●素肌にナイトメア また悪夢を見た…… 憂鬱に起き上がったベッドの上で、重い頭を掻き毟る。 また悪夢だ。ぐちゃぐちゃな内容。内容に嫌悪感を覚えるというよりは、『嫌悪感と憂鬱感』を覚える夢。えげつないものだった。自分は普段からあんな事を脳に留めているのかと、自嘲に暗い気持ちが深くなる。 たかが夢だと己に言った。されど脳味噌にこびり付いた光景は、不安は、消えず。 ここで目覚まし時計――目覚める予定の時刻より数分早く目覚めたらしい。 ズキン、ズキンと頭が痛む。 嗚呼、このところ毎日、毎日、毎日毎日毎日が悪夢だ。心が鉛の様に重い。息苦しい。頭が痛い。顔を顰めて目覚まし時計のアラームを止めた。 ――起きなくては。 ●むちゅ 「皆々様が今まで見た夢の中で、一番胸糞悪かった『悪夢』は何ですか? ……そんな感じの『最悪の悪夢』が毎日毎日続いたら、どう思いますか?」 事務椅子をくるんと回し、『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)が皆へ訊ねた。 最悪の悪夢。そう考えた所で、フォーチュナは説明を開始した。 「とまぁ、そんなこんなでノーフェイスの出現を察知致しましたぞ。 ノーフェイスの名は『桑座 良樹』、元は一般的な大学生でしたが、ある日を境に――」 こんこん。機械の指先、叩くのはその蟀谷。 「脳に寄生虫型E・ビーストが寄生してしまいまして。 そのエリューションの所為で、彼は『心すら蝕む最悪な悪夢』に囚われてしまい、毎日毎日精神を削られ……発狂すると同時に、増殖性革醒現象によって革醒してしまいました。 彼は見た目こそ人間時とほぼ変わっていませんが、理性がぶっ飛んで物凄く凶暴・尚且つ脳に寄生したE・ビーストによって強化されています」 具体的に言えば、身体能力が強化されると同時に自己再生能力も付与されているのだと言う。 「それだけでなく、その傍に寄っただけで寄生虫の特殊能力によって『最悪の悪夢』がフラッシュバックし、精神力が削られてしまいますぞ。 寄生虫自体は非常に非力です。良樹様が力尽きるとその頭部から『新たな宿主』を捜して出てくる事でしょう」 トドメもお忘れなく、と締め括り。メルクリィの隈のある目が僅かに伏せられる。機械の手を額に宛がった。 「……悪夢は、嫌ですね。本当に。ですが覚めない悪夢は無いのです。 それでは皆々様! 今回もファイト一発ですぞ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年09月07日(金)22:44 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●頭痛とか 夜。並んだ街灯。一体はシンと寝静まり、響くのは自分の呼吸音。心臓音。仲間達の足音。 (悪夢虫……) それに偶然にも寄生されてしまった、元人間。 「そう考えてみれば……本当は哀れなのかもしれませんね」 「哀れとは思うが運命が許さなかった以上如何してやる事も出来はしない。最早人の理から外れたアレは、既に災害を撒き散らすだけのヒトガタをした猛毒だ」 同情も手加減もしない、出来ない。成すべき事を全うするだけだと『プリムヴェール』二階堂 櫻子(BNE000438)は続け、その体内魔力を循環させ始めた。恋人の言葉に応えた『アウィスラパクス』天城・櫻霞(BNE000469)も教結界を張り、その集中力を強力に高める。 