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<六道>彼の聖戦。彼女の遊び。リベリスタ達の――

●六道フィクサード
「ヨーするニ、リベリスタ特有の弱点をつくんダヨ」
「はぁ。連中に弱点なんてあるんですか?」
「ケケッ。リベリスタは弱点だらけダ。甘ちゃんばかりで、火種を残しスギなんだヨ。このレポート見てみナ」
「……? 誰です、この人?」
「名前は……アー、どうでもイイ。恋人が殺されたンだ、アークの奴らニ」
「立川正吾……恋人が、ノーフェイス化?」
「カワイソーだよナ。だから救ってやろうとおもったのサ」
「『二極手甲』に『幽霊花』……?」
「『二極手甲』があればそれなりに戦えるだろうシ、『幽霊花』があれば簡単にダウンはシネーだろうサ」
「それでその恋人の姿を模して現れて、リベリスタを殺すように告げたんですね」
「『お願い、正吾。私を助けて。リベリスタの魂をこの栞に集めれば、私は蘇ることができる』……ってナ! アイツ、よほど女に飢えてタんだろーゼ。あっさり騙されやがっタ! ケタケタケタ!」
「酷い話です。それで、私たちは何を?」
「適度なところで恋人の振りしてテレパスを送レ。まだ良心の呵責は残ってるミタイだからナ」
「『幽霊花』の侵食が済むまでの、補強ですね。了解しました」

●立川正吾
(リベリスタは私を殺した……あいつ等が、憎い!)
「美咲……美咲……!」
(正吾、私はまだ蘇ることができる。リベリスタの魂を、その『幽霊花』に捧げれば……!)
「リベリスタ……おまえ達を、殺す! アークのリベリスタァァ!」
「ノーフェイスって理由で人を殺す奴らダ。殺したって罪にならネーサ!」
「美咲を……美咲を蘇らせる! そのために、リベリスタは死ね!」

●アーク
「相手は六道のフィクサードとアーティファクト強化された一般人」
『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は集まったリベリスタたちに向けて淡々と説明を開始する。
「まず六道のフィクサード。『チャプスィ』と呼ばれるフィクサードとその部下が六人。『チャプスィ』はナイトクリーク。部下は三人がクリミナルスタア。二人がデュランダル。一人がホーリーメイガス」
 モニターに写し出されるのは、幼少のフィクサードにつれられた六人のフィクサードたち。幼い少女は明らかに場違いに見えるが、見た目で判断すると痛い目にあうのが神秘の世界である。
「次が一般人。名前は立川正吾。かつて恋人がノーフェイスとなり、その退治をアークが行なった記録が残っている」
 ノーフェイス。運命に許されなかった革醒者。世界のために、滅ぼさなければならない存在。
 だが神秘を知らぬ人からすれば、それはなんと傲慢に見えるのだろうか。もちろん救う術があるのなら、救いたい。それはリベリスタなら誰もが思うことである。
「そして彼がつけているアーティファクト。腕につけている手甲と、ポケットに入れている花の栞」
 そんなリベリスタの悲しみをよそにイヴは説明を続ける。厳密に言えば気付いているが、気付かないフリをしていた。
 戦いの場に赴けない彼女は、リベリスタがノーフェイスを退治する苦悩を知識として知ってるだけにすぎない。実際にノーフェイスに手にかけたことのないフォーチュナには、こういうときにかけるべき言葉がない。
「この手甲はある一定の攻撃を無効化する。身体能力も増して、神秘の世界で戦うに充分なタフネスと戦闘能力を得ることができる。
 そしてこの栞をつけた人は、力尽きてもすぐに蘇ることができる」
「は?」
 何その無敵アイテム。そんな顔をしたリベリスタに、イヴは静かに告げる。
「もちろん代償はある。手甲の方は人を一人殺すたびに生命力が奪われる。栞のほうは一回蘇るたびに装着者の記憶を一年奪う。全ての記憶を失えば、廃人になる。理由なく意味なく、ただ暴れまわるだけの暴徒に」
 それは人の形をした機械だ、と誰かが言った。信念なく、欲望でもなく、ただ攻撃を仕掛けるだけのマシーン。
「彼らはリベリスタを次々と殺害している。おそらく恋人を殺された恨み」
 そしてその恋人を殺したのは、アークである。それがどれだけ正しいことであれ、立川正吾の恋人を殺したのはアークなのだ。
「……作戦は任せる。目的は六道のフィクサードと一般人を止めること」
 一瞬、イヴの言葉が言いよどんだ。リベリスタに任せることしかできないことへの辛さがそこにある。
 リベリスタ達はイヴを安心させる為に笑みを浮かべ、ブリーフィングルームを出た。




