「ここに来て大分経つね」 相方のHEの言葉に、EEは小さく頷いた。 拠点周囲の偵察任務に当たるスカイウォーカーの面々は、今日も今日とて偵察の時間である。 ここは敵地ではあるが、拠点設営を順調に続け、日々の警戒がこの安全なエリアを作っているのだ。 これでフュリエとの関係もより良くなる事だろう、だがそれは嵐の前の静けさでもあった。 「おいおい~……何だよありゃ」 チーム内最年長のOwlEが、軽い口調でぼやく。 彼のスコープに映っていたのは目を疑いたくなるような光景だ。 「……な、何だいあれはっ!?」 「あれだけ潔いと、褒めたくなるわね」 HEは慌てふためき、対照的に紅一点のSwaEは悪態をつく。 彼らの目に飛び込んだのはバイデン達の大行進だ。 『HQ、EEだ。バイデンはこちらと大喧嘩をご希望の様だ、数えるのが嫌になる程いる。距離は……』 通信を行うEEは、ちらりとOwlEを見やる。 『結構離れてるな、でも足並みを揃えてるってこたぁ……一気にくるぜぇ?』 『了解、他の偵察班からも多数報告が入ってきている……そちらは撤退し、援護に回ってくれ』 自分たちの役目はここまでだ、激しい戦いは主役に任せるに限る。 『了解した。スカイウォーカー、撤退と共に援護に入る』 バイデン達の目に留まらぬ様、静かに素早く撤退を始め……まもなくして、戦いの火蓋は切って落とされた。 「俺よぉ、映画とか大好きだぜ? 特にアメリカのSFXにゃあ驚かされてばかりだ」 「それがどうした?」 「けど、現実にこりゃあないよな?」 スカイウォーカー達の前に姿を現したのは象だ。 だがその大きさは普通の象の2倍はありそうなサイズであり、背中の櫓にはバイデン達の姿も見える。 「なるほど~、あそこから岩の投石かぁ。当たったら悲惨だぜぇ?」 筋骨隆々のバイデン達がサッカーボール程の岩を投げつけるのだ、重力も相成って破壊力は想像したくもない。 足元には数人のバイデン達が随伴し、死角を埋めあう。 『HQ、忙しいと思うが攻城兵器が迫っている。こっちにも人員を回してくれ』 『そっちに8人向かわせよう、現状説明はそちらに一任する』 通信が切り替わり、割り当てられたリベリスタ達へと繋がっていく。 彼らに正面衝突させるのはあまりにも危険だ、周辺状況の地図を確かめると、AFでの通信を開始した。 『聞こえるか? こちらは偵察班、スカイウォーカーの部隊長、イーグルアイだ。既に見えていると思うが、君等の相手はその巨大象だ、まずは罠のエリアへ誘い込むと良いだろう。それに敵は、君らを見つければ真っ先に潰しに来るはずだ』 戦いに飢えてる様な信じられない奴等だ、襲い掛かってくる者を放って置くはずがない。 そして罠にはめれば完全に足を止めるには難しいが、象の動きを遅くさせる事は出来よう。 今にも飛び出しそうなリベリスタ達へ、矢継ぎに通信を続ける。 『足さえ潰せば移動は出来ない、だが象の足元にはバイデン達が取り巻いている。奴等を退かさないと難しいだろう、あとそっちに気をとられすぎて、背後を突かれないように』 足元のバイデンを構いすぎれば死角から石が降り、巨木の様な脚と鼻がリベリスタ達を蹂躙するだろう。 だが、上手く連携を崩せれば勝機はある。 『橋頭堡に設置されている設備を上手く使ってくれ、例えば……発射台とかだな、あれなら上から攻撃を仕掛けられそうだ』 提案したプランはここから見た情報を元にした一例だ、他にも設備はいろいろある。 とにかく敵を倒せれば問題ない。 『あんなものに突破されたら大変な事になる、どうにか食い止めてくれ』 ここでも、バイデンとリベリスタ達の戦いが幕を開ける。 |
■シナリオの詳細■ | ||||
■ストーリーテラー:常陸岐路 | ||||
■難易度:HARD | ■ ノーマルシナリオ 通常タイプ | |||
