●秘め事 可愛い、と声は囁いた。 ピンクと白が主体の子供向けブランドのワンピースに身を包んだ少女の頬に手を滑らせる。 うっすらと笑みを浮かべた少女は、触れる掌にも微動だにせず前を見詰めていた。 着替えを、と小さな耳元でまた囁いて、指先がボタンを外す。 レースのついた子供用の肌着が露になり、すとんと床にワンピースが落ちる。 白く細く柔らかい二の腕から伸びる白い指。 話し掛けた唇は、少女の手の甲から唇を滑らせ指を含む。 舌先で爪の間をなぞるように、指先を喉の奥まで咥え込むようにして、まるで飴を味わうかの様にしつこくしつこく舌を動かした。 ようやく離した後、瞳に浮かぶのは恍惚。 指を含む為に気付けば跪いていた身をゆっくり上げて、少女の頬にも舌を滑らせる。 可愛い、と伝わせる舌の合間に呟いた。 可愛い、可愛い、と何度も重ねる。 声音が持った熱っぽさは、いっそ病的。 だが、少女がそれに答える事はない。 行為に嫌悪の表情を浮かべる事も、拒絶を口にすることもない。 彼女の背後には、椅子に座り、或いはベッドで眠りについた姿勢の少女が、後二人。 けれど共に、動く事はない。 何故なら少女らは、物言わぬ人形と化していたから。 可愛い、と、声が、また呟いた。 病にも似た熱を孕んで。 ●世間様でどう言うかはともかく 「……どうにかして」 ブリーフィングルームに集ったリベリスタに『リンク・カレイド』真白イヴ(nBNE000001)はそう言った。 が、すぐに説明が足りないと気付いたか口を開く。 「美少女ばかり攫っているフィクサードがいる。『人形化』とでも言えばいいのかな。 相手の意識を消して、自分の思うように出来る能力。 タチの悪い事にそんなのを持っていて、集めた女の子を等身大の着せ替え人形みたいに扱ってる」 端末を叩いたイヴによってモニターに映し出されたのは四人の少女。 どれも小学生程度の可愛らしい、或いは整った少女たちだ。 「とは言え、完全な『人形』じゃない。女の子たちは少しずつ弱ってる。 放置しておいたら衰弱死は免れない。これ以上の被害は見過ごせないの」 ならば肝心のフィクサードの情報は、と問うたリベリスタに、イヴは事もなげにモニターを指した。 「これ」 正確には、モニター内の四人の少女の一人を。 改めて大きく映し出された画面の少女は、金髪を緩やかに波打たせ、無邪気な様子で微笑んでいる。 さては遊び相手が欲しいが為の行動か、と多くに過ぎった思考をイヴはあっさりと否定した。 「騙されないで。このフィクサード、単なる美少女マニアの女の人。革醒して若返ったけど、年は智親と同じ位。 海外でも似たような事をやってて、オルクス・パラストから逃れて日本まで来たみたい」 ……。 彼女の父親である研究開発室長を思い出し、数名が遠い目。 「見ての通り、外見は美少女。何かあるとすぐに泣き真似で通そうとする。 この泣き真似も彼女の能力の一つ、油断したら駄目。意志が強くても抗えない事があるから」 続いて渡されたのは、地図。 「彼女は明日の昼、公園で新しい獲物を探す。子供向けのお祭りみたいなイベントが開催されてるから、それが目当て。……ただ、それを楽しみにしてる子や、イベントスタッフの為にも結界は使わないで欲しい。公園以外で戦闘に向きそうな場所は、彼女自身の家。だから、誰かが囮になって家に潜り込むか、尾行するかがいいと思う。『人形化』には数時間必要みたいだから、あなた達が能力を使用される心配はしなくていい」 目を付けた子に、『友達になろう』と声を掛けて家に連れ込むのが常套手段。 曰く、自分はこの辺りに引っ越してきたばかりで友達が少ない。 遊んで欲しいのだけれど、おやつの時間までに一旦家に戻らないと叱られるから一緒に来てくれ。 声をかけられた方も、相手は自分とそう変わらない女の子。 泣きそうな顔で乞われたら、そうそう断れない。