●白く塗り潰す、処理 ――カラン、と音を立てて地に堕ちたそれは、剣だった。 「……くっ……」 「まあ、まさか逃げ出した上に、此処まで反抗するなんて革醒したばっかりにしては頑張った方だと思うよ。でも、流石にそれ以上は無理だよね」 丸腰となった少年は、その言葉に反論も出来ずに崩れ落ちた。眼前の白衣の女は、何処か嬉しそうに目を細めた。 「ふいー、漸くこれでターゲット再確保ーっと。予想外の抵抗はあったけど、ま、終わり良ければ全て良し、って所かな?」 女の周囲に控えていた“守女”の一体が、少年を担ぎ上げる。 そのまま、女達は少年と共に鬱蒼と生い茂る森の木々の中へと身を翻していった。 ●月蝕に頼らぬ、歪曲 ブリーフィングルームでは、二人の女性が待っていた。 一人は、『転生ナルキッソス』成希筝子(nBNE000226)。しかし彼女は唇を引き結び、椅子に座ったまま黙り込んでしまっている。 「今回の件は、私から説明させて頂きます」 待機していたもう一人の女性『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)の言葉を受け、リベリスタ達は彼女を振り返る。 「黄泉ヶ辻の構成員である女性フィクサードが、革醒したばかりのフリーのリベリスタを拉致しています。その後彼は逃亡しましたが、発見され襲撃、再度拉致される――万華鏡により観測された未来。皆さんには今回、この事件を阻止して頂きます」 リベリスタ達が頷くのを認めると、和泉はモニターに二人の人物を映し出した。一人は、白衣を着たフライエンジェの美女。もう一人は、深いが柔らかい色合いの緑のバンダナを巻いたチーターのビーストハーフの少年であった。 「此方の女性が、事件を起こすとされるフィクサードとなります。名前は、風間亜美那。フライエンジェのレイザータクトで、識別名“比良坂守女の戦扇”なるアーティファクトを保有している模様です」 ――“比良坂守女の戦扇”。 自らの動きを制限する代わりに、土から女のE・アンデッドにも似たE・エレメントを生み出し、使役する。しかもその群れは無尽蔵に再生を繰り出すのだとされる。 しかしアーティファクトさえ破壊してしまえば再生能力は失われ、健在のE・エレメントは土へと還る。 「ですが、残念ながらリベリスタの彼――十文字陽が襲撃されるのは避けられないでしょう。今から急ぎ現場へと向かっても、彼はフェイトによる復活も空しく、抵抗の末に撃破されてしまいます。しかし、死亡してはおりませんので、倒れた彼を護りながら戦う形になると予想されます」 つまり、亜美那とその使役するE・エレメントの猛攻を防ぎ、アーティファクトを破壊する。その上で陽を保護すれば、敵は目的を果たせなくなる筈だ。 「厄介な事には、E・エレメントは常に三十体召喚され、一個体の戦闘能力は然程高くないものの、撃破後即座に再生してしまいます。加えて常に風間は庇われており、その上アーティファクトは遠距離攻撃で破壊する事が出来ません」 これだけ聞けば、絶望的。しかし、得てして完璧等というものは滅多に転がってはいないもの。 E・エレメントが再生能力を失う条件が、先に述べた方法以外にもうひとつ、存在すると和泉は言う。再生を繰り返すE・エレメントを、一定回数以上倒す事。具体的な撃破目標は判明していないが、兎も角、目標数を撃破した段階で全てのE・エレメントが崩れ去る。 それによってアーティファクトが効力を失った所で、亜美那に肉薄、二度と使えないように破壊してしまえば良い。 「長期戦を強いられるでしょうが、皆さんなら必ずや成し遂げて下さると信じています。宜しくお願いします」 和泉が丁寧に頭を下げる――それと同時に、徐に筝子が立ち上がった。そして此処に来て漸く、その薄い唇を動かした。 「……今回は、私も同行させて下さい。その風間という女性……恐らく、私の知ってる人物なので」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:西条智沙 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ EXタイプ | |||
■参加人数制限: 10人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年08月08日(水)22:23 |
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■メイン参加者 10人■ | |||||
