●パカァ(低音) 太陽が煌めき、夏の暑さが肌を指す。そんな真夏の島、サマーバケーション☆ 畑仕事に腰が折れる。物理的な意味でも折れそうだけど。ボキリ。 ――アッ。 仕方がないので腰を下ろした老人の目の前には首だけのアルパカ。 「パカァ……」 「……」 VTRをもう一度ご覧いただこう。 「パカァ……」 やや低音ボイスというか パ→カァ↓の発音で鳴くのは畑から首だけ生やしたアルパカ。 しかもちょっとイケメンだと言うから性質が悪い。 なんだろう、いや、アルパカだけど。そもそもアルパカはパカァとは鳴かないはずだ。 そうだ、こいつはエリューションだ。すげぇ悪いアルパカかもしれない。 ――アルパカだから分裂した。それも数え切れないくらいに…… 「パカァ……」 ●つまりはアルパカなんですが。 「……首だけ生えたアルパカって何だと思う? 私は敵だと思うわ」 至って真面目な顔をした『恋色エストント』月鍵・世恋(nBNE000234)がそこにはいた。 言ってる意味が分からないが、つまりは、えーと、どういうことだろうか。 「畑からアルパカっぽいエリューションが生えたの。首だけ」 「首、だけ」 「しかも増えたの」 またか、という言葉は封印しておこう。仕方ない、アルパカだから。アルパカだから。 「しかも、ね、『パ→カァ↓』って鳴くの。しかもイケメンなの」 怖いわよね、と至って真剣なフォーチュナ(23)は資料をぐっと握りしめる。 もぐら叩き形式にアルパカが出たり入ったり。 しかも3分間以内に高スコアを出さないとエリューションは消滅しない。 「3分以内に倒せないとキングアルパカが現れて逃走するわ」 「逃げる!?」 「逃がしたら、失敗よ……短期戦よ。短いわ。今年の夏は長いけど、アルパカは短いわ」 退治してくれるわよね、行ってらっしゃい――僕の暑い夏が始まる。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:椿しいな | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年08月05日(日)23:09 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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● 太陽がさんさんと降り注ぐそんな☆ サマーバケーション☆ 「皆さん、私はアルパカが好きです!」 赤いベレー帽。金色の長い髪。淡い色の瞳。――つまりは美少女だ。 \バサァ/ はためくマント。輝く瞳が見つめるのは庭に映えるアルパカだ。 「皆さん! 私は! アルパカが好きです!」 とても戦争でも愛していそうな、そんな発言を繰り返すのは『戦奏者』ミリィ・トムソン(BNE003772)。 彼女らの本日の任務は畑に首だけ出して \パ(→)カァ(↓)/と鳴くエリューション退治。 ミリィさん、それ首だけですよー!? ――嗚呼、むしろ其れでもいいと言うのか。少女の瞳は輝いている。 「はて……?」 ちょこりと畑の端に座った『三高平のモーセ』毛瀬・小五郎(BNE003953)がぷるぷると震える。 もしもし、大丈夫ですか。救急車入りますか? と聞きたい位の老耄具合。 「今日は何の日じゃったかのう……?」 「アルパカ退治だよ、おじいちゃん」 「畑仕事じゃったかのう……?」 ぷるぷる。 何をするのか教えてくれたエンジェル☆ ではなく鳥の『PN』白塚・未明(BNE003533)を華麗にスルーする小五郎おじいちゃん。 \ボコッ ボコッ/ その間にアルパカが一斉に首を出す。まるで「へい、嬢ちゃん、こっち来て俺とあそぼーぜ」なんて誘うかのようなアルパカ。 何処となくイケメン風味なのが嫌だ。とても嫌だ。 「おじいちゃん! さがってくださいです!」 