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Shady Satan

●闇
 彼は薄闇の中で目を覚ました。
 とは言っても眼窩はからっぽで、傍目には彼が起きているのかそうでないのか判断がつかない。それでも彼は起き上がり、その窪みから這い出た。
 湿気が多く、肌に纏わりつくような不快な生暖かさ。彼にもし眉があれば、それを不愉快げに潜めていただろう。窪みから這い上がったと同時に動きを止め、けれどそのまま立ち上がって周囲を見回す。
 広い、広い空間だ。端から端まで大股三十歩以上はあるだろう。天井が低いのは難点だが、それでも自分のような者が居着くには充分な広大さを誇っている。
 彼は先ほどとは一転、満足げに身体を揺すると、がりがりの骨だけとなった両腕を開いた。途端、輝く光、空間内に満ちる閃光。瞬きののちには、その広い空間内に彼の配下達が数十体ほど出現していた。

 彼は命じる。自分が力を蓄えるための餌を連れて来る事を。
 そして、数十体の配下達は己が主人の願いを叶えるため、広間を出て行った。

●Shady Satan
「アザーバイドよ」
 ブリーフィングルームに集められたリベリスタ達を前にして、『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)は簡潔にそう言った。
 詳細を求めようとするリベリスタが身を乗り出すのを、イヴは片手で制しつつ「今話すから」と言葉を継ぐ。
「現れたアザーバイドは人型で、大きさも私たちとそれほど変わらない。……でも、骨だけ。いわゆるガイコツ。
 みんなには、このガイコツを倒して欲しいんだけど……」
 そこまで一息で話したイヴは、だが一旦言葉を切り、躊躇うような素振りを見せる。
 だが、やがて意を決したのか、顔を上げてきっぱりと言った。
「このガイコツ、元の世界では支配階級だったみたい。って言ってもこっちの世界で言う貴族とか庄屋とか、そんな感じの階級程度なんだけど。
 とにかく、このアザーバイドは配下を召喚して、人間を襲わせようとしているみたい。それは今から数時間後。出現する配下の数は……三十体。気持ち悪い虫みたいな感じの姿してる」
 イヴが言うには、その気持ち悪い虫みたいな配下達は、自分の主であるガイコツを倒す事ですぐに消失するのだと言う。そのため、今回の依頼は配下ともどもガイコツを倒す事ではなく、ガイコツのみを倒す事に集中して欲しいのだとも。
「ガイコツの命令で、配下達の半分――十五体は、建物の外に出て人間を探すために飛び立っていく。残りの十五体はガイコツを守るために残るみたいだね。
 ……みんなが到着して、すぐにガイコツ達の元へ向かえば、十五体の配下が飛び立つ前に辿り着ける。十分だけ待機していれば、十五体の配下達が飛び立っていくのが見えると思う。
 今回みんなに依頼するのは、ガイコツを倒すってことだけ。……飛び立った配下達がどんな被害を出そうとも、ガイコツさえ倒せばそれで成功。
 だから、みんなに任せる。十分だけ待って、敵の数を減らしてから広間に突入するか、それともすぐに突入してアザーバイド達と相対するか……」
 そこまで言ったイヴは、少しだけ息を吐くと、ほんの少しだけ明るい声音で言った。
「とにかく、このアザーバイドを放っておけば被害は増える。だから、みんなはその前にアザーバイドを退治して」


■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:水境  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 4人 ■シナリオ終了日時
 2011年05月30日(月)23:44
水境です。
大勢の敵を蹴散らすのは浪漫ですよね。


●任務達成条件
 支配者階級アザーバイド(一体)の討伐

●戦場
 20m×20mの、正方形の広間。廃墟となったビルの地下です。天井は低く、飛べません。
 地下への階段を下りるとすぐに広間に到着、その広間の奥にガイコツがいます。
 入り口付近からだと、遠距離攻撃はガイコツの元に届くでしょうが、近距離攻撃を当てようと考えると、ガイコツを守る配下達を何とかする必要があります。

●アザーバイド
 支配者:ガイコツの姿をしたアザーバイド。ウィルパワー高め。
     使用スキルは以下の通り。
  【黒い雷】全体/遠/ダメージ+クリーンヒットで<麻痺>
  【光弾】単体/遠/ダメージ

