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<箱舟の復讐>槍衾

●数を纏う
 バイデンは力を好む。それは事実だ。
 だからこそ数に頼らず、突進を是とする者が多いのも事実である。
 だが、その気質が『カルスト』が『彼ら(ワンド)』を駆り、また部下にもそれを要求することを否定するものではないというのも確かである。
 確かに、並み居る巨獣達からすれば弱々しく見える外見かもしれないが彼らは疾く、そして群れる。
 先を急ぐ彼らにとって、彼らは何より便利な足であり、また貫くには何よりも正直な彼らを使わぬ義理などなかったのだ。



『ラ・ル・カーナ橋頭堡』の壊滅は、数名のリベリスタを捕虜に取られながらの撤退、という状況を生み出した。
 これに対して集められたリベリスタ達の意見はその多くが『ラ・ル・カーナ』への強襲――確実性の低い総力戦を支持し、即座に動くべしとの強硬論が大半を占めた。
 当然、カレイド・システムを欠くアークのフォーチュナを投入するのは良策ではなく、リスクもかなり大きい。だが、何事にも例外というものが存在する。
『戦闘力を持ち、万華鏡に頼らず予知を可能とするフォーチュナ』――アシュレイ・ヘーゼル・ブラックモアの存在が、ここに至って高い可能性を生み出した。

「……というのが、概ねの現状です。流石に『塔の魔女』だけに未来を任せるのは、フォーチュナとしてどうかと思いますので、ね。微力ながら、僕も支援させて頂きます」
『憤怒と嘆きの荒野』を埋める戦闘の気配と鬨の声に視線を向け、『無貌の予見士』月ヶ瀬 夜倉(nBNE000202)は口を開いた。
 カレイドに頼らず前線に出ることを選択したのは、彼の意思だ。そして、他のフォーチュナも。
「現状は皆さんがご存知の通りです。バイデンとの戦闘に於いて、その全てが真正面からの激突ではありません。
 究極的には互いの力に頼った乱打戦でしょうが……どうやら、一部のバイデンが別方向からこちらに攻めようと動いているようです」
「攻め『ようと』?」
「ええ。御存知の通り、現状ではカレイド・システムの恩恵を受けられません。しかし、限定的でも本来のフォーチュナとしての能力は問題なく利用できるようで。
 彼らの目論見を何とか察知できたのは僥倖でした。故に、あちら側の侵攻前に、少数戦力で迎撃にあたります。
 相手になるのは、芋虫タイプの巨獣を駆り、そいつに備えた何本かの槍を向けることで擬似的な槍衾を作ったバイデンの部隊です。
 当然、接近には危険が伴いますしリーチも長い。あちらの距離を維持させれば楽な戦いではないでしょうし……何しろ、現状でははっきりとした能力をお伝えできません。
 十分な警戒を怠らぬよう、お願いします」

 そう言って向けた夜倉の目線の先に、それが近づきつつあるのだろう、というのはリベリスタ達にも理解できる。
 故に、打って出るしかないのだ。勝つために。


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:風見鶏  
■難易度:HARD ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 2人 ■シナリオ終了日時
 2012年08月21日(火)23:27
 しかし まわりこまれそうだ!
 姑息というよりは方向が違うだけの正面突破。

●エネミーデータ
 バイデン『カルスト』:当グループのリーダー格。得物は大剣。巨獣『ワンド』を束ねた状態で騎乗(犬ぞりのようなもの)し、高確率でダブルアクションを仕掛けてくる。
 騎乗する『ワンド』の半数が健在である限り『槍衾(後述)』の恩恵を受ける。
 自己強化能力・再生能力を有す。

●バイデン×2(?)
 カルスト配下のバイデン。自己再生能力を有す。『ワンド』単体に騎乗。騎乗状態に限り『槍衾』の恩恵を受ける。

●巨獣『ワンド』×?
 2~3本の槍を背負った芋虫型であることのみが判明している。正確な数は不明だが、配下バイデンが騎乗しているのは各1体、カルストの騎乗数が不明。
『槍衾』(P):ワンドのブロックに入る際、または5m圏内に入る際に命中判定。流血を伴う。
突撃(物近貫・出血)
暴れる(物近範・重圧、隙)

