●戦慄! かまいたち三兄弟 曰く、『かまいたち』とは、三人で行動するという。 一人目のかまいたちが、人を転ばせ 二人目のかまいたちが、人を斬りつけ 最後のかまいたちが、傷に薬をつけていくのだと。 その日、夏のビーチは海水浴の人出で賑わっていた。 歓声をあげながら砂浜を駆けまわる、水着の乙女たち。太陽の下で光る健康的なふともも。優しく耳を撫でる波音は、この際どうでもいい。 ここはユートピアだ! この世の楽園だ! 輝かしいビキニのヴィーナスが戯れる浜辺を、皆が楽しんでいた。 『かまいたち』が現れる、そのときまでは。 「きゃーっ!」 ピンクのビキニを身につけた少女が、『何か』に足をとられて転倒した。 そのとき、少女は背後から忍び寄る男の影に気づけなかった。それは少女の死角をついた的確な接近だった。 男の手から放たれた正確無比な真空刃が、ビキニの肩ひもを断ち切る。同時に男の手は狩人の貫録で少女のビキニに伸びた。抜き去られた魅惑の布地に、少女の二度目の悲鳴があがる。 しかし、乙女が決定的に辱められる前に『三人目』は動いた。 その動きは電光石火と呼ぶに相応しい。第三の男の手により、少女の体はタオルで覆われていたのだった……。 ●恐怖! 笑顔の裏のメッセージ 「これが巷を騒がす『渚のビキニ泥棒・かまいたち三兄弟』の犯行の一部始終です」 「ごめん、ちょっと何言ってるのか分からない」 きびしい面持ちで資料を読み上げた『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)にリベリスタ達は待ったをかけた。 『かまいたち』と言うから、真空刃を使うエリューションでも出現したのかと思いきや水着ドロである。脱力せずにはいられない。そんなリベリスタ達の拍子抜けにも、和泉はオペレーター然とした態度を崩さなかった。 「世間にはまだ気づかれていませんが、これはフィクサードの仕業なんです。 プロアデプトの次男が気糸を使って、対象を転倒させ、 レイザータクトである長男が対象の死角から近接し、精密な狙いの真空刃によってビキニを奪取します。 そしてソードミラージュの三男がスピードを生かして、対象にタオルを差し出した後に逃亡……」 「三男やさしいな……」 やはり緊張感には欠ける。 「ビキニ泥棒は、そんな多少の気遣いで許されるような行為ではありません。彼らの潜伏場所は不明ですから、誰かが囮になるなどしておびき出す必要があるでしょう。 理由は不明ですが、彼らの狙いは水着の中でもビキニに限っています……事件の全貌は分からないながらも一般市民の間にもビキニ泥棒の噂は流布していますから、現在ビーチにビキニの海水浴客は枯渇中のようです。 ですので、こちらがビキニで出て行けば、三兄弟が引っ掛かってくる可能性は高いと思われます……それでも人目は避けられませんから、三兄弟を釣った後は、こちらのプライベートビーチに誘導して戦闘を行って下さい」 一般の海水浴場の奥にセレブ保有のプライベートビーチが存在しているらしい。なるほど、こっちに連れ込めれば岩場の関係で人目にはつかない。本来の持ち主には根回し済みであるとのことだ。 一通りの説明を終えた和泉は、にこり、と普段の人当りのいい笑顔を浮かべて締めくくった。 「生死は問いませんから、存分に懲らしめて来て下さいね」 い、いつもの温厚な和泉さんじゃない! 「あ、あの……もしかして、和泉さん怒ってます?」 「はい?」 女性の敵は、アークの敵。 笑顔の裏に隠された、そのメッセージをリベリスタ達は強く強く受け取った。 「頑張らせて頂きます!!」 でも、かまいたち三兄弟が出てくるまではビーチで遊べたらいいなあ、なんて思っているリベリスタがいたかどうかは誰も知らない。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:碓井シャツ | ||||