武器を構え、何時になくキリッとした『あほの子』イーリス・イシュター(BNE002051)はしゃがみこんだ農家のおじいちゃんへと声を掛ける。 じじいとアルパカ。 「私が、守るのです!」 キリッ! ――カッコイイのは此処までであった。 「下がる……はて、下がるべきですかのう」 「ち、ちちち、ちがうのです! 小五郎さんじゃないのです!」 よいせっと腰を上げた小五郎おじいちゃん。まさかの状況に驚いてばたばたと手を振り回すイーリスに小五郎は首を傾げる。 はて? 「そっちのおじいちゃん! さがってくだ……小五郎さんじゃないのです!」 あほの子(とかいて勇者と読む)を凌駕するおじいちゃん。戦場は最初から混乱していた。 戦場の混乱と言えば、一番混乱しているのは『幸せの青い鳥』天風・亘(BNE001105)であった。 「アルパカは可愛いですしイケメンで……頭だけでもなごむと思ったら」 これですよーーーー!? 普段の温厚さはこのサマーバケーション☆の輝く太陽の暑さとアルパ(→)カァ(↓)……の所為で失われていた。 「畑から首だけ生えるとは正しく面妖……」 何だろうこの面妖を極めに極め切った生物は。アルパカ? この摩訶不思議さがアルパカ? \パカァ……/ 余韻を残すアルパカの鳴き声を聞きながら『我道邁進』古賀・源一郎(BNE002735)はそこに立ちつくす。 「然し、何とも奇妙な鳴き声よな」 エリューションであれば倒さなければならない。キングアルパカに少し興味を持つ源一郎だがしっかりとフィンガーバレットを握りしめた。 「はて……?」 源一郎の着流しをくい、と引っ張った小五郎じいちゃんはぷるぷるしながら畑に首を出すアルパカを指さす。 「ありゃ、モグラかのう……?」 「いや、アルパカだ」 「モグラはいかんのう……畑を荒らすんじゃ……」 嗚呼、そうだ。おじいちゃんはアルパカなんてハイカラな生き物を知らない。其れなら仕方ない。 「おじいちゃん、アルパカですよ」 アルパ→カァ↓と綺麗に発音した亘。だがおじいちゃんの中ではあの白くてもこもこして切なげな表情の生物はモグラでしかなかった。 ● 「そっちのおじいちゃんに入れ歯一本触れさせないのです」 ゆるされた時間は短い。そう、フォーチュナが何時もの如く幼い顔に浮かべた優しげな笑顔のまま言っていた。 ――今年の夏は長いけど、アルパカは短いわ 其れならば、この道を切り開くしかない。後に中央部にエリューションではないアルパカが登場するのだから。 「必殺! いーりすどらいばー!」 ずきゅーん! イーリスの攻撃の後、何故か効果音を口走った『スワローテイル』ユリア・T・アマランス(BNE000798)。 「ズキュズキュズキューン!!」 その言葉と共に放つのは1$シュート。畑の中に攻め行く仲間達の援護を行っている。 青い大きな瞳がカッと見開かれ、ユリアは叫ぶ。アルパカに向けて! そう、アルパカに向けて! 「狙い撃つぜー!」 ずぎゅーん☆ ――そう、首だけだと敵かは分からない。首だけの生物だってもしかすると味方かもしれないではないか。 ペッ(アルパカが唾を吐く音) 「悪だと思います! 唾を吐いて罵声を飛ばす! 悪です!」 「なんと! 悪いなら倒さなければ! わたし! ゆーしゃなのです!」 全員が切り開く道。此処に突如現れるのがアルパカ……ではなく『人生博徒』坂東・仁太(BNE002354)。 彼のアルパカが一番悪く見えるのは目の錯覚だろうか。抱えた亘の腕がぷるぷるとしている。全力移動しながらぷるぷるしている。 彼らの下ではぼこぼこ頭を出すアルパカ。アルパカに絡みつく蛇。面妖なアルパカと暴れる蛇が何とも言えないコンビネーションを起こしている。 まるで摩訶不思議を滅するかのような源一郎の攻撃。切なげな吐息(アルパカ当社比)を漏らすアルパカ。 「うわー、なんて人を小馬鹿にするような憎たらしい面なんだー」 偏見を漏らしながらも未明は進む。残影剣残影剣とむやみやたらと技名を叫んだりしちゃう彼は25歳イケメンだった。 