●裏風紀委員会の出現 これまでの経緯を手短に語るが、千葉各地で法規の枠から逃れた犯罪を潰してきたフィクサード組織『風紀委員会』。 彼らは正義を信仰する群衆であり、また群衆による私刑者でもあった。 それ故に統率力に欠け、隊員が感情に流されやすいと言う特徴もあったが、リーダーである風紀四条の手腕によって一つの軍隊としてまとまりつつあった。 そんな昨今、彼らはアークと二度に渡り対立。彼等の『フィクサードが一般人を殺害すること罷りならぬ』という思想は、神秘人・一般人問わず犯罪を撲滅してきた風紀委員会にとって理解しがたいものであり、犯罪の容認であるという主張も多く出た。 だが、それが群衆全ての意見というわけでは……無かった。 「俺達は、本当にこんなことをしていていいのか?」 黒いヘルメットにボディスーツ。クリスベクターというサブマシンガンを整備していた男は、そんなことをぽつりと漏らした。隣の男が顔を上げる。 「こんなこととは……俺達がリベリスタになってしまったことか?」 「いや、俺達が風紀委員会に抵抗しているって言うことだ。元々は、俺達も仲間だったのに」 何やら機械を組み立てていた男が、工具を置いて立ち上がる。 「お前の言いたいことは分かる。所詮俺達は委員長を偶像にして集まった正義信仰者に過ぎない。個人の力は弱くとも、それを強力に使いこなす将軍の元でなら正義を執行できる……そう信じて戦ってきた」 ヘルメットをかぶり、銃を下げ、コンテナハウスの扉を開ける。 「だが俺達は染まってしまった。人を守れと……思ってしまった」 青葉の森公園中央広場。敷地面積50ヘクタール以上と言う巨大な公園施設の真ん中に、大型のコンテナハウスが二段重ねに設置されていた。結界や工事看板などで人払いをした公園敷地内には、どこまでも見渡しても一般人の影は無い。 一階コンテナから駆け足で広場飛び出し、整列し始めた男達は、皆一様に黒ヘルメットにボディスーツと言う恰好である。 二階の通路からそれを見下ろしていた男は、ヘルメットのアイシールドを上げ、皆に顔を晒した。 「我等、名もなきリベリスタの集いである。今より元同胞たちが攻め込んでくるだろう。だが悔しいかな、我々に勝ち目はない。だから同志よ、逃げるなら今だ」 「「…………」」 男達はじっと彼の言葉に耳を傾け、その場から一歩も動かなかった。 それが総意であると言わんばかりに。 「……分かった。では、戦争を始めよう。我々の戦争だ」 ●名もなきリベリスタの集い、指揮官募集中。 所変わってアークブリーフィングルーム。 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は淡々と説明を続けていた。 「逆凪組織『風紀委員会』からリベリスタ思想に感化された人間たちが現れたことにより、少なくない離反者が出た模様です。無論、その殆どは発覚と同時に抹殺されましたが、一部の集団が逃走。青葉の森公園にアジトを建設し立て籠もっているようです」 青葉の森公園とは、森や野原といったフィールドをベースに野球場や博物館などを 併設した巨大公園施設である。 現在は通常運行に見せかけ、このリベリスタ組織がアジト化。来たるべき大隊戦の戦場となっているのだ。 「元風紀委員会とは言え、志を同じくするリベリスタ組織を見殺しにするわけにはいきません。風紀委員会を撃退するため、皆さんの力を貸してください」 風紀委員会は東西南北に隊を分けて攻め込んでくる。どうやら今回はリーダーの風紀四条は不在らしいが、何十人という規模は充分な脅威と言えた。 ――と、ここで問題が出てくる。 今回ただ単に8人の精鋭リベリスタが乗り込んだ所で、この群衆を相手にするのは難しいだろう。当然ながらブロックなどできようはずもない。 だがしかし。 「皆さんが『名もなきリベリスタの集い』の指揮を執ったなら、風紀委員会を撃退できるかもしれません」 指揮、である。 「皆さんが以前示した連絡先を通じて、彼等との話は出来ています。至急現地へ向かい、彼等の指揮を執ってください」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年08月17日(金)22:04 |
||
|
||||
|
