●不測 素晴らしい戦いを求め、求め、進軍の最中であった。 騒ぎを聞き付けたか。或いは、そこかしこに充満する濃密な血の臭いに惹かれたか。 「キィギヤァアアアアアアアアアアア!!!」 大空を劈いたのは鼓膜に不愉快な鳴き声。地面に落ちた大きな影。 蛮族達が見上げたそこには巨大なケダモノが三体、自分達目掛けて急降下している光景が―― ●例えるならばトンネル並に電波が悪い戦場 「!」 アーク陣営。目を閉ざし、『未来の電波』を集中して集めていた『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)は瞼を開けた。 カレイドが無い故にその映像はノイズが掛かり断片的ではあるけれども、『視えた』モノに嘘はない。 急がねば。 愛するリベリスタ達を支援する為に。『フォーチュナは戦闘能力を持たない、戦場に赴くのは危険だ』――その『常識』に敢えて背き、自分は危険な攻撃作戦の従事に志願したのだから。 プレコグニション。サイコメトリー。クレヤボヤンス――知り得ぬ事を知る力。 これが、戦えない自分の『戦い方』。 優位が確実な防衛戦に比べ、不利は否めない総攻撃。確実な勝機は無い。 そうであるが故、戦える者は遍く戦わねばならぬ。 ●血を血で洗浄 「皆々様、お集まりですな」 ラ・ル・カーナにいつもの事務椅子は無く、簡易な椅子に座したメルクリィは集ったリベリスタ達を一望した。 本来なら、ボトムチャンネルに居る筈のフォーチュナ。 本来なら、戦場に出る事の無い彼等。 されど、『仲間達の為に』と自ら強く望んで異世界に赴いた者の一人。 カレイドの無いこの世界では明確な未来を得る事は出来ない。それでも彼は神経を研ぎ澄ませ、一つの未来を垣間見た。 「進軍中のバイデン小部隊二つに、非常に獰猛な巨獣が三体、襲い掛かっております」 言いつつ、広げるのは手書きの簡易地図。指し示すのは赤い円。 「場所はバイデン勢力の後方脇。この巨獣はその辺の巨獣よりも危険度が高いようで、バイデン達でも一筋縄ではいかない様です。つまり、完全に巨獣へと気を取られている状態でしょうな。 その上、立地的に回り込めば丁度、突く事が出来るでしょう――奇襲を仕掛けるには絶好の機会かと」 機械の目が、皆を見る。 「上手くいけば、2つの小部隊を落とす事が出来ます。……しかしそれ相応の危険も伴う事でしょう。なんせ彼等を討つ為には、結構な距離を進軍しなくてはならないのですから。 だがしかし! 私はフォーチュナ、皆々様に降りかかる危険を殺ぐのが『私の力』ですぞ!」 ペンの蓋を開ける。自陣営地点に先を置く。目を閉じる。深呼吸。 探る。ノイズが酷い。不明瞭。どれだ。捜す。未来の電波。知る為に。肩の輪状アンテナが回る。 そして、書き記してゆく。一本の赤い道。伸びてゆく。ゆっくりと。曲がりくねって。赤い円まで。繋がった。 眼を開けて、一つ溜息。カレイド無しの未来予報は中々に骨が折れる。 「この道を、」 機械の指で辿る、地図上の赤い線。 「――辿って下さい。これが、私に『視えた』中で最も安全なルートですぞ」 言葉の終わり、赤い線が刻まれた地図を皆へ差し出した。託す様に。 リベリスタ達を真っ直ぐに見る。 心配を押し殺して、応援する様に。 「私からの説明は以上です。私はいつも、リベリスタの皆々様を応援しとりますぞ!!」 どうか、ご無事で。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年08月15日(水)22:46 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ビフォア出陣 「メルクリィさん」 と、出立の前に『雪風と共に舞う花』ルア・ホワイト(BNE001372)は彼へと振り返り。 どうしましたか。彼の笑み。髪を優しく撫でる大きな手――嗚呼、いつも送り出してくれる大きな手がこんなに近くにある。