●メタルナンバーズ 『フルメタルフレーム』とは。 対象を機械化浸食するアーティファクトを独自に調整、運用することでメタルフレーム・フィクサードの性能強化を図ったものである。 浸食時に記憶や感情がリセットされることや、精神に深い影響を及ぼす可能性、そして調整の困難さによって実用化は不可能とされており、現在1号~8号までが試験運用されている。 そんな危険かつ不安定な技術を扱う人間。 名を、松戸助六。 ●交渉戦の誘い フィクサード組織『松戸研究所』より、リベリスタ組織『ひまわり子供会』へある招待状が送られたことが、今回の事件の発端であった。 内容を要約するに、交渉戦の誘いである。 交渉戦。 決められたルールに従って戦闘を行い、勝者がある一定までの要求を叶えると言うものである。 ・互いに戦闘そのものにはフェイトを使用せず、戦闘不能になった段階でリタイアとし、相手を殺害した場合は強制的に敗北。 ・予め指定したフィールド内でのみ戦闘し、この際の飛行は不可。 松戸博士は自らの陣営が勝った場合の要求を、現在リベリスタ化しひまわり子供会に預けられているフルメタルフレーム7号『七栄』の引き渡しとした。 逆に、ひまわり子供会側が勝利した場合、フルメタルフレーム1~8号までの内1体の引き渡し、もしくは8つまでの質問に回答することとしている。 質問回答については、松戸博士の知る範囲内での事柄に限られ、『○○とは何か』といった曖昧な質問や、『○○についての情報を全て』といった裏技的な質問は、七栄の引き渡しと比べて条件が良すぎるため認められない。また、条件の範囲を超えたとみなした場合回答をキャンセルできる。その代り松戸博士本人が立ち合い、リーディング・エネミースキャンを通しての真回答のみを答えることとした。 戦闘参加人数は両陣営共に8名。 他組織からの助っ人を有効とする。 ――以上。 ●アーク、ブリーフィングルームにて。 『運命オペレーター』天原和泉(nBNE000024)は更に説明を続けた。 「この『他組織からの助っ人』として、アークから八名のリベリスタを派遣することになりました。割合が多すぎると思えるかもしれませんが、松戸研究所もこうなることを見越してわざわざ『8名』としたのでしょう。なら乗らない手はありません」 松戸研究所はたびたび『ひまわり子供会』に襲撃をかけており、この計画が完成段階まで至れば何等かの破壊活動を行うことは目に見えている。 どのみち、松戸研究所は退けるべき相手なのだった。 「ですが無論、この勝負に態々乗らず、集まっているフルメタルフレーム及び松戸博士を力技で全滅させ、情報を根こそぎ引っこ抜くという手もあります。非常に危険ですが、判断は皆さんにお任せしますね」 そう言って、敵陣営の戦力表を『分かっている分だけ』表示していく。 初富:剣を使う。万能型と見られる。 二和:回復担当。高威力の回復スキルを連発する。 三咲:カウガールタイプ。高性能な射撃スキルを有する。 豊四季:不明。 五香:銃火器を装備した巨漢。詳細スペック不明。 六実:支援型。戦闘には適していないが、戦闘中は味方強化に務める。 八柱:格闘タイプ。スタンロッドと型破りな体術を用いる。 十倉:不明。今回から投入された機体。 「七栄はひまわり子供会側の戦力ではありますが、アークに対してあまり心象をよくしておらず、取引対象であることも踏まえて戦力対照外とされています」 フルメタルフレーム達とは一度8対8でぶつかっているが、互いに渡ったまま中断されていた。最後までやりあった場合どうなるかは全くの未知数である。 そこまで説明した上で、和泉は皆に資料の束を渡した。 「以上です。あとは皆さんにお任せします」 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:八重紅友禅 | ||||
