● リベリスタは惜敗からの再戦へと向かった。それだというのに、黙っていられる程大人では無かった。 「微力の中でも微力でも、きっと何かできることってあるはずですよね!? だから」 何が起こるか解らない、むしろ不利な戦いへと挑むと言うのだ。追加戦力として出されたのは、あのアシュレイ・ヘーゼル・ブラックモア。そして―― 「杏里も絶対に行きますからね!!」 静止を振り切って、ゲートをくぐったのは『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)。 危険な場所へ、一番守らなければいけないフォーチュナを出すのは大きな賭けだ。だが、それでも行くのだ。死は覚悟の上かもしれない。 「それでも杏里の全ては、リベリスタ様のためにあるんですから――!!」 ● 「楽しいなァァアアア!!!」 咆哮が響く。 荒々しく砂埃を上げながら、荒野をバイデン達が駆けるのだ。それは、新しい玩具を買って貰える子供のはしゃぎ様と酷似してるかもしれない。 「なァ!! 相棒の仇、いや、それよりも戦いだ!! 戦えるんだ!!!」 今度は友のためでは無い。しかし友という鎖が切れたのは更に危険な事やもしれない。純粋に、血沸き肉踊る戦いを楽しみに来たのだ。 その集団を引き連れるバイデン――名を。 「このヴェルディード様を楽しませてくれる奴ァ、何処だァ……」 何処に居る? 何処に居る、強者よ。 早く、会いたい。会って、すぐにでもこの長すぎる剣を振り回したい。 早くこの衝動を止めなければ、心臓が爆発してしまいそうだ。 立ち止まり、背で語る。 「くはは、見えてきた、もう少しだぜェ……おまえら!! 準備はイイかァ!?」 「「「うおおおおおお!!!」」」 その直後か。荒れ果てた大地の砂が、狂うばかりに舞い上がっていた。 ● 「視えた!!」 風の音しか聞こえない、静寂の中で杏里は振り返る。杏里が指を刺したのは、バイデンがわんさか居るであろう、敵陣。 「バイデンの……背後を奇襲できるかもしれません、いえ、してみせます!!」 視えたのは、敵のバイデンがリベリスタを探して立ち止まる姿。その背後へ行くためのルートが杏里には視えたのだ。 敵陣に踏み込む、というのはどのようなリスクがあるかは解らない。だが杏里は信じて欲しいと、光の薄い瞳が、今日は綺麗に輝いている。 「見つけたバイデンの名はヴェルディード。リベリスタの一人を攫った事もある、強力なバイデンと、その部下達です。大きな鳥も見えました。 この部隊をそのまま相手するのは、少しキツイかもしれません。ですが……風が味方してくれています!」 幸か不幸か、彼等のいる場所では強風から、砂埃を起こすのだと言う。 「それが攻撃の合図です! 砂埃に襲われて、怯んだ敵を背後から一気に攻め落としましょう! 杏里は後方から支援します!」 これでもフィクサードと七日七晩過ごしていた少女。狩られる感覚には慣れているとでも言うのか。このフォーチュナ、肝っ玉は座っている様だ。 なにより。 「リベリスタさんと同じ戦場で役に立てるのが、杏里は嬉しくて堪らないのです。 さあ、行きましょう! 杏里を信じて着いて来て下さい。 絶対に、ヴェルディードの背後へとご案内しますから! こっちですよー!!」 そう言って彼女は走り出す。いつも見送っていた背中達を引き連れて。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:夕影 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年08月22日(水)23:54 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●希望の嵐 視界が霞む。前が見えない。 眼からの情報というのは大切だ。人であれなんであれ、眼があるモノ達は、そこからの情報がほぼ頼りであるのだから。 「ちぃ、一旦待機かァ。この砂嵐が止むまでな……」 このバイデン――ヴェルディードでさえ、例外では無い。