●鉄と油に塗れた世界 がぁん。がぁん。広々とした空間に鉄のぶつかる音が響く。 海風の当たるその場所には一つの巨大な鉄の箱が鎮座していた。 海を渡る鉄の塊、船舶を造る造船所である。その場所は巨大な装置と鉄で組み上げられた通路、様々な資材で構成されている。 鉄、鉄、鉄。広がる鋼鉄の世界。そこは世界を繋ぐ流通の要の一つ。七つの海を回り貿易を行い、社会に利益と発展をもたらす橋頭堡だ。 そこを管理する一人の男がいる。 彼は今、頭を抱えていた。彼を悩ませているものは、ある事例。最近現場で多発する事故のためだ。 曰く、先ほどまで動いていた重機が動かなくなった。 曰く、鉄の配管が外れて落下してきた。 多数の事故事例が報告され、安全管理が問われている。だが彼も無能ではなく、あらゆる手を尽くした。安全確認を徹底し、整備も行い。普段の倍以上の回数のチェックをもってして対処している。 しかし、減らない。その悉くが機械に関わる事故だ。機械の事故は危険な事態になることが多く、このままでは営業の休止も視野に入れなくてはいけない。 彼は一人、胃を痛め頭を悩ませる。だが、その彼を見つめる視線があった。 ひとつ、ふたつ、みっつ、たくさん。 工場の配管の上。機材の上。キャットウォークの上。あっちにこっちに。 翼の生えた小鬼のような姿をした生き物達。彼らはこの手に入れた遊び場を堪能していた。 たくさんの機械。それは彼らの愛する玩具。 頭を悩ませてんてこ舞いの作業員達。それは彼らの見物先。 奇妙な同居人を収容したこの施設は、今日も動き続ける。 ●アークにて 「現場で働く男達はすべからく尊敬に値するファーザー達だ。そうだろ?」 アークのブリーフィングルーム。いつものように『駆ける黒猫』将門伸暁(nBNE000006)は集まったリベリスタ達に口を開く。 「今回の依頼は、湾岸の造船所。そこにちょっと妙な生き物が住んでしまってさ。このままだとより重大な事故が起きる可能性が高い。なんとかしてやってくれよ」 分かりやすいながらも漠然とした内容。続きを促すリベリスタ達に伸暁は言葉を続ける。 「今回の相手は機械に悪さする小鬼。仮に『グレムリン』と呼ぶとしよう。ほら、いるだろ? 空飛ぶ機械に悪さするとか、そういうこと言われてる奴。特性が似てるからな」 名前をつけるとき、妙にドヤ顔だったのが気になるがそれは置いておく。伸暁はポケットに捻じ込まれていたくしゃくしゃの資料をテーブルの上に放った。 「こいつらは個体はそこまで強いわけじゃない。ただ、機械に誤作動や故障を起こす能力を持ってるのさ。おかげで工場はてんやわんやだ」 資料の中に混じる、工場の見取り図。かなりの広さを誇る工場は、縦横無尽に走る作業用の通路……キャットウォークがあることを表わしている。追跡にはかなりの手間がかかるかもしれない。 説明少なに伸暁は席を立つ。彼は最後にリベリスタ達に、本日最高のドヤ顔で言ってのけた。 「数は十匹。きっちり始末つけてくれよ。まあ……一部大変な奴らもいるかもしれないけどね。そこはガッツでなんとかしてくれ。お前達の不屈のアイアンハート、信頼してるぜ」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:都 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年06月06日(月)22:11 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●鉄と油の大工場 「しゅ、俊介さん……見てください、船ですよ船。