● 「ビーチコーミングなのだわ!」 どっやー! てな顔で『深謀浅慮』梅子・エインズワース(nBNE000013)が叫ぶ。 夏の日差しが照り返す砂浜であろうとも、こやつは相変わらず暑苦しい。 「びーち、こーみんぐ?」 やる気なく聞き返したリベリスタを、ほかのリベリスタがおい、と慌てて止めようとするも、時既に遅く。 「そうよ!!」 ああほら、嬉しそうに反応しちゃったじゃないか。 ● ビーチ・コーミング。 くしで髪の毛をとくように浜辺を探しまわる、とでも言えば良いだろうか。 例えば、砂浜で綺麗な貝殻を探して回るのは、この遊び方ということになる。 本来の意味では、売れるようなものを探し回る、といった意味合いがあるようだが――まあ、この際そのあたりは気にしないで良いだろう。現に梅子が手にしているのは、波に削られすっかり丸くなった色硝子の破片、らしきものだったりするのだから。 「この砂浜、人はあまり来ないわけだから、結構面白いものが落ちてるのだわ。 さっきも、大きな流木を見つけた――んだけど、重たくって、そのまま置いてきたの」 少し唇を尖らせ、何やら不満そうにぶつぶつ言う梅子の言葉を聞き取れば、「ぜったいあれ、座るのに手頃な大きさだったのだわ」とか言う不穏な声が聞こえてくるのだが、そういう思いつきで拾ったものは大体にしてろくな事にならない。部屋を圧迫したり、ほかのインテリアとの統一性の無さから、しばらくすればごみになること請け合いなのである。――実体験ではない。と、主張はしておく。 「まあ、浜辺なのだし? 泳ぎたかったら泳いでもいいと思うのだけど」 貝殻拾いとか、そういう乙女チックなのも良いと思わない? ――なんて、梅子が笑っていったその笑顔は、珍しく素直に可愛らしいものだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ももんが | ||||
■難易度:VERY EASY | ■ イベントシナリオ | |||
■参加人数制限: なし | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年09月10日(月)22:47 |
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● 寄せては返す波に乗り、潮の流れに流されて。 ――どれくらいそうやって、ここにたどり着いたの? 足元の椰子の実を拾い上げ、梅子は小さく呟いた。 もっともその実はどう見ても真新しいのだが――彼女の感傷(らしくもなく!)に水を差すこともないだろう。 「梅子ー!!」 誰かが彼女を呼ぶ声に「プラムなのだわー!!」と騒ぎ立てた梅子は椰子の実をその場に放り捨てて駆け出し――その種子のことは、すぐに忘れてしまった。 ● 「ある時オレに送られてきた謎のカード『センドーシャ』。 オレは訳も解らぬまま終わり無きカードファイトの渦へと飲み込まれていく――。 ふと立ち寄った砂浜で感じる気配。ヤツこそオレと戦う宿命を持つ男……SHOGO!」 「夏のビーチでエロエロイチャイチャするために必要なもの、それは勝利へのイメージ! イメージしろ……夏のビーチを制するオレ達の姿! それがカードファイト・センドーシャだ!」 浜辺に置かれた折りたたみの安テーブル。それを挟んで禍原 福松と靖邦・Z・翔護が睨み合う。 先に動いたのは――福松。 「スタンドアップ・即・センドーシャ! 『初陣の痴漢候補生』! そしてライド! 『ネイブルゲイザアッー! ドラゴン』!」 何やら叫びながらカードを取り出し、「今、己の道を切り拓く先導者の物語が始まる」と重々しく告げるその姿は――端から見ると恐ろしく間が抜けている。 「センドーシャは簡単で凄く楽しいんだぜ! そこのお前も一緒にどうだ?」 そのテンションのまま、まるでCMに出てくる少年主人公のような表情とサムズアップで、ぼーっと浜辺を見ていたエリス・トワイニングに声をかける福松。 「……ん、やめとく」 あっさり断られてしまった。 ● ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァが太陽に向けて背を伸ばし、吠える。 「泳げ! たいやkぐぇっほごほがほっ」 むせた。 「海が! 呼んでいる!」 新田・快も何か吠え出した。暑さで機械部分がショートしたのかも知れない。 「こんな綺麗な海、日本じゃ離島か沖縄に行かなきゃ味わえないからね」 そう言って沖に向かって走りだした快のつま先に砂の感覚がなくなったころ、手で一気に水をかきだした。 