●このアイデア(無茶振り)をくれた黒歌さんに感謝を。そしていつかぶん殴る。 『なんだか、んだってえ、楽しい、財布、ライダー……全く意味が繋がらん』 ――八重紅友禅 ●そして出来上がったカオスがこちらになります 某県某所某デパート前のどっか。 カニだかクモだかいまいち判別のつかない恰好をしたフィクサードが女子供を襲っていた。 「ククク、貴様等には地獄を味あわせてやろう。ピーマンを生で齧らせたり髪を逆モヒカンにしたり、なんだかんだってえ流れで最終的には地獄を見せてやる! なぜなら、楽しいからだァ!」 「うわーん、助けて誰かー!」 などという、お決まりのシーンである。 ならばこの後どういう流れになるか、皆さんお分かりであろう。 「待てぇい!」 ラジカセ(ラジオとカセットテープレコーダーが一緒になった家電製品)の再生ボタンをかちっと押しつつ、高い所から謎の男が現れた。 誰だと言って振り返るノーフェイス。 男は一万円札柄のネクタイをスカーフ撒きし、キラキラしたライダースーツを着込み、顔の半分隠れるヘルメットを被っていた。 そしてヘルメットの額には『¥』のマークが象られている。 「俺の名は――財布ライダーッ! 貴様の悪事もここまでだ、トゥ!」 華麗な空中前転をキメながら着地。どっからかわいた別のフィクサード達を前に、彼はベルトのバックルに手を添えた。 いや、ただのバックルではない。 「そ、それは!?」 「フフフ、分かるか? これはアルマーニの財布(二十五万五千円也)! だが今更気づいてももう遅い、我が必殺のォ――」 両手に大量の何かを扇状に構え、戦闘員ノーフェイスたちの間を駆け抜ける。 そしてシャープなポーズをキメると、胸の前で『お金』のジェスチャーをクロスさせた。 すると……なんということか! 戦闘員たちの手元には商品券(全国のコンビニエンスストアや各種店舗でご利用いただける贈り物に最適な五千円券)が握らされているではないか。 「これで、美味しい物でも食べなさい」 「「アリリャッシタァー!」」 セルフで爆発しつつどこかへ帰って行く戦闘員たち。 怪人は眉間にしわを寄せて呻いた。 「ぐぬう、やるな財布ライダー……だが、部下はこれだけではない。いでよ!」 怪人フィクサードが手を翳すと、何処からともなく大量のフィクサードたちが沸いて出てきた。もしかしてこの人達今までその辺にスタンバってたんだろうか。 「なんだってえ!? こ、この数をお引き取り頂くだけの額が……財布にない!」 「ふはははははは! ここまでのようだなあ! やれえぇい!」 ●以上がカオスの内容になります 「アホの所業だわぁ……」 アイワ・ナビ子(nBNE000228)が清々しい顔で虚空を見上げていた。 「あっ、はい。説明すればいいんっすよね。ありゃーっす、しゃーっす、どもーっす」 どっか虚空にぺこぺこ頭を下げてから、ナビ子は変なポーズをしゃきーんと決めた。 「あのっすね、なんだかんだってえ楽しいからどうのこうので財布ライダーが美味しい物でも食べなさいって感じでアレしてたんだけどヤバいらしくって」 「おちつけ」 なんでも、財布ライダーという凄まじく弱いリベリスタが人々の平和の為にノーフェイス事件をお金で解決するという事件がちょいちょい起こっているのだという。 だが今回は多勢に無勢。 いくらなんでも相手が多すぎるせいで財布の中身が足りないのだそうだ。 財布ライダーピンチ! なんだかピンチ! 「だが……うへへ、ここに財布ライダーが新たに九人加わったら……どうなります? うへへ……」 「その笑い方やめろ」 ノーフェイスたちはこんな依頼のクセしてやたら強いらしい。普通に戦ってもかなりボロボロになってしまうだろう。あと一般の皆さんとかガン見してるし、デパートさりげに通常運営してるので、お仕事の邪魔になってもいけない。 「そういうワケで、皆さんにも財布ライダーとして(お金の力で)戦って欲しいのですよ。なんでかってえ? 何故なら――楽しいからだァッ!」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 9人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年08月09日(木)22:59 |
