●とある町の喫茶店にて。 「だからその河童みたいなやつがさ」 と、アーク所属のフォーチュナ辻が言った所で、 「ねえ何なの」 と、後ろのテーブル席に座る二人組の内の一人が、言った。 というか厳密には、二人組の内の、黄色いモコモコとした着ぐるみを着た方が、言った。思いっきり機嫌悪そうな、着ぐるみ着てない方の青年に向かって言ったのだけれど、全然反応が帰ってこないので、着ぐるみ青年は更に「いや何がよ、ねえ」とか何か、言っている。 「べつに」 やがて、メニューに目を落としながら、着ぐるみではない青年の方が、素っ気ない返事を返した。 着ぐるみ青年は、それをちら、と見やって手元を弄り、でもまたちらっと見やって、「べつにって、全然別にって感じじゃないんだけど」とか、拗ねたような口調で言った。 けれど、相手の返事は帰ってこず、二人の間には、おもーい沈黙が鎮座する。 あんなに真っ黄色のもっこもことした楽しそうな着ぐるみ姿で、どうしてそんなシリアスな事になってしまっているのか、多分、自分だったら可笑しすぎて笑ってしまいそうだったけれど、二人の顔は至って真面目だ。 それがあんまりにも自然に真面目なので、あれ? 着ぐるみって普通にうちのクローゼットの中にもありましたっけ、普段着として、とか、一瞬自分に問い質しかけたくらいだった。 何せ、着ぐるみ青年は、当然の事ながら入って来た時から既に着ぐるみで、だから今もずっと着ぐるみだったりして、だけどどうして着ぐるみなのか、というそこには全く触れてくれない。それどころか、少しの気恥しさも見せず、逆に開き直ってるかといえばそうでもなく、物凄いマイルドに着ぐるみで、着ぐるみ自体を忘れているかのような自然さで、でも完全に着ぐるみだった。 何かを怒ってる青年くらいは、「いやお前の格好何だよ」とか、怒りだしてもいいはずなのに、全くそこには、触れない。 「だから悪かったって。もう昨日も謝ったじゃん。ちゃんとすぐ洗面所で洗ったんだしさ」 そうして項垂れ、謝る着ぐるみは、段々何かもう、ちょっと、可愛い。 「あのさ。もう、洗うとか洗わないとかの話じゃないんだよ。ねえ。分かってるの。っていうか何、昨日あんなけ話合ったのに、えー。いやもうそこを分かってくれてない時点でやだわ俺もう」 でも、着ぐるみじゃない青年は、全然その可愛さには惑わされずに、怒っている。 「いやだから悪いとは思ってるよ、ほんと。でも仕方ないじゃんさ、やってみたかったんだもん」 「だったらせめて事前に言ってよ。っていうか、言うよね普通」 「えー、言わないでしょ」 「いや確認取らなきゃ駄目でしょそれだけは本当に」 「だってそんなん、お前絶対嫌だって言うでしょ……?」 って、上目使いに相手を見上げる着ぐるみの姿に、いやもうそんな怒ってあげなくていいのに、と、何も知りもしない椎名が同情しかけた矢先、 「そりゃ言うだろ、顔にかけるとかさ!」 「ちが、ちょ、声でかいって。目立つだろ、顔にかけるとか言うなよおまえは」 とか、衝撃の事実と共に、明らかに自分の方が目立っている着ぐるみが、ちら、とかこちらを見やった。 椎名はすかさず目を逸らした。 絶対臭い。 それより何より、着ぐるみとか可愛い格好して、やってる事が「顔にかける」だったとか、いや「何を」「どう」「顔にかけた」のかは全く分からないのだけれど、凄い可愛くない予感がする。 愕然とした。 でも、そこは頑張って、「あ、で、その河童が何でしたっけ」とか、貴方達の会話なんて聞いてないですよー、私らは私らで今までずーっと会話してましたよ、みたいに臭い芝居を打ち、だいたい、それ以外に、どうしていいかが全く分からなかった。 そしたら辻が、 「うんそうね、いつその白いや……あのー、河童みたいな奴がね。