●いいわけ それは夜の事、とある場所を見た瞬間だった。 何かこのアルファベットを見ると、何かを思い出す。 ソードとかつければそれっぽくないでしょうか? えぇ、それだけです。 本当ですよ? ●最強最悪のアーティファクト 「フィクサード、大曲 全(おおまがり ぜん)! この一帯は私達が完全に包囲しました、大人しく投降なさい!」 可憐な少女達が一人の男を囲い、得物を突きつける。 この男は運命に選ばれてから成し遂げた事といえば、小さな悪事を重ねてこそこそと私腹を肥やすばかり。 そんな彼にも年貢の納め時が来た、そういう事だろう。 否、そういう事のはずだった。 「出来るかな? 出来ないね、お前達は俺に何も出来ず怯え竦む事になる」 「減らず口をっ!」 一人の少女が前に飛び出し、彼へと一気に迫る。 一足飛びで距離を縮めると、手甲に包まれた拳が捻転の力を込めながら顎を狙って駆け上がった。 しかし、剣を抜いたと同時に一歩下がりながら身を逸らし回避すれば、両手で柄を握り締める。 「積年の執念が篭った一撃を受けてみろっ!!」 刃からは紫色の激しいオーラが溢れ、振り下ろされた刃は神速と言わんばかりの一閃。 「はぁぁぁぁぁっ!!」 直撃した少女は体力の殆どを一瞬して奪われ……服は木っ端微塵に吹き飛び、可愛らしいパステルピンクの下着姿だけが残っていた。 「いゃ……っ」 ろくに身動きも出来ぬ少女は、美しく整った全てを隠せず、顔を真っ赤にしながらもがくのが精一杯だ。 仲間の少女達も冷たい恐怖を背筋に感じながら、震える手で得物を握り締めなおす。 「この魔剣の前に屈せぬものはいない……逃げるなら今のうちだぜ」 こうして少女達は一人ずつ、彼の餌食となっていくのだろう。 ●積もり積もりて 「せんきょーよほー、するよっ!」 相変わらず元気な『なちゅらる・ぷろふぇっと』ノエル・S・アテニャン(nBNE000223)の決まり文句がブリーフィングルームに響く。 傍には同じく黙々と資料の準備をする兄、紳護の姿もあった。 「なんかね、今度はとても変なの」 何がどう変なのか? ノエルは愛用のスケッチブックを開けば皆の方へと向ける。 男らしき人物が一つに逃げ惑うようにも見える女性らしき人物が複数、しかしリベリスタ達が目を疑ったのはスケッチブックにデカデカと書かれた一言だ。 『DT』 勿論、ノエルは相変わらず笑みを浮かべている。 彼らの反応にこてんと首をかしげ、理由を問いかけてみるも答えられるはずが無い。 「このおじちゃん、女の子の服破ってばかりなんだよ? むぅ~……ノエル、お洋服大切だからあいたくないの」 会わないで下さい。 天然少女の無垢な返答に一同面食らう中、紳護が補足を始める。 「今回のノエルの予知だが、フィクサードを捕らえようと向かったリベリスタ達が全員返り討ちにあい、全員酷い格好で帰るハメになるらしい」 服を剥ぐだけ? と、問いかける様な視線に紳護は苦笑いを浮かべるだけだ。 「まぁ……フィクサードの方はあまり度胸がない様で、頑張っても触ったりする程度が限界という未来だったがな」 つまり、勇気を振り絞ってもその程度、それは女に免疫が無いからか? 吊られて苦笑いを浮かべる彼等に紳護は言葉を続けた。 「大曲 全、フィクサードの名前だ。彼が偶然手に入れた魔剣、それはDTソードというらしい」 臆せず、さも当たり前に言い切った。 「この武器だが、孤独であった時間が長ければ長いほど破壊力を増していく。因みに大曲 全は31歳だ。まぁ……巷で言う魔法使いになったと言うところか」 これは酷い。 30年を超えた孤独の悲しみと狂気が荒れ狂い、刃と共に襲い掛かるのだ。 