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■メイン参加者 9人■ | |||||
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●これまでの、カードファイト・センドーシャは! かつての世界チャンプ『SHOGO』靖邦・Z・翔護(BNE003820)は賭博センドーシャに明け暮れていた。 そんな彼を悲しいファイトだと言い捨てるヒロ少年! SHOGOは強い滾りを見せ、少年にイカサマカードファイトを挑んできたのだった! ヒロ少年の運命やいかに……! ●これはバロックナイトイクリプスのリプレイですよ、っと。 「ん? 誰だオープニングテーマの前に違う番組の予告映像を差し込んだのは……」 『リング・ア・ベル』ベルカ・ヤーコヴレヴナ・パブロヴァ(BNE003829)が『俺のターン、パニッシュ!』とか言ってる映像をがたごと移動させていく。 「よし……準備は整った!」 ベルカはワゴン車の上に飛び乗ると、拡声器片手に演説を始める。 「盾……いや立て万国の労働者! そして聞けいフィクサードたちよ! サタデーナイトに鯖とのララバイだ!」 「サ、サバ?」 「ラ、ララ?」 「ええい細かい単語に反応するな! 来るべき理想社会建設のため、ひとはまず私的所有と言う概念を放棄せねばならない! 生産された富は指導者の管理により公平に分配され、それにより社会は更なる発展を遂げるだろう! つまり――!」 赤い本を天に掲げ、我が身よ飛べとばかりに身を乗り出すベルカ。 「つまり、金銭に執着すること自体が罪である!」 「「共産主義じゃねえか!」」 「えっ、ダメ? だってこんなに素晴らしいよ! 閣下の本を読めばきっと分かってくれ……ピャアアアアアアア!!」 フィクサード戦闘員の皆さんにワッショイワッショイ運ばれていくベルカ。 それを見ながら、『三高平のモーセ』毛瀬・小五郎(BNE003953)はプルプルしていた。 紙コップに入ったお茶をずずーっとするる。 ここはデパート前駐車場広場。 「ひーろーさんふぁいとですじゃぁー……」 小五郎おじいちゃんは今にも死にそうなしわがれ声で言うと、口をふがふがさせて黙るのだった。 さて、のっけからカオス過ぎて状況が分からない視聴者もいることと思うので、現状を解説しておきたい。 只今某所デパート前駐車場広場にて怪人フィクサードと戦闘員が出現。何でも金で解決するリベリスタ財布ライダーは軍資金(アルバイトで溜めた)が底をつき今まさに絶体絶命のピンチ! という状況である。 「くっ、私はどうしたら……!」 冷や汗を流す財布ライダー。 そんな彼の後ろでラジカセに別のカセットテープを入れる『ミサイルガール』白石 明奈(BNE000717)。 「はい、スイッチオン」 カチッという独特の音と共に流れ出すお馴染みのテレショップミュージック。 ――あなたのってれびにっ時価ネットアキナ~。 ――み・ん・な・の・欲の 「間違えたー!」 壁に投げつけてラジカセを粉砕し、明茄(あえて表記を調整しております)が財布ライダーの前に滑り出てきた。 「ヒーローあるところにヒロインあり! 会って話せる三高平スーパーアイドル、明奈ちゃんだ! 明奈ちゃんだから! 『奈』だから!」 ひたすら存在をアピールする秋茄。 くねっと内曲がりになる足に黒ストッキングがよく似合っていた。 「そんな私が今日フィクサードの皆さまにご紹介するのはコレ! ノートパショコン! もちろん最新型で持ち運びもラクラク! これがたったの200GP!」 「に、にせん……えっGPって何だ!」 「次にご紹介するのはこのお布団六点セット! これはまさかのセット価格200GP!」 「にひゃく……えっ、だからGPって!?」 「さーらーにー、今はやりの一眼レフ! 高速連射でチャンスを逃さない最新型が――、なんと200GPでのご奉仕! おおっとここで驚くのはまだ早いですよ、最後にご紹介するこの車! そう車です! これがなんとぉー、1000GP!」 全て語り終えた明那は車の助手席ドアをぽーんと開け放ち、脚をこれみよがしに組み替えた。擦れる黒スト。 「そ、そのGPというのは……」 「GPというのはアークが提供するポイント制度。