●ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッーーーッ! くさい、きたない、このよのものとおもえない。 つまり、3Kの襲来なのである。 ●こんな悪には出会ったことがねえほどなァ────ッ 「どくタイプにはエスパータイプがこうかばつぐんですよね」 と、事務椅子をくるんと回し皆へ振り返った『歪曲芸師』名古屋・T・メルクリィ(nBNE000209)は携帯ゲーム機をパタンと閉じて。 「と言う訳で『三高平防疫強化施策2012』――略称:三防強2012。 夏の到来に伴う衛生状態の悪化や、関連エリューションやアザーバイド事件の増加を防ぐ為に、三高平市が独自に展開した衛生強化施策でございます。 そんなこんなでレッツ衛生改善! なのですぞ!」 言葉と共にモニターに映し出されたのは、どろどろの苔が生えたコンクリートに囲まれたどぶ川だった。 ……汚い。 物凄く、汚い。 水は濁って、何だかよく分からないものが浮いており、ゴミがぷかぷか浮いている。 それだけじゃない、周囲も不法投棄やポイ捨てのゴミだらけ。 明らかに、常識的に、どう考えても、臭いだろう。 うわぁ……。 「えぇと、更に士気を下げる様な映像をお見せしてしまうのですが」 と、次いで映し出されたのは。 どぶ川をずるずる、ドロドロ、巨大なヘドロの塊から、ヘドロの腕が二本付き出て、辺りを這いずり回っている。散乱するゴミをその体に付着させながら。 その周囲には、人の上半身程はあろう巨大な蛭が蠢いている。毒々しい色。気味の悪い粘液。 うわぁ。 うわぁ。 「こちら、ヘドロのE・エレメントと蛭のE・ビーストの討伐が皆々様に課せられたオーダーで御座います。 ……なんていうか、強いとかそんなん云々より視覚と嗅覚的なアレの方がアレというか……エリューションだけじゃなくってロケーションもスンゴイというか…… どぶ川自体は一番深くても太ももぐらいですね。明るさに関しましては問題ないのですが、ゴミやらコケやらで足場が不安定ですな。お気を付け下さいね。 え、えぇと、それから、銭湯台はこちらで出しますので……衛生改善の為! 世界の平和を護る為! が、頑張って下さいね皆々様ッ!!」 兎にも角にも、リベリスタはクールに去るぜ。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:ガンマ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年08月12日(日)22:32 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●くさす 一歩、一歩の毎に、あの匂いだ……どぶ川の。鼻を突くあの不快臭。 こいつはくせえッー!ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッーーーーッ!! こんな悪臭には出会ったことがねえほどになァーーーーッ 環境で悪臭になっただと?ちがうねッ!!こいつは生まれついての悪臭だッ! 「……」 と、『脳内で』椅子を蹴り飛ばしたのは『闇狩人』四門 零二(BNE001044)。 今回、『クサイ』はNGワード。言葉に出せば出す程、強くそう感じるようになる。その言葉を聞いている人までも。 (それがオレの――ジャスティス) ガスマスクを着けながら、そんな思考。 「事前に知っていたとはいえ、これは酷いな。幾らどぶ川の周辺とはいえ、これ程か……」 「今年もやってきたな、三防強が。まあ掃除ってのは大事だからな。しっかりと川掃除といこうじゃないか」 柳眉を顰めたメリア・ノスワルト(BNE003979)に、マスクの奥で『侠気の盾』祭 義弘(BNE000763)が呟く。それにしても、それにしても酷い臭いだ。眉根の皺が益々深くなる。 だが、これは三防強。耐えねばならぬのだ。 「相変わらず厳しい戦いね。三防強。このどぶ川はなんでここまで汚くなったの? 周辺住民は気にならなかったのかしら」 そりゃあオクサレ様も出るわよね、と『心に秘めた想い』日野原 M 祥子(BNE003389)。