もしかしたら眼が使えないのであれば、耳と鼻を活かして、それらからの情報を頼りに試行錯誤してくるやもしれないが、未だ戦闘中で無ければ、接敵さえしていない。万全の状態で臨みたいヴェルディード達は、その場で砂嵐に抱かれながら静止を余儀無くされていた。 この砂嵐が起こるという事は、どちらの世界においてでも不幸か幸かだなんて秤にかける程の出来事でも無い。 ただ、バイデンが不幸だったのは、リベリスタ達には切り札が存在していた事なのだ。 「前回は、素通りされちゃったし、仲間が連れ去られたりでしたけど」 『まだ本気を出す時じゃない』春津見・小梢(BNE000805)の後方、居るのはアークのフォーチュナ『未来日記』牧野 杏里(nBNE000211)。絶対にお外に出してはいけない鳥だ。 「今回は杏里さんが居てくれるので、イヒョーをつけるワケですね」 とはいえ、フォーチュナであろうと前線はとても危険だ。勝手に着いて来て、後でこっ酷く沙織に怒られる未来は予知が無くても解る。 「見えますよね? ヴェルディードです。此処から先は――」 未来視の領分は此処で終了だ。 杏里は何が言いたいかというと、此処から先はリベリスタの手で未来を作れという事だ。 微弱な予知は、ここが限界。此処まで見れたというのも、来れたというのも、奇跡に近いようなものでもある。 杏里達が居るのは、バイデン達の遥か後方の岩隠れ。身を潜めては、彼等を待っていた。とはいえ、あの砂嵐であれば、立って静かに近づいても、もしかしたら気づかれないかもしれない。 その中に行くのなら、こいつが必要か。 「はいはい、ぐるぐさんこんなのもってきたりしていたり!」 『Trompe-l'œil』歪 ぐるぐ(BNE000001)がAFをポンポンと叩けば、出るわ出るわ、ゴーグルにスカーフの山。 「まるで、あれだね、ドラえ「それ以上はダメだよ、少年!」 『不機嫌な振り子時計』柚木 キリエ(BNE002649)がそこまで言いかけて、ぐるぐセーブが決まる。 好きなのを持っていけとけらけら笑う彼女の気持ちはありがたい。それは砂嵐を抑える最大の役目を担うだろう。 「では、リベリスタさん達はお気をつ「そのリベリスタ様、とかリベリスタさんってのやめないッスか?」 『小さな侵食者』リル・リトル・リトル(BNE001146)は杏里の言葉を断ち切った。 さん。様。それは他者の名前を呼ぶときに一番無難な言葉だろう。けれど……それは違う意味で言えば、距離を置かれている、慎重な態度で接せられているということ。その事にリルは不服を申し立てた。 「いえっ、あの……杏里はただのフォーチュナですから」 「アンタだって同じリベリスタで、仲間なんスから」 突然の言葉に杏里は黙った。けれど悪い意味では無い。 リルのその、真摯な気持ちが嬉しかった。驚きですぐに笑えなかったが、杏里は一度だけ「はい」と返事をした。 先に断っておくと、杏里の口調は生まれつきなので、二人称三人称は変えれても、これだけは不治の病です……!! 杏里が一緒と聞いて、無茶をする奴だと思わず溜息が出た。 とはいえ、残されていく子の気持ちは不適当に扱うつもりも無くて。 「忘れるな、杏里。例え体は戦場に立っていなくとも、お前は常に戦場で俺達と共にある」 そう言って杏里の頭を撫でたのは『鋼鉄の砦』ゲルト・フォン・ハルトマン(BNE001883)だ。言葉に顔を真っ赤にした杏里を見て、ゲルトは小さく笑った。 しかしすぐに見つめるのは、先へのバイデン。 リベンジなんて、一銭にもならないけれど、じくじった仕事のケリは着けなければ。 先に見える、仇を見。 「きっちりと殺らなぁいかんよなぁ、おぃ」 『√3』一条・玄弥(BNE003422)はそう言って、舌で唇を舐める。漆黒解放する前から、漆黒が溢れ出ているのは如何か。 さあ、リベンジと行こう。 杏里の頭から、ゲルトのぬくもりが消える、離れる、前へと、前へと、戦場へと向かう。 嗚呼、いつも見えるこの背中だ。けれども、いつもこの背中に救われる。 「いつも一緒に戦ってくれてありがとう。