●あの自由へ 其れは舞う、かつては檻に囚われその身を縮こませて生きてきた。 だが檻から放たれ、自由を得ても彼はただ空を見上げて生きるしか術は無く、地べたを這いずり回って生きてきた。 彼は囚われる事を恐れていた、自由を得ても尚人を恐れ憎んでいた。 まだ幼き頃、人に囚われ物として扱われ、勝手に捨てられそしてこの地へと流れ着いた。 空の鳥のように翼があれば、それさえあったならば私は再び真の自由を得て何処へだって行けるのに。 願い続けた末か、はたまた偶然か、彼は翼を得た。 さあ飛び立とう、この地は私が生きるには狭すぎる、もっともっと広い世界へ。 私を再び捕える者達が居ない地へと。 そう、この翼と力があれば何処にだってきっと。 ――彼は飛び立った。 その雄大な姿をくねらせ、空と言う大海を泳ぐ。 自由に、自由にどこまでも。 ●のぶくんはヘビがお好き? 「お前ら、ヘビは好きかい?」 アークのブリーフィングルーム。『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)はリベリスタを呼びつけるなり意味不明な事を尋ねてくる。 いや別に……と、怪訝な顔をしてリベリスタが問いを返すも伸暁はそれをすっぱり無視してデスクのキーボードをポン、ポン、ポン、とリズミカルに叩く。 そしてルームの大画面に映るのは七色の大きな蛇、だろうか? 蝙蝠の様な羽が生えていて空を泳ぐように飛んでいる。 「コイツはニシキヘビが元になったエリューションビースト、フェーズは2だな。キュートな目がチャーミングな可愛い奴でペットとしても大人気だぜ?」 うへぇ……と声を上げるリベリスタもいるが無理も無い。 目付きの可愛さは兎も角、こんな巨大な蛇を好んで飼育するのは余程の愛好者だろう。 苦手な人はとことん苦手なのも当然の話。 「ま、元は良くある事さ。デカくなり過ぎたペットを世話しきれないで人里離れた場所に捨てる。コイツも被害者なのさ、人間のね」 確かにテレビでもよく放送されている、無責任な飼い主が飼育が困難になったペットを野に放つ。 全く無責任で迷惑な話だが…… 「それが仕事と何の関係あるんだよ」 ツッコミを意に介さず伸暁はおもむろにファイルをテーブルの上に放つ。 どうやらこの事件についての資料らしい。 このヘビの能力や事件に関連した様々な資料があるが一部目を引いたのは…… 「ブローカー?」 「そ、馬鹿な飼い主から解放されてやっと自由を満喫。とはいかないんだな、これが」 伸暁が両手を左右に広げやれやれといった風にオーバーリアクションをして溜息一つ。 「数日後、事もあろうに空を飛ぶ姿がテレビに映り、世間を大騒ぎさせた挙句非合法生物の売買を生業としてるフィクサードに目を付けられ哀れ再び籠の中の鳥……いや、ヘビだったな」 エリューション現象によって生まれた生物はその特異な外見と希少性により、金を腐る程余らせた好事家達に大変な需要があるらしい。 動物、物、エトセトラエトセトラ……果ては人間までも。 そういった世間の闇で生計を立てるフィクサードがいるのもまた然り、という事か。 「当然捕獲に送り込まれるフィクサードはそれの専門家だ、当然ルーキーのお前らより遥かに強い、戦おうなんて考えない方がいい」 しかしチッチッチと指を振り伸暁は言葉を続ける。 「だが連中がヘビに気付くのは事が公になってからだ、つまりその前にお前らが処理すれば万事解決って事」 アークの誇る神の目(カレイド・システム)の力は絶大で現在のアーク戦力を効率よく運用するのに欠かせない存在だ。 「幸い場所も人里離れた山中だ。余程派手に騒がない限り人目に付くことは無いだろう。全く情報ってのは重要だね。ペンは剣より強しってヤツさ、昔の人も中々ロックだと思わないか?」 左様ですかと呆れ顔のリベリスタ達、彼のノリは中々常人には推し量れない。 