 配下:30体、もしくは15体。PC達が突撃する時間帯によって変化します。
    カマドウマのような変な姿をした配下。二足歩行します。
    ウィルパワー低め。
    使用スキルは以下の通り。
  【噛み付く】単体/近/ダメージ+クリーンヒットで<出血>
  【体当たり】単体/近/ダメージ
参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
ホーリーメイガス
霧島 俊介(BNE000082)
マグメイガス
雪白 音羽(BNE000194)
ホーリーメイガス
アリステア・ショーゼット(BNE000313)
スターサジタリー
ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)
覇界闘士
鈴宮・慧架(BNE000666)
スターサジタリー
モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)
プロアデプト
阿野 弐升(BNE001158)
デュランダル
蘭・羽音(BNE001477)
■サポート参加者 4人■
プロアデプト
鬼ヶ島 正道(BNE000681)
デュランダル
降魔 刃紅郎(BNE002093)
スターサジタリー
立花・英美(BNE002207)
ホーリーメイガス
エリス・トワイニング(BNE002382)

●始
「まだ被害が出る前に分かったってのは僥倖かね」
 地下へと降りる階段に足を踏み入れつつ、雪白 音羽(BNE000194)はそう一人ごちた。その手甲には紋章のあしらわれた術手袋が嵌められており、彼はそれを見下ろしつつ詰めていた息を吐き出した。
 とある廃墟ビル内。
 この地下に現れるというアザーバイドを退治するため、依頼を受けたリベリスタ達は到着早々ビル脇にある地下への階段を降り始めたのだった。
 時間を空けずに突入する、その目的は一つ。
「十分も待っていたら、戦闘の間に人が犠牲になるかもしれない。待たずに突入よ」
『鋼脚のマスケティア』ミュゼーヌ・三条寺(BNE000589)の言葉に、同じ思いを抱いていた仲間のリベリスタ達が賛同したのだ。カレイドシステムの予知では、到着後十分待てば、アザーバイドの配下がビル外に出るため、戦闘が楽になる可能性があるという。
 しかし、人間を狩るために飛んで行く配下達がその後何をするのかは自明の理。リベリスタ達は、その信念で持って、配下達が飛び立つ以前に突入することを決意したのだった。
(それに、今回の仕事には羽音が同行してるしなっ)
 そんな中、前方を進む恋人の背中を見ながら、『Gimmick Knife』霧島 俊介(BNE000082)は暗闇の中できゅっと拳を握っていた。今回の依頼には彼の恋人である『眠れるラプラー』蘭・羽音(BNE001477)が同行しているため、普段よりもやる気が倍増しているらしい。
(いいとこ見せるために頑張るんだぜ……!)
 恋人がそんなことを考えているとは露知らず、羽音は隣を歩く『フィーリングベル』鈴宮・慧架(BNE000666)と視線を交錯させていた。
「カマドウマ、うようよしてるみたい……、ちょっと、怖いような気もするけど、頑張らなくちゃね」
 羽音の言葉に慧架はかすかに微笑み、羽音とお揃いのリボンを巻いた腕を突き出した。
「うん、がんばろっ」
「がんば、ろ」
 そう言い合い、二人の少女は握ったこぶし同士をこつんと突き合せる。

 先頭を歩いていた『デストロイド・メイド』モニカ・アウステルハム・大御堂(BNE001150)が足を止めたのはその時だった。
「到着したようです。いますよ、うようよと……公衆便所にもよくいるアレが」
 彼女の言葉に仲間達は足を止める。
 モニカの肩越しに見えるのは、やや広大な広間と、そしてそこに密集するように存在する、アザーバイドとその配下達だった。

