●害獣丘を超え蹂躙せよ ――真昼の荒野に雄叫びが絶え間なく。 巨獣が地を駆けバイデンが暴れまわれば。電撃が地を走りリベリスタが斬り伏せる。 総攻撃。それが『ラ・ル・カーナ橋頭堡』の防衛戦に敗れたリベリスタ達が選んだ選択だった。 圧倒的不利の状況でも彼らの意思は揺るがない。激戦は覚悟の上。後は選択を英断とするべく勝利に全力を注ぐのみ。 だがそれはバイデンとて同じ事。彼らは優位な防衛戦を選ばなかった。力を力で叩き伏せる完全勝利。それこそがバイデンの真骨頂ならば。 ――荒野に花が咲く。剣戟の音が弾け、絶え間ない術の光が空を染める。大地に突き立った折れた槍こそ荒野の花。 リベリスタとバイデンの抗争を横から眺める者共がいた。 キキキと奇怪な音を響かせ、小さな身体に不似合いの大きな瞳……ではない。そこにあるのは巨大な窪み。その奥で不気味に光が灯る。 一抱えのぬいぐるみのようなそれは、ラ・ル・カーナで『害獣』と呼ばれる獣であった。 群れで動くその獣。ある恐ろしい力を持っており、それ故に付けられた名である。 その獣の後ろで数人のバイデンが鎖を手に戦況を見る。そして害獣を繋いでいた鎖を……解き放った! 瞬間、害獣は全速で飛び出した。それは正に特攻と言うべき動きで。 バイデンと交戦しているリベリスタ達は横手からの増援に対応できない。彼らに害獣が飛びつく、張り付く、しがみつく。 そして――爆音! 四肢をばら撒いて害獣は欠片となり。多くのリベリスタ達が負傷し戦況を大きく傾かせた…… ●荒野埋め尽くせ害獣 「ようは自爆デースね。正に百害あって一利なしの害獣というやつデースよ」 憤怒と嘆きの荒野と『廃テンション↑↑Girl』ロイヤー・東谷山(nBNE000227)の褐色の肌はよく似合っている。もっとも非力なフォーチュナがまもなく戦場と化すこの場にいることは最大限の不似合いではあるが。 その表情を読み取ったか、目の前のフォーチュナがウィンク一つ。 「Mr.サオリにも苦笑されマーシたよ。デモ、皆さんとワタシたち、気持ちは同じデースね」 リベリスタが行う無茶。フォーチュナが行う無茶。そのどちらも、想いは一つだ。 「ワタシの大切なトモダチを助けたい。その為に出来るお仕事をさせて貰いマースよ」 『万華鏡』がないラ・ル・カーナではフォーチュナの精度は著しく落ちる。戦場に在駐する危険は言わずもがなだ。 その常識が適用されないほどの強力なフォーチュナ、『塔の魔女』アシュレイは別として。それでもラ・ル・カーナに従軍するフォーチュナは少なくないだろう。今回はそういう戦いなのだ。 「害獣はその数50。10匹ずつで行動しており、それぞれをバイデンが一人ずつ指揮をしていマース」 素早さを生かした敵の奇襲。しかし予知した今なら逆手にだって取れるだろう。 「自爆はトップスピードにのって初めて可能になる力のようデース。逆にこっちから奇襲を仕掛けレバ怖くありまセーン」 ロイヤーはグッとサムズアップ。 「ワタシたちは後方で予知を続けマース。後はヒーローにお任せしマースよ」 必ず助けましょうねと、もう一度微笑んで。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:西条智沙 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年08月17日(金)23:49 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●害獣唯往く砂塵の丘を ――丘を越え、害獣を放つ準備に取り掛かっていたバイデン達は、暫く状況を理解出来なかった。 突如予期せぬ方向から現れた、リベリスタ達の部隊、その奇襲。敵陣の虚を突くべく奇策を講じた筈が、逆に虚を突かれているというこの現実! 「な……何だとォォッ!?」 「御機嫌よう、身を焦がす怒りをその身に宿す赤き者ども。イーちゃん達があんた達に終焉を届けに来てやったですよ?」 ニィと笑んで、挨拶を。出会いと別れを。『獣の唄』双海 唯々(BNE002186)は誰よりも、大胆不敵にそれを告げた。