仕事をこなすと報酬として手に入る他コーポでの活動が認めら得れば一日に100GPが手に入る! 自動車が10日……なんと10日で手に入るのです! もちろん手数料配送料はアークが負担!」 「「おおっ!」」 車のボンネットに足をガッと乗せる飽那。 拳を握って身を乗り出すフィクサード戦闘員の皆さん。 「そしてなんと、これまで紹介した商品は……皆さんへ先着一名様にプレゼントしちゃいます! ご応募はこちらま――」 「黒ストを下さい!」 「黒ストお願いします!」 「黒ストが欲しいです先生!」 「黒ストを洗わずにそのままできるだけ産地直送の形で下さい!」 「黒ストのためならリベ堕ちも厭わない覚悟です!」 「黒ストは駄目ェー!」 車の上で丸くなった暁南へ(そして黒ストへ)亡者の如く群がるフィクサード戦闘員たち。 そんな彼らに『ぴゅあわんこ』悠木 そあら(BNE000020)が絶妙なフォームからいちごばくだんを投擲。 「ちょっと黙るです」 「「ストロベリィー!?」」 ピンク的な爆発に崩れ落ちる戦闘員たち。 ソアラはきりっとしたスーツ姿で現れると、戦闘員の皆さんにパンフレットを配り始めた。 「五千円程度で帰るとは、もしは低賃金(ブラック企業)で働いてないです? ただやるお金はなくても、アークで働けば有給婚活福利厚生もぱっちりですよ」 「えー、でもアークって大企業だし……」 「ご安心するのです。さおりん専属秘書であるあたしが口利きするので面接も試験もオールフリーなのです!」 「審査ズルズルだこのアーク!」 「あっ俺聞いたことある、どうみてもフィクサードにしか見えないバケモンがアーク闊歩してたって!」 「ええい貴様等騙されるでない!」 怪人フィクサードが腕をぶんぶん振って割り込んできた。 「アークなんていう組織にノコノコ入ってみろ、北だ南だとトバされまくった挙句やれ依頼だから全裸になれだの空腹にあえげだの一万円で三ヶ月凌げだのと無理難題を押し付けられるに決まっておるわ!」 「そっ、そんなことない(かもしれない)です!」 「どうだかな、貴様も内心八割以上は『あれ、上司に頼めば三行で終わるです?』とか思っているのだろう」 「思ってますけど」 「思ってるの!?」 なんやらがやがやし始めてきた中、フィクサード戦闘員にバレーボールの弾代わりにされていたベルカがフラフラしながらやってきた。 「大丈夫だ。アークにはちゃんとした働き口があるぞ……」 「何ッ!?」 「三高平には今だ伐採されてない森林が存在する筈だ。それをよりよく有効活用すべく現在立っている気の数を数える必要がある。そう、数える必要があるのだ。大丈夫あなたが数えるべき森林はまだ残されているし特別に双眼鏡を用意した! もし森林が三高平になくてもシベリア支部建設のための人員として」 「「誰が行くかぁー!」」 「ベギイイイイイイイ!」 そしてベルカはドッジボールの弾にされた。 ●これまでのっ、カードファイト・センドーシャはっ! 「と言うわけで駄目でしたァァァァ!」 SHOGOは聡明かつビギナーズラック溢れる少年とのカードファイトに敗北。持ち金を擦るわ借金こさえるわで大変なことになり、親戚一同を土下座しに回るたびに出ていた。 潔さと引き際の美しさを称えられるSHOGOの華麗なる土下座にある者は涙しある者はため息をついたが良く考えたら親戚がギャンブルで擦って金借りに来たら誰でも涙かため息は出るよなってことでSHOGOは心に深い傷を負いつつ夜行列車に揺られ一路現地へと向かうのだった。 ●これはバロックナイトイクリプスのシナリオだっつってんだろ! ちゃらっちゃらっちゃーっちゃー、ちゃらららっちゃ♪ 『クッソ暑い夏でもドブネズミ柄のスーツを着こなし、七三分けに銀縁眼鏡! キラリ光るぞ営業スマイル! お辞儀は45度の名刺交換!』 「リーマンライダーKEITO、社命とあらば即参上ッ!」 百面相で顔を変えた『レッツゴー!インヤンマスター』九曜 計都(BNE003026)が謎のポーズで怪人フィクサードの背後へと現れた。 ちなみにオッサンの顔をしていても身体まで帰る必要が無い理由については今回深く追求しないので悪しからず。 「何奴!?」 「わたくしアーク商事株式会社の九曜とも居します何卒よろしく」 「ああどうもこちらこそ、怪人フィクサードです」 ぺこぺこ頭を下げながら名刺を交換する二人。 