行ってくる」 「いってらっしゃいませ――」 ――アークが誇る、戦士達よ。 ● リベリスタにとっての開戦直後、『花縡の導鴉』宇賀神・遥紀(BNE003750)はその体で杏里の姿を隠す。 大丈夫だよと杏里を見て、それに杏里も頷く。更にその壁は厚く。小梢が杏里をその背で隠した。 その遥か前方。 飛び出したリベリスタの勢いは止まらない、だが、誰よりも早く攻撃したのは、戦を奏でる者。 さぁ、戦場を奏でましょう。勝って、今度こそ『九人』全員で帰りましょう!! 一人欠けたのは過去の出来事。未来を切り開くのは、いつも勇敢な者。 『戦奏者』ミリィ・トムソン(BNE003772)が振り上げ、投げ込んだのは閃光弾。 「ア?」 その弾は、ヴェルディードの眼前で重力に従う。なんだ、これは、そう思った時には遅いのだ。 開戦だ。開戦だ。投げた弾は、宣戦布告の合図。 即座に弾け、眩過ぎる光がヴェルディードを、巨鳥を襲う。残念ながら、ヴェルディードの剣が当たらない場所に居るバイデン達には光は届かない。 その光が消えぬまでに、走り出していたアークの最高齢の無邪気。 「ガッ……ァア!!?」 どすんと当たったのは、重い重い拳。赤い腹部の、小さな拳。その腕を辿って見ればそこに居たのはピンクの少女。 こんにちは、と。 にこりと笑ったぐるぐに、ヴェルディードは口端が耳と到達せんとばかりに笑った。 「何処から、沸いて出てきたんだァ!! だが、良いぜェ!! こんな状況、悪かねェ!!!」 重なった攻撃さえ、意ともせず。麻痺に動けぬヴェルディードは配下を顎で使う。 言葉に動かされるバイデン達。戦えれば使われようがなんでもいいか。放った矢が空中から弧を描いて、雨が降る。その刃は前衛の肌を容赦なく切りつけていく。 雨の光景は悲惨。賽は投げられて、音を立てて地面に堕ちてるのだ。 思わず杏里が手で顔を覆った。その動きを背中で感じながら、小梢は拳を握り締める。 「祈れ、ジース!」 この場にいない、彼の名を呼んだ。きっと、杏里を無事で帰さないと彼の怒りが器から零れてしまうから。 肩に刺さった矢を抜き取り、キリエは前衛と杏里の間で、金色に輝く光を幾重にも放った。 眩しさに眩むヴェルディードの眼に、更に光が突き刺さる。思わずヴェルディードさえ、苦痛の声が漏れた、ただし、刹那の刻。 直後、その綺麗な光を飲み込んだ漆黒の黒。玄弥の暗黒は、黒よりも深く。その闇のオーラは陽を飲み込む。 「若いのぉ覚えてないかもしれんが今度は殺らせてもらうでぇ」 眉間にはしわが寄った。紫の瞳は復讐に彩られた。足元から伸びる影が、形を成して。全ては彼の矛と成るのだ。 一番手はミリィ。二番手は……少々、順番に入れ違いがあった様な気はしなくも無いが、結果オーライ。 リルが動く。即座に影分身が如く『二人』となった一人のリルが、荒野の荒れた地面を蹴り上げてヴェルディードへ接近する。 「背中からッスけど、悪く思わないでほしいッスね。強いんならこれくらい受け止めてみせろッス」 と、影である方のリルがヴェルディードの耳元で囁き、死角からの攻撃を放った。 「はァ!!?」 ヴェルディードを襲った激痛。それを与えた影なるリルをヴェルディードは振り払ってみたものの、影は影とし、役目を終えた瞬間に消えていくため、虚空を腕が裂いただけで終わる。 「奇妙な術かァ……? 力しか無い我等には理解できねェってな」 珍妙な力を受けたものの、ヴェルディードは未だに負ける気さえ見せない。むしろ―― 「いいねェ、いいねェ!! 激痛こそ、戦いを盛り上げる最高の甘美だぜェエ!!」 「だたの、ドエムか」 煌くナイフを携え、ゲルトが。まただ、また。何処から沸いて出てきた? 砂嵐で何も見えないが、そこには確かに聞いた事のある声が。ヴェルディードの耳に聞こえた。 落ち着け、よく眼を凝らしてみてみろ。 振り向いたヴェルディードが見えたのは銀色の髪。だが、その毛先が見えた瞬間。 「この翼に誓って。俺は、仲間を守りぬいてみせる!!」 遥紀は強力なグリモアを開き、手を前へと出す。そこから放たれるのは、真っ白に眩しき、白の閃光。 ヴェルディードの眼が、再び眩む。 