冷や汗を垂らす彼等に紳護は尚も続ける。 「女性は特に気をつけてくれ、何故か分からないが攻撃を直撃した場合、服が消し飛ぶ。あと、恋人がいる者も気をつけてくれ、そういうものに対してだけ破壊力は倍加するらしい。作戦目標はDTソードの回収だ」 私怨もここまで来ると恐ろしい限りだ。 細かな戦場やデータを纏めた資料をリベリスタに配り終えた紳護の裾を、ノエルがちょいちょいと引っ張る。 「ねぇねぇお兄ちゃん、DTってなぁに?」 「……一種の心の病だ、兎は独りでいると死んでしまうなんて可愛い冗談があるだろう? あれと似たようなものだ」 何となく分かったと言う顔をするノエルは、今度はリベリスタ達へ笑みを浮かべて振り返った。 「ノエルは、このお病気よくわかんないけど……ノエルの代わりに、皆がなおしてきて? きっと、おじちゃんももう悪いことしなくなると思うの」 どう返事をしたのかは分からないが、混沌した空気の中、リベリスタ達の作戦会議は始まる。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:常陸岐路 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年09月15日(土)23:49 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●悲しき男の雄叫び 大曲 全、独身31歳を迎えた魔法使いだ。 そんな彼を煽ったのは、『デイアフタートゥモロー』新田・快と、『ライトニング・フェミニーヌ』大御堂 彩花のフェイクカップルである。 「今宵は剣が疼いている……お前等を斬れとなぁっ!!」 二人の前でシュラッと金属の滑る音が響き、晒された刃は妖刀を思わす程禍々しい光を放つ。 「何アレ? ひがみって奴かしら、まさにフィクサードってところね? 歪んでる」 嘲笑の言葉を全へ、そして最高の微笑みは彼へと向けて見つめる。 「こんな小物、俺達の愛の力で蹴散らしてやろう」 「もぅ……袂さんたらっ」 腰を抱き寄せられた彩花は頬を赤らめ、気恥ずかしそうに毛先を弄る。 因みに名前を良い間違えているのはわざとだ。 それよりも御二方、DTソードが天を貫かんばかりに紫電を迸らせているのですが大丈夫でしょうか? 「ゆ゛る゛さ゛ね゛ぇ゛っ゛!」 鬼気迫る殺意の叫びと共に刃を振りぬくと、雷を思わせる一閃が二人へと一気に迫る。 避けられた刃がコンテナへと直撃し、バターに刃を通したかの如く綺麗な跡を描く。 「彩花、これが終わったら一緒に行きたい場所があるんだ。デートしてくれるかい?」 「袂さん……勿論よ」 「キッサマラァァァァッ!!」 破壊力の危険性はヒシヒシと感じつつも怒りを煽りたて、快は盾をしっかりと構えて守りを固めた。 彩花は蹴りの真空刃を放ち攻撃を仕掛けるも、全は強引なステップで直撃を避けていく。 「くらえっ!」 「きゃっ!?」 反撃と間合いをつめれば、全は彩花へと一太刀浴びせた。 手甲を纏う両手を盾の様に並べ隙間のないガードも、ビル破砕鉄球を思わせる破壊力の前ではなす術も無く地面を転がる。 「おいおい、隠さなくていいのか?」 「何を……っ!?」 弾いた刃の破壊力は彼女の服をズタズタに切り裂いていた。 今にも零れ落ちそうな胸元に、スカートの丈は更に短く刻まれ、少しでも動けばその下が露になるだろう。 「彩花に何て事を!」 いいぞもっとやれ、ではないと思いたい。 快の反撃が全の体力を減らすも、二人ではどうにもならないだろう。 