同じ戦場にある。 その手をぎゅうと掴んで、ルアは涙が零れそうになるのを必死に堪え。 真っ直ぐに、その目を見る。 「絶対、帰って来るから。だから、メルクリィさんも……死なないで」 何故こんな言葉が出てきたのか分からない。分からないけれど、荒野の風景が、震える大気が、底知れぬ恐怖が、少女の華奢な体を、心を支配していたから。 「……死なないで、メルクリィさん」 「勿論ですとも」 だから貴方もどうかご無事で――繋いだ手が離れ、2人は其々の戦場へ。 ●第二次ラ・ル・カーナ大戦 異界の太陽が乾いた大地を遍く照らす。暴力を孕んだ血風が吹き抜ける。 「ようやく奴らとやれる」 この前直接殴り合い出来なかった分!拳を己が掌に打ち付けて、『トランシェ』十凪・創太(BNE000002)。彼は空中、鷹の視力で遠くまでを警戒している。 「攫われたみんなを帰してくれたのは嬉しいけど、それでも仲良くしてくれそうにはないみたいだな…… あいつらがボトムチャンネルに来る気なくすくらいこてんぱんにしてやろうぜ!」 戦いが望みならとことんやるまでだ、と意気込む『鉄腕ガキ大将』鯨塚 モヨタ(BNE000872)。対照的に『番拳』伊呂波 壱和(BNE003773)はふるりと己の膝が震えるのを感じた。 「リベンジマッチ、ですね」 バイデンに向かうのは、まだ怖くて足が竦むけれど――風に翻る長学ラン、裏地に輝く『いろは応援団』の文字。 「……けど、大事な仲間を取られて、傷つけられて、黙ってられないです」 「人が引き篭もっている間にも、世界は激動しているものだね……」 まぁ、ソレは置いといてと『偽悪守護者』雪城 紗夜(BNE001622)。今回は少々姑息な手段を使う事になる。 確実にバイデンを倒す為――巨獣とバイデン、双方が疲弊するまで待ち、その後仕掛けるという作戦。 「卑怯かもしれないけれど、使える状況は最大限利用させてもらおうか」 「色々言いたい事はありますが、今回は奇襲攻撃ですし最初は我慢ですね」 皆へオートキュアを施しつつそう応えたのは『絶対鉄壁のヘクス』ヘクス・ピヨン(BNE002689)、「それに」と付け加えつつ見遣る後方には『歌姫』宮代・紅葉(BNE002726)の姿が。 「今回は守るべき人もいます。ヘクスは負けません。守るべきものがある扉の強さを見せつけてやりますよ」 各々、銘々、準備を怠らず彼方を見遣る――悍ましい巨獣を相手に暴れ回るバイデン達。時間と共に彼等は傷付き、疲弊する。 「正直、弱るのを待つなんて性じゃねーけどな」 それは奇しくも、創太がそんな呟きを漏らした直後であった。 巨獣の甲高い叫び声が迸る。 オニクイドリが一匹、『こっちを見ている』! 「――!」 その鋭い嗅覚で『新たな獲物』を察知したのか。もう一度甲高い声。全てのオニクイドリが、そして、バイデンが、 気付いた。 「チッ――往くぞ皆!」 予定よりも早い出撃。だが、希望通りではないが作戦通り。巨獣にバイデンは少なくとも既に『100%』ではない。 己の力を底上げしつつ、リベリスタ達は強く地を蹴り飛び出した―― ●乱 リベリスタだ。 リベリスタだ。 巨獣とはいつでも戦えるが、彼らと戦える機会はこの先無いかもしれない。それ以前に自分達は『リベリスタと』戦いに来たのだ。 となれば当然、バイデン達は巨獣そっちのけでリベリスタ達に襲い掛かろうとしたが―― 「共闘を申し立てる。其方の方が互いに最高の戦いを出来ると思う」 三人組バイデンの前に立った『刃の猫』梶・リュクターン・五月(BNE000267)が言い放った一言。 「そこの奴ら、まずは軽く勝負しねーか。なに、どっちが多く倒せるかの軽い前座勝負だよ。 ここから俺様達お前ら達と闘んのに、こいつらは邪魔なだけだろうが!」 「雄雄しき戦士として私達と勝負よ! どちらが多く巨獣を倒せるか! 戦士なら勝負してみなさいよ!」 