■難易度:NORMAL | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月31日(火)23:20 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●自販機森交渉戦 夏場の自販機がこんなに熱いものだとは『SHOGO』靖邦・Z・翔護(BNE003820)もついぞ思わなかった。 「キャッシュからのォ……本日いつもより多めにパニッシュ!」 まるで不審者のようにコーラの見本をギリッと睨む。別に喉が乾きすぎて頭が飛んだわけではない自販機の向こう。そのまたずっと向こうまでを千里眼で見通し、敵の位置を把握しているのである。 敵影の射線が一番よく通る状態を狙ってハニーコムガトリングをばらまく。 流石に射線の通らない相手までホーミングさせるのは難しいが、通り易いタイミングを見計らうくらいのことはできる。 それに。 「遮蔽物がマジ森みたいにびっしり並んでる。どの位置に居ても射線通しづらいよコレ。でも気を付けて、そこからちょい先で敵が広がって待ち構えてるから! ってわけで後は現場のおッキュンよろしくっ!」 こうしてAF越しに仲間へ敵の位置情報を教えることができる。 「今日の俺は……いつもよりチキッシュだゼッ」 自販機の影にぴったり隠れつつ、翔護はニヒルに笑った。 一方こちらは前衛チーム。 翔護の通信通り敵に遭遇した『残念な』山田・珍粘(BNE002078)は二振りの剣を翼のように広げて構えた。 相手は初富である。じんわりと発光する剣を握りしめ、目の中で十字模様をキュンと伸縮させた。 「ひまわり子供会を防衛していたリベリスタだな。高速型の刀剣使い」 「那由他です。気軽になゆなゆと呼んでくださいね? 山田とか言ったらぶった切りますので」 「理解した。行くぞ山田」 「ぶった切ります!」 二人の間で素早く剣閃が交差し、激しい金属音を連続させる。 彼女達の腕が常人の肉眼で捉えられない速度に達した頃合いで、『殺人鬼』熾喜多 葬識(BNE003492)が自販機の影から初富の背後へと回り込む。 「今日は人を殺せない。大丈夫、もう満たしたから大丈夫」 どこからか大鋏を抜き放ち、黒い闇を纏わせる。 と、その時。 「――お、っと」 葬識は素早くバク転。先刻まで立っていた空間を漆黒のオーラが貫いた。 ちらりと見れば、自販機の影からぬらりと出現した黒塗りボディのフルメタルフレームが、大砲化した腕を葬識へと向けていた。 恐らく彼が新型機の十倉と見て間違いないだろう。 「どうして回り込んだのわかったのかな?」 口ではそう言うものの、葬識はどこか嬉しそうに大鋏をシャキンと鳴らした。 「戦ってれば分かること。後で一緒に遊んでー!」 『Trompe-l'eil』歪 ぐるぐ(BNE000001)が自販機の細い隙間をすり抜けて転がり込み、どこかガチャガチャとした銃を抜いた。 その途端、前方の自販機を三角飛びで越え、八柱がぐるぐめがけて業炎撃を繰り出してきた。 咄嗟にナイフでガード。ゼロ距離で懐に銃を撃ちこむが、構うことは無いとばかりに六段展開ロッドを手首ごと回転させ高速で叩き込んでくる。 「歯を食いしばって攻撃を耐え凌ぐぐるぐ」 だが、この時ぐるぐは防御以外にもう一つやっていたことがあった。リーディングである。 「……あ、この子ら」 自販機に上下逆さに叩きつけられつつ、呟くぐるぐ。 「仲間が千里眼とマステレでめっちゃ性格な配置図描いて共有してるぽい。位置把握は向こうのが上かもしんない」 ぐるぐの読み通り、彼等は六実の千里眼と数人のマスターテレパスネットワークを駆使し、正確な位置情報を共有していた。 一方こちらは口頭での位置情報のみである。 「飛ぶのは禁止でも、この翼は皆さんが攻撃を避ける手伝いをしてくれるはずです」 七布施・三千(BNE000346)は事前に展開していた翼の加護に加えてクロスジハードを展開させていた。 なんとなくだが、向こうはディフェンサードクリトンとオフェンサードクトリンくらいはかけていそうな様子だったし、戦闘指揮らしきものが生きている気もする。全て六実の仕業かは分からないが、もしそうだとしたら非常に厄介な支援機ということになる。 「とにかく、僕は皆さんの回復を」 ここで早速位置情報の把握が大事になってくるのだが、三千が聖神の息吹や天使の歌を使って回復できる対象は、位置座標を正確に把握している相手に限られ、本当に全体を回復させようとするには自販機の上によじ登って全体を見渡す必要が出てきた。飛行不可な理由が少しわかった気がする。 事前のルール確認でも、回避中のホバリングや制動は可とされ、上空からの偵察や空爆を禁じるという形だった。