●復讐の狼煙 ラ・ル・カーナ橋頭堡の防衛戦は、バイデン達の圧力に屈しボトム・チャンネルへの撤退という形で終了した。 しかし仲間を囚われたリベリスタ達は黙っていられることなどできなかったのだ。 彼らは作戦司令室に熱烈な上申をかけ、最終的にはラ・ル・カーナへの殴り込みをかけるという作戦に打って出たのである。 とは言え、先の防衛戦とは違い今回は完全なアウェイ戦。『万華鏡』のバックアップは無くフォーチュナの能力も限定的。その対策として、戦闘力があり万華鏡に頼らないフォーチュナであるアシュレイに作戦への参加を求め、更に限定的ながら助けを出そうとアークに所属する多くのフォーチュナたちもラ・ル・カーナ行きを決めた。 剣を持たぬリベリスタ、剣を持つリベリスタ。 彼等は手を取り合い、死の敵陣へと乗り込んで行く。 ……だがフォーチュナの力を借りることのできる状況は限られている。 特にバイデン先鋒部隊との戦いなどにはフォーチュナが力を使う余地はない。 結局は、そう。 あなたがやるしか、ないのだ。 ●ビッグロックとバイデン部隊 『異界の戦士よ……よく来てくれた』 あなたを見て、バイデンは笑った。 獰猛な、そして破壊的な笑みである。 言葉が通じるかどうか。 事情が通るかどうか。 そんなことなど、彼にとってはもはや些事なのだろう。 『貴様等が逃げ去ってから、私は退屈していた。巨大な鎚を持っても壊すものが無く、丈夫な顎を得ても噛み砕くものがない。悲しき運命よ。戦の味を、怒涛の味を知った私の相手をしてくれ。いや、もっと単純に言おう』 ずしんずしんと大地を鳴らし、巨大な人型の岩が現れた。 いや、どうやらそれは巨獣であるらしく、皮膚が異常に硬化した大猿のようだった。 縄梯子のようなものを軽やかに登り、バイデンは岩大猿の首後ろ……丁度肩車をするような形で乗り込んだ。 他にも同じように大猿に乗り込んだバイデン達が現れ、あなたたちを取り囲む。 ここは橋頭堡から離れた野外だ。そしてぶっつけ本番。 頼れるものは己とこの場の仲間のみ。 その状況で、バイデンは両手を広げて言った。 『さあどうか、かまってくれ!』 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 9人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年08月16日(木)23:07 |
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■メイン参加者 9人■ | |||||
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●ビッグロック包囲網を突破せよ 九人のリベリスタ達は今、四体の大猿型巨獣ビッグロックに囲まれていた。 彼らが殴りかかってくるよりも早く、『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)は片手でボルトアクションライフルをリロードし、歯で手榴弾のピンを抜いた。 「全くとんだかまってちゃんだな! そこまで言うなら構ってやろう、我々の流儀でな!」 二秒待ってから高く投擲。顔面近くで破裂したフラッシュバンに、ビッグロックは思わず仰け反った。 「同志Z(エンドレター)、まずはこいつからだ! ураааааааа!」 「あえてそこをチョイスするのかよコヴ☆リッシュ!」 「全く同じセリフを返してやる!」 いいともーと叫びながらぐっと腰と膝を曲げる『SHOGO』靖邦・Z・翔護(BNE003820)。 跳躍しようとした瞬間、横から踏み込んできたビッグロックに蹴っ飛ばされた。 サッカーボールよろしく跳ね飛び、向かいのビッグロックにそのまま打ち上げられる。 「痛い痛いやめてしんじゃう! あんなにクドい顔してかまってちゃんとかマニアックすぎる! これが異世界!」 翔護はいきなりフェイトを消費。