創太に続き、ルアも三人組へ挑戦状を叩き付けた。 「戦士の誉れ、オレは其れを見たいのだ、異界の戦士よ」 無論、絶対に上手くいかないと思っている――唾を飲み込み、五月は真っ直ぐ三人組を見据えた。トラクラウ、ヨワリがリーダーであるテポストリを見返る。 「ふむ……成程だ。我々も貴様らと戦いたいが――」 と、襲い掛かって来たオニクイドリの鉤爪を斧で受け止め、受け流し。 「そうとなれば、確かにこの鳥が邪魔だな。良かろう勝負だ、異界の戦士よ」 そう、バイデンは何よりも『勝負事』が、『争い』が好きなのだ。 となれば、全力を以てオニクイドリを打ち倒すのみ。 「全力で支援します、押忍!」 視野を脅威的に高めた壱和が仲間達へ防御の教義を受け渡す。 恐怖を押し殺すその視線の先、次々と飛び出してゆくリベリスタ。 「今回こそ、テメェらバイデンの力見せてもらうぞ。その分無論、俺様達の力も思う存分見せてやる!」 剣を構え、創太は真っ直ぐオニクイドリへと吶喊した。その刃に込めるのは全身のエネルギー、渾身の力を以て一閃する。吹っ飛ばす。 耳喧しい鳴き声。別個体のオニクイドリが不気味なまでに巨大な口を開けた。そこにズラリと並んだ牙。ネチャリと唾液。その唾液が地面に落ちた瞬間、ジュワっと音を立てて煙が立った――恐らくは毒。 直後、飛ばされたのはその毒液。麻痺性の毒。怯んだ者、或いは体が痺れた者へは容赦なくオニクイドリの鉤爪が襲い掛かった。 「くっ――」 五月が防御に構えた魔力剣。されどその肩口は空を裂いた鉤爪に切り裂かれ、浸みこんだ毒が痛みを引き起こす。少女の顔が苦痛に歪む。 きっと見澄ます先には、獰猛な性質の儘に暴れ回るオニクイドリ。 「――羽ばたきが煩いのだ、この毬が」 ふっ、と息を吐いて、詰める間合い。叩きつける一撃。メガクラッシュ。 きりもみをして吹き飛ばされたオニクイドリへは、その飛ばされるスピードを上回る速度で、ルアが。『飛躍』する。白い花が散りばめられた戦闘装束を靡かせて。 パチパチと火花が散る世界―― 「私達がここで頑張らなきゃ!!!」 花風が舞う。透通る翠と碧の二刀――Otto VeritaとNemophilaが煌く。 速度を威力に変えた音速の刃が巨獣を切り裂いた。圧倒し、その動きすら縛り付ける。 攻撃。攻撃を。 回復手段はヘクスのオートキュアのみ、ほぼ無いに等しい。 故にありったけ、全てのリソースを攻撃に。 「さあ、それでは派手に行きましょう。今日のわたくしはロックなので……痺れなさいっ♪」 魔陣を展開させた紅葉が歌いあげるのは雷の歌術、その歌声は稲妻となって巨獣達を穿った。 「やるな、リベリスタ達!」 それに負けじと、バイデン三人組も力を振るう。斧が、ガントレットが、モーニングスターが、暴力の儘に巨獣を薙ぐ。 3体のオニクイドリは確かに凶暴で危険だが、複数のリベリスタと3人のバイデン達の猛攻によって一気に不利な状況へと追い込まれた。 「はぁッ!」 五月の放った猛打が、ルアの刃によって動きを縫い止められたオニクイドリを一刀両断に切り捨てる。乾いた荒野が血に染まる。 順調だ―― 順調だった。 ここまでは。 ――時間は壱和がディフェンサードクトリンを使用した直後、創太達とテポストリ達がオニクイドリへ猛攻を仕掛け始めた頃まで遡る。 「やぁ、こんにちは。一つ私達と手合わせ願えないかな?」 ウサギの縫いぐるみから暗黒装飾なデスサイズを引き摺り出し、紫電の戦気を纏った紗夜がデスサイズを『もう片組み』のバイデン達へと向けた。 続いて身体のタガを外し、機煌剣・プロミネンサーブレードを輝かせたモヨタが堂々不敵に言い放つ。 「オイラ達と戦うために来てくれたんだろ? 全力で相手してやっぞ! 巨獣よりは手ごたえあると思うぜ!?」 言下、鋭く振るったプロミネンサーブレードが赤く光る真空刃を作り出し、ヤヤウキへと真っ直ぐに飛んだ。巨体のバイデンは巨獣の上、構えた斧でそれを弾き防ぐ。 