一般人を川にこう引き摺り込んじゃうか分かんないから。早く討伐しなきゃいけないってことで」 って、完全に今、同じ事を想像してたんですね、みたいな間違えをし、でもそれを頑張って隠して、って言ってもむしろちょっと溢れ出てしまっていたのだけれど、そこはとっても温かい気持ちでスルーしてあげることにして、「ですよね。山奥とはいえ、わりとキレイな所なんですもんね」とか、何か、相槌を打った。 「そうね、あのー、バーベキューとかね」 「こう、泳げるスペースとかもあって」 「そうね、だからこう人々の安全は守らないといけない、っていうね」 「ですね」 とか何か、完全に上滑りしている会話を続けつつも、何をどう顔にかけたのか、そしてそもそも、どうしてあいつは着ぐるみなのか。というそのことを、二人はもう、悶々と考え、いつかポロっと言ってやくれないかしら、と、待ち続けるのだった。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:しもだ | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月28日(土)22:10 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●現地に向かうリベリスタの人達に突撃インタビュー。 ――というわけで、これからかの風光明媚な川へと向かわれるわけですが、どんな心境ですか。 『シトラス・ヴァンピール』日野宮 ななせ(BNE001084)の証言。 「とりあえず河童エリューションさんはなんか、楽しそうに遊んでる人を狙ってくるということなので、わたしは一応、強結界とか使って一般の人達が来るのを拒みつつ、みんなと楽しく遊んでいる感じを演出しようと思います。はいとっても楽しみです! 日野宮ななせです、宜しくお願いします!」 続いて『銀の銃弾』ベルバネッサ・メルフィアーテ(BNE003324)の証言。 「河童……え、河童? えなに河童が出るの。えマジで。いや良く分かんねえけど。とりあえず、ノーフェイスは排除しないといけないんじゃない?」 続いて『黒太子』カイン・ブラッドストーン(BNE003445)の証言。 「何だ貴様は! 何? 心境? うむ。楽しく遊んでいれば河童が出てくると聞いたぞ。ただ我は一応千里眼で河童の確認をしておこうと思う。位置がわかれば奇襲に対応も可能であろうからな。後はそうだな。我は川の主とか釣ろうと思う。ああそうだ、川の主だ。何? 何がだ。何度も聞くな川の主だ! 革の無地じゃない。だから川のぬし……ええいこの! 貴様のこの耳は飾りか! ちゃんと我の話を聞け、川のぬ」 続いて『花縡の導鴉』宇賀神・遥紀(BNE003750)の証言。 「不可思議な河童の様な何かとは……シュールだね。けれどまあ、どうせ引きこまれるならザビエルより好きな子が良いのだけどね。ふふ」 そうしてさりげなくインタビュアーをかわし、爽やかに彼は、動く歩道を流れて行く。かと思いきや、話がバーベキュー、つまり料理の事に及ぶと一転饒舌になり……。 「いやだからね。タレって言ったら合わせ調味料の事で、調理の過程でこう絡めるやつ、そう、絡めるやつのことを言うわけね。だからそれはつけだれだから、そう、うん。いや今日は両方持ってきてるけど。だからもうタレを絡めてあるやつと、自家製のつけだれね。これはね、やっぱりこう砂糖の微妙な量が……」 続いてアルフォンソ・フェルナンテ(BNE003792)の証言。 既に帽子にサングラス、長袖シャツに手袋、と完全防備のアルフォンソ氏。 「……アルビノなんですよ、はい、ええ。