モニターが切り替わり、ヘビの情報が映し出される。 「コイツの鱗の加護は状態異常を無効化し再生能力を与える、変異の影響で毒まで持っちまったようだ」 ゴクリと息を呑むリベリスタ達、そうでなくてもこの巨大な体だ。 ヘビ本来の体を生かした締め付けやその鋭い牙も十分過ぎる程の脅威となるだろう。 「コイツに得られる自由はもう無い、可哀想だって思うんならもう眠らせてやりな」 伸暁はそのまま席を立って背を向ける。 「七色の光に負けないお前らのクールでヴィヴィットなライブ、期待してるぜ?」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:DENGORO | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 4人 |
■シナリオ終了日時 2011年06月13日(月)22:28 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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■サポート参加者 4人■ | |||||
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●未だ、雨深く ざー、ざー、ざー、と雨音に混じり複数の足音が静かに山に染み渡る。 霧深い深い山、本来ならば木々のざわめきを聴き。 自然を感じ、触れ合える穏やかな場所だった筈だが歩く者達の顔には緊張が満ちている。 「登山する格好じゃない……」 不満げな声を漏らすのは『素兎』天月・光(BNE000490)だ。 全身ボディースーツに登山靴にゴーグル、十分怪しい格好だがボディースーツがヌラヌラと光っている。 今回の敵への対策にとボディースーツにオイルを塗ってきたのだ、身体のラインが解りやすいスーツ姿にオイルは、その、エロいです…… 「ここまでやれば、流石に大丈夫でしょう」 少なくともその格好への同意で無いだろうが『消失者』阿野 弐升(BNE001158)が遊歩道へ工作を済ませていた。 リベリスタ達により工事用のカラーコーンが置いてあり、立て看板には「現在補修中のため立ち入り禁止」と書いてある。 人気の少ない山中と言えど万が一の事故を防ぐ為の処置だった。 これに強結界が加わればまず人は立ち入らないだろう。 準備ほ終えた一同は探索を開始し、更に奥へと進んでいく。 「あまり見通しが良くないなあ」 と地図を片手に進むのは『正義の味方を目指す者』祭雅・疾風(BNE001656)だ。 ヘビに悟られぬように囮役達のやや後方、風下の方から追従している。 鬱蒼と茂った木々による視界の悪さは疾風の目を以ってしても探索を困難なものとしている。 「俺、蛇好きじゃない……」 と戦々恐々しながら進むのは囮役の一人『むしろぴよこが本体?』アウラール・オーバル(BNE001406)だ。 よくよく見てみれば彼だけではなく彼の頭の上にいるぴょこも心無しか青ざめた顔をして丸まっている。 彼もしくは彼女を見るに動物には敏感に感じ取れるのか? これだけ深い山だと言うのに動物の気配を全く感じられない。 巨大な捕食者のテリトリーを鋭敏に感じているのだろう。 今の所アウラールの熱感知による視界には生命の反応は無い。 「待って下さい、何か聞こえません?」 手を遮って一同を静止した『』雪白 桐(BNE000185)が、目を閉じ集中して音を探る。 ――ずる、ずる、ずる それは木々のざわめきや通常の動物が発するには異質すぎる音。 這いずる様に静かに、しかし重く、圧し掛かる様な。 「近づいてきます、気を付けて?」 雪白の合図にアウラールと『闇猫』レイチェル・ガーネット(BNE002439)が気を張り、備える。 