■難易度:EASY | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年08月02日(木)23:17 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●ビーチに参上 剥がれるのが嫌なら着なきゃいいんだぜ? ――シルキィ・スチーマー―― 人が開放的になると言われる夏。 ここにまた、リベリスタの名言が生まれようとしていた。 太陽は燦々と輝いている。実に良い海水浴日和だった。 しかし、我らがリベリスタ達は勿論、このビーチへ遊びに来た訳ではない。 「女の子の水着を盗るなんて、なんたる悪! 男の煩悩が許そうとも、正義は決して許しなどしないっ」 そう、すべては正義のため! 『三高平高等部の爆弾娘』蓮見 渚(BNE003890) は高らかに正義を謳った。 フリルのついた純白のビキニをまとった彼女はまさに渚の妖精、いや、妖精の渚? とにかく、そんな感じの可愛らしさだ。 「……その浮き輪、必要なのか?」 「えっ、こ、これは海水浴客に馴染むためっていうか、せっかくだし、遊べたらなぁ……とか考えてた訳じゃないよ?!」 『不死者』葉月・桜花(BNE003964) の口にした疑問に、持参した愛らしいデザインの浮き輪を抱えて懸命にに弁明する姿も微笑ましい。夏の海で遊びたくならない奴なんて、若さが足りないというものだ。 「ルー、ウミカラ、ミハル!」 そこへ被さってきた若さと元気に満ちあふれた声は、ルー・ガルー(BNE003931) である。 髪の色に合った青のマイクロビキニは、ルーの豊満な胸を隠すには些か心もとない。だが、そこがいい、という男は星の数ほどいるであろうから、何の問題もなかった。 ルーは一目散に浜辺を駆けて行き、海に飛び込む。野生の狼を思わせる泳ぎでみるみる姿が小さくなっていった。 「胸が残念っていうな、寂しいっていうなぁああっ!」 「言ってねぇよ!! 蓮見さん、そりゃ被害妄想ってもんだぜ……」 ルーの姿を見送っていた『ヤクザの用心棒』藤倉 隆明(BNE003933)は、渚に横からパンチを食らって抗議した。パンチ自体はへなちょこなのでノーダメージだが、口にしていないことで制裁を受けるのは筋が通らないってものだ。 「視線が言ってたーっ! ルーと私を見比べてたぁ!」 「そりゃ男としちゃ見るなって方が難し……」 隆明は、走るたびに大きく揺れていたルーのたわわな胸を思いだし……憤慨した渚にぽかぽかと殴られた。ガスマスクを着けていても視線ばかりは隠せない。 「おいおい、仲間割れしてる場合か? そんなんじゃビキニ戦争には勝てないぜ!」 がはは、と男を思わせるような背後からの笑い声に、渚も隆明も振り向くのをためらった。 声の主は『Steam dynamo Ⅸ』シルキィ・スチーマー(BNE001706)。 と、なれば……十中八九、裸である。街中でも脱ぐのを躊躇しない姐御が、ビーチで裸じゃないなんんて、そんな訳…… 「着てんのかよ!!」 大方の予想に逆らって、シルキィはビキニの上にパレオをまとっている。あのシルキィが裸どころか低露出だなんて、誰が予測できただろうか。 しかし、布地の下からでもシルキィのダイナマイトバストは、ちっとも迫力を失っていなかった。むしろ、焦れったくて逆にセクシーなくらいだ。 「ははは。何だ、裸が見たかったのか?」 「いや、そうじゃねぇよ! 蓮見さんの誤解が悪化するからやめてくれ!」 渚はすっかり機嫌を損ねて頬を膨らましている。 「とらは先にプライベートビーチに行ってるらしいから、あたいもそうさせてもらうぜ。戦いやすい場所か下見しとかねぇとな」 「まぁ……月杜さん、あまり浜辺をうろつく格好じゃなかったからな」 『白詰草の花冠』月杜・とら(BNE002285) の本日のコーディネイトを思いだして、桜花が呟いた。トップスは一般的なビキニだったのだが、何故か下にはパンツを履いていた。何を言っているのか分からないかもしれないが、ありのままを話すとそうだった。 「んん? ってことは、もしかして囮って私だけ?」 シルキィもとらも待ち伏せ組で、ルーは泳ぎに行っちゃったから……と渚が不安そうに眉を下げる。 「大丈夫ッスよ。あたしがいるッス!」 そんな渚に向かって、『レッツゴー!インヤンマスター』九曜 計都(BNE003026)がビキニ姿で爽やかにサムズアップをした。 「よかった! 安心したよ」 胸のサイズ的にもひんにう同士、安心な渚であった。 ●かまいたち一本釣り かまいたち三兄弟は、静かにビーチを観察していた。 