だが、そんな未明と比べて、悲しみを背負ったミリィは俯く。 そう、先ほどまでアルパカを如何に愛しているかを演説していたのだ。そんなにも愛しちゃってるアルパカを攻撃しなければならないミリィ。 「皆さん、私はアルパカさんが好きです……。ワカイヤさん、そしてスリさんが大好きです」 (・´ェ`・)<よんだ? 「一人ぼっちが嫌いで、仲間と一緒に行動する姿など私にとてもよく似ている」 ぎゅ、っと杖を握りしめる。俯いて、彼女は自身の思い出を邂逅する ――あれ? いい話になってませんか? 彼女はカッと目を開く。明るく輝く金色の瞳。 「毛がもさもさしていて暑い夏が苦手な彼らも好きです」 (・´ェ`・)<あついよー! 少女はまるで名案が浮かんだかのような――そう、アルパカにとってはとっても理不尽な、そんな理由を輝かしい笑顔で告げた。 「暑さの苦手な彼らは、毛を刈り取って欲しくてこんなことを!」 あはは、なんだー。わかっちゃった☆ とでも言いそうなミリィはにこにこしながら不可視の刃を転移させる。 ファントムレイザー、少女の中ではこの技の名前が変わってしまった『毛刈りレイザー』と。 「きっとこの時の為にあったのだと理解したのです」 嗚呼、恐ろしい。愛って、時に残酷なのね。穴から顔を出したアルパカがノックダウンして消えて行く。 イーリスに下がれと言われた農家のおじさんが優雅にカウントダウン。 現在:15パカ そう――今から行われるのはけして畑から顔を出して「パ(→)カァ(↓)」などと声を上げるアルパカ(首だけ)というエリューションの討伐ではなかったのだ。 「今から行われるのは夏の毛刈り大会だったんですよ!」 「はて……? モグラにそんなに体毛がありましたかのう」 そんなミリィの隣を3m以下の飛行でよたよたと飛ぶおじいちゃんがいた。 ● とん、と中央に降り立ったのは悪いアルパカ……ではなく、仁太であった。 「パ(→)カァ(↓)……」 センターアルパカが畑のアルパカに交じってパカァ……と鳴く。わあい、悪いアルパカだぞー。未明が武器を構える。 庇うと決めていた亘もそっと仁太に向き直って武器を構えた。 「悪いアルパカは倒さないと」 「ちょっ! わ、わしを攻撃せんといてー!? やめてください、しんでしまいます!」 部位が悪い。悪いアルパカを攻撃されたら××で××でBNE倫も驚きの真っ白な世界が広がってしまう。絶え間ないアルパカだけではない、彼のベストアルパカが居なくなってしまう。 「パカパカ、わし悪いアルパカやないで」 (・´ェ`・)<うそだろ 仁太はパンツァーテュランを構える。悪いアルパカだと疑われるなら、全部ぶっ飛ばせばいい。自分が良いアルパカで或る事を見せつければ――いや、まず君はアルパカじゃない、目を覚ませ! 「全部ぶっ飛ばしてやるぜよ! ハニーコムガトリングぅ!」 吹き飛ばせ、全てのアルパカを! 対象に対して放つはもふもふすらも蜂の巣に……パカ。パカ。 「ああ! アルパカさんが!」 一人毛刈り大会中のミリィが悪いアルパカのもとへと走りよる。例えどんなアルパカでも理由なしに攻撃ない彼女。 目の前の悪いアルパカの気持ちがわかり涙ぐむ。仕方ないですね、アルパカにだって色んな事情があるんですもんね。 ――仁太さんのアルパカにだって……。 「アルパカさん、安心してください。私の刃は決して目標を違えませんから!」 「わしに攻撃せんといて!?」 慌てる仁太に涙ぐむミリィ。アルパカは可愛くあるべし。その言葉に頷くユリア。 「うんうん、動物が人間をどう思ってるかなんてホントの事は分からないけど、罵声を浴びせる子は可愛くないです」 だから攻撃するんですよ! 彼女はライフルを握りしめる。 クーンとかニャーンとか言って可愛くぺろぺろ舐めてくるのが可愛いんですよ、と彼女が目が合ったのはアルパカ。 唇の動きがおかしい、アルパカ。 「……」 伏射姿勢。