……大きいなぁ」 「落ち着けよ、ケイ……まあ確かにでかいけどさ」 湾岸地域。多数の工場があり経済のポイントとなっている。 ここで作られる物が世界を巡り、社会を動かし、経済を回す。無骨なこの地域が生活の一端を支えている。 今回訪れた造船所もそう。海を渡る足となり、世界中に資材等を運ぶ、重要な役所だ。 当然そこで建造される船も、建造中とはいえ圧倒的な積載量を生み出す巨体を誇っている。『コドモドラゴン』四鏡 ケイ(BNE000068)が思わず驚きの声を漏らすのも仕方のない事かもしれない。 声を掛けられた『Gimmick Knife』霧島 俊介(BNE000082)も案外満更でもなさそうだ。やはり巨大な機械とは男の子の心に何かを訴えかけるのだろう。 「感心するのはいいけれど、早く終わらせるわよ。時間は有限なのだから」 彼らを促しつつ、見取り図やランプ等の資料や道具を皆へと配るは『運命狂』宵咲 氷璃(BNE002401)。資料にはダクトや配管等、彼女達が事前に調べ得た情報が書き込まれている。 「がんばるですよー」 『クレセントムーン』蜜花 天火(BNE002058)が、可愛らしく気合を入れる。彼女は始めて行う仕事らしく、特別意識することもあるのだろう。 各自の準備を整え、造船所の入口へと近づいた時――それは起こる。 「うわ、っとっと……!?」 突然『鉄腕ガキ大将』鯨塚 モヨタ(BNE000872)が何かに引っ張られたように体勢を崩す。いや、引っ張られたのではない。突如彼の肉体に多大な重量がかかったのだ。 彼を邪魔したのは、通常なら持ち主を裏切る事は無い彼自身の左腕。革醒し新たに構成された巨大な左腕は普段ならばモヨタを助ける頼りになる存在だ。 だが、現在その腕は機能を停止し、彼の障害となっていた。動かないわけではないが、パワーアシストのような物が動作せず巨大な重量物へ変化したのだ。 「参ったな……聞いてたから準備してきたけど、かなり邪魔だぜ? これ」 今回の相手は機械に不具合を発生させる。聞いていたからこそモヨタも普段使いの剣ではなく、脚部に装甲のような武具を身に着けていたのだが。実際障害は、かなり負担となるだろう。 「そうねぇ。自分もちょっと、いや、かなりピリピリきてるわねぇ」 同じく頸部や骨格が機械へと置き換わっている『メタルフィリア』ステイシー・スペイシー(BNE001776)も、身体の各部のチェックを行う。 「骨も各部がキリキリと不協和音。水銀のお胸もゆらゆら、全身素敵に軋んで、あぁぁん!」 艶かしく身悶えしつつ、状況を伝えるステイシー。あの、すいません。お子様が少なからず居るのですが。 「うーん、こっちも駄目な感じですね」 『Trompe-l'?il』歪 ぐるぐ(BNE000001)ががちゃがちゃと持ち込んだライフルを操作するが、上手く動作しない。機構そのものが固まったように稼動しないのだ。 不具合を各自が確認した結果、不都合はあるが決して任務不能という事は無さそうだった。 ――が。ここに、明らかに危険な状態が一人いた。 「――は……あ。ぜぇ、はぁ……」 ぜえぜえと吐息も荒く、身体は酸素を求めても、肺がさほどの受入れを行わない。 そう、『高嶺の鋼鉄令嬢』大御堂 彩花(BNE000609)である。骨格、筋肉、特に心肺機能が機械化している彼女にとって尋常ではない負担が発生していたのだ。 骨格だけならばステイシーも同じなのだが、この場合問題は心肺機能。酸素を万全に取り入れず、血液は酸素を適切に送らない。彼女の動作は誰が見ても万全の性能を失していた。 「お、おい……大丈夫か?」 酷い状態の彩花に、放って置くわけにもいかず俊介が声を掛ける。 