■メイン参加者 8人■ | |||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
||||
|
|
●青葉防衛戦 正義を信仰する群衆、風紀委員会。 彼等より離脱したリベリスタ集団、名もなきリベリスタの集い。 群衆を離別した個の行方は踏圧の他になく、彼らは最後の死地にあった。 そこへ駆けつけるアーク・リベリスタチーム。 彼らの指揮のもと、名もなきリベリスタの集いは決死の抗戦に出るのであった。 ●東エリア攻防戦 青葉の森公園、東。近隣チームの試合に使われるスポーツ場が並び、間に造られた一本道が風紀委員会東側攻撃部隊の進軍ルートであった。 隊員の一人がイーグルアイを発動。遠くに停められた一台のトラックを認めた。 「部隊長、『安西運送』のトラックです」 「アークが肩入れしているのか。隊員各位、警戒を怠るな。彼らは『一般人であれば守るべきである』という独善により神秘者を虐殺し続けている狂気の集団だ。どんな手を使ってくるかわからん」 「隊長、しかし今回離脱した連中は」 「黙れ」 先頭チームがベクターを構える。威力と連射力に優れた高性能な銃である。 進路をふさぐように現れるリベリスタの兵隊。数は大して多くない。 だがその先頭に立っていたのは『騎士の末裔』ユーディス・エーレンフェルト(BNE003247)であった。 「自らの意思で人々のために戦わんとしている人達がいる。ならばその道行を照らす光となりましょう」 ひとり明らかに武装の違うユーディスに素早くエネミースキャンをかける隊員達。 「高レベルのリベリスタだ。アークに間違いない!」 「兵力はこちらが上だ、叩き潰せ!」 ベクターを一斉に構える隊員達。 ユーディスは矢面に立ち、盾を翳して銃弾を弾いた。 しかし他のリベリスタ達はそうは行かない。次々に敵の弾に晒され戦力を削られていく。 「全員、後退しながら交戦。負傷者のフォローを急いで下さい!」 風紀委員会とユーディス隊の差は三倍にも及び、ユーディスを除く全てのリベリスタはその場で死亡、屍の土豪と化した。 不利を悟ってか走って後退するユーディス。風紀委員会は勢いづいたまま押し込みにかかる……が、しかし。 「今です、攻撃!」 敵軍がテニスコートと弓道場を抜け、若干広い場所へ出た途端。近隣のトイレやコート脇に潜んでいた二つのチームが飛び出し、両側から攻撃を開始。 形としてはU字に囲んだに等しい。 「やられた、『釣り野伏せ』だ! 総員下がれ! この奥には安西運送の連中が居る筈だ!」 「――残念だったな、俺達が居るのは後ろだ」 声がした、と思った時には遅かった。 「ハイスピィィィド、キィィィイックぅああああ!」 ミサイルもかくやという勢いで長距離からスッ飛んできた『愛の宅急便』安西 郷(BNE002360)が最後尾を警戒していた敵部隊を薙ぎ倒す。 「からの、ソニックネリチャギャぁあ!」 「安西だと!? くそ、囲まれた!」 郷の後ろからはユーディスと同じ程の部隊が集中に集中を重ねた弾幕を叩き込んでくる。 「ばかな、アークにこんな統率力があるなんて聞いてない……聞いてないぞ!」 ――後。 狭いフィールドで四方を囲まれた風紀委員会東側攻撃部隊は自爆同然の抗戦を開始。 ユーディス隊と安西隊は半数の負傷者・死者を出しつつもこれを強制鎮圧。 青葉の森戦場の東エリアを無事守りきったのだった。 ●西エリア攻防戦 青葉の森西側はカルチャーゾーンと呼ばれ、樹木が乱立している。 風紀委員会西側攻撃部隊はそこを進軍していた。 隊員の一部に透視と集音装置を持たせ、周辺をくまなく警戒しているのだ。 そうした進軍中、集音係の一人が聞き慣れぬ声を捉えた。 『諸君らよ。君達に大切なともはいるか』 場面は移り西側生態園と呼ばれ、細い水路に囲まれたエリアに『T-34』ウラジミール・ヴォロシロフ(BNE000680)はいた。リベリスタ達を前に、『きをつけ』の姿勢で胸を張っていた。 「守りたい恋人は? 欠かせない家族は? 敵は風紀を御旗に自分たちを制圧にくるだろう。だが大切な人達を守るという信念をもって戦うなら、我々は負けはしない! では任務を開始する。全員帯銃――自分に続け!」 イーグルアイと暗視で視界を広げていたウラジミールは、水路を越えて一目散に襲い掛かってくる風紀委員会の部隊を発見。ナイフを抜いて俊敏に駆け出した。 