●重要な備考
『<箱舟の復讐>』はその全てのシナリオの成否状況により総合的な勝敗判定が行われます。
 予め御了承の上、御参加下さるようにお願いします。

 つっこめ!
 ご参加、お待ちしております。
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
クロスイージス
祭 義弘(BNE000763)
スターサジタリー
桐月院・七海(BNE001250)
覇界闘士
付喪 モノマ(BNE001658)
プロアデプト
レイチェル・ガーネット(BNE002439)
スターサジタリー
蛇目 愛美(BNE003231)
インヤンマスター
小雪・綺沙羅(BNE003284)
ダークナイト
ハーケイン・ハーデンベルグ(BNE003488)
ホーリーメイガス
石動 麻衣(BNE003692)
■サポート参加者 2人■
スターサジタリー
リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)
ホーリーメイガス
エルヴィン・ガーネット(BNE002792)

●誰のためでもない、前進
 バイデンは戦を好む者達だ。
 バイデンは戦の空気には殊に敏感で、強靭であり、狂乱であり、勇猛である。
「『リベリスタ』と言ったな、楽しませてくれると信じているぞ、俺の、渇きを潤せるなどとは思うまいが――『信じさせろ』よ!」
 故に、『カルスト』の鬨の声は誰よりも大きく何よりも勇壮で何もかもを飲み込むが如く、『ワンド』の足音を突き破ってリベリスタ達の方へ向け、響くのだ。

 すぐにでも肌が触れ合いそうな声と声の輪唱を耳にしたリベリスタ達が、各々の装備を構え、今や遅しと激突を待つ。彼らの心境を塗りつぶすのは、『雪辱』というただの一節。
「一度敗北したこの地……ラ・ル・カーナに再び足を踏み入れたからには勝つ、いや勝たねばならない」
 背後に控えるフォーチュナの心配は元より、ボトム・チャンネルへの侵攻を何としても止めねばならない。『系譜を継ぐ者』ハーケイン・ハーデンベルグ(BNE003488)には、構えた剣の重みがより激しく感じられただろう。
 それが正しく、それでいい。受け継いだものを失わぬためには、ここで勝利することを何より命題とするべきである。名を知るフォーチュナが関わるなら、尚。

「流石に、カルストの駆るワンドは数が多いですね……配下も左右にいますが、特に不審な点は――いえ。更に後方に、一人、でしょうか」
 相手の布陣に視線を向け、その僅かな移動速度の変化から背後に控える増援を見ぬいたのは『シャドーストライカー』レイチェル・ガーネット(BNE002439)だ。
 その視線を向ける先で、カルストの脇を固める二人のバイデンは、或いはわざと背後の増援を見せつけているようにも感じた。だが、そんな小細工がなんだというのか。
 目の前に現れたなら倒すしか無い。意地と覚悟を見せるためにここに立った彼女に、退路はない。
「それ以上に――ワンドの表皮が装甲じみて居るのが気になりますが」
「せめてもっとメルヘン色で……そんなパロディみたいな巨獣……」
 レイチェルと対局の位置に布陣した『K2』小雪・綺沙羅(ID:BNE003284)にとって、突撃してくるワンド達の姿が見るに堪えないそれであることは間違いない。
 巨体が役に立つと思うべきか、うざったいものと感じるべきか。自分の中でも未だ結論は出ないが、面倒であることは確実なのだろう。違いない。

 他方、『弓引く者』桐月院・七海(ID:BNE001250)の感情は千々に乱れてまとまらない。相手方の思考に感心すればいいのか、戦うことに集中すればいいのか、定まりがつくものではないのは確かではある。
 だが、結局のところは倒すべき相手が居て、ここで止めることが何より自分に出来る事であるというのは確かな事実なわけで。迷っている暇はない。始めよう、と決意する。

「前線にフォーチュナーが出るたぁね。アークに来た甲斐があるってもんだっ!」
 アークによる――というよりは、強硬派のフォーチュナ達による強引な戦闘は、ついにフォーチュナ達への襲撃すら許す逼迫した状況を生み出した。
 だが、その危急ですら『BlackBlackFist』付喪 モノマ(BNE001658)にとっては好ましい。思い切りの良さと前を見る意志の硬さを持つ彼にとって、フォーチュナすらが『それ』を実行する現況は彼にとって居心地のいいものなのだろう。
 漆黒の手甲を掲げた彼の覇気は、彼方迫るカルストにすら笑みを浮かべさせるに足るもの。戦士としての、それだ。