空中で身体を丸めると、無駄な動きを交えて銃を引き抜き、先刻のフラッシュで怯んだビッグロックの顔面へ銃弾を叩き込みまくった。 「ま、気持ちは分かりますよ。楽しみで仕方無い……軍隊筆頭、推して参る!」 腕を翳すビッグロックの足元目がけて駆け出す『群体筆頭』阿野 弐升(BNE001158)。 チェンソー剣を最大出力で唸らせると、脛をぶった切る勢いで叩き込んでやった。 「ヘルマンさん今です!」 「エッ今ですか!? はいわかりましたもうこれ何これ異世界ついたらいきなりこれとか絶対ついてない」 「いいから早くしろ!」 「う、うわああああああああああん!」 『息をする記憶』ヘルマン・バルシュミーデ(BNE000166)は涙を散らしながら駆け出し、ビッグロックの手前で跳躍。腹目がけてドロップキックを繰り出した。 「恐くないっ、飛び込んじゃえばでっかいのも分かんないから――こわくないぃー!」 怒涛の連撃に思わず尻もちをつくビッグロック。 「どうだバイデン、思う存分構ってやる!」 膝から胸にかけて駆けあがる『立ち塞がる学徒』白崎・晃(BNE003937)。 顔面を直接殴りつけ、ジャスティスキャノンをぶち込んだ。 麻痺状態に陥ったビッグロックにできることなど防御だけだ。彼らのラッシュはかなり一方的なものになっていた。 が、残りのビッグロックが黙って見過ごすわけはない。 ラグビータックルのような姿勢で後方のビッグロックが突撃をかけてくる。 はっとして振り返る晃。攻撃をかわす暇はない、直撃コースは避けられないか……と思った矢先、『フォートプリンセス』セルマ・アルメイア(BNE003886)が間に割り込んでガード態勢をとった。 「遠からんモノは音に聞けェ、近くば寄って目にも見よォ! 我はセルマちゃん、鉄壁、強靭、難攻不――あ痛ァ!?」 タックルをモロに喰らった。 身体を丸めていた分、それこそサッカーボールのように吹き飛んでいくセルマ。 尻もち体勢のビッグロックの頭上を飛び越え、地面にべしゃんと転がり落ちる。 「うおお……い、痛過ぎる……」 「まだ体力の半分も削れてないだろう、我慢しろ!」 『赤猫』斎藤・なずな(BNE003076)は掌を翳して魔曲・四重奏を展開。次々と発射していく。 「いっそ清々しい程の喧嘩好きだなバイデンども、お前ら全員引きずりおろして、燃やしてやる!」 起き上がりかけたビッグロックへ追い打ちのように仕掛けられる魔光体の連打。 転倒しかけるのも時間の問題と言う所へ、『蒼き祈りの魔弾』リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)と『後衛支援型のお姉さん』天ヶ瀬 セリカ(BNE003108)が駆け出した。 足元をすり抜けるように走りながら双方の脛や膝へ流し打ちをしかける。 「我が身は御心、そして箱舟と共に」 「徹底的にかまってあげるから」 「――さあ、お祈りを始めましょう」 一気に駆け抜け、ノンブレーキで身を反転。 セリカは大型のライフルを両手でしっかりと、リリは二丁拳銃をクロスさせてまっすぐに構え、撃てる限りの弾を叩き込む。 ビッグロックは再び転倒。麻痺はすぐに解除したようだが、動き出す前に再び叩き込んでやれば問題ない。 弐枡が首を振るビッグロックの胸の上へ降り立ち、大上段からチェンソー剣を叩き落とす。再び麻痺状態に陥るビッグロック。 「動きが遅くパワーと体力に優れる巨獣か。見たまんま固いが、このメンバーでなら崩せない固さじゃあない」 思い切り獲物を振り回し顔を滅多切りにしてやったが、その直後別のビッグロックに掴み取られ、地面へ叩きつけられる。 「同志弐枡ッ」 「無事です、畳み掛けて!」 「了解した!」 尻もちをついたまま身体を丸めるビッグロック。 ベルカはライフルをしっかりと構えて照準を合わせると、セリカと共に足を重点的に射撃を加えて行った。 「奴はいわゆる『ひざかっくん』が効くタイプだ。徹底的に足を潰してやれ」 「言われなくってもそのつもりよ」 絶え間ない銃撃によってもくもくと砂煙があがる。 