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●水辺に綻ぶ、水仙 草木が鬱蒼と生い茂る森の中を、リベリスタ達は往く。 この先に、廃ペンション『サザンクロス』がある筈だ。そしてその中には、救出対象と、立ち向かうべき黄泉ヶ辻のフィクサードが。 (成希と風間の関係なんて私には関係ない事ね……だけど) 『自堕落教師』ソラ・ヴァイスハイト(BNE000329)が、ちらりと横目で少女を見遣る。金髪に緑瞳、線も細く人形のような、大凡戦闘員には見えない少女。それが筝子。だが今彼女は、自ら率先して此処にいる。 彼女はフィクサード――亜美那と因縁がある。その為か、その表情も強張っているように見えた。 (大丈夫だとは思うけど) 暴走しないとも限らない。せめてもう少し平素の冷静さを取り戻してくれれば良いのだが。 ――筝子の首筋に、禍々しく歪な、大鋏が向いたのは、ソラがそんな事を思った瞬間と、ほぼ同時だった。 「成希ちゃん。殺して、欲しい?」 「――ッ!?」 底冷えするような、しかし何処か優しげな響きさえ含んだ『殺人鬼』熾喜多 葬識(BNE003492)の声に、筝子が硬直したのも束の間の事。 「なんてね? 気負わないでね」 「は、はあ……」 彼なりの気遣いであったのだろう。ゆるりと下ろされた鋏を目で追って溜息を吐く筝子からは、ぴりぴりとした静電気のような空気は消えていた。 それに乗る形で、他の仲間達も次々彼女に声を掛ける。 「成希様、風間様との関係は報告書で確認は致しました。ですがくれぐれも、落ち着いて行動なされますように。任務のみならず、貴女様の為にも」 「以前奴と何かあったのだろうが、それはそれこれはこれ、だ。アデプトは論理と思考で戦う者だ。冷静さを欠いてはいけない」 『忠義の瞳』アルバート・ディーツェル(BNE003460)も、『ピンポイント』廬原 碧衣(BNE002820)も、どうにか戦闘演算者としての筝子を取り戻そうと言葉を贈った。 「それに、陽に先輩らしいところもしっかり見せなければならないだろう?」 「それは……そう、かも知れませんね」 冗談めかした碧衣の言葉に、漸く少し筝子にも落ち着きが戻って来たのか、微かに、笑む。 ――が。 「……えひゃっ!?」 不意に、彼女らしからぬ何とも間抜けな悲鳴を上げた。 「どうもまだ少し表情が固いね、これで少しは解れたかな」 『九番目は風の客人』クルト・ノイン(BNE003299)が、筝子の頬を軽く引っ張っていた為である。 目を白黒させる筝子を解放すると、諭すように語り掛ける。 「見当はつくよ、あの水仙だろう?」 「……あ」 恐らくは風間によって筝子に齎されたそれから筝子を救い出したのは、他でも無いクルトだ。だからこそ良く知っている。 けれど、それでも、そればかりに囚われているわけにもいかない。筝子もそれは判っている筈であった。 「だから、気にするなとは言わない。ただ、周りの俺らを忘れないように」 これは、この場にいる全員の、戦い。誰か独りきりの戦いではない。 全員がそれぞれに受け持った役割をしっかりと熟す事によって、勝利を掴む。リベリスタの戦いとは、そういうものだ。 「支援、当てにさせて貰うよ」 その言葉に頷いた筝子からは、普段通りのの怜悧で落ち着いた雰囲気が、少なからず戻ってきているように感じられた。 ●南の森に戦う、十字 筝子も幾分か安定した所で、リベリスタ達は先を急ぐ。とは言え、無駄な消耗は避けねばならない。 無理無くしかし確かな足取りで、目的地へと歩を進める。 「ともあれ、成希さんの様子を見るに件の水仙の出所は彼女の様ですね」 『星の銀輪』風宮 悠月(BNE001450)がぽつり、呟けば、『銀騎士』ノエル・ファイニング(BNE003301)も頷いて。 「……筝子さんの過去の事も鑑みると、何かの実験も兼ねているのでしょうか」 「風間亜美那……果たして何者なのでしょう」 「まあいずれにせよ、阻止するまで」 真っ直ぐに前を見据えて、携えた銀槍、その柄に手を掛けるノエル。信念の名を冠するそれは正にその体現。ただ、曲がらぬ正義の証。 倣って、悠月も前を見る。この先に待つ女は得体の知れぬ女。思うところ、考える事は色々あった。だが、そう。恐らく亜美那は危険な女。彼女の企みは、此処で確実に潰えさせなければならない。 「ええ、同胞を奪われるわけにはゆきません。ましてや相手は黄泉ヶ辻……」 黄泉ヶ辻の企みが、碌な結果を招く訳が無い。『不屈』神谷 要(BNE002861)はそれを知っている。 