「だ、大丈夫ですわ……この程度、げほっ、わたくしがこの程度のことで、けほんっ、どうこうなるなど、ありませんわ……こふっ!」 明らかにどうこうなってます、お嬢様。さすがにこの状態には同じく悪影響を受けてる者ですらドン引きするレベルだ。 だが慈愛溢れる人は必ずいるもので、そこに手を差し伸べる人、一人。 「苦しそうね。叩けば直るでしょう? ――さあ、歯を食い縛りなさい」 「ちょ、やめてやれよぉ! おいらだって叩かれたくねーよ!」 前言撤回。一片の容赦もない氷璃のお言葉。さぞ当然の事を行う様に言ってのける彼女に他人事ではないモヨタが反論する。 「心配ない、ですわ……終わらせる方が、げほっ、早いですわ」 気丈にも造船所へと向けて歩を進め始める彩花。彼女に引っ張られるように、皆も足を運んだ。 錆付いた音を立て、造船所の扉が開く。 そこは、日中の活動を終えた金属の要塞。機械と機械が組み合わる人工の砦。 「ぱぱさん達を困らせる悪戯っ子さんをこらしめるのです」 天火が決意の声を上げ、皆も心のスイッチを切り替える。 その様子を見守る視線があった。天井から、機械上から、ダクトから。彼らを見張る、二十の瞳。 深夜のおにごっこ、開幕。 ●ひみつきち攻防戦 「蝙蝠さん達、よろしくですよー」 天火の号令によって、複数の蝙蝠達が夜の工場へと羽ばたく。 五感を共有された蝙蝠達はその感覚にて、工場内を調べ始める。ほどなく数匹の小鬼達が捉えられた。 「あそこなのです」 「ええ、そのようね」 天花が指差した先は配管の上。氷璃は手早く魔力を練り上げ、配管上へと撃ち放った。 それは寸分違わず命中し、人ならざる声を上げて配管上から落下してくる異形の生物。 肌は滑やかで、まるで両生類のよう。皮膜を持った翼と大きな瞳に尖った耳。創作や伝承で伝えられるグレムリンの姿にとてもよく酷似していた。 「うへー、本当にグレムリンってこんな感じなんだなー」 「変な形なのです」 モヨタが能天気な感想を述べ、天火も同じく興味深々にその姿を眺めていた。少年少女の好奇心は、これらを見過ごせないのだろう。 「あの子達、今の一撃で警戒したみたいね。逃げ隠れし始めたわ」 一方、氷璃は冷静に現状を纏める。今の攻撃で完全にこちらを敵として認識しただろう。彼らの反撃が始まるのだ。 「そうだなー、気合入れないとな!」 言葉勇ましく、モヨタが気合を入れなおす。が、一部の意思の統一は行われていないようで、他の事に興味津々な者もいた。 腕を引き奥へと進む、モヨタを見つめるぐるぐ。動きの不自由な彼に対して、彼女の悪戯心は我慢が利かなかった。 「ぐるぐさんに考えがありますよ。罠を張るです。でもその前に――」 ぐるぐの瞳がキラリと光る。後ろ手に隠した部位からきゅぽん、と響く音をモヨタの耳は聞き逃さなかった。 「ちょ、ちょっとまてよ、ぐるぐ。な? そんな場合じゃないだろ?」 「う~ふ~ふ~……」 鉄腕を持て余し動きの鈍いモヨタに満面の笑みを浮かべ、じりじりと近づくぐるぐ。手に握られているのは一本のマジック…… ――広い造船所にモヨタの絶叫が響いた。悪戯好きの小鬼は仲間にもいたのだ。 「……今誰か叫んだか?」 「さあ……あっちの班じゃないですか?」 俊介が首を傾げ、ケイが相槌を打つ。彼らは現在、造船所の奥へ歩を進めている。 二手に分かれ、手分けして子鬼達を掃討することにしたのだ。最ももう片方のチームには珍事が起きているようだが。 「じゃあこっちはこっちで始めようかしらぁん?」 ステイシーが身体を解し、準備を整える。彩花もそれに呼応し、顔を見合わせ頷く。 「機械の部分が、はぁ……おかしくて、辛いですわ」 二人は地面に蹲り、大きな声で機械部位の不具合を喧伝し始めた。