ビッグロックが完全に転倒したことで上を通過、ひいては包囲網を突破できるようになった。翔護と晃は胸の上を駆け抜けるようにして乗り越え、ビッグロックの肩を踏み台にしてジャンプ。 「行くぜアキラッシュ、キャッシュからのォ?」 「なんだそれ、合わせられるかッ!」 空中でムーンサルト反転すると、後頭部にスターライトシュートとジャスティスキャノンを一気に浴びせた。 岩のような外皮が砕け、内側から血が噴き出す。 ビッグロックは膝を変えるような態勢で動きを止めた。 「流石は『外の戦士』。こうではくてはならん!」 ランドセル状のふくらみを内側から破り、バイデンが飛び出してくる。 大きく跳躍すると、空中の晃へ急接近。手にしていた小型の石ハンマーを叩きつけてきた。 その衝撃たるや凄まじく、晃はガードする間もなく地面を我が身で抉ることとなった。 「まずは一体ッ、次はお前だデカブツ」 ただの岩山と化したビッグロックの死体を駆け上がり、別のビッグロックへと挑みかかるなずな。 リリが走り撃ちしながらビッグロックの足元へと入り込んだ。 両足の間でぴたりと停止。ワンタッチで空マガジンを落とすと、腰にセットしたマガジンで一発装填。 慌ててリリを連続で踏みつけようとするビッグロックだが、リリはその場でくるくるとスピンしながら脚を次々回避。その度に正確に一発ずつ脛や膝に銃弾を叩き込んで行った。 しかしいつまでも避けられるものではない。次は当たると言う所で、セルマが殆ど体当たりのようなヘビースマッシュを叩き込み、人間でいう所の足払いをかけた。 横向きに転倒するビッグロック。そこへなずながすかさず飛び掛り、自分の周囲に四色の魔光を展開。 「いまさっき分かったことがある。デカブツ相手にブロックが意味を為さないなら、こういうやり方も『アリ』だ――」 腕を振り上げ、拳を握るなずな。腕輪がキラリと光り、魔光のひとつが拳に乗った。 「ブッ壊れろお!」 重力を引いてビッグロックの顔面をパンチ。更に残り三色の魔光を拳に乗せて振り回すような連続パンチを叩き込んだ。 完全にマヒして動けなくなるビッグロック。 最初に沈められた一体目と同じように防御しかやることがない状態だ。 ヘルマンは片膝を上げた臨戦状態のままビッグロックに……いや、そのバックパックに搭乗しているバイデンに呼びかけた。 「動けないうちに終わっちゃっても知りませんよ。降りてきません?」 「……」 どこかの隙間から見えているのだろうか。バイデンはヘルマンの呼びかけに行動で応えた。 バックパックを開き、ビッグロックの肩へと飛び乗る。 両腕と膝に堅い革を撒きつけた精悍なバイデンだ。 「ひとつだけ聞くぞ……『本当にいい』のか?」 「えっ、出て来てくれるならそれに越したことは――」 ヘルマンがそう呟いた瞬間、バイデンは彼の目の前にいた。 圧倒的なスピードである。 咄嗟に両腕をクロスして膝を上げガードを固めるが、来るはずの打撃は背後から来た。強烈な肘打ちが背中を砕き、ヘルマンの顎を地面につけさせる。 「者ども、お言葉に甘えろ。もっと沢山、かまってくれるそうだ!」 脇のビッグロックがヘルマンを掴み上げ天高く掲げる。 「ううわっ!?」 ビッグロックは思い切りスイング。 それは向いに居たビッグロックの拳に激突し、ヘルマンは全身がミンチになるかのような錯覚を覚えた。 いや、実際そうなったのかもしれない。 フェイトを削って意識を取り戻すも、気付いたころには宙に浮いており、麻痺から立ち直ったビッグロックの腕でダイナミックなラリアットを叩き込まれていた。 血を吐きつつ、バウンドしながら地面をころがっていくヘルマン。 「まずいっ、回復のスパンを短くするぞ。いいな!?」 なずなは急いでヘルマンに天使の歌をかけるが、頭をぐらぐらとさせ、額から大量の血を流したヘルマンがこの先持ちこたえられるような様子は無かった。 「すみません、勘違いしていました……彼等を『ビッグロックを倒す前から』引きずり出してはいけない。