●戦
「きっ……気持ち悪ー!」
 広間にわんさと存在するカマドウマ型配下達に向け、階段を下りきったばかりの『おじさま好きな少女』アリステア・ショーゼット(BNE000313)は、その華奢な手から魔法の矢を放った。弧を描きつつ配下達の一体に向かったそれは、見事命中してその腕を叩き落す。またもやアリステアの口から悲鳴染みた声が上がった。
「あっ、アリステア嬢ちゃん!?」
 事前に「回復メインでがんばるよ」と言っていた彼女の行動に俊介は慌てる。そして未だ背筋を凍りつかせている彼女を宥めようとそちらに駆け寄り、その肩にそっと触れた。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫だけど……あ、あんなのが三十体とかうぞうぞいるの、気持ち悪い!」
 アリステアに言われ、俊介もそろそろとそちらに視線を向ける。そこには細い身体に長い触角と足を持つ、二足歩行のカマドウマ型配下達が――
「ま、まあ確かに気持ち悪いけど……か、カマド……便所コオロギ……ギィィィヤアアアアア!!」
 思わずその精緻な様子を観察してしまい、アリステアを宥めるどころか自身も悲鳴を上げてしまう俊介。しかし俊介の恋人は、彼よりも存外冷静だった。
「切って、切って、切りまくるよ」
 ざわっとこちらに視線を向けてくるカマドウマと骸骨。しかしそれにも怯まず、羽音は道を塞ぐカマドウマ達に向けて駆け、その手にしたグレートソードを振りかぶる。
「えいっ」
 可愛らしい気合の声と共に振り回される大剣。踊るようなステップと共にその切っ先が舞い、周囲のカマドウマ達の腕を、胴を凪いで行く。
「最初っから全開で行くかね」
 マジックガントレットの端を引いた音羽は、その手を前方へと向けたところで、傍らからよろよろと近付いてくる俊介に気付く。俊介の顔は蒼白、おまけに憔悴染みた色が浮かんでいて、音羽は眉をひそめた。
「……大丈夫かよ?」
「大丈夫! 奴らぶっころす!!」
 言いつつ両手から聖なる光を現出させ、カマドウマ達、そしてその向こうにいる骸骨を焼き払って行く俊介に、音羽は唇を引いた。
 そして改めてガントレットで覆われた手をカマドウマ達の中心に向ける。
「こうして皆で攻撃をばら撒くとかあんまりねーからな、楽しみたいもんだ」
 彼の言葉と共に現れた魔炎は、カマドウマ達を巻き込んで爆発する。焼き払われていくカマドウマ達の腕が、首が、足がもげて行く。カマドウマの胴回りや足は非常に細いため、見通しは良いのだ。多くのカマドウマ達が悲鳴のような慟哭を上げた。
 恐ろしいのは、その状態になってもまだカマドウマ達が動き、こちらに近付いてくる様子が見られる事だ。手をかざしてその様子を眺めていた『消失者』阿野 弐升(BNE001158)は軽く頬を緩めた。
「大勢の敵を攻撃出来る能力をお持ちの方が多いので、精神衛生上よろしくない光景が見られるとは思っていましたが……これは予想以上ですね」
「グロいですよね……」
 慧架がげんなりした様子でガントレットを装着する横で、ただ弐升は朗らかに言う。
「そうですね。色んな意味で楽しみでした」
 しかし二人が動くよりも前に、カマドウマと骸骨達の行動の方が早かった。突然現れた侵入者――つまりリベリスタ達に、幾度も攻撃を浴びせられた彼らは、遅まきながらもこちらを敵とみなしたらしい。いや、あるいは餌とみなしたのだろうか――瞳を凶悪なまでに光らせ、身構えるリベリスタ達に襲い掛かった。
「わっ」
 攻撃を浴びて四体のカマドウマは屠ったものの、残りの二十六体のうち、八体は前に出ていた羽音と『百獣百魔の王』降魔 刃紅郎(BNE002093)の元へ。残りはわらわらと後衛である弐升達に接近してくる。
「……確実に数を減らすのも大事ですよね」
 弐升は集中するために引き気味だった肩を前に出し、ハルバードを握る。そして前衛の間を縫って近付いてきたカマドウマの一体に振るった。その腕が薄暗い広間に舞う。
「きっ、きゃああっ!!」
 その更に後方ではアリステアが近付いてきた三体のカマドウマに悲鳴を上げていた。そのうちの一体が彼女に向けて突進してくる。思わず眼前に手を突き出す彼女だが、いつまで経っても衝撃は起こらない。
 恐る恐る視線を上げると、そこに立っていたのは『静かなる鉄腕』鬼ヶ島 正道(BNE000681)。アリステアを庇い、代わりに攻撃を受けた彼は、それでもどこか労るような視線で振り返る。
「大丈夫でございますか?」
「う、うん……」
 頷くアリステア。しかしその心中では、格好良いおじさまにドキドキだ。
「……っ、高見の見物をするつもりは無さそうですね」
 一方、こちらもカマドウマ達に囲まれた慧架は、それら敵の合間から骸骨が動くのを見つけた。ぎこちない動作で攻撃を放とうとするそれに向け、彼女は――周囲にその配下達がいるにも関わらず鋭い蹴撃を放つ。発生したかまいたちは骸骨へと向かい、そしてその白い胴を凪ぐも、それは動きを止めない。
 そして、骸骨は両手を掲げる。
 瞬間、広間に黒い閃光が舞い踊った。耳を劈くような轟音が響き、雷がリベリスタ達の身体を貫く。
 痺れる舌を首を振って何とか麻痺から逃れたミュゼーヌは、傍らでアームキャノンを構えるモニカと頷き合う。
「あの骸骨までの道を切り開くわよ」
「分かっています。可能な限り殲滅してやりましょう」
 そう言って、ミュゼーヌのリボルバー、モニカのアームキャノンから、ほぼ同時にハニーコムガトリングが発せられる。
「どきなさい、虫ケラ達!」
 ミュゼーヌが叫ぶ。
 敵を殲滅するためだけに作られた冷たい二つの銃から、蜂の名前を借りた弾丸が刺すように飛びカマドウマ達を貫いていく。リングベルトは瞬く間に機関部に飲まれていく。
 黒い閃光に取って変わって場を支配した蜂の大群は、みるみるうちにカマドウマ達の数を減少させた。モニカはトリガーを引いていた指を離し、前方で剣を振るう羽音に軽く手を挙げた。
「大将の華やかなトドメ役などは、勇敢なる突撃兵の方々にお任せしますよ」
 そしてミュゼーヌは、カマドウマ達が倒れ伏したその先に佇む骸骨を視認する。いっときだけ開いたミュゼーヌとアザーバイドの隙間。その間隙、アザーバイドへとぴたりとリボルバーの銃口を向け、ミュゼーヌはかすかに笑う。
「来なさい、裸の支配者様。格の違いを見せてあげる」

