしては放置も出来ない。パンッと自分の顔を叩いて気合を入れ直す。 「今は、対処すべき者に目を向けるとしよう。まずは彼女の作戦が上手く行くことを祈るのみだ」 ● 「ほっろべ! ほっろべ! ほっろ……!?」 突然、海を騒がせていた合唱が止む。彼らの視線は一点に集中されている。 向こう側から2人の少女を連れてやって来るのは、褐色肌をした眼鏡の女性。派手な赤いビキニを着て、上から白衣を羽織っている。その下に魅惑のスタイルが隠れているのは明白だ。 (アドバイス1、夏は女を大胆するのです?) 当然、アークの戦女医にして、三高平学園の臨時養護教諭、氷河凛子だ。この時点で既に男子高校生にはたまらない魅惑のワードが盛り沢山である。 そして、修行の末に彼女が体得した逆ナンコンボはここからだった。 「きゃっ!?」 ゴミに足を引っ掛けて転んでしまう凛子。拍子に眼鏡がズレてしまう。 「お、おおおおおお、お姉さん! 大丈夫でででで、ですか!?」 「立ち上がれないなら、ボ、ボボ、ボクが手伝いますですよ!!」 アドバイスその2「ギャップが良い」の効果は覿面だった。エリューションの支配下にあった少年の内2人が、支配を脱して駆け寄ってくる。まぁ、そもそもこういうシチュエーションを望んでいた訳だし。 とは言え、さすがにこうもあけすけに来られると、逆に申し訳なくなってしまう。 (大事なのは言葉よりも姿勢だよ。もっと前のめりで、胸の谷間を見せつける感じ。あと、髪の毛かきあげる仕草加えると完璧) だが、快の言葉を思い出し、演技に徹する。毒を食らわば皿まで。最後までやり切らなくては、ここまでやった意味が無い。 (『チラリズム』『尻が大切(エッチなのはいけません)』『思わせぶりが大切』、でしたね) 快から受けたアドバイスに従い、髪をかき上げながら少年の手を取る凛子。さりげなく、強調される胸元を前に、少年達はメロメロ(死語)であった。既に彼らの視界の中から、後ろにいて、さっきまで自分達を操っていたエリューションの存在は消えている。 「こ、後学の為にも見ておいたほうが良いのでしょうか……?」 「にしても……」 そんな凛子の様子を遠くから眺めていた『孤独嬢』プレインフェザー・オッフェンバッハ・ベルジュラック(BNE003341)はポツリと呟く。 「大人の魅力……ちょっと羨ましいな。あたしなんて恋人よりずっと年下だし、顔もスタイルも性格も良くないし……」 倍近くも年の離れた恋人のことを想うプレインフェザー。彼もやはりああしたスタイルの良い女性の方が好きなのだろうか? 自分の体を見るとそんな考えが頭を過って、そんな自分に腹が立ってしまう。ミリィも顔を赤らめながら目を輝かせてしまっている。少女達の心中は中々に複雑だ。 「いけない、いけない。気持ち切り替えないと」 プレインフェザーは首を振ると、これからの戦いに向けて集中力を高めていく。今はそんなこと考えている場合じゃない。 そうやって思春期の少女が年相応の悩みに煩悶している頃、彼女の数倍生きている『少女』――『陰陽狂』宵咲・瑠琵(BNE000129)――は如何にして反応が無い1人を動かすかを考えていた。 (凛子の色香に惑わされぬ者はロリコン、或いは男色じゃな。では、試してみるかの) アークきってのトリックスターはニヤリと笑い仲間に目配せを送ると、残った1人に声を掛ける。 「あっちにもイイ娘(非合法ロリ)いるが如何かぇ?」 「へーい、ぼーい! カレー食べないかーい?」 『第28話:あつはなつい』宮部・香夏子(BNE003035)は銀色のスプーンを片手に逆ナン(?)を仕掛ける。いや、正直言葉は平板だし、胸も平板だし、正直こんな逆ナンに引っかかる奴なんているとは思えないんだけど。 「ロリっ娘から、逆ナンキタァァァァァァァ!」 ここにいた。 驚くほどあっさりと支配から脱却する少年。エリューションの支配とは別の何かから解き放たれたような清々しい笑顔で香夏子の元へ駆け寄ってくる。その姿はまさに犯罪者予備軍だ。 「これはこれで面白いが、他の都合もあるしの」 ゲラゲラ笑い声を上げながら瑠琵が呪印を結ぶと、少年の動きは封じられ、地面に倒れてしまう。