そうして彼女は『人形』を増やす。 「戦闘になったら、きっと人形になった女の子たちも出てくる。ただ、女の子達は操られているだけで、そんなに強化はされてない。下手にスキルで攻撃すると死んじゃうかも知れない」 イヴはそんな説明をして、首を振る。 「女の子達は年齢制限に引っ掛かるような事はされてないし、そもそも覚えてないからトラウマにもならないはず。一番はフィクサードの退治とあなたたちの無事だけど、可能な限り助けてあげて」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:黒歌鳥 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2011年06月06日(月)22:10 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●撒餌 人で賑わう昼間の公園。 『ナーサリィ・テイル』斬風 糾華(BNE000390)は、イベント会場の横で風船を配る着ぐるみや屋台の下で行われているヨーヨーつりなどをさも興味深げに眺めるふりをしながら周囲を伺っていた。 少し先、ベンチや花壇のある場所では『愛を求める少女』アンジェリカ・ミスティオラ(BNE000759)が演奏の準備をしている。 モニターで見た金髪の少女――の姿をした敵はまだ現れていない。 ちらりと木陰に目を移せば、枝の影から『ニンジャブレイカー』十七代目・サシミ(BNE001469)の目が逆さに覗いている。 うまい事人波に紛れている様子だが、『Gentle&Hard』ジョージ・ハガー(BNE000963)も二人を視界に入れる場所に潜伏している筈だ。 アンジェリカの持ったバイオリンが、緩やかな旋律を奏で始めた。 さて、後はこれに誘き出されてくれればいいのだが。 そう思って手作りのお菓子が並べられたテーブルに背を向けた糾華の視界の端を、金の色が掠めた。 自らと同じ程度の高さに頭がある事、その髪が長い事だけ確認し、何気ない様子でアンジェリカの方へと近寄る。 幸いイベント会場でヒーローショーが始まるらしく、ベンチに座っていた親子連れが数組動いた。 人目をなくすという訳にはいかなくとも、これならば邪魔も入るまい。 歩み寄る間にアンジェリカの操る弓が止まり、残るのは音の余韻。 「すごいわっ!」 間髪をいれず響く糾華の拍手と賞賛の声に、アンジェリカははにかむように笑った。 続いたのは、やはり拍手。 「本当、すごいわ」 桃色の唇を笑ませ、そう言ったのは金髪の少女。間違いない。フィロメーラだ。 「ね、ね、すごいわよね、素敵……!」 糾華はそんなフィロメーラに躊躇いもなく話しかけた。 人懐っこく明るいその様子に、目標もにっこりと頷きを返す。 「……ありがとう。……少し恥ずかしかったんだけど……」 それと対照的に、大人しい少女を演じるアンジェリカにフィロメーラはもう一度拍手を送った。 反応に手応えを感じ、糾華が会話を続ける前に金髪の少女は首を傾げた。 「ね、貴女達、お友達なの?」 可愛らしく問うてみせるフィロメーラに、糾華とアンジェリカは一瞬顔を見合わせる。 が、即座に二人は頷いた。 「うん、そうよ」 「今、会ったのは偶然なのだけど……」 幸いにしてというかフィロメーラ対策としての必然としてか、二人は年恰好が似通っている。 下手に否定するよりも肯定した方がこの先共に行動しやすいだろう。 「そうか、いいなあ。私、最近こっちに来たばかりだからお友達が少なくて」 フィロメーラは疑う事なく寂しそうな顔を作って見せた。 二人は目線だけでそれを確認し合い、続きを待つ。 「良かったら、お友達になってくれないかなあ?」 引っ掛かった。 どうやらフェイト持ちだろうがなんだろうが、欲望の前には些細な事実らしい。 