■参加人数制限: 8人 | ■サポーター参加人数制限: 0人 |
■シナリオ終了日時 2012年07月29日(日)23:41 |
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■メイン参加者 8人■ | |||||
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●勝機の風 敵の攻城兵器が迫る中、『てるてる坊主』焦燥院 フツ(BNE001054)は、落とし穴のトラップの中へ何かを仕込んでいた。 「これならかなり効きそうだな」 竹槍やらガラス片等、踏みつければ大惨事になりそうな凶悪な品々を散りばめ、破壊力を増していく。 ただの落とし穴だけでは象にとって、ちょっとした窪み程度にしかならないかもしれないが、これなら話は別だろう。 うっかりバイデンが落ちてくれ様ものなら、致命傷も与えられるはずだ。 「どうせなら、こうしようぜ?」 穴を覗き込んだ『合縁奇縁』結城 竜一(BNE000210)は、フツに体を支えて貰いつつ竹槍に小細工を仕込む。 切っ先を削り、かえし の様なものを付け足したのだ。 これであれば引き抜くにしても槍を支える床ごと持ち上げる事になる。 「ついでにこれもな」 『仁狼』武蔵・吾郎(BNE002461)が、落とし穴の底や側面に油を垂らし込む。 滑るわ突き刺さるわと凶悪な落とし穴の完成である。知性がもたらした凶器とでもいうべきか? トラップの仕上げを終えるとフツは呪文と共に光を放ち、それは仲間達の背中へと集う。 今回の作戦において重要な浮遊手段だ、小さな翼へと変わっていく。 トラップエリアへと招き入れる際、罠を飛び越えて移動すれば気付かれてしまうが、こうして薄っすらと浮かんだ状態で移動すれば敵にも勘付かれにくいはずだ。 迫る敵、時間は惜しい。 駆け足に敵の群れへと向かうリベリスタ達から一人だけ、『硝子色の幻想』アイリ・クレンス(BNE003000)は橋頭堡へと向かうのであった。 「俺の名は結城竜一だ! 我が二刀、潜り抜けられると思うな!」 象の真正面に立ち塞がるのは竜一だ。和洋二刀を構え、気合十分に名乗り上げる。 戦いに飢えたバイデン達に言葉は通じずとも、本能で意味を理解したのか? 竜一目掛けて象は突き進む。 (「デカイのはそれだけに強さにつながるが、アレだ。で、でかけりゃいいってもんじゃないんだ!」) 見上げた巨躯を実感し、『chalybs』神城・涼(BNE001343)の総身が小さく震えた。 恐怖、ないとはいえないだろう。 それを上回る勇気が、体中に力をみなぎらせた結果だ。 象の足を破壊しようと迫るが、売店たちの壁が遮ろうとする。 「そっちがデカさで挑んでくるなら俺は速度で挑んでやるぜ」 吾郎の見掛けによらぬ素早い刃がバイデン達に襲い掛かり、体力をすり減らす。 「今だっ!」 その隙を突き、涼の音速の一撃が象の足を切り裂いた。 痛みに雄叫びを上げる巨象、随伴兵達の足並みも乱れ始めている。 「いくぜ、黎子! 俺の烈風は暗雲を吹き飛ばす烈風だ! ノってきな! レッツパーリー!」 「踊らせてもらいますよう……」 竜一の合図に『スウィートデス』鳳 黎子(BNE003921)が応える。 両手に握った剣からは破壊の烈風、分離した鎌を振るう姿は正に嵐。 雨の変わりに、バイデン達の血潮が舞い、二つの風がデュエットを奏で、リベリスタ達の勢いを増す。 「推して参るぜー、アンタレス!」 『世紀末ハルバードマスター』小崎・岬(BNE002119)が名を呼んだのは、得物であるハルバードだ。 彼女と正反対に凶悪すぎる外見をした得物が、炎を撒き散らしながら敵へと迫る。 素早く、そして豪快に、ガードごと叩き伏せる一閃がバイデンを叩き伏せ、人外の血が大量に飛び散っていく。 