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喫茶店とピアニスト

●とある町の喫茶店にて。
「ねえねえ椎名君、見て見てこの本の紹介文のとこ。あらすじ」
 とか何か言って、アーク所属のフォーチュナ辻が、それまで読んでいた雑誌をカウンター越しに突き出して来た。
「この最後の文章のとこに、「何か?」って付けると、ちょっと面白くない?」
 それで覗き込んで文章を読んでみたら、そうして親友・裕次郎との報われない恋にケリをつけ、新しい恋へと突き進むことにした吉田ですが……? とあり、これに何か? をつけるとしたら、「そうして親友・裕次郎との報われない恋にケリをつけ、新しい恋へと突き進むことにした吉田ですが……? 何か?」となる。
「はー」
 だからどーした。
 みたいな顔で椎名は、眼鏡の優男って顔して、実は女性関係に大層だらしのない辻の顔をぼーっと見つめた。
「いや何か、あんまり文末が「ですが?」って終わってるあらすじもないな、とか思って。何で「ですが」なんだろうね。「ですが」にしたら絶対おかしい事になるの分かってるじゃん。そこをあえて何で「ですが」をチョイスしたのかって凄い気になるよね」
「そうでもないです」
「うんそうでもないよね」
「でも気になるといえば、今回の事件の一般人ですけど」
「あーあの、煩いオバサンノーフェイスの事件?」
「何か、近々取り壊しの決まった廃墟のコンサートホールに、ピアニストの青年が侵入して、ノーフェイスに襲われちゃうって話でしたよね」
「そうね、それからその幼馴染とかいう青年も一緒に侵入しちゃって、襲われ掛けるんだけどね」
「でも、あれですよね。だいたい何でそんな所に侵入しようとしたのか、まずそこが全然分かんないんですよね。絶対危なそうですもんね。行かないですよね、普通。そんなとこ」
「さあ。何か悩みでもあったんじゃないの」
「悩みがあるから、取り壊しの決まったコンサートホールに忍び込むっていうその因果関係がもう既に分からないんですけど」
「知らないよ。っていうか、まさか自分が襲われるなんて思ってないからでしょ。幽霊とか、神秘とかちゃんちゃらおかしいって思ってる、一般人なんだしさ。むしろそれより、オバサンノーフェイスの能力の方が気になるじゃない、今回は」
「いやでも危険な所に何をわざわざ忍び込んでんだって話じゃないですか、そこ引っ掛からないんですか」
「うん引っ掛からないね」
「僕ほんとそういうの、腹立つんですよね。まあホラーとか。あんま見ないですけど、見てても、いや何でそこ行くんだよって奴居るじゃないですか。あーゆーの凄い気になるんですよ、ならないですか」
「ならないですね」
「ああならないんですね」
「だってそれより絶対さっきのあらすじの方が気になると思」
「いやそれは、そうでもないです大丈夫です」



■シナリオの詳細■
■ストーリーテラー:しもだ  
■難易度:NORMAL ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ
■参加人数制限: 8人 ■サポーター参加人数制限: 0人 ■シナリオ終了日時
 2012年07月31日(火)00:06
◇目的◇
敵エリューションの討伐
一般人の救出及び保護

◇敵のこと◇
ノーフェイス「ゲラ」×4(フェーズ2)
とにかくいつも笑ったり、喜んだり、テンション高い対応で出現し取り囲んでくる、
某ピンク色のオバサンみたいなノーフェイス。
出て来た時から、とにかくはしゃいでいる。
あと、写真を撮るのが好き。フラッシュの光に要注意。
で、笑っている時は無防備だけど、
「笑いの波動」とか何かいうやつを身体から放出して攻撃してくるので、
あんまり笑わせるのは危険かもしれない、とのこと。
逆に、どうしていいか分からなくなるようなトリッキーな行動をされたり、
笑えない話とかには弱いらしく、
無防備になり、戦意が喪失し、倒しやすくなるらしい。

◇場所のこと◇
取り壊しの決まった、廃墟のコンサートホール。
前方には大きな舞台。
座席が残ったままで、ゴミなども落ちているらしいので、
戦いの際には足元にご注意を、とのこと。

◇一般人のこと◇
何をどう間違ったか、深夜の取り壊し間近のコンサートホールに忍び込み、
ノーフェイスに襲われてしまう、という事件を予知された、わりと神秘には鈍感な二人組の一般人。
一人はピアニストの青年。
もう一人はその幼馴染でDJの青年。
とにかく神秘に鈍感なので、何かそれらしーことをそれらしーく、
強引かつ適当に言っちゃえば、信用すると思われる。