水上歩行で水の上を歩く彼女の姿は文字通り『完全武装』であった――釣りで使うオーバーオールめいた長靴、匂い対策として鼻の下にメンソール軟膏塗布、そして鼻と口をがっちりガードするちょっとお高いマスク、ゴーグルも付けて目に汚水が入らないように。 「息苦しいけどヘドロの臭いを吸い込むよりマシね……知ってる? においって粒子なのよ」 あたしは指一本ヘドロにまみれずキレイなままで帰って見せるわ。その目に秘めた覚悟は堅く、仲間達へオートキュアを施しながら。 「下水道の次はドブ川見学ダネ!」 艶蕗 伊丹(BNE003976)は元気一杯、ハイテンションに周囲を見渡している。ざぶ、ざぶ、と彼女の一歩がそんな音なのは、どぶ川を元気よく歩いているからだ。コンクリートの上は滑るし、どうせドロドロになる最初から、という考え。呼吸不要の力で臭いのも全く問題ない。 「ウー、ドロッドロダネ! 膝から下が機械でヨカッタ!」 「そういう問題じゃない気がするわ……」 「エ? ドユコト?」 「ううん……あとでちゃんと銭湯に行きましょうね」 「オー! 銭湯! 楽しみネー!」 若干引き攣り気味の笑みを浮かべた祥子に、ワクワクを隠しきれない伊丹。 「前みたいにLKK団が関わってないようだが……これでヘドロのエリューションと戦うのは二度目か」 「うわっ……このヘドロマン臭すぎ……? いやーんになっちゃうわね。 でも放っておいたらもっと酷い事になっちゃいそうね。誰かがやらなきゃいけないなら、私達がやるしかないな!」 暑いのでミニスカ&ノーパンノーブラというブレないエロスタイルな『虚実之車輪(おっぱいてんし)』シルフィア・イアリティッケ・カレード(BNE001082)に、嫌そ~に鼻を覆う『怪力乱神』霧島・神那(BNE000009)。 (でも無事に終わったら温泉にいけるしね、楽しみが増えるわ……ウヒヒ) 「なにニヤついてんの神那……( ゜∀゜)o彡選手権の時みたいにぶっかけは勘弁よ?」 「それなら後でシャンプーをかけてあげよう!」 一方で、『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)が吐く息は重々しい。 (ヘドロに蛭、こんな物を見て懐かしいなんて思うの、どうかしてるのかな……小さい頃、あいつらの所にいた時は日常生活の一部だったんだけど……) それにこの匂い。 あの頃は何も感じなかったのに、今は不快に感じるなんて。 「随分贅沢になっちゃったな……」 独り言ち、マスクの下で薄く笑う。自嘲の様に。 と、先頭を歩いていた零二がスッと仲間達にハンドサインを送った。 誰もが一斉に注視したその方向。 蠢く、エリューション。 「例えどの様な事態に巻き込まれようとも、巻き込まれた時点で対応せねばならないのがリベリスタだ」 ならば、場の環境に惑わされず任務を遂行するのみ。ナイフの切っ先を蠢くヘドロと蛭に突き付け、メリアは凛乎と言い放った。 「劣悪環境程度で、止められるとは思わない事だ……行くぞっ!」 「あぁ、清掃開始、だ」 メリア、零二、二つの声を切っ掛けに、戦いの火蓋が切って落とされる。 ●ファブりたい 「ヘドロが怖くてリベリスタが勤ま ッ……!? 喋るとクサイ!! モウ喋んない!!」 げほんげほんと咳き込む伊丹だったが、気を取り直してマナサイクル。 戦場が動き出す。 「さて……汚物は消毒だ!」 翼を広げると共にシルフィアの目付きが変わった。組み上げられる魔導式と共に、蒼白い電気がバヂリバヂリとスパークする。瞬間。 「唸れ雷鳴……ライトニング!」 翳す掌、炸裂したのは一条の稲妻。 戦場を奔り、敵を穿つ雷の光――それと共に大きく踏み出したのは、汚れきった水面を足場にした零二だった。 「往くぞ!」 ぶれる姿、生み出される残像。毒々しく巨大な蛭を、這いずるヘドロマンを同時に切り裂く鮮やかな剣閃。 ぐじゅる。ぐじゅる。それにしても見ているだけで不快感。アンジェリカは無表情のまま目を細め、どぶ川へと躊躇なく跳び込んだ。ヘドロマンがアンジェリカへと反応する。直後、それがヘドロの口から吐き出したのは想像を絶する程の悪臭を伴った毒の息だった。 「っ――……」 肉が焼かれる痛みに微か眉を顰めさせ、しかし。解き放つ全身のエネルギー。その呪力が顕すのは崩界の紅月、不気味な赤い光が有象無象を薙ぎ払う。 寸の間怯んだデカイヒル。されど数体がリベリスタの血を貪らんと躍り掛かって来た。 