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恐怖のスマホ

●スマホ中毒!
 近年携帯電話の依存症は大きな社会問題と成っている。このサラリーマンの男もその例に漏れず、完璧な中毒者だった。常に自分の身につけているか目の届く場所に置いておかないと落ち着かない。歩行中に画面を見詰めることはもはや癖になって直らないし、洗顔中や用足しの際でもそれは同じだ。無論、眠る時も枕元のすぐ傍にある。早く寝ないといけないと分かっているのに画面を滑る指を止められない。だから彼はずっと寝不足だ。
 
 ある夜、彼は友人から遊びの誘いを受けた。いつものようにスマホを手に取る。
「明日の予定をメモしておこう」 
 彼はそう呟いてスケジュール機能を起動させ、予定を打ち込む。もう寝るつもりだったのだが、指は休まらない。意思に反して動き続ける。ネットやアプリなどを一通り終え、そうするといつものように深夜になった。眠気で朦朧とした頭で彼はふとあることに気がついた。
 ――もしかして俺は、道具に支配されているんじゃないか。
 ようやく男はそれに気付いて、今更ながらにぞっとした。男はひと思いにスマホを叩き割ろうとしたが、ある光景に手を止めた。
 ディスプレイに写される「やめて」の文字に。
 思わず手を引っ込めるとスマホはひとりでに動き出して、開いている窓から飛び出ていってしまった。

●恐怖のスマホ 
 招集されたリベリスタ達に『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)あるものを見せた。
「今回の敵はこれよ。携帯電話。厳密にいうとスマートホンね」
 意外な敵にリベリスタ達が困惑するが、それに構わずイヴは状況を説明した。
「目に見えない被害だけど悪質よ。エリューション化したスマホのかつての所持者は精神的に侵食されていて、少し異常をきたしているみたい。例のスマートホンの目的はそんな人達を量産することね。どうやら人間を支配したいと思っているみたい」
 ちっぽけな敵にしてはあまりに壮大な野望だ。現実感のない話だと思ってしまいがちだがそれは不可能ではないのだとイヴは言う。
「こんな話を聞いたことがあるかしら。文字を持っている民族とそうではない民族は脳の構造が多少異なるんですって。文字も厳密に言うと人間が生み出した道具ですものね。文字を書くことで情報の整理を行い、論理的思考ができる。そういう側面はあるわ。私達は文字がなくなったらうろたえるでしょう? 例のスマートホンは、そういうことがしたいみたい。道具で人間を支配したいのね。あまりに大きな話だけど、不可能じゃないわ。万が一があるもの」
 機械が人間を支配する。まるでSF小説のようで少し実感が湧かないことだが、危険なことに変わりない。リベリスタ達にイヴが小さな紙を差し出す。
 渡された紙には被害者が所持していたスマホの電話番号が書いてあった。
「そこに連絡して呼び出したらスマホの場所がおのずと知れるわ。また依存症にしてやろうという腹みたいね。GPSによると今のスマホの場所はここから数十分の距離にある路地裏。次の寄生先となる持ち主を今か今かと待っているわ」
 説明を終えたイヴが力強く宣言する。
「道具が人格をもって、思いあがっているんだわ。そうやってまた人間を支配してやろうとしているみたい。道具は道具でしかないわ。そのスマホを叩き割って、思い知らせてあげて。お願いね」






■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:あじさい  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年08月24日(金)23:00
こんにちは、あじさいです。今回の敵はスマートホンです。

●成功条件
 スマートホンの破壊

●戦闘場所
 スマートホンが待機している路地裏。人通りの多い時間帯は避けるのはもちろん、人払いをした方が無難です。

●エネミーデータ
 スマートホンです。飛行します。小さいので狙いが定まりにくいです。それに加えてスマホなのでGPS等の各種アプリを駆使し、地形を把握しています。奇襲攻撃など工夫して攻撃を命中させてください。またスマホということもあり、その機能を存分に生かして戦ってきます。おそらくずるがしこい戦いをしてくるはずです。

情報は以上です。それでは御参加をお待ちしております。





参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
日下禰・真名(BNE000050)
ソードミラージュ
三条院・詩姫(BNE000292)
マグメイガス
宵咲 氷璃(BNE002401)
スターサジタリー
那須野・与市(BNE002759)
ダークナイト
ハーケイン・ハーデンベルグ(BNE003488)
ホーリーメイガス
御厨・忌避(BNE003590)
マグメイガス
リリィ・アルトリューゼ・シェフィールド(BNE003631)
レイザータクト
ラケシア・プリムローズ(BNE003965)