「よっし、オレも! うおおおおお!」 その直後に泳ぎ始めた焦燥院 フツと、それを聞いて一瞬泳ぎを止めて振り返った快の視線がぶつかる。 ――にやり、と。 どちらが先に浮かべたかわからぬ笑みを浮かべたと思うと、メタルフレームどもは競争を始める。 「……何を言っているのだ私は。まかり間違っても焼き和菓子が海を泳ぐはずもあるまいし、店のおじさんと喧嘩するはずもないし、つーか毎日毎日同じヤツ焼いてるのって売り上げの前に衛生上大丈夫なのかおじさん。だから売れないのか」 何かブツブツ言っていたベルカは、やがて頭をぶるる、と振ると思考を切り替えた。 「泳ぐぞー! 犬ビスハだからとて犬かきと思うなよ! 私のアークでの教育担当・K教官直伝の古式泳法を見よ!!」 そう叫ぶなり、ざばあと波に潜り、 いぬがみけ! その独特のポーズを取ったと思った瞬間、波に押されて海に沈むベルカ。 「……ぶっはちょっこれ鼻にめっちゃ海水入るって死ぬマジで鼻がしょっぱいよー!!」 何をやってるんだ。 「梅子ちゃーん! うちと一緒にいちゃいちゃしましょうよ! いいじゃない女同士、桃子さんの居ない今くらいちょっとうちと遊んでくれても!」 「ぷーらーむ!! 桃子がいないからって瞑と遊ぶこととイコールにはならないのだわー!?」 浜辺で大騒ぎする津布理 瞑に、梅子はきー!! と鳥の鳴き声のような声を揚げて抗議した。まあ概ねいつものことである。 「一緒に泳ぎましょうよ! うちは泳ぎも得意なのよ! 皆には引き籠りニートって思わせといて運動全般得意なのよ、昔は運動部だったし! と、いうわけで梅子ちゃん泳ぎましょうよ! 波が、太陽が、海が、うちに輝けと囁いているわ!」 「なんとなく海が呼んでいる気がしたので泳ぎにきましたが――梅子さんと泳ぐなら、ぜひわたしも」 テンション高く梅子を引きずる瞑に、波多野 のぞみも賛同の声を上げる。 「羽が! 羽が重たくなるのだわ!! ていうかそういうことはっ、彼氏とかいないの!?」 はぐはぐちゅっちゅな勢いに何かの恐怖を感じた梅子が喚く。 ――その瞬間、時間が静止した。 「…………居ねーYO! うっせーYO!」 「あ。津布理さんが海に向かってすごい勢いで走っていくわね」 「あの全力移動きっとDA入ってるのだわ」 瞑→ヽ(`Д´)ノ<もう来ねえよ! ウワァァーーーン 「浮くのって得意なんですよねー何ででしょう?」 そう言って首を傾げる鈴宮・慧架。産まれる前、人間は皆泳いでいたという。水から離れ、成長するに従って、水に関しての不快な記憶――水が気管に入った、など――を身につけ、その結果泳げなくなったりするのだとか。もっとも、それもひとつの防衛手段なのだろう。赤ん坊を水に入れると確かに抵抗なく泳ぐが、母胎にいた時と同じように水を躊躇なく飲んでしまうため、水中毒を起こす事もあるのだから。 「最近は激戦続きで羽根を伸ばす機会も無かったですし丁度いいでしょう。 まあ、私はその激戦に全く関わってきてませんけど」 フリルの付いたワンピース水着のモニカ・アウステルハム・大御堂は浮き輪を手にしながら泳ぎつつ、まったくもっていつも通りの調子である。 「これでも結構楽しんでます。顔には出ないでしょうが。本心ですよ」 ――訂正。楽しんでいるようである。 (モニカさんって浮くのかな? ……多分浮くとおもうけど) 慧架の脳裏に機械化部位を下にして水に半分沈む(表情はいつも通りな)モニカの姿が浮かんで消える。 ――いぬがみけ(おかわり)。 「? どうかしましたか」 「い、いえなんでも! お魚さんとかみてみたいな、ごーごー!」 「梅子さーん! 何か見つかったー? こっちで面白いもの見つけたよ」 「プラム! なに? なになに何があったの?」 飛び回る梅子に、浜近くまで戻ってきた快が声をかける。その近くには御来光、違ったフツの姿もある。 「ほら、なまこー!」 そーい! 「ほぁーーー!?」 顔でベシャリと受け取ってしまった梅子が、正体がバレた悪魔男(映画版)のような悲鳴を上げる。 「後は……アカナマコ(そーい)、次に、ンー、アオナマコ(そーい)。そして……おお! 欠かせないよな、クロナマコ(そーい)」 「やあぁっ!? ぬるぬるして気持ち悪いのだわ……!」 快に続いてフツが投げたナマコも見事に(?)全身で受け止め、梅子は既に半泣きだ。 ――何が何だか、頭の中で追いつかなかったようである。 「楽しそうなことをしているな! って、マナマ、マ……モモコ?」 ざぶざぶと波を蹴って寄ってきたベルカが、何か聞き間違えたらしく首を傾げる。 