■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:どくどく  
■難易度:HARD ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年08月27日(月)23:07
 どくどくです。
 もしもあなたの大切な人が蘇るとして、そのために倫理を踏み外せますか?
 

●注意!
 本依頼はカオスゲージが大きく上下する可能性があります。
 そのことを考慮したうえでご参加ください。

◆勝利条件
 六道フィクサードの撤退。
 フィクサードおよび一般人の生死は成功条件に含みません。

◆敵情報
・フィクサード
 六道のフィクサードです。
『チャプスィ』とクリミナルスタア三人、デュランダル二人、ホーリーメイガス一人です。戦闘には参加しますが、不利を感じれば撤退します。

・『チャプスィ』
 ビーストハーフ(コウモリ)×ナイトクリーク。
 本名不明のフィクサードです。ただその二つ名で知れ渡っています。チャイナ服を着た10歳の少女です。ナイフ所持。CT値高め。
 自分の命が大事なのでHPが一定値以下になったら徹底します。

 活性化スキル(わかってる範囲)
「メルティーキス」
「デッドリー・ギャロップ」
「怪盗」
 EX 奇門遁甲(P 何人にブロックされてようとも、囲みから逃げ出すことができます)

・クリミナルスタア(×3)
 全員ジーニアス。男性二人女性一人。全員フィンガーバレット装備。
 男性の二人は前に出て、女性が後ろから射撃をします。
「ナイアガラバックスタブ」「ヘッドショットキル」「血の掟」「ダブルアクションLV2」「精神無効」を活性化しています。
 女性がテレパスを活性化して、一般人に時々語りかけています。

・デュランダル(×2)
 メタルフレームの女性。青龍刀を装備しています。
「リミットオフ」「デュエリスト」「バトラーズアバランチ」「超重武器熟練LV3」を活性化しています。

・ホーリーメイガス
 ヴァンパイアの男性。クロスを装備しています。
「白き曙光」「浄化の鎧」「チェインライトニング」「マナコントロール」を活性化しています。

・一般人
 名前は立川正吾。24歳、男性。
 かつて美咲という恋人がいました。しかし美咲はノーフェイスとなり、アークのリベリスタに討たれています。現在アーティファクトにより、身体能力が強化されています。
『二極手甲』を填めて、殴りかかってきます。状況によってはフィクサードたちを庇います。
『幽霊花』の効果により、HPが0になっても3回は蘇ります(必殺を無効します)。
 復讐心に燃えています。説得は可能ですが、難解でしょう。

・アーティファクト
『二極手甲』
 白と黒の手甲です。着用者に戦闘能力と、強い防御力を与えます。人を一人殺すたびに、着用者の生命力をうばいとります。データ的には着用者のHP最大値を永遠に減らします。
 アーティファクトで強化した拳で、近接単体を殴ってきます。
 
 スキル
 攻刃の構え:攻撃に[物防無]付与、自身に[物無]付与。任意発動。
 攻神の構え:攻撃に[神防無]付与、自身に[神無]付与。任意発動。
 二極の演舞:『攻刃の構え』と『攻神の構え』は同時に発動しません。また、ターン毎に構えは入れ替わります。