彼女はそんな少年を戦場から蹴り飛ばす。 「この期に及んで貧乏籤とは哀れじゃのぅ。さて、凛子はどうじゃ?」 瑠琵が目をやると、既に凛子はモンローウォークで少年2人を連れ出していた。そして、そっとウインクを仲間達に飛ばす。これで戦いを妨げるものはいない。 そして、エリューションも戦意を昂ぶらせていた。手に入れた同志の裏切り。決して許せるものではない。怒りのあまりに止めていた進軍を、再び開始しようとする。 しかし、その前にリベリスタ達が立ちはだかる。 怒り昂ぶる夏が生んだ負の想念を前に、快は不敵に微笑んだ。 「来いよ。今年の俺は、最高にリア充だぜ」 ● 「……さて、では始めるとするか。俺の拳は、少々痛いぞ」 葛葉は右手を軽く上げ、左手を引き、戦いの構えに入った。既に戦士の表情である。 陸駆も幼いながらに戦いの準備は万端だ。 「僕は天才だから宿題はきちんとやってあるのだ。夏休みへの未練は全くないのだ」 陸駆の言葉と共に、エリューション達の周囲を不可視の刃が張り巡らせる。しかし、怒りで頭に血が上ったエリューション達がそれに気付くことは出来ない。みるみるその身を切り刻まれていく。その様子を満足げに眺めていた瑠琵が、何かを思い出したかのような表情を見せる。 「ぶっちゃけ、夏の海に思い入れが無いのじゃよなぁ。生まれも育ちも信州じゃし、暑い夏より秋が好きじゃし。成長止まって半世紀以上じゃから着る物も困らんしのぅ」 そのせいだろうか。よくよく見ると、エリューション達は瑠琵にさほど強い興味を示していない。 「もっとも……」 と、そこで言葉を切ると術具、天元・七星公主をエリューション達に向ける。 「ここへは夏の海を満喫するために来たのでな。さぁ、凍える程の冷たい雨で頭を冷やすが良いのじゃ!」 引き金が引かれると同時に、周囲を魔力の雨が覆い尽くす。水のような姿をしたエリューションだけに、喰らった姿は痛々しさすら感じさせる。その雨の中、1つの影がエリューション間を潜り抜けるように駆けて行った。 「これで少しは頭を冷やして、反省するが良い!」 葛葉の拳が触れると、凍り付いていたエリューションが内側から爆ぜていく。 (どうやら、俺も奴らの怒りの対象ではないようだな) 瑠琵にしろ葛葉にしろ、エリューションが嫉妬するような強烈な体験があった訳でも無い。それ故に、集中攻撃を受けることは無いだろう。もっとも、精神攻撃から100%逃れられる保証も無いため、警戒を怠っているわけではないが。むしろ、危険なのは香夏子の方だ。 「夏は香夏子の季節! カレー食べたり! ゴロゴロしたり! カレー食べたり! カレー食べてた充実した夏でした……ちなみに宿題はやってません」 カレーしかない気もするが、それで香夏子が充足を感じていたのも事実。すると、エリューションの怒りはそこへ向かうことになる。 『ばぁくぅはぁつぅしろぉぉぉぉ!』 エリューションが水の塊を投げつける。嫉妬の念で沸騰寸前の代物だ。 そして、それは大地に触れた瞬間、爆発を引き起こす。 もうもうと水蒸気が立ち込め、視界を覆い隠す。 並の人間であれば、吹っ飛んでしまうような一撃。 しかし、水蒸気が晴れた後、そこには1人の男が立っていた。 「そんな小さな嫉妬の炎じゃ、真夏の太陽のように充実した俺の心は焼き尽くせない!」 守護神こと新田快だ。 快が気合を入れると残っていた水蒸気も消し飛び、むしろ衝撃波で攻撃したエリューションの方が怯んでしまう。 「守護神なら耐えてみせるのだ。手加減はせんぞ!」 「まだ香夏子の夏は終わりません!」 さらに、再び陸駆の刃が、今度は快を巻き込んで宙を舞う。 しかし、倒されていくのはエリューションばかり。そこを香夏子の作り出した赤い月が、照らし出すことで、力の弱いエリューションはたちまち消滅していくのだった。 「ここからが本番です。気合を入れて下さい」 「事前に解っているのなら、ある程度対処は出来よう物だ……!」 不吉な赤い月の後でリベリスタ達を照らすのは、邪気を寄せ付けぬ神の光だ。 京一の強い意志が、平和と幸せを望む心が、負の想念を消し飛ばしていく。 