「いや、モモコはヤバイ。返り討ちにされて、こっちがナマコ状態にされる」 何故か即答したフツがクレナイオオイカリナマコを捕まえた方がマシだぜ、とか何とかぶつぶつ呟く。 「ひ、ヒドイのだわ、急にこんなの、びっくりするじゃない!」 ようやく事態を把握して喚きだした梅子が騒ぐのを見て、快が笑う。 「ははは、ごめんごめん。でも水が綺麗なところのなまこって、何だか綺麗じゃない? ――怒るなって。今度は本当に綺麗だから。投げて渡すね」 梅子が涙目で魔力を手に集めだしたのを見て、快が宥めるように笑い、 「いくよー! はい、うみうしー!(そーい)」 「ひゃあああー!!?」 なお、砂浜からは沖合に荒れ狂う炎が見えたという。 ● ざり、と砂を踏みしめて、式乃谷・バッドコック・雅が手を打ち鳴らした。 「っし、作るからにはデカイの作るわよ! ……と言っても、こんな事すんの初めてだけどね。まあ、なんとかなるなる」 それを聞いてうむ、と頷く焔 優希と、にこりと微笑む三輪 大和。 「共に砂の城を作るという試み、滅多にない機会である」 「砂のお城作りなんて、いつ以来でしょうか。 ちゃんとできるか自信はありませんが、みんなで作るならきっと大丈夫ですよね」 深く頷いて大きく胸を張った雅だったが、ふとしゃがんで砂を手に取る。 「砂の城作る時は砂の目が細かいところが良いって小耳に挟んだから、まずは場所選びねー……と、思ったんだけど」 さすがは時村のプライベート・ビーチ、ということか。浜辺は見渡す限りさらさらとした砂が続いている。岩場などであればまた違った荒いものもあるのだろうが――わざわざ探しに行く事もないだろう。 「うむ、このあたりなら遊んでいる連中ともぶつからないだろう。 三輪と式乃谷は言わば和と洋――どんな城になるだろうかな?」 「さあ、すっごいの作りますよ! 頑張りましょうね。雅さん、優希さん」 「勿論! ……って、ふたりともバケツ準備してたの?」 言うなり固めるための海水をバケツに汲みだした二人の、用意周到さに雅が目を見張る。 「ふふ。スコップもあります」 「砂で作る城とやらは意外に難しそうだが、砂の追加ならばいくらでも任せろ。 なんなら地面を掘って、砂でも土でも用意してくれるわ!」 柔らかく笑う大和と、力強く請け負う優希。 ● 「浜辺で夕日に向かって叫んだりするアレでしょうか? それとも浜辺で地獄の強化合宿でしょうか?」 堂前 弓弦が、ビーチコーミングとは何でしょうか? と首を傾げたのが、今からだいたい30分前。 「ビーチコーミング……って宝探しのようなものなのねぇ」 「海が綺麗だよね。天気が良くて良かったよ。折角のバカンスだし楽しく騒げた方が思い出になるしね」 半袖のパーカーを羽織った深町・由利子が、なるほど、と頷きながらそそくさと潮干狩りの道具を隠し、祭雅・疾風も取り合えず持ってきたコーム(くし)をポケットに入れ直している。 大丈夫、ドヤ顔で説明した梅子はまったく気がついていない。 「日差しがやばそうなんで、しっかり対策せんとのう。 えーっと、日差し避けのサンバイザーにサングラス、熱中症用の飲み物も完備、完璧じゃな!」 手ぬぐいを肩に掛けたレイライン・エレアニック。さすが年の功と言うべきか、完璧なおばちゃん状態。 「オバちゃん言うにゃぎゃー!」 還暦()。 「それにしても、素敵な所ですね。波打ち際に揺蕩う貝殻は桜色をしています」 桜貝をしげしげと見つめる弓弦。薄く、指先に少し力を入れれば割れてしまいそうになるそれを誰かに見せようかと周囲を見回し――ソレに気がついた。 「アークが用意してくれたせっかくの休日、楽しまないとねぇ。出張丸富食堂in南の島ビーチだよっ!!」 丸田 富子がバーベキューの準備にも似た一式を広げ、上に乗せた鉄板の真ん中に蕎麦を落とし、ソースをかけた途端、一気に広がる香ばしい香り。皆が手を止め、徐々に富子を囲む形で輪を描きだす。 「夏の浜辺といえばやっぱり焼き物だよねぇ。 イカ、えび、ほたて、海鮮のてんこ盛りに牛串、チキン香味焼き、ジャンボフランクにあとは……具沢山の焼きそばだねっ」 異議なし!! 「HAHAHA! さぁ食べとくれっ! お富特製の浜辺焼きスペシャルだよっ!!」 「「「「いただきまーす!」」」」 三高平団地御一行の多くが一斉に、箸を手にして声を揃えた。 \ひゃっふー/ 「まこちゃんたちとはまべであそぶの~~っ♪♪」 食べた後からいきなり元気なテテロ ミーノや五十嵐 真独楽たちが、波打ち際へと駆け出していく。勢いに巻き込まれるように波を蹴立てたレン・カークランドも、こうして度々団地の皆と遊ぶのを楽しんでいるようだ。