『幽霊花』
 赤い花が描かれた栞です。胸ポケットに入っています。視認はできません。
 HPが0になったとき、強制的にHP3割で蘇らせられます。代償として記憶が一年ほどなくなります。必殺の効果を無効化します。
 栞を身体から離せば、効果はなくなります。
 正吾は、この栞にリベリスタの魂を集めれば恋人が復活する、と言われています。もちろんそんな効果はありません。


◆場所情報
 街の路地裏。人が通る可能性は皆無です。
 時刻は夜。明りは街の光のみ。足場や広さは申し分なし。
 フィクサードたちはひと塊となって、リベリスタたちを探しています。戦闘開始時、リベリスタとの距離は十メートル。第1ターンの一般人の構えは攻刃の構えです。

 皆様のプレイングをお待ちしています。


参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
覇界闘士
御厨・夏栖斗(BNE000004)
インヤンマスター
宵咲 瑠琵(BNE000129)
★MVP
ナイトクリーク
犬束・うさぎ(BNE000189)
デュランダル
楠神 風斗(BNE001434)
覇界闘士
設楽 悠里(BNE001610)
覇界闘士
宮部乃宮 火車(BNE001845)
プロアデプト
レイチェル・ガーネット(BNE002439)
ダークナイト
ユーキ・R・ブランド(BNE003416)


 死んだ人間は蘇らない。
 如何なる奇跡をもってしても運命を歪めても、失われた命は戻らない。
 そんなことは誰もが知っていることだ。
 
 無論、立川正吾も。


「うおおおおおおお!」
『折れぬ剣《デュランダル》』楠神 風斗(BNE001434)の剣がクリミナルスタアに振り下ろされる。破界器は風斗のオーラを受けて赤く輝き、その怒りを受けて強く振り下ろされる。一撃必殺がデュランダルの理想系なら、先陣を切って振り下ろされる剣はまさにそれだった。
「『チャプスィ』! 貴様だけは許さん!」
「ケケッ! 久しいナ。いい手土産もってきたゼ!」
 風斗の怒りの声に応じるのは何度か交戦した事のあるチャイナ服を着た少女。『チャプスィ』という二つ名だけが知れ渡っている六道のフィクサード。
 土産、というのは立川正吾のことだろう。かつてアークに恋人を殺された存在。その復讐心を煽り、破界器をつけてリベリスタにぶつけたのだ。
「嫌がらせのためだけに、あんな酷いことをよく思いつく……糞が!」
「どーも姐姐。ほんと、貴女見てると懐かしいです」
 元フィクサードの『夜翔け鳩』犬束・うさぎ(BNE000189)は奸智に長けたフィクサードを前に、何を思ったのだろうか。心中はうさぎのみしかわからない。『11人の鬼』を手に風斗が傷つけた相手に追い討ちをかけるように迫る。
「だから全力で足掻かせて頂く」
 刃にオーラを乗せて、破界器を振るう。オーラは死の刻印となって、回復を許さぬとその身体に刻まれる。