「ここのところ、ビキニを着た娘の姿を見なかったが、今日はちらほらといるようだな」 腕組みをした長男が、厳しい視線を囮の渚と計都に向ける。二人は海の家で購入したかき氷を食べながら、舌に色がついちゃった、とか楽しくやっていたので全く囮とは気づかれていない。 「やったな、兄貴! 今日は大漁の予感だぜ!」 見た目からしてチャラチャラした次男のテンションは上がりっぱなしだ。 そんな次男を長男は怒鳴りつける。 「だからお前は駄目なんだ! よく見ろ、あの娘たちの胸を……あれはロリだ。ロリがビキニを着ても、それはおしゃまさんであって破廉恥ではない! 俺たちの目的はあくまでも破廉恥なビキニを撲滅することであって、おしゃまさんは対象外だ……!」 訳が分からない。兄ちゃんは真面目の使いどころを間違っている。ちぃ兄ちゃんも、ただビキニギャルが好きなだけなのが、だだ漏れだ。でも、そんなこと言えっこない。だって、二人とも怖いんだもん。 三男は猛烈に帰りたがっていた。 そんな浜辺の狩人たちを注意を払っていたのは、今は水中の狩人・ルーである。 海の中ならばビキニを剥かれる心配もない。ルーは野生動物さながらの視力でビーチを観察し、三兄弟の目星をつけていた。ビキニを注視している三人組は、一組しか見当たらない。 「ルー、アヤシイヤツ、ミツケタ!」 AFで連絡を取り合う手筈になっていたので、情報は速やかに共有される。 「でかしたッス! 誘導は任せて欲しいッスよ」 犯人を見定めた計都のメガネは、あやしく光った。 「うう、あそこで見てるのに襲ってこないって私たち魅力ないのかな……」 「ヤツらが黙ってられないような極上を見せてやるッスよ……唸れスタイルチェンジッ!! ぼんきゅっぼんで、うふ~んなセクシーダイナマイツ、ここに降臨ッ!! 魅惑のビキニで悩殺☆しちゃうゾ!」 計都が気を練ると、ビキニの下の乳は水風船のようにみるみる膨らんでいく。グラビアアイドルもびっくりの重量感に渚は目を白黒させた。 「ええええっ何それ、計都ずるいぃいいいっ!!」 「九曜計都? 違うな、あたしは乳神の巫女……英語で言うとオッパイゴッデス!」 計都は本日最高の決め顔を渚に向けた。マジレスすると、オッパイは英語ではない。オッパイゴッデスだと乳神の巫女じゃなくて、乳神そのものだし。 「破廉恥だァーー! ひゃっほーー!!」 しかし、次男が爆釣れしたので、そんなことは何の問題にもならなかった。 追いかけて来た次男を確認した乳神の巫女は、ここで追いつかれては台無しなので、決戦の場であるプライベートビーチに向かって全力疾走した。 「お、やっと引っ掛かったか」 浜辺を疾駆する計都とかまいたち三兄弟の鬼ごっこを見て、地味に一般客の避難活動を行っていた隆明が、ほっと息を吐く。 「分かってないわね、水着なんて美少女が付けてるから価値があるってのに。水着だけが欲しいなら、デパートにでも行って来いっての」 「うおっ! 霧里さん、アンタいつから……!?」 『白い方』霧里 びゃくや(BNE003667) は、かまいたち三兄弟の無理解を蔑む。 実は最初からビーチにいたびゃくやさんだが、今日は女の子の水着を見に来ただけなので顔も出さずに絶賛●RECモード中なのだった。 「早く行かないと見そびれるぞー野郎共ー」 「オレは別に水着を見に来た訳じゃないんだが……」 桜花は疲れた声を出した。 ●正義の制裁 プライベートビーチにオッパイゴッデスこと計都、それに続いてかまいたち三兄弟が飛び込んでくる。それを今か今かと待ちわびていたのは、とらだ。 「ねぇ~、和泉ちゃぁん。あれ、どう思ぅ~?」 勿論、とらの目の前に和泉はいない。つまり、今日もとらのブレイン・イン・ラヴァーは絶好調だった。とらの脳内和泉は、優しい笑顔でこう申されました。 「……うん、『もげろ☆』? ですよねーーwww くらえ・目潰しィ! 神気閃光!!☆」 「気をつけろ、罠だ……!」 長男の発した警告も空しく、こう書き表すのには若干の抵抗があるが『聖なる』光が、次男の目を焼いた。悲鳴を挙げる次男に、とらの高笑いが注がれる。 「ヒャーッハッハッハァッ!☆ うちの敏腕フォーチュナ様が、雄豚共、お前らのタマをご所望だっ♪ フジツボの上に正座して、ガタガタ震えながら命乞いをする心の準備はオッケーか!?」 ホーリーメイガスのホーリーって何だっけ。 