勿論、此処に集ったリベリスタ達の周知の事実でもある筈だ。 「止めて見せます。どうせ碌でも無い事を企んでいるのでしょうし」 決意も新たに、リベリスタ達は先へ。また先へ。 そして――木々に阻害されていた彼等の視界が、ある地点で一気に開けた。 「あれが……『サザンクロス』?」 声を上げたのは『エンジェルナイト』セラフィーナ・ハーシェル(BNE003738)。 彼女含めたリベリスタ達の視線の先にあるのは、『サザンクロス』と思しき廃屋。窓が割れたりこそしているものの、少なくとも外観の損傷状態は然程でもないように見えた。 「……兎も角、あそこにいるんですね、陽さん」 その小さな掌をぎゅっと握り締めるセラフィーナ。脳裏を過ぎるは助けられなかった人々の姿。 けれど、今回はまだ希望がある。 (でもこの人はまだ間に合う。手の届く範囲にいるのなら必ず助けてみせる。世界だけじゃなく、人々の命を救うのが私の目指すリベリスタだから!) そんな彼女の決意、それ故に生み出される静かな昂揚感に、リベリスタ達は気を引き締めて。 「それじゃあ、行きましょう。“急いで”陽さんは倒された直後ですからね……」 皆、七布施・三千(BNE000346)の言葉に無言で頷き、ペンションへと突入した。 ――改めて開け放たれるドア。 亜美那は其処にいた。奥には、倒れた陽らしき人物の姿も見える。 「それまでです。その危険な扇諸共に、此処で潰えて頂きます」 「フィクサード、貴方の思い通りにはさせません!」 威勢良く啖呵を切るは、ノエルとセラフィーナ。亜美那はゆるりと振り返り、ぼんやりした眼差しを向けてきた。 淡い金髪に青い瞳。細身の長身、かなりの美人だ。しかし縁の太い眼鏡を掛け、白衣の下はタンクトップにホットパンツと、かなり服装に頓着していないように見える。素材は良いだけにかなり台無しだ。 だからこそそんなスタンスから窺える――彼女は正に、マッドサイエンティスト。 そんな彼女を護るように、その周囲を囲うE・エレメントの群れ。しかしクルトは臆さず告げる。 「Guten Tag. そこの彼を引き取りに来た箱舟便だ」 ●猛毒を孕む、美女 ――言うや否や、真っ先に動いたのは、セラフィーナだった。 包囲の脇、亜美那の守りを固める事で空いた隙間を縫って彼女は陽の下へと駆ける。 亜美那やE・エレメントは追撃しなかった。 「……どういうつもりです」 要が問うが、亜美那は肩を竦めるのみ。 「べっつにい? 取り返せば良いだけの話だし」 「簡単に言ってくれるねえ」 へらりと返す殺人鬼――葬識にすら、亜美那は不敵な笑みを返す。 「どうせアークのお使いでしょ? 私を討伐するか、これ壊すかしないと帰れないんじゃあないの?」 (読まれてます、か) 葬識とノエルにテレパスを繋ぎながら、アルバートは亜美那を恐ろしい女だと再認識する。尤も、彼はそれしきの事で動じる男ではないのだが。 「何を企んでいるかは知らないが……黄泉ヶ辻の連中に好き勝手されるのは癪だよ」 柳眉を僅かに顰めた碧衣が、意志の力より生み出した神聖なる光線で敵を穿ち、陽の下へと続いてゆく道を拓く。 その間にも、セラフィーナは陽の下へと近付いてゆく。三千も、現場にて自ら調べるべき事を、ほぼ終えたようだ。 陽の周囲にも、多くのE・エレメントがいる。救助に向かったセラフィーナを援護するのは、ソラとクルト。 迸る神秘の雷鎖が遍く敵を悉く射抜き、荒れ狂う斬蹴の衝撃波が阻む壁を容易く薙ぎ倒す。 その間にもセラフィーナを陽の下に送り届ける事に成功する、が。クルトはその細い眉を俄かに顰めた。 「……言葉の通り、か」 文字通り、E・エレメントは“即座に”復活を果たしていたのだ! 倒され、崩れ落ちる。だが、一瞬とは言わないまでも数秒すればすぐに土塊から生ける屍へと成り果てる。 タイムラグが無いでもないが、ほんの僅かな間のみだ。これでは、短期決戦は望めそうにも無い。 「数倒して打ち止めさせればいいんでしょ? 持久戦ね……やってやろうじゃない」 ソラも首筋から嫌な汗を伝わせたが、すぐにそれを拭うと不敵な笑みを浮かべて見せる。 そんな彼女に鼓舞されてか、他のメンバーも、怯まずに、自らの役割を果たすべく、動く。 アルバートはその蒼の双眸をゆるりと閉じると、精神を研ぎ澄ませ、勝利を導く方程式を、その脳をフル回転させ、演算する。解き明かされるその解を導き出したその時、彼の集中力は凄まじいものとなっていた。再び開かれた双眸が冷たい光を宿す。 三千は神秘の翼を仲間達のその背に齎すと、自らは亜美那の攻撃射程から外れ、ペンションの天井ギリギリへ。