●結
 エリス・トワイニング(BNE002382)の癒しの歌が傷を塞いでいくのを見下ろした後、弐升は静かにその視線を前方に佇む骸骨へと向けた。
 あの後も幾度か禍々しい黒い雷が広間を覆い尽くしたが、それでもアリステアやエリスの歌と息吹で戦線を持ちこたえている。お陰でカマドウマは残り十体ほどにまで数を減らしているが、しかし骸骨は慧架の斬風脚や弐升のピンポイントの遠距離攻撃を受けてなお、堪えた様子は見えない。
(まあ、骸骨の表情なんて分かりませんけどね……)
 軽く息を吐き出す弐升の元に、大剣を持ち息を切らした羽音が走り寄って来る。
「ごめ、ん。下がるね」
「分かりました、交代ですね」
 ダンシングリッパーでカマドウマ達を踊り斬っていた羽音は、けれどそろそろ限界に達したのだろう。肩口に負った傷を庇いながら弐升に話しかけ、彼が頷くのを見て取ると、後衛の仲間達の元に駆けて行った。
「さて、撃ち合いとしゃれ込もうか?」
 声に気付いて弐升が傍らを見れば、音羽が導師服の裾をたなびかせて近付いて来たところだった。弐升は頷き、ハルバードを手に残りのカマドウマ達を狙い、駆けた。その横を併走するかのような音羽のマジックミサイルが一陣の光となって、骸骨の頭部を襲撃する。

「ふう……」
 自身の放ったハニーコムガトリングを受け、その場に倒れるカマドウマを見下ろしたミュゼーヌは、詰めていた息を吐き出した後、傍らで未だトリガーを引き続けるモニカに視線を移動させた。
「私は少し後ろに下がるわ」
「分かりました。私はもう少しここで撃っています」
 骸骨に相対する者達を援護するため、精神力を惜しまず自身の力を使うつもりだったモニカは、頷きつつもその引き金を引く指を離す様子は無い。ミュゼーヌは軽く瞼を伏せて返事の変わりにすると、そのまま後方で援護を行っている仲間達の下へ歩き出そうとして――
 そして、後ろで光が溢れたことに気付いて肩越しに振り返る。
 見ると、残りわずかなカマドウマ達の間に隠れた骸骨が、その手から光弾を放ったところだった。見るからに威力の高いであろうそれが狙うのは、リベリスタ達の後衛で援護を行う――俊介!
「まずい」
 駆け出そうとしたミュゼーヌの褐色の髪を揺らし、光の弾は俊介の元へ向かう。

