●絆を奪うもの 鎖が絡みつく。 絡み付くのは破界器に。共に苦楽を味わい、共に修行し、共に在った己の武器。 人外相手に、革醒者同士相手に、己の正義を語るために振るう武器。 絡みついた鎖が破界器を冷たい鉄に変える。共に在った熱い思い出が、失われていくように。 やがてその破界器を掴んでいた革醒者も、熱を失うように崩れ落ちる。破界器と共にあった思い出が消え、戦う理由を奪われたように。 ●アーク。 「ニジマルサンマル。ブリーフィングを開始します」 録音機にスイッチを入れて、資料を開く。 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は集まったリベリスタたちの顔を見ながらこれから起こるであろう神秘の説明を始めた。 「目的はエリューション・フォース一体の打破です」 和泉の説明と共に、地図上に赤い点が示される。エリューションの出る場所だ。山奥の庵。おそらく鍛冶場だったのだろう。それらしい道具がちらほらと見える。 「このエリューション・フォースは戦闘の気配を察すると、皆さんの破界器に鎖を絡み付けてきます。同時に破界器とその持ち主に精神攻撃を仕掛けてきます」 「精神攻撃?」 「はい。破界器と持ち主の絆を壊すような幻覚を見せ、それにより戦意を奪うようです。 心を折られたリベリスタは肉体的には無事ですが、精神的に傷を負ってしまうようで」 「ああ、五日ほどな」 「? ええ、まぁそのぐらいです」 メタな突っ込みに戸惑う和泉。気にせず先を進めた。 「このエリューションの持つ能力はこれだけです。破界器との絆を奪われなければ、一振りでその命を奪うことができるでしょう」 「奪われない為にはどうすればいいんだ?」 「強く思ってください。自分と破界器との思い出を。その思いが深ければ、絆は壊されることはないでしょう」 リベリスタ達は己の破界器を思い、笑みを浮かべた。今まで共に過ごしてきたモノとの絆を問われるのだ。それなら、負けるはずがない。そんな笑み。 リベリスタ達はそのままブリーフィングルームを出る。自身と破界器の絆の為、他人を助けることはできない。だが、この仲間なら大丈夫だ、と確信して。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:どくどく | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年08月11日(土)22:58 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
● 『絡繰義手・蜂羽堕』……名前の由来は飛ぶ蜂を落としたことにあるという。 『不誉れの弓』那須野・与市(BNE002759)はその弓との思い出を思い出していた。自分の弓は当たらない。蜂羽堕なんて名前、自分には重すぎる。それでもその弓を手放すことはできなかった。 (わしが革醒する前からの付き合いの弓じゃしな……) 「破界器との絆? 思い出? んなもんはねー!」 『世紀末ハルバードマスター』小崎・岬(BNE002119)の手には禍々しい斧槍。その中央には、瞳のような赤い宝玉が埋め込まれている。 「未だ一度もちゃんと目ぇ覚めたことすらねーんだぜー、アンタレス」 その破界器の名は、アンタレス。岬を神秘の世界に連れ込んだ、フィクサードの遺品。その破界器は岬の怒りなど我が物顔で、静かに鎮座している。 物言わぬ、冷たい鉄のように。 『自称・雷音の夫』鬼蔭 虎鐵(BNE000034)の手には一振りの刀。銘は『鬼影兼久』。ただの刀を破界器として鍛えなおしたものである。 おもえば十年以上もこの刀を握ってきた。どんな修羅場も、どんな相手でも。瞳を閉じれば、その思い出が思い浮かぶ。 「この鎖で破界器との思い出を奪うでござるか!」 自らの相棒に絡みつく鎖。