そのまま、彼女はアルパカを狙い撃つ。 「負けられない戦いなのです」 器用な唇の動き。ごくり、生唾を飲み込んだイーリス。彼女は何に負けられないのか。アルパカになのか……それとも、唇の動きだろうか。 「なんと! わたしも唇を器用に動かして威嚇するのです」 凄まじい表情をする。どんな顔だよと言いたくなるほどの表情。イーリス。別の意味で勇者であった。 \ペッ!/ 「つばとは! なんたる!」 自分の馬であるはいぱー馬です号を撫でつける。自分の馬はそんなことしない。そして自分だって寝る時しかよだれを出さない。 パカァ……と切なげな鳴き声を上げるアルパカ。 「その無駄にこぎれいな面をかち割ってやるっ!」 未明さん、パカァは鳴き声です。顔面パカァだなんて怖い! 黄泉ヶ辻か何かですか! 鳴き声にイラッとした未明がフルパワーで振り潰す。これぞ正しいモグラたたき――いや、アルパカ叩きだ。 「パカパカパカパカ」 アルパカ叩きを勤しんで畑を前進する源一郎。放った蛇がアルパカを蝕む。やめて、痛いわ、そんなにされるとアルパカさんだって泣いちゃう。 鳴き声が聞こえる。嗚呼、イライラする。奇妙だけれども惑わされないようにと源一郎は息を吐く。 「低音域の鳴き声程度で怒りなど覚えてはならぬ……」 そう、怒るべきは人類の不倶戴天たる、忍び寄り血を啜った挙句痒みを残し、耳元に近づけば苛立たしい高音域の羽音を立てるあの虫―― 源一郎の拳が唸る。 「滅びよ! モスキートォォォ!!!」 蚊であった。 「キェェェーーー!!?」 戦場が、止まる。白目をむいて放心する小五郎じいちゃんがそこには居た。 「おじいちゃああああん!?」 「アルパカの前におじいちゃんが!?」 慌てる未明とユリア。今の声は何だったのか――嗚呼、小五郎おじいちゃんがカッと目を見開いてタクティクスアイをした声だったのか。 「キェェェェーーー!?」 おじいちゃん、ダメよ、そんな声を上げていたら死んでしまうわ!フェイト残量によらぬ死亡の恐れが云々を一人で起こしてしまわないで! 叫びながらの気合の氷雨。おじいちゃん、出てきたアルパカと見つめ合っては怒りを湛えている。 「こりゃっ! 悪いモグラめ……!」 注・アルパカです。 農家のおじさんはカウントしていた。 現在:78パカ うん、リベリスタって怖い。 ● 「……ここに一人の修羅、キングアマカァ→ゼェ↑誕生! D.Aさんちょっときなさい!」 行き成り亘が崩壊した。亘――いや、キングアマカァ→ゼェ↑が笑みを浮かべる。その面は普段の温厚さを失っていた。 嗚呼、如何したというのだろうか。 「アルパカ見て和みサマーバケーション☆のスタートをきろうと想ってたのに……」 震える手がAuraをしっかりと握りしめる。涙を湛えた瞳。何故だろう、アルパカを見つめているにしては和みがない。 「楽しみと時間を失い色々イラっとさせただけのお前達は一匹残らず殲滅ですよ!!!」 「キャラが壊れたよ!?」 ユリアが慌てて其方を向く。武器を構えて走っていく亘の行動をダイジェストでご覧下さい。 「ゴラァァァ!!」 怒りの咆哮、そして光の飛沫が飛び散る。その攻撃は洗練された芸術の美しさがある。 其の侭彼は向き直る。アルパカ。サーチアンドデストロイ。 驚いたおじいちゃんがぎっくり腰を起こす。 フェイト残量にかかわらない死亡判定がおじいちゃんに訪れちゃう! 「ふぉっふぉっ……」 笑ってる場合でもない小五郎を立たせた源一郎が青く染まった翼をもった少年を見つめている。 ワカイヤの毛を掴み顔面に放つのはシャイニングウィザード。スリへは普通のパンチを繰り出す――と見せかけ頭がぐねっとまがった所へと放たれるローキック。 穴へと引っ込んだアルパカの頭を掴もうと彼は手を差し入れる。ワカイヤの毛が触れた。 「逃がしやしませんよ……?」 アマカァ→ゼェ↑は笑った。穴に入れるなら入ってやりたい位だと。そしてアルパカを倒してやりたいと。 