その表情には一切の不安も躊躇も無い。ただ、決意だけがある。だからこその余裕。成し遂げると決めた決意がある限り、易々と折れはしないのだと。 「お久しぶりです。誇り高き、バイデンの戦士達」 「くっ、こんな所にまでリベリスタとやらが! 策は完璧だった筈……!」 武とは唯力のみでぶつかる蛮勇に非ず。智勇を以て戦場を制する事こそ闘争の常である。直にバイデン達と接し、対話した『Manque』スペード・オジェ・ルダノワ(BNE003654)はバイデンにとてそれが当て嵌まる事、良く知っている。しかしそれはアークとて同じ事。 「狼狽えるな! 敵は少数だ、押し返せる!」 「少数? ……それは違うな」 ややあって何とか幾ばくか冷静さを取り戻したと見える害獣の一隊を率いるバイデンが、声を限りに叫んだ。だが、彼と対する『Dr.Tricks』オーウェン・ロザイク(BNE000638)は、微かに、しかし確かに笑っていた。何故なら眼前のバイデンは未だ現実を理解していないから。 一部隊に一人ずつの抑え。そう思っていたバイデン達だが、一つだけ様相の違う部隊があった。外周の部隊を一人のリベリスタが抑える間、複数名で固まったリベリスタ達が、中央の部隊へと突貫する! 「つまらぬ策を練りおって! それでも戦士かぇ? 仮にも戦こそ至上と公言して憚らぬ連中の末席が、聞いて呆れるのぅ」 「自爆で散るとか、下等生物まで前のめりなんだ、ワロス♪ でも見た目は愛らしいのね! 妬ましいわ☆ かわいがってあげる♪」 「ラ・ル・カーナを好きにはさせない。そんなに戦うのが好きなら相手してあげるよ。戦えなくちゃ生きていられないなら戦ってあげるよ!」 『陰陽狂』宵咲 瑠琵(BNE000129)が。『白詰草の花冠』月杜・とら(BNE002285)が。『ピンクの害獣(代理)』レイチェル・ウィン・スノウフィールド(BNE002411)が。この布陣の厄介な一点、その中央部に大穴を開けんと怒涛の如く攻め上がる! 「おのれ、小癪な!」 「それはお互い様だろ?」 『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)は、歯噛みするバイデンにそう返して。しかし次の瞬間には、脳裏を過ぎるは別の事。 三高平には、ピンクの害獣と呼ばれる者が存在する。だから竜一にとって、『害獣』の単語は特別な意味を持つものだ。 「やつらは群れでやってくる。だが! この害獣ども! 真の害獣たらんとするならば、この俺の二刀! 見事潜り抜けて見せろ!」 竜一のその咆哮が、この戦の火蓋を確かに切った。 (……ん? 誰か一人忘れてるような……) 誰かがそう思ったが、すぐにそんな事を考えている余裕は無くなってしまった。 ●衝突せしめよ害獣の下 ――時は少しばかり前に遡る。 「捕まった人達は帰ってきたけど……もうあんな思い……心配は、したくないもん……」 此処に轡を並べて共に立つスペード然り、他にもバイデンに囚われた仲間達がいた。敗北故のその結果。その代償は大き過ぎた。 再び敗けるような事があれば、或いは同じ悲劇が――否、今度こそはどうなるか判らない。 二度の敗北は許されない――『ゲーマー人生』アーリィ・フラン・ベルジュ(BNE003082)は、ぐっとその小さな拳を握り締め、そして、後方を振り返った。 「うん……今度こそ勝ってみんなで必ず帰ってこようね。わたしも頑張るよ!」 アーリィが声を掛ける先、其処には、九人目の仲間がいた。直接の戦闘力は無くても、剣戟には加わらずとも、同じ戦場に立ち予見によって皆を援けてくれる頼もしい仲間が。 「イーちゃんヒーローかどうか分かんねーですが、アンタの想いも、覚悟も、確かに受け取った――だから、イーちゃん達に任せるがイイと思うですよ?」 唯々も、横顔だけで笑みを見せる。勝って帰ると、その決死の参戦を無駄にはしないと、無言のまま彼女に告げる。 彼女は――ロイヤーは、変わらず曇り等無い晴れやかな笑顔を向けてくれていた。 「Yes! お任せしマシタよ、ヒーロー!」 ――彼等に任せておけば間違いは無い。きっと、否、必ず勝利の報を届けに来てくれる。 そんな表情だった。