● ぴしゃり、ぴしゃり、魚が跳ねる音がする。 視線をそっとずらしたその先、存在していたのは―― 「切り、身……?しゃけェ………」 川遊びをする気にもなれない。なんだろう、あの鮭。切り身だ。凄く美味しそうだ。 捕まえてコンロで焼いて、白米と一緒に食べたい気持ちが一杯だ。 だが、泳いでいる。 「え、えーと……」 鮭の切り身が、こっちを向いて(顔がないけどきっとアレは)凄い悪い笑顔を浮かべた。 \何、見てんだよ!/ すげぇ悪そうだった。倒さないといけない。これは敵だ。すげぇ悪い鮭だ。 しかも――鮭は切り身だった。 生身の姿(しかも切り身だから体内)を見られた事に鮭は羞恥を感じた。そして、分裂した。 ――すげぇ悪い鮭だから! 其の奥で、くまさんがそわそわしながら蜂蜜を食べていた。 世は鮭熊合戦である。 ● 「最近のお子さんは切り身で魚が泳いでるっていうわよね。あ、私は勿論魚類の形は知っているわ」 慌てて付けくわえた中学生みたいな成人女性、『恋色エストント』月鍵・世恋(nBNE000234)は一枚の写真をリベリスタに提示した。 「―――鮭? 切り、身?」 「ええ、すっごい悪い鮭よ」 嫌な、予感がした。 「そんなに悪いのか?」 「ええ、凄い悪いわ。デジャヴを感じるくらいには悪いわ。悪いから、分裂したのよ」 かなり、強いわ――なんて凄まじく神妙な顔をしている。油断しては鮭に食べられてしまうかもしれない(顔はないけれど)。 鮭は分裂していた。親鮭を見つけないと更に分裂するとフォーチュナは資料を捲る。 「で、その鮭をどうするんだ?」 「サケ目サケ科サケ属の魚を3分以内に退治してほしいの。退治しなきゃ熊さんが来るわ」 「く、くま……さん……?」 この川を上った先、熊のアザーバイドが居るらしい。もふもふすれば帰ってくれる熊なので鮭を倒した後にご褒美タイム☆をすればいいのだが―― 鮭を早く倒してしまわないと、熊は餌だと思ってこんにちはしてしまう。エリューション鮭の無限の可能性。美味しいのかもしれない。 餌を目の前にしたくまさんが戦いだすと強い。熊さんは鮭と戦う。食物連鎖的に。 早く鮭を退治しなければならない。だが、親鮭を見つけないと鮭は増え続ける。 何故なら鮭だから。すげぇ悪い鮭だから。 「クマはどんな感じなんだ……」 「鮭を狩ることに一生懸命になるわ。因みにもふもふよ。 鮭も強いし、くまも強いし。鮭熊合戦が起こると明らかに此方が不利になるわ」 倒して、いただけるわよね、とフォーチュナはキリッとした。 「……あ、ああ……」 「じゃ、よろしく! 因みに今日の夕飯はく……鮭よ!」 一瞬、クマと言いかけたフォーチュナはブリーフィングルームから逃走した。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:椿しいな | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年08月29日(水)22:05 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 爽やかな小川。魚の跳ねる音。 胸をざわめかすのは夏の始まりを告げた生物の顔を思い出したからだろうか。 (・´ェ`・)<よんだ? デ・ジャヴ。胸を渦巻く夏の始まりの物語――そして、夏が終わろうとする今、『幸せの青い鳥』天風・亘(BNE001105)の悪夢は始まったばかりだった。 「おお、鮭だ。切り身だ。泳いでる」 言葉に出来ない思いを抱えた『ディフェンシブハーフ』エルヴィン・ガーネット(BNE002792)は遠い目をしていた。 もしもーし、大丈夫ですか。 「……えーと、うん、何て言うかな」 これぞ、何も言えなくて以下略である。取り敢えず食えばいいかな、美味しけりゃそれで解決だ。 思考は放棄された。 人間の本能へ傾きながら。だが、その本能すら許さない男がいた。彼の名は『デイアフタートゥモロー』新田・快(BNE000439)。 「いいか! 俺達は日々命を戴いて生きてるんだ」 その通りだ!