「……お? なんだ? 俺ぁーバイデンだぞーオニクイドリじゃねぇぞー?」 「何だ? 俺ァてっきり、バイデンとリベリスタどっちが巨獣を早く倒せるのか勝負するって思ってたが」 キョトンと首を傾げるヤヤウキ、トラトラウキ。 だが、まぁ、いいじゃないか。 あの三人組のバイデンが巨獣に気を取られている間、自分達は一足先にリベリスタ達と戦う事が出来る! 「ハッハー! こいつァラッキーってモンじゃねぇぜ!!」 「お? おぉ! 戦うぞー!!」 オオオオオッと鬨の声を上げ、ダクーラを駆りバイデン達が突撃してくる。 地響き。砂煙。 すぅ、はぁ。深呼吸一つ、壱和は多節木刀:拳のいろはをスッと構えて。 「じょ、……上等です。喧嘩の仕方、教えます」 番長見習い、頑張ります。 踏み込むのは『真っ直ぐ』。ヤヤウキが振り上げる斧――横薙ぎ。それを壱和はスライディングの要領で回避し、伸び上がる勢いのまま、跳ね上がるバネの様に。大胆に叩き込む一撃。意外性の戦法。 「あ痛ーっ」 「へぇ、面白いなお前!」 腹を摩るヤヤウキの肩の上、トラトラウキが3本の矢を引き絞る。それは壱和、モヨタ、紗夜へと鋭い狙いの下に放たれた。傷付けた。 されど、モヨタと紗夜は一つも怯まずに左右其々から大きく踏み込んで。 「モタついてる暇は無いからね、一気に決めさせて貰うよ」 「喰らえぇーーー!!」 紗夜のデスサイズが闇色の電を纏い、モヨタの機煌剣が激しい赤光を放った。 同時に放つ、ギガクラッシュ――しかしそれは、ダクーラを操り『盾』にしたヤヤウキに届く事は無かった。 それでも、その巨獣にとっては絶大な一撃。何しろ2人掛かり、己が身体すら焼く『ギガ』の名は伊達じゃない。 ならばもう一度だ――痛みのままにリベリスタ達へ角を振るうダクーラの攻撃を防御しつつ、堪えつつ、矢の雨に血を流しつつ、再度の隙を窺う。 が。 「ああああ! テポストリ! 見てよ! アイツらずるい!」 リベリスタと共にオニクイドリと交戦していた3人組バイデンが見遣った先。 ヤヤウキ、トラトラウキと戦うリベリスタの姿。 「成程な」 テポストリは理解する。まんまと嵌められた訳だ。 まぁそれはさて置き 自分達だってリベリスタと戦いたい。 バイデン三人組が、リベリスタ達へと向いた。一斉に襲い掛かって来た! それは予想外の出来事。 そして避けたかった出来事。 バイデン、巨獣、リベリスタ達の三つ巴。 完全なる乱戦。 最早陣計なんてものは無く 右も左も前も後ろも無い。 気紛れな女神の掌の上、命をかけて、運命を掛けて、削れ、血を流し、血みどろに。 「ふぅ。やっと言えますね。バイデン達…… さぁ、砕いて見せて下さい。ねじ伏せて見せて下さい。この絶対鉄壁を!」 死力を尽くせ。ヘクスは構えた鉄鍍の盾扉で幾度も攻撃を受け止め、只管に紅葉を庇う。紅葉もそれを応援するように稲妻の歌を奏でる。 「初めまして、異界の戦士。オレはメイ。君が認めてくれるなら名を教えてくれ。戦士の流儀とはそういうもなのだろう?」 肩を弾ませ刃に稲妻、ヤヤウキの前に五月は立つ。 「ヤヤウキだぞ」 「トラトラウキ」 「覚えたぞ。……君達とは真剣勝負をしたかった。今は時間がない、オレが君達に適うとも思ってない。 けれど一閃しよう、勝敗を分とう、この一撃で――君達の全てを攻撃に乗せてくれ」 知りたいのは戦士の誇り、唯それだけ。 受け止める、その想いを。 そして、自分の想いもぶつける。 「オレは戦い続ける、守るために。復讐じゃない、此れは誇りのための戦いだ」 自分は守る者が在る時は強い――それが誇り。 幾ら血だらけになろうとも、刃を振るう手は止めない。先を焼き捨ててでも。此方も本気。刃に纏う激しい稲妻。退く訳にはいかない。危険を顧みず道を示した彼を、フォーチュナを安心させねば。 「大好きな人を護る事に対してオレは貪欲だ。此れが師の剣だ――負けては遣らん!」 