撤退戦を思わせる様に交互に攻撃を続けながら、二人はある場所へと向かっていく。 時は少し戻り、作戦準備の時間。 「見せちゃうぜ、オレのSHOグォリア! 2週間先のビデオ予約も見通す神秘の力!」 テンション高く千里眼を働かせる『SHOGO』靖邦・Z・翔護(BNE003820)は、今回の戦いの要と言えよう。 2週間先のビデオ予約を見通す事が素晴らしき神秘なのかはともかくとして、エリア全体を見通して作りを把握していく。 入り組んだこの場所を上手く利用し、袋叩きにするのが今回の作戦である。 「見えちゃったぜ! 俺の目に勝利の方程式が!」 早速全員へ使用できそうなポイントを伝えていき、情報の共有化を行う。 それと同じくして、3人のぶつかり合いが始まるのも見えていた。 「始まっちゃったようだぜ~? 皆っ、俺の目に任せておきなっ!」 溢れんばかりの自信は素晴らしいが、何故指にカードを挟んでいるのだろうか? 「おい、風斗、足引っ張んなよ」 『折れぬ剣《デュランダル》』楠神 風斗(BNE001434)の足へ『イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)が蹴りを入れる。 何故蹴られるのか分からぬ風斗は訝しげな表情を見せるも、夏栖斗はお構い無しといったところで気にも掛けない。 (「それにしてもさー、女子の服を脱がす剣なのに、なんでこんな男ばっかなんだろうなぁ~」) つまり、ラッキースケベを狙って集まったら女の子は一人だけだったと言うお約束的な残念オチが実現したということだろう。 (「30年以上におよぶ孤独……それが、あのような怪物を生み出してしまったのか」) 風斗は生真面目な思考を巡らせつつ翔護から指示されたポイントへ移動し、身を潜める。 (「コードネーム・ドラゴントゥース。略してDT。今回の作戦、大曲 全の打倒とDTソードの確保。が、それは表の目標。裏のミッション内容は……」) 『髪の守護天使』結城 竜一(BNE000210)は何故かずっと囮の二人の傍にいた。 気付かれぬ様に気配を殺し、着かず離れずの距離からカメラを構え、二人の映像を納めていく。 先程のサービスカットも余さず映像に焼き付けながらも、翔護から指示されたポイントへと移る。 (「高まれだとか言うが違うだろう、何か生まれるもんじゃねえ、何も生み出さない、無情で非情なもんだろう、この力……!」) 『トランシェ』十凪・創太(BNE000002)は、全の悲しみに共感しつつも、彼の力の哀しさも実感していた。 そしてもう一つの感情も。 (「……演技とはわかっててもこう、まあ、耐えろ俺様」) 研ぎ澄まされた視力は遠くの3人を逃さず見つけ、コンテナから見え隠れする様子も見て取れる。 戦う前からイチャついていた映像も見ていただけあって、戦いからは生まれぬ難ともいえぬ感情に胸がジクジクと痛む。 (「全く……本末転倒な事をしているのではないかね」) 遠くで聞こえる戦いと怒声の喧騒に、『Dr.Tricks』オーウェン・ロザイク(BNE000638)は呆れたように、心の中で呟いた。 翔護からの通信を耳にしつつ、今は作戦開始の一瞬を待ちわびる。 一方、二人は目的のポイント間近だ。 彩花の姿は先程よりも更に悪化しており、白いブラが完全に晒されてしまい、少しでも変なところに引っ掛ければ……誰が見てもわかるほど。 スカートにはスリットが入り、目のやり場に困るようなカッコウにまで追い込まれている。 だがこうして、目標ポイントまで到達する事が出来たのだ。 『このタイミング! 君の周囲にムッツリ六人衆をコールだ!』 