良い事言った!因みに頂きますの手を合わせるのも大事だぞ。 「だから、せめて俺達は食べている者がどういう生き物か、其れを知る義務がある」 そう、栗のイガを知らずに『剥いちゃいました(はぁと)』な状態で栗が生えているとか、イカの軟骨をプラスチックと呼ぶとか、あまつさえ鮭が――否、魚類が切り身の状態で泳いでると思っている奴は許せない。 此処まで鮭に心をこめて熱弁する男がこの世には何人いるのだろう。天晴れ、サーモンキング。 「ええ、新田さん。鮭、それは古くから日本の食生活を支えてきたパートナー……」 長い髪が風に揺れる。『戦奏者』ミリィ・トムソン(BNE003772)は杖を握りしめ俯いた。 視線の先に居たのは鮭(切り身)――嗚呼、食のパートナーがまさか、まさか…… 「まさか、あの鮭(切り身)さんがすっごい悪い子になってしまうなんて」 ほろり、涙が零れる。 こうなってしまっては遣る事は只一つだった。 「私達の手で彼らを正し、真の鮭――そう、調理済みの鮭さんをこの手に掴み取るまで!」 鮭もアルパカも苦労するのだった。 (・´ェ`・)<やーね。 だが、そんな鮭戦士の前に一人の男が立ち塞がった。 ぷるぷると体を震わせよたよたと歩く『三高平のモーセ』毛瀬・小五郎(BNE003953)はくい、と『愛の一文字』一万吉・愛音(BNE003975)の袖を引っ張る。 「朝ご飯は、まだですかのう……?」 「食べてきたはずでございます!」 微笑みを浮かべる愛音ちゃんの何と愛らしいことか。 ちなみに、小五郎おじいちゃん、朝ご飯は鮭だったそうです。 「朝ご飯……おっさかなおっさかなたっべたいな~♪」 軽やかなリズムと共に赤い水着(露出過多)を着用し駆けだしてきたのは『ものまね大好きっ娘』ティオ・ココナ(BNE002829)であった。 左手にはお茶碗、右手にはお箸。完璧なる装備である。だが――まだその時ではない。 目の前ではぴしゃん、ぴしゃんと鮭(切り身)が跳ねている。 『駆け出しリベリスタ』大石・よもぎ(BNE003730)は後の調理の為の用意は万全であった。その為には鮭(切り身)を捕まえなければならない。 「愛音は! 美味しいサーモンを食べるのでございます! LOVE!」 その為にやる事は只一つ。 「さあ、戦場を奏で――違った。鮭を調理しましょう!」 準備は万全ですか?と普段は指揮官たる少女は微笑んだ。 ぴしゃん、鮭が跳ねた。 ● ぷるぷると震えるおじいちゃんがティオの腕を引っ張って指をさす。 「おお……最近は鮭が切り身で泳ぐんじゃのう……。世の中随分変わったものじゃ……」 「あの鮭さんは親鮭さんが居る限り増えちゃうんだよ。それでね、沢山食べれそうだけど、時間かけちゃうとクマさんが来て大変なことになっちゃうんだよ」 なるほど!だがおじいちゃんは首を傾げて、世の中変わったものじゃ……――ええ、神秘って凄いですよね。 「増えるのって、きっと親鮭から分裂だと思うんだ!」 おじいちゃんに輝く笑顔を向けたティオは鮭をじっと見つめる。超直観とエネミースキャン。じっと見つめたまま彼女は其処に居た。 同じく彼女の隣で鮭を見つめる快。その目は強い憎悪が籠っている。 ――鮭の切り身。切り身?切り身が泳いでいる。 「俺はお前を許さない……」 その足が踏み出される。身を守るエネルギーが彼の体を包み込んだ。 「……言ったな。知る義務があると。鮭の切り身! お前鮭が全身どれだけ役に立ってると思っているんだ!」 びしっと鮭の切り身を指さす。 貴方、握りしめた護り刀も吃驚の展開ですよ。 「お前なんか鮭の何分の一も語っちゃいない!」 切り身が跳ねる。 \いえーい、俺だよ/ ――とでもいう様に。すげぇ悪いのだ。すげぇ悪い鮭なのだ。 だが、彼は止まらない。 「切り身だけ食べて鮭を知った気になっているのも許せない!」 青年の怒りは凄まじかった。彼、もうサーモンキングでいいと思います。 マジで怒って仕方ない☆――な快の隣で冷静に鮭を見つめるエルヴィンは思う。 流石に数が多い。ティオが先ほど言っていた通り、親を倒さなければ増え続ける。 