3人とも、波しぶきを受けて上昇したテンションそのままの勢いで水を掛け合い、笑い合う。 「あははっ! そうだ、みんなでビーチコーミング勝負するぅ? いちばんイイモノ見つけられた人の勝ちねっ! えへへ、負けないもん♪」 海賊だからね! とヤル気に燃える真独楽の背後に、ゆらりと立つ影があった。 結城 竜一である。 「団地の皆で遊ぶのは楽しい。 ――なので、団地のマスコットたる、まこまとミーノを埋める! 砂浜に!」 謎の理論をぶちあげながら真独楽を抱え上げ、浜辺にいつの間にか掘っていた大きな横穴に横たえた、と思った次の瞬間には真独楽は埋まっていた。 「ふにゃっ!? まだ全然泳いでないのにヤダァ!」 「ミーノとまこちゃんにすながたくさんもられてい~く~の~!? このこえはるーいちのしわざっ!?」 あっという間に、ミーノも竜一の蛮行のギセイとなってしまった。 \どどーん/ ←りっぱなすなやまにうめられたふたり。 「ぷりーずへるぷみー」 「あ……でも、砂の中って、意外と涼しくて……気持ちいいかも? ……って、快適さに驚いてる場合じゃないっ。折角海に来たんだから遊びたいよぉ、誰か助けてー!」 じたばたするミーノと、脅威の適応力を発揮しかける真独楽。 「ふっふっふ……あれだ、砂でぼんきゅっぼーんなスタイルを形づくってやろう! ホンマ俺の優しさは天井知らずやなぁ!」 恐るべしケガハエル。 「いや、もちろん顔は出してだよ!? それなりに安全に気をつかってだよ!」 そういう問題なのか、ケガハエル。 「おや、綺麗な貝殻じゃにゃ。お土産に持ち帰ってみるかえ。 家に飾るか……テリーにも見せてやりたいのう……」 はっきりとした桃色から白へのグラデーションを見せるイタヤガイを見つけて、うっとりと目を細めるレイライン。春だ。何とは言わないが、春だ。他にも綺麗なものはないかと辺りを見回す。 「おっと、あそこに落ちてるのは真独楽とミーノかえ。……って何埋められてるんじゃぁー!?」 一瞬普通に受け流し、それから慌てて駆け寄ってわっせわっせとスコップで掘り返す。 「い、今出してやるからのう!」 「うー、出たら竜一を埋め返すっ!」 「るーいちにはまこちゃんとミーノをうめたばつとして、だんちのぜんいんにラムネをおごるばつなの~!」 「竜一君か」 掘り返すのを手伝いに来た疾風が、二人の恨み節を聞いてひとつ頷く。 ぎくり、と一歩後退る、竜一。 竜一達が砂遊び(?)に興じている頃、インコ頭をキョロキョロ動かし、周囲を見て回るカイ・ル・リースが、感嘆の溜息を混じえた感想を漏らす。 「キレイな海は落ちてる貝も綺麗なのダ~」 カイから遠くない陸に近い場所で、ウラジミール・ヴォロシロフが袋を二つ取り出す。ひとつは三高平市指定燃えないごみ袋、もうひとつは柔らかい布でできた袋だ。 「ゴミ袋と貝殻袋は用意した。 危険物があれば皆が怪我をしないように回収するとして、ちゃんと分別をしておきたいところだな」 「ウラジミールさんもビーチコーミングするのカ?」 「あの分では満足に集められないだろう。後で貝殻は皆で分けるつもりだ」 問われたウラジミールは少しだけ苦笑に似た表情を浮かべ、遠方で砂に埋められた真独楽とミーノを示す。それを見て、カイも納得した様子だった。 「吾輩はヒトデを探しているのダ。砂浜に干してカラカラに乾燥させるト、可愛いオブジェになるのダ」 「ヒトデか。手で持つだけでは限界があるだろう。使うといい」 ウラジミールがそう言ってカイに渡したのは、小型のバケツ。 「助かるのダ。団地の皆さんにもプレゼントするのダ。お星様あげるのダ」 小刻みに頭を動かす仕草――インコのよくやる頷き方で、カイが感謝を示す。 ――余談ながら、この島に今いるのはアーク関係者が殆どである。 幻視が使用されていれば美中年同士の会話だったろうにと思うと、書いてる人には悔やまれてならない。 設楽 悠里は離れた場所に一人座っている宮部乃宮 火車の前に立つ。 「悠里も遊んで来いよ。ここまで引っ張り出した上、オレに付き合う事もねぇぞ?」 火車がどこか投げやりな声を悠里に向けた。 「折角外に来たんだからさ、遊ぼうよ」 「……気にすんなよ。お蔭様でな、そこそこ気分転換してる。 確かに? 仕事仕事で休みも部屋居て腐っててもしゃーないわな?」 (悠里は悠里で色々凹んでんだろうな。これはこれでまた面倒なやっちゃ) そう思いながらポケットの中の結晶に触れる火車。目の前の相手に渡された『残滓』の、仄かな温かさ。 「夏は元々好きだしなぁ。