●下準備
 リベリスタ達は打ち合わせ通り、早朝に集合した。この時間帯ならば狙い通りに人通りも少なく、作戦の決行に最適である。夜間にくらべ視野にも恵まれ、標的を感知しやすい。
「みんなー、電子機器の電源は切ってるよね? もちろん忌避はOFFにしてるよ!」
明るい声を上げながら『愛に生きる乙女』御厨・忌避(BNE003590)が周囲に確認する。『運命狂』宵咲 氷璃(BNE002401)は携帯を取り出し一旦開いて画面が光らないことを確認し収めた。
「私は完璧よ。もちろん貴方達も大丈夫よね」
 その言葉を受けて各々電子機器の電源をチェックする。どうやら問題はないようだ。
 ラケシア・プリムローズ(BNE003965)は問題の路地を覗きこみ、人がいないことを確認した上で調達してきた工事中の看板、コーンを設置した。
「よし、これで人が迷いこまないでしょう。それで三条院さんが強結界を張れば完璧ね」
仲間のやり取りを一歩引いたところで眺めていた『夢幻の住人』日下禰・真名(BNE000050)は気怠そうに首を傾けた。
 「どうでもいいからさっさと終わらせましょう?」
促されて『宵闇の黒狼』三条院・詩姫(BNE000292)がふむと頷き、『系譜を継ぐ者』ハーケイン・ハーデンベルグ(BNE003488)に目配せをする。
「それでは頼むぞ。成功の鍵は汝が握っておる」
 ハーケインはステルスを発動し、何の力も持たないか弱い獲物の様に装う。
「じゃあ入るぞ。あとはあんたらに任せた」
 ハーケインは設置されたコーンを避けて、ターゲットが待つ路地へと進んでいった。それを見届けた後で、パーティは二手に分かれ、それぞれ別の入口から侵入し、挟みうちにする準備を整えていった。