計都はハイテレパスでバチーンとウィンク(要らない)すると怪人に内緒話を持ちかけた。 『ここだけの話で……ご存じでしょうあの賢者の石。あれが、大量に採掘される土地が見つかったんですよ! 主流七派も知らないぺっかぺかの新情報! 北海道の原野なんですけどねぇ、ここをいま買っちゃえばウハウハ間違いなしってなもんで、ええ、いま出資者を集めてるんですよぉ。数年後には十倍百枚になって帰ってくるって寸法で』 「ふむ……にわかには信じがたいが……」 『いやいや信じて下さいよしゃっちょー! ここで一山当てれば明日の三木谷の座は社長のものですってば!』 手をパタパタ振る計都に、怪人は深く頷いた。 「貴様の話はよくわかった」 「あ、分かって頂けたんで?」 「今消費者センターに電話した」 「バレトルウウウウウウ!」 計都がフィクサードにワッショイワッショイ運ばれていく。 それを見ながら、小五郎おじいちゃんはお茶をずずーっと啜っていた。 スーパーを訪れた『折れぬ剣《デュランダル》』楠神 風斗(BNE001434)と『デイハイダー』児島・響(BNE003283)は、『第一回アークリベリスタドッジボール大会』の様子に唖然としていた。 「つ、強い……無駄に強い……」 「何で五千円で帰ってたんだろうね、アレ」 「分からない、だが今はやれることをやろうと思う」 風斗は預金通帳に容赦なく刻印された十万円お引き出しの文字を、金重な瞳に映した。ついでに残高二万八千十四円という文字も。 「でもオレは戦い続ける! 戦いの先に、望む平和があると信じて!」 「なんか必死だね? 大丈夫かい?」 そう言う響はオシャレなバーバリー財布から二十五万の大金をチラつかせていた。 「児島さん(78)……まさかそれをばらまくんじゃ」 「えっ、違うよこれはポケットマネー」 「ポケ……」 「高校生の子まで自腹切ってるんだからちょっとは無理しないと、年長者の示しがつかないですから。ね、SHOGOさん!」 「…………キャッシュからのやるせないパニッシュ」 いつものポーズで(いつのまにか)背後に立っていたSHOGO(28)。 「いつか親孝行したい」 「何があった? お前に何があったんだSHOGO!」 「何があったと言えばアレだよ。ちょっと大変なことが……」 遠い目をするSHOGO。それにつられて遠くを見る響と風斗。 その視線の先では。 「動くなぁ! この老い先短そうなおじいちゃんがどうなってもいいのか!」 「あーれー、助けてくだされー」 小五郎おじいちゃんが人質にとられていた。 「おじーちゃーん(僕より二歳年上の)!」 「いつの間にか捕まってるだと!? あ、でもリベリスタこの状況でもならなんとか……」 「あの人フェイト残量に関わらずすぐ死にそうなんだよ! 不安なんだよ!」 「な、なんとなく分かる……!」 ぐっと奥歯を噛む三人。 するとそこへ……! 「すまんな、引き落としに時間がかかっていた」 バキーンという謎の効果音と共に『リベリスタ見習い』高橋 禅次郎(BNE003527)がバイクから颯爽と降り立った。 画面脇に走るテロップ『レザーは第二の皮』。 画面下には『三高平、財布ライダーblackZZRさん』と書かれていた。 ちなみに空いた部分には『メットはプリメーラ―のフルフェイス、ライダージャケットはビルウォールレザー、靴はバラクーダで好きな音楽はロック』と書かれていた。 「財布? そんなものはない。入りきらないからな」 軽々とヴィトンのスーツケースを掲げる禅次郎は、なんか今日だけ違う人みたいだった。 「禅次郎、その金……」 「ネットカジノを電子妖精で荒らし回って無理矢理稼いできた」 「そんなことできるのこの依頼だけだからな!?」 そうだぞ絶対他ではやるなよ!? 「御託はいい、行くぞ」 禅次郎は手近な戦闘員を殴って鼻血を出させると、懐(どこだろう)から一万円札を取り出した。 「大丈夫か、血が出てるぞ。これで拭くといい」 「ア、アリガトウゴザイマース!」 セルフで爆発して帰って行く戦闘員。 「行くぜ――金纏いからの暗黒金そして魔閃金。金に塗れて死ね!」 「「アリャリャーッス!」」 ちょっとお子様には見せられない感じの札束タイフーンに、戦闘員の皆さんが次々と帰って行く。 「奴等の気持ちがバブリーになっている今がチャンスだ、風斗!」 