一階と二階で吹き抜け状態になっていたのが幸いと言えるだろう。この位置ならば亜美那の攻撃を気にせず味方の支援に専念出来る。 しかしその時――亜美那の眼が光った。 何処か剣呑な色さえ宿したその輝きに、様子を伺っていた筝子が注意喚起を促す。 ――それは、自身にアーティファクトを手渡してきた時の瞳の輝きと似ていたのだと。 矢張り何か良からぬことを企んでいるに違いない。レイザータクトお得意の攪乱か、或いは事前情報のあった、白き結界か。 いずれにせよ、思惑通りにさせる訳にはいかない。動いたのは、悠月だ。 朔望の書から放たれた蒼雷は奔り、更に多くのE・エレメントを巻き込んで激しく鳴る。一瞬にして十体以上ものE・エレメントが土塊と化した。 しかしそれも一瞬の事で、矢張りすぐに人の形を取り戻してしまう。嫌な徒労感だけが、精神に重く圧し掛かってこようとする。 「命は大事。でも、こいつ等にはそれが無いんだもの。そういうのっていけないと思うなあ~?」 大切な命。だから葬る時もそれを感じるように、大切に。それが、葬識の美学。けれど、このE・エレメントは人の形を取っていながら、人のように動いていながら、最も大切な部分が欠落していると彼は感じていた。 だからこそ、“これ等”は此処にあるべきじゃあないもの。ある意味これは、活殺の理よりも命への冒涜に思えたから。だからその全てを暗黒に呑み込んで、無に還そう。そうしていればいずれは命無き土の人形はきっと崩れ去る。だから、殺すでなく、壊す。 「聖戦に赴く我等に、十字の加護を――」 要は祈る。勝利を、そして無事を。応えて、白き十字架は要に、その仲間達に、光を齎した。光の加護は力を漲らせ、痛みから彼等を護る。これは、守護の願い。その具現。 「……どうやら間に合ったようですね」 要の言葉と同時に動き出すE・エレメント等。だがしかし、彼女の言う通り、守護の光を浴びたリベリスタ達にとっては、敵の猛功も然程痛手ではない。 とは言え、数は多く、群がられると厄介なのは確かなのだが。 「銀騎士ノエル、参ります」 リベリスタ達とて黙って防御、或いは回避しているだけではない。ノエルが宣言すると、白槍の先端には気魄の輝きが集い収束する。そして、白は星流れるように、幾度も重ねて乱舞する。 筝子もベルを鳴らすと、思考の奔流に向かい来たE・エレメント等を呑み込んだ。 ●拮抗の続く、闘争 「今です!」 E・エレメント等の猛攻を凌ぎ、更には味方達へも相当数のE・エレメントが向かったのを見計らって、セラフィーナは思い切って、陽の身体をリベリスタ達の下へと投げた。 「わお!」 目を丸くする亜美那。流石に華奢な少女が、護る事はしても人を投げ飛ばす等想像もしていなかったのであろう。しかも相手は少年とは言え彼女に比べ五歳以上は年上なのだ。 だが、それでも完全に呆気に取られていた訳では無かったか、彼女の意のまま動くのであろうE・エレメント等は宙に浮いた陽へと向かい手を伸ばす。流石に重かったのか、陽の身体はリベリスタ達へと届く前に床に転がりそうになっている! ――だが、其処はクルトがフォローを入れた。 「Tun Sie es lieber nicht、忠告を無視するなら……」 疾風すらも越える雷光の勢いで、そして雷撃纏う渾身の蹴舞が、E・エレメント等を襲い、その身体を土へと還してゆく! 土塊からまた人型に戻るその前に、筝子が床を転がった陽を引き摺りながらも回収、後方へ。 「成希さん、彼をお願いします」 「筝子、任せるよ!」 「……!」 歯痒そうにセラフィーナとクルトを見上げる筝子。矢張り割り切れないものが何処かにあるのだろう。 それを目敏く見つけた亜美那が、薄く嗤う。 「あ、筝子ちゃんいたんだっけねー。でも水仙壊されちゃったしなあ。結局役に立たなかったんだからその子位譲ってよー」 「人をものみたいに言わないで! 成希さんも十文字さんも生きてるんですよ!」 声を荒げるセラフィーナ。筝子も無言で唇を戦慄かせている。 「筝子さん、挑発です、乗らないで下さい……!」 祈るように絞り出された三千の言葉。それが筝子の理性をギリギリの境界線上に押し留めた。 「酷な事を言うようですが、筝子さんもアークの共に戦う仲間として此処へ来たのでしょう? ならば、まずは為すべきを……」 そう言うと、要は改めて筝子の前へ出て――そして一度だけ振り向いて、続ける。 「私達は、仲間は必ず助けます」 その言葉に唇を噛み締めて、拳を握り締めて、筝子は黙り込んでしまう。 