それを睨みながら、虎鐵は心を強く保つ。 「破界器との絆……か」 安羅上・廻斗(BNE003739)は自らの手にある黒と赤の刃を見た。それぞれ『Crime』と『Punishment』と命名したそれを、強く握り締める。 脳裏に浮かぶのは、あの日守れなかった者。そして戦う理由とも言うべきあの日受けた喪失感。 「俺とこいつらとの繋がりは、『絆』なんて生易しいものじゃない」 自らの心に刻むように、廻斗は口を開く。 自らの罪と罰を。 『11人の鬼』……半円のヘッドレスタンブリンの様な形状をした武器だ。形状が特殊ゆえに扱うには訓練が必要だ。 「リベリスタとしての一歩目は、この子だ」 元フィクサード。洗脳されて悪事に加担していた『夜翔け鳩』犬束・うさぎ(BNE000189)にとって、自らの意思で選んだ破界器はこれが初めてだ。臆病であるうさぎが、戦場で身を護るものとして選んだ相棒。 リベリスタとしての一歩目。それを静かに思い出す。 「……あなたとつきあい始めてから、二ヶ月か」 三十センチ大の正十二面体を手にして『ソリッドガール』アンナ・クロストン(BNE001816)の思考は虚に落ちる。 マジェスティック・コア。かつて別チャンネルからやってきた機竜空母との戦い。その最終決戦でこの世界に馴染み、破界器となったモノ。 (そうね。正直距離感を掴みかねている所はある、わよね) 「出会いはただアークからの支給品だったね」 二振りのナイフ――『ロリコン』『ショタコン』と命名されたそれを『つぶつぶ』 津布理 瞑(BNE003104)は握り締める。いつも一緒にいるナイフを回転させながら、思い出を頭に浮かべる。 「なんて事ない出会いだけど、一緒に成長した事実は変わらないよ」 落ちる感覚。浮遊感ではなく、何処ともない場所に強制的に引っ張られる感覚。 (……「ここにいる」ことすら曖昧になる感覚。そうか、私たちは破界器の思い出を食らうエリューションと出会い――) 『レーテイア』彩歌・D・ヴェイル(BNE000877)はそんな感覚の中、自らに起きたことを思い出していた。 自らの腕に填めている『論理演算機甲「オルガノン」』を見た。それはリベリスタとして共に戦ってきた存在。 その絆と思い出が、少しずつ奪われていく。 ● 革醒して、初めて弓を持ったとき。 近くにいる蜂の羽根の動きが、全て見て取れた。四枚の羽根の動き。それがまるで止まっているかのように。それは視覚だけではない。頭脳のイメージ能力も上昇していた。 イメージするままに与市は、弓を放つ。四枚の羽根が打ち抜かれ、蜂は地に堕ちる。 ――蜂羽堕。 その弓の銘はその時に決まる。与市はその成果を弓の素晴らしさと思ってしまった。だが、 「ゆっくりに見え狙った羽を全て落としきった……それを全てお主のおかげにしてしまった。すまなかったのじゃ……」 謝らなければならない。与市は気付いていながら、ずっと避けていた事。 「結局わしは武器に。己の道具に依存しきりじゃったわけじゃな」 自嘲気味に微笑む。依存した武器の絆が奪われようとする今、その喪失感に与市は膝をつく。 アンタレスとの出会いは、非常識的なものだった。死に掛けのフィクサードに、理由を告げられることもなく授けられたのである。 それ以降、物言わぬ斧槍と共に神秘の世界を駆け抜けてきたのだが……。 「少しは何とか言えよなー」 ハルバードは何も言わず眠ってる。 しかしそんな絆でも容赦なく鎖は絡みつき、その心を侵食していく。先ずは出会いの思い出を―― 「ボクはあの黒尽くめの人に託されたから、アンタレスを使ってる訳じゃないんだよー」 ハルバードを構えて岬は口を開く。幾度となく振りかぶった斧槍は手に馴染む。その重量も、グリップの感覚も、もう忘れることのできないもの。 「初めて会った神秘だからとか、目覚めたらすごい力を持っているからだとかじゃない。 経緯とか理屈じゃないんだ。