一斉攻撃の合図と共にT字路の影やコンテナの上から、潜んでいた仲間達が一斉に攻撃を開始する。 「ちゃーっす! 貴方の町の御庭番☆悪いDTは悪即斬アークでーす! 悪い魔法使い退治にまいりました!」 夏栖斗の踵落しから放たれる強烈な刃が。 「さあ比べようぜ、どっちの無常が上かをな!」 創太の落雷を思わせる稲光を放つ一閃が。 「なんて悲しい目をしたメンズなんだ……! でも別にいいや、今月厳しいキャッシュのためにパニッシュしちゃうぜ!」 翔護の一ミリのズレも感じさせぬ、精密連射が。 3人の攻撃が一斉に交わり、全へ大ダメージを与えていく。 これには堪らず彼も膝をつき、ダメージの度合いが感じ取れるだろう。 「今だ、袋叩きにしてしまえ!」 「任せろ!」 一間置いてオーウェンが幾つもの呪印を束ねた束縛の力を放ち、全の動きを奪う。 呼応する様に竜一が闘気が爆ぜる程の激しい追撃を見舞い、全を吹き飛ばす。 更に彩花と快も続くが、ダメージを受けながら呪いの力を惹き千切り全は立ち上がる。 ●DTだからって 「そう、オレもかつては友もおらず、一人剣を振るうだけの人間だった」 一斉攻撃には参加しなかった風斗は、静かに姿を現すと全へと語り掛ける。 「だが、アークに入り、仲間たちと触れ合うことで、オレには友と呼べる者たちを多く得ることができた! 大曲さん、今からでも遅くはない! リア充への道は、すぐそこにあるんだ!!」 言葉は何も無い、静まり返った空気に説得が効いたと彼は錯覚し、手を差し伸べるが。 「ふざけるな! 俺はDTで、独身暦31年ってところに嘆いているんだ! 勝手にぼっちキャラにするんじゃねぇっ!」 この場でいうリア充=彼女持ちであり、普通の充足に飢えているわけではない。 馬鹿にされたと勘違いする全は剣を振り下ろす。 「ぐぁっ!? 大曲さん……っ」 怒りもたっぷりと篭った刃は破壊力抜群であり、寸前の所で身を捩って直撃は避けたものの、肩から伝わる鋭い痛みに顔を顰める。 「なぜ俺たちが争う必要がある! DTがDTを傷つけるだなんて悲しいことはやめろ!」 竜一が間に割り入る様に飛び込むと、和洋の二刀流を振るう。 「童貞を守れなくて何が守れるっていうんだ! いいか! 童貞っていうのはピュアなんだ! この汚れた世界で唯一の宝石のような輝きなんだ! お前は間違ってない!」 攻撃の途切れ目に入れ替わる様に夏栖斗が入れば、言葉を繋げていく。 「お前が非リアなのはDTだからじゃない。なぜなら俺達DTだけど皆リア充だから。……8股とかいるし、10だっけ?」 快が続き、共明確な敵は一人、風斗と視線で見やることで丸め込もうとする。 「何の事だ!?」 無自覚とは恐ろしいと、場にいたDT三人衆と創太がジト目で風斗を睨む。 「俺たちは分かり合える! なぜ理解しようとしない!」 「俺はフィクサードだ! お前等と仲良くできるわけ無いだろ!」 翔護の飛び道具を掻い潜り、その隙に間をつめた彩花が強引に全を地面へと叩きつけようと拳を振り下ろすも、腕をクロスして直撃だけは避けた。 「誰とも交わろうとしないその性根が、今のお前を生み出してしまったんだ。DTは理由じゃない、結果なんだ」 快の言葉に反論の言葉が直ぐに浮かばず、全は自分自身に確かめる。 「友よ!お前は一人じゃない! 俺がいる! 俺たちがいる! 俺が、俺たちが、DTだ!」 どこかで耳にした事があるようなセリフなのは言及しないとして、友という言葉はかなり彼に好印象を与えたのだろう。 この時点で光は収まっていた。 「俺の夢は誰かの夢を護る力。だから敢えて厳しい事を言った。大曲さんが再び夢を取り戻せるように……共に行こうぜ、『卒業』への道程を!」 