理由はまさかの『近所迷惑になるから』だったが。 「とにかく、 靖邦さんだけでも守らないと!」 三千は目につく仲間の回復を行いながら、翔護の元へ移動する算段を立てた。 よしと呟いて走り出そうとした、その時。 「五香豊四季、MBフォーメーション」 「ラージャ」 重火器重装甲の五香と魔術師じみた格好の豊四季が同時に自販機の上へとよじ登って来た。 全体攻撃が来ると察して仲間が射撃を始めたが、五香が重機のような腕を翳して豊四季をガード。 一方豊四季は展開式装甲を蝙蝠の羽のように広げ、内側にびっしりと表示された魔方陣を妖しく輝かせた。 「プロトコル設定。葬操曲――」 はっとして叫ぶ三千。 「避けて!」 「リリース!」 魔力の鎖が大量に撃ち出され、三千を含めた何人もの味方が拘束される。 が、そんな中で。 「甘い甘ァい……セルマちゃんに麻痺呪縛は通用しなぁい!」 自販機の上に飛び乗った『フォートプリンセス』セルマ・アルメイア(BNE003886)が、盾を翳して堂々と胸を張った。 「ついでに火も呪いも通用しないから覚悟しとけハリボテども! セルマちゃんガードかーらーのー、伝家の宝刀ブレイクフィアー!」 セルマが天に盾を掲げた途端、仲間を拘束していた鎖が一斉に解除される。確率としてはまあまあだが、自力での解除も含めれば八割がた解除できる。フォートプリンセスの面目躍如であった。 「フッフッフ、セルマちゃんを盾のフリしたかませか何かだと思ったか? 舐ぁめるなぁー!」 「正直ちょっと思ってましたすみません助かりました!」 鎖を千切って走り出す『機械仕掛けの戦乙女』ミーシャ・レガート・ワイズマン(BNE002999)。 ハンドガンを両手で構えると、自販機の影から飛び出した敵影に向かって無警告発砲。 「ナントカからのパニッシュ!」 よく狙って撃った弾だが、相手はそれを紙一重で回避。 両膝のホルダーから抜いた二丁拳銃を軽く指で一回転させると、ミーシャへと容赦のない拘束連射を叩き込んできた。 ひゃあと言ってヘルメットを抱えるミーシャ。 「三咲かっ、下がってろワイズマン!」 行動を共にしていた『糾える縄』禍原 福松(BNE003517)は攻撃範囲に対応するためミーシャをわざと自分から離すと、金色のリボルバー銃を抜き放ち半身の態勢で連続発砲。 両者の間を大量の弾丸が行き交い、身体に無数の穴を空け合った。 幸運にも三千からの視界が通っていたため福松は即座に回復。三咲は常時二和から位置把握を受けているのですぐに回復。 互いをハチの巣にし合いながら無言で鉛弾をぶち込み合う。 ミーシャはそんな光景から少し離れ、自販機の裏にぴたりと背をつけた。 銃のマガジンを入れ替え、僅かに身を覗かせて撃ちまくる。 「この勝負……」 状況把握は向こうが上。正確には計れないがスペックも微妙に負けているかもしれない。 「不利、かもしれません」 ミーシャはずれそうなヘルメットを抑えつつ、苦々しく呟いた。 ●フルメタルナンバーズ 戦闘はさほど長引かなかった。 「それ以上近づくと撃ちます!」 足を肩幅に開き両手でしっかりと銃の照準を合わせるミーシャ。 二丁拳銃を構えて真っ直ぐダッシュしてくる三咲へ連続で撃ちまくる。 数発は頬やひざをかすり、二発ほど胸に命中。 星形のバッチでガチンと弾かれ、ミーシャは慌てた。 距離にして数メートルの所まで接近される。思い切って回し蹴りを繰り出すも、屈んで回避される。顎に銃口を突きつけられたと思った時にはフルオートで鉛弾を叩き込まれた。 意識が一瞬でブラックアウトする。 「テメェ――!」 福松が直接飛び込んで拳を握ると、もう一丁の銃が火を吹いた。福松の腹を弾が貫通。かるくきりもみするが、根性で踏みとどまって三咲へと拳を繰り出した。 よろける三咲。更に二発目のパンチを腹へ叩き込む。二歩三歩と後ずさりする三咲だが、それ以上は下がらなかった。銃を反転させハンマーのように構えると、銃底からピックのようなものを生やすと福松の側頭部へ叩き込んできた。 福松の視界が、大きくブレる。 「まだ……だっ!」 倒れるギリギリのところで踏みとどまり、咥えていたキャンディを噛み砕きつつ渾身のパンチを叩き込む。 三咲はもんどりうって転倒。