「イイ趣向だ、殺したくなってくる程に」
 赤の瞳をフィクサードたちに向けて、『シャドーストライカー』レイチェル・ガーネット(BNE002439)は手のひらに神秘の光を集める。メガネのブリッジを押し上げながら、光を解き放つ。爆ぜる光は戦場を駆け巡り、フィクサード達の肉体に痺れを与える。
「最初から、一気に流れを引き寄せる……!」
「悪くない流れです。お覚悟を」
 ユーキ・R・ブランド(BNE003416)は『チャプスィ』の動きに注意しながら、奥に控えているホーリーメイガスを視界に捕らえる。闇のオーラを槍のように鋭角に伸ばし、薙ぎ払うように一閃する。それに巻き込まれる幾人かのフィクサード。
(『チャプスィ』が思ったより遅い……違う。あえて『待機』している?)
『チャプスィ』はナイフを構え、リベリスタの動きを観察していた。リベリスタがどう動くかを注視するように。
「実のところ、キミにはあまり関心がなくてね。できれば撤退してほしいな」
『ガントレット』設楽 悠里(BNE001610)は『チャプスィ』にそう語りかけると、デュランダルのフィクサードに向かい拳を振り上げた。その籠手に紫電が走り、貫くような稲妻の軌跡が悠里の周りのフィクサードを巻き込んでいく。そして彼の視線は立川のほうへ向いた。
「復讐の是非なんて僕にはわからない。でも少なくとも彼の憎しみは理解出来る」
「理解できるだと!? ふざけるな、アークのリベリスタが!」
「おいおい、信じてやってくれよ。可愛い後輩の言葉なんだからよぉ」
 憤る立川の前に構えを取るのは『消せない炎』宮部乃宮 火車(BNE001845)だ。破界器を腕にはめて構えは取るが、自ら仕掛けようとはしない。立川とフィクサードの間に立ち、関係を絶つように立ちふさがる。
「生きてれば友人知人恋人嫁が殺される事だってあらぁな。
 ……覚悟してても相当キッツいからな。心中察っするぜ?」
「美咲さんは僕達が殺した」
『イケメン覇界闘士』御厨・夏栖斗(BNE000004)も立川の前に。拳を握り、真っ直ぐに立川を見る。リベリスタの罪から逃げないと、心の中で強く誓って前を見る。殴ろうと思えば殴れるその場所で、拳を振るわずに言葉だけを投げかける。
「死んだ人はもう蘇らない。神秘はそんなに優しくない」
「……っ!?」
「ハ! 全ての神秘を理解したつもりカ、小僧? そういう神秘が『ない』なんて誰にも証明できネーだろうガ」
「悪魔の証明か。論理をすり替えるあたり、馬脚を現したともいえよう」
『チャプスィ』の言葉にかぶせるように『陰陽狂』宵咲 瑠琵(BNE000129)が式神を召還する。、自らの影を実体化させ、レイチェルを庇うように指示した。瑠琵は『チャプスィ』を見ながら言葉を続ける。
「少なくともその『幽霊花』にあるかないかは、今ここで証明できそうじゃがのぅ」
「ためしてみるカ? オメーラの魂デ」
『チャプスィ』が哂う。その声を封じるとばかりに、リベリスタ達は雄たけびを上げた。
 