「完全滅殺! アルパ→カァ↓」 浮かべたのは笑顔。あの、アマカァ→ゼェ↑さん怖いです……。 「私……、私、ほんとはアルパカ好きなのです」 比較はハクビシン。イーリスは涙を湛える。首だけだからって、こんなことになってしまって。 「はいぱー馬です号!!!」 う→ま↓だなんて鳴く馬を引き連れてイーリスは馬へと放つ。渾身の一撃を。 「必殺! いーりすどらいばあああああああ」 凄まじい顔をしている。唇を動かし威嚇しているイーリス。 その顔が向いたのは――悪いアルパカであった。 「わし悪いアルパカやないでー!?」 彼の真下から出てきたアルパカ。きっとそれを見つめたのだろう。慌てて踏みつぶした仁太が手を振る。 「パンツめくらせるか!!」 前方へと向けたハニーコムガトリング。いえ、パンツ捲りに来たわけじゃないですよ。足の間にアルパカは居ませんよ。 (・´ェ`・)<…… 「……」 イケメンであった。とてつもなくイケメンであった。イケメンとは何か。広義であればイケてるメンズである。 ごくり、生唾を飲む。 ――ああ、つまりは。 「全部、オスやね」 どうでもええな、うん。そう自己完結した仁太であったが、心なしかにやっとした気がする。何故だろうか。 そんな様子を見つめていた未明は哀しくなる。残パカは少ない。モフろうかな、どうしようかなと手が宙をさまよった。 「モフり……は遠慮する」 だって、暑いじゃん☆ そんな☆ サマーバケーション☆ 彼のその気持ちは分かる、だが、隣でぷるぷると震えている小五郎が放つ雨で農家のおじいちゃんが声を上げる。 現在:104パカ ● しん、と静まった畑には何とも言えない静寂が訪れている。 「終った……? さよならアルパカァ」 多分、君達の事なら忘れる事はないというか、嫌でも忘れられないよ。涙ながらに未明は言う。 嗚呼、これが冬であれば――いえ、冬なら雪ですよ。夏場に動くのは暑過ぎる。 「どこか涼める場所に行きたい、っていうか水が欲しい」 「同じく、水が欲しい」 「はて? 水なら三日前に……」 俯いたユリア。未明は顔を見合わせて小さくため息をついた。 ふるえる小五郎は農家のおじいちゃんにダブルピースを見せる。――が、彼には疑問があった。 「ぱ、かあ……? もぐらじゃのうて馬じゃったろうか」 こりゃ悪い事をしたのう、なんて彼は笑う。そんな小五郎の近くにしゃがみ、イーリスが微笑んだ。 「畑、すごいことになってるのです! 小五郎さんも一緒に!畑!耕すのです!」 名付けてWJ(だぶるじじい)なのです! 輝く瞳。おじいちゃんたち――WJとイーリスの暑い夏が始まろうとしていた。 「嗚呼、イケメンであろうとな、胃液の混じった唾とかクサイぜよ……」 悪いアルパカは泣いた。とてつもなく泣いた。イケメンで、オスだったからだ。顔は良かったのに。 「……キングアルパカ、見たかったです」 もふ、もふ、とひょこりと顔を出したアルパカの頭を撫でる。きっとこれが最後の一匹だ。 「パカァ……聞き慣れれば可愛い鳴き声ですね」 頬を寄せる。夏のアルパカの毛は暖かい太陽の匂いがする。柔軟剤を使ったかのような匂い。 「キングアルパカ、無念であったな」 ミリィの肩をとん、と叩いた源一郎は俯く。少女とアルパカの心温まる行動。 ――いい話になっている。いい話だ。 「いずれ姿を見せるだろう」 「はい……、その時まで暫しお別れ、です」 少女は立ち上がり武器を振るう。パカァ……そう鳴いたアルパカは消えた。 「またね、アルパカさん」 「嗚呼、夏は続く。アルパカの夏も等しく」 そう、背を向ける。 (・´ェ`・)<パカァ…… 背後でアルパカは小さく鳴いた。そんなサマーバケーション。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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