●75893 本部廊下。自販機の傍。長椅子に腰かけた機械のフォーチュナは資料を手にボンヤリと、窓の外を何とは無しに眺めていた。 何も考えていなかった――正確には今は何も考えられない――それ故か、近寄る足音には気が付かず。現れた咬兵の「よう」という声に肩がちょっと跳ね上がった。 「……蝮原様」 「落ちてるぜ、資料」 「あ」 蛇の無頼から足元に目をやれば、手から滑り落ちたのか今度の任務に関する資料が散らばっていた。急いで拾い上げると、それは咬兵がするりと手に取ってしまい。 「ほぅ……」 紙擦れの音。文字を辿る金色の目。何をするつもりかとメルクリィが見遣る中、彼は紙面から視線を上げ。溜息の様に吐く一言。 「お前、今日はもう帰って寝ろ。この仕事は俺が何とかしてやるよ」 「…… はい?」 「理由は自分に訊いてみな」 「で、ですが」 「お前が下らねぇ仕事をしたら迷惑を被るのはあいつ等なんだぜ」 「う……」 俯くフォーチュナ。彼が精神的にかなり消耗しているのは、知っている者ならば知っている――とあるリベリスタの消滅。大切な人を失った。 「いつまでもウジウジされんのもウゼェが、虚勢の作り笑いはもっとウゼェ」 あばよ、と歩き始める。靴音。 いつも何かと言い包められている相手だ。偶にはこっちが言い包めないと、恐山のアイツ式に言えば『バランスが悪い』。 「はぁ……実際、複雑だぜ」 呟き声は、ブリーフィングルームへの扉が開く音に掻き消えた。 ●らいどーん 「ようお前等」 と、ブリーフィングルームに入って来たのはいつものフォーチュナではなく『相模の蝮』蝮原 咬兵 (nBNE000020)であった。 「……名古屋? あぁ、帰った。まぁ今回の仕事は俺が手伝ってやるよ」 手近な椅子に座りつつ、「ほらよ」と未だ目を丸くしているリベリスタ達に手渡す資料。 「そこにも書いてあると思うが、E・ゴーレム共が九体ほど湧きやがった。それを潰してくるだけの仕事だ」 資料によれば、フェーズ2が一体、フェーズ1が8体――数が多いからと言って弱い個体の群でもなく、フェーズ2の『バスのゴーレム』は中々に手強いらしい。 添付画像――禍々しい気を纏ったバス。当然ながら無人だ。『ブロックしても撥ねられてしまう為、ブロックはほぼ不可能』と一言が添えられている。 視線を移せば、フェーズ1についての情報も載っていた。大型バイクのゴーレムが3体、タイヤのゴーレムが5体。どうやら強さは数が多い者ほど下らしい。 「何れも攻撃方法は単純だが、その分威力が高いんだとよ。 それから……『マスタードライブ』っつー能力があるだろ? それが有ればバスかバイクのゴーレムを運転できるんだとよ。奴らの動きをかなり制限する事が出来るが、その代わりに乗った奴は『運転』以外が一切できねぇ。それに加えて徐々に体力と精神力が削られていく。当然、振り落とされる可能性だってある。まぁやるかどうかは任せるぜ」 因みに俺は『マスタードライブ』は使えねぇと付け加え。 「……説明はこんなもんだ。それじゃお前等、往くぞ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年09月05日(水)23:39 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ぱっぱらー 暗い夜。夜は暗い。外れには街灯も無く、見上げる星月も雲の上にある様だ。 (蝮のにおいがする……) くんくん、と『Gloria』霧島 俊介(BNE000082)は嗅覚頼りに辺りを見渡し、そして見付けたのはあの広い背中。見間違える筈がない。あれは、彼だ、咬兵だ。 「まっむっさぁぁぁ「よう霧島元気そうだな」ぁあべらッ!!!」 抱き付きタックルかまそうとしたら振り向き様に腹パンされたの巻。超反射神経は不意打ち無効ッ! そんな感じにずしゃぁと崩れ落ちた俊介をひょいと跨ぎ越え、次いで『墓守』ノアノア・アンダーテイカー(BNE002519)がその肩をぽんと叩く。 