それ以外の混じり気はまるで無かった。疑い無き確固たる信頼が其処にはあった。ならば、応えねばなるまい。それが“仲間”というものだ。 リベリスタ達はひらりと手を振って、彼女に暫しの別れを告げた。 荒野に在る岩場の影に身を潜めたリベリスタ達は、ロイヤーが示した目標を発見し、その様子を伺っていた。 彼女の視た通り、まだ動く気配は無いようだ。ならば此方も心置きなく準備に取り掛かれよう。 「この戦で以て奴等に教えてやるとしよう、裏の裏をかくのが真なる奇策であると」 オーウェンがその双眸を静かに閉じた。集中状態に入っている。アデプトは的確に敵を突く戦闘論者。アーリィもそれに倣う形でその緑瞳を瞼で覆う。 唯々は自らに付き従う、自らの形を取る黒き従者に三次元を自由に往く許可を与え、スペードはその全身より生まれ出づる漆黒の闇を解き放ち、自らの身に纏い武具と成す。 (このままだと、あたし達の世界だって、あいつらにめちゃくちゃにされる。守ってみせる。世界も、仲間も、友達も、家族だって!) レイチェルの思いは確かに天に通じたか、仲間達の背には純白の羽。それは身体を軽くし敵を往なす力に繋がる。 「くっ……まだだ、まだ耐えろ……もってくれよ、俺の体……っ!」 骸布で抑えた右手が疼く。其処を起点に力は溢れ出すように肥大する。封印された原初の混沌の力を解放(直訳:リミットオフ使用)した竜一は、自らの命すら力へと換えた。 それを横目にとらが活性化させた体内の魔力をその身に受け緩やかに巡り回らせ、瑠琵は符術によって創り出した自らの影の分身を従えレイチェルの護衛にあたらせる。 そして皆の準備が整った所でもう一度敵の動きを確認。まだ動かない。 「皆さん、どうかご無事で」 此処にいるのは素敵な仲間達。誰一人欠けて欲しくない。それに、離れていてもリベリスタ達の力となってくれたロイヤーのアドバンテージを無駄にしない為にも。 スペードが、皆に声を掛けた。皆が頷いて、前を見据えた。オーウェンはゆっくりと地に身を潜めていった。 ――そして一斉に、駆け出した。 ●害獣奔るを止めるは誰ぞ 「くっ!」 「本当の自爆とはこう行う物だ……!」 地中から現れたオーウェンに驚く暇も無く、彼が具現化させた思考は周り全てを呑み込む荒波となって害獣達を次々喰らう。自らに襲い来る反動はレイチェルの齎した翼の援けで往なす。 如何に疾く動く事が出来るとて、“動かない”或いは“動けない”相手を抑え込むのは難しい事ではない。一匹、また一匹とこの場に不釣合いな程に愛くるしい悲鳴を上げる。 「さぁ、始めよう。憤怒と渇きの荒野すら焦がすような、闘争を。相手が何であろうが叩きのめす。ソレが任されたイーちゃん達の役目ですよ」 呆気に取られる敵にも唯々は容赦等せず。寧ろ手を抜けば敵味方共に失礼というもの。やると決めたらやる。そういう女性なのだ、彼女は。 影を纏い、踊る。血飛沫で、彩る。分け隔て無く平等に、その蜘蛛の手模る八枚刃を閃かす。残酷に裂く度甲高い悲鳴が上がった。 そして更に理不尽に薙ぐ刃は、赤を流す者に追い打ちを掛けた。自らの細い身体に傷が付くのも気にしない。 「アークの戦士、スペード・オジェ・ルダノワ。参ります!」 名乗りを挙げる。それは彼女なりの礼儀で、誠意だった。この戦、互いに引け目を感じる事等無い。なればこそ、唯全力で立ち向かうのみ。 同時にスペードが戦場に展開したのは宵闇の黒。唯々暗きそれは身体だけでなく精神を持蝕み破壊する。それは彼女の眼前の部隊だけでなく、彼女達に対する者全てを等しく侵食していった。 「ぬう……面妖なッ」 バイデンがうっかり零した悪態は、バイデン側の被害がこの段階で大きく出始めていたからだ。既に力尽き倒れ伏した害獣の姿も見受けられる。特に唯々とオーウェンの対応する部隊の害獣はほぼ殲滅されたも同然の状態だ。 そして駄目押し――とらとレイチェルがタイミングを合わせて、その強き意志で喚び出す聖なる光を乱舞させんと魔導書を、白き魔法杖を振り翳す。 「どうしたバケモノ、それでも世界を滅ぼし%*△◎#……!☆」 「バイデンに逃げるって選択肢はない! 思い切り叩きのめすよ! 