単純にさ、思い描いたからなんだよー」 過去でもない。理由でもない。それ以外の想いで岬は破界器を握った。 「ボクがアンタレスを振るう所を、一度思い描いたからさー」 その名は未来。駆け上った先にあるかもしれない理想の一つ。それを思い描いたが故に、少女は破界器と共に進む。 刀を抜く。斬る。戻す。この三動作を何度も繰り返しただろうか。 老若男女構わず斬ってきた。あらゆるモノを壊してきた。強いものもいた。弱いものもいた。斬るに値するものもいた。値しないクズもいた。それら全てを、鬼影兼久は斬ってきた。 「ゆえにこの刀はずっと拙者を見て来たのでござる」 武器として友として。 「ゆえにこの刀は拙者の魂なのでござる」 心のあり方として武のあり方として。 故に―― 「この刀はなぁ……俺そのものなんだよ!」 あの日の光景を忘れない。 守れる場所にいたのに守れなかった。目の前で無残に殺される大事な人。 漆黒の剣は罪の剣。大切なものを。かけがえの無い存在を。無二の存在を失った弱い自分への罪。 あの日の慟哭を忘れない。 守れなかった者に対する罪。それが与えた罰。心を引き裂かれるほどの苦しみと、喉が張り裂けそうなほどの絶叫。その時流れた血の色と同じ赤の剣。 朱色の剣は罰の剣。この命尽きるその日まで戦い続け、殺し続け、そして死ぬ。罪を背負った自分への罰。 それが廻斗の戦う理由。この二本の破界器は、その象徴。一匹でも多くエリューションを葬り、戦いの中で力尽きる。 だから。 「どちらが欠けても、俺は成り立たない」 だから。 「この剣は……俺の罪と罰は、容易く失えるようなものではない!」 「実の所、今まで使った事の無い得物が欲しかっただけです」 うさぎが『11人の鬼』を手にした理由は、そんなものだった。 形状が一般的でないために破界器とするのに時間がかかり、さらにはその訓練にも時間がかかった。手斧というよりは暗殺器に近いその破界器は、その扱いにかなり苦労させられた。 扱いやすい武器を選ぶこともできた。ナイフや銃はフィクサード時代にもよく使っていたし、そのため身体に馴染んでいた武器でもある。 だからこそ、過去との決別のためにこの破界器を選んだ。 その実感を得るための破界器。うさぎが『11人の鬼』を手にした理由は、それだった。自分自身に対する線引きのため。それは逃避だったのかもしれない。 「……けどね。それからはずっと一緒でした」 「だってそうでしょう。私は普通よ。元々神秘にも裏の世界にも何の縁も無い只の学生」 アンナ・クロストンはいわゆる『普通の人』である。裏社会の中を生きていたわけでもなく、復讐に身を焦がすわけでもない。いわゆる普通の生活をして、なぜか革醒したただの学生。それが彼女だ。 「それがこんなトンデモなの貰っちゃって。分不相応ったら無い」 こんなトンデモ、と呼ばれたマジェスティックコアを見る。とあるアザーバイドから授けられた十二面体の神秘。本当に私で良いのか、って思った事はある。 (例えばこれが他に人に手渡れば……私より多くの人を救えるかもしれない) そう思うこともあった。臆病な自分よりも、もっと適した人がいるのではないだろうか。 「……でも、もし、私があなたを持ち続ける資格があるとしたら」 だがそれは仮定。今現実としてマジェスティック・コアはこの手にある。その意味は、アンナが決めること。 「私はあなたを誰かを生かす為に使いたい」 「武器達との絆は確かに存在はあるかもしれない」 奪われ行く何かを感じながら、瞑はそう呟いた。 (でも、うちはそんな事に今迄一度も目を向けなかった) 武器との絆などすぐに思い出せることはなかった。あるのはただ、この武器を使って誰かを傷つけていることだけ。 (自分の腕を切った事もあったね) 人を愛する鬼との戦い。あの時は痛みも無く、頭の中真っ白で何もわからなくなった。 確かに思い出は少ないかもしれない。