「な、お前は童貞と一緒に世界も護るんだ。まだ、やり直せる! アークには彼氏のいない肉食女子も多いんだぜ? こいよ! 大曲! この手をとれ!」 これで説得できれば戦いは終わる。 心の底から共感できる仲間が、友が目の前にいる。 もう何も怖いものはないと、差し出される手に手を伸ばそうとする。 「アークにきたら彼女が出来ました、いやマジで」 ビシッ。 最後の一言は余計だったかもしれない。 何かを察した全は、ワナワナと肩を震わせると刃はどす黒い程の紫を取り戻す。 「お前等DTでもリア充じゃねぇかぁぁっ!」 「ちょ、ま……っ!?」 溢れんばかりの悲しみを込めた生か死の一撃は夏栖斗を捕まえ、風斗を盾にしようと夏栖斗ではあるが、残念ながら手は届かない。 防御力を嘲笑うような力は彼の意識を一瞬して焼き尽くしてしまいそうなほどのダメージを与え、振り下ろされた刃一つで、彼の体は地面へ叩きつけられた。 (「彼もそうですけど、快さんも、きちんとした恋人がいる立場ですし。それなのになぜDTなのかしら?」) 彩花は地面でピクピクと痙攣する夏栖斗を見やり、それから快へ視線を合わせる。 世の中、そう上手くいかないものだ。 ●傷口に塩 「そもそも、その様にキレ安く、その様な怪しい武器を振り回す性格故に未だDTなのではないかね」 DT達の説得が失敗したところで、今度はオーウェンが正論を武器に説得を続ける。 「例えお前さんを好きな女性が居ようと、その状態を見れば逃げ出すであろうな」 御尤もだ、しかしながら全の悲しみは常識で答えられるほど浅くは無い。 「俺のことを好きな奴なんかいるわけねぇよ!」 いればこの31年間に何かの変化を得られたことだろう、成程と言うように納得した様子を見せるオーウェンの言葉は容赦なく続く。 「そうだったか……しかし彼女と言う物はいい。実にいい、共に観覧車に乗り、膝の上に乗って抱き寄せられた時は……な」 「や゛、や゛め゛ろ゛ぉ゛ぉ゛っ!」 現実と妄想の間は大きく、脳をミキシングされるかのように全にとっては破壊力抜群である。 頭を抱え、悶え苦しむ様子は勝負ありといっても過言ではなかろう。 「君は素直にキャッシュからウォッシュ☆する店とか行ったらいいと思うんだよね、ロザ君。割引クーポン貸してあげなよ」 マイペースにするべき事だけ済ますような提案をする翔護、何故か話を振られたオーウェンも困った様に笑みを零しつつ少し違うとツッコミを入れる。 「我らには彼女の経験がある者も多い。降参するのならば教えるが……?」 「だからって、俺がそれだけで出来る筈ないだろぉっ!」 見た目も中身も劣等感の塊と化した全の刃は止まらない、オーウェンの体力も大きく削がれてしまい、回復要員がいない分が大きく響く。 そして流れを変えようと風斗が全の前へ立ちはだかる 「恋人か……そんなの、別にいなくてもいいんじゃないか? ああ、でも結婚はしたいかなあ。でも、生きていればそういう相手にも巡りあえるだろう?」 「そんなものあるはず無いだろ!」 どうしてだと心の中で思いつつも、風斗はどうにか言葉を繋げていく。 「い、いや待て! あんたもアークに来ればすぐに女友達ができるって! オレにだってできたんだから、間違いないって!」 「10股野郎の言葉何ざ信じられるかぁっ!」 まさに取り付く島の無い状態、そしてここに最後の希望が降り立つのである。 ●傷 「……30年、か。長かったんだろうな。だがまだ人生は続くんだぜ。……ここで諦めるか?」 沈黙を護っていた創太が口を開く。 