後頭部を自販機に叩きつけ、そのまま動きを完全に停止させた。 同刻。 「さあかかってきな、セルマちゃんが相手になるよ!」 「厄介な相手だ。先に倒させてもらうぞ――マジックブラスト、リリース!」 装甲の展開方式を組み換え巨大な魔方陣を形成した豊四季が、セルマへとマジックブラストを叩き込む。 「うおおっ!?」 神秘防御は若干弱いセルマである。盾が剥がれ落ち、仰向けに倒れて意識をうしなった。 一方の豊四季はエネルギー切れを起こしたのか装甲を畳んでがくりと膝をついた。 「二和、チャージだ」 「ラージャ」 エネルギーを再び充填する豊四季を横目に、葬識は十倉との斬り合いを続けていた。 「殆ど機械のその身体、それはもうヒトなのかな?」 「神秘に染まった身体が既に、ヒトの身ではあるまい」 「かもね」 両腕の大砲から直接生えたオーラの鎚を、葬識は紙一重のところで回避。素早く大鋏を繰り出して十倉の脇腹を抉った。 小さく呻く十倉。痛覚はあるのか。 「強い……ならば、こちらも」 十倉は額に保持した暗視ゴーグルを装着するや否や闇の世界を展開。葬識もろとも暗闇へと包み込む。 「へぇ……」 鋏をシャキンと鳴らす葬識。 超直観は捨て目を効かせるスキルである。ESPとは違って見えない物はどうやっても見えない。 対処法を考えている内に背中を斬られた。それでも焦らない。ここでうっかり振り返ったら今度は脚の健を斬られるだろう。 ほとんど勘で鋏を薙ぐように振り込む。途中でガチンと何かに阻まれた。 「そこかな、っと」 蹴りを叩き込む。ヒット。しかし脚を抱えて引き倒された。 咄嗟に懐のスタンガンのスイッチを押す。スパーク。 一瞬だけ見えた十倉の胸に全力で大鋏を突っ込んだ。 手ごたえを、少しだけ感じる。 だがその時には既に、葬識の眼前に黒光りする大砲が突きつけられていた。 「強かった。またいつか、全力で……殺し合おう」 常闇が放たれる。 それが、葬識の最後の記憶だった。 ぐるぐは翔護の通信で味方の戦闘不能者を把握。これはヤバいと直感的に悟った。 「しょーがない、ちょっと二和ちゃん潰させてもらうね。人が嫌がることは率先してやれって、言うもんね!」 ぐるぐは八柱の猛攻を掻い潜りながら、何とか見つけた二和めがけてピンポイント射撃を敢行。 狙い違わず命中。だがその途端『針鼠』による反射攻撃がぐるぐの腹に突き刺さった。 「うぇ!?」 「皆さんには『最初に』『二和と六実だけで』お伺いしました」 腹部のタブレットに指を走らせる二和。 そこから少し離れた場所で、六実が即座にブレイクフィアーを展開。二和の異常状態を解除してしまう。 受けたダメージは勿論、二和が即座に回復する。速度を互いに低く調整することでフォローを可能にしているのだろう。 「ですから、回復役と支援役の私達を最優先で狙う可能性が非常に高いと、用意させて頂きました。五香さん、そろそろどうぞ」 「ラージャ」 五香が自販機の上に再びよじ登り、全身に仕込まれた重火器を展開。 「まずいっ!」 全体攻撃が来ると察した那由他が、五香にソニックエッジを繰り出そうと自販機を駆け上がろうとする……が、初富が行く手を阻んだ。 ブロックをかけられてそれ以上進めない。ソードエアリアルでもあれば話は別だが、生憎今回は用意していなかった。 「どいて下さい」 「その頼みは聞けないな、山田」 「ぶった斬ります!」 那由他の剣と初富の剣が衝突。 輝くオーラを剣に纏わせ、初富が連続攻撃を叩き込んでくる。 那由他にとって回避は難しくないが、今は相手をしている余裕はない。 「ターゲットロック、殲滅!」 五香の強烈なハニーコムガトリングが放たれた。集中を重ねていたのだろう。それなりに回避性能の高い那由他ですら弾を避けられなかった。 ならば後方支援に徹していた翔護など……! 「危ない!」 三千が翼を広げて地面スレスレを高速水平移動。翔護を庇って弾を全て受け止めた。 「なッキュン!」 「僕だって、一撃くらいなら耐えて見せます!」 一撃くらい。そう、今の彼では一撃耐えるのがやっとだ。 五香が照準を絞って三千へと連続のガトリング射撃を叩き込んでくる。 「うっ、うわ……!」 体力の豊富な三千ではあったが、ここまで断固とした徹底射撃をくらってまで立ってはいられない。 「こんの……ラストパニッシュ!」 