「それ、ホ~~ムランッ!!」 それらを宛ら野球の如く、漲る戦気を纏った神那がありったけのエネルギーを込めてパイルバンカーを発射した。荒々しい威力の儘に吐き出された杭は、蛭を貫きかっ飛ばす。 「怪力乱神霧島神那堂々参上、ってね! フハハハハ!!」 パイルバンカーをぐるんぐるんぶん回し、豪快な一笑。が、 「おい、右だ!!」 「え? っぎゃーー!?」 義弘が奔らせた声の直後、横合いから飛び掛かって来たヒルが神那の肌に喰らい付く。じゅる。じゅる。血を貪る嫌な音と共に、デカイヒルが少しずつ膨張してゆく。グロテスク。なんともなんとも、グロテスク…… ちょ、とってとってー!慌てる神那に「じっとしていろ」と、冷静な声で言い放ったのはメリアだった。 「では、始めるとしよう」 放たれた矢の如く、金の髪を靡かせて飛び出だし。 「此処は、お前達が居て良い場所ではない……我が剣を受けるが良い!」 ありとあらゆる物を足場に、少女騎士が放ったのは集中によって研ぎ澄ませたソードエアリアル。舞い、切り裂き、撹乱する。 跳躍し、元の後衛地へ――その瞬間、切り裂かれ不快そうな呻き声を上げたヘドロマンがヘドロボムをメリアへと投げ付ける! 「っ!」 直撃、とまではいかなかったものの、手痛い一撃。彼女だけではない、炸裂した毒は後衛の者達にまで降り注いだ。肌を焼く毒、蝕み巡る。 「大丈夫、すぐに治すわ!」 「オーライ、ミンナの回復、頑張るヨ!」 皆の痛み、皆を苛む脅威、それらを取り払うのが祥子と伊丹の役割。祥子が放った破魔の聖光の直後、伊丹が構えたのはガートルワンド。点滴のお時間。癒しの福音が戦場に響く。 それらは柔らかく、優しく、戦う者の傷と痛みを拭い去ってゆく。 彼ら回復係はパーティの生命線。倒れさせるわけにはいかない。 故に、義弘は立ち塞がる。侠気の鉄を構えて。 「潰す!」 大上段に掲げるメイスに込めるのは神聖な力。叩き下ろす。叩き潰す。魔落の鉄槌。 更に迸ったのは続けてアンジェリカが放ったバッドムーンフォークロアだった。彼女を始め、リベリスタ達の怒涛の攻撃にまた一つデカイヒルが気味の悪い悲鳴を上げて頽れる。 アンジェリカは立ちこめる悪臭に少しだけ顔色を悪くして、ふ、と息を吐いた。マスクをはぎ取って捨てる。マスク一枚でどうのこうのという次元の悪臭ではない。鼻の奥が痛い。そもそも息し辛いんだよね、マスクって。 と、一瞬だけ気が逸れた瞬間。飛び掛かって来たデカイヒルがアンジェリカの白い素肌に喰らい付いた。ぢりっと焼けるような痛み。噛み付かれた。血を吸われている。 しかしアンジェリカは平然と、その毒々しい見た目と手触りなデカイヒルを掴むや力を込めて引っ剥がす。だが力の限りアンジェリカに噛み付いていた為か、引き剥がした蛭ごと皮膚と肉まで毟り取られてしまった。大量の血が流れ出る。 ならば、補えば良いだけの話。 「悪いけど、ボクは君に喰い付く事に躊躇はないんだ……」 剥き出す鋭い牙。一切の躊躇いも無く、少女はどぶ水と気味の悪い粘液まみれな蛭に喰らい付いた。その体液を、命を貪った。 「食べられる物ならなんでも食べた、あの頃を思い出すよ、本当……」 口の周りを真っ赤に染めて、動かなくなった蛭をどぶ水の中に投げ捨てる。 「……っく、」 一方で、零二もまた喰らい付いた蛭を直ちに引き剥がした。流れ出た血がボタリボタリ、どぶ川の中に消えていく。 仲間の為に血を流す事は厭わない。 「……それに、支えてくれる仲間を信じてもいるな……!」 投げ捨てた蛭。それは伊丹のマジックアローがブチ抜いた。サムズアップ。 (ウーン、みんなのコト応援シタイけどファンブル怖いカラ……) えーっとえっとえっと。 \ミンナ頑張ってー!/ 喋るとくっさいから無音、そんなオーラを振りまいて。 「そんなに応援されちゃ、益々頑張らないとな」 流れ出る血は祥子のブレイクフィアーが癒してくれる。全員無事で事を為すことこそ何よりの勝利と零二は思う。 (青クサイ考えだろうが、ね) その身から戦気を爆発させ、ヘドロマンへと躍り掛かった。纏うのは破壊的なオーラ。繰り出すのは雪崩の如く圧倒的な猛撃。 「……オレ達が生みだしたもの。故に、オレ達が片をつける……!」 「消えるが良い!」 その死角より、鮮やかな空中武舞を放ったのはメリア。