「軍曹、敵の数は!」 「……兵力にして40だ。このチームより上だな」 リベリスタ達はウラジミールの襟元を見て、何を勘違いしたのか『軍曹』という愛称で呼んでいた。訂正するのも面倒なので呼ばせているが。 「三班に分かれて迎撃せよ。ブロック、牽制、攻撃だ!」 「「イエッサー!」」 風紀委員会とウラジミール隊が生態園エリアで接触。風紀委員会は個体性能の高いウラジミールを何とか抑えつつリベリスタの頭数を潰すという戦法をとってきた。 しかしウラジミール隊は激しい抵抗をするでもなく牽制とブロックをしながら後退。 そのまま広いランニング・サイクリング用ロードを跨いで森林地帯へ侵入。 生態園エリアより更に視界が悪いことを利用して全力後退に出た。この時のウラジミール隊の戦力は僅か20。実質ウラジミールを残して数名と言う少人数であったため風紀委員会は『戦力不利による撤退』と見て全力で追いかけはじめた。 ウラジミールがインカムマイクに向けて小声で何かを伝えたことには、気づかなかったようである。 一方、西洋庭園噴水広場。 生態園よりやや東に位置し、かつては豪奢な噴水が並ぶそれは美しい場所であったが、水不足の時期を挟んで依頼噴水は止められ、寒々とした空間が広がっている。行ってみれば、『石造りの巨大なくぼみ』だ。 その中心に椎名 真(BNE003832)は立っていた。 インカムから通信を受け、二言ほど返事を返す。 「みんな、俺についてきてください。間もなくウラジミール隊が敵を引き連れてやって来ます!」 真はハイテレパスで全員に策戦内容を伝えてある。元々視界の悪い場所では使い辛いスキルだが、透視とデュアルブートすることで条件をクリア。本当ならウラジミールにも伝えたい所だが、あまりに遠いため音声通信のみに留めた。 「来るぞ、全員構えて!」 くぼみ部分から身を乗り出すようにして小銃を構えると、森林地帯から飛び出した風紀委員会の部隊にハニーコムガトリングを発射。 「うおちゃあああ全滅しやがれええええ!!」 同時にリベリスタ達が一斉に射撃を開始した。 それを掻い潜る形でウラジミール隊が合流。反転して攻勢に出た。 「ウラジミール、他の仲間は」 「残念だが……私の他はこれだけだ」 苦々しい表情のまま風紀委員会へと攻撃を開始するウラジミール。 そして……。 ――風紀委員会西側攻撃部隊とウラジミール・椎名隊が交戦。 序盤に大きく数を減らしたウラジミール隊は苦戦を強いられ、結果非常に不利な戦力差で交戦状態に突入した。 風紀委員会は椎名隊の存在に気づき、森林地帯から必要以上に出ることなく遮蔽物を使って射撃をある程度軽減。 そのまま徐々に椎名隊の兵力を削り、最後に残ったウラジミールと椎名真へ全力攻撃を仕掛けた。 彼等は徹底的に応戦し、重傷を負いながらも風紀委員会へ大打撃を与えた。 残り数名になった風紀委員会は別部隊との合流をするべく一時撤退。 辛くも西エリアは死守することができたのだった。 ●南エリア攻防戦 「よっしゃ、機能の敵は今日の友。清く正しいリベリスタになった貴重な戦力(おまえら)を失うわけにはいかぬわ。と言うわけで、生き延びる為に妾の言うことを聞くがいいのじゃぁ!」 モヒカンの鬘を被り、刃物を振り回しながら叫ぶ『回復狂』メアリ・ラングストン(BNE000075)。 彼女が指揮官だと知った時のリベリスタ達の『世も末だ感』がすさまじかったと言う。ヒャッハーさんがボスとか、どう見てもこっちが悪役である。 「とにかく聞けい! 全員翼の加護をつけ逆扇状に展開。二分経ったらかけ直すから一旦収縮じゃ。いいな!?」 「イ、イエスボス!」 「ボスではないわメアリ様じゃ! それ行けぇ!」 隊員の尻を蹴飛ばし翼の加護を展開。既に遠目に見えている風紀委員会南側攻撃部隊に向け陣を広げたのだった。 一方こちらは風紀委員会。 南側住宅地から北上、レクリエーションゾーンを通過して青葉ヶ池へと到達していた。 青葉ヶ池は弧を描く形の大きな池である。歩いて渡るための橋も二つほど存在するが、一網打尽にされるのが分かっているので飛行して進軍することになっていた。 「前方に敵部隊。一人変な奴がいます」 「アークだな。東側から『アーク介入の可能性あり』と通信が来ている。だが兵力はこちらの半分だ、一気に潰せ!」 「「了解!」」 