いえ、ちゃんと河童には対応しますが。楽しそうに遊びつつ、河童を誘き寄せるという作戦だそうで。はい、木陰で楽しそうにするつもりです。はい、では」 続いて、『破壊の魔女』シェリー・D・モーガン(BNE003862)の証言。 「仕方がない。これも仕事なのでな。妾は決して遊ぶ気満開でこんな格好をしているのではないぞ。そうだ、別にバカンスのつもりでワンピースに薄手パーカーとかいう、リゾート地感満開な格好をしているのではない。こうして水着を着こんでいるのも、つまりは、河童が潜んでいるという川に入ってその変化を敏感に感じ取るためなのだ……ん、何だ、その目は。疑っているのか。妾は本気だぞ、妾は本気でちゃんと仕事をする気で……何だ。なんだこの上滑りする空気は。何だその目は、こんなに仕事やる気満開の妾に向かって……何だ。黙るな、おぬしこら、黙」 続いて、『紺碧』月野木・晴(BNE003873)の証言。 「夏だー! 海だー! やったー! 海だー!」 ――でも今回の行き先は、山ですよね? 「夏だう……山だー! 山だよやまー、知ってるよ、山だよー! 山だー! 全然知ってたー山だよ、山ー」 続いて『朝蜘蛛のナチャ』ヤマ・ヤガ(BNE003943)の証言。 ――あれ? 座敷わらしですか? 「座敷わらしではない。ヤマだ。ヤマが山へ行くのだ。……なんてな、ふふ」 ――驚きました。ビジュアルが完全に座敷わらしみたいでしたので、思わず座敷わらしが釣り竿持って山へ向かうのかと……あれ? そういえば今、ヤマが山へとか……え? まさか、えっダジャ……。 「さて、いずれにせよヤマの仕事はただ一つ。今日も元気に敵を殺るかの」 暗転。 ピンポンパンポーン。 音と共に流れるテロップ。 ※それではそんなリベリスタの人達の、楽しく遊びつつ河童誘き出し大作戦の様子をダイジェストでお送り致します。 暗転。 ●楽しいバーベキュー? ――蜂蜜駄目絶対! 編―― 「あ、その辺の肉はもう焼けてるよ」 パーカーに短パン姿の遥紀が、トングを片手に柔らかく微笑んでいた。 網の上ではじゅうじゅうと、肉や野菜が、香ばしい匂いを放ち程良く焼けている。 「うん、これもそろそろ、よし。はい、お皿持っておいで。うん、これもいいよ食べて」 そうしてもうもうと溢れる煙を前に、バーベキュー奉行をこなす遥紀はふと、その光景に気付き、動きを止めた。 晴が、お皿に盛られたお肉達に、蜂蜜をかけて食べている。 お皿に盛られたお肉に、蜂蜜をかけて食べている。凄い大量に蜂蜜をかけて食べている。特製自家製つけだれの味が、たぶんすっかり蜂蜜味に……いや、それよりもっと酷い味になっ。 チーン。 「ねえねえ月野木。それは一体何をしているのかな」 って何か凄い微笑みながら遥紀は、片手にトングを握りしめたまま、晴へと近づいていく。 「え、あ、これ? うん! 蜂蜜かけて食べてるんだよ! すげーうめーよ! めちゃくちゃ甘くて美味しい、何つーか、ぱねえよ!」 うんうんうんうんうん。 って何か満面の笑みで頷く晴と一緒に頷きながら、どんどんにじり寄って行く遥紀。 え、と相手が戸惑うくらいの距離を通り過ぎ、その顔の眼前。 にゅっとその中性的にも見える顔を突き出し、凄い笑顔で「うんだから何をしているのかと聞いているんだよ」と。 良く良く見ればそのこめかみには、薄っすらと怒りの青筋が。 「え……だから蜂蜜を」 「それは俺のつけだれへの冒涜なのかい?」 「え?」 「いやそうだね。聞くまでもなかったね。冒涜だ! 冒涜だな! 冒涜なんだな! 昨日の夜から一生懸命作ったつけだれを、つけだれを、つけだれをー!」 普段は温厚な遥紀も、料理が絡むと一転修羅になるという。 そんな修羅を目覚めさせてしまった晴の運命や如何に。 