きっとこれが……ただのエリューションや、フィクサードならば、このまま押し切れたことだろう。 だが、彼らは戦いを求める狂人。バイデンなのだ。 ●猛火の如き反撃 バイデン達の反撃も凄まじい、碌な加工をされていない武器から何故それだけの破壊力が出るのだろうか。 原始的な力は、英知も技術も全てねじ伏せる。 「くっ……」 バイデンの槍をどうにか鎌で受け止める黎子だが、その衝撃だけでも体が砕けそうだ。 足が鈍った一瞬を逃さず、別のバイデンが追撃を放つ。 「ぅあっ!」 ゾリッ、鑢のような槍の切っ先が太股を貫く。 激痛に顔を顰めながら、蛮人を鎌で薙ぎ払って遠ざければ槍が抜ける。 だくだくとこぼれる鮮血、象の上で獲物を探していたバイデン達は弱った彼女へ狙いをつける。 一投目の巨石を避けようとするのだが、ダメージに足が上手く動かない。 「っは……」 鈍く、そしてひび割れるような音、共に体が勢いに飲まれて転がっていく。 頭部に直撃した石に黎子の意識が消えかかるが、バイデン達は容赦なく彼女へ石を投げるのだ。 二発目、それも迷う事無く頭部へ命中。 仰向けに倒れる体、頭部からは夥しい量の真紅が地面を染め上げる。 「黎子!?」 竜一の叫びに、ぴくりと指先が揺れる。 「まだ、ですよう……」 運命の力を失いながらも、黎子は立ち上がる。 まだ配るべきカードは飛んでいないのだ。鎌を杖代わりに起き上がれば、二本足でしっかり大地を踏みしめていく。 その様子にほっと胸を撫で下ろす竜一へ、象の足が近づいていた。 「竜一、気をつけろ!」 吾郎の呼び掛けに横っ飛びに回避するが、肩に足がぶつかってしまう。 地面に叩きつけられる様に転がり、直ぐに体勢を立て直す。 見上げた先には振り上げられた鼻の鉄槌。 「やべぇっ」 地響き、そして砂煙。 直撃は免れたものの、竜一が意識を失わなかったのは奇跡に近いだろう。 後一歩回避が遅れていれば……地面にめり込んでいたのは間違いない。 「黎子様、竜一様っ、大丈夫ですか!?」 『節制なる癒し手』シエル・ハルモニア・若月(BNE000650)は予想以上の反撃に不安が過ぎる。 敵を油断させる作戦と言うのを、仲間達に伝えてあるのだが、今言えば言葉通りになりそうだ。 「あぁ、それより……黎子のほうを先にしてくれ」 竜一もが彼女を先に回復する様促したのは、被弾率からだ。 ダメージの具合はほぼ同じぐらいだが、守りに関しては黎子の方が甘い。 次に攻撃を食らうまでに多く回復しておかねば、再び倒れかねない。 竜一を狙うのは主に象になるはず、大降りの攻撃何度も受けるはずも無いと考えるのは、至極当然な答えだ。 「ではその様に……」 竜一の指示に従い、黎子へと癒しの微風を浴びせ、傷口を塞いでいく。 回復にのみ特化した彼女の『天使の息』は、黎子の体力を瞬く間に補う。 更にフツも詠唱を重ね、福音のメロディが二人を癒す。 互いの勢いは同等、この勢いが失われた瞬間に敗北を意味するだろう。 二人は全身全霊で回復に集中し、仲間達を支える。 「来いよ象! お前たちはそこのバイデンが強いから乗り物になってんだろうが、オレ達の方がはるかに強いところを見せてやる!」 フツの強気な言葉は動物の言語となって象へ届けられる。 潰してやると雄叫びを上げる象は怯む事はない、それはリベリスタ達も同じだ。 ●不運を潜り抜けて 「お返しだ、釣りはいらねぇぜ!」 吾郎は幻影を生み出しながら、素早い連撃を浴びせ、敵陣の混乱を狙う。 しかし、バイデン達は既に狂っている所為なのか、混乱に陥っても本能が強引に迷いを振り払うのだ。 「ぶっ倒れるまで何度でもやってやる!」 涼も負けじと音速の刃を何度も何度も象の足へと叩きつけ、ダメージを蓄積させる。 一撃は弱かろうとも、素早さにかけた矢次の攻め手はじっくりと足を弱らせていく。 「へいへいー! 赤いのビビってるー!」 