それだけの打撃力を凌げる回復弾幕を、我々は張ることができません!」 リベリスタ達にとって今回は、とにかく麻痺させるなりしてビッグロックの足を止め、バイデンを引きずり出してしまえば勝負が早くついて良い、と言う認識であった。 細かい解説になって申し訳ないが、麻痺してもビッグロック自体は暫くすれば戦闘に参加できる。更に言えば、人間サイズの部位攻撃を多少しかけたくらいで動けなくなる彼等ではなかった。リベリスタが多少手足を撃たれた所で戦闘に支障が出ないのと同じである。 そんな中、バイデンとビッグロックを一度に相手する作戦を彼らは特に用意しておらずぶっつけ本番を強いられることになった。 だがこうも考えられる。現在のメンバーは持久力やリカバー性能が低い代わりに火力が高い。もしかしたら、この方法の方が効率的な勝利が望めるかもしれない。 出たとこ勝負の一発勝負。 作戦抜き、フォロー無し。 実力だけがものを言うパワーバトルが始まった。 「くそっ、斃れられても面倒だ。できるだけ最後まで立ってろよ!」 バイデンとビッグロックの打撃力は凄まじい。回避さえしてしまえば凌げるが、現在のメンバーは命中力と火力に比重を置いている。 なずなはなんとか一発KOを防ごうと天使の息をばらまきまくった。(敵が単体攻撃しかしてこないので今回に関しては丁度良い) 「相手をしてくれ、できるだけ激しくだ!」 「っ……いいでしょう、お望みなら。蹴り抜いてやりますよ!」 跳躍からの360キックを繰り出してくるバイデン。 ヘルマンは腕でガードすると炎を伴った鎌脚蹴りで相手を引っかけ落とした。 片足のままバランスを維持して連続で蹴りを入れる。 できればバイデンを無視してビッグロックを叩きたいが、相手が邪魔をして通してくれない。ここは一対一でやり合うしかなさそうだ。 その一方で、リリは円を描くように走りながら二丁拳銃を連射。 スターライトシュートで一気に片付けてしまいたいが、相手が両側から覆い込んでバラバラに攻めてくるせいで上手く狙いを纏められない。できるだけ立ち位置を調整して多くを巻き込むので精一杯だった。 「ちっ、俺一人の陣だ。遊びたい奴からかかって来い」 弐枡は仲間から若干離れた位置でチェーンソーを振りかざす。 巨大な骨剣を構えたバイデンが真っ直ぐに突っ込んで来るのを見て、もはや舌打ちするしかない。 チェンソー剣と大剣が激突、互いに大きく跳ね上げられるが、反動を殺さずに一回転して互いの胴体へ叩きつけ合った。 「刺激的だ。これぞ戦闘! これぞ殺し合いだと思わんか、『外の戦士』!」 「エネルギーが保てん……!」 身体の軸がブレた瞬間、足払いをかけられる。完全に態勢が崩れた所へ大剣のフルスイングが叩き込まれた。意識が吹っ飛びかけ、フェイトで無理矢理引き留める。 「大言壮語じゃねえってところ、みせてやんよ――!」 転倒しそうな所を踏みとどまり、チェンソー剣を全力で叩きつける。バイデンの胴体が上下に分割され、回転しながら上半身が地面に転がる……が、その直後横合いから飛び込んできたビッグロックの脚に、弐枡は思わず苦笑した。 「あは、こりゃあ無理ですよ」 天高く宙を舞う弐枡を見上げ、晃は額に汗を浮かべた。血に滲んでもはや何だか分からなくなっていたが。 「戦況が厳し過ぎる……」 糸目を僅かに開けて眼前のビッグロックを睨みつける。 「でも、斃れるわけにはいかないだろ。ここが正念場だ!」 既にビッグロックの拳に叩き潰された後だ。フェイトを削りでもしないと立っていられない状態だった。 もともと燃費がよかったこともあってまだエネルギー切れにはなっていないが、このまま続けて行けば確実に磨り潰される。 「やるしかないかっ! ベルカ、一緒に来てくれ。今日はオフザケ無しだぞ!」 「この状況でふざけられたら大したものだ。援護射撃だけになるがいいか?」 「ありがたい!」 「あとセルマちゃんは盾な!」 スライドインしてビッと親指を立てるセルマ。呼んでも居ないのに現れた。日ごろからやっているとこういう役回りが身につくのかもしれない。 