あっさりとこちらの手の上に乗ってくれたフィクサードに、二人は少しだけ驚いた顔をして――揃って笑顔で頷いた。 「本当? 嬉しいわ、すっごく嬉しい! あ、でも……」 ママに怒られるからそろそろ帰らなきゃいけないの、一緒にお家で遊ばない? 早急と言えば早急な申し出ではあるが、恐らくこれは会話が続かなかった場合などに目標を逃さない為の手段なのだろう。 早々と自分のテリトリーに連れ込んでしまえば、後はどうとでもなる。 家に連れ込まれるのは二人に取っても好都合ではあったが、まだ『作戦』上は早過ぎた。 素早く返したのはアンジェリカ。 「うん、勿論。だけど、あのね、もう一曲だけ、いいかな……?」 少しだけ上目遣いで、だめ?と尋ねるアンジェリカ相手にはフィロメーラもおねだりが使いにくかったらしい。多少引き伸ばしてもこの獲物は逃げないと踏んだか、考えた後に笑顔で頷いた。 「じゃ、こっちで落ち着いて聞きましょう?」 フィロメーラの手を握った糾華がベンチを指して座る。 アンジェリカが演奏の準備を整える間、糾華は自分の髪を抓んで見せた。 「私の髪と目の色は生まれつきなの。だから色々あったけど……」 ――今は楽しいわ、新しいお友達もできた事だしね。 邪気のないように笑ってみせる糾華に、獲物を狙う狩人は少しだけ目を細めて、笑った。 ●囚われの 「全く、オルクス・パラストの連中もこういう変態はちゃんと始末しとけって話だよな」 ぼやきの様なものを零しながら、サシミからターゲット接触の連絡を受け取った雪白 音羽(BNE000194)が二階の窓を軽く揺らす。 「子供の可愛らしさは動いているからこそなのにねっ!」 少し膨れながら頷いたのは『おじさま好きな少女』アリステア・ショーゼット(BNE000313)。 『二重の姉妹』八咫羽 とこ(BNE000306)も合わせ、フライエンジェである三人は、フィロメーラの自宅上階の窓から侵入できないかと鍵を確認している所だった。 地上では万一に備え、『血まみれ姫』立花・花子(BNE002215)が一般人の立ち入りを牽制する結界を張っている。 「ね、女の子を人形化なんて、ひどいと思うの」 (そうだね、何でこんな事してるのかな?) とこの言葉は仲間の誰かに放たれたものではない。自らの中に住む姉――と思い込んでいるものに話しかけた言葉だ。返答は心中からすぐに齎され、とこは考える。 「やっぱり女の子が好き……だからなの?」 (そうかもね。女の子の恋愛っていうのもあるらしいから……) 「とこはお姉ちゃんが相手なら……」 「お、ここ開いたぞ!」 とこのさり気ない告白は音羽の発見によって遮られた。 廊下の端、音羽がギリギリ通れそうなサイズの窓。急を要する侵入には向かないが、今ならば充分であろう。ましてやこの場の二人は音羽よりもよほど小さいのだ。 足音を消しながらも素早く玄関に向かい、待っていた花子を招き入れた。 「よ~し、寝室から調べよう」 囁くように告げた彼女は、皆を鼓舞するように軽く手を上げる。 こうして入り込んだ四人の侵入者によって、少女らはあっさりと発見された。 フィロメーラの意志によって動くらしく、立ち、座り、眠る彼女らは呼吸こそしているものの自発的に動く気配は一切しない。 「うーん、心がちょっと痛むなあ……!」 「なんか俺達の方が犯罪者な気分だよな」 言いながら少女を縛り上げていくアリステアに続き口にガムテープを張る音羽はちょっと凹んでいる。戦闘すら必要なかった挙句、少女らはこれ以上ない無抵抗。 一瞬自分の立ち居地を見失った気もするが、作戦としては大きな成果といって良いだろう。 そう自分を慰める音羽の横で、とこと花子も少女の捕縛を終えベッドへと転がした。 「うん、それじゃ後は帰ってくるのを待つだけ――」 アリステアが軽く手を叩いてそう告げた瞬間、幻想纏いからジョージの声が聞こえる。 