「私達の橋頭堡を奪ったくせに、ソレを使わないなんて余裕ね……妬ましいわ」
「中々厄介ですね」
 勝利も敗北も主義主張を押し通した上で受け入れるバイデン達の在り方は、『以心断心嫉妬心』蛇目 愛美(BNE003231)にとって妬ましいというに十分すぎるものだった。
 自らの勝利、大勢の為に己を曲げることを余儀なくされることの多いリベリスタ達にとって、何も曲げず何も譲らず、戦いの果てに全てを持ってくる彼らのあり方は確かに羨ましいものなのだろう。
 だが、愛美はそれ以上に――自らの裡に湧き上がるその義務感、ある種戦士としての矜持にも似たものに妬ましさを感じるのだ。
 気が進まない、と繰り返す程に彼女は、前線に立つことを許容しているのだから。
 無論、それは『おとなこども』石動 麻衣(BNE003692)にとっても同じことが言えただろう。機動性に富んだ敵を止めるには、早急な対処と戦術が求められる。無計画に突撃する彼らは、無策が故に何より強い。

「後ろには守るべき仲間が居るのだからな」
 向かってくるバイデン達に視線を向け、『侠気の盾』祭 義弘(BNE000763)が背負ったのは、この戦場の趨勢と勝利への義侠心。
 構えたメイスに偽りはなく、踏み込んだ覚悟に退路は無い。
 レイチェルと綺沙羅が呼吸を合わせ、各々のリベリスタが意気を上げる。

「さあ、『お祈り』を始めましょう」
 聖別された二丁拳銃を構え、『蒼き祈りの魔弾』リリ・シュヴァイヤー(BNE000742)の祈りが弾丸に篭り、祈りと言う名の呪いを生み出す。
 一瞬、早く動き出した『ディフェンシブハーフ』エルヴィン・ガーネット(BNE002792)の咆哮が、高く響き。

「――おぉォォォォ!!」
 激突は、リベリスタ側の驚愕で幕を開ける。

●何に操られもしない、猛進
 綺沙羅が放った式符がカルストを乗せるワンド――五体に及ぶ隊列の一体を貫き、真逆へと引きずろうと誘導を掛ける。
 それより些か早く、レイチェルが配下のバイデンが一体を狙うが、次手に移るにはやや手が届かない。結果、作戦の主である『ワンドの混乱』は成し得なかったものの、方向を乱されたカルストは動きを鈍らせる、と、思われた。
「猪口才な、だが興が乗る催しよ!」
 だが、カルストは慌てない。ワンドを駆る者、それを統べる者として、僅かに軌道がずれた程度は想定の範囲内、と。『そのワンドの手綱を切った』のだ。
 唯でさえカルストの鞭捌きで速度を増したワンドが、リベリスタ達に襲いかかる。

「死ぬのが怖くねぇならかかってこいよ? バイデンよぉっ!」
「その言葉、偽りが無いか試してくれようぞ、リベリスタァ!」
 大槌を構えたバイデン――と、そのワンドへと突っ込んだのはモノマ。絶妙なタイミングで突きこまれた槍衾を皮一枚の精度でかわし、至近に踏み込んだ拳が電撃を纏うが、ヒットしたのはワンドだけだ。
 配下とて、バイデンが一人。返す拳で打ち込まれたモノマのそれを、大槌で押し返したのだ。
 にい、と笑い合う二人の戦人は、その時確かに共感と共鳴を覚えた。
 ――それから間を置かず、三者三様の呪いの一撃が彼を襲うが、そんなものに気を取られる様子すらない。苦痛すら、笑って見過ごすか。

 向かってくる配下、二体。フリーになったワンド、一体。……そして、カルスト本陣。

「エルヴィン、託したぞ!」
「任せとけ! 絶対に護り抜く!」
 配下、そしてフリーのワンドを巻き込むように闇を放り込むハーケインに背を押され、手隙のバイデンにエルヴィンが突っ込んでいく。
 軽くその頬を槍が撫でるが、血を流すには至らない。ワンドによる暴虐と騎乗するバイデンの猛攻を的確に弾き、エルヴィンもまた激突に至る。
「堅き者、か……楽しませてくれような」
「俺達の底力を見て、後悔しないことだな!」
 攻めるバイデン、受けるエルヴィン。ここにまた、矛盾を決する打ち合いが幕を開ける。