尚、今回の依頼には、救出対象以外の一般人などは出現しません。


■STより
お目に止めて頂き、幸いです。
皆様のご参加を、心よりお待ち申し上げております~。


参加NPC
 


■メイン参加者 8人■
デュランダル
雪白 桐(BNE000185)
ホーリーメイガス
天城 櫻子(BNE000438)
ソードミラージュ
神城・涼(BNE001343)
マグメイガス
風見 七花(BNE003013)
デュランダル
義桜 葛葉(BNE003637)
レイザータクト
アルフォンソ・フェルナンテ(BNE003792)
覇界闘士
ヘキサ・ティリテス(BNE003891)
プロアデプト
ヤマ・ヤガ(BNE003943)


●笑えない小話大会開催。
 トップスピードを発動し、『chalybs』神城・涼(BNE001343)が、ホールの中を駆け抜けていく。
 座席を飛び越え、通路の階段を飛び越え、そこで甲高い声を上げきゃいきゃい騒いでいるノーフェイスの内の一匹を目指す。ぐんぐんと距離を詰め、漆黒の長剣「黒耀ノ翼」を振りかぶると、ソニックエッジを発動した。
 鋭い切れ味の刃で、ノーフェイス「ゲラ」の体を横へと一気に切り裂く。
 それでもそのスピードは止まらない。そのままどーんと体当たりするように突進し、自らの進行の邪魔をする敵の腕を斬り裂き、足を斬り裂き、最後に首を切り裂いた。
 ゲラの頭が、ポーンと空を飛んで行く。そして「ごとっ」と鈍い音を立て、笑った表情のまま固まった頭が、舞台の上に転がった。
 ホールを包む、一瞬の静寂。
 けれど次の瞬間には地響きのように鳴り響く、ノーフェイス「ゲラ」達の、咆哮にも似た「ギャギャギャギャギャギャギャー!!」という、笑い声。
 そこへ雪白 桐(BNE000185)、風見 七花(BNE003013)、『デンジャラス・ラビット』ヘキサ・ティリテス(BNE003891)の三人が、遅れてホールへと飛び込んで来た。
 瞬間にはもうそれぞれに、どのゲラへ向かうかの目標を定め、走り出している。
 と、突然。バチバチバチバチっ! と、ホール内に轟く雷鳴。
 七花がチェインライトニングを発動したのだ。
 激しく暴れ狂う雷に貫かれ、ゲラ達の身動きが止まる。
 間にも、舞台上へと移動していた涼は、背後をついて来ていた『プリムヴェール』二階堂 櫻子(BNE000438)の手を引き、同じく舞台上へと上げると。
「はーい、やってまいりました。笑えない小話大会のお時間です」
 とか何か、マイク持ってないけどマイク持ってるみたいにして、言った。
「あのファッキンノーフェイスの笑いを止めるのは誰か。司会はわたくし神城涼と、回復支援及び解説は二階堂櫻子さんでお送りいたします。はいどうも宜しくお願いします」
 そして、櫻子へ向け、一礼。すると櫻子も「はいどうも宜しくお願い致しますわ」とか何か言って、楚々と一礼。
「それにしても元気の良いノーフェイスさん達ですねー。あの馬鹿笑いでどんどん笑って、笑いの波動とか出してくるらしーです。面倒臭いですね。あー今まさに、あちらの方でも笑いの波動が出かけていますね。いやああんな風に死ぬ間際まで笑ってられるならば、それはそれで幸せなのではないか、という気もしますけども、どうですか解説の櫻子さん」
「そうですわねぇ。ええまあ私も、決して賑やかなのは嫌いじゃありませんけれど。ですが……これはちょっと。元気と言いますか何と言いますか……何でしょう、見ていてイライラしますわね」
「はーい、というわけで、二階堂の苛々が爆発してしまう前に、残った三匹の「ゲラ」を一刻も早く止めて頂きましょう。挑戦するのは、この三人です!」
 そしてホール内へと順々に手を翳して行く。
「向かって右側、雪白桐選手! さあ一言頂けますか、大丈夫ですかどうですか!」
「はー、場所柄音の通りが良くて煩いですから、さっさと大人しくなって貰いたいです」
「なーるほど、凄い意気込みですね。どうですか、櫻子さん」
「ええ、全くそんな意気込んでらっしゃるようには見えないんですけれど、あんなに無表情でちゃんと意気込んでらっしゃるんですね、驚きです」
「はい。ではこちらの風見七花選手! 一言お願いします!」
「えっ、えーっと……ええと、すごく個性的なノーフェイス達ですね! 頑張ります!」
「はいとっても無難なコメントありがとうございます、では最後に、ヘキサ・ティリテス選手。意気込みを!」
「うぜぇ!」
「なるほどありがとうございます! さあ今日は一体どんな笑えない話が飛び出すのか。楽しみです」