『目標。そろそろ着くぜ』 ●愛好の行き先 「結構な趣味でござるよなー。拙者にはちと理解しがたいでござるよ」 「形だけ子供を愛する、どうしようもなくダメな大人の典型だな」 アンジェリカが一曲弾き終わった後、公園を離れる三人を尾行していたジョージとサシミはそんな会話をしながら庭を覗き込んだ。 念入りに多少の距離を取ってつけていた二人であったが、襲撃に備え今は一息で飛び込める場所にいる。 性嗜好自体は自由であって然るべきだろう。しかし、今回は相手が年端も行かない少女だという事実に加え、誘拐同然、いや、それより酷い状態で囚われているのだ。 ならば止めねばなるまい、と真っ当な大人の思考でジョージは様子を窺い続けた。 今現在、フィロメーラは糾華と共に庭でアンジェリカの演奏を聴いている。 ガーデンチェアにティーセットなどを持ち出して和んでいる図は、傍から見れば実に可愛らしい、絵になるものだっただろう。 しかし、今回の目的は違う。 屋根上に覗いた羽を確認し、サシミが飛んだ。 だが、飛び込んできたサシミの一撃を、フィロメーラは獣の反射神経でかわすと睨み付けた。 突然の乱入者に向けられる口調は刺々しい。 「……なあに貴女。下品なお猿さんの真似なら余所でやりなさいよ」 「忍者を猿と間違えるとは、心根だけでなく目も歪んでいるでござるか」 露出の多い忍者装束に身を包み平然と構えるサシミに、フィロメーラはますます睨みを強くした。 が、続いた銃弾がフィロメーラの腕を抉る。 「子供は未来の世界そのもの。そいつを穢す大人は、もはや人間じゃねェ!」 目線を動かした先には、二丁銃を構えたジョージ。 己を狙った襲撃だと気付いたか、ますますフィロメーラの目つきが険しくなった。 「ど、どうしたの、怖い……」 怯えたふりでフィロメーラの背後に隠れようとしたアンジェリカだったが、桃色の服はつい、と視界から離れた。取りすがって少しでも動きを妨害しようとした糾華も、向けられた視線と無言の圧力に動きを固める。 「そう。貴女達も、ね」 二人に向けたフィロメーラの微笑みは、相変わらず穏やかなものであったが瞳が笑っていない。 誘いに何の躊躇いも見せなかった所から、人形化にフェイトの有無は関係ないらしいが、それでも流石にリベリスタの襲撃によって状況を理解したらしい。 「……酷いわ。『お友達』になれると思ったのに」 目元を押さえて悲しげな声を出すフィロメーラに、糾華とアンジェリカ、そして駆け寄ってきたジョージが僅かに震えた。 多数を見た彼女の打った手は――目に涙を浮かべて、皆を眺める事。 ただの泣き真似であればリベリスタがほだされるはずもない。 だが、彼女のこれは魂そのものを揺さぶりまやかしを見せるもの。 心と理性が抗っても、『フィロメーラを守らなければならない』という強迫観念にも似た思いが奥底から湧き上げ、共に戦うはずの仲間へと武器を向ける。 「お芝居は上手だったけど、やっぱり女の子は『お人形さん』のが可愛いわ」 打って変わってにこりと微笑むフィロメーラ。 戦う、戦う、誰とだ。目の前の相手とだ。そうだ。戦わねば。 アンジェリカの発する黒いオーラが、飛び出した花子を強かに打った。 唇を噛み締めるアンジェリカに、花子は気にするなとでも言うように軽く手を振りフィロメーラへと駆ける。 「うんうん、花子もお人形遊びは好きだから気持ちはちょっと分かるよぉ~」 でもね、花子のお人形はオマエのと違う。 血を掠める際に耳元で囁いて、花子は鮮やかな赤のルージュが引かれた口元を拭った。 「世界のルールから外れた『モノ』が花子のお人形さんなの」 「あら、貴女も可愛いのに。残念」 傷口を気にした風もなく笑うフィロメーラに、花子は囁く。 ――バラバラにするのが花子のお人形遊び。 