●野望の阻止
 ハーケインは自前の携帯電話のスイッチを入れた。そして『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)から譲り受けた情報をもとに、おおよその場所を探る。また別の狙いもあった。この人間には微弱しか感じられない電波を餌に、わざと存在を知らせればあちらから食いついてくるかもしれないという考えだ。スマートホンは次の寄生先を探している最中なのだから、人の気配を感じれば自ら姿を見せる可能性が高い。ステルスを発動している今、ハーケインは一見ただの一般人だ。あいてから姿を見せてくれれば探す手間も省ける。そんなことを考えていると、路上の真ん中にポツンとスマートホンが落ちていた。手元の携帯を確認すると、明らかな反応を示している。ハーケインは悟られないようにそっとそれを拾い上げた。この時点では敵はこちらがリベリスタだとは気付いていないようだ。今はおとなしく、人に使われる変哲のない道具を装っている。
(―― 聞こえるかしら? もう接触したの?)
 途端、頭に声が響く。宵咲によるハイテレパスのようだ。
(接触したら何か合図を。そうね、手でも上げるか振るかして頂戴)
 指示に従って左手を横に上げる。敵が不審に思わないように、しかし味方には確実に伝わる絶妙の高さで。
(接触したのね、分かったわ。逃がさないようにしっかりと見張っていてよ)
 報告した後、空気が張り詰めた。どうやら三条院が強結界を張ったようだ。これでもう逃げ場はない。そんなことにも気付かず、未だのんきに手の内に納まっている。
(今から一斉に攻撃するわ。危ないから少し距離を取って頂戴)
 その言葉を受けて手を離し、後ろに飛び退くと魔法の閃光が敵に降り注ぐ。そしてあらかじめ挟みうちにするように打ち合わせたポジションでメンバーが登場する。しかしあいにくとっさに物影に隠れたらしく、被害はハードカバーだけに限定されていた。
 リリィ・アルトリューゼ・シェフィールド(BNE003631)が不服そうな声を上げる。
「全く! 今回の敵は楽勝だと思ったのに! 機械のくせに生意気だわ」
 そうしているうちに敵もすばやく戦闘準備を終える。最大音量で鳴り響き、ひるませた一瞬の隙をついて逃げようとする。しかし簡単に逃れられはしない。すでに通信機器の電源を入れたリベリスタ達に、少し離れた場所で待機していた日下禰が千里眼によって掴んだ居場所を的確に伝える。
「そう、そこの路地を右に曲がって段ボールを積んでいる物陰のところ。 そこに行くといいんじゃないかしら。一応私も加勢するわ」
 相変わらずやる気のない声だが、正確に、リアルタイムで情報を伝えてくれる。そのことで戦闘の不都合が見事に軽減される。しかしスマホも攻撃態勢に移った。シューティングゲームのアプリを起動し、それを実体化させ、リベリスタ達に撃ち込んで来る。連続で発射されるそれを本体がクルクルと高速で回転しながら全方位にまき散らす。
「こんなの聞いてないんじゃぁ!」
 思わず叫んだ『不誉れの弓』那須野・与市(BNE002759)がいかに精度高く矢を射ることが出来ても、狙えなければどうしようもない。
 三条院はとっさにダメージを受けるのを覚悟で懐に飛び込み、くないで強力な一撃をおみまいした。追撃しようともう一度構えたが、痛みで動きが鈍り、その隙をつかれ距離を開けられる。ラケシアは尚も飛び出そうとする三条院を宥める。
「待って! 治療するからおとなしくしていて!」
「そうだ、あんたは休んでいろ」
 ハーケインが前方に立ちふさがり捉えようとするが、素早いため攻撃が当たってもなかなか致命傷とならない。その間にも敵は電子の回路で次の手、一手二手先を考える。
「あれ? 何もしていないのに忌避の携帯が光ってるよ! いじってないのになんでぇー?!」
 御厨の携帯電話がおのずと動き出す。
「もしかして、データを読み取って情報を収集しているの? いまいましいわね!」
 宵咲がそう吐き捨てると、御厨だけでなく他のメンバーの通信機器も同様の動きをし始めた。
「やめてやめてやめてやめて」
 スマホのディスプレイに映し出される文字と同時に発する声に御厨が蒼白な顔をする。
 「やだ、これお兄ちゃんの声だよ!」
 「やめてやめてやめてやめて」
 次に戦慄したのは常にどこか捉えどころのない雰囲気を発している日下禰だった。今回ばかりは心底顔が引きつっている。それもそのはず。敵は日下禰が唯一惜しみなく関心を注ぐ対象、大切にしている年下の肉親の声で懇願してきたからだ。
 親しい人間の声を出され思わず力を緩めてしまう二人にラケシアが声を上げた。
「騙されてはダメよ! そいつはただの機械なのだから!」
そう言われて素早く調子を取り戻した御厨が怒りのままにスマホを追っていく。
「待てまてー! 早く破壊させろー!」
 御厨が攻撃をしかけようとするとスマートホンはある画像を映し出した。年頃の女の子ならば目を反らしてしまうような破廉恥な、男性の裸体の画像だった。しかし御厨は別の意味でドキドキしてしまった。なぜなら気の多い女の子で、男の人が好きだから。どうやら携帯を経由して趣味嗜好までも引っこ抜いてきたらしい。携帯電話は使用頻度が高ければ高いほど持ち主の人と成りの鏡となる。
「ダメ……、忌避には壊せないよぉ! こんな素敵な画像を映すなんて卑怯だよぉ!」
 顔を真っ赤にして絶叫した御厨に、後ろに控えているラケシアが冷たい視線を送った。
「もう、品のないこと言わないで! 御厨さんの性癖はどうでもいいけど今は任務に集中して頂戴!」
 もっともなことを言われて少し恥じ入る御厨を無視して、ラケシアは翼の加護を唱える。味方に翼を与え、行動範囲を大幅に広げた。
「さあ、これで動きやすくなったでしょう。これで空も私達のテリトリーというわけよ!」
ハーケインはラケシアの助けにより、更にスマホに接近する。またもや所得した個人情報を利用した攻撃をしかけてくるのかという考えとは裏腹に、先ほどの弾道を打ち込むスタイルに変化した。今までのダメージが蓄積した結果か、精度が落ちてきている。
「どうしてあいつは何もしかけてこないのかしら」
 ミサイルを撃ちながら宵咲が疑問の声をあげると、日下禰がどうでもよさそうに、けれども考えを述べた。
「さあ……、あまり携帯を使わない人なんじゃない?」
「なるほど、攻撃に生かせるだけの情報を得られなかったのね」
 ラケシアは納得したように呟く。その横で御厨はせわしなく携帯のボタンを押していた。 
「ちょっと御厨! 遊んでないで手伝ってよ!」
 スマホを捉えようとリリィが懸命になっている横で、そんなことをされているので口調が荒くなる。しかし御厨は不満そうにぷくっと頬をほくらませていった。
「失礼な! 遊んでないよ。 あのスマホにメール送ってんの! だってムカつくでしょ!」
「あんた、真面目に戦ってくれない……?」
 リリィがあきれた目を向ける。そのやりとりを見ていた宵咲が何かに気づいたようにハッとした。
「いや、その作戦案外間違っていないかもしれないわ……。容量を圧迫すれば、更に動きが鈍るかも」
 宵咲は下でもがくスマホに大きな声で呼びかけた。
「あなたの能力はその程度? 最先端のスマホが聞いてあきれるわね。もっと何か新しい能力を見せてみなさいよ」
 感情を持ってしまった機械はその挑発に見事なほど反応する。どうやら新しい能力をインストールし始めたようだ。そのせいで自分を追い込んでいるとも気付かずに。
 ハーケインはスマホを見た。そう言われてみればそれまで当たらなかった攻撃がかするようになってきている。機械に疎くては分からなかったがなるほどそういう手があったのかと一人納得した。現役の中学生だけあって、御厨の指の動きは素早いことこの上ない。宵咲の挑発も上手くいっているようだ。スマホのメールの到着を知らせるランプと、ダウンロード中であることを知らせる画面がチカチカと点滅する。
「よし、お前たちはそのままサポートしろ! 俺達が動きを止める!」
 立ちふさがるハーケインが逃げ道をふさぐ。
フラッシュを用いようとするが、カメラ部分を那須野の矢が的中した。
「お、当たったぞ! これでもうカメラ機能は使えないはずじゃ。次も当たるじゃろうか? 液晶を破壊すればもう妙なものは出せないはずじゃ」
 日下禰は年下の肉親に触れられたわずかな怒りをにじませながら、逃げまどうスマホの位置情報を的確に仲間達へ伝える。すでに回復し、急降下した三条院が素早くくないでツインストライクを繰り出す。それはハードカバーを打ち砕き、液晶を剥き出しに無防備にさせた。その機会を見逃さず那須野が追撃すると、液晶はひび割れた。先ほどまで目にも止まらぬ速さで動いていた面影はすでになく、ふらふらと地に落ちた。 
 ディスプレイに大きく表示される、「そんな……」の文字が無念さをただよわせる。それをリリィが見降ろし、足で踏み潰した。気味の悪い音を発して、それは完璧に破壊された。
「ふん! 機械のくせに調子に乗るからこうなるのよ。所詮人に使われているんだって言う立場をわきまえることね」
 胸を反らし決め台詞を言い放ったリリィの顔はさわやかだった。