リゾート気分でのんびりってのも悪かぁねぇや」 「……そっか。うん、じゃあいいよ。どんな形でも楽しんでるならいいんだ」 「どうした? みんな寂しがるぞ」 ざくざくと足に絡む砂が邪魔そうな様子で走ってきたレンが、話の途切れた二人に声をかける。 どうした、などと言いながら、レンにも本当は察するものがあった。 欠落の存在。ドーナツの穴の存在証明。 「なーんでもねーよ」 「思い出をたくさん作ろう。楽しい思い出を」 勢いをつけて起き上がった火車をまっすぐに見て、レンははっきりとそう言った。 「あぁ、そうだな。そりゃごもっともな話だ」 逡巡にも似た間が落ちてから、火車は口の端を片方だけ吊り上げてレンの背中を叩く。 「んじゃ、埋められた竜一の髪の毛でも毟るかぁ!」 目線の先には、主に疾風とレイラインの手によって半分埋められた竜一の姿がある。 「お、俺も竜一を埋める!」 「あはは! 竜一くん可哀相だなぁ!」 言うなり走り出すレンと、それを見て笑う悠里。 火車は竜一の頭に手を伸ばそうとして、その前に真独楽とミーノの頭に手を伸ばす。 軽く撫でるその様を見て、悠里は少し安心した。 ――少しは元気が出たのなら、半ば無理やり連れだした甲斐はあったということだろう。 ● 「はいどーもキモオタです」 浜辺のビーチパラソルの下で体育座り。浜辺だと書いてるにもかかわらず何故かプールサイドを想像してしまう様相の七院 凍が、自分に歩み寄った人影――翔護にローテンションな自己紹介をする。 「砂浜にうっかりぼっちで置いていかれた任意の君。そう君さ。 すぐに遊べるトライアルデッキで、君もセンドろうぜ!」 「……キモオタがなんでリア充のステージと呼ばれる海にいるかって? 式神のシノ(幼女)の面倒を押しつけられてさ……。 ほら、海辺ではシノが楽しそうに遊んでるだろ? まあボクは遊んでやんねーけど」 語尾に草が生えてそうな喋りで、CMっぽい翔護をスルーする凍。彼の言葉通り、波打ち際では1mほどの身長の少女の姿があるのだが――翔護は何かに気がついた顔で凍の顔を見て、バッとポーズを取る。 「スタンドアップ・即・センドーシャ! 『草原に吹く風 さぶラモール』! さらにライド! 『大いなる銀漏 ガル掘ール』!」 「まあイケメンのボクを浜辺のガール達がほっとくわけもなく、逆ナンの嵐である。『ちょっとぉ、そこのイケてるボクぅ、私にサンオイル塗ってくれないぃ?』とか、『きゃっ! そこの美少年! 私と一緒に浜辺できゃっきゃっうふふしましょ』とか。 断っても断っても断りきれない、もうほんとモテすぎてこまるわけだ……ギャルゲーでは」 (こいつ……! できるッ……!) 思わぬ強敵に出会った翔護の額に、つ、と汗が流れる。 「……ああ、虚しい」 凍、意にも介さぬ覇者の風格(?)。 ● 「桜貝かわいい……花びらみたい。 これだけ集まれば首飾り出来るかな……髪飾りとか耳飾りも捨てがたい……」 手の中に集めた、少し透き通った薄桃色の桜貝に小雪・綺沙羅は目を細め――すぐに肩を落とした。 「だけど、キサにそんな技術は無かった……貝殻に穴を開けるとか無理……」 道具はある。しかし、試しにひとつ穴を開けて見たところ、予想通りぱきり、と砕けてしまった。 中を喰われて、穴が開いている物もあるのだが――綺麗な位置で揃っているとは言いがたい。 「首飾り……」 「……道は遠そうなのだわ」 横で見ていた梅子が、渋い顔をする。 「梅、じゃない、プラムは残念だけどキサより器用そう。 桜貝に糸を通す為の穴をあけたいの。キサ、上手く出来なくて……プラム、凄く器用なんでしょ?」 綺沙羅は馬鹿カラスをうまいことおだててみる。 「も、勿論なのだわ! あたしに任せなさい!」 カラスが天狗に進化した。 ぱきり。 「……最初から穴が開いてる奴を探してくるのだわ」 役立たずに退化した。 波の底に、砂ではない赤い物を見つけ、悠木 そあらは手を伸ばす。 ――それはシーグラス、海水の中ですっかり角の取れたガラスの破片だった。 「自然の力でこんなにもつやつやになるのが不思議なのです。これも綺麗……こっちも良い形」 幾つか拾い上げ、その中のひとつを太陽にかざしてみる。 「ありきたりですけれどさおりんとおそろいのブレスレットやストラップを作ってみようとおもうのです」 その陽光の中で思い浮かべる、愛しいあの人の顔。 水中メガネを付けて海中を潜っていた鯨塚 モヨタが歓声を上げて波の上に顔を出した。 「でかいガラス発見! ……って、なんだ、プラスチックのゴミか……ちゃんとゴミ箱に入れとけよ」 でかい角にできそうだと思ったのに、とぶつくさ言いながらも海に捨てたりせず、砂の上、自分の荷物と一緒に置く。