「さて、始めようか」 「――参りましょう」 一歩を共に歩む二人の一方で、如月・真人(BNE003358)は既に半パニック状態。頭を抱えてキャーキャーと女の子の様な悲鳴を上げる。 「ああああああ悪夢と言いますとあんな事やこんな事が毎晩毎晩ですか? イヤー! そんなに見たくないですよ!」 一体彼は普段どんな悪夢を見ているのか――それは彼のみぞ知る。マナサイクル。これで敵の能力に対抗できれば良いんですけどねぇ、なんて。 「ノーフェイスか……」 ノーフェイスとなってしまった以上はどうしようもない。脳味噌にEビーストが寄生している以上、確かに助ける事なんて、もう、出来ない。 「けどそれがどうしたってんだ」 身体のギアを上げ、『デンジャラス・ラビット』ヘキサ・ティリテス(BNE003891)は己が拳を掌に打ち据える。前を向く兎の目は、あくまでも『前を向いて』いた。 「助けられねーなら救ってやるまでだぜ!」 その為に自分達は来たのだから。 「せめてその永劫に続く悪夢から解放して上げましょう。覚めない悪夢(ゆめ)など無いのですから」 そう『宵闇に紛れる狩人』仁科 孝平(BNE000933)も続けつ、段々と近付いてくる胡乱な気配に武器を持ち身体のギアを高めた。 電柱の灯り、その向こうの闇、人影、呻き声。 来た――射手の感覚を研ぎ澄ませた『蒼き祈りの魔弾』リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)は『それ』を凛と見据え、油断なく両の手に持つは異形を討つ為の聖別済み銃「十戒」「Dies irae」。教えに殉ずる覚悟の証を靡かせて戦闘態勢に入る。 「……」 黙し、『戦奏者』ミリィ・トムソン(BNE003772)は広げた視野で見据えていた。未だ醒めぬ夢に囚われた、彼の姿を。 ――悪い夢は、いつか醒める。 「醒めないのなら、私が、私達が醒ましてあげる」 杖を携え、視線は逸らさず。 さぁ。 少女達は言い放った。 「『お祈り』を始めましょう」 「戦場を奏でましょう」 哀れな命に、救いと解放を。 終わらぬ悪夢に、終止符を。 ――任務開始。 ●悪夢とか 悪夢だ。悪夢だ。脳の中の深層が生々しく生々しく這い出て来てはニューロンというニューロンに於いて跋扈するのだ。両の瞼を閉じている限り。否。それは、目を開けていても見える悪夢。醒めながら醒めない悪夢。 うぅううあああ。呻いている。見開いた血走り眼で見ているのだろうか、良樹は。あのノーフェイスは。悪い夢を。 「今、醒めさせてあげるからね!」 コマ送りの視界。『さくらふぶき』桜田 京子(BNE003066)は孝平とヘキサと共に良樹を取り囲むべく走り出す。地面を蹴る――ずくん。 ずくん。 ずくん。 「っ……!?」 脳が、疼く。顔を顰めながらも黒鉄のリボルバー運命喰い²を構え、至近距離から澱み無き連続射撃で圧倒する。最中も、ずくん。 (頭が、痛い……!) 何でこんなに頭が痛いのか、その理由には直に気付いた――鳴り響く鐘の音が京子の脳を揺さぶる。気付けば周囲は赤く、紅く、真っ赤な月が真っ赤な霧に閉じ込められた少女を見下している。霧の中から現れた『最悪の殺人鬼』がナイフを携えこっちを見て居る。 ごーん。 ごーん。 鳴り止まぬ鐘は嗤う。やめて、やめて、この音を止めて。息が出来ない。苦しい。それらを振り払う様に京子は銃を握り締め――殺人鬼へ弾丸を発射した。発射した。何度でも。 なのに、弾丸は殺人鬼に掠りもしない。目の前から消えたそれ。 何処に。 振り返ろうとした。出来なかった。何で?