何度でも、飛び掛かる。 「どした? まだオイラは終わっちゃいねぇぜ!」 「楽しんでいるところ悪いけど……私は、キミ達の楽しみを叩いて砕いて押し潰そう」 立ち上がる。武器を構える。モヨタはヤヤウキへ再度疾風居合い斬りを放ち、手の甲で鼻血を拭った紗夜は大きくデスサイズを振り上げた。ズタボロの手。それでも悪魔は笑みを絶やさない。 「私は、私達の世界を護る為の悪魔だからね」 負けてなんかやらない。叩きつける一撃で、ヨワリを斬り倒した。 戦わねばならない。 向けられる暴力に暴力で答えねばならない。 最早ここは混沌と暴力の坩堝。 「前のときといい邪魔者が多い戦場だよなぁ、ったく」 傷だらけになりながら、創太は頬の血を拭った。見据える先、撃破されたダクーラから降りたヤヤウキへ。目があった。刃へ破壊のオーラを込めた。 「ヤヤウキ!トラトラウキ! さあ、あの日の続きだ!!」 「おぉ、あと時のー!」 「良いぜ、掛かって来いよ!」 後は真っすぐ闘るのみ。それがせめてもの罪滅ぼしだと、創太とヤヤウキの得物が交差した。 「待ってました。さぁ、殴りあいましょうか。貴方達、バイデンの戦士でも特にお強いのでしょうね?」 少しでも流れを優位にする為、臆病番長が挑発を放つ。それに牙を剥いたのはトラクラウ、拳の重撃をチェインナックルで受け止めた。全力防御。譲らない。 その刹那、一閃の花風がトラクラウの背中を大きく切り裂いた。ルアである。 「さあ、次は――」 と、ルアが振り返った瞬間。 「! 危ないッ」 壱和の声、振り下ろされたのはテポストリの斧。赤が散る。 「っッ――」 激痛。赤。じわじわ。でも、倒れない。運命を代価に踏み止まって、敵を見据え、刃を握り直した。 護りたい。共に戦う仲間を、フォーチュナを、親友を、別の戦場に居る仲間を、待ってくれている大切な人達を。 護る為に、戦う! 散り行くだけの神風ではない。散ってなお花風は舞う――最速で、高速で、誰よりも速く! 「L'area bianca!」 花風を纏った二刀で百閃。白の領域。赤を白く塗り潰す。 一人、一人と、戦場に倒れる者が増えてゆく。 既に誰もが精神力を使い果たし、単純な、明快な、殴り合いによる戦い。 最後まで前のめり。 遂にヤヤウキも倒れ、彼から降りたトラトラウキがヤヤウキの斧をひょいとその手に持ち替えた。 見澄ます先には、創太。 互いに血だらけで、足を引きずり、腕が拉げ。 「気持ちよく闘えりゃそれで充分だ、だろ? そんだけだ。俺様としちゃ、結果がどうあろうがお前らと戦れた。それで充分」 そこに種族も何も関係ない。闘いを求める者同士、それが答え。 「もし次があんなら今度こそ。真っ向真っすぐ、何の邪魔もなく純粋に闘おうぜ。 望みなら俺様は飲めねーけど酒も準備くらいはしてやれるだろうしよ」 「あぁ、次、次があったらいいなァ」 だってこんなに楽しい。 ほら、闘争は楽しいだろう? 「「おぉおおおおおおおおおおおおおお!!!」」 バイデンが、リベリスタが、飛び掛かり、 そして―― ●君は何を得ましたか 最後に立っていたのは、ルア、五月、壱和の三人だけ。 残りは、リベリスタも、バイデンも、巨獣も、悉くが力尽きている。 「……――」 ようやっと勝利を理解し、膝を突いた。 ある程度バイデンも巨獣も消耗するまで待ったからか。上手く前半で蛮族と共闘し、オニクイドリをかなり追い込めたからか。なんとか押し切られる事は防いだ。が……一歩間違えていたらどうなっていた事か。 それでも勝利だ。 「……撤退しましょう、早く皆を治療しないと」 壱和の声に、3人は協力して仲間と共に後退を始める。 仰ぐ太陽は、何処までも乾いて居る―― 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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