「……そういや、羞恥で分身したんだったな、その辺突いてみるか」 え?ちょっと、エルヴィンさん? 彼はすっと立ち上がり鮭に近寄る。 \おいおい、どうした、そんなに真っ赤になって!/ 注意・切り身です。 まるで女を口説くかのようなその台詞に切り身は震えた。やだ、なにこれ。どきん、恋に落ちる音でもしそうなその勢いだ。 「はて、熊……」 未だ熊に首を傾げていた小五郎おじいちゃんの言葉でミリィは顔を上げる。 「気分は鮭を素早く狩る熊さんなのです。熊だ熊になるのです、私」 少女の脳裏に浮かぶ、もふもふ熊の姿。嗚呼、可愛い。クマァ……なんて呟きを漏らした。 ( ・(ェ)・ )<モフモフやでェ…… 「く、クマァ……。はっ!? ……い、今はまだその時ではないのでした」 健全な食事ともふもふライフのその為に、戦えミリィ! 彼女が放つファントムレイザーは毛刈りレイザーではない、手頃なサイズにカットする――万能包丁レイザーだ。 嗚呼、最近のファントムレイザーって不憫なのね。 「まったく……誰の仕業なのでしょうねっ!」 さ、さあ。誰でしょうね。 ふわり、ふわり、おじいちゃんは低空飛行している。此れで転んでうっかりフェイト残量によらない以下略に為らなくて済むね! こう見えてもおじいちゃんはレイザータクト。戦場全体を認識し、驚異的な視野を確保しようと一度目を閉じた。 「キェェェェーーーーーー!!!」 時が、止まった。 鮭も含めてびくり、と全員の肩が跳ねる。自分のあげた声におじいちゃんも白目を剥いた。 「お、おじいちゃん!? 大丈夫でございますか!」 慌てて駆け寄る愛音は早く食べたくて仕方がない。勿論動力を纏わせた剣が周囲に浮遊している。殺る気はマンマンだった。 ――さて、切りそろえられた鮭に対し出番を待っていた亘が走り出す。 跳ねあがった鮭を更にそこでカット。澱みない連撃により美しく程良い厚さになった鮭をさっと差し出した皿に乗せる。 「イケメンめぇ……」 凄い悪い笑顔(イメージ)が彼の中ではイケメンに見える。イラッとして堪らない。この心、如何してくれようか。 ――此れは鮭の切り身エリューションの討伐ではなかった。 「そんな新鮮な様子を見せられると、嬉しくってもっと見つめたくなっちまうよ!」 愛と、 \LOVE! でございます!/ 「鮭の皮は今日では良質なコラーゲンが採取される事で注目されているんだ!」 憎悪と、 「ついでにアルシャンもぐぅ!」 食欲の渦巻くカオスな川沿いでの出来事であった。 ● 「知ってるか? 代表的な肴の『鮭とば』はな、皮目と身が無きゃ作れないんだぞ!」 彼のもとに切り身は集まる。アッパーユアハート。今はどっちかというとアッパーユアサーモンだろうか。 サーモンキングは鮭の切り身を集めた。 外皮の話をしていたが、彼はそこで構える。 「内臓も! 『いくら』が何の卵か知らない訳じゃないだろ? 雄なら白子も上手いんだ」 どばっと集まった鮭をよもぎは攻撃を加える。傷つけないように引っ張る感じである。 快は、ぐっと拳を固めた。 「中骨と其処に残った身で出汁を取れば、鍋も雑炊も自由自在だ……!」 三高平大学に通う青年はリベリスタの使命感を胸に鮭へと言い放った。 「これだけ美味しい鮭を、切り身だけとか、一体何を考えているんだ!」 そう、彼はサーモンキング。鮭の旨みを分かっている男だ。 「たとえ天が許しても、この新田快が絶対に許さない!」 きっと、誰か強敵の前で言えばカッコ良かったであろう台詞。だが、目の前に居たのは鮭の切り身だった。 \くらえっ! カムイチェプ・アタック/ べしべしとよもぎに食らわされる攻撃。痛い。そして冷たい。 腕にべしん。そして川にべちゃり。取り敢えず色々釣ってみようと思った彼女だが川には何故か鮭の切り身しかいなかった。 じゃり、川沿いの砂利を踏みしめてエルヴィンはイケメンオーラを纏う。 「引き締まっていて、なおかつ柔らかそうなその体!」 鮭が跳ねる。美しい桃色、否、鮮やかな赤色のその身を晒している。 川を上る時期から外れた鮭は栄養が多い。つまりは、旨いのだ。舌なめずりをする。