口からごぼり、と溢れた血が、息を、声を、阻む。溺れる。意識の中。殺人鬼のナイフが京子の細い首を貫いていた。 「あ、」 ごぼ。ごぼ。赤い。赤い。赤い。倒れる。死ぬの?苦しい。痛い。寒い。死にたくない。誰か。誰か。嫌。怖いよ。怖いよ。こわい、よ。 ごーん。 ごーん。 ごーん。 ――鐘が鳴り止まない。 「桜田ッ!?」 良樹の絶叫による衝撃波に吹き飛ばされた京子を見、ヘキサは奥歯を噛み締める。悪夢虫の仕業か。舌打ちを一つ。 「しゃらくせぇ、んなもん蹴ッ飛ばして……」 言いながら標的へと見遣る、が、そこには何も居なかった。 「なっ!?」 何処に?周囲を見渡した。更に驚く。 誰も、何も、居ない。 居るのはヘキサと、彼を包む真っ黒い闇。 「お……おい! 皆どこ行ったんだ!? おいッ!!」 見渡した。闇。誰かを呼んで叫んだ。闇。誰かを捜して走った。闇。 誰もいない。何も無い。 兎は一人ぼっち。 「……っ、」 じわじわ、心を蝕む孤独感。誰もいない?一人きり?一人だけ? 嫌だ、と。誰か、と。叫んで、叫んで、闇の中―― 集中によって研ぎ澄ませた連撃を放ち、良樹の動きを封じた孝平は「今だ」と仲間達へ叫んだ。筈だった。気付いたら彼は電車に居た。トンネルの中、ガタンゴトンガタンゴトン。 嫌な。 予感が、 そう思った刹那、轟音が孝平を叩き付ける。これは。革醒を起こす原因となった事故――電車で移動中に起きた地震によるトンネル内の落盤。外界と隔離され、暗い中、死と隣り合わせ、取り残された人々に広まる絶望と他者への不信。 現実では覚醒して生き延びた。けれど悪夢では、そのまま彼は孤独と絶望と不信感の中、衰弱して死を迎える。 暗い、暗い、果ての無い闇に沈んで逝く。 「――大丈夫、今治して差し上げます。癒しの息吹を届けましょう……」 明らかに前衛三人の様子がおかしい事に櫻子は気付いていた。蒼銀杖ディオーネーを構え、唱えるは聖神を讃える祝詞。吹き抜ける癒しの風。しかしそれを以てしても心臓を掴む不安感から逃れる事は出来なかった。冷や汗が吹き出す。何か、自分の傍。地面に転がっている。何だろう。 『見ては駄目だ』 分かっている。分かっているのに、目が。向いて、しま、って、 「嫌ぁああああっ!」 赤かった。血だった。死んでいた。愛する人が。恋人が、弟が。 「櫻子……しっかりしろ!」 櫻霞は顔を覆ってしゃがみ込んでしまった恋人に声をかけるが、駄目だ。ならば一刻も早く敵を討たねばならぬ。 「逃しはしない必ず当てる……行くぞ?」 構える銃、ナイトホークにスノーオウル。放つ気糸で良樹を正確に穿つ。 「愚鈍だな、貴様如きに避けられるとでも?」 まだまだいくぞ、と狙いを定めた櫻霞、の、肩を誰かが後ろから掴んだ。無理矢理振り向かされた。 そこに居たのは、血塗れの親に友人。ナイトメアダウンで死んだ筈の。表情に恨みと憤怒を浮かべて、掴む。首を。髪を。 『何故お前が生き残った』 『死ねばいいのに』 『お前が憎い』 終わらぬ怨嗟が、意識を真っ赤に染め上げる。 悪夢を見る。 それはミリィの過去であり、決して忘れられない心の傷。 何処もでもある有り触れた家庭。父と、母と、姉と、彼女。4人の暮らし。平凡だけど、満ち足りて、幸せで。幸せ『だった』。 終わりは突然。 見開いた少女の目に、革醒したミリィの目に、父の顔が映った。怯える母が映った、驚いて彼女を見る姉が映った。 父が、叫ぶ。 『“ ”――』 その叫びに意識が吹き飛ばされて――気が付いたら、切り替わった場面。 