より大きく、回りじゅうに伝わるように。 彼女達の言葉が通じているかは謎だが、その様子に小鬼が一匹、また一匹と集まり始める。 元来好奇心の強い彼らがこの状況を見て、様子を見ない事はなかなか無い。 蹲ったまま動かない二人に、距離を縮める小鬼達。やがて、その手が触れんとするような位置になった時、ステイシーが動く。 「あらあら、こんな近くまで気になって来ちゃうなんてねぇ!」 鉄槌一閃。ステイシーが懐に抱え込んでいた花束の姿を模した鉄槌が、無慈悲に小鬼を打ち付けた。 ぐえ、と声を上げ小鬼は地面に伏し、動かなくなる。その光景に他の小鬼は即座に散り散りに逃げた。自らの安全を確保しようとして走り出したのだ。 「逃がしま、せんわよっ……!」 動きは鈍いがその技は、この程度の相手に衰え等見せない。トンファーを構えた彩花の脚が風を切り裂き、逃げる小鬼を背後から斬り伏した。 だが彼らも黙ってやられはしない。難を逃れた小鬼がギィィ! と鳴く。その瞬間、タラップの上部にある配管のボルトが不意に外れ、落下してきた。 落下点にいるは囮たる二人。彼女達も攻撃に転じた瞬間である故、万全な体勢を整える事は出来ず、直撃は免れぬと思われた。 だがそれに備えていた者もいる。咄嗟に彼女達と配管の間に入り込み、身を挺してそれを防いだ者がいた。 「痛ってぇ! こんの……ガキ共ぉ、やんちゃが過ぎるだろ!」 配管の直撃を受けた俊介が頭を抑え、蹲る。高い重量を誇る鉄塊、直撃すればただでは済まないその一撃。 しかし彼は癒しの力を持つ為、蹲りつつも自らを癒し始め、致命的ではない。また、逃げる小鬼達も逃れることは出来なかった。 「つ、捕まえましたよ……!」 進路に先回りし、気配無く潜んでいたケイが小鬼達を縛り上げていた。 足元に転がるスケッチブックに記述された言葉は『さっさと退治しちゃって下さいよ!』……事前に書いていたのだろうか、これは。 「ごめんなさいねぇ? 今片付けるわぁん」 手際良く小鬼達に止めを刺しにかかる。順に処理される小鬼だが、運良く抜け出し逃げ出す者もいた。 しかし、彼女は。大御堂彩花はそれを許さない。 「この……逃がしません、わ!」 逃げる小鬼を全力疾走で追撃し、燃える拳を叩き付けた。激しくバウンドし、動かなくなる小鬼。だが、同時に彩花も前のめりに倒れる。 「ぜ、はぁ……最後に頼れるのはやはり、自分自身の力……げほっ、ですわ……」 呼吸機能が厳しい時に疾走した為の見事な酸欠である。しかしその気迫は誰もが認める所だろう。 「ふっふっふ、完璧な罠ですね」 ぐるぐは物陰に隠れつつ様子を伺う。視線の先には美味しそうな匂いのハンバーガー。 彼女の考えとは、これだ。食べ物によって小鬼を釣り、捕縛する作戦。 彼女の作戦は間違ってはいない。悪戯者の小鬼はまるで子供。美味しそうな匂いがする物に釣られる事はある。 ただ、彼女にとって一つの誤算があるとしたら。美味しそうな匂いの発生源。 ――がぶり。 「ぎゃー!?」 いきなり齧りつかれたぐるぐが思わず叫ぶ。そう、美味しそうな匂いなのは眼前のハンバーガーだけではない。お菓子のような甘い香りをつけたぐるぐもなのだ。 「ぐるぐさんは食べられないですよー、離すです!」 手にしたライフルで小鬼を殴打するぐるぐ。機構が停止していても、打撃武器としてなら運用出来る。銃にはこんな使い方もある……という奴である。 逃げ回る小鬼を追い掛け回し、縛り上げるぐるぐ。何度かこの様なやり取りを繰り返し、小鬼の数は残り少なくなっていた。 「大分数も減ったわね。あと一、二という所かしら」 再度合流した氷璃が問う。罠と連携により彼らを騙し、追い詰め、こちらの班も見事に数を削っていた。 