アウラールの熱探知の視界には丸太の様な太さのモノが木々を縫う様に蠢いていた…… 「あれだけ大きいと、まるで映画の怪獣ですね。」 レイチェルの驚嘆も無理も無い。 未だ蛇は輝きを見せず全容が把握できないが、これほどに巨大な敵を見るのは初めてだろう。 他の仲間達の反応も同様だ。 幸いまだある程度の距離はあるようだ、当初の予定通り囮役の天月、レイチェル、アウラールがそれぞれ少しでも開けた場所へと蛇を誘き寄せて移動する。 未だ自分が気付かれていると気付いてない蛇は餌が更に人間達の居る方に向かうのを見、増えるのはこれ幸いと誘われるままに近づいて行く。 だが相手は餌ではない、再び自らを絡め取る狩人だったのだ。 愚かな蛇はそれに気付かず憎たらしい人間を一飲みにせんとついに襲い掛かる! 「残念! バレバレなのさっ!」 が、既にトップスピードに乗った天月が事前に用意していたヤニを詰まった袋を迫り来る頭部に思いっ切り投げつけた! 「シャアアアッ!?」 強烈な臭いを鼻先にぶちまけられ、たまらず蛇がたじろぐ。 その隙を逃すリベリスタ達ではない、事前の打ち合わせどおりに合流した仲間達が今だと蛇に一斉に踊りかかる。 「ふむ、首尾は上々のようですね」 合流してきた面々の一人『静かなる鉄腕』鬼ヶ島 正道(BNE000681)の指先から気糸が伸び、巨大な蛇を絡め取りその動きを束縛。 「抵抗はご自由に、こちらも手加減なんてしませんし?」 破壊的なオーラを纏わせた雪白による強烈な連撃が蛇を幾重にも叩き、血飛沫を咲かす。 ――マタ私を縛ルカ! 人間メ!―― 動物会話を持つ天月にはその声がハッキリと聞こえたであろう。 拘束された事に怒りを覚えた蛇は全身に満ちた光を溢れさせ、発光する。 まさしく虹の如く眩い光を全身から放ち、拘束を消し飛ばし力を漲らせた。 周りの木々をなぎ倒しながらとぐろを巻き翼を広げ鎌首を上げリベリスタ達を見下ろし、虹色錦がその全容を現す。 その雄大な姿、神話の怪物の如き幻想的な姿にリベリスタ達は思わず息を呑む…… 「蛇だけにへびぃだぜ!」 「いや、全然笑えねぇって」 緊張感を良い意味で吹き飛ばした天月のどや顔ギャグにすかさず突っ込みを入れるのは『』ラキ・レヴィナス(BNE000216)だ。 「ったく、ずるいぐれぇに強力な鱗の力だな。だが使わせねぇぜ!」 巧みに回り込みながら光が弱い部位に向かってラキのバスタードソードが食い込む! 光が点滅するように弱くなるも消すには至らず、蛇が低く呻き声を上げる。 そして『ウィクトーリア』老神・綾香(BNE000022)が集中し、鋭い目付きで見据える。 「すまないな。その自由、狩らせて貰うぞ」 自由を求むモノとそれを阻むモノ達の戦いが幕を開ける。 ●光を纏う蛇 虹色錦が翼を広げ、襲い掛からんとした瞬間にリベリスタ達を『』アゼル ランカード(BNE001806)による加護が支援する。 羽を持たぬ者達でも翼を得たが如く重力と言う楔から解放される。 「はーい、皆さんガンガン行きますよー!」 その加護を得て弾丸の様に突撃する影一つ。 「お前が自然に使っている状態異常無効化を手に入れる為に私がどれほど……どれほどに苦労を!」 『消えない火』鳳 朱子(BNE000136)が鬼気迫る表情で闘気を漲らせた連撃で畳み掛ける。 蛇の吐く毒霧もなんのそのと正面から飛び込む彼女には必要以上に士気が高く感じられた。 ……正直ちょっとこわい。 朱子の強烈な攻撃により、手痛い一撃を受けた虹色錦は通じないならばと先程拘束してくれた鬼ヶ島に向かいその顎を広げ襲い掛かる! 「くっ!」 腕を噛み付かれ、毒が周り片膝着いた鬼ヶ島を捕らえたまま牙で引き裂かんと更なる力を込めたその時、強烈な十字の光が蛇の横っ面を叩く! 「おっと、頼ってくれていいぜ?」 十字の光を撃ったのはアウラール、全体的なサポートに徹する彼により被害は広がらない。 