そんな彼女に優しく声を掛けて、語り掛けたのは、悠月であった。 「成希さん、――私達が居ます。戦いましょう、共に」 ――独りでは、ないのだから。 喜びは二倍に、悲しみは半分に、痛みも幸せも分かち合う事が出来る筈の存在であれるものなのだから。 「大丈夫だ、“皆で、勝とう”じゃあないか」 「……っ、はい!」 悠月の、そして碧衣の言葉に、確りと頷く筝子。 そんなリベリスタ達の姿に、苦笑を漏らしつつもやれやれと肩を竦める亜美那。 「……やれやれ、仲良き事は美しきかな、って奴?」 「命無き傀儡を引き連れ孤独に戦場に立つ人間には、判らないだろうさ」 今は淡々と、碧衣が再び清浄なる閃光を撃ち出した。浄化の光はまたE・エレメント等を打ち砕き、消滅させる。辛うじて持ち堪えた個体も、世界の崩界を招く存在故か、清浄なる光の前に、覚束ない足取りでよろめいた。 復活の光景にも最早慣れた。しかしこの再生とて無限ではないのだ。諦めずに続けていれば確実に勝機は見える。碧衣は、リベリスタ達はそれを確信していた。 「無限湧き雑魚を倒し続ける爽快感。なんて嘘ね。ゲームだから許せるの。現実だと疲れるだけよ」 だから早々に打ち止めして貰わなくては――ソラもまた、亜美那に負けず不敵な笑みを浮かべると、雷鎖を再び放ち、E・エレメント等を拘束、締め上げ、痺れさせ、散らしてゆく。 間髪入れずに崩壊を逃れたE・エレメント等に向けて、アルバートの神秘の光、その糸が矢のように飛来した。的確にその身を撃ち抜くそれに、一体、また一体と、崩れ落ちてゆく。 幾度目かの雷鎖が弾け飛ぶ。今放たれたそれは、悠月からのものだ。唯一体も打ち漏らすまいと弾け飛ぶそれは、ソラのものと併せて着実に敵の数を減らしている筈であった。その事実が、仲間達をより奮い立たせる。 ――だが、此処で亜美那が動いた。 「そろそろ黙って見てるだけってワケにもいかなくなってきたかなあ」 口ぶりとは裏腹に、余裕の笑み。その目が僅かに感情の色を失った事に気付けた者が、この場にいただろうか? 仮にいたとしても――そんな事を気にする暇も無く、刃のように向けられた、鋭く冷たき殺意の視線に、ノエルが撃ち抜かれる! 「くっ……!」 「ノエルさん!」 悲鳴に近い、悲痛なる叫びを上げる三千。 だが、そんな彼女をフォローするように、葬識と要が更に一歩踏み込んだ。 「助け合い大事~、ミカタのピンチはフォローしないとねえ?」 「フィクサード如きに、自らの意志持たぬ傀儡等に、此方の誰一人譲りはしません」 荒ぶる漆黒の濁流と、精神を直接打つ言の葉に、立て続けに十数体もの敵が屠られる。 味方一人と、フィクサードの意の儘動くだけの傀儡の兵士。その価値等、リベリスタ達にとっては天秤に掛けるべくもないのだ。 ●白き衣で舞う、白鷺 正に“土砂崩れ”の如く押し寄せるE・エレメント等の猛攻を凌ぎ、リベリスタ達は再びの反攻へ。 ノエルの振り翳す槍の舞は未だその威力も精度も失わず、E・エレメントの群に突っ込んでは、脆い部分をその眸によって見抜き、的確に討つ。 逆にリベリスタ側に齎された被害は、戦況を確認しつつ癒しに専念すると決めた三千によって取り払われ、戦線が保たれている。聖なる、且つ希なる高位の存在に祈る事で働き掛け、その恩恵を癒しの風として味方に戦がせる。 敵は多勢。亜美那は除くとしても、個々の戦闘力は然程高くない。それでも、塵も積もれば零でない限りはいずれ山となると言う。癒し手たる三千の存在は確実にこの戦い、リベリスタ側の自給の要であると言えよう。 そして、筝子もまた、自らの神気を練り、アルバートへと受け渡した。彼女もまた、持久で音を上げない為の、云わば燃料タンクの役割を担っているのだ。 「姉さんが守りたいと願った、世界を、其処に住む人達を、其処にある全てのものを守りたい……! だから! こんなところで負けてられないんです!」 陽を後方に託し、自らも今また攻めに転じたセラフィーナが、姉から譲り受けたこの昏き世界に黎明を呼ぶ力を秘めたその剣を振るう。光の粒子が剣を、セラフィーナを纏い、剣戟と共に乱舞した。 更に碧衣が撃ち出す閃光は聖なる光熱を以てしてE・エレメント等を焼き払い、打ち払う。聖光の眩さによって惑わし、その動きを鈍らせる。全ては仲間達に繋ぐ為。 リベリスタ達が各々、三面六臂の活躍を見せる中――亜美那は、再び溜息と共に肩を竦めた。 「……こりゃあ、呑気に一人ずつ相手にしてられないかな?」 その言葉に、三千は、はっとした。 ――来る。 亜美那の、白き翼が今迄に無い羽ばたきを見せる。