「良いか、世の中にはな噂だけしか聞いてねーけど何人もキープしてたりだな、会うたびいちゃこらしやがってたりな代表面して全員彼女持ちだったりな」 風斗を見やり、それからDT三人衆を見やり、そして全へと視線を合わせる。 「……わかるか!そんなリア充で溢れてる中で生活してみやがれ!! 年数だけじゃねーんだよ! それ以上の悲しみってもんはな!溜まってくんだよ!」 悲しみを感じるのは一瞬かもしれない、だが彼はそれをいつも何時も感じていたのだ。 ある意味、全と立場が一番近い創太の言葉は、彼の胸奥深くへと響く。 「だからまだ、よ。希望捨てずに生きて行こうぜ、いつかの明日で幸せになれるよう……」 「だからって、そうですかと納得できねぇ」 そうかと苦笑いを浮かべる創太はバスタードソードを構える。 ならば力で語らうのみ、全も同じ想いで刃を光らせた。 「うぉぉぉっ!!」 ほぼ同時。 二人は地面を蹴ると正面からぶつかり合い、刃を振り下ろす。 放つ技は同じ、デッドオアアライブ。 片方は悲しみにくれ、壊れてしまった力。 もう一つは、まだ悲しみに絶望しない希望の力。 リア充爆発しろと、二人は心から思いつつも己が答えを押し通さんと振り下ろした。 「はぁっ……はぁっ……」 剣圧の嵐が吹きぬけ、両者の動きが止まる。 崩れ落ちる全の姿は戦いの勝利の証、そして希望が勝った喜ばしき結果だ。 「馬鹿野郎……がっ」 あと一歩踏み込まれていたら創太もやられていたかもしれない。右に左に揺れる意識の中、全の傍に辿り着くと転がっていた恐るべき魔剣を奪い取る。 柄頭の部分にDN18という名残が残ったそれを。 「今日の事は綺麗さっぱり忘れて下さいね?」 戦い終わり、彩花が男達の方へと振り返りつつ忠告を促す。 因みに夏栖斗は見た場合のデメリットが大きいと、必至に視線を逸らし耐えていたが……他の男達はどうだろうか? 自分に掛けた仮染めの人格を解くと、口調は一変した。 「いいから忘れろ」 カメラを回していた竜一へと近づけば、素早く隠し持ったカメラを奪い取り、地面へと叩きつける。 「嗚呼……!?」 文句一つ許さないと指を鳴らし、額に青筋でも浮かびそうな憤怒の形相に、竜一は地面に崩れ落ちる事しか出来ない。 他にも見ていたと思われそうな……ところといえば、創太や快だろうか。 翔護やオーウェンは紳士的なので除外、風斗はあまり意識してはみていなさそうだと思うとこれも除外。 夏栖斗はお仕置き候補に挙がり、じろりと睨みつける彩花の視線に顔面蒼白である。 「見てない! 見てないから! 見たらチクる奴多すぎるし!」 おもいっきり顔を背け、両の掌を突き出し無罪を主張。 すいっと視線が逸らされると、今度は二人の方へ拳に炎を宿しながらカツカツと進む。 しかし、あの激戦の結果、白いブラもどうにか原形をとどめた程度、ストッキングは完全にズタズタで白い肌と可愛らしいショーツが見え隠し、かなり扇情的な様子である。 歩くたびに胸元が揺れるのが良く見える。 そんな格好でお仕置きするのは寧ろご褒美の様にも思えるが、当人は気付いているのだろうか。 (「バカが! 真の目的は、すでに達せられている!」) 竜一の目的は、最初に捉えた彩花と快のデートシーンである。 これさえあれば色々と楽しめそうだとほくそ笑み、気付かれぬ様静かに帰路へ着こうとする。 「待ちなさい」 女の直感で再び彩花は竜一を追いかけ、悲しき物語はここに幕を閉じた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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