自分一人の力の限度は自分が一番理解している。故に、仲間との連携を第一に。 「思ったよりくっさ……ギャー!?』 怯んだヘドロマンが伸ばした手の先に居たのは神那、掴んでその身体を自らの身体の中に埋め込んでしまった。彼女を救おうと躍り掛かったリベリスタに対してはその毒まみれの拳を振るい、ぶっ飛ばす。 成程愚鈍だが、タフだ。 「こんなどぶ川で倒れて堪るか……!」 義弘は倒れる事を拒絶する。フェイト使用。精神的な意味でも肉体的な意味でも使用。そのまま大きく掲げたメイスでヘドロマンを強烈に打ち据えた。 吹き飛ばされたアンジェリカも、「それが何だ」という顔をして標的に走り寄る。至る所を足場に死角へと回り込み。 「君達のせいで色々思い出しちゃったよ……。責任とってよね……」 ハイアンドロウ。植えつけ、炸裂する死の爆弾。反動なんてクソ喰らえだ。飛び散ったヘドロが白い頬を伝う。敵が倒れるまで、何度でも。何度でも恐るべき爆弾を埋め付け続ける。 うん、単なる憂さ晴らし――それにあの頃のボクと違う、近所の子供に不快な思いさせたくないしね。 怒涛のラッシュに、ヘドロマンは動きが鈍ってきた。あと一息、決めてみせる。 零二とメリアのアイコンタクト。頷く。騎士少女が零二の肩を足場に大きく跳んだ。宙を舞った。 自身の今出せる力を全て出し切り、全力を尽くす。 騎士とは、苦難を乗り越えて尚その先の勝利を掴む者也。 「確かにお前達は強敵だが、我が騎士道に諦めという文字はない! はああぁぁぁっ!!」 渾身の幻影剣。 弱点を的確に切り裂き、撹乱する。 そこへ、間髪入れずに零二が大きく踏み込んで。 「……そこだっ!」 破壊的な気を込めた全力の猛撃。一溜まりも無く、細切れにされたヘドロマンはグズグズに溶けて消滅した―― ●お疲れ様でした ようやっと静寂が戻ったどぶ川一帯。シルフィアの服の胸元ボタンが飛んで何故かポロリがあったりしたがこれは全年齢の健全なシナリオなのでそれはさて置き。 「アハハ! みんなドロドロ! 散々だったネ!」 「やっぱり全身汚れちゃったわね」 「服はよく洗わないといけないな……」 元気一杯に嗤う伊丹に祥子は苦笑を浮かべ、義弘は「着替えを持って来ていて良かった」と溜息を吐く。見渡す誰も彼もが汚れきっている。 「神父様にもらった黒姫、ずくずくだよ、まったく……」 お気に入りの服が汚れた事にアンジェリカはご立腹。名古屋にクリーニング代も請求しておこう。 さて、そうときまれば早く銭湯に――行きたいが、その前に。 「小さなことでもできることから。それが三防強のジャスティス」 任務とは関係ないが、掃除だ。ゴミ袋を持った零二に、デッキブラシを手に持った祥子、ゴム手袋を装着するメリア。皆も手伝ってくれ、と。 「騎士とは、派手な事ばかりではなくこういう地道な活動が大事なんだ」 黙々、メリアはポイ捨てのゴミや不法投棄されている物をテキパキと片付けてゆく。祥子も水の流れを堰き止めているゴミを回収し、コンクリートのぬるぬるもデッキブラシでごしごし。 「勿論、ゴミは分別だ。これもジャスティス」 零二のサムズアップ。 掃除も一段落した頃、現場は随分と奇麗になっていた。 「さて、風呂だな。やっと一心地つける……」 「名古屋サン銭湯代出してクレルって言ってたシ、折角だから貸切予約シちゃおうネ!」 義弘、伊丹の通り。お風呂。待ちに待ったお風呂タイム。 「公共浴場に入るのは初めてね……」 羽の間に入ったヘドロとか洗うの大変、とシルフィアは息を吐く。便利なのは便利だが、洗わなくて済めばいいのにね、なんて。それから帰りに服を買おう。いつまでも手ブラ状態じゃお巡りさんのお世話になってしまう。 そんなこんなで銭湯では、 「ウッヘッヘ、悪臭がとれるまで帰さないぜぇ~」 神那とシルフィアはエロエロユリユリしていたがちょっと割愛、見せられないよ! 各々が各々、暖かい湯船に浸かってゆっくりのんびり。しっかり洗ってきっちりさっぱり。 生き返る心地がする、とは正にこの事。 仕事の後の安らぎに、誰しもが大きく息を吐いたのであった。 『了』 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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