暗転。 「いや俺、凄い甘いもんが好きだから、思わずちょっと、ちょ、だ、わー! わわわ! 落ちる落ちる落ちる、石滑る! 石滑る、石が滑るんだって、ぎゃうわあああ!」 バッシャァァァァーーーン!!! 「つ、冷てェェー! ぱねーーぇ!」 暗転。 ●楽しいバーベキュー? ――山の恵編―― 「バーベキューのためには、山菜なんぞも調達せねばな」 ばさ、とカインは、山の奥とかに入った所から積んで来た、山菜とかキノコとかをその場に下ろした。 「調理道具も持ってきているし、これを調理して、バーベキューの具材に加えよう」 暗転。 「よし、これでどうだ! カイン特製、山菜サラダだ! さあ今こそ思う存分山の恵みを味わおうぞ!」 で、そんな偉そうに言ってくれちゃっているけれど、彼の目の前にあるそれはどう見てもサラダじゃなくて「サラダに飽きた子供達の遊び」だった。 のだけれど、驚くべき事にそこを通りかかったシェリーはそれに足を止め。 「どれ。妾が一つ味見をしてやろう」 なんてことを、さらっと、言った。 こんもり肉の盛られた皿を片手に「やはり野菜もないと味気ないからな」と。 何という勇気。 何というガッツ。 恐るべし、自称大食い女王。 自称大食いは伊達ではないのだ。 「安心しろ、妾の胃は伸縮自在、腹を壊すことなど皆無。さあ、いざっ!」 それから彼女は暫くの間、「肉」「野菜」「肉」「野菜」「肉」「肉」「野菜」、みたいな凄い勢いでそこにある「サラダに飽きた子供達の遊び」を食して行った。 間にも、そこへふわーっと寄ってきた遥紀が、カインの摘んで来た山菜の残骸からふと何かを摘み上げ。 「これ……って。もしかして、ワライダケなんじゃあ……」 暗転。 「だはははははははっははは、ぎゃははははっはあは。あっつーい。あついぞー。妾は暑いぞー! ほーれ、いっちに、いっちに、踊れや踊れ」 川辺で馬鹿騒ぎするシェリーが、踊っている。 胸に「乙女の双・丘!」と書かれた白のスクール水着姿で踊っている。 「んー。やっぱりなー。だからこれは、ワライダケだったんだよ。食べると、正常な思考が出来なくなって、意味もなく大笑いをしたり、衣服を脱いで踊ったり、つまりは彼女のように……」 と遥紀は、川辺で踊るシェリーを見やる。 「何と。それは知らなかった。ぬぬぬ。何としよう。すまないことをしてしまった」 「まあ……毒性はさほど強くはないはずだったから、放っておけばそのうち元に戻るとは思うんだけど」 「そ、そうか……それならまだ不幸中の幸い」 「いやでも大量に食べたから……暫く笑いが止まらないかも知れないけど」 暗転。 ●インターバル――実景―― 差し込む木漏れ日。反射する水の光。緩やかな川のせせらぎ。 そんな景色を楽しみながら、ベルバネッサは一人、川辺を散歩していた。 「こうやって、景色を眺め楽しむなんて何時振りだっけかな」 目を閉じて深呼吸をしてみると、人の暮らす喧騒の中では感じられない、緑の優しい匂いが鼻腔を抜けて行く。 開いた瞳に映るのは、遠く続く、山の緑。 差し込む木漏れ日。反射する水の光。緩やかな川のせせらぎ。 そして何故か川辺に佇む、四本足の動物みたいに爪楊枝を刺されたキュウリの置物。 に躓く、一人旅気分のベルバネッサ。 ズル、ズベっ。 「っいってー! 何だよこれ! 誰だよ置いたの!」 「あ、それは我だ。確か爪楊枝を四本使って足にしてたたせるのが日本流というやつであろう?」 後方からカインの天然な声が響く。 「ちげーよ! たぶん何か意味がちげーよ! 雰囲気ぶち壊しだよ!」 暗転。 ●楽しいバーベキュー? ――尻子玉? 編―― 「河童さんかぁ……妖怪さんとか出来ればお友達になりたいんですけど、エリューションさんでは無理ですよね、やっぱり」 カッパ巻きをはむはむしながら、ななせがポツンと呟いた。 