風紀委員会とメアリ隊が衝突。 兵力が倍以上、頭数では更に多い風紀委員会は派手に攻撃。 戦闘は二分近くかかり、メアリの翼の加護も限界にきていた。 「くっ、障害の無い空中戦では数が足りぬ。回り込まれんな、下がれー!」 メアリは一気に撤退。 ここで下がればアジトの中央広場まで一気に攻め入られることになる。 自らの優位を悟った風紀委員会は燃えた。 「奴等尻尾を巻いて逃げていくぞ!」 「中央を落とせば我々の勝利も同然だ。攻め立てろ!」 勢いを増した風紀委員会がスピードをあげて池の淵まで進行。できれば翼の加護が切れる前に到達したいという焦りも混じり、彼らの脚は文字通り浮き足立っていた。 そこへ。 「散開ッ!」 拡声器越しの声が池の水面を盛大に振るわせた。 池から中央広場までの間の十メートルには大きな坂や茂み、屋根付きのベンチ等が挟まっている。 言い換えれば隠れる場所は豊富にあるのだ。 白ロリに色黒の、筋骨逞しい女がベンチ小屋の屋根へ飛び乗り、閃光手榴弾のピンを引っこ抜く。『Le blanc diable』恋宮寺 ゐろは(BNE003809)である。彼女が南部隊の最高指揮官だと聞いた時の隊員の『この世が終わった感』は凄まじかったと言う。余談である。 合図を受けたメアリ隊は急上昇をかけて離脱。入れ替わりに風紀委員会へと放たれたフラッシュバンが炸裂し、加護を失った隊員が次々と池へと落下した。 「ふはははは、反攻じゃー!」 「はい撃ってー、全員ねー!」 メアリの大声とゐろはの拡声器声が重なり、他の茂みや樹影よりリベリスタ達が飛び出し、一斉に射撃を開始。メアリもそれに合わせて神気閃光をばらまき始めた。 この時の戦力差は風紀委員会45に対しリベリスタ45。 ほぼ同兵力による戦闘であった。 ――風紀委員会南側攻撃部隊とメアリ・恋宮寺隊が交戦。 ほぼ同程度の兵力で激突した両部隊は互角の戦闘に発展。 しかし水際で押し留められた風紀委員会は二分毎に翼の加護をかけねばならず、ブレイクによって池に落ちた仲間も含めるとなると上昇して追い越すわけにも行かず、彼らは最終的に池を泳ぎながら戦闘するという非情にみじめな状態を強いられた。 一方水際で追い返すだけで良いメアリ・恋宮寺隊は悠々とこれを迎撃。 多少の死傷者は出たものの、リベリスタ達は見事南エリアを守りきったのだった。 ●北エリア攻防戦 「同志と言いたがる連中ほど、疑惑という棘で簡単に分裂するものだ」 リオン・リーベン(BNE003779)は顔半分を手で覆い、前髪を軽やかにかき上げた。 風になびくマントが翼のように広がり、彼は涼しげに顔を上げる。 「皆の者、俺は軍神の生まれ変わりリオン・リーベンである。この俺が指揮を執るのだ、戦術的勝利などいくらでもくれてやる……勝つのは俺たちだ」 「「応ッ!」」 リベリスタ達の士気をストイックに高めると、リオンは片腕を大きく広げた。 「進軍開始!」 声に伴い歩き出すリベリスタ達。 彼等は鋒矢の陣を組んでいた。 元々は面打撃の高い鉄砲隊を先頭に集め、先手を尖った矢のような形に配置する陣であり、正面突破と攪乱を目的とした陣形である。 「リオン軍師、本当に良いのですか? 我々の任務は防衛です。突破などしても逆に囲まれるだけでは」 「いいのだ。見ていろ」 リオンは涼しげに笑うと、前髪を手櫛ですいた。 一方、先頭集団。 北エリアはネイチャーゾーンと呼ばれ、きれいに整えられた人工草原地帯が広がっている。 それ故に遠目も利き、50m先の敵部隊もしっかりと捉えることができた。 「敵部隊発見。こちらへ突撃してきます! あの、本当にいいんですか!?」 「大丈夫です!」 矢の戦端にあたる場所に、『勇者を目指す少女』真雁 光(BNE002532)がいる。 「皆さん、ボクに任せて下さい。勝利へと導いてみせます! みんな、ボクに続くのです!」 煌びやかな剣と鎧を陽光に照らし、光は駆け出した。 敵の矢面に立つ将軍は常に煌びやかな剣と鎧を纏い、兵の士気を高めたという。光の役割はまさにそれであった。 「このボクが相手になるですよ! 死を恐れぬならばかかってこいです!」 真雁・リオン隊は風紀委員会と接触。光の強烈なチェインライトニングを切欠に、大量の鉛弾が嵐のように吹き荒れた。 ――真雁・リオン隊は風紀委員会北側攻撃部隊と衝突、交戦開始。 