どうせ加減も出来ないのだ、ならばいっそ恨んでくれた方が余程良い。 蛇の怒りを一身に受け止めんと放ったアウラールの一撃に強烈な怒りを漲らせた蛇がその視線をやった瞬間。 「気の毒だけど、逃がす訳にもいかないんだ。変身!」 一瞬のうちに特撮ヒーローの様なスーツに身を包んだ疾風が放った鋭い蹴りは、カマイタチとなりその翼を薙いだ。 「合わせます!」 「よし、続けて行くぞ」 レイチェルと老神による同時ピンポイントが放たれ破壊までは至らずとも翼を的確にダメージを与えていく。 まさにプロアデプトの戦い方の手本とも言うべき柔軟性に富んだ立ち回りだ、的確な連携によって一人に的を絞らせない。」 痛手を受けた正道の傷も『水底乃蒼石』汐崎・沙希(BNE001579)による優しい風とアゼルの光がその被害を最低限に留めた。 鬼ヶ島が狙うは唯一つ。 集中し、研ぎ澄まされた一撃で戦局を打開する、それが仕事人だ。 鬼ヶ島が放った巨大な拳の一撃はラキによって光を弱められた場所に正確に穿つ! 「キシャアアァァァァァッ!?」 激しく全身が点滅し、虹色の光が弱まっていく。 「上等、やってやろうじゃねぇか!」 続けてラキが駄目押しにと放った斬撃は鱗を深く傷つけ、内部の肉まで達する。 刹那、光が割れる様に弾け、虹色の加護は破られた! しかし虹色錦もまだ終らない、加護が解けたと言えどまだまだ全身に溢れる力は健在であり、巨大な身体をうねらせ竜巻の様に周りのリベリスタ達を巻き込む! 「! まだです!」 正道が注意を促すも、蛇は巨大な体を活かし牢獄のようにラキ、雪白、正道、天月を捕らえ、グイグイと締め付ける。 「ちぃ!」 「か、はっ……」 締め付けたまま蛇は更に猛毒の液を霧状に噴射、後衛に毒を浴びせかける。 「くっ、させない!」 すかさず飛び出した疾風が毒霧をその体に盾に仁王立ちで受け止める 強烈な毒は衣服の隙間からも侵入し、疾風を蝕んでいくが、片膝を着きながらもその瞳に宿るは仲間を宿ると言う強い意志。 そこへぬるぬる効果で逸早く抜け出す事に成功した天月がマントを翻し飛翔する。 「桐ぽんはやらせないよっ!」 舞う様に踊りかかり神速の剣撃で蛇の胴体を刻む! 「サンキュー! 今助けるぜ!」 蛇の力が緩んだ瞬間にアウラールが手を掲げ、空間を光で満たす。 虹色の光とは違う優しい加護によりリベリスタ達の拘束が解け、沙希の優しい歌が全員を癒す。 「手強いな……その執念はエリューションながら恐れ入ったよ」 老神も感嘆としつつも溜息を吐き、再び戦況を分析する。 弱点の目星も付いている、連携も十分だった。 概ね理想的な展開の筈、しかし攻め切れない。 計算では計れない自由への執念と人間達に対する強烈な敵愾心からだろうか? 虹色錦の無機質な瞳からはその情念を推し量る事は出来なかった。 「捕まって捨てられて、自由だと思ったそれは束縛で。……トコトンついてない蛇さんのようですね。でも幸か不幸か、それも今日で終わりです」 いいえ、終わりにしてあげましょうとレイチェルが前に出る。 普段のぼんやりした彼女とは似つかわしくない程に積極的なのは虹色錦の境遇に多少なりとも同情してるからだろうか? しかし虹色錦はそれが解らない、理解しない、理解できない。 ダガーを構えたレイチェルは飛翔し、突き進む。 相対する虹色錦は再び虹色の光を纏う。 ――どこか哀しさ漂う虹色を。 ●目指すのは天か自由か 私は生まれてすぐ捕まえられ、見世物にされ、勝手に売られ、自由など無かった。 環境に適応しようとした事もあった、私を世話してくれた者に情を感じた事もあった。 だが私は捨てられた、捨てられたのだ。 お前達勝手な人間に。 その果てに漸く力を手にしたのだ、何者にも縛られない力を! だから自由以外何も要らない! 私は生まれた場所に帰るんだ! その叫びは誰に届いたろう? 