瞬時、迷いの無いナイフが、ヴェルディードの背中を縦一直線に切り裂いた。 ● 過ぎ去った砂嵐。戦場は更に激しさを増す。 バイデンの体力は底知れず。麻痺から立ち直ったヴェルディードは元気よくその大剣を振るう。 その攻撃は遠距離まで届き、リベリスタの体を吹き飛ばすのは朝飯前だ。しかし彼の体は、リベリスタが初手で与えたダメージ相応に傷ついてはいるのだ。 「いいぜェ!! 戦いってのは、一方的じゃあ楽しくねェよなァ!!」 再び担がれた、大剣。来る、そう悟ったミリィは体を強張らせて、衝撃に備える。しかし。 思い出すように、言葉を紡いだのは杏里だ。 「横、一直線。だから……その、頭を下げて!!」 「お、三回目の助言だね」 杏里の、ほぼ目の前に立っている小梢がAFから仲間にそのまま伝える。 「頭下げる、だってさ」 「ぐるぐさん了解!」 AFからの通達、そのままに、意味さえ解らず頭を下げればその脳天直上を剣が勢いよく掠っていった。 軽く、ぐるぐの自慢のアホ毛が半分消えた気がしなくも無いが、ご愛嬌。全てのリベリスタが回避に成功するのだ。 しかし敵側とて馬鹿では無い。数々と、そんな神回避されたらトリックがあると疑うのが普通だろう。 (はァ? あん? あんな奴……居たか?) とは言え、何重にも守られている彼女を怪しいと疑うのは常。 「……バレたか?」 「そりゃ、バレるっすよね」 ゲルトとリルが顔を見合わせる。その頭上を強すぎる風が通り過ぎて行った。 「いけ!! アレだ!! 隠そうっていうのが見え見えだ、そこに居るんだろォ?!! テメェ等の企みの要がよォ!!」 咆哮する言葉に巨鳥が忠実に動いた。空中から狙ったのは―― 「杏里さん、危ない!!」 上空から弾丸が落ちて来る、まさに巨鳥の突撃。 一直線に杏里を狙ったが、その杏里を隠すように小梢が抱きしめて衝撃を代わりに受ける。 投げ出された二人の体、荒野の砂に服を破きながらも小梢は腕の中の小鳥を守るのだ。 「春津見! 牧野……!!?」 遥紀の声が聞こえると同時に、聖神の福音が聞こえる。治療の光は小梢を抱き、その怪我を治していく。 本格的に、フォーチュナは狙われるだろう。そう悟った小梢は起き上がり、衝撃で割れた眼鏡を外し、杏里に持っていてと渡した。 握った拳。爪が肉を食い込み、血が流れた。その意志に呼応するように、全身のエネルギーが彼女を覆った。 「本気だした私は……絶対に負けないよ」 見上げて、見えたのは無数の矢が此方に飛んでくる光景。ヴェルディードが命令したか、杏里を殺せ、と。 そんな光景、怖く無い。 何本だって、何だって受け止めてやる。 小梢はただ受けるだけのクロスイージスでは無い。全ての向かってきた攻撃に、反射という名の抵抗を返す。 「ぎゃふんと言わせるまで、守り抜く!!」 ●終りさえ解らず 「んなとこで、手こずるのかよ!!」 小梢の体力はじわりと削れていくものの、彼女で無ければこの役目は果たせなかっただろう。 杏里を影に隠し、矢を受け、ヴェルディードの刃を受けてなお、立っている。 「ちょっと……キツくなってきた……」 「大丈夫……私は、大丈夫だから」 遥紀の聖神も既に九回は撃った。ここから先は、精神力との相談になってしまう。 「まだ……まだ、いけ、る」 小梢の顔は、無意識に笑った。あの、ヴェルディードが苦虫を噛んだ様な顔をしているのだ。 もう少しだ、もう少しで、ぎゃふんて言わせてやれる。だって――バイデンが杏里に夢中になっている間に、リベリスタの手は空くのだから。 頼りは巨鳥だ。幾度と重なる突進は小梢の体力を大幅に削っていっていた。けれど、無垢な八十歳児が超妨害していた。 「お友達になる気はない?」 断言すると、無い。主は一人だ。 そんなマイペースなぐるぐが、いつの間にかに巨鳥の背に乗っては首にしがみついていた。 「ならないかーじゃあ、邪魔にならないように向こうで遊びましょ」 とか言いつつ、律儀に羽の付け根に絶頂拳したものだから、たまらず巨鳥は墜落していく。ぐるぐ、恐ろしい子。 「ちぃ!!」 