鮭がびくりと揺らめいた。 「悪い? いやいや悪くねぇ鮭だ!」 鮭はくねくねとする。アレが絶対親鮭だ。間違いない。一匹だけ凄まじい勢いで照れている。 口説き落とされそうな鮭を見つめ、エルヴィンはフィニッシュ。 「さあ来いよ、美味しく頂いてやるぜ!」 ――ああ、おれはなにやってるんだろう。 ナンパ、此処に極まる!鮭にまでも効いてしまったナンパスキル。恐ろしいものである。 これで親鮭が分かった。輝く笑顔を浮かべたティオの四色の魔光が親鮭を狙う。 鮭がドヤ顔(だが顔はない)で愛音に自慢する。時期外れで川に来ちまったぜ! だなんて言う鮭。 「その程度で悪事とは片腹痛いでございます!」 どどん、とその場に立ちはだかった愛音はドヤ顔である。14歳の少女の悪事の自慢が此処に始まった。 「愛音なんて、数枚の小銭を友達と分ける時、同じ金額でも見た目のきれいな新品は自分で持っておくのでございます!」 ああ、ギザ十とかそう言うのですよね。 「それにシチューをお皿に注ぐ時、皿の縁にシチューがついたのは自分以外の人に回すのでございます!」 ちゃんとお手伝いして――偉いね、という前に凄まじい暴露を聞いた。汁物が皿の端につくと困ったりするというのに。 その自慢に鮭はふらりと気を失う。 彼女は其の侭直伝の鴉を放った。陰陽師一家の愛を心に持った少女。 「愛の秘孔をついたのでございます! 愛音にタッチしないと爆発する愛の呪いをかけたでございます!」 ナ、ナンダッテー! 鮭が慌てふためく。本物であった。 愛音は近付く。何故か持ち歩いているレンガを手に取り鮭を殴る。 嗚呼、駄目、そんなにしたら!身がほぐれちゃうよー!? 「昼ごはん、まだですかのう……?」 「おじいちゃん、もうすぐだ!」 愛鮭ハンター・エルヴィンの声におじいちゃんは目の前の鮭を見て真空刃を放つ。ぱたぱたとその背中で羽が揺れた。 「悪い鮭は塩焼きじゃよ……」 \炭火焼じゃよ……/ おじいちゃんの声が自然に朗らかな山彦の様にあれ、内容違いませんか? 彼はフェイトを使用するのも辞さない勢いであった。だが、そろそろ危険なのではないかと周囲は心配で堪らない。 主に、その、生命の道が自然に段々狭くなっていくアレとかアレなのでは……ほ、ほら、おじいちゃんはリベリスタだから大丈夫☆ 「……ふふ、ご飯を片手に焼くのです。じゅわ~!」 ミリィはお茶椀を片手に聖なる光を放つ。焼き払う様に \突然の神気/ 「食べる用意は出来てますよ?」 彼女のマントが揺れる。金色の髪がその動きで楽しげに揺れた。 繰り出される神気、神気、神気。 何と、彼女は気付いてしまった。戦っていたはずだった。それなのに3分クッキングになっていた、と……。 そこで前回は修羅となったキングアマカァ→ゼェ↑――彼は怒りさえを包みさらなる高みへと行きついた。 そう、新たなる領域へ―― 「エリューションでも恵みとし、すっごい悪い鮭さえ感謝し喰らう存在……」 まるで変身ヒーローが新たな力を手に入れるかのような雰囲気。 亘は――普段の彼を捨て去った。 「ふふ、ふふ……菩薩系悪鮭狩人AMAKAZE☆ D.Aよ、我に力を」 「天風さん、い、いえ……菩薩系悪鮭狩人AMAKAZE☆さん……」 ミリィの目の前に居た亘は普段の気遣いの出来る優しい青年ではなかった。 悟りフェイスとポーズ。これぞ菩薩である。彼は繊細かつスピーディーに行動する。 その姿はまるで職人。そう、澱みない連撃は完全に切るのではない。表面から中央へと繊細なタッチで切る。 職人、その心は? 「こうする事で食べる時の旨味が増すのだ」 此れには彼の愛用のAuraも吃驚だ。くるりと持ち変えられる。持ち手の先で絶妙な強さで叩くその仕草は正に芸術! 職人、コツってありますか? 「たたきは力加減が重要だ。強すぎても弱過ぎてもいけない」 絶妙な強さで叩く彼の周囲にはもう鮭は居なかった。 「仕込み完了」 ふう、とため息をつくその表情は正に仏。 ● 水が滴るその場所で、何故か開かれたのは突然の調理タイムであった。 