周囲の空気が徐々に、この季節、時間帯には不自然に、下がってゆく。まるで、刺すように。 「来ます!!」 その言葉だけでリベリスタ達は全てを察した。 同時に、リベリスタ達を取り囲むように、結界のように、白羽の如く細く、美しい神秘の氷、その無数の刃が展開される! 「さてどれだけ耐えられるかしら? 私としては競り負けてくれる方が嬉しいけどね――!」 氷翼の刃が改めて一斉に、リベリスタ達を向く! 「凍っちゃえ!」 雹を削り重さを失う代わりに鋭さを手に入れたようなそれは、吹雪の如く前衛のリベリスタ達の身に容赦無く突き刺さった。更にはその傷口から、氷による浸食が始まってゆく。 出来る限り亜美那から距離を取り成り行きを見守っていた後衛のリベリスタ達も、呆気に取られ言葉を失うばかり。 事前に聞いてはいたが――これが風間亜美那の『白鷺結界』! だが、その中に在って唯独り、冷静に笑う者がいる。亜美那ではない。 「まぁ私に任せておきなさい。へなちょこ結界なんて恐るるに足らずよ」 この結界、氷像の力は厄介だが、威力自体は然程でもない。ならばその動きを制限された仲間達の援けになるように、攻め手を緩めず押し続ければ良い! 「併せましょう……共に」 出席簿を振りかぶるソラの動きに合わせて、悠月もまた手にした書を開く。其処から溢れ出す、魔の力。そして重なり合って放出された雷鎖は少なくとも、一瞬にして亜美那の前方を護るE・エレメント等を一掃した。 その間にさっと吹き抜けた、清浄なる天にましますものからの恵み。三千の祈りによって具現化されたそれが、瞬く間に仲間の受けた氷による戒めを解いてゆく。 「皆さん、亜美那は少なからず動揺していますっ、押し切って下さい!」 「だってー、幾ら氷像にしてもおっつかなさそうなんだもんー」 三千の感情探査により心の内を見抜かれた亜美那は、隠す事は無意味と察したか不満げにそう口にした。その挙動はまるで子供のようだ。好奇心旺盛で、知りたがりの子供。 それにしては要らん大人の汚い知識を身に着けすぎているようだけれど。 「察しが早くて助かるよ」 ――いつの間にか、亜美那の眼前まで肉薄していたクルト。亜美那の前方の防壁が崩れた今ならと、雷撃の蹴舞が今、周囲のE・エレメントをも巻き込んで、亜美那ごとアーティファクトを打ち砕かんと迫る! 「!」 だが、一瞬早くE・エレメントの防壁が復活。その身を挺して亜美那を、或いは自らの生みの親とも言えようアーティファクトを庇って消える。 微かに舌打ちするクルト、しかしその後ろで呑気にも葬識が拍手した。 「惜しい惜しい~! でも……この分なら押し切れそう、かなあ?」 次の瞬間には彼は、ぞっとする程冷たい、残酷な笑みを浮かべて、今また暗黒の瘴気を手に持つ鋏、逸脱者のススメ――その切っ先から空間に蔓延らせる。呻き声のようなものを上げて、消滅してゆくE・エレメント等。 「そうでしょうね、精神的に幼い者がこのような持久戦で長持ちする筈がありません」 「うわあ、言ってくれるなあ」 要の挑発に、大仰に仰け反る亜美那。そんな彼女は無傷だが、肩代わりするように周囲のE・エレメント等が弾け飛んで消えた。 「風間様の白鷺結界は確かに脅威……しかし、このような対多数の戦闘においてそれを模倣し、返す事が出来れば……」 その可能性を秘めた一人であるアルバートが、光糸の乱れ撃ちによりE・エレメント等を次々討ちながら、そう呟けば、ソラと悠月も頷く。 この戦いだけではない、先の戦いで有利に働く事もあるだろう。未来を見据えて、彼等は可能性をその身に宿し、対峙する。 「まあ、これ以上使われないのが一番なのですがね」 苦笑して、三千の恩恵により氷の呪縛から脱したノエルが床を蹴った。その白銀の舞、その手で、この世界に仇為す存在に、見舞う為に。未来に仇為すフィクサードを、打ち負かす為に。 ●紡がれ織り成す、白章 再び乱れ舞う白鷺の氷刃。 しかし要によって授けられた加護によって全員が高められた自己治癒能力と、三千の戦がせる高位存在の恩恵の具現による温かな癒しで、リベリスタ達はその悪影響を最小限に留めている。 加えて、筝子の、彼女だけで足りない時は悠月の、碧衣の、セラフィーナの、力の受け渡しによって常に万全のコンディションで以て戦えているのも大きかった。葬識が、クルトが、アルバートが、その恩恵により未だ大技を繰り出せる。勿論他の仲間達も未だ燃料切れは起こしていない。 「そろそろ打ち止めて貰おうか――!」 そして幾度目か、碧衣の放った何条もの聖なる光、その奔流がE・エレメント等を焼き払った時――遂に全てのE・エレメント達がその力を保ち切れず、見る見る内に土塊へと戻ってゆく。 