 立川正吾を攻撃しない。正確には、彼の記憶を失わせない。
 リベリスタの基本理念はそれであった。夏栖斗と火車が立川を攻撃せずに抑えている間に、残った六人がフィクサードたちを排除する。それがリベリスタの取った作戦だ。
「ソーいうハラか。相変わらずのアマちゃんだナ!」
『チャプスィ』がその方針を看破するのは、戦いが開始してから幾合か武器を打ち合わせた後。
 アークのリベリスタには神の目の如き『万華鏡』があるが、六道のフィクサードは予知による事前情報がない。故に情報戦では後手に回る事になる。
 そのわずかな間に、リベリスタはフィクサード排除のために攻勢に出る。後衛のレイチェルの回復を受けながら、うさぎが傷を治りにくくした相手に集中砲火で確実に落としていく。立川は夏栖斗と火車が抑えながら、フィクサードを庇わせないようにしている。
「僕だって蘇らせたい人はいる」
 夏栖斗は立川の攻撃を防ぎながら、脚のつま先をフィクサードのほうに向ける。射線をわざわざ立川から外し、突き刺すような蹴りを虚空に放った。その動作で生まれた蹴りと言う突きがフィクサードを貫く。言葉はそのまま立川に。
「けどそれは尸解仙ですらできないことだ。しちゃいけないことだ」
「ケケッ! 意見の押し付けはよくネーゼ。オマエはオマエ。コイツはコイツだ」
 割り込むように言葉を放つ『チャプスィ』に、夏栖斗は言葉を返す。
「どういう原理で栞が生き返らせることができるのか答えなよ」
「聞きたきゃ六道に来ナ。じっくり教えてヤるゼ」
「遠慮するぜぇ。小難しい話はキライでなぁ!」
 立川の攻撃をさばきながら、火車が叫ぶ。いつもならここで拳を振るっているのだが、今は何もせず防ぐだけに徹している。後輩達のやりたいことのために、身を削る。それが年上の仕事だ。そのまま言葉を投げかける。
「聞いてるぜ。蘇るたびに記憶が失われるんだってな」
「だからなんだ。おまえ達には関係ない!」
「ねー、ちゃねーがな。記憶……思い出失うっつー事ぁ、相手と生きてた事実が消滅してく、って事だ」
 故人はもう何も残さない。その人がいた記憶は、生きている人の心の中にのみにある。
「人の……手前の記憶にすら残らなくなったら、本当に相手死んじまうぜ?」
 誰かの心の中にさえいなくなれば、その人はもうこの世に存在しないも同然なのだ。
「そうなる前に、美咲を蘇らせる!」
「まぁオレ等側に突っ込んで来る分には構わねぇよ? 復讐、報復、敵討? 大いに結構。やりたいようにやるべきさ」
 火車は拳を握り、指でこちらに向かうように挑発する。その怒りを全て受け止めるとばかりに。
「嫁生き返るってぇなら大抵の事ぁするに決まってるわな。嫁が望めば尚更だ。
 本当に望まれればな」
「……!? 美咲が望んでいないとでも言うのか!」
「あなたの今の姿を見れば、きっと望まないというでしょう」
 ユーキは闇のオーラでフィクサードを払いながら、立川に告げる。人を蘇らせる為に人を殺す。そんな矛盾を含んだ立川の姿は、悪鬼のように見える。
「貴方の怒りは、正しい。
 私達の行いには理由はある。それを譲る気はありませんが、貴方の怒りの正当性はそれとは無関係だ」
「だったら……!」
「ですが、貴方にこれ以上傷ついて欲しいと思っている人は居ません。おそらく美咲さんも」
 アークが彼の恋人を殺した。その怒りをぶつけられる分には構わない。
 だけど自らを傷つけてまで行なうべきではない。フィクサードに利用される形で果てていい理由はない。
「『チャプスイ』とかいいましたか。確かに、効果的な手ですねえ。敵手としては非常に参考になる」
「ドーモ、嬉しいネ」
「いずれ殺しに伺うので、首を洗って待っていて下さい」
 言葉に怒りを乗せて、破界器に闇を纏わせる。憤怒の一撃がフィクサードたちを薙ぎ払った。
「復讐なら、私で良けりゃ何時でも殺しに来れば良い」
 うさぎはフィクサードを刻みながら、立川に声をかける。言葉にウソはない。気持ちは理解できる。
「でもね。貴方、見ないふりしてるだけで本当は気付いてるんじゃないですか?」
「……何のことだ」
「最愛の女性とその贋物を見分けれない訳、無いですもの」