「よぉ、自分から出張って来たんだって? 珍しいねえ」 なんて言える程、彼を見知っている訳でもないんだけどね。常の余裕な笑み。 「ハッ、実際……複雑だぜ?」 なんてな。それに咬兵は一間開け、ただの気紛れだと息を吐く様な物言いで返した。 「気紛れねぇ……」 咬兵の言葉に答えたのは『雇われ遊撃少女』宮代・久嶺(BNE002940)、口元に手を添えて、にやにや。ニヤニヤ。雨宮 千景(BNE003997)もヒョッコリ顔を出す。 「友達思いだねぇ、相模の。とても元総理を殺そうとした人とは思えないよ」 「んっふっふー、やっぱ蝮原さんはいい人……いや、仁義溢れる人って言ったほうがいいのかしら?」 「お前等な……」 「いえいえ、みなまで言わないわ! アタシも協力させて貰うわよ」 「まぁ、逆立ちでウィリーが出来るこの吾輩が来たからには安心さ。大海原に投げ出された気持ちでドーンと行こうぜ」 「そういう事よ! さぁ、いきましょう!」 「どういう事だ……」 最早言葉が追い付かない。意気揚々と歩き出した二人の背中を見遣る咬兵、の、背を叩き『自称・雷音の夫』鬼蔭 虎鐵(BNE000034)が横に並ぶ。 「今夜は特別だ。道化の仮面を外してやるよ」 いつもヘタれている所しか見せていない故、偶には威厳のある所もちゃんと見せなくては。見遣る橙の視線は鋭く、ニッと笑む。 「咬兵、随分とお人よしじゃねぇか。メルクリィの事きちんと考えてやってるんだな」 「あ? 別に宮代達が言ってた様なモンじゃねーよ、勘違いすんじゃねぇ」 等と些か不服そうに咬兵は息を吐くが、まぁ、それはさて置き。そんな友人を手伝わないのはダメだろ、と虎鐡は笑みを深めた。 「とりあえず……片付けちまうか」 視線の先には胡乱な気配。『居る』のだろう。歩み出しつつ身体のタガを外し、鬼影兼久を抜き放った。 やれやれだ、どいつもこいつも。自身に違えざる血の掟を刻み込んだ咬兵の傍ら、『運命狂』宵咲 氷璃(BNE002401)が展開させた幾つもの魔法陣が煌めいた。 「ふぅん」 と、黒日傘『箱庭を騙る檻』の中から漏れたのは吐息。見上げる薄氷の眼差し。 「顔の割に友人思いなのね?」 「俺がいつアイツを『友人』だと言った」 「……いえ、手間が省けて助かったわ。辛気臭い顔で私の前に現れていたら、平手の一つでもお見舞いしていたもの」 では、彼が虚勢を張っていたら? 「その時は、平手を張っていたでしょうね」 「結局ぶつのか」 「まぁ……それもこれも、唯の自己満足で八つ当たりだわ」 そう言って、彼女の視線は偽りの天蓋に隠される。 (大切な人を失った時の喪失感なんて、出来れば、思い出したくも無いのだから) それに失ったのは『彼女』も同じか――今の彼を慰められるのは彼女だけかしら、ね。 「……実際、複雑よね」 呟いたのと、ゴーレム達のライトが闇を劈いたのは、斯くして同時。 ●暴走ラヂカリック 頼もしい同行者。ありがたいものだとその視野を脅威的に広げた『非才を知る者』アルフォンソ・フェルナンテ(BNE003792)は、攻撃教義を皆に授ける。 同時、パーキングエリアの出入り口を塞いだのは俊介が設置した乗用車と、我此処に在りと言わんばかりに燦然と輝く蒼龍、白虎、鳳凰、『御意見無用!』の文字。赤と青の電飾で縁どられているフルアートデコトラ『三代目龍虎丸』。 その持主である『外道龍』遠野 御龍(BNE000865)はニヤリと得意気に笑い、愛車の運転席から颯爽と降り立つや。 「運転手は運転がお仕事ってねぇぃ。乗り物なら我に任せろ!」 ゴキリ、拳を鳴らして戦気を爆発させる。やれるものならやってみろ、それに応えるかの様にサイコバスがクラクションを鳴らし、バイクやタイヤ共々突っ込んで来た! 「よっしゃいってこい、リベリスタ!!!」 体内魔力を活性化し、後衛地にて仁王立ちをした俊介が右手を高く掲げた。 (メルクリィに心配させないように、超頑張ろう!!) そして授ける浄化の鎧は、暴れタイヤへと間合いを詰める咬兵へ。 「鬼蔭、そっちはくれてやるよ」 「はいよ、任せとけ」 踏み締めるアスファルト、接近。 