草野球の様な挑発言葉が通じるはずも無いのだが、愚弄されていることぐらいは伝わるらしい。 誘い出されたバイデンとぶつかり合う岬、誘い出された方は怒りに動きが雑になっていく。 「隙ありー!」 目敏く見つけ出した好機を逃さず、フルスイングのハルバードが袈裟斬りに放たれた。 すぐさま得物で身を守るバイデンだが、そんな事は関係ない。 彼らの力を上回らんアンタレスの一撃は、無骨な槍を砕き、そのままバイデンを裂く。 肩から突き刺さる切っ先が肉を引き千切り、地面へと叩き伏せれば二度と起き上がる事はなかった。 次の攻撃に備え、シエルとフツの癒しの二重奏が竜一へと響く。 (「完全にとは参りませんか……」) 傷は深く、二人の回復力を持って下手7割程度まで持ち直すのが精一杯だ。 続く仲間達も、二人の援護に応え様と確実にバイデン達の体力を削っていく。 勢いを勢いで押し返すリベリスタ達へ、更に暴れるバイデン達の反撃が始まる。 仲間を倒した岬へと狙いが定まり、連続攻撃が襲い掛かった。 棍棒の一撃をハルバードで受け止め、威力を殺したところへ降り注ぐ投石。 「うぁっ!?」 一発は受け流すことが出来たが、トドメのもう一発を受け、岬は地面を転がる。 随伴兵二体は竜一へと狙いを定め、斧が襲い掛かるが難なく刃を掻い潜っていく。 そして再び象の足が迫っていた。 「そう簡単に踏まれてたまるか!」 確殺のストンピングを避け、追撃の振り下ろし攻撃が迫る。 吾郎が警戒するよう叫んでくれていたこともあり、軌道はしっかりと見えていた。 避けれる。その筈だったのだが、象の足元が一瞬揺れ、偶然にも動きが変わってしまう。 ドォンッ! 直撃、地面にめり込んだ竜一は運命の力を砕いて立ち上がる。 「まだだ、まだ終わらねぇぞ……っ!!」 血塗れになりながらも地面から這い出る竜一、バイデン達もその根性に歓喜の声を上げた。 「思っていた以上かもなっ」 攻撃に転じる余裕も無く、フツは回復に専念する。 象によるダメージは予想外に大きいだろう、フツが小さなダメージをカバーしつつ、シエルが大きなダメージを癒す。 それ嘲笑う様な破壊力が、ジリジリとリベリスタ達を窮地に追いやる。 しかし、シエルとフツがいたからこそ今耐えている仲間達がいるのも間違いない。 「これでは……治癒が……っ」 黎子や竜一の時もそうだが、シエルの回復だけでも体力の半分は補えている。 そんな彼女の癒しの手が十分に回りきらない程、攻撃の勢いは恐ろしい。 体の痺れを自力で振り払う岬も反撃に加わり、推せども勢いは衰えないのだ。 「くそっ! いい加減倒れろよ!」 只管に足を切りつける涼。 手応えがこれだけあるのに、痛みに叫び声が聞こえるのに象の攻め手が緩まない。 弱った岬を潰そうとバイデン達もラッシュを浴びせ、彼女の体力も危うい。 足がふらついた一瞬をついて、再び頭上から岩が彼女を襲う。 頭蓋骨を粉砕せんとする程の破壊力が直撃し、地面を転がる。 「これぐらい、黎子ちゃんだって元気だろー……」 運命の力を砕きながら、再び立ち上がれば頬を鮮血が伝い落ちていく。 頭の中で全ての音を反響させ、まるで一人トンネルの世界にいるかのようだ。 (「次こそは……」) 三度のノーズハンマーをしっかりと確認し、回避に映る竜一。 大袈裟なぐらい、確実な回避を試みるが運命は彼を見放していた。 ほんの些細なことだ、地面から飛び出した岩につま先を引っ掛けてしまい、体制を崩してしまう。 まさかの3度目の直撃、彼の意識はぱつりと途切れるのだった。 「く……バイデン様達がこんなに強いなんて……抑えきれない」 一か八か、シエルは心理作戦を掛ける。 これだけ圧倒し始めた今、作戦とはいえ弱音を吐くのは心苦しいが、敵が油断すればまだ勝機は巡るはずだ。 雄叫びを上げ、トドメをささんと猛進するバイデン達。 そして……象の足が罠に滑り込んだ。 