「そうですね、大体それぐらい……!」 答えようとした天火の耳がぴくりと動き、咄嗟に二人の裾を引っ張った。 合流時の一瞬の油断。そのタイミングを狙った不意打ちだが、天火の野性の勘は本能的に見破った。 ごきん、と音を立て稼動する重機。鉄骨を吊り下げる巨大なクレーンが、彼らのいた場所目掛けて振り下ろされる。 「おっと、まだまだ甘いですよー!」 銃が動かないとはいえ、ぐるぐの技はある。極限まで集中を高めた彼女の放った魔力は正確にクレーンの関節を打ち抜いた。 駆動部を崩された機械は、ぎしりと音を立て、その鉄塊は振り下ろされることなく稼動を停止する。 重機の上。さすがに止められる事を予想しなかった小鬼達は泡を喰い逃げようとした。 「あら、逃がさないわよ」 「すぱーん、です!」 重機が動けば小鬼がいる。それを予見していた氷璃の魔力が、天火の風裂く脚技が、小鬼達を地面に強かに叩きつけた。 小鬼にもはや後なし。慌てて造船所から逃げ出そうと扉へと我先にと逃げ出す。 だが、彼らにとって不運があるとしたら。運命は複雑に絡み合い結果を作る、というわけで。 「逃げようとしてるんじゃねえよー」 扉の先、偶然にもモヨタがいた事。目の前に目標が転がり込んできたモヨタは半ば反射的に、全力のサッカーボールキックで小鬼達を蹴り飛ばした。 まさにボールのようにバウンドし、ぴくりとも動かなくなる小鬼。そして憮然とした顔のモヨタ。 ――彼の手にはタオル。そして顔にはぐるぐに描かれた、洗ってもなかなか落ちない落書き。 運命の流れとはまさに複雑に絡み合うわけで……。 ●遊びの後 「はぁ……ようやく落ち着きましたわ」 彩花が深く溜息をつき、その肺に空気を取り入れる。小鬼達がいなくなったことにより、メタルフレームの彼女達は無事に元通りの身体機能を取り戻し、謳歌していた。 「やっぱり動作は適切なのが一番ねぇん。負担が少ないもの」 ステイシーも随分と楽になったようだ。なんだかんだ言って、仕事に入った時より調子が良く見えるぐらいである。 「遊びは必ず終わるものよ。終わったらお家に帰るだけだわ」 「そうですねー。皆さんもお家にお帰りなのです」 氷璃が全て終わりとばかりに呟き、天火が使役した蝙蝠達の支配を解き、元へと戻す。やや過激な遊びではあったが、遊びは必ず終わるものなのだ。 少々痛い思いをする事もある。楽しいだけじゃない事もある。それも全て含めて遊び。 「ああ痛てぇ。さすがに落下物直撃は洒落になってないぜ」 「怪我は無事みたいだしいいじゃないですか……。皆さんもお疲れ様です」 配管による怪我も大体治した俊介と、どこか気遣うようなケイ。メンバーに向けて労いの言葉をかける。 だが一つだけ、解決していない問題が残っていた。 「ぐるぐ、さっきはよくも落書きしてくれたよなー」 「? なんのことですか?」 恨みがましそうなモヨタと、惚けるぐるぐ。この問題は帰るまで続きそうだ。 「そこ動くなよ。今仕返ししてやるからなー」 「動くなと言われて動かない人はいないのです」 「あ、こら、飛んで逃げるなよー! 待てー!」 追うモヨタと、逃げるぐるぐ。二人の矯正が夜の港湾に響いた。 これには退治された小鬼も呆れるだろう。自分達に負けず劣らず悪戯好きで遊び好きな相手がいたのだから。 なんとなく小鬼のギャア、という呆れた鳴き声が聞こえた気がした。 小鬼が鳴くからかーえろ。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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