「今戻りました、支援を始めます」 その光を手掛かりにするかの如く、凛子も戦場に戻ってくる。 「2人は?」 「もう大丈夫です。元気が有り余っている節はありますけど」 「やる気が有り余っているのなら、もっと別の事にそのやる気を回しても良かったと思うのですけど。……何て、此処で思っていても仕方が無いですよね」 ミリィはため息をつく。年頃の女の子に彼らの想いを受け入れろと言うのは酷過ぎるだろう。 だが、それはそれ、これはこれ。 すぐに戦場に目を戻すと、もう支援の必要は無くなったとばかりに、神の光を放つ。 全身を焼かれ悶え苦しむエリューション。 「夏はもとから苦手じゃないし、今年は生まれて初めて出来た……大好きな人と、ゴキ退治に花火に夜の砂浜デートに……あたしは十分充実してたかな」 『ミス・ロンリー』を名乗るプレインフェザーは、まだ素直になれない。 だけど、ちょっとだけ。 ほんの少しだけ、素直な気持ちを漏らす。 このエリューションが生まれたのはそんな幸せを妬む心があったから。だけど、それは幸せがあったことの証拠でもある訳で。 プレインフェザーの全身から伸びる気糸が、エリューションを抑え込み、穴を穿って行く。 焼かれた痛みに悶え、動きの鈍ったエリューションに鮮烈な輝きを放つ刃が振り下ろされる。 「そんなに嫉妬深いからモテないんだよ! もっと大らかな心を持てよ!」 ● 「今年の夏はこんな結果でも、気ィ落とすなよ」 すっかり日の落ちた海の家で、プレインフェザーは記憶操作を受けた3人の少年と話をしていた。結果として、彼らは「熱中症で倒れて気を失っていた」ということになった。最も、無難な誤魔化し方だろう。プレインフェザーと陸駆はその発見者。時間つぶしに話しているという設定だ。 「あたしも……彼氏はいるけど、相手の方が20も年上だし。《好き》になる事に年齢も性別も理由もねえだろ? 急ぎすぎんなよ」 「ま、そうだな」 「なんか美人の女医さんに介抱してもらえた気がするし、それだけでもラッキーかな」 「なんか美少女に踏まれたような気がするし、十分ありだろ」 彼氏がいると聞いて1人が残念そうな顔をしたこととか、残り2人の戯言は綺麗に聞かなかったことにするプレインフェザー。 「それよか、苦い夏の思い出を分かち合える、昔からの親友が2人もいるって……十分良い事だと思うけどな。恋には終わりがあるかもしれねえけど、友情は終わらねえし」 「また来年も夏休みはくるのだ!」 さすがに小学生である陸駆にまで励まされては、プライドの問題で落ち込んで等いられない。 「よし、じゃあ来年また頑張るぞ!」 「「おう!!」」 「ま、なんだ。頑張れよ。うん。それじゃ、あたし友達の所戻るから」 「夏だけ頑張れば彼女が出来ると思ったら大間違いなのじゃ。つか、毎年繰り返してるなら反省点ぐらい見えるじゃろう?」 戻ってきた2人の話を聞いて、花火をしながら瑠琵はそんな感想を漏らす。 手に持っている花火はミリィが持ってきたもの。折角海に来たのだから、ということだ。 「何にしろ、その様子なら大丈夫だろう。それじゃあ、少しばかり、泳いで帰るか」 葛葉は海に向かっていく。戦ってばかりでは夏だのなんだの言う感覚が無くなってしまう。だから、自分が何を守っているのか忘れない、そのために。 そして、陸に残ったメンバーへはミリィが花火を渡していく。 「まだまだ花火はありますよ。だって、今日はまだ夏休みのロスタイム。少しくらい遊んでいっても、罰は当たらないのではないでしょうか?」 戦いと戦いの間にある、ほんのひと時の平和。 そして、まだ次の戦いは始まってはいない。だったら、リベリスタ達が今を楽しむことに、何の間違いがあろうか。 パチパチ鳴る花火が彼らの顔を照らす。 そんな中、凛子はふと快に声を掛ける。 「新田さん、ちょっとよろしいですか?」 「ん? どうした?」 「新田さんはいつもそういう事を考えているのです?」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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