ペンションの床は大量の土で汚され――それ等が二度と動き出す事は無かった。 「やりましたか……?」 「あちゃあ」 要の疑問を肯定するかのように、亜美那は隠しもせずに頭を押さえて溜息を吐いた。 「どうなさいました、御自慢の結界で逃走を図らないのですか」 「いや、だって無理っしょこの状況じゃあ。こっち何回もアレ打ってんのよ? 流石にそろそろ見抜いてない奴がいないとも思えないんだけど?」 妙に潔い――それは、今彼女が語った事だけでは無く、“自分はまだ殺されない”事をも見抜いていたからか。 その証拠に、悪足掻きの挙動を見せない亜美那の首筋には葬識とノエルの獲物、その切っ先が前後から挟み撃ちの形で向けられているが、それが本当に彼女の首を刎ねるには至らない。 「ガラじゃあナイんだけどなぁ~アークに来てから調子が狂うねぇ~」 「本来ならフィクサードを生かしておく道理は無いのですが、貴女には聞いておきたい事がある」 そう、亜美那は生かす。その代わりにアーティファクトを破壊する。そして亜美那の悍ましい目的を聞き出す。それがリベリスタ達の総意であった。 その間、周囲の様子を抜かり無く窺う三千と、要と、アルバート、そしてセラフィーナ。此処に来てから感じていた、不可解な視線。戦闘中に乱入こそされなかったが、真意が判らない以上、まだ油断は出来ない。 「白鷺は塵土の穢れを禁ぜず……とは言うけれど、黄泉ヶ辻にしてはまとも、狂気が違う。少年の件等、気になる事は多い……ひとつずつ、話して頂けますか」 「……駄目って言っても……少なくとも無事じゃあ帰してくれないでしょう?」 悠月の問い掛けに、アーティファクト諸共両手を挙げて、抵抗の意志が無い事を示す亜美那。 「正直に答えてくれれば深追いはしないさ」 「それともうひとつ、重要事項よ。逃げるチャンス……欲しければ、アーティファクト出しなさい」 碧衣とソラが条件を提示する。亜美那は、それに抗う気は無いようだった。 「これ手放すの惜しいんだけどねえ。あ、でも君達に効かないようじゃあこれからどんどん役に立たなくなっていくかなあ。人って成長するし。で、何から答えれば良いの?」 他のリベリスタ達には興味が無さそうに、後ろで控える筝子と陽をじっと見つめながら亜美那は逆に問うた。特に興味は陽に酷く惹かれているようである。 「……今回も、筝子も、革醒したてに目をつけて何が狙いだ?」 平素は常に穏やかな笑みを浮かべているクルトが、この時ばかりは真剣な――やや不快げに、ほんの僅かに眉を顰めながら――面持ちで、尋ねる。 筝子が囚われ苦しんだ事件を彼は知っている。そして今回の陽の襲撃事件。何故、こんな事を繰り返すのか。心の闇、或いは無知に付け込んで。 「別に革醒したてがイイってワケじゃあないんだけど、そだねえ、私としては筝子ちゃんや陽君みたいな子は『革醒してくれるのを待ってた』って感じかな?」 「どういう事よ?」 ソラが聞き返すと、亜美那は言葉を続ける。 「極々稀ーに、本っっ当にレアケースなんだけどー。アーティファクトの力を限界以上に引き出せる存在ってのが存在するらしいって事が判ったのよね」 「アーティファクトの力を……?」 頷く亜美那。 「私は“適合者”って呼んでるんだけどね。まず筝子ちゃん。あの子はそれだった。アーティファクト『ナルキッソスの水仙』の適合者。あれは本来、命を削る代わりに花弁を飛ばして出血付の攻撃が出来るだけの代物だった。効力の割に代償が大きすぎるから、使い難いなーと思ってたんだけど、其処に現れたのが彼女だった。良い実験台になると思ってね」 「ッ!!」 思わず、セラフィーナが身を乗り出す。が、寸での所で拳を握り締め、堪えた。まだ、聞いておくべきことはある。 「では、十文字様もその適合者とやらだったと?」 「うん、今研究室に置いてある奴なんだけどね。他にもいっぱいあるよ。たださっきも言ったように適合者の存在自体レアケースだからね、私の研究室に置いてある奴で適合者が見つかってるのはそれだけ。でもこれでも超が五個以上は軽く付く程ラッキーなんだよ? 私の持ってる奴の中から二人も適合者が出るなんて。一人出るだけで宝くじ一等当選以上の確率なのに。それ以前に出たとしても日本に出るとは限らなかったのに」 其処で亜美那は――先程の葬識に負けず劣らず、酷く冷たく狂気を孕んだ微笑みをその表情に浮かべた。白鷺の結界を展開していないのに、室温が下がったような錯覚に囚われる。 