そこには既にいくつか、小さめの流木なども並べられていた。帰ったら、紙粘土の怪獣に貼り付けてやるつもりなのだ。夏休みの提出物にはぴったりのアクセントになるだろう。 そのさまを少し遠巻きに見つつ、闇影 紅麗は拾った陶製のぶち犬を眺めた。 指先サイズのそれは、今も知られるお菓子のおまけの、とても古いものらしく、右から左へとお菓子の名前の形に窪んでいるのがうっすらと見える。 「まさか仮面とか……鉱石みたいのは落ちてないだろうと思っていたが……。 夏も終わり……来年は誰かと一緒にやれたらいいな。思うのは……自由だろ……?」 尻尾が無意識に揺れ、口の端に微かな笑みが浮かぶ。 「本当、綺麗な浜辺。どんな宝物があるかしら」 (ほんとうに、お嬢様という感じですね……って、それだけじゃなくて。ちゃんといいところも見せなきゃ) 水着姿も堂々と浜辺を歩くミュゼーヌ・三条寺の後姿に、つい、という様子で見とれていた七布施・三千が慌てた様子で軽く頭を振った。犬のビーストハーフなのだから、探し物は得意なはず――と自己暗示(思い込み)をかけて、三千はきょろきょろと浜辺を見渡した。 「うーん……あっ、あれっ」 思い込みが功を奏したのか、三千の見つけたのは水色っぽい小さな貝殻。ヒメルリガイ、だろうか。 だが、それにしては。 「あら、不思議な色の貝殻ね」 物珍しそうに覗きこむミュゼーヌの瞳に、三千の視線が吸い寄せられる。――そうだ、彼女の瞳とよく似た色なのだ。 「えっと、これ、僕がもらっちゃってもいいですか?」 「それは三千さんが見つけたんだし、貴方の物よ。でも、次は私が番だから」 そう言って彼女が拾い上げたのは一見細長く、しかし棘が広がるように生えている巻貝。 「西洋では『ヴィーナスの櫛』と呼ばれているホネガイよ。 私は美の女神ではないけど……どう、似合うかしら?」 貝で自分の髪を梳く(コーミングする)ような仕草を見せて悪戯っぽく微笑むミュゼーヌに、笑い返した三千は何を言ったのか。 ざん、ざあと繰り返す波の音が、二人の世界を特別なものに彩っていく。 酒呑 雷慈慟は、常より遥かに歩幅を落として歩いている。 「綺麗なのを見つけよう。 ――南の島の綺麗な貝殻を拾って思い出にできたら、とても素晴らしいと思うのだ」 「うん、残すなら綺麗な物か……変り種があると良いな」 もとよりストライドに差がある上に時折足元に目を落とし、綺麗な貝はないかと探す朱鷺島・雷音の為だ。 「こんなに平和だとボトムが崩界の危険があると忘れてしまいそうだな」 「……そうだな、だが……だからこそ、こういった経験はすべきなのだと、そう思考する次第だ」 見上げてくる雷音に、雷慈慟は少しだけ言葉を選んで返す。アークの精鋭に名を連ねども、雷音は未だ若い、というより年幼い。こう言った時間が一つ良き思い出にでも連なれば幸いだと、彼は思う。 「あ――雷慈慟、この子は随分と遠いところからきたようだ。こことは違う南の島からのお客さんだな」 雷音は拾い上げた少し大きな貝殻の記憶を紐解いて見たようだ。 「我々とは違った旅路があるのだな。これもまた、縁か」 「うーむ……このこは深い海で、イルカになにか内緒話をされたようだ。 耳にあてて聞いてみて欲しい、海の音に混じってイルカの声も聞こえるかもだ。 君の動物会話でどんな話だったのか聞こえないかな?」 「む……イルカの声……?」 サイレントメモリを持たない雷慈慟には、それらの断片的な記憶が一体どのような形で彼女に伝わっているのか判らなかったが、雷音に話を合わせ、貝へと耳を傾ける。 (……夢を壊す訳にもいくまい) このぐらいの齢の少女がどういった話題を好むかと一瞬考えこんでから、口を開く。 「どうやら……恋の話……、の、様だな。これから思いの丈を伝えに行くとの話らしい」 「そうか、そうなのか、成功したかな。今頃幸せな家族ができているといいな」 雷慈慟は少しはしゃいだ雷音の頭を撫でた。 「上手く行くと良いな」 ● ところでビーチコーミングは、結構地味な作業の繰り返しだったりする。そうなると、 「飽きたのだわ!」 と、梅子がわめき出すのは、割と想定の範囲内だった。 「何か他のことするのだわ! 道具とかないから……鬼ごっことかどう!?」 「じゃあまずは、梅……じゃない。えーと、プラム子が鬼だね。お~にさんこ~ちら、っと~」 「誰それ!?」 やったあたし素敵な思いつき! とドヤ顔する梅子を、レイチェル・ウィン・スノウフィールドが即決で鬼に使命して氷雨・那雪の手を引いて走りだす。 