「ふん、すまねぇが破壊させてもらう」 虎鐡が構える黒太刀に乗るは輝くオーラ、刹那に繰り出すのは怒涛の連撃。火花を散らせるその威力に押されつつも、されどタイヤは突進を止めずに虎鐡へと飛び掛かった。が、押され突進力の緩まったそれを回避するのは虎の無頼にとっていとも容易く。 「所詮はポンコツ共か……つって油断してると足元掬われちまうんだよな」 油断大敵。別方向から飛び掛かって来たタイヤを太刀の一薙ぎで防御する。 アスファルトをタイヤが擦る音。唸るエンジン音。 それに負けじと、施条銃を手に久嶺は声を張り上げる。 「アタシの名前は、宮代久嶺! 信頼する人のためにも、無事終わらせてやるわ!」 仁義上等。構える銃口。狙い放つは罪を討ち抜く断罪の弾丸。夜より黒い真っ黒な弾道は真っ直ぐ、猛然と突っ込んでくるサイコバスへ。直撃――しかしその勢いは止まらない! 「よう、私と夜のドライブしようぜ?」 後衛陣へ真っ直ぐ突っ込もうとしたバスの、その横側を白く穿ったのはノアノアのジャスティスキャノン。果たして車に怒りだとかそう云った者があるのかは些か不明だが、兎角サイコバスはぐりんとノアノアへ方向転換するやエンジン全開で飛び掛かって来た。迫る。猛速。 ズドムッ。 「ぐっ……」 構えたガードすらその身体ごとブッ飛ばす。効くなァ。空中で一回転、地面に降り立ち口元の血を拭い。 「今のは、」 飛び掛かって来た暴れタイヤの突進を足裏で蹴り踏む様に止める。脚甲と猛回転するタイヤが擦れて、凄まじい火花が辺りを染める。 「中々に痛かったぞ? あぁ、イライラするぜ畜生! こういう時はあたり散らすのが一番だよなぁ!?」 握り締める拳。感情のままに振るう一拳。インカムゲイン。搾取。徴収。不当なる配当確保。 さて――視覚で、直感で、記憶力で戦場を把握する氷璃は高速で術式を構築してゆく。翳す掌。 「さぁ、滅びの運命に抗いなさい――」 刹那、戦場を奔るは死を贈る黒き唄。血鎖の姿となった死が荒れ狂い、削り、抉り、蝕み、不吉と呪いで縛り上げる。八つ当たり。 サイコバスと、キラーバイクの動きが止まった。 今だ、と送る視線。その同時には、御龍と千景は走り出していて。 「私ってほら、乗り物に乗ると人が変わっちゃうタイプだからさー……後はこの2012年9月3日現在MVP率100%の俺様に任せるといいじゃん」 怪盗でDQNな外見に姿を変える徹底振りで千景が鎖に縛られたキラーバイクにライドオン。御龍もサイコバスのドアをブチ破って運転席へ。シートベルト?そんなの締めてる余裕はない。 ハンドルを手にすれば、反発する魔力が二人の肉体と精神を蝕み始めた――が、それがどうした。直後に暴れ始めたゴーレムに振り落とされぬ様、発動させるはマスタードライブ。 乗りこなしてみせる。 「我はな、普段大型車を運転してるんだ。このくらい乗りこなせなくてどうする!」 御龍の動きは的確だった。ブレーキを踏みサイドブレーキをかけギアもローに、兎角減速。バスはそれに逆らおうとするが、その抵抗魔力も痛みを遮断した彼女には届きやしない。哄笑と共に一蹴。 「我<運転手>に逆らうんじゃないよ!!」 ギキィイイと凄まじいブレーキ音。前輪を軸にぶぉんと大回転したかと思えば、その車体でタイヤ達をブッ飛ばした。その上、飛んで転がったのを轢き潰してトドメを刺した。 「おっと失礼」 にやり、と確信犯。 一方千景も暴れるキラーバイクの制御に全身全霊だった。振り落とされぬ様に無理に逆らわず、されど仲間へ攻撃が向かえば重心を逸らして軸をブレさせ、回避し易い様に。 「っと、」 お陰でバイクの突進を容易く回避できた虎鐡は振るったラッシュで最後のタイヤを切り刻んだ。 (さて、咬兵は……) 見遣った。酷い手傷は負っていないが、物凄い小声で「ってぇな……」と毒突いたのを、虎鐡は確かに聴いた。にやり。彼を狙って走って来たバイクの前に立ち塞がるや、その突進を構えた得物で受け止めて。 「よう、辛そうだな咬兵。助けにきたぜ」 皮肉まじりの笑顔。