 その頃外では。
 『閃拳』義桜 葛葉(BNE003637)と、アルフォンソ・フェルナンテ(BNE003792)の二人が、一般人への対応を行っていた。
「私は建設会社の社員です。こちらのホールの取り壊しを担当しています」
 と、アルフォンソは一般人二人に向け、説明をした。
「こちらは警備会社の方なのですが」
 と、今度は葛葉を紹介し、「誰かが入った形跡がある、という事なので巡回をしていました」と、結ぶ。
「まあ、場所によっては天井や壁が壊れやすくなっていますからね」
 そしてそう、付け加えた。
「はいですよね、本当すいません」
 発見された当初から委縮して焦っていた一般人は、その説明をすっかり信じ、益々委縮し項垂れた。
 更にはアルフォンソの隣の葛葉の事が怖いらしく、というか鋭い眼孔でじろっとか二人を見下ろしながら腕組みしている葛葉は明らかに、元は屈強な警察官であるとか柔道の黒帯であるとか、そういう「権力者的な何か」にしか見えないので、というかむしろ、何だったらもうそれを通り越して「裏街道の権力者的な何か」にすら見え始めるくらいなので、怖がるのも無理はないのだけれどとにかく、「やはり侵入者か」とか、わりと静かに言われたその言葉にも、ピクッと体を震わせた。
 そして、「え、もしかして俺達始末されますか、埋められますか、どっかの林とかに埋められますか」みたいな、そんな顔で葛葉の事を見た。
「此処は近々取り壊されるのを知っているだろう? 言わずもがな、立ち入り禁止だ」
「あす、すいません」
「何か事情があるのか」
「い、いえ。まあ。……でも、そうですよねやっぱり。駄目ですよね、忍びこんじゃあ」
「駄目だな」
「だ、だすよね」
「いやだすって……」
「ただ何か事情があるなら、聞いてやらんでもない」
「え?」
「事情があるなら聞いてやらんでもない、と言ったんだ」
「え、あ……」
 と、戸惑うように一般人(ピアニストの方)は、一般人(DJの方)を見やり。
 どうする? いやいいんじゃね別に。そう? うんもう(いいってみたいに首振り)とか何か、もごもごやって、
「はい、いえ、ありがとうございます。でも大丈夫です」とか、言った。
「本当か。それ相応の深い事情があるのだろう? ならばそれを言えばいいのだ」
 って、本当は心配して言っているのだろうけれど、その鋭い眼孔が二人を追いつめていることを葛葉は知らない。
「いえいえいえいえい、全然いいです、ほんといいですあのー大丈夫です」
 二人は、絶対下らない理由とか言ったら撃ち殺されるんですよね、とか思ってそうな顔で慌てて手を振った。
「ならば……早々に退去願おうか」
「そうですね、私達も仕事がありますし」
 畳み掛けるようにアルフォンソが付け加える。
 そしたら突然、「お前もな」と、葛葉が一般人。
 の隣に向かい、言った。
「え」
「えっ」
 えっなに、うわ誰! っていうかあれ? 座敷わらしですか?
 とか、そこで初めてその着物姿の小さな少女に気付いた一般人は、驚きの表情を浮かべる。
 確かに、ここでいきなり「座敷わらしです」と名乗っても通用しそうな風情の彼女は、けれどもちろん座敷わらしではなくて、何だったらもー少女でもなくて、見た目少女の齢80『朝蜘蛛のナチャ』ヤマ・ヤガ(BNE003943)だった。
 とか知らない一般人は、何時の間に、何時から居たんだ、とまだまだ愕然として彼女を見ている。
 でも全然構わずヤマは、ペルソナオンの状態で、
「むー……せっかく探検に来たのに見つかっちゃったなぁ。ここ、入っちゃ駄目なんだって」
 とか、小芝居を強行した。そして一般人(ピアニストの方)の衣服をちょいちょい、と引っ張り。
「じゃあ、外まで送ってくれる?」
 黒い瞳できょとん、と上目使いに相手を見つめる。
「あ、えーっと」
「駄目?」
「いや、駄目ではない、けど」
「じゃあ、一緒に帰ろう?」
「う、うん」
 でも、まさか途中で消えちゃったりしないよね? 大丈夫だよね? 妖怪とかお化けとかじゃないんだよね? みたいな目で一般人はヤマを見下ろす。
「えーっと、じゃあ。行こうか」
 でもまーそんなわけないよな、みたいに立ち直り、ヤマの手を引き一般人(ピアニストの方)は歩き出した。
 それに続いて、
「じゃあ、すんませんした。失礼します」
 一般人(DJの方)も葛葉とアルフォンソにぺこっと会釈して歩き出す。