『掛かったぜ! 今だ!』 AFを通し、吾郎は誰かに指示を飛ばす。 象も必死に足を抜こうと試みるが、凶悪すぎる落とし穴から抜け出せない。 涼に何度も斬りつけられた足は確実に体力を失い、かえしのついた槍を引き抜けないのだ。 そして迫るは黒き流星達。 ●全てが繋がる時 時は遡る。 仲間達と別行動を行い、橋頭堡へと向かったアイリは何かを探していた。 「これだ!」 発射台、色んな物を射出し、拠点防衛を行う兵器だ。 (「バリスタに近い形をしている、トラックは無理そうだが……」) 射出する弾代わりのものを辺りを見渡し、見繕う。 「これは丁度いい」 束ねられた鉄のシャフトと、大きな材木。 早速台車に乗せ、発射台の傍まで運び込むと準備開始。 弾の本体となろう木材へ鉄の棒を巻きつけるようにしてワイヤーで巻きつけ、ギリギリと縛り上げる。 時間はあまり無い、素早く繰り返し繰り返し量産を続けていく。 それが終われば建材の先端を近くの工具で切り落とし、先端を尖らせる。 矢羽は無いが、これで十分な矢になっただろう。 そして届いたのは吾郎からの合図だ。 『敵から少し離れてくれ! 行くぞ!』 ガコンとレールに巨大矢を嵌め込むと、照準を合わせていく。 距離と風向き、けたたましく台座を回転させ、微調整を行う。 「反撃開始だ!!」 黒き流星は象へと直撃。 背中に深々と突き刺さり、超重量に悲鳴を上げながら膝をつく巨象。 更には解けたワイヤーから介抱された鉄棒が、雨のように随伴兵達へと降り注ぐ。 『もう少し手前に落としてくれ、それで櫓にぶち当たるはずだ!』 『分かった!』 手数の多さがアイリの特徴、破壊力の高いこの武器に対してそれが発揮できれば、その恩恵は大きい。 手早く装填を行えば、照準を調整、再び発射レバーを引いた。 「落ちよ!!」 二発目、狙い通りに櫓へと命中。 バイデン達には直撃しなかった様だが、飛び散る櫓の破片と共に地面に転がり、降り注ぐ鉄矢の餌食となる。 続けて三発目、容赦なく背中を貫き、鉄の雨霰がバイデン達も苦しめていく。 「今がチャンスだ、一気に決めるぜ!」 今までの攻撃も合わさり、ボロボロになったバイデン達へ吾郎の幻影が襲い掛かる。 薙ぎ払い、一人を切り捨て、振り下ろし二人目を断ち、更に残った3体の体力も奪っていく。 幻が消えると共に、そこに立っていたのは本物の吾郎。 地面へと振るった魔力剣からは、バイデン達の血潮が地面に一筋の終焉を描いた。 「ジョーカーが配られるのは……おっと、これだと足りないようですねぇ」 残りのバイデンへと黎子が走りつつ、鎌を分離させていく。 二つの鎌を手に、バイデン達の牽制攻撃の合間を駆け抜けるのだ。 避けては払い、避けては裂き、避けては突き刺し、バイデン達の間で黎子が舞い踊る。 「サービスしておきましたよぅ」 最後に一回転で切り払えばバイデン達は後ろへと倒れていき、血の喝采と共に黎子の鎌は一つへと戻っていた。 「これでトドメだっ!」 横薙ぎに振るわれた鼻の上へ着地し、駆け上がる涼は両手で黒耀ノ翼を握り締める。 鼻から落とそうと下へと揺れる刹那に、強く踏み切り、涼は宙に舞う。 唯一の防御手段は下、直ぐには上げられないだろう。 柄頭に掌を押し当て、勢いを余す事無く刀に伝えながら頭部へ切っ先から激突。速度、筋力、重力、全ての力が合わさった音速の刺突は堅い頭蓋骨を突き破った。 のた打ち回る象であったが、それは最後の悲鳴。 地震の如く最後に地面を揺らし、戦いは終わりを告げのであった。 |
■シナリオ結果■ | |||
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■あとがき■ | |||
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