動物の言葉なんて誰にも解る筈がない、解り合えない。 その筈だった。 「兎(ぼく)は君が人が嫌いな事も空へ憧れてたことも全部いいと思うよ」 レイチェルと蛇が激しく踊る中ふと呟いたのは天月。 そう、彼女には届いていた。 動物の言葉を解する彼女とて、正確に知り得たかは解らないが確かに届いていた。 「……地上の兎は月に憧れる。ずっとずっと遠いお月様にね。君の憧れは兎の憧れだ」 兎は駆ける、気持ちを理解した故に。 ここで取り逃がせばまた虹色錦は篭の中の鳥に逆戻りだ。 ならばこそ安らかに。 「ええ、一番悪いのは無責任な飼い主なんですが、ね」 アウラールの光によって回復していた疾風は一足先に飛び込み、流れるような動きから炎を纏う拳を叩き込む! 炎が虹色錦の体を焼くも加護により、焼き尽くすには至らない。 しかし強烈な打ち込みは虹色錦に少なからずダメージを与えていた。 「もう一発! いくぜ!」 ラキが振り上げた剣は迷うことなく蛇の頭部へと叩き込まれ、その虹色の光を霧散させる! たまらず蛇は翼を広げ上空へと逃げる。 「終わりにしよう」 老神が片羽を気糸で正確に射抜く、虹色錦のバランスを崩す 「一か八か、逃がしません!」 更にレイチェルの気糸に付けられたダガーがもう片羽も射抜く! 「上々ですな、援護します」 鬼ヶ島の気糸が絡みつき、上空に逃げた蛇を再び縛り上げる。 その隙を見逃さず天月は声を張り上げた。 「桐ぽん!」 「ええ、合体攻撃って奴ですね?」 真下に潜り込んだ天月が衝撃波を伴う斬撃で蛇に無数の傷をつけると同時に―― 「断 罪 剣!!」 ちょっと中二な技名を叫びながら既に合わせて飛んでいた雪白が雷撃を伴う一撃を上空から切り下ろす! 天に焦がれた人間が雷に撃たれて堕ちるかの如く、自由(そら)を求めた蛇に雷が落とされる。 「シャギャアァァァァァ!?」 全身を大きく震わせ、空中で蛇はのたうつ。 最後に天を仰ぐように空を見つめてビクンと体を硬直させ…… 虹色錦は堕ちていく。 ず、ず、ん…… 地響きを立てて虹色錦は横たわり、もう動かない。 皮肉にも天を求めた傲慢な人間の如き最期だった。 ●あの空に虹を 「ふむ……この状態ではあまり剥製にしても売れそうに無いですな」 「おいおい、もうほっといてやろうぜ……?」 鬼ヶ島に対しラキが渋い顔で反対する。 実際こういった生物を剥製にしてコレクションする好事家も居る様だ。 増殖性革醒現象のせいもあり、一般人の好事家には生体よりも剥製にする方が需要はあるらしいがそれはまた別の話。 幾ら遺体といえども神秘を世間に晒すような行動はアークとしては方針に反するだろう。 尤もラキの場合は虹色錦の数奇な運命に対する同情の念が強いようだが。 「死ねば自由なんてのは人間の考え方か、動物は違うんだろうな……」 動物を飼う者として複雑な心境のアウラールは敢えてそれ以上語らず先に立ち去る。 「逃がせばフィクサードに捕獲されてしまう。倒す事が次善なんでしょうか、難しいですね」 疾風にとってもあまり気持ちの良い事件ではなかったのだろう、翼を撫でる沙希をそっと見て、黙祷する。 「一体何処で道を外れる羽目になったのか……今ではもう判らないだろうが、な」 老神も目を伏せ、黙祷を捧げる 「もう何も気にしなくていいですよ?」 鱗を地面に刺し墓標にした雪白と天月。 「いい生涯だった…うさ?」 言葉が解ってしまった故になんともやり切れない皮肉。 「その七色の鱗は、かつて見上げた虹への憧れだったのでしょうか」 レイチェルが空を仰ぎ、呟く。 いつのまにか空は晴れ、空には見事な虹がかかっていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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