共に歩んだ時間が短く、破界器をただの道具として扱ってきたこともあるかもしれない。 それでも瞑は今『ロリコン』と『ショタコン』と共にある。その事実を、 「それでも絆が弱いなら仕方がないなんて諦められるわけが無いんだ」 革醒者として新米だった彩歌は、自身の補助となる物が必要だった。神経と破界器をより深くリンクさせ、主演算装置たる自分と深く繋がるように戦闘のたびに改良し。 「で、なんて名前をつけるんだ?」 無銘の手甲。名称なんて意味はない。だが、名づけることに意味はある。それは破界器に求めるもの。私は何を求めるのか? 「答えというものは、一足飛びには得られないものだと知っている」 だから、いつか共に真理(こたえ)に至れるように、 「オルガノン」 古代ギリシアの哲学者が執筆した論理書。その意味は『真実を識るための道具』――幾多の弟子により編纂され、真理を蓄積してきた道具。それは戦いのたびに改良を重ねたこの手甲にも似て。 「論理演算機甲『オルガノン』起動! 証明せよ。『私がここにいること』を!」 ● (絆が無くなってしまったのなら、もう一度作ろうと思うのじゃ) 与市は心虚ろに山の中を見る。そこに飛ぶ一匹の蜂を瞳に捕らえる。義手から弓を展開し、弓を番える。 風、湿気、重力、足場の揺れ、矢の重さ、蜂の動き、弓の軌道……ただ無心になった与市はその全てが頭にイメージできる。 「あのときの奇跡、わしとこの蜂羽堕が起こして見せるのじゃ」 放たれた矢は静かに。真っ直ぐに。 与市と蜂羽堕の絆を示すように、矢は蜂の羽根を落とした。 「ボクはボクが進み、手を伸ばし掴み取って振るって伝説を作るんだ」 岬は侵食する鎖に思い出を奪われながら、それでも主張を続ける。 「正直エリューションとかよく分かんねー。興味があるのはただ一点、アンタレスへ向かう為に必要な経験。それになるってことだけだよー」 それは絆ではなく、思い出でもなく、ただ岬本人の主張。 「こっちは急いでるんだ。先が長いかも判んないんだからさー!」 物言わぬ冷たいアンタレスが答えないなら、こちらから会いに行こう。その頂は遠いけど、そこに至る為には足を止めないという主張。それもまた、武器に対する思い。 その思いの強さに、鎖は静かに崩れていく。 義理の息子と娘と出会い、そして仲間と出会うことで虎鐵の心は穏やかになる。鬼神の如き剣捌きはなりを潜め、鬼影兼久の切っ先は悪人やエリューションのみに向けられる。 この幸せは誰にも壊させない。オレとコイツは一心同体。故にコイツは皆を護るための刀。 「俺が俺であるために、こんな攻撃なんかには負けられないんだよ」 閉じていた片目を開く。いつものござる口調は消え去り、オレンジと青の瞳が真っ直ぐに絆を奪う鎖を見据えた。十数年繰り返してきた動作で鬼影兼久の柄に手をかけ、 「俺の道を貫き通す為に、お前を斬り伏せる!」 一閃。 結果など確かめるまでもない。切れた鎖が地面に落ちる音が、耳に響いた。 「確かに忘れてしまえば俺は楽になるのかも知れない」 罪と罰。自らの罪過につぶされる人間は少なくない。 「だが、これを失えば、俺には何も残らない。何も無い只の抜け殻になってしまう」 廻斗は大切な人を守れなかったあの瞬間を思い出す。 それはこの赤と黒の刃を見るたびに頭に浮かぶ彼の原点。廻斗を廻斗としている心の風景。命尽きるその日まで、罪と罰を背負うと決めた一人の革醒者の始まりの風景。二対の剣はその象徴。 「……こんな鎖で!」 『Crime』に絡みつく鎖が震える。 「この程度の侵蝕で!」 『Punishment』に絡みつく鎖が崩れ行く。 「あいつを失った痛みを忘れられるものか!」 廻斗の慟哭は、エリューションの精神攻撃を跳ね除ける。 胸の痛みは、確かにそこにあった。 うさぎは『11人の鬼』の刃に描かれた文字をなぞる。 喜怒哀楽好悪愛欲尊侮恐。 嬉しい時、腹が立った時、哀しんだ時、楽しんだ時、好ましい人嫌いな人に相対した時、愛に欲望に悩んだ時、圧倒された時、失望した時、心底怖かった時。 