「チームかまいたち! フォーメーションBだ!」 いち早く、状況を理解した長男が戦線の立て直しを図る。次男も目を押さえながら指示に従い、統制のとれた動きをみせた。しかし、それは計都の望むところであった。 (まずは、かまいたち三兄弟の妙技、見せて貰うッスよ! リスクは覚悟の上。自分の身を餌にしてでも、ヤツらの絶技……、特に長男の技を見切ってみせるッス!!) 次男の気糸が計都の足をとった。問答無用で引きずり倒される。 体に擦り傷をつくりながらも、計都は全身全霊全感覚を研ぎ澄まし、長男の動きを読もうとしていた。 長男の手から放たれたチェイスカッターが高い精度をもって、計都のビキニ紐を切り裂く。習熟された手技が計都のビキニを奪い去った。 続いて走り寄った三男が、ビキニを奪われた計都にタオルをかけようとして絶句する。 「水着の下に……水着だって……!?」 まさかのビキニ・オン・ビキニ。計都は奪われたビキニの下にストラップレスのビキニを身につけていたのだった。 「さあ、ここからはあたしたち、かまいたち三姉妹のターンだ! ゆくぞ、妹者たち!!」 変わらずビキニ姿の計都が不敵な面構えで立ち上がった。 「ひ、ひでぇ……! 裏切りにもほどがある!」 直肌装着していないビキニなんか奪っても何の喜びもないじゃないか、と嘆いた次男の足を、すかさずとらの気糸が絡めとる。 「こんの……豚野郎っーー!!☆」 足をとられた次男は顔から砂浜にダイヴした。この次男、プロアデプトのくせに残念な頭である。 (精神一到……ああ、かまいたちよ、水着剥ぎの奥義……、掴ませてもらった。 それは、水着にかける情熱愛友情勇気パッション!!) 何処からか何かを掴み取ってしまった計都は、ビキニから札を取り出し構えた。 「うおおおおお、燃え上がれあたしのエロス!! 式符・鴉に魂を込めて……切り裂けッ!!」 計都の放った符が黒い翼をもって次男の海パンへと滑空する。この場限りのものとは言え、先ほど計都が身をもって味わったかまいたちの絶対的な精度が、その鴉には宿っていた。 切り裂かれた海パンが宙に舞う。 「OK、海パンゲット。流石だよなアタシら」 ただの布きれと化した次男の海パンを握り締め、計都はニヒルに笑った。 「うわあああ! ちぃ兄ちゃああああん!!」 乙女のために用意されたバスタオルを次男の腰に巻きつけながら、三男が慟哭する。 どうしてこんなことになってしまったのだろう、と若干パニックに陥った三男の頭に直接語りかけてくる声があった。 (ぉぃ、わかってんだろ、お前だよ、お・ま・え!w) 突然の事態の連続に、三男はびくり、と肩を震わせる。 (アニキ達に引きずられて、一緒になってこんな事して、バカを三人も産んだとか、ママが世間に罵られちゃうわよォ? 申し訳ないと思わないのォ!?) とらのハイテレパスは嫌らしく三男に揺さぶりをかけた。 親のことを言うなんて卑怯だ、三男の目が泳ぐ。 (アンタ今、どっちの味方についた方が自分の得になるのか、よぉーく考えて、そして選ぶがいいわさ! 『自分の運命』ってやつをなぁー!!www) 脳内を侵略するとらの声に、三男はすっかり怯えて海の方へと後退った。しかし神は三男の味方ではなく、海からは新手が出現する。 「イズミ、イッテタ、ゾンブンニコラシメロ……ダカラ、ルー、ゼンリョクデタタク!」 海から上がってきたのは、ルーだった。繰り出された爪は凍てつく冷気を宿っている。咄嗟に全身の反応速度を高めた三男は、バックステップでそれを避ける。 「タタク!」 更に追いすがるルーの爪を弾こうとして出した三男の手が、何かに引っ掛かった。 「えええええっ!?」 「タタク!!」 ビキニの紐だ。それなのに、ルーは露わになってしまったバストを隠そうともしていない。攻撃を繰り出す度に元気よく揺れる乳房にいたたまれなくなったのは三男の方だった。 「ごめんなさいいいいいごめんなさいいいい……!」 ルーにタオルを巻きつけ、三男は土下座した。 「ふん、それで勝ったと思うなよ。三男は三兄弟の中では最弱……かまいたちの真価はこれからだ! こうなれば、一番、ちょろそうなのを狙うぞ弟よ!」 「分かったぜ、兄貴……!」 狙ったビキニは逃さない。それが、かまいたちの掟。