「んー、友達……にはなれないかな。そもそも今回は、妖怪ではなく、エリューションだし」 隣に座る遥紀が、石を弄りながら、言う。 「んーですよねー」 そしたらそこへ、 「ねえねえ聞いて聞いて!」 とか何か、近くでずぶ濡れになりながらも黙々と石積みを行っていた晴が近づいて来て、 「あのね! 昔河童巻きは胡瓜じゃなくてちゃんと河童を巻いてたんだって! でも河童乱獲しすぎて絶滅危惧種になっちゃったから河童に似てる胡瓜を巻くようになったんだって! 死んだ婆ちゃんが言ってた!」 って別に誰も聞いてないけど何か、言いたくなったので言います! みたいに小さな雑学を披露して、また去って行った。 「河童であるか」 続いてカインがやってきて、腕を組みつつ、切れ長の瞳でななせを見下ろし、言った。 「実は我は、事前に河童について調べたのである。たしか、相撲を取るのが好きなのであろう。あとは、キュウリが好きときいた。そして頭の皿が弱点。うむ、実にオリエンタルファンタジーであるな」 そしたらななせが、 「あと確か、お尻の穴好きな妖怪さんですよねっ」 とか何か凄い無邪気に付け加え、それがあんまりにも無邪気に言われた言葉だったので、遥紀は思わず「うん」って頷きかけて、はた、と止まった。 確か今、お尻の穴好きって。 「え?」 「え、ってえ?」 くるん、とした目をきょとん、とさせて、ななせが小首を傾げる。アホ毛が一緒にふわん、て揺れる。 どうしよう。そんな無垢な目で見られても何かどうしよう。 とか、遥紀が何か内心で小さく狼狽しかけた頃。 「しかしあれよの」 今度は何か、肩に釣り竿をかけたヤマが近づいて来て、言った。 「夏に川辺に居すぎると尻子玉を抜かれる、とはいうがの。この年になっても実はようわかっておらぬのだ。時におぬし……尻子玉とはなんぞ?」 そしてななせの顔をじーっと見つめる。 「確か、尻の近くにある玉で……」 きょとんとした顔でななせが答える。 隣に座る遥紀は、その答えを聞いてどういうわけか、小さく緊張した。 だって尻の近くにある玉といえば。 そしてその頃、近くで石積みをしていた晴も、同じく静かに緊張していた。 だって、そんな、尻の近くにある玉といえばそれはもう……。 ああ駄目だ俺! 石積みに集中するんだ! 一度はやってみたかったアコガレの石積みが目の前にあるんじゃないか。真剣に限界に挑戦するんだろ! 頑張れ俺! 惑わされるな俺! と、一体に流れる得体の知れない静寂の中、流れて行く川のせせらぎだけがちょろちょろと……。 「魂の塊とか、肝臓という説もありますよね!」 そしたら、そんな緊張をパーンと弾けさせるような屈託のなさで、ななせは答えた。 というか実際何か、近くでガッシャーンって音がして、見れば晴が必死に積んでいた石を崩れさせていて、「うんうんそうそう、肝臓! 肝臓だよ肝臓!」 のに、慌てて遥紀は、「うんうんそうそう、肝臓。肝臓だよね、肝臓!」と激しく同意する。 良かった。 年下の、こんな無垢な子の前で、情操教育に悪そうな事を言ってしまわないで本当に良かった。 良かった。 「でもやっぱ……くそっ何だこの悔しさは! 紛らわしい名前付けるんじゃねえよ! ばっきゃろー!」 晴が、そんな事を山へと叫び、石を川へと放り投げていた。 ●そんなこんなで。 その後もリベリスタ達は釣りをしたり、川に入ったりして楽しく遊んだ。 そしたら、河童が現れた。 わーという仲間の声に、木陰で読書とかしながら暇を潰していたアルフォンソは、ハッと立ち上がり、敵が出て来たとあらば俄然やる気で、ディフェンサードクトリンとオフェンサードクトリンを相次いで発動した。 