あらゆる経験があった。その経験全ては、この破界器と共に歩んできた。うさぎというリベリスタは、いつだってこの破界器を握り締めて前に進んでいた。 そしてこれからも握っていくのだろう。うさぎがリベリスタとして生きていく為に。うさぎがうさぎである為に。 まだ何も刻んでいない涙滴型のナイフを手にする。作りてに『好きな文字を入れろ』といわれた『12人目』と呼ばれる破界器。 「私はこれに『絆』と入れる」 絆を奪おうとする鎖に、刃を突き立てる。強き意志。強き一打。それが鎖をゆるがせる。 「これは私に取っての杖で、支えで、蜘蛛の糸で、そしてやっぱり……前を切り開く為の武器だ!」 「私は普通の人間だ」 改めて言おう。アンナ・クロストンはいわゆる『普通の人』である。 「でも、だからこそ。私にとっての当たり前を無くしたくない。 死人が出るのは嫌な事だ。敵でも味方でも、出来れば皆、生きていた方が良い」 それは神秘の世界では甘い考え。いわゆる『普通の』思考だ。温い、といわれても仕方のない考え。 「これからどんな事があったって、私はこの生温い心を抱えていく」 だが、それは思考の方向性でしかない。 例え普通の思考だろうが殺人者の思考だろうが万人を救う聖人の思考だろうが、同じ一人の思考であることには違いない。高潔も下衆も平凡もない。同じ、一個人の考え方。 違いがあるとすれば、その質。覚悟ともいえる心の強さ。 「……そうね。覚悟が決まったわ。今、あなたを奪われる訳には行かない。 あなたの元がなんであれ関係はない! あなたは、私に、必要な力だ!」 命など塵芥な神秘の世界。倫理など吹けば飛ぶほど薄い裏の世界。その中において、アンナは『普通』であることを貫く覚悟を決めた。そのために、共に歩く破界器が要る。 「私の心に価値があると思うのなら、力を貸しなさい。マジェスティック・コア!」 コアを握り締め、一歩踏み出す。 気がつけば鎖は、塵となって消えていた。 「今日はうちがキミ達を守るからね」 瞑は『ロリコン』と『ショタコン』をぎゅっと握って鎖を見る。 思えば、今までは助けてもらってばかりだった。人付き合いが上手ではない瞑だが、けして他人に対する思いやりがないわけではない。 「今はキミの気持ちを分かりたい。キミの心、キミを知りたいよ」 対話とは、自ら語り始めることから始まる。ボールを投げないと、相手もボールを返さない。今まで自分と共に会った相棒。呆れるぐらいに知ろうとしなかった自分。でも、それでも思いがないわけではない。 ただ破界器を知りたいというその想い。その思いを込めて、瞑は二本の短剣に口付けする。小さくたどたどしく、しかし確かな思いを込めて。 絆の第一歩。その口付けに鎖は一瞬緩み、『ロリコン』と『ショタコン』はその隙を縫って拘束を脱した。 彩歌は『オルガノン』と自らの神経を接続させる。もはや身体の一部となったそれは、鎖とのつながりをより強くする。思い出というデータを消去するウィスルの如く侵食する鎖を見出し、そして破壊する。 「証明したかったのは、私がここにいるという事」 我思う故に我あり。ここに彩歌が存在することは、証明された。 「私達が共に出した答えは、私がここにいると認識する誰かが必要であるという事」 仲間のリベリスタ達を見て、彩歌は告げる。人は一人では生きてはいけない。他人がいるからこそ、その違いで自らが成長することもあり、傷つくこともある。 彩歌はずっと一緒にいた破界器を見る。真理に近づく為の道具は、いつしか自分を最も見てくれるモノになっていた。 そしてこれからも―― ● 『鉄匠』はリベリスタの一撃で無に帰す。 その表情は――大事なものを得たような、穏やかな笑みを浮かべていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|