翔護は三千の肩越しに銃を構えて五香を射撃。 五香は軽く怯んだが、それだけだった。 三千はその場にぐったりと倒れ、残りの弾は翔護へと迫る。 そして……。 …………。 ……。 ●交渉終了 仲間の大半を倒されたリベリスタ達は、そのまま覆い潰されるように敗北。互いを死亡させないというルールが無ければ、もしかしたら誰かの命が失われていたかもしれない。 「つぅ……」 福松は血塗れになった足を引きずりながら、ミーシャ達の応急処置をしてやった。 彼女達は一時的に気を失ったりはしたが、やはりトドメを刺さなかったこともあって意識を取り戻すのは早かった。酷い怪我だったし、戦闘を続行させることは不可能だったが、命があるのは何よりいいことだ。 「皆さん、ルールに従いフルメタルフレーム7号・七栄は我々に返却して頂きます。よろしいですか?」 白衣を着て遮光眼鏡をした男が問いかけてくる。 「あんたは……」 「彼は鎌ヶ谷。ワシの助手じゃ。リーディングとエネミースキャンを用意してもらってきた」 「……ふうん」 どこか興味深そうに彼の顔をじろじろと見るセルマ。 そんな彼女たちを通り抜けるように、七栄がゆっくりと松戸博士の方へとあるき始めた。 「七栄ちゃん……」 ぐったりした顔で七栄を見上げるぐるぐ。 七栄は瞬きを一度だけすると、子供達を相手にするような、優しい声で言った。 「私はフルメタルフレーム7号。何の因果かリベリスタになってしまいましたが、松戸博士のもとに帰ることに不自然なことはありません。もともと私達は敵同士だったんですから……そう、でしょう?」 「…………」 答えずに目を反らすぐるぐ。 七栄を車に乗せると、松戸博士は髭を撫でながら言った。 「ふむ……しかしなんじゃのう。FMFらの性能差だけで勝ったみたいに思われても癪じゃし、実際そういう側面もあった。それに呼び出したのもコッチじゃから……『予定の半分』までの質問には答えても良いぞ」 「真面目だね?」 「こういう勝負はフェアにせんと、『ホワイトマン』が怒るからのう」 挑発するように葬識は言ったが、松戸博士は平然としていた。 ならばと手を上げる那由他。 「お言葉に甘えて、私から。最初にひまわり子供会を狙った理由は何ですか? 話に出ていた『第二の太陽』が……?」 「ワシの知ってる手ごろなリベリスタ組織があそこくらいじゃった……というのがぶっちゃけた所じゃ。『第二の太陽』とかあったらラッキーくらいの気持ちじゃな」 「あのっ、次は私がっ」 跳ね起きるミーシャ。お土産の包みを渡しつつ……。 「FMFの開発経緯を教えて下さい。あとこれオランダ屋の甘藷先生です」 「情報量デカいのう。ざっくりで良いか? マスタープラトンみたいなことを再現できんかと『ホワイトマン』から相談されたのが切欠じゃな。彼の本体とこう、接続のようなことをすることでフィクサードを半アーティファクト化できんかなぁと。割と偶然任せじゃったな最初は」 「偶然……」 「あの、じゃあ僕と靖邦さんのも」 三千と翔護が手短に質問を述べる。 「なぜ七栄さんを取り返したかったのですか」 「ナンバーズはみんな一緒におった方がええじゃろ」 「……へ?」 「拘りじゃ拘り」 「『第二の太陽』を感知できるとかじゃなくて?」 「できんできん。形とかも正確に把握し取らんし」 こんなもんで良いかと呟いて、松戸博士はくるりと踵を返した。 「フルメタルナンバーズも揃ったことじゃし、ワシなりに色々お仕事するから。その時はヨロシクしとくれ」 「……よかったら、もう一個だけ答えてかない?」 セルマがおずおずと手を上げる。 「FMFをもとのメタルフレームに戻す方法、ある?」 「死ぬほどぶっ壊せば、回復した時には元通りになる。感情がリセットされるからどうなるか分からんし、そのまま死ぬかもしれんがな……七栄のは偶然じゃろ、多分」 「…………」 「じゃ、そういうコトで」 松戸博士たちを乗せた車がどこか遠くへと遠ざかっていく。 リベリスタたちはそれを、砂を噛むような気持ちで見送ったのだった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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