「はい、こちら会場の神城です。さーそろそろどうでしょうか。ゲラ達が感電から立ち直りかけている、という状況でしょうか。どうですか解説の櫻子さん」
「そうですわねそろそろ……あ。あちらのノーフェイスがまた笑い出しましたわ!」
「おっと、そちらの対応へは……なるほどやっぱりそうです、風見選手です! 風見選手が行くようです」

 べべん。
 ――風見七花の笑えない話――。
 これは友人から聞いた話なのですが。
 先週、その友人の友人……ここではAさん、とでもしておきましょうか。そのAさんのお父さんが井戸に落ちてしまったそうなんです。
 井戸に落ちるなんて大変なので、友人はもちろん、お父さんは大丈夫だったの? とその安否をまず確認したそうです。
 するとAさんは。
 昨日から助けてくれという声が聞こえなくなったのでもう大丈夫よ、と笑顔で答えたとのことです。
 べべん。

「…………」
「…………」
「これは会場、水を打ったかのように静まり返っています! これは笑えない。ゲラも完全に笑えません! どうですか、解説の櫻子さん」
「はいそうですわね、これはもう笑えない話というより、怖い話ですわね」

「隙あり! マジックミサーイル!」
 七花は、マジックガントレットを装着した手を空に掲げ、きょとん、としているゲラへ向け魔力弾を放った。
 どーん! と命中。
 バーンと弾ける、ノーフェイスゲラ。

「とかいう間にも、こちらでは雪白選手が動いている模様ですよー」

 べべん。
 ――雪白桐のトリッキーな行動――。
 その時彼は、笑いだそうとしているゲラの眼前に、わりと常に無表情なその、美貌の顔を突き出していた。
 そして突然、その表情のまま歌い出したのだ。
「睨めっこしましょ笑ったらだめよあっぷっぷ」と。
 べべん。

「おーっとこれは、雪白選手! 何とまさかの睨めっこだー! これは凄い。ゲラもどうしていいか分かりません! あんなに楽しそうじゃない睨めっこも初めて見ます! 全然楽しそうじゃありません! 子供の遊び睨めっこなのに、まるで真剣勝負! 本気です! どうですか解説の櫻子さん」
「そうですね。あんなに無表情に近づいてこられて、いきなり睨めっこしましょう、ですからね。どうしていいか分からなくなるでしょうね」
「しかもおーーーーーーーーーーーーーーーーーっと! これは! 出た! 変顔だ! 必殺の般若の顔! やばいです、これはやばいです! あんな変な顔、見たことありません! しかも凄い静かに変顔! やばいです。あの無表情のあとにこの般若はきついです。いろんな意味できついです。どうですか、解説の櫻子さん」
「ぷ、ぷぷぷぷぷ……は、はい、すいませんちょっとこれは……」
「ですよね分かります! その気持ち分かります! あの般若はヤバいです。本格的です。般若の顔ってあんなに面白かったのかと新発見です。そしてゲラもおーっと、大爆笑だー!」

「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃーーーー!」
 って笑いだしたその瞬間、桐はその大口に思いっきり手を突っ込んだ。「ガッゲウゥツツツツツツッツ」
「ですから、大口で笑うと迷惑なんですよ、分かりますよね?」
 そしてすかさず、その手にまんぼう君をダウンロードし、そのままギガクラッシュを発動した。
 バチバチバチバチビリビリビリビリ、ドーン!
 と、破裂。
 ゲラ、破裂。
 とにかく破裂、闇雲やたらに破。

「うわー何という豪快な方法でしょう。いやあこれはもう、のっけの睨めっこといい、あの変顔といい、ゲラは手も足も出ませんでしたー。完勝です」
「圧巻でしたわね」
「そしておーっとこちらでは、ティリテス選手が今しも笑えない話を繰りだそうとしています!」