ここは何処? おそるおそる前を向けば、両親の背中があった。ミリィを置いて歩いている二人の背中。 「待って――」 手を伸ばした。空を切った。 「待って」 行かない『手』は、届かない。 「置いていかないで、」 尚も諦めずに手を伸ばした。 それでも、それでも、背中はどんどん遠くなって。 「ひとりにしないで……!!」 追いかける。走り出す。 「お母さんっ、お父さぁあーーーん!!」 追いかけても、追いかけても、どれだけ手を伸ばしても、叫んでも、届かない。 少女は独りぼっち。 伝染する悪夢。或いは、良樹が見せる悪夢の幻影。 悪夢に叫びながらもインスタントチャージによって皆の火力を保っていた真人が、悪夢の弾丸に貫かれて遂に倒れる。蝕む夢が傍に居た者を強力に傷付ける。 「っ、」 良樹の放った悪夢弾がリリの頬を掠めた。伝う生温かい感触を感じつつ、修道女は祈りの数だけ弾丸を放つ。穿つ。弾む息をフッと整え、再度狙い、 じわり。 「?」 頬に違和感。 何だろう?痒い。痒い。頬が、傷口が。 「う――」 刹那だった。リリの頬の傷口を食い破って大量の蛆虫が――血の身体を持つ丸々と肥えた蛆虫が這い出てくる。激痛。絶叫。 これは。 忘れもしない――初めての戦いの時に見た、あの忌まわしく悍ましい存在。六道。キマイラ。心臓マゼンタ。 「い、嫌、嫌、や、痛い痛い痛いぃいやぁあああああああ!!」 寄生したマゼンタが、生み出す血蛆が、リリの身体を肉を臓物を皮膚を食い破って溢れてゆく。ぶちぶちぶちみちみちみちぐぢゃぐぢゃぐぢゃ。取りこんでゆく。滅茶苦茶に銃を撃ってもその数は減らず、否、寧ろ増え続けて、増え続けて。 真っ赤に染まる意識、霞む視界、されどリリはその中にきらりと輝く色を見付けた。それはロザリオ。信仰の証。 そうだ、これは夢だ、夢なのだ。 惑わされてはならない。 二つの銃を離さずに。両手に教義を。胸に信仰を。成すべき事を。 「主よ――どうかご加護を!!」 二つの銃口から放ったのは呪いの弾丸。それは一直線に飛び、良樹の肩口を穿った。 今だ悪夢は終わらず。肌を這う忌まわしいキマイラの感触は生々しいけれど、苦しいけれど――あのノーフェイスはもっと苦しいのだ。 「お苦しいでしょうが、もう少しだけ耐えて下さい」 この祈りを弾丸に込めて。引き金を引く指先は救済の為。 これは、夢だ。 京子は運命喰い²をぎゅっと持つ。 そして真っ直ぐに前を向いた。 絶望には嘘の欠片。 「――殺人鬼さんはお花に水をやり始め、弱い者いじめは許さねえぜって言う様になりました」 京子の目の前で、京子が悪夢を嘘で塗り替える。消し去ってしまう。 それは優しい嘘。 京子を守る京子は最強で、どんな恐ろしい悪夢だって殺さずに楽しい夢へと変えてくれる。 だから、彼女は嘘を吐く。彼の悪夢も皆の悪夢も嘘で楽しくする為に。 「皆、一緒にお花に水をあげよう! ピクニックしようよ、散歩しようよっ」 大きな声で嘘を吐く。塗り替える。悪夢をファンシーで嘘みたいな楽しい夢に。 「怖いモノからは羽を生やして逃げちゃえばいいんだ! おっきな武器でやっつけちゃえばいいんだ!」 悪夢は夢と認識する事で対処ができる。 そう、これは夢。 悪夢でも何でもない、楽しい夢。 「諦めないで!!」 声と共に真っ直ぐ、放つ弾丸。更にもう一発。 輝くリリのブレイクフィアーが皆を苛む脅威を吹き飛ばす。 明瞭になった意識、櫻霞は良樹へ間合いを詰めた。 「……ふん隙だらけだ、楽でいい」 放つは弱点を突く猛打。 きっと、倒したとしても救いは無いのだろう。 (それでも最後は、悪夢無き終わりを) ミリィは涙をぼろぼろ零しながら前を向く。悪い夢は、嫌だ。夢を見た後はいつも泣いてしまうから。腕で濡れた涙を拭う。 「貴方は、毎日悪夢を見続けてきたんですよね……だったら、私ばかり泣いてなんていられません」 凛然、放つ真空刃。それと並走する様に、ヘキサが駆ける。 (朝起きた時はいつも涙が止まらなかったっけ……) あのどうしようもない孤独感。情けないが、その時だけは元居た孤児院に帰りたくなる。 「だからって逃げる気は全然ねぇ! そんなのオレのキャラじゃねぇ! どんなに真っ暗でも諦めねーで走り続けてりゃ、その先に光が待ってんだ!」 ミリィの刃に蹌踉めいた良樹への間合いをぐんと詰める。叫ぶ異形が衝撃波を放つ。それでも、足を止めない。 「安心しろよ、オレたちがお前を救ってやる。もう悪夢を見ることもねーぜ。思いっきり蹴ッ飛ばして悪夢から叩き起こしてやるよ! どんな寝ぼすけヤローでも一発で目が覚めるぜ!」 心配するなと。 もう泣くなと。 「行くぜぇええええッ!」 紅鉄グラスホッパーを纏う脚に思いっ切り力を込めて。 「走って!」 距離を詰め、 「跳んでぇ!」 思い切り振り被り、 「蹴ッッッ飛ばすッ!!」 いつものフレーズと共に炸裂させるは、渾身のソニックエッジ――無数の蹴撃。 ●おはようさん ぐらり、蹌踉めいた良樹が緩やかに倒れる。一瞬の静寂。 「!」 直後だった。もぞり。倒れた良樹の耳穴から這い出てきたのは、細長い虫。次なる宿主を求めて蠢いている。が、 「糸よ、縛り上げろ……たかが虫風情が、人様に寄生しようなんざ百年早い」 櫻霞の放った気糸が悪夢虫を絡め取り、間髪入れずに京子の1$シュートが虫を穿ち、破壊した。 「悪夢の正体見たり、ってな……ケッ、くっだらねー」 ヘキサの溜息――そして、ようやっと本当の静寂が訪れた。 「何が悪夢だ、全く胸糞悪い……」 呟いた櫻霞は煙管に火を灯し、一服。 「はぅぅ……嫌なお仕事でしたっ……」 その横に寄り添うのは、猫耳をぺたんと下げて蒼褪めた顔を隠している櫻子。 「……同じ蟲さんとはもう戦いたくありませんですぅ」 「そう願いたいね」 吐き出す紫煙は夜に消える。 「天国なら気持ちよく寝れるだろ、邪魔するヤツなんていねーし」 だから今度こそいい夢見ろよな、と。ヘキサは良樹の目を閉じさせる。 「おやすみなさい」 「どうか、良き夢を」 今度こそ悪夢の無い安らかな眠りを。孝平とミリィも黙祷を捧げた。 「どうか、貴方の魂が安らかでありますように。神の御許へ行かれますように」 リリも静かに祈りを捧げる。こんな形の救いになってしまったのが悔やまれるけれど――今はまだ、ノーフェイスはこうする事でしか。 最中にふと思う。悪夢と言えば――六道の『悪夢蛆』、フィクサードのフレッド・エマージ。なにか関係があるのだろうかと思う。だが、もし六道が手を引く事件ならばフォーチュナが捉えていただろう。誰かに見られている気配も全く感じかった。考え過ぎか、と頭を振る。 (とにかく、次は仕留めます。必ず……) この手が、銃が、祈りがある限り。 黙祷を捧げたミリィは静かに立ち上がった。吹き抜ける風に長い髪を靡かせる。 (悪夢は確かに、いつか醒める) それでも、ミリィは思うのだ。 悪夢さえも糧として、進んでいけたら良いな……と。 見上げる彼方には、秋の気配を孕んだ星が瞬いていた―― 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|