「鬼は……梅……プラム子さん? 負けないの、よ」 「だから誰よそれ! ちょっと、待つのだわー!」 「鬼ごっこで待つ人がいるわけないんだよーっ。逃避行だ♪ あははっ、楽しいねっ♪」 「こういうの、楽しんだのが、勝ちってきいたの。がんばるの、よ」 梅子に追いかけられながら、レイチェルが那雪に笑いかける。那雪も、こくりと頷くと、少し微笑んだ。 「……けど、今日はキャミに、ショートパンツなんだね。 那雪の水着姿も可愛いくて好きなんだけどな。ちょっと残念」 「水着……? ……女の子には、色々と、事情があるの、よ……こう……」 嗚呼、細身ゆえに少しさみしくなりやすい胸元。那雪、しょもり。 「鬼ごっこ? ふむ……うし、走り込みという名の鬼ごっこと行こうか」 「なんかそのまま逃げ切って、からかいたい気持ちになるけど……」 言うなり、全力で走りだした上沢 翔太と、少し速度を加減して走るツァイン・ウォーレス。 「やーいやーい、お前の妹超悪、まー……」 裸足で走り回る御厨・夏栖斗は梅子の前をちょろちょろと走り回ってからかっている――はずが、何故か時々、若干表情を渋くしている。どうやら腹の調子が良くないタイミングがあるらしい。 「……背に腹はかえれないとかそういう慣用句的なものかもしれない」 ピーチ・コーリングなんてするから! ともかく、そのせいなのかそれともわざとか、夏栖斗は時折速度が落ちては梅子に捕まり、また盛り返しては梅子を捕まえを繰り返していた。 「だぁぁ、あっちぃ面倒になってきたー、水くれ水ー! あ、海の水はいらねぇぞ」 翔太が走りながらもだるそうな声を上げ、海水を汲もうとしていたツァインを先制する。 「ち。…・・しかし、海辺で追いかけっこしてる梅子は、まさに鴉の行水だnウボアッ」 ツァインの後頭部に梅子の蹴りが入ったのを、翔太は見なかったことにしようとしたが。 「ってことは、俺が鬼だな!? 翔太の一人逃げ切らせたりするものかっ!」 「おい、なんだ、ツァイン! 梅子とかスルーして、俺を捕まえるために走ってるように見えるのは俺の気のせいか!?」 「ルールとかもう別にいいんじゃないかな!」 「なんだよそれ!?」 頑張れ、本気の鬼ごっこ。 「……鬼が全力で走っていっちゃったのだわ」 呆然とする梅子の横で、夏栖斗が急にその場にしゃがみこんだ。 「――くそっ、古傷が! やばい! 梅子! 助けてっ……くれ」 「え、ちょっと夏栖斗!?」 腹を抱えて苦しそうな呼吸をする様子に慌てふためいて、梅子はその顔を覗き込もうとした。 その腕を夏栖斗が掴み、 「はいタッチ。んじゃこっから梅子が鬼な!」 「はい?」 ――舌を出して走りだした夏栖斗の顔色は、いたって健康そうである。 「ほんとにお前ってバカだなー! やーいやーいアホのこー」 「しっ……心配して、損したのだわ、馬鹿ズトー!!」 鬼ごっこ、と聞いて脳内が暴走してる人が一人、ここにいた。セリオ・ヴァイスハイトである。 (ふっ……これは砂浜で追いかけっこ、「つかまえてごらーん」「まてまてー」をするチャンスじゃないか!) 「プラム嬢……! オレを捕まえてくれ!!」 「だったらおとなし、く! あたしに! 捕まるのだわー!」 ひらりひらと、捕まりそうなところでうまく逃げてみせ、梅子の苛立ちを煽ったところで、タッチ。 「やったのだわ!」 明らかに手加減された事に気がついてない梅子が快哉を上げる。 (プラム嬢と追いかけっこ……なんかよりタッチだ、体に触れるチャンスだ! いやらしさなんてないさ! 鬼を交代するためのタッチなんだ!) 気炎を揚げるセリオの手に、何かがぱし、と当たった。 「うむ、鬼交代」 「あっ……」 セリオから『梅子を追い回す権』を奪った葛葉・颯はタバコを加えたままにやりと笑う。 「梅子君を全力で追いかけ回したい。 ほら、せっかくだし、涙目になるまで追いかけてあげたく、なるじゃない? 梅子君、だし?」 「わたしと二人がかりとか、どうです?」 烏頭森・ハガル・エーデルワイスの申し出に颯が軽くサムズアップを返し、エーデルワイスは颯が追い込む予定の前方へと回りこんで身を潜める。 「なんでそんな、全力なのだわー!?」 「人知れず鍛え上げた我が必殺技! 今こそ梅子に叩きこむのですよー♪ さぁ梅子よ、決着の時!」 追い立てられた梅子が飛び込んでくる、そのタイミングに合わせて全身のベクトルを腕へと伝達し、相手の腹へと抉り込む様に掌底(※タッチ)を叩きこもうと屈んだその時。 「はっはっは、逃げンナー待て待てーとんで逃げンナーって、がっ」 「えっ、あだっ!?」 