●後片づけ
「ゴミはゴミ箱へと言いたい所だけれど革醒の影響でリサイクルにも回せないでしょうし研究開発室の研究材料になる末路がお似合いよ」
 破片を拾い集めながら宵咲は面倒そうに呟いた。那須野やラケシアもそれを手伝いながら袋にまとめていく。日下禰は相変わらず一歩引いたところでそれを見ていた。 御厨は戦いが終わったことにより、また自由に携帯を使えることが嬉しいようだ。
「ああー、やっと自由にいじれるよ!」
 楽しそうに友人のブログやメールをチェックする姿まさに依存症だった。ハーケインはそれを見ながら顔を顰めた。
「お前のような人間が多くいるからこのような野望を抱いたのかも知れんな。今回の事件を、利便性に慣れ過ぎた人類への警鐘として受け取るとしよう」
 リリィはもっともだという風に頷いた。
「そうねえ、依存症って怖いもの。だいたい御厨っていろいろ問題があるわよね」
 無駄話をし始めるメンバーに三条院が指摘する。
「任務完了後はすばやく撤退だ。もう回収したのだろう」
 その言葉を受けて宵咲は残骸の入った袋の口をしばった。パーティーは痕跡がないことを確認してその場を後にする。結界を解いた道で、液晶画面から目が離せない女子高生とすれ違った。
回収されたスマホの残骸は、宵咲が考えた通り少しばかりは研究の役に立ったようだった。
 

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
成功です。お疲れさまでした。いろんな機能を駆使してきましたね。ずるがしこいやつですが、感情を持ってしまったのがあだとなってしまったようです。
しかし機械と人間との水面下での精神的戦いはこれからも続いていくのでしょうね。
これからも機械に支配されないようしっかりと機械を支配下においてください。