痺れを切らしたヴェルディードが、その大剣を振り切って、小梢へ真空刃を送った。瞬時、飛ぶ小梢のフェイト。だが。 「がら空きだァ、滑稽だなァ?」 「うるせェ!!」 玄弥の挑発に、力でもう一度振る。それは振り回す域領域の攻撃では無く、玄弥個人を狙っての振り回し。重い一撃にごりごり体力が削れたが、それで良し。 ヴェルディードの剣が玄弥を飛ばしたところで、再び眩しい光が戦場を包む。 「レイザータクトに、二度目の撤退とか有り得ないですから!!」 その意志は、全てのバイデンを貫く。だが、ヴェルディードにショックの呪いは通らない。 「ッハ!! 我等バイデンにも、敗走の、二文字等、それこそありえねェ!!」 相変わらずヴェルディードは元気だが、その息切れが見え始めていた。 「終わりの時は、近いっすかね」 「今が、頑張り時ってやつかもしれないね……!!」 リルと、キリトが爪とダガーでヴェルディードを狙う。それだけでは無い、リベリスタの攻撃はほぼこの一体に集中している。 だが、ヴェルディードとて、意地はあった。 「ごぁあぁあああ!!!」 命を削る、咆哮の様だ。血を振りまき、回転しながら剣を振り、叫び上げたヴェルディード。 その大剣は小梢、杏里以外のリベリスタ達を容赦無く切りつけ、その身体を10メートルも押し飛ばした。だが、負けじとリベリスタも荒野に足をついては、それ以上後退せんと抵抗する。 「ふざ、っけん、な、負ける? このヴェルディード様が……!?」 ぜぇぜぇと、血混じりの吐息が鼓動を早くする。 「降参してもダメッス」 リルが走る。凶爪を立て、最後の攻撃へと。 「ハッ!! はは、ぎゃはは、ああ、、最高だ、異世界の戦士!! 今すげー楽しいぜェ!!?」 死が近づく。こそ、戦いの楽しさを改めて知る。 己の体力があとどれほどかは、不明だ。だが、燃え尽きる寸前なのはリベリスタには解る。 「これが負けるということだ。覚えておけ」 ゲルトが再び輝くナイフを握り締め、吹き飛ばされた身体に鞭撃ち、駆ける。 あと少しだ。此方はあちらの体力回復以上に攻撃を重ねてきた。 「負ける、負け……く、ハハッ、これが悔しいってやつかァ? ああ、こりゃ、復讐しに来るわけだよなァ!!」 「若い若いなぁ、最後の詰めでおおぶりたなぁ!」 玄弥こそ、フェイトをすり減らして立ち上がった。嗚呼、最後の一撃は効いた。だが、それで倒される己では無い。 「来い、異能者共ォオ!!! 最高に、面白いぜェ!!!」 「ヴェルディード!! これで、終わりだよ!!!」 思い返す――守られない約束には、意味などないから。 戦闘前だった。 『杏里、さっきから杏里を守ってやれって通信でうるさくて』 『仕方の無い人が居るのですね?』 キリトは赤髪との少年との約束は、守ってみせると誓って。 「貴方の望む、強者足りえるように」 ミリィの神気が響き渡る。それが合図。 一体のバイデンに、四人の刃が突き刺さっていく。今日だけでどれほどの傷を作られたか。 「ああ、強者……そうだなァ、俺様で良けりゃァ、認めよう、強者共」 それが最後の言葉とし、静かだ、静かに、ヴェルディードは崩れ落ちた。 一瞬、間があった。主格が倒され、配下のバイデンがじりりと身体を強張らせたのだ。 「雑魚に率いられた雑魚共。勇気を証明したいなら俺を倒してみろ。逃げても構わんがな」 ゲルトは息を整えながら、背中で語る。 この言葉で逃げるバイデンが居るものか、戦いのためなら死さえ受け入れよう。 「さあ、もう一仕事だ」 後方で遥紀の聖神が響いた。それがあとどれ程持つかは不明だが、きっと十分。 「行くっすよ!! 勝って、全員で帰るっす!!」 そう、全員で。 誰一人欠けずに。それにはフォーチュナも含まれている。一丸となった今、リベリスタが負ける未来は、視えるはずが無い。 何も無い荒野。激突したリベリスタとバイデンの軍配は――言うまでも、無い。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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