その援護を受け、河童に掴まれそうになっていたシェリーは、 「妾を狙うとは、おぬしロリコンかー!」 と、その顔面目掛け、すかさずマジックミサイルを撃ち込み、そしてそのまま陸地へと全力移動! 代わりに前へと飛び出して来たのは、右手にグロック18「狩人の嘆き」、左手にコルトガバメント「這い寄る蛇」を構えたベルバネッサで、 「いよっし、いっくぜー!」 と、バウンティショットを発動したかと思うと、上がって来た河童に次々に鋭い弾丸を撃ちこんで行った。 一方、こちらでは、漆黒開放で全身を暗黒色に包んだカインが、自らの生命力を暗黒の瘴気に変え、ぶわわあああ、と全力で放出していた。 「いかに河童という妖怪が意気軒昂であろうと、我が暗黒の力にて寂寞たる中へと陥れてやろう!」 二匹の河童がその中に捉えられ、後方から更に、遥紀の援護が飛んだ。 「しかしほんとに後光が差しそうと言うよりは後光を放ちそうな勢いの頭だね」 真面目に同情するような表情。 「でもごめん。育毛剤は持ってないから、これで安らかに眠っておくれ」 そして彼は、神気閃光を発動する。 ごおおおおお、と凄まじい勢いで飛び出るその聖なる炎が、河童二匹を焼き尽くすその頃。 ヤマはトラップネストを発動し、河童一匹の動きを封じていた。 そしたらそこに飛び込んで来たのは「#0d0015」を構えた晴で、まっ黒黒なその鎌を死神の如く振りかぶり、 「俺の昼飯になるはずだったのにー! 河童ってただのパチモンじゃないですかー! ただの緑のハゲじゃないですかー! なんだよー食べられると思ったのに! 食べられると思ったのにー!! こンの、ハゲ! タコっ!」 とか何かわりとお門違いな怒りを爆発させ、ダンシングリッパーを発動。 踊るように斬り、斬り、切り刻み、「河童の輪切り、でも食えない!」とか何か叫びながら、その頭を最後にスッパーン。 その間にも 「わたしを選ぶなんて、好みがマニアックですねっ」 そう叫んだななせが、河童の一匹をしっかりブロック。 どうやって。 相撲で。 「さー! はっけよーい、のこったのこったのこったのこったー!」 と、思ったけど今、この水着を回しのように引っ張られたら、アカン事になる!!! ピーン! アホ毛ピーン! とか気付いたななせは途中で軌道を変えて、 「ざびえるくらーっしゅっ!」 Feldwebel des Stahlesを振りかぶり、メガクラッシュでお皿、ならぬ禿げの当たりをバチコーン! と、割ったのだった。 ● そうして今日も優秀なリベリスタ達の頑張りにより、迷惑エリューションは退治され、川には平和が訪れた。 もちろん彼らは優秀なので、遊んだ……もとい戦った後の後片付けも忘れない。 ななせ「時間があるならもうちょっとピクニック……じゃなかったバーベキュー楽しんじゃいますか?」 ベルバネッサ「いやもうそろそろいいんじゃね? 陽とか暮れてきそうだし。あ、片すんなら手伝うけど?」 シェリー「ゴミの始末もしっかりとな! 自然は大事に!」 カイン「うむ、実にオリエンタルファンタジーであったな」 晴「へっくし。うー駄目だ。風邪引きそう」 遥紀「大丈夫? はい、タオル」 晴「あ、ありがとう……」 遥紀「でも今度蜂蜜かけたら、これじゃすまないからね」 晴「…………」 ヤマ「河童の残骸には胡瓜のあまりを供えておいてやろうかの。三途の川への手弁当だ」 アルフォンソ「まあ何はともあれみなさん。とりあえずはお疲れ様でした」 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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