「研究者としては、そりゃあ拉致ってでも研究したくなるってモンだよ」 ――つまり彼女は、純粋で、好奇心が強いが為に、この狂気を生んだのだ。 ●白昼に幕下ろす、物語 「研究したいなら六道にすればいいのに、理由話したいならどうぞ。聞いてあげるよ」 続けて聞いたのは、葬識だった。 悠月も先程言葉にしていたが、亜美那は狂気を孕んでいるとは言え、その性質は六道に近い。彼女も喜んで六道に所属していそうなものなのだが、そうしない理由があるのだろうか。 「ま、ありきたりな話だから語るほどの事でも無いんだけどさ」 ――その時だった。 「――ッ!!」 不可視の視線の主に気を配っていた三千が、要が、アルバートが、セラフィーナが、異常なまでの悪寒を覚えてその表情をこわばらせた。 いる。近付いてきている。恐らくは此処にいるリベリスタ達よりも、亜美那よりも強い――否、それ以上を、遥かに超越する存在が。 そしてクルトは、その気魄の主が複数いる事、そしてその片方が、知った人間である事に気付いていた。 「兄さんが、いるんだよねえ。良くあるでしょう? そういうの」 いつの間にか、玄関に――亜美那の背後に二人の男がいる! 「……不肖の妹を、引き取りに来ました」 金髪碧眼の美青年。肌は褐色で亜美那の白い肌とは違う色を宿しているが、その髪色、髪質、何より双方共に似通った美しい容姿を持っている事から、二人は同じ血を分け合っている事が、容易に想像出来た。 「兄さーん♪ あ、でも不肖とか酷くないー?」 「いや、フランが正しいだろう。少なくとも俺に勝てないのなら、幹部昇格は無理だぞ」 「別に兄さんやシローちゃん程偉くなりたい訳じゃあないから其処は良いんだもん」 「俺だって好きでなった訳じゃあない」 もう一人は、長い黒髪に黒尽くめの男。涼しげな表情の、年若き黄泉ヶ辻の幹部。 ――『博徒騎士』。 「大海士郎……!」 クルトがその双眸を見開いた。まさか士郎がこの場に来ていたとは。何故気付けなかったのか。 いや、理由は判っている。士郎は相当の実力者だ。一度戦ったクルトには判る。しかし、隣にいるフランと呼ばれた、琴を携えた男は――それ以上に、桁違いの気魄を放っている! そして黄泉ヶ辻が統領・『黄泉の狂介』黄泉ヶ辻京介と直接対峙した事のある、三千、悠月、碧衣もまた、気付いていた。京介には劣れども、それに酷く近い力と狂気を、このフランは持っている! 「ああ、自己紹介が遅れましたね……風間芙蘭と申します。そして、さようなら。亜美那、おいで」 「はいはーい♪」 ――亜美那以外の誰も、その場を動かなかった。 否、リベリスタ達は動けなかったのだ。芙蘭の放つ空気に、気圧されて。 亜美那はそのまま芙蘭に抱きつく。芙蘭は微かに笑みを浮かべて、その背に黒翼を広げると、遥か高き虚空へと飛び去った。 士郎は微苦笑を浮かべて頭を掻くと、ややつまらなさそうに溜息を吐いた。 「全くフランも人使いが荒い。俺は此処でいざって時の為にお前達を足止めすることになってるんだが……その必要は無さそうだな?」 芙蘭の気魄から解放されても、動かないリベリスタ達を見て士郎が言う。 亜美那との戦いでは誰も倒れず済んだとは言え、今の状況で幹部と事を荒立てるのは得策ではないと踏んだのだろう。 「じゃあな、俺ももう行く。縁があったらまた会おう、特に、其処のドイツ人」 「……クルトだ」 「覚えておくよ」 そう言い残し、士郎は銀の賽子を振ると、跡形も無くその姿を消した。 ――持ち逃げすることも出来ただろうが、亜美那は律儀にアーティファクトを置いて行ったらしい。 いつの間にか、ノエルの手に『比良坂守女の戦扇』が握らされていた。 思わぬ邂逅に、勝ち戦の筈のこの戦い、勝った気がしない。 しかし、陽を護り切る事は出来た。あの忌まわしき狂気を阻止する事は出来たのだ。それは、真実。 そしてそれだけではなかった。ある者はこの戦いで最低限求められていた戦果以上のものを手にする事が出来たようだ。確かめるように、その掌を開いては握って、開いてを繰り返している。 いずれまた、亜美那と、そして芙蘭や士郎含めた幹部等と、そして何より京介と再び相見える事もあるだろう。その時までに、リベリスタ達はより強くならねばならない。 リベリスタ達は、確かに救った命を引き連れて、来たるべきその日の為に、一先ずはアークへと帰還するのであった―― |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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