何時ぞやのあの台詞。 やれやれ。 「……来るのが遅ぇよ、馬ァ鹿」 返すのもまた、冗句交じりの笑顔。 道化の彼も。そうでない彼も。何だかんだで信頼しているのだ――決して口には出さないけれど。 「で。まさか助けに来たお前を俺が助けるっつー状況にゃまさかならねぇよなぁ?」 「ふん、俺はまだまだ息は上がってないぜ? こいつはまだウォーミングアップだぜ」 「それじゃそろそろ飛ばすとするか、鬼蔭よ」 「あぁ、そいつぁいいなぁ!!」 渾身の連撃がバイクを薙ぎ、直後の銃声がそれを完全に粉砕する。 そして鳴り響いたのは凄まじいクラクション。悉くを叩き付ける音の暴力。 「うぎっ……」 なんつー馬鹿音量だと俊介は耳を塞ぎつつ、その音を塗り替える様に紡ぐ詠唱。 誰一人倒れさせるものか。皆も、蝮も。いくら強くても、怪我はするから。 だから自分は、癒す! 「まだ終わるときじゃあ、無いんだぜ!」 祝詞によって顕現するは聖なる者の深き慈愛。かの者が子等を優しく撫でれば、傷も脅威も悉くが消えてゆく。 一先ず安心か、戦況を見遣る俊介だったが。 「……あ! バイク! ぶつかる!」 張り上げた声。直後、横合いから爆走してきたバイクが千景の乗るバイクにブチ当たった。宙に投げだされる千景。操縦された恨みと言わんばかり、それを狙うバイク。 「さっせるかぁあああ!」 飛び出した。バイクの前へ。ホリメだけど体力大丈夫かな――いや、やるって決めたらやるんだ、自分の傷なら自分で治せるしな! どむっと衝撃が伝わる。色々砕けた感じがする。だが、俊介は倒れない。吹っ飛ばされない。先を代価にバイクをがっちり掴み、 「今だ、乗れ!! 飛び込め!! 絶対、負けて、たまるか!!!」 その声に千景は運命を消費しムクリと起き上がる。身長の縮まった怪盗の姿。 「傷を埋めたら縮んじゃったじゃないかー。酷いなぁ、妾が一般人だったら 三回ぐらい死んでたよ」 さぁもう一度。バイクに跨る。勿論、俊介にチャージするのも忘れずに。 因みに衝突したバイクはと言えば。 「無賃暴走はいけねえなあ……」 そのライトに照らし出されていたのは、魔王の笑み。ノアノアの拳。 「私に対価を払いな!」 ぶっ込む拳、通行料金徴収。速度違反罰金。徴収。ガソリン一滴血の一滴。奪い尽した。 さて、と。久嶺が狙い定めるのは千景が制御するバイク。 「あんまりちょこちょこ動かないでね? まぁ、アタシの腕前なら、誤射することはないけど」 痛みを弾丸に。狙う。じっと。今か。今だ。撃った。千景には当てず、そのバイクのみに。強烈ゥ。なんてね。千景はブチ抜かれて制御し辛くなったバイクをアクセル全開、一直線に突っ込む先は――サイコバス。 「ここまで来たら勝ちも同然だろ? 遊ばない?」 カミカゼアタック。但し自分は緊急離脱。バラバラ四散のキラーバイク。 残るはサイコバス一体。 黙ってやられてなるものか、暴れるバス。ブッ飛ばされる御龍。豪快に、だ。更にメガクラクションのオマケつきで、受け身も儘ならず地面に叩き付けられる――かと思いきや。 「煩いわね……耳が塞げないのが辛いわ」 ふわり。空中。御龍を受け止めたのは、氷璃。白い羽が闇夜に広がる。 「おっ、こりゃありがたいねぇ」 「それじゃ……最後まで気張りなさい」 「どわぁ!?」 ぽいっ。と、開け放たれたドアから御龍を放り込む氷璃であった。それから、餞別だと放ったのは呪氷矢――触れた悉くを凍て付かせる冷たき一撃が、サイコバスの車体に突き刺さる。 「さーて……」 御龍は再度、運転席に着席。わっぱ(ハンドル)をしっかり握って。 運転手は運転がお仕事。さぁて、暴れさせてもらうとするか。 「的はでかいぞ! 皆しっかり当てろよ!」 兎に角皆の攻撃が当たり易い様に、全身全霊で制御。運転手魂、見せてやる。 「我に構わずどんどん行け!!」 鈍い衝撃が運転席にまで伝わって来る。ミラーで確認すれば、制御する車体へ降り注ぐ皆の猛攻。 「オラー! 止まれおらぁーー!」 「こっち向けオラァー! インカムらせろァー!」 