「分かってる、お得感を煽る作戦だな!」 急にキリッとした風斗と響が商品券やカタログギフトをびらっと扇状に開いた。 「ただいまサービス期間中! この戦闘に即座に妥当されたかたにはもれなく商品券千円分をご贈呈!」 「更に一緒に手に入るダブルチャンスくじ引き券は戦闘終了後のくじ引きに参加できる! 最新高級車を初め素晴らしいアイテムをゲットできるチャンス!」 「でもそんなお金より物が欲しい。でも使わない物を貰っても嬉しくない。そんな人だっているよね。そんな君にカタログギフト! この中に欲しい物はありませんか?」 ジェットストリームな感じで戦闘員を次々帰していく風斗、響、あとSHOGO。 ハッとして振り返ると、SHOGOは何処までも澄んだ目で頷いた。 お金用意できなかったんだなと察した風斗と響は、黙ってコンボ技に組み込んであげたのだった。 ……が、それらが通用しないヤツもいる。 「騙されるな、イケメンにホストに主人公顔だと!? きっとこいつら『物より想い出』とかいって女の子をはべらせているに違いないぞ!」 「そうだ、そこの白黒に至ってはここにいる女子の半数くらいはハーレム入りしているんだろう!」 「えっ?」 黒ストを必死で掴みながら振り返る阿鬼納さん。 「やめろ、アッキーナは関係ない!」 「アッキーナ言うなコラ」 「そあらはオジサマ趣味なので、というかさおりんラブなのでそこらのイケメンとかどうでもいいのです」 「そろそろこのバトルドッジボールから解放してくれてもいいのよ?」 「…………」 場は完全なカオスと化し、金に心を奪われた者、なけなしのプライドが邪魔して素直に帰れない者、そしてそろそろ資金が底を尽きて来て正直帰りたい者たちで溢れていた。 何か決定打が欲しい。 財布ライダーの財布を質に入れようとひったくったSHOGOは直後にボコされていたし、禅次郎も美し過ぎて戦闘員がちょっと引いている。 とても高価で、そして派手で、決定的な買収行為が欲しい……誰もがそう思った……その時であった! 「ふぃくさーどさん、言いましたかのう……」 よぼよぼのおじいちゃんこと小五郎さんが、懐から分厚い茶封筒を取り出した。 「まだまだお主等は若い。悪い事からは足を洗って、このお金でまっとうに生きてみてはくれんじゃろうか……」 「お、おじいちゃん……このお金は」 開いてんだか閉じてんだかわからん目をしょぼしょぼさせ、深く頷く小五郎さん。 「生命保険を解約したですじゃ」 「せ、生命……」 フィクサード達の胸がずきりと痛み、怪人は世にも情けない顔をした。 「ばーさんも先に逝ってしまったし、子供も自立して孫たちも手がかからんようになったとこですじゃ。葬式代くらいは蓄えてあるし、土地や家はとうに分与しましたしのう……」 「そ、そんなおじいちゃん」 「いいんですじゃ。余分な金を残しても喧嘩のもとになる。未来ある若者が生き方を変えるきっかけに使ってくれれば、この老いぼれにも生きた甲斐があると言うもの……」 ばさりばさりと翼をはばたかせ、小五郎おじいちゃんが浮かび上がる。 怪人の手にそっと手渡された茶封筒は、本来の札束以上にずっしりと重たかった。 雲の切れ間から覗く光に照らされ、小五郎おじいちゃんが天へと昇って行く。 壊れかけたラジカセから聖歌が流れ始める。 「心配なく、使って下され。これにて一件落着じゃよ」 ダブルピースで天へ昇るおじいちゃん(死んでない)を見て、フィクサード達は膝から崩れ落ちた。 「お、俺達は間違っていた……ご近所の皆さんに迷惑をかけないよう平和的に事を運ぶつもりが、いつのまにか他人の金を目当てに暴れるようになっていた……」 「おじいちゃん、このお金……大切に使わせて頂きます……!」 その日、田舎のスーパーに一人の神が生まれた。 彼は道を誤ったフィクサード達に明日を示し、天へと昇ったとされている。 その後フィクサード達は残らずリベり、地域の町おこしや老人介護のボランティア活動に励む団体となった。 その陰にアークというリベリスタたちが居たと知る者は……ごく少ない。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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