『チャプスィ』がどれだけ上手く化けても、細かい仕草までは掴むことができないだろう。いや、それ以前の問題だ。愛し合うほどの二人だったのだ。それが見分けられないわけがない。
「分かってる筈だ。死んだ人は生き返りません。私も、知ってます。知りたく何て無かったけど」
 誰もが知っている事実。立川正吾でさえ知っている、事実。
「泣いても喚いても復讐しても狂っても何をしても! 畜生! 私達が何をしたって還っちゃ来ないんだ。目を逸らすな畜生が!」
『11人の鬼』を握り締め、うさぎは叫ぶ。それは立川に言い聞かせるためか、あるいは自らに刻む為か。慟哭は響く。物理的に、心理的に。
「君の恋人は君の言葉に中々答えてくれないよね? 君と親密に話せばボロが出るからね」
 悠里も拳を振るいながら、立川に助言する。今君に語りかけている女性は偽物だと。振るわれる稲妻の拳は、彼の前に立つフィクサードに次々と叩き込まれる。重心を低くして移動しながら、流れるような動作で拳を振るう。右に左に。身体の動きに合わせて紫電が縦横無尽に走る。
「あの女性が恋人の振りをして貴方に話している。彼女が倒れたら貴方に声は届かなくなるよ」
「あんたの心に語りかけている女の声は、そこにいる女が超能力で囁いているものだ。あいつが倒れたら声は途切れるぞ」
 今立川になにを言っても通じないことは風斗だって理解している。だが告げずにはいられなかった。復讐心を異様にリベリスタに利用され、捨て駒のように使われるのは我慢ならない。怒りを込めて全身全霊の力を振り絞り、刃を振り押した。崩れ落ちるクリミナルスタアの男。
 悠里と風斗に指差されたクリミナルスタアの女性は、肩をすくめて嫌疑を否定する。それをどうやって証明するのかしら、と言外に告げていた。
「決まっておろう。その口を封じれば自然と喋れなくなる」
 瑠琵は印を切って札を展開する。因と果を律し理を生む。五方の聖獣の力を利用してクリミナルスタアの動きを封じる。
「さて『チャプスィ』。どんなに囲まれても逃げ出せる奇門遁甲じゃっけ? 使い手の過去を映す鏡のようなものじゃしのぅ」
「ア?」
「大方、革醒する前は六道の玩具だったのじゃろう? 自分を囲む悪人の群れから逃げたかったかぇ?
 どうせ正義の味方が自分を助けに来なかったから、今でも正義の味方気取りを毛嫌いしてるのじゃろう?」
 同情してやろうか? と続ける瑠琵の言葉を鼻で笑う『チャプスィ』。
「惜しいナ。後半外れダ。
 正義と悪か関係なく、私は弱いノをいじめるのが好きなんだヨ! こんな風にナ!」
 独特のステップを踏み、『チャプスィ』が動く。リベリスタの囲いをまるでないもののように突破し、回復を行なうレイチェルのほうにナイフをむける。
「良いんですか、ノコノコここまで出てきて」
 射程距離ギリギリで回復を行なっていたレイチェルは、作戦通りと後退しながら『チャプスィ』を絡め取るために糸を放つ。ここで絡めとれば、『チャプスィ』を孤立させることができる。そうなれば戦局は大きく有利になるだろう。しかし、
「狙いが甘ェーヨ。腰が逃げてルゼ」
 移動しながらの攻撃は、命中精度が甘くなる。並の相手なら、レイチェルの腕を持ってすれば問題なかっただろう。だが相手は並の相手ではない。ナイフで糸を弾かれ、捕らえるには至らない。
「影人が……!」
 そして移動してしまったことで、瑠琵の作った影人が庇える範囲から離れてしまっていた。完全に孤立したレイチェルに密着するように『チャプスィ』が迫る。互いの吐息を感じられるほどに顔が近づき、『チャプスィ』の指がレイチェルの胸元をなぞる。なぞった軌跡を追うように、猛毒が身体に染み入っていく。
「指の動き、じっくり味わいナ」
 回復手を狙われることは、リベリスタも予想していた。
「レイチェルさん!」
「……あ……!」
 ユーキは狙われることを想定して、庇える位置に待機していた。しかし作戦の齟齬か、レイチェルは戦場を移動しながら攻撃を行なう計算をしている。目まぐるしく動く戦場において、急な作戦変更は難しい。躊躇している間に、事態は進み傷は増えていく。
 戦局は少しずつ、苦しくなっていく。