車に詰め込まれていたのはバーベキュー用品一式、アウトドア用コンロに調理器具、椅子やテーブル、食器。 そして白米は炊きたてが一番だと飯盒炊爨セットだった。食欲を見せつけられる。 「あ、切り身が余ったらここな」 指し示したのは氷満載のクーラーボックス。あとで持って帰ろう。予知者や仲間達にも鮭を分ければいいとエルヴィンは頷く。 「さて、色々できそうですね」 よもぎは素材の良さを生かしムニエルとカルパッチョに挑戦しようと意気込んだ。 ムニエルは塩コショウで下味をつけ、小麦粉を塗す。バターで両面を焼いた後、さっとレモン汁を振りかけて完成。 カルパッチョは鮭を薄くスライスし、玉ねぎと合わせオリーブオイルや調味料を少々加えて完成である。 ハイカラな料理におじいちゃんも驚き、すごいですのうとぷるぷるしている。 酢飯を持参した快はその場で鮨を握り始める。勿論、生のみではない、バーナーで炙りサーモンも用意する。 地元の農協直売の野菜を使ったちゃんちゃん焼き。拘りの品ばかりが並んで行くのでミリィも愛音も目を輝かせた。 「あ、成人組は日本酒でな、この季節ならひやおろし」 「新田殿! 鮭のお寿司! LOVE!」 輝く笑顔で汁ものを調理した愛音。お味噌汁さえ入れたら大抵食べれる物になると誰かが言っていた。ただし其れは夢の中での話だ。 注いでいく彼女は皿の縁が汚れたら他人に回す。勿論それは徹底していた。 「悪鮭といえ食材……その身が血肉となり明日を生きる糧となる事に感謝し、頂きます」 頂きます、と全員手を合わせた。 キャンプの用意をし、鮭を頬張りつつ彼は思い出を語る。 この夏は精神的に大変だった、だが夏の締めくくりに(よく分からない鮭と)仲間と笑って過ごせるならこの夏は幸せだったのではないか――と思ったりもする。 いい話になりかけた所で菩薩系悪鮭狩人はドヤ顔で告げた。 「鮭美味しい」 「おお……脂が乗った言い鮭じゃよ……。ごはんと酒が進みますのう……。お若い方、いける口ですな」 炭火焼を作ってきたおじいちゃんはぷるぷるしながら日本酒を傾ける。嗚呼、なんか、イイハナシダナー。 全員が満腹感を覚えたころ、森の奥でガサガサと音がする。 蜂蜜を片手に現れたのはもふもふの毛をしたくまであった。 ( ・(ェ)・ )<呼んだ? 「よぉ、熊さん、アンタも食うかい?」 「良かったら一緒に食べようぜ」 友好的な彼の態度にクマは嬉しそうに頷く。 広がる食材はすべて美味しそうで堪らない。のそりと座った熊さんにミリィは伺う様に近づいた。 「こんにちは、クマさん。あ、これはお近づきのしるしの鮭さんですよ」 貰ったクマが嬉しそうに両手を上げた。なんて分かりやすい熊なのだろうか。 恐る恐る断りを入れたミリィはクマをもふもふとする。 「……あれ、そういえば、あの時何を言おうとしてたんでしょう?」 ブリーフィングルームを出る手前、フォーチュナが漏らし掛けた言葉を思い出す。まあ、今は関係ないが。 「おお、お久しぶりじゃのう……山田さん……」 その場の全員の気持ちが一致した。 誰だよ。 「暫く見てない間に毛深くなられましたなぁ……。一緒に鮭で一杯どうじゃろか……?」 おじいちゃんは熊を手招きする。もふられながらも酒を飲むおじいちゃんを見つめる熊こと山田さん。 このおじいちゃん、お年の割にはザルのようだ。おじーちゃん酒に強い。此れは凄い豆知識である。誰が得するのかは知らないが。 存分に少女にもふられた熊さんはそろそろ気が済んだ様だ。美味しいものも食べれて幸せムードである。 「……山田さん、もうお帰りですかのう……?」 おじいちゃんに頷く。 あ、もう山田さんで良いんですね。 「よっこらしょ……お見送りしますじゃ……」 ( ・(ェ)・ )<ばいばい 山田さんは静かに帰っていく。その場所をそっとおじいちゃんは戸締りした。ブレイクゲートで。 そんな、サマーバケーション☆ |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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