来られなかった彼女の為にも、勝つ!!」 とらはとびっきりの笑顔で、けれど告げる言葉には規制が入る程に熾烈。レイチェルは同じ戦場に立てなかった、ピンクの害獣たる友へと思いを馳せて――光を、喚び込む! 応えて、戦場を奔走する神光の嵐は悉く敵を焼き払い、その清浄さを誇示してゆく。光熱に耐え切れずに焼け焦げ息絶えた害獣は数知れず。 そして竜一が、未だ耐え切り残る敵部隊の害獣に、鳴神をも切る名刀の名を借りた刀の旋回で生み出した烈風が、吹き荒れる! 「吹き荒れろ、神風!害獣という害獣を、刈りつくすっ!」 激しく巻き上がる暴風に、直撃を喰らった害獣達は弾き飛ばされ、地に叩きつけられ、微動だにしなくなる。 巻き込まれた隊長のバイデンも、踏ん張るのが精一杯のようであった。その四肢ににしびれすら覚えている。 そして――瑠琵が妖しく笑んだ。 「捕虜を解放して更なる闘争を望むかぇ? 流石は戦闘種族、なかなか愉快な連中じゃのぅ……では、その粋に応え渇望を充たしてやるとしよう。矜持ある強敵、わらわも久しく血に餓えておるぞ……」 それは幼い少女のものでありながら、ぞっとするような冷たさと艶やかさを兼ね備えて其処に在った。 刹那、凍てつく冷たき魔雨が、氷の呪いを敵陣に齎さんと、静かに降り注いだ。 敵の混乱に乗じて奇襲を仕掛けたリベリスタ達。 一方的な攻撃の末、立っていたのは彼等と、害獣達を率いて“いた”、バイデン達だけであった。 ●害獣死すとも戦士は死なず 奇襲、その要であった害獣を、リベリスタ達本人すら拍子抜けする程の呆気無さで失ったバイデン達。 だが、彼等は退かなかった。リベリスタ達にもそれは想定の範囲内であった。戦う事こそ彼等の存在意義だ。策が成らなかったからと、敵に背を向ける等有り得ない。そうであれば武を以て劣勢を覆すのみ。それが戦士の誇りだった。 開き直ったバイデン達から焦燥の色は消え、彼等は改めて各々の獲物を構え直した。 「統制の取れる団体故に、それを足止めするのもまた容易い!」 「ええい小賢しいッ」 激昂したバイデンの一矢を、その鈍銀の脚甲で受け、衝撃を殺すオーウェン。だが、それでもその一撃は、重かった。たった一本の矢に籠められる力とは思えない程だ。しかしその程度で臆する彼ではない。平静を失わず自らを至高の集中領域に高め上げる。 「動き鈍ってるからってイーちゃん容赦しませんよ?」 スペードの狂気の宵闇に蝕まれ鈍ったバイデンの動き。その威力は大きくとも、ガタ落ちした身体能力でしか放てないそれを唯々が躱すのは、朝飯前だ。 八刃が、蜘蛛が獲物を捕えるが如く広がった。 「さぁ、楽しもう」 捕えられ、炸裂する、死。植え付けられたそれはバイデンの中で黒く、爆ぜた。 未だ流れる血と共にそれは徐々にバイデンの体力を奪う。 「名乗られませ。その名、胸に刻ませて頂きます」 バイデンの誇りを載せるべきは、害獣ではなく、その武器。だからスペードは、害獣を全て散らした今、一人の戦士として、目の前のバイデンに、戦いを挑む。 それが命を賭けた闘争に臨む、彼女なりの覚悟。 「……ナエアだ。バイデンの戦士が一人ナエア! 参る!」 バイデン――ナエアの全力を以て撃ち込まれるその烈々たる一条の矢の一撃を、しかしスペードの翳した碧き魔剣が抑えた。手に痺れが走るが、それも僅かの間の事。 そのまま返すは矢張り常世の闇、その具現。夜は全てを呑み込んで、禍を広めてゆく。 「あんまり恋人さんに心配掛けちゃあ駄目だよ!」 消耗の見えるオーウェンに、レイチェルが燦々と輝く美しき光を纏わせ、不浄を取り払う。だが、それを見受けた敵が彼女に狙いを定め、打って掛からんとする! 咄嗟に瑠琵がそれを庇う。矢を受けた彼女は――何故か、血を流さなかった。代わりに白い紙吹雪のようなものが舞う。先程レイチェルの護衛に就かせた影人だ。 「お主とて望んでこんな所に居る訳でもあるまい?」 ならば存分に戦ってやろう。とらにも護衛の式を喚び出し相手を増やす瑠琵。 それにバイデンが気を取られた、その時だった。 「遅れてごめんっ」 「新手か!」 集中を重ねていた為一手遅れて現れたアーリィ。害獣殲滅に加われなかった分を取り返すべく、意気揚々と突入してくる! 