「ふふ、『セカイノタメ』って言い訳があると気狂い手前のサイコ趣味も許されるのかしら。……やっぱり可愛い子は動かないに限るわ」 恍惚の口調で呟いたフィロメーラに――空中から魔力弾が飛来した。 「っ!?」 「ちったぁ反省したかよ変態」 「……ンですって、不法侵入者の変態」 鼻で笑って飛び降りてきたのは音羽。 忌々しげに舌打ちをするフィロメーラにおお怖え、と肩を竦めてみせる。 「私がいる限り、誰も倒れる事なく帰るんだからねっ!」 アリステアが決意と共に向けた祈りは、風となって花子の傷口を塞ぐ。 偽りの心に引き摺られ動く体に力を入れながら、抗いきれないそれに小さく息を吐いて糾華は音羽を打ち据えた。 彼女らがこの攻撃を望んでいない事なんて分かり切っている。 「なら、止めなきゃね、お姉ちゃん」 (そうだね、とこ) とこの放った糸はすぐに振り解かれ消えたが――その思いばかりは、消えるはずもなかった。 ●愛好の結末 少女らをうまく抑えられた分、最初から全力で向かう事ができたリベリスタであったが、時に心が囚われ味方を傷付けるのだけは避けられなかった。 幸い回復手のアリステアの耐性が高めだったお陰で総崩れはしていなかったが、フィロメーラ本人の攻撃よりも味方の攻撃を恐れる事態というのは変わりない。 それでもリベリスタは仲間が次の手には正気に戻り、フィロメーラに再び武器を向けるのを信じ、只管に向かって行った。 サシミの爆風がフィロメーラの肌を焼き、忍者装束をはためかせる。 「泣き真似で誰かに守って貰おうなんざ、あんたの醜い内面が丸見えだな」 「ふん、美少女は世界の芸術品よ? 敗残者に生まれついた男なんか使い捨てる以外に用はないわ」 何度目か、己の体が思うように動かない状況から解放されたジョージが吐き捨てた。自由な状態の時に放たれる弾丸は、着実にフィロメーラの体力を削っている。 アンジェリカの過去の澱みもまた、怒りとなってフィロメーラを打った。 大人しい少女の面影は鳴りを潜め、一人の狂戦士がそこに立っている。 ――楽しいねぇ。 返り血と己の血で可愛らしい衣装を染めた花子が壮絶に笑った。 回復手の守りと己の体力維持を中心とした戦法は致命傷こそ与えられなかったが、流れる血は着実にフィロメーラの命の欠片。 「こっちだって、詐欺レベルの年齢詐称ババァの戯言なんざ逆に哀れみしか感じやしねーな」 「ハッ、哀れむなら自分の造形の悲惨さを哀れみなさいよ……!」 音羽の放った矢を打ち払い、フィロメーラが嘲りを露に笑った。 周囲に雷撃が荒れ狂い、リベリスタ達を貫き通す。 顔立ちは確かに美しいままだったが、それ故にアンバランスで不気味さをも感じさせる表情。 それが次の瞬間、驚愕に歪む。 「!?」 「捕まえたの」 傷を負いながらも幾度も放たれたとこの糸は、蜘蛛の巣に絡んだ虫の如くもがくフィロメーラを捕らえて離さない。 そして目の前に現れたのは、犬耳の忍者。 「拙者の忍術で化けの皮を剥がしてやるでござるよ」 埋め込まれたのは絶望へのカウントダウン。 尚も暴れるフィロメーラを――爆風は飲み込んだ。 「ねー、その人生きてる?」 「生きてるな。変態って生命力も強えーのな」 「ゴキブリみたいね。本当に面倒だったわ」 アリステアの問いに、軽く突きながら呆れたように呟いた音羽の横、糾華はばっさり切り捨てた。 少女らの衰弱はそこまで酷い物ではなかったので、後はアークの方が警察なり病院なりに多少の手を回すだろう。 となると今は。 「帰ろうぜ。同類と思われちゃ敵わん」 軽く帽子の前を上げて告げたジョージの言葉に、全てが集約されていた。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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