兄弟のトラップネストとチェイスカッターのコンボが渚のビキニを奪う。 「ひああああっ! 絶対泣かす、がっでむ! ええい、チェインライトニング! らいとにんぐぅううう!!」 渚が胸を押さえながら魔力を噴出させた。荒れ狂う雷条が三兄弟を見境なく襲う。 「女の敵など死んでしまえぇええ!!!」 パンチはへなちょこでも、魔法攻撃は全然ちょろくない渚だった。リベリスタ男組が岩陰で見つからないように息を殺していたのは、賢明な判断だったといえるだろう。 「●REC」 そんなカオスな戦場でも、岩陰からカメラを構えるびゃくやに歪みはなかった。 「ひいっ! もう、こんな奴ら相手にしてられるか! 俺は逃げ……」 次男はそれ以上、言葉を継ぐことはできなかった。逃げようとした次男の懐には、既に体勢を低くしたルーが入り込んでいる。下から掬い上げるようなメガクラッシュが次男の股間に炸裂した。 「キュウチョ、ネラウ、カリノ、キホン」 次男は泡を吹いて崩れ落ちる。 「うわあああ! ちぃ兄ちゃああああん!!(再)」 あまりの残酷な仕打ちに三男は泣き叫んだ。 「馬鹿な、馬鹿なああ……!」 動揺を隠しきれない長男の前に立ちはだかったのは、ラスボス・シルキィだった。何をされるか分からないながらも、長男の脳裏には警告じみたBGMが流れ始める。それは、まるで忍び寄る巨大鮫と対峙したかのような緊迫……シルキィの手が自らの水着にかかる。 シルキィは、ばさり、と音を立てて一気に水着を脱ぎ去った。 「!?」 飛び出した計器で隠されただけのミラクルバストを前に、長男は言葉を失った。何故、脱いだ! 何故、脱いだ!? 落ち着け、とにかく今は撤退……と動揺を静めようと躍起になっている長男をシルキィはがっちりと抱き込む。奇蹟のバストの弾力が長男から正常な思考能力を奪い去る。 「ひとつの目標に賭ける熱意や、その為の工夫や努力。その真っ直ぐな気持ち自体は、決して悪いものじゃない。だけどな、やっちゃいけない事ってのはあるんだぜ!」 シルキィのオーラが凶器へを変わった。 (パンツが……爆発しただと……?) 渾身のハイアンドロウが威力を発揮し、長男の海パンは弾け飛ぶ。シルキィは畳み掛けるように、ぎゅうううっと長男へ気合を注入した。 ※気合の注入方法については明記しない。 「布地なんてものにこだわっちゃいけないのさ……」 ふっ、とまるでそれが貴様の敗因だ、とでも言いたげな何かが間違っているシルキィの呟きを聞きながら、長男は気を失った。 ●夏の楽園 ぐったりとしている長男と次男、その横で啜り泣いている三男の隣でルーが前足……じゃない、素手でたしたしと穴を掘っている。 理由は明快だった。 「アタマダケダシテウメル、スナハマデノオシオキ、ルー、ベンキョウシテキタ!!」 砂浜に肩まで埋められた三兄弟を見て、リベリスタの女子達は満足げに微笑む。 「今日のことは悪い夢だったんだと思って、呑んで忘れるといいぜ……その、穴から出たら、だけどよ……」 不憫だとは思えど、女子たちの手前助ける訳にもいかず隆明は、埋められた傷心の三男の横にそっと酒瓶を置いた。 「アークはいつでも、やる気のあるリベリスタを募集中よ☆ 電話番号は 0120(オーぱん2)オーぱん2 よォ♪」 「こんな仕打ちされて、誰が同僚になろうとすんだよ!」 悪びれもせず電話番号を酒瓶の下に忍ばせるとらに、隆明の非難が上がった。 「じゃあ、全部片付いたし、遊びに行こうか! 暑い夏は水場に限るねっ!」 晴れやかな笑顔で浮き輪を掲げる渚に、否を言う者はいない。海の家で買った新しい水着もよく似合っている。青く澄み渡った空を彩る闊達な女の子たちの笑い声。 ああ、夏の海っていいなあ……。 ●三兄弟反省会 「女の子、まじ怖えええ」 「ビキニは破廉恥だが、ビキニを剥ぐ方が破廉恥だったな。パンツを剥がれて、よく分かった」 「もっと早く気づいてよ、兄ちゃああああん! だから俺はやだったんだよおおお! ……はぁ、とら様……」 三男の疲弊した精神が兄とは別の主人を見出そうとしてしまった危ない瞬間であった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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