痺れを振り払い、それを阻もうと動いた外周のバイデン。だが、それは目の前で相手をしていた竜一に阻まれた。 「貴様は運がいい。俺という戦士の手にかかるのだからな。さあ! 雄々しく死に花を咲かせに来い!」 ●斃れし害獣その骸踏み越えて 勇ましく見栄を切る竜一に、バイデンは吼え、その危うくも激しい一撃を放つ。 竜一は、躱すでなく受け止めた。その一対の刀を交差させ、その交点で矢に籠められた力の全てを食い止める。竜一の守りは堅い。バイデンの重々しい一撃を、防御したとは言え真っ向から喰らっても、未だ涼しい顔を見せている! 「次は……俺から行くぞ!!」 敵の獲物を弾き返し、閃いたその双刃で全身全霊の気を漲らせ、強大な気魄を生み、その勢いでそのまま、裂帛の気合と共に、打ち砕くべき敵を、破裂させた。 爆砕するが如き破滅的な、それでいて純粋な破壊の一撃を諸に喰らったバイデンが、そのまま仰向けに倒れ込む。遂に、リベリスタ達はこの戦場に於いて、バイデンをも討ったのだ! その間にも目標に接近したアーリィが、一見弱々しく細い、しかしその実鋭利で強靭な、輝く気の糸をバイデンに向けて、空を滑らせる。 腹部を的確に貫かれたバイデンはその糸が消えた時、貫通部から夥しい血を流した。不覚にも体勢を崩し、地に片膝を着くバイデン。 その後頭部をたん、と軽く蹴って、ふわり少しだけ、高い所へ、舞い上がるとら。 「キャハハ☆ 無様な屍をさらして枯れた世界の養分になるがいいわさ♪」 無邪気な笑顔と、言葉は裏腹で、残酷。 「脳筋ども、コレが欲しかったんでしょぉ!? 喰らえっ! 神気閃光☆」 狙い澄ました神聖の白き光の乱舞は全ての赤き戦士達を巻き込んで、真下で直撃を受けたバイデンの意識を根こそぎ削り取った。 「よおし、一気に片付けちゃおう!」 意気込むアーリィに頷き、瑠琵が式符の鴉を放つ。それは真っ直ぐに飛翔し、唯々に気を取られ背後ががら空きになっていたバイデンの背に突き刺さる。 其処へ、竜一も一挙に距離を詰め、接近。 「女の子は助けるもの! 助太刀するぞ!」 「はいはーい、んじゃあ行きますかね」 唯々の、竜一の、二人の双刃の共演。唯々は躍るように軽やかに、竜一は突くように激しく、戦士の身を切り裂いた。 時を同じくしてオーウェンが、敵の最後の力を振り絞った一撃を受けるも、その傷はすぐに癒える。 「最後まで、誰もやらせない……勝つんだ、皆で!」 レイチェルの読み取った高位存在の意思、その一端の具現たる微風が、オーウェンだけでなく、唯々の、竜一の、スペードの受けた痛みをも瞬時に取り除く。 「先程も言われたが、これ以上心労を掛ける訳にはいかぬのでな……幕引きとさせて貰うとしよう」 瞑られていたオーウェンの片目が、開く。敵の動きは全て見切ったと言わんばかりに、無駄の無い完璧な連撃のプランでバイデンを追い詰め――遂に、その蹴撃が完全に捉える。敵は為す術無く崩れ落ちた。 「おおおおおお!!」 最後に残ったナエアが、それでも誇りは失わず、スペードに猛撃を浴びせ掛けるも。 「ガンバ~! 生まれたばっかのひよっこ達に、本物の戦いを見せ付けてやろうよ♪」 とらに応えた清らかなる存在の生み出す微かな息吹が確かにその傷を塞ぎ。 「うん、もうちょっと!」 すかさずアーリィが放った更なる鋭い細糸の一撃がナエアの頭部へと刺さり。 そして、最後の仕上げ。 「戦士ナエア、貴方と戦えた事を誇りに思います」 煌めく碧剣が、その巨躯を薙ぎ払った。 害獣によるアーク本陣の蹂躙は、阻止出来た。 しかしまだリベリスタ達の任務は終わっていない。 「さ、報告しに行こっ。勝ったよーって!」 「ふふ、アーリィは元気が良いのぅ」 元気良く駆け出すアーリィに、楽しげに笑う瑠琵。 そうだ、凱旋し、彼等の無事を――そして勝利を信じて待つ“九人目の仲間”に事の顛末を告げるまでが、彼等の任務だ。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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