晃に先行して走り出すセルマ。 「ふははははは! セルマちゃんの固さを思い知るがい――ぎゃん!?」 ビッグロックに一発で踏み潰されるセルマ。 紙のようにぺらぺらになるかと思われたが、根性(フェイト)で持ちこたえ、ビッグロックの足をしたから持ち上げてみせた。 「今の内に早くっ、セルマちゃんがこいつを支えている内に早く!」 「ああくそふざけるなって言った傍から死亡フラグを立てんな! あとお前、実は俺よりヤワいだろ! レベル帯一緒なのに!」 晃が直接ビッグロックに飛び掛ってジャスティスキャノンを連射。 岩のような外皮をめりめりと削って行く。命中率の問題でバットステータスは狙い無いが、ダメージソースとしてはかなり優秀だった。 「こいつ、神秘防御については弱めだ。いけるぞ!」 「良かった。私特技はそっち方面なんでな」 ベルカがビッグロックの心臓部分をしっかり狙ってカースブリットを発射。 弾丸が胸を貫通し、ビッグロックがその場に崩れ落ちた。 「やった――!」 「オラ、このオレサマを無視すんなコラァ!」 骨ナイフを装備したバイデンが脇から爆走してくる。晃の首を一瞬で掻っ切ると、返す刀でベルカの胸にナイフを投擲。ベルカの手首にびしりと突き刺さる。 「ぐっ……!」 晃が崩れ落ちるのを視界の端にとらえつつ、ベルカは高速でリロード。先刻も述べたが、リベリスタは手首を撃たれた程度で戦闘に支障は出ない。 歯で弾を吹き込むと、一瞬で狙いを定めてバイデンへカースブリットを発射した。 肩にうけてよろめくバイデン。 しかしその後ろから大ジャンプしてきたビッグロックに、ベルカは歯軋りした。 直撃コースだ。 多分もう、ここまでだろう。 セルマとベルカがビッグロックに蹂躙される。 その光景を横目に、翔護はバイデンから全力ダッシュで逃げていた。 正確には相手しないように避けていたのだが、背中を向けて走ることを避けと言うなら、まあ間違っていない。 「待て外の戦士! 俺の相手をしろ!」 「かまってちゃん過ぎるだろ! ヤンデレ属性ついてない!? ねえついてない!? こうなったら見せてやるぜこの赤ら顔、オレの――スタイリッシュ!」 とぅっと言ってジャンプすると、空中で腕を交差。胸の前でクロスした状態で指を奇妙に形作ると、一回転半捻りして二丁拳銃を突き出すようなポーズをとった。 「キャッシュからの、狙いすましたパニッシュ!」 スターライトシュートがバイデンに浴びせられ、その向こうに居たビッグロックにまで弾幕が届く。 それに気付いたビッグロックは猛然と翔護へタックル。 「どうだバイデン俺のスタ――ぐあ!」 今度こそリカバー不可な勢いで吹き飛んでいく翔護。 「靖邦さん!? この……!」 セリカがライフルの照準をバイデンに合わせて発砲。 弾はバイデンの手首を強かに打ったが、本人はその反動をまるまま利用して回転。 「今度はお前が相手をしてくれるのか、戦士ぃ!」 手にしていた石斧が回転しながら飛んできた。肩が無くなったかと思う程の衝撃がセリカに走る。 「づぅっ……!」 「戦士、お前はなぜそうも無駄なことをする。貴様たちは脛を蹴る程度の事で、手を打たれる程度の事で戦えなくなってしまう程脆弱なのか? そんなにもろくて、つまらない生き物なのか? 違うだろう!?」 獰猛に笑いながら突撃してくるバイデン。 セリカは内心舌打ちしながら、ライフルを連射するのだった。 そして――。 潰し合い。壊し合い。殺し合い。 全ての果てに残ったのは、乾いた大地に佇む一人のバイデンだった。 彼は石斧を緩慢な仕草で拾い上げ、その場に興味を失ったかのように歩き出した。 彼の背後には、倒れたリベリスタとバイデン。そして死体と化したビッグロックたち。 それ以外には、何もない。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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