 べべん。
 ――ヘキサ・ティリテスの笑えない話――。

 あれは忘れもしねぇ、数日前の朝のことだ。
 オレはいつものように学園に登校してたんだ。授業はさぼるけど、ガッコはいろいろ楽しいしな!
 そしたら昇降口あたりで「おはようっ!」とかって女子に声とかかけられちゃってさ。
 そんな何か、思いっきり元気いっぱい声とかかけられたからには、オレだって男だ。
「おっす!いい天気だな!」
 笑って全力で返事を返したんだ。
 そしたら。
「誰? あれ」
「さぁ……? めちゃくちゃ元気に挨拶されたけど……」
 ……なんてな、彼女達は喋ったさ。そうさ、別にオレに挨拶したんじゃなかったんだよ。
 はは。笑っておくれ。笑っておくれよ。さあ、そんな顔しないで笑っておくれよ。どうか笑っておくれよ、笑って……。
 ぺしょん。
 悲しげに微笑むヘキサの兎の耳が、ぺしょん。
 べべん。

「はい……これはもう何でしょう。残念ですね。切なすぎます。当然笑えないですが、笑えないを通り越して、泣けてきます。物凄い元気いっぱい挨拶返しちゃった所とか、やばいです。控え目にしておけばダメージも少なかっただろうに。全力で返しましたからね。これはもう笑えないっていうか、泣けてきます。泣けてくる話です、どうですか解説の櫻子さん」
「はいこれはもう何とも言えませんわね……お気の毒だったとしか……」
「ええそうですね。ほんとにもう余りの残念さ加減に、解説櫻子さんの大きな黒い猫耳もぺしゃんこに垂れています!」
「いえこれは元々の仕様で……」

「くそー! うるさいわー! 誰でもあるちょっとした間違いじゃー!」
 とか、恐らくは余りの痛さに自分で自分をフォローしたヘキサが、ソニックエッジを発動した。
 決して止まらないかのような澱みなき自己嫌悪の波を、決して止まらないかのような澱みなき連続攻撃に変え、今日も彼は敵を、打つ! 打つ! 打つ!
「援護するぞ!」
 そこへ到着したのは、一般人の対応を終えた葛葉とアルフォンソで。
「一体何をやってるんですか」
 呆れたように言ったアルフォンソが、チェイスカッターを。
「これで終わりだ。その動き、永遠に封じさせて貰う!」
 とどめとばかりに葛葉が、魔氷拳を。
 それぞれ発動し、最後のゲラを討伐したのだった。




 その頃、ヤマは出口辺りで一般人の背中を見送っていた。
 そうしながら、道中で聞いた二人の話を思い出している。
 一般人(ピアニストの方)はこう言っていた。
「だからね。そうやってまたあのコンサートホールで演奏したら、小学校の頃の凄い嬉しい気持ちを思い出せるんじゃないかって。音楽に対する愛情とか情熱とか、そういうのも、あの頃みたいに思い出せるかなって。取り壊されるのは分かってたけど、彼が誘ってくれたから。一緒に行こうって。それで来たんだけど、やっぱり駄目だったみたいだね。でもそんな風に言ってくれたのは嬉しかったんだよね。それだけで少し、元気出た。まあ、あいつには内緒だよ」と。
 そして一般人(DJの方)はこう言っていた。
「だからさ。あいつにとってはそういう受賞の思い出のあるコンサートホールでさ。もう一度演奏して、元気だして欲しかったんだよ。俺、あいつの事、好きだし。あいつの音楽も好きだからさ。まあ、内緒だけどな」と。
 それを聞いても聞いていなくても、彼らがこの場から去れば今日の仕事は完了なので、最終的には事情とかどーでも良かったのだけれど、とにかく二人は、幼子のフリをするヤマに気が緩んだのか、そんな話をして去って行った。

 まあ、幼子のフリは、昔からようやったもんだが。
 ヤマはふと、そんな自らの過去を思い出し、想いを馳せる。
 暗殺者の集団に居た過去の事。そこでの幼子のフリは全て、殺しのためだった事。そして今回は、殺しのためではなく守るために嘘を吐いた事。それは少しだけ、新鮮な気分だった事。
 一般人の背中が闇の中へと消えていく。
 ヤマは思った。
 けれどまあ、こういう気分も、偶には悪うないな。と。




■シナリオ結果■
成功
■あとがき■


そういうわけで。
結果は成功でございます。皆様ご苦労様でございました。

当シナリオにご参加頂いた皆様には、誠に感謝です。
また機会がありましたら、ご参加をお待ちしております。