 恋人の下に向かう光弾に気付いた羽音は、その足を速めた。
「俊介っ……」
 そして、彼の元まで駆けた羽音はその光弾の前に身を投げ出し、今にも俊介の身体を撃ち抜きそうだったそれに自ら直撃された。
「羽音!」
 くず折れる羽音。彼女を慌てて支えた俊介は、しかし次の瞬間、羽音の身体から淡い光が放たれ始めるのを見て瞠目する。
「俊介、は……何があっても守りたい、大切な、ひと」
 恋人の声が俊介の耳朶を打つ。
「傍にいてくれたら、もっと頑張れる、よ」
 顔を上げた羽音は、それでも弱々しく笑う。傷つき倒れて尚、俊介を守るために命を燃やし、立ち上がった羽音。その恋人を俊介は思わず抱きしめる。
 その様子を見、『ミス・パーフェクト』立花・英美(BNE002207)は、きっとアザーバイドを睨みつける。
「土足で踏み入り人を贄とする外道者、父の弓で打ち砕きます……!」
 1$シュートが広間を縫い、骸骨の胴に叩く。刃紅郎も風を切って走り、その元へ向かう。
「たかだか貴族や庄屋程度で支配階級気取りか……笑わせる!」
 彼のオーララッシュは見事骸骨の腕を打ち砕き、白い骨が勢い良く広間に散った。
「これで――終わりにします」
 そう言って、ガントレットを携え駆けたのは慧架。親愛の情を抱く羽音が傷つけられ、唇をかみ締めていた彼女は、みるみるうちに近付いてくるアザーバイドにその腕を振り上げた。
「よくも仲間を傷つけてくれましたね。――貴方に絶望を、フィナーレ」
 放たれたのは業炎撃。燃え盛る炎を纏った、彼女の一撃は――
 アザーバイドの頭部を打ち砕く。

 咆哮が上がる。否、恐らくそれは断末魔だろう。
 なぜならそれが途絶えた時、そこに既に、リベリスタ達を苦しめたアザーバイドは存在していなかったからだ。

●終
「……大丈夫か、羽音」
「平、気」
 俊介に支えられて立ち上がった羽音は、よろよろしつつも崩れ去ったアザーバイドの元へと向かう。そこに残るのはかすかな白い骨のみだったが、彼女は瞼を軽く伏せた。
「骨だけど、どこか静かな場所に埋めてあげたい、な」
「そうだね」
 アリステアも頷き、ちょこちょこと彼女の隣までやって来ると、骨の脇にしゃがんでその一つを握り締める。
「……この骸骨さん、生前? は何をしてて、どんな性格だったんだろうね。出会い方が違えば、戦う事は無かったのかな……」
「アザーバイドですから、元から骸骨だった可能性もありますけどね」
 アリステアの言葉に真面目くさってモニカが応じる。二人の会話を目を細めて聞いていたミュゼーヌは、しかしその視線を残った白い骨に向けると、やや剣呑さを滲ませた声音で囁いた。
「……この力は、罪無き人々を守るために授かったの。貴方のような暴君が現れる限り、何度でも撃ち抜いてあげるわ」

「ふう……」
「お疲れさん」
 アザーバイドに止めを刺した後、その場に座り込んだ慧架に、近付いて来た音羽が手を貸した。
 礼を言って立ち上がる慧架は、自身の手に巻きつけたリボンと、そして少し離れた位置で骨を回収している羽音を見、軽く息を吐き出した後、頬を緩めてかすかに笑んだ。
「そろそろ帰りましょう」
「そうだな。アザーバイド退治も終わった事だし」
 慧架の言葉に頷く音羽。傍らで二人の会話を聞いていた弐升もしっかりと頷いた後、しかしわずかに首をかしげた。
「ですが、次にこういう機会があれば、まとめて攻撃できる手段を持って臨みたいですね」
「何でだ?」
 音羽の疑問に弐升は笑って答えた。
「正直、範囲攻撃をばら撒く皆が爽快そうで羨ましかったですし」

 ――彼の望みは叶うのかどうか。それはカレイドシステムでも、未だ検知出来ず。

■シナリオ結果■
成功
■あとがき■
このシナリオを執筆するため、カマドウマの画像を検索したのですが……いやぁ、気持ち悪いですね。

ともあれ、骸骨とその配下達は、皆様の高効率な攻撃の前にあっさり殲滅されました。
少しでも楽しんでくださる事を願い、筆を置こうと思います。