光の個体戦力と派手さは極めて高く、風紀委員会は彼女をできるだけ足止めしつつ部隊を覆い囲むよう陣を展開し始めた。 矢印型の陣で攻めたリベリスタ達に対し彼らが丸く固まった陣で迎え撃ったこともあり、光は一気に覆い囲まれ集中砲火に合う。 いかな勇猛果敢な光とは言えこのままでは戦闘不能となり、彼女を含めた戦力の半数が失われてしまう。 リベリスタ達に焦りの色が出た、丁度その頃。 部隊の最後方で折り畳み椅子に腰かけていたリオンがすっくと立ち上がり、マントを翻して叫んだ。 「全隊展開、鶴翼の陣!」 「リオン軍師!?」 驚いたのはリベリスタ達である。しかし事前に教えられていた通りに矢印の傘部分(つまり二陣)を大きく広げ、二層になるように棒部分(三陣)を展開。 風紀委員会を包み、覆うように広がったのだ。 ただこうするだけでは減少した兵力を更に減らすだけだったろう。 しかし今敵陣の中心にいるのは光である。 「そんな、俺達が逆に囲まれる!? 囲んだのは俺達だった筈なのに――」 「違うですよ、ボクが誘い込んだんです」 光は剣を両手でしっかり握ると、戦鬼烈風陣で風紀委員会を蹴散らし始めた。 距離を取ろうと離れればリベリスタ達の二層式銃撃に晒され、留まればもれなくミキサーのごとき光の烈風陣に巻き込まれる。 風紀委員会の部隊は大いに混乱。統率を失い、恐れをなして後方へ走る者、光を必死で攻撃する者、リベリスタ達の層を崩すべく特攻する者などに分かれ、そのすべては悉く蹴散らされていった。 見た目に分かりにくいが、リオンの二種ドクトリンと戦闘指揮、更にインスタントチャージによって部隊の強度と光の燃費問題も解決。 雑魚の群であったリベリスタ隊は今や、無敵の軍隊へと変貌していたのである。 「だから言ったろう。指揮を執ったのはこの俺、転生軍神リオン・リーベンであると」 彼が分厚い書物をパタンと閉じた時には既に、風紀委員会に立っている者は居なかった。 ――真雁・リオン隊は、神がかった手腕で北エリアを守りきったのであった。 ●名もなきリベリスタの集い 兵力を半分まで失ったリベリスタ達だが、彼等の拠点は無傷のまま保たれ、アーク・リベリスタへの信頼は厚いものとなった。 それだけではない。北エリアで見事な手腕を発揮したリオンに感化された風紀委員会の一部隊員が投降しリベリスタの集いに参入。規模を拡大した。 「死傷者も多く出ましたが……ここはちゃんと護りきることができたんですね」 ユーディスは怪我の応急処置を受けながら拠点のコンテナハウスを見上げた。 ウラジミールと真はかなりの重傷を負って意識を失っていたが、命に別状のあるレベルではない。 「全ては妾たちの力じゃ! ほらお前らもこの棘々肩パットをだな」 嫌がるリベリスタに世紀末じみた装備を押し付けようとするメアリ。 そんな中で、郷が隊員の一人を捕まえて語り合っていた。 「なあ、四条ちゃんの好きなものって知ってるか?」 「……委員長の、か」 隊員は押し黙って動かなくなる。 郷が首をかしげていると、彼は苦笑して首を降った。 「すまない。思えば、我々は委員長を『委員長』という偶像でしか見ていなかった。一人の個人として何が好きかすら、知らなかった」 「それって……」 「あの人は、何を想って我々を指揮してくれていたのだろう」 俯く隊員。 郷がどう声をかけたものか迷っていると、後ろから老婆が声をかけて来た。 「あなたが気に病むことはありませんよ。人は群衆になった時、個を見なくなるものです」 ふと振り向く郷とメアリ。 「あんた……」 「あ、初富のばあちゃんだ」 ゐろはが携帯をいじりながら顔を上げた。その言葉に郷が『ウェイ!?』という奇声をあげる。 老婆、初富初音はゆっくりと歩き、リオンの前に立った。 「貴方の『戦い方』、視せて頂きました。お見事です、リオン・リーベン」 「どうということはない。光のパワーあっての戦術だ」 そう言いつつも胸を張るリオン。 「彼等はより強力な兵をもって襲撃してくることでしょう。その時もまた、お手を借りることはできますか?」 「…………」 初富から事実上の支援・協力要請を受け、リオンは大仰に頷いたのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
|
|||
■あとがき■ | |||
|