 フィクサード陣営は七名。立川を入れればリベリスタと同数である。
 しかしリベリスタは夏栖斗と火車を立川の押さえに向かわせている。立川を倒す為ではなく、彼を傷つけずに救うために。
 リベリスタが投げかける言葉は、確かに立川の心を揺さぶった。幾度か拳を下ろそうとするしぐさもあった。
 しかしその度に、フィクサードが介入する。
(いや! 私を見捨てないで!)
 テレパスによる悲鳴のような言葉。その言葉は死んでしまった恋人を思い出させる。
 そして――
「……誰……?」
 レイチェルは目の前で変身する『チャプスィ』の姿に、誰何する。アーク所内でその姿を見た記憶はある。名前は確か……。
「世界を守るためにノーフェイスは皆殺し。それがリベリスタの正義だ!」
 気付く。『チャプスィ』が変身した姿は、立川の恋人を殺したリベリスタの姿だと。彼女はその姿のまま、レイチェルをナイフで切り刻んだ。斬撃に崩れ落ちるレイチェル。
「うわあああああああああ! 美咲ィィィィィ!」
 ――その姿は、彼のトラウマを想起させるに充分な光景だった。
 運命を削って蘇るレイチェルが、『チャプスィ』を睨みつける。
「あなたという人は……!」
「オメーラのせいで女の姿で甘えさせルのがバレそうだからナ。あえてこういう手段をとらせてもらうゼ! ケタケタケタ!」
 ほぞを噛むリベリスタ達。立川のことを考えるのなら、真っ先に排除すべきはこの性格の悪いフィクサードだった。
 否、そんなことはわかっていた。判っていたからこそフィクサードを排除するほうに戦力を向けたのだ。自分の命が大事な『チャプスィ』は、自身の不利を悟れば退く筈だと。
 だが、リベリスタ達は二人を攻撃せず押さえに割く、という立川説得のためにあえて不利な戦い方をしている。その状態が維持されている以上は不利と思わず、フィクサードは退くことはなかった。
 もちろん気迫の分ではリベリスタが有利だ。事実、フィクサード側はクリミナルスタアを倒されている。テレパスを使う女性もユーキの攻撃で伏していた。だが、
「……くそッ! 貴様に屈してたまるか!」
「こんなこと、許されていいはずがない!」
 度重なる攻撃に風斗と悠里が運命を削る。リベリスタの疲弊も激しい。瑠琵も回復に回っているが、決定的な崩壊を先延ばしにしているに過ぎない。
「……厳しいですね、この状況」
「全くじゃ。あのチャイナ、容赦なしじゃな」
 うさぎと瑠琵が青龍刀の一閃を受ける。踊るように連続で叩き込まれる剣舞に、運命を犠牲にして立ち残る。
 拮抗するフィクサードとリベリスタの攻防。その拮抗は『チャプスィ』の攻撃でレイチェルが力尽きたところで大きく崩れる。
「果テやがったカ。可愛かったゼ、子猫チャン」
「マズいか……これ……」
 回復手が戦闘不能になれば、敵の攻撃に耐えることが難しくなる。敵のホーリーメイガスもある程度傷ついているが、倒すにはあと一歩だろう。その間に敵ももう一歩踏み込んでくる。
 戦えるリベリスタは七人。しかしうち四人が運命を削っており、デュランダルの一撃をまともに食らえばそのまま倒れかねない。何よりも堅牢かつ貫通力のある二極手甲を持つ立川と『チャプスィ』が殆どどいっていいほどダメージを受けていないのだ。
 リベリスタはまだ戦える。しかしこれ以上戦えば、逃げる余裕がなくなるだろう。この性格の悪いフィクサードが、倒れたリベリスタに情けをかけるなどありえない。
「くっそ! 撤退だ!」
 夏栖斗の言葉と同時に、爆ぜるようにリベリスタが散開する。誰かが倒れたレイチェルを抱え、牽制用に殿を残してフィクサードの攻撃圏内から離れていく。
「逃ゲロ逃ゲロ、無様にナ! ケタケタケタ!」
 背中に『チャプスィ』のセリフを聞きながら、悔しさを噛み締めていた。
 フィクサードに負けたという悔しさではなく、立川を救えなかった悔しさを。

 ――後日。
 記憶を完全に失った立川正吾が、アークのリベリスタに討たれたという報告が上がる。
 その場に六道のフィクサードはなく、ただ棄てられるように街中に放たれて、そしてアークに倒されたという。
 簡素な報告書には、彼がうわごとのように「ミ……サ……キ……」と呟いていた、と補足されていた。


■シナリオ結果■
失敗
■あとがき■
 どくどくです。
   
 結果は御覧の通りです。判定理由はリプレイ内に書いてあります。
 MVPは、もっとも立川の心に響いた一言を告げた犬束様へ。 

 お疲れさまでした。先ずは傷を癒してください。
 それではまた、三高平で。