梅子が上空に逃げたがために位置がつかめず、後から来た颯と正面衝突してしまったのだった。 ――もう鬼ごっことか、いいよね? 「プラムちゃんは……いた!」 水着に麦わら帽子姿で、双眼鏡片手にうろうろしていたカルナス・レインフォードの表情が、目当てを見つけてぱぁっと明るくなる。 「まだ夏は終わっちゃいないんだ! だったらやるべきことはただひとつ! プラムちゃんの写真を撮る事だ! これを果たせずして、オレの夏は終われないぜ!」 せっかくのイケメン・イケボが泣きそうなことを言い出すが、趣向というのはまあ個人の自由であろう。 「今までの経験から日中は他の邪魔が入るからダメだ。頼むならみんなが遊び疲れた夕暮れ時だ!」 まさに今は日暮れ――絶好のチャンス。 「やぁプラムちゃん、この間のプールではうやむやで終わってしまったけど、今度こそ写真を撮らせて貰えないかな?」 「あれ? カルナスじゃない。写真……って」 撮ってなかったっけ、と梅子が記憶を辿っている間にカルナスは、徐々に昼間の熱を失いつつある白砂の上にざばあ! とダイナミックな土下座を決める。 「夕日に映えるプラムちゃんも儚げできっと美しくて素敵だと思うんだ!」 「ねぇねぇ梅子ちゃんこれなんだろうねぇ?」 「プラーーーム!!」 カルナスの土下座とほぼ同時に、梅子の後方からビールとガラスボトルをそれぞれ手にした遠野 御龍が大きな声をかけた。条件反射で振り向いて怒る梅子。 「――って、へ? 何なのそれ?」 嗚呼、面白そうなことがあればすぐさまそちらに興味が向かう阿呆カラス。 「忙しい日々からの解放もいいですが、面白いものが海に落ちてたりしたんですか? ……って、そのボトルの中に手紙らしきものが入っていますね」 さっきまでぼーっと浜を歩いていた桜田 京子が興味を惹かれたのか、そのボトルの中身を覗きこみ、器用に引っ張り出してみせた。 「まさか遭難者からのSOSとかじゃぁないよねぇ……?」 御龍が僅かに顔をしかめ、京子は折り畳まれていた紙を慌てて広げる。 『 ピ ン ク は 淫 乱 』 京子は即座にボトルに紙を入れなおし、ノータイムで海へと投げ捨てる。波を見切り、逃れる暇さえ与えず瞬時に波間の奥深くへと叩き込まれるボトルアーリースナイプ。 「まあ誰が書いたかはわかりました。きっと海の向こうのバロックナイツに宛てた手紙なのでしょうね」 遠い目をして「そう、私は癒されたいのだ」とかぶつぶつ言い出した京子を見なかったことにして、波間に消えたボトルを目で追いかけた御龍があー、と呟いた。 「宝の地図とか――」 「えっあれ宝の地図なの!? そんなの、すぐ探さなきゃなのだわ!!」 早合点と勘違いを炸裂させて、ボトルの投げられた方へと飛んでいく梅子の姿を見ながら、 「――だったら面白かったのにぃ」 言い残した言葉を続ける御龍。 ところで土下座したままのカルナスくんが超放置されっぱなしなんですけど! ● 夕陽が海に沈みきる頃、帰路についたり別の場所へ向かったりと、徐々にリベリスタたちが減っていく。 「あの、オレ、結局海泳いでもないんだけど……」 「仕方ないわねぇ」 砂に埋まったままの竜一(砂マッチョ)が呻く。それを聞いて、パラソルの下で眠ってしまった弓弦を起こそうかどうか悩んでいた由利子が、義手に内蔵したウインチで竜一を釣り出すように引き上げた。 「うふふ……今日一番の大きな掘り出し物ね……私の部屋に飾っちゃおうかしら?」 「えっ」 オレ、戦果? と、竜一は自分の顔を指さして情けない顔をした。 一日中格闘した結果、砂の城は和洋の形を曖昧に混じえつつも、なんとか形になっていた。 「まあ、初めてにしては上出来じゃないのかな! 多分ね! ……何より楽しかったわ」 鼻の頭に付いた砂を拭い、雅が笑う。同じような砂まみれの顔で、大和がひとつの提案を持ちだした。 「皆で作った立派なお城です。この記念を残したい――全員で写真を撮ってみませんか?」 「折角だ、記念にするのも悪くはない」 「いいわね。……何気にこういう風に写真撮るのとかも初めてなのよ」 同意を示した優希も、どこかはにかみ気味の雅も、3人とも、笑顔がこぼれている。 ――ちなみに、シャッターはカード卓を翔護に押し付ける名目のもと、福松が快く名乗り出た。 「どこー!! 宝の地図、どこなのだわー!!」 ――いぬがみけ(おかえり)。 <了> |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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