「爆発しろァー!」 俊介のマジックアローに、ノアノアのジャスティスキャノンに、攻撃的な台詞を言いながらもインスタントチャージな千景。 元気なガキ共だ、等と虎鐡は思いつつ。 「無様な所なんざ見せられねぇんでな」 得物に込めるはありったけの気合。 「斬るなんて生易しいもんじゃねぇ……斬り潰す!」 踏み込む間合い、一閃の轟撃。 叩き付ければ重い衝撃と、派手に壊れながらぶっ飛ぶサイコバス。クラッシュ。ぐわっしゃぁ。 「ん、ん~……」 そんなスコープからの景色。久嶺は口をへの字に曲げる。 (こんな機敏に動くバスのタイヤ狙うなんて面倒だわ!) そうだ、なら全部ぶっ壊せばいいじゃないか。部位狙いなんてみみっちい事しなくっても、全部ぶっ壊せば大解決じゃないか。アタシったら天才ね! 「いくわよ!! 御龍、もーちょっとだけ耐えてね……!」 ありったけを銃に込め、構える先。ダメージと御龍の制御にふらつきながらもこちらへ突進を仕掛けてくるサイコバス。 上等だ。来るなら来い。引き金を引く。ズドン――断罪の弾は一直線に寸分違わず、真っ正面からバスをブチ抜きぶっ壊し。まるでどっかのアクション映画さながらにドガーンと爆発。文字通りの、『大破』。 爆風に髪を揺らし、遊撃少女は得意気に愛銃をくるんと肩に担いだ。 「残念、the dead end(行き止まり)よ」 不敵に笑う。その背後、どわぁーと爆発にブッ飛ばされた御龍がべしゃっとアスファルトにある種華麗な着地を決めたのであった……幸い、大した傷にはならかったようだが。 「いやぁ、ド派手で良いではないか。ハハハハハ」 と、運転手は大の字になって楽しげに笑っていた―― ●夜のシジマに消ゅ リベリスタ側の被害が少なかったのはマスタードライブの二人の健闘も大きいだろう。静寂を取り戻した夜の中、やれやれと息を吐く。 「やだなぁ、怖い顔すんなよ。お前らの戦場に対する危機意識が低いって事を僕なりに教えてあげたくってさ。それに轢くって言ってたじゃんよ、ははっ」 等と飄々な千景は相変わらず。その一方で久嶺は御龍の手を取って起こしつつ。 「お疲れ様……御龍、雨宮、ナイスジョブ、最高のドラテクだったわ」 二人に対しサムズアップ。 常のお気楽マイペースに戻った御龍はカラカラ笑い立ち上がるや、「あ、蝮さん」と咬兵に声をかけ。 「メルクリィさん元気ないんだってぇ? うーんちょいと刺激が強すぎたかぁ……でも戦場だからねぇ。 逆にメルクリィさんがいたから助かった人たちもいるってこと伝えといてぇ。元気出して、なーんてあたしの口からは言えないからねぇ不器用ですからぁ」 爆風にちょっと焦げた頭をボリボリ掻いて。分かったよ、と答えつつ煙草を取り出す咬兵に、ノアノアがちょちょいと手招き。曰く、一本くれと。 「……名古屋に言っといてくれよ」 ぷはぁ。紫煙と共に、彼女は言う。 「何時までもダラダラしてる様なら『僕』がお前をぶっ殺しに行くぞってさ」 「あぁ、ちゃんと伝えといてやるよ」 それじゃぼちぼち帰るか、と。咬兵が踵を返しかけた所で、のしっと肩を組んでくる虎鐡。 「すまん咬兵、飲みに連れてってくれ。上手くござるに切り替わらねぇ」 お前なら美味い店知ってんだろ、なんて言う虎鐡に、咬兵はくっと笑った。可笑しそうに。それに対して抗議するよう虎鐡は頬を掻く。 「あれだ……勢い余って昔に染まりすぎて暫くは元に戻りそうにねぇんだよ」 「いいんだぜ別に、そのままでも?」 「そういう訳にゃいかねぇんだよ……」 「面白ぇから今日はそのままでいろよ」 お前なぁ。なんて、銘々に夜の中へと消えてゆく。 日の出までは、まだまだ。 その後、アーク。 「おいメルクリィー! ちゃんと依頼できてたよ蝮っ!」 と、上から目線のドヤ顔で伝える俊介だった。 そんなこんなで、終幕がらがら。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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