(正面から、押し進め。槍など全部打ち払え――)
「クク、いいな小僧! 正面から、来るか!」
 義弘がメイスを乱雑に振るい、迫る槍を打ち払って踏み込む。飛び込むようにして放たれた大上段からの一撃は、確実にカルストに届き、返す刀と放たれたワンド達の猛攻を受け、距離を置く。
 配下の数のせいもあったとはいえ、未だ四体を擁すカルストの猛進を止めるには、彼一人では心許ない。だが、奇矯なのはカルストとて同じこと。彼を差し置き、後衛を貫きに行かなかったのは、配下とワンドへの絶対的信頼が故か。
「楽しませてくれるんだろう? もっともっともっと、もっとだ!」
「俺たちは、しぶといのが特長でな……最後まで立ち続けるのは、俺達だ」
 彼の回答に笑うカルストの頭上を、その時火の矢が閃き、落下する。思わずそれを打ち払う彼だったが、配下たちは十分に避けきれなかったと見え、大なり小なりダメージを被っているのは見て取れた。

「こちらが穴だらけになる前にワンドは丸焼きになりませんかね!」
「――――!!」
 ずずん。
 七海の放ったインドラの矢が戦場を覆い、配下達を射程に捉えて炎に包む。だが、フリーだったワンドの動きを完全に止めるには至らない。硬質な表皮にその矢を突き立てられたまま、しかし歩みを止めず七海へと、寧ろ、後衛達へと踏み込んでいく。
 後衛全てを射界に捉えることは無いにせよ。七海、麻衣の二人を巻き込んでその鼻先を振るったワンドは、彼らを大きく吹き飛ばし……その体勢のまま、動きを止める。
「芋虫の癖に、足が速いなんて……妬ましいわね」
 すんでのところで、というよりは一拍遅れはしたもののその動きを縛ったのは愛美による呪印である。
 本来なら配下、ないしカルスト側へ放たれるものを、即座に狙いを変えた慧眼は特筆に値する。だが、みしみしと音を立て、呪印に抵抗するワンドの様子からすれば、それが長続きするとは言い切れないことも明らかだ。

「全て視えています……誰一人として、逃しません」
 すう、とレイチェルが息を吸い込む。初手、最大の狙いは潰えた。仮に成功していたとして、今の状況が尚の事悪くなっていたかもしれない。
 だが、それがどうした。視えている相手は狙える相手ということ。狙える以上は外すつもりは無いということ。
 前衛が血を流して生み出した値千金の一瞬を使いこなせずして何が射手か。何が後衛か。

 エルヴィンの、そして麻衣の天使の歌が相乗し、戦場に癒しを送り確実な足場を固める。
 応じるようにバイデン達も自らについた傷を癒しにかかるが、所詮は自己修復の域を出ないシロモノだ。戦況の是非で言えば、後衛の危機がありながらも、リベリスタ達はわずかに、じわりと、勝利を呼びこもうとしていた。

●誰もが声を揃えた、その結末
「降りて来い、お前達戦闘種族は芋虫で轢き殺すなどと安易な手段で満足はしないだろう? ……敵を仕留める感触をその手で味わう気は無いのか?」
「ハッハ――解せんかリベリスタ! 我々とこのワンドは一心同体、一蓮托生の身よ! 道理の読めぬ者が、戦士の道を語るなよ!」
 ワンドの戦力は、脅威だ。リベリスタ一人でワンド、そしてバイデン一人の相乗効果を抑えこむには限界がある。だからこその、後衛の火力。
 ハーケインの焦りの混じった声に、しかしバイデンの声は鋭く貫くような言葉を返していた。
 ワンドと、カルスト配下の者達は一心同体の戦いを貫いている。それはさながら馬上格闘、馬すらも戦いに参入する特異性。騎士としての身を貫くハーケインにとって、これほど面倒で強力、戦いづらい相手もそうは居まい。
 回復力を超えて叩き込まれる攻撃に、焦りを感じないわけがない。

「おォらぁぁぁっ!」
「やるか、貴様ァ!」
 射手達の掃射をより多く受けていたワンドが、鎮座する槌のバイデンを支えきれず命を絶やす。とどめを放ったモノマの額を、バイデンの槌が強かに打ち付けるが、モノマは倒れない。
 まともに食らって無事なわけがない。そも、そんなものを受け止めきれるわけがない。
 押し返すように弾いたモノマの頭部、打ち込まれた位置から煙が吹き出し、吹き荒れる。
『最初からそこになかったかのように』、傷は既に癒えている。それどころか、全身をくまなくおおった傷が、無い。
「死ぬのは怖くねえ、って、言ったろうがァ!」
 バランスを崩したバイデンの腹部を、モノマの拳が撃ち貫く。内奥から爆ぜる一撃は、確かにバイデンを捉え――その動きを、沈黙させた。

「ははははははは! いいな、お前ら! 随分と粘るじゃあないか!」
 カルストの狂喜的な咆哮を前に、義弘が立ち続けられるのは――ある意味、奇跡だ。
 射手達の集中攻撃が或いはカルストの全力を削ぎ、ワンドの数を削っていなければ、ものの数十秒で相乗攻撃の前に沈んでいたかもしれない。
 そもそも、数の暴力の前では一人二人でブロック出来る相手なんかじゃなかったのだ。
 だから、義弘の役目は立ち続け、矛先を向けさせ、外堀を埋めることだけだ。
「侠気の盾を自称するだけの働き」は、今この一瞬、立ち続けることだけを信念に受け止め、或いは弾き飛ばして相手を確実に戦いに引きずり込んで追い込むこと。

「俺の前で他のヤツの心配たァ、舐めたコトするじゃねえかクソがぁぁぁぁぁーーッ!」
 エルヴィンと相対するバイデンは、護りに徹し、回復に手を伸ばすエルヴィンの姿を、単純に侮辱ととった。
 正面から受け止め切ることを主義としたのではない。護りながら癒すなど、まるで自分を見ていない。戦っているのは、自分ではないのかと。
 エルヴィンが被る猛攻は決して軽くはない。だが、彼が受け止めきれぬものではない。次の一射、次の一撃が確実にそれを打ち倒すと、信じて守り切るのだと。
 その状況に放り込まれたのは、綺沙羅が放り込んだ閃光弾。後を追うように、銃弾や矢が乱舞し、数秒を待たず、彼の応じたバイデン達の姿は死に体へと変化する。

「貴……っ様等ァ……」
「憤るなら、倒してみせろ。俺を、俺達を、な!」
 カルストの唸るような怒りに応じたのは、義弘の明確な挑発だった。
 自らを的にかけ続けることを目的としたその言葉は、却ってカルストを冷静にさせたなど、何たる皮肉だったろうか。
 手綱を握り、残ったワンドによって義弘へ刃とワンドの鼻面を向けたその状況下、打開したのは、モノマ。

「そんなんで二の足を踏んでる暇なんざねぇんだよっ! ぶっ飛ばしてやるぜっ!」
「口だけは活発ではないか……いいだろう、俺と貴様達と、終ぞその生死を分かつ時だということか!」
 カルストが吼える。モノマが拳を構え、射手達が一斉に構え、義弘がモノマに先んじて踏み込み、剣戟が炸裂する。

 ……数十秒を置いて、同地。
 リベリスタ達の損耗は、決して軽いものではなかった。現に、前衛を務めた者達と、一部の後衛は後退を余儀なくされる状況だ。
 だが、それでも彼らは、襲い来る脅威を迎撃した。勝利した。
 それだけが確かな事実。

「行きましょう、まだ終わってはいません」
 そんなレイチェルの言葉が、荒野に響く。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
 ワンドを利用した混乱戦術は、なかなか面白い案だとは思いました。
 ただ、カルストもそれなりに直感的な戦闘が出来た、ということでしょうか。
 実は纏められているよりも切